(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、床下に排水ヘッダーを配置し、この排水ヘッダーに浴室、洗面台、台所等の水設備からの排水枝管を接続すると共に、この排水ヘッダーに接続した下流側排水管を家屋の基礎を貫通させて屋外に導出するようにした排水システムが好適に施工されるようになってきた。このような排水システムは、各水設備からの排水を排水ヘッダーに合流させ、基礎を貫通する下流側排水管を通じて一括して屋外に排出するため、各水設備からの排水を別々に屋外に排水する従来の排水システムに比べると、屋外に設置する排水桝の個数を大幅に削減してコストダウンを図ることができるものである。
【0003】
上記排水システムに用いられる排水ヘッダーの流入口には、通常、浴室等の水設備からの排水枝管が接続されるが、排水ヘッダーには複数の流入口が設けられているので、使用していない流入口には蓋部材が取付けられて閉塞されている。また、排水ヘッダーの内部を点検するための点検口も、普段は蓋部材によって閉塞されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
排水ヘッダーの流入口や点検口への蓋部材の取付けは、主に次の3つの方法で行われる。
(1)枝管流入口内にパッキンを介して蓋部材を嵌挿すると共に、蓋部材の開口外縁に形成された円環状の鍔部を流入口の開口端に当接させて固定する方法。
(2)排水ヘッダーの流入口や点検口にボルトを設けると共に、蓋部材のフランジに挿通孔を設け、蓋部材の挿通孔に排水ヘッダーのボルトを挿通して、ボルトとナットによって固定する方法。
(3)蓋部材に雌ネジを形成すると共に、排水ヘッダーの流入口や点検口に雄ネジを形成して、それらを螺合することによって固定する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(1)のパッキンを介して蓋部材を嵌挿固定したものは、排水ヘッダーの内部に大きな圧力が発生した際に、蓋部材が脱落してしまい、漏水してしまう恐れが生じるものであった。
また、上記(2)のボルトとナットにより固定したものは、ボルトとナットといった別部材を用いる必要があるので、専用の工具が必要となって施工性が良くなく、特に、メンテナンス時は、床下の狭い空間で蓋部材の脱着作業を行う必要が有るので、きちんとナットを締め込むことが困難で、もし、ボルトとナットに緩みが発生すると、そこから漏水に繋がる恐れもあった。
同様に、上記(3)の雄ネジと雌ネジの螺合により固定したものも、蓋部材を最後まで締め込む作業が手間であり、そこから緩みが発生して、漏水に繋がる恐れのあるものであった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、管部材の開口部に、蓋部材を容易に取付けて確実に固定することができ、種々の振動や圧力によって蓋部材が緩んだり脱落したりする恐れのない、蓋部材の取付け構造とそれに用いる蓋部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る蓋部材の取付け構造は、管部材の開口部を閉塞する蓋部材の取付け構造であって、蓋部材に係止部又は/及び被係止部が形成されていると共に、該係止部又は/及び被係止部と係止する被係止部又は/及び係止部が、管部材の開口部近傍
の外周面に形成されており、上記蓋部材の係止部又は/及び被係止部と、管部材の被係止部又は/及び係止部とが係止することで、蓋部材が管部材の開口部に取付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の排水ヘッダーの蓋部材取付け構造においては、管部材が複数の流入口及び点検口(以下、流入口等という。)を有する排水ヘッダーであり、蓋部材が係止部又は/及び被係止部と係止する被係止部又は/及び係止部が、該流入口等に形成されており、上記蓋部材の係止部又は/及び被係止部と、流入口等の被係止部又は/及び係止部とが係止することで、蓋部材が排水ヘッダーの流入口等の開口部に取付けられていることが好ましい。また、蓋部材の係止部又は/及び被係止部が、蓋部材外周の後端から管部材に向って延出されて形成されていると共に、管部材の被係止部又は/及び係止部が、管部材の外周面に形成されており、管部材の開口部に蓋部材を取付けた状態において、蓋部材の係止部又は/及び被係止部と流入口等の被係止部又は/及び係止部が、管部材の外周面側に位置することが好ましい。特に、係止部がL字状の
