(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233909
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】通気性帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/04 20060101AFI20171113BHJP
A42C 5/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
A42B1/04 J
A42C5/04 B
A42C5/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-74047(P2017-74047)
(22)【出願日】2017年4月3日
【審査請求日】2017年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399102127
【氏名又は名称】ビルマテル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178009
【弁理士】
【氏名又は名称】小河内 功佑
(72)【発明者】
【氏名】白井 庄史
【審査官】
米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−026622(JP,U)
【文献】
実公昭48−002252(JP,Y1)
【文献】
登録実用新案第3183837(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3188210(JP,U)
【文献】
特開2001−207322(JP,A)
【文献】
特開2013−019088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/00−1/24
A42C 1/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つばとクラウンから構成される帽子であって、前記クラウンはクラウン前部とクラウン後部を有し、クラウン前部の内側にバンドが設けられ、帽子を被着した状態において、前額部に前記バンドが接触するがクラウン前部は接触しないで、前額部とクラウン前部の間に隙間が形成される帽子において、クラウン前部の内側に内層を設け、前記バンドと前記内層の一端部とを連結し、前記内層の他端部とクラウン後部とを連結することにより、クラウン前部とクラウン後部との間に通気口を設けたことを特徴とする帽子。
【請求項2】
前記クラウン前部とクラウン後部との間に設けた通気口が前記クラウンの上部に設けた上部通気口である請求項1記載の帽子。
【請求項3】
前記クラウン前部が前記内層の中央部のみを覆い、前記内層の両側部を露出させ、前記クラウン前部と前記内層の両側部とを相互に接続しないことによって側部通気口を形成した請求項1または2記載の帽子。
【請求項4】
前記クラウン後部の後方に、さらに前記クラウンを構成するクラウン付加部を有し、前記クラウン後部と前記クラウン付加部とを相互に接続しないことにより、前記クラウン後部と前記クラウン付加部との間に通気口を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通気性帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スライドアジャスタ8を備えた帽子2であって、該スライドアジャスタは合成樹脂製のバンド10とバックル20からなり、前記バンドおよび/または前記バンドに連結された芯材がサイズ元(クラウン最下部)の内側(頭部と接触する面)に露出してなる帽子が記載されている。本発明によれば、バンドおよび/またはバンドに連結された芯材がサイズ元の内側に露出されるので、頭部と帽体の間に隙間が形成され、該隙間から外気が流入するため、本発明に係る帽子の被着者は十分な清涼感を感じることができる。しかしながら、帽子2を被着者の頭部にしっかりフィットさせて被ったような場合には、頭部と帽体の距離が縮まるため、その結果として空気の通り道が確保できなくなり、通気性が悪くなるという問題があった。
【0003】
特許文献2には、スライドアジャスタを備えた帽子であって、該スライドアジャスタは合成樹脂製のバンドとバックルからなり、帽子を被着した状態において、前頭部に前記スライドアジャスタが接触するが帽体前部は接触しないことにより前頭部と前記帽体前部との間に隙間が形成され、前記バックルの押圧部が前記隙間のいずれかの位置において帽子の外側を向くように前記バンドとバックルを頭周り部に固定した帽子が記載されている。本発明によれば、帽体前部と額の間に隙間を確保することができるので、外気が前記隙間より導入されて被着者の額に直接触れるため、清涼感が改善される。しかしながら、特許文献1に記載の発明と同様に、帽子を被着者の頭部にしっかりフィットさせて被ったような場合には、頭部と帽体の距離が縮まるため、その結果として空気の通り道が確保できなくなり、通気性が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−23783号公報