突設片であって、被係止部が凸部であり、管部材の開口部に蓋部材を当接させて蓋部材を回転させると係止部と被係止部が係止し、かつ前記係止部が前記回転の方向にL字状に屈曲していることが好ましい。また、係止部と被係止部の係止状態が外れるのを防止する外れ止めが、係止部又は/及び被係止部に形成されていることがより好ましい。
【0010】
次に本発明の蓋部材は、管部材の開口部を閉塞する蓋部材であって、管部材の開口部近傍に形成された被係止部又は/及び係止部と係止する係止部又は/及び被係止部が、蓋部材外周の後端から管部材に向って延出されて形成されており、管部材の開口部に蓋部材を取付けた状態において、蓋部材の係止部又は/及び被係止部が、管部材の外周面側に位置し、前記係止部がL字状の
突設片であって、被係止部が凸部であり、管部材の開口部に蓋部材を当接させて蓋部材を回転させると係止部と被係止部が係止し、
前記係止部が前記回転の方向にL字状に屈曲していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓋部材の取付け構造は、従来の上記(1)〜(3)の方法とは異なり、蓋部材に形成された係止部又は/及び被係止部と、管部材の開口部近傍に形成された被係止部又は/及び係止部とを係止させることで、蓋部材を管部材の開口部に取付けるという構成を採用することで、簡単且つ確実に蓋部材を管部材の開口部に取付けることができる。また、このような係止部と被係止部による係止構造を採ることで、種々の振動や圧力によって蓋部材が緩むことはないし、容易に外れてしまう心配もない。
【0012】
また、管部材が複数の流入口及び点検口(以下、流入口等という。)を有する排水ヘッダーであり、蓋部材の係止部又は/及び被係止部と係止する被係止部又は/及び係止部が、該流入口等に形成されており、上記蓋部材の係止部又は/及び被係止部と、流入口等の被係止部又は/及び係止部とが係止することで、蓋部材が排水ヘッダーの流入口等の開口部に取付けられている蓋部材の取付け構造のように、各水設備からの排水を合流させて、屋外に設置する排水桝の個数を大幅に削減してコストダウンを図ることができる排水ヘッダーの流入口等に、本発明の上記の優れた効果を奏する取付け構造を採用すると、床下の狭い空間でも、使用されていない流入口等を、迅速且つ確実に閉塞することができる。特に、この排水ヘッダーの内部は、各水設備からの排水が合流するため圧力変動が起こりやすく、蓋部材が脱落し易いので、本発明のように、蓋部材が脱落する恐れのない取付け構造の採用は非常に好ましい。
【0013】
更に、蓋部材の係止部又は/及び被係止部が、蓋部材外周の後端から管部材に向って延出されて形成されていると共に、管部材の被係止部又は/及び係止部が、管部材の外周面に形成されており、管部材の開口部に蓋部材を取付けた状態において、蓋部材の係止部又は/及び被係止部と流入口等の被係止部又は/及び係止部が、管部材の外周面側に位置する蓋部材の取付け構造は、管部材の外側から係止部と被係止部の係止状態を視認することができるので、蓋部材の取付けが確実なものとなり、施工性が向上する。
【0014】
特に、係止部がL字状の
突設片であって、被係止部が凸部であり、管部材の開口部に蓋部材を当接させて蓋部材を回転させると係止部と被係止部が係止する蓋部材の取付け構造は、係止部と被係止部を上記のような形状にすることで、係止がより確実なものとなり、管部材の内部からの圧力によって、蓋部材が脱落する心配は皆無に等しくなる。