【特許文献2】特開2014−88631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は通気性帽子に関するものであって、帽子を被着者の頭部にしっかりフィットさせて被ったような場合であっても、帽体と頭部の間の隙間を確実なものとすることにより、常に風が帽体内に流入するようにした結果、帽子の被着者がいつでも清涼感を感じることができる帽子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の帽子は、つばとクラウンから構成される帽子であって、クラウンの内側の帽体前部にバンドが設けられ、帽子を被着した状態において、前額部に前記バンドが接触するが前記クラウンは接触しないで、前額部と前記クラウンの間に隙間が形成される帽子において、クラウンの内側に内層を設け、前額部における前記バンドと前記内層の一端部とを連結し、前記クラウンに通気口を設けたことを特徴とする。
【0007】
前記クラウンに設けた通気口が前記クラウンの上部に設けた上部通気口であることが好ましい。
【0008】
前記クラウンに設けた通気口が前記クラウンの両側部に設けた側部通気口であることが好ましい。
【0009】
前記クラウンに設けた通気口が前記クラウンの後部に設けた後部通気口であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る帽子は、前額部におけるバンドと内層の一端部とを連結することによって、前額部とクラウンの間に形成された隙間から導入された空気が、クラウンと内層の間を確実に流れていく構造になるため、被着者の清涼感が改善される。特に、マラソンやゴルフなどのスポーツ競技において、帽子を頭部にしっかりフィットさせたいという競技者の要望があるが、このような場合であってもクラウンと内層の間の隙間が小さくなることは無いので、頭部にしっかりフィットさせながらも通気性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の帽子の断面図(
図1(1))および底面図(
図1(2))である。
【
図2】
図1に示す帽子を被着した状態を示す縦断側面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態を示す帽子の断面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態を示す帽子の平面図(
図4(1))および側面図(
図4(2))である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態を示す帽子の平面図(
図5(1))および側面図(
図5(2))である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る帽子の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(1)は本発明の帽子の断面図、
図1(2)は本発明の帽子の底面図であり、帽子を構成するつば4およびクラウン2が示されている。
【0013】
クラウン2の内側には、バンド5が帽体前部に設けられている。本発明の帽子を被着した状態において、被着者の前額部に前記バンド5が接触するが前記クラウン2は接触しない。これにより、被着者の前額部と前記クラウン2の間に隙間6が形成される。バンド5は、通常、頭周りに設けられる汗止め(すべり)の一部として構成されるが、必ずしも汗止め(すべり)の一部として構成する必要はなく、被着者の前額部と前記クラウン2との間に隙間6を形成することのできる態様であれば良い。したがって、その素材や大きさに格別の制限はなく、例えば、生地でなくても樹脂製のバンド5を用いることも可能である。ただし、バンド5は被着者の前額部に直接触れる部分を構成するため、帽子の被り心地やフィット感を考慮して適宜、その素材や大きさを決定する。
【0014】
前額部と前記クラウン2の間の隙間6について、その大きさや形状に格別の制限はない。隙間6は主に帽体外からの風を帽体内に導入するための通気口としての役割を果たす。隙間6が大きいほど帽体外からの風を帽体内に導入しやすくなるが、外観などを考慮して隙間6の大きさや形状を適宜決定する。帽子の前後方向における、隙間6の最長幅は10mm〜30mmの範囲であることが好ましい。
【0015】
クラウン2の内側には内層3が設けられる。内層3の一端部は、前額部における前記バンド5に連結される。内層3とバンド5の連結方法に格別の制限はなく、縫製や接着により連結しても良いし、ボタンや面ファスナーなどの連結部材を用いても良い。本実施形態では、内層3の一端部とバンド5、内層3の他端部とクラウン2の後部とをそれぞれ縫製により連結している。
内層3はメッシュ地、ベルト状のもの、ハンモック状のものなど、通気性の良い素材、形状のものを用いることが好ましいが、その素材、形状に格別の制限はない。
【0016】
本実施形態において、クラウン2はクラウン2Aと2Bの2枚の生地で構成されており、クラウン2Aと2Bの間に上部通気口7を設けている。より具体的には、クラウン2Aと2Bのそれぞれのカット部分を上下方向にずらして重ねて配置し、当該カット部分を相互に接続しないことにより、上部通気口7を設けている。本実施形態では、クラウン2Aを上方に、クラウン2Bを下方に配置したが、その逆であっても良い。ただし、クラウン2Aを上方に配置した方が、帽体内部に導入された空気がクラウン2Aの内側に沿って上部通気口7から排出されやすくなるので、より通風効果が高まる。
【0017】
本実施形態では、クラウン2をクラウン2Aと2Bの2枚の生地で構成することにより、上部通気口7を形成したが、上部通気口7の形成方法に格別の制限はない。クラウン2の表面に穴を設けることで上部通気口7を形成しても良いし、クラウン2の一部をメッシュ素材などの通気性の良い生地とすることで上部通気口7の役割を持たせることも可能である。上部通気口を設ける際には、太陽光や紫外線、雨などから被着者の頭部を保護することのできる形態になるよう配慮が必要である。
【0018】
本発明によれば、クラウン2と内層3の間に空気の通り道が確保されるため、外気が隙間6から導入されると、クラウン2と内層3の間にある空気の通り道を、隙間6から導入された空気が確実に流れていくので、被着者の清涼感が改善される。特に、帽子を頭部にしっかりフィットさせた場合であっても、クラウン2と内層3の間の空気の通り道が小さくなることは無いので、帽子を頭部にしっかりフィットさせながらも通気性を十分に確保することができる。加えて、内層3が被着者の頭部をホールドする役割を果たすので、帽子のフィット感も向上し、激しい動きを伴うスポーツの場面であっても、帽子が頭部から外れる心配がなく、競技者が競技に集中することが可能になる。
【0019】
また、
図2に示すとおり前記隙間6から帽体内に空気Wが導入されると、クラウン2と内層3の間にある空気の通り道を空気Wが流れ、この空気Wが上部通気口7を介して帽体外に排出される。上部通気口7の位置について、帽子の上部であれば格別の制限はないが、自然対流または強制対流を生みやすいという観点から、クラウン2の頭頂部に設けることが好ましい。暖かい空気は上に上り、冷たい空気は下にたまるという性質を利用し、低い位置から高い位置へ風を通すようにすると通風効果が上がる。
【0020】
続いて、本発明の他の実施形態について、
図3を用いて説明する。
図3には本実施形態における帽子の断面図が示されている。
【0021】
本実施形態において、内層3の一端部とバンド5を連結している点は、
図1および2の実施形態と同じであるが、内層の他端部をクラウン2Bの端部と連結している点が、
図1および2の実施形態とは異なる。内層3の他端部をクラウン2Bの端部に連結することにより、よりシンプルな構造を実現することが可能になる。したがって、本実施形態の帽子は製作が容易であり、コストダウン、軽量化を図ることができる。
【0022】
次に、本発明の別の実施形態について、
図4(1)および(2)を用いて説明する。
図4(1)は本実施形態を示す帽子の平面図であり、
図4(2)は本実施形態を示す帽子の側面図である。
【0023】
本実施形態では、クラウン2の両側部に側部通気口8、8を設けている。したがって、前記隙間6に加えてクラウン2の両側部の側部通気口8、8から帽体内に外気が導入されるので、本発明の帽子の通気性はより高くなる。前記隙間6およびクラウン2の両側部の側部通気口8、8から導入された外気は、クラウン2Aの内側に沿って上部通気口7から排出される。本実施形態では、クラウン2A、2Bが内層3の中央部のみを覆い、内層3の両側部を露出させ、クラウン2A、2Bと内層3の両側部を相互に接続しないことによって側部通口8、8を形成しているが、側部通気口8、8の形成方法に格別の制限はない。
【0024】
次に、本発明のさらに別の実施形態について、
図5(1)および(2)を用いて説明する。
図5(1)は本実施形態を示す帽子の平面図であり、
図5(2)は本実施形態を示す帽子の側面図である。
【0025】
本実施形態では、クラウン2をクラウン2A、2B、2Cの3枚の生地で構成することにより、上部通気口7に加えて、後部通気口9を設けている。より具体的には、クラウン2A、2B、2Cのそれぞれのカット部分を上下方向にずらして重ねて配置し、当該カット部分を相互に接続しないことにより、上部通気口7および後部通気口9を設けている。本実施形態では、クラウン2Aを上方に、クラウン2Bをその下方に配置し、クラウン2Cをクラウン2Bの下方に配置しているが、これらクラウン2の生地の配置方法に格別の制限はなく、帽体内に導入された空気がクラウン2A、2Bの内側に沿って上部通気口7および後部通気口9から排出されやすい形態となっていれば良い。
【0026】
本実施形態において、前記隙間6および側部通気口8、8から帽体内に空気Wが導入されると、クラウン2と内層3の間にある空気の通り道を空気Wが流れ、この空気Wが上部通気口7および後部通気口9を介して帽体外に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上、通気性に関する帽子の実施形態について説明したが、本発明に係る帽子は、キャップだけではなく、ハンチング、キャスケットなど、幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
2 クラウン
3 内層
4 つば
5 バンド
6 隙間
7 上部通気口
8 側部通気口
9 後部通気口
【要約】
【課題】 本発明は通気性帽子に関するものであって、帽子を被着者の頭部にしっかりフィットさせて被ったような場合であっても、帽体と頭部の間の隙間を確実なものとすることにより、常に風が帽体内に流入するようにした結果、帽子の被着者がいつでも清涼感を感じることができる帽子を提供する。
【手段】 本発明の帽子は、つばとクラウンから構成される帽子であって、クラウンの内側の帽体前部にバンドが設けられ、帽子を被着した状態において、前額部に前記バンドが接触するが前記クラウンは接触しないで、前額部と前記クラウンの間に隙間が形成される帽子において、クラウンの内側に内層を設け、前額部における前記バンドと前記内層の一端部とを連結し、前記クラウンに通気口を設けたことを特徴とする。
【選択図】
図1