【0015】
また、係止部と被係止部の係止状態が外れるのを防止する外れ止めが、係止部又は/及び被係止部に形成されている蓋部材の取付け構造は、種々の振動によって係止部と被係止部の係止状態が外れることがなくなる。
【0016】
次に、本発明の蓋部材は、管部材の開口部近傍に形成された被係止部又は/及び係止部に係止する係止部又は/及び被係止部を、蓋部材の外周に形成することで、管部材の開口部に蓋部材を係止させて取付ける係止構造を採用することができるようになる。従って、蓋部材を、簡単且つ確実に管部材の開口部に取付けることができると共に、種々の振動や圧力によって蓋部材が緩むことはないし、容易に外れてしまう心配もなくなる。また、係止部と被係止部を、蓋部材外周の後端から管部材に向って延出して形成し、更に、前記係止部がL字状の
突設片であって、被係止部が凸部であり、管部材の開口部に蓋部材を当接させて蓋部材を回転させると係止部と被係止部が係止し、前記係止部が前記回動の方向にL字状に屈曲している構成とすることで、管部材の外側から係止部と被係止部の係止状態を視認することができるので、確実に蓋部材を取付けることができるようになり、施工性も良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
本発明の蓋部材の取付け構造は、
図1、
図6に示すように、家屋の床下の土間コンクリート5に配置され、浴室、洗面台、台所等の水設備(不図示)から排水を合流させて、下流側排水管4を経て屋外排水桝6へ排水する排水ヘッダーHの、流入口1a,1c及び点検口1dの開口部を蓋部材2によって閉塞するものである。
【0020】
この排水ヘッダーHは、排水の流れが良好な卵形の断面形状を有する合成樹脂製の横筒体であって、
図1に示すように、その上流側端部には上流側排水管3を接続する流入口1aが設けられ、下流側端部には下流側排水管4を接続する流出口1bが設けられ、両側面には排水枝管(不図示)を接続する複数の流入口1c,1cが設けられている。これら流入口1a,1cはいずれも、その上端が排水ヘッダーHの上端と略同一の高さとなるように上方に偏位して設けられており、排水ヘッダーHの内部の水位が上昇しても、流入口1a,1cに接続される上流側排水管や排水枝管が閉塞されないようになっている。一方、下流側端部の流出口1bは、これに接続される下流側排水管4の内底面の最下部と排水ヘッダーHの内底面の最下部とが同じ高さとなるように、下方に偏位して設けられており、排水が排水ヘッダーHの底部に滞溜することなく全て下流側排水管4に流出するようになっている。また、この排水ヘッダーHの上面には複数の点検口1d,1dが形成され、後述する蓋部材2が脱着自在に取付けられている。
【0021】
上記の排水ヘッダーHは、合成樹脂で一体成形されたものではなく、合成樹脂で成形された複数のヘッダー用継手1,1を接合一体化して組立てられている。このヘッダー用継手1は、卵形の断面形状を有する短尺筒体の一端側(上流側)に受口1fを形成し、短尺筒体のいずれか片側面に排水枝管の流入口1cを上方に偏位させて形成すると共に、短尺筒体の上面に点検口1dを形成して蓋部材2を取付けたものであり、ヘッダー用継手1の受口1fに、隣接する上流側のヘッダー用継手1の他側端(下流側)の端部を差し込んで接着剤で水密的に接続すると共に、一番上流側のヘッダー用継手1の受口1fに上記の上流側排水管の流入口1aを差し込んで接着剤で水密的に接続し、一番下流側のヘッダー用継手1の端部に流出口1bを差し込んで接着剤で水密的に接続することにより、排水ヘッダーHが組立てられている。
【0022】
上記のように、排水ヘッダーHは、ヘッダー用継手1の接続個数を増減することによって、排水枝管の流入口1cを所望数備えた排水ヘッダーHを組立てることができ、また、片側面に流入口1cが形成されたヘッダー用継手1と、反対側面に流入口1cが形成されたヘッダー用継手1との組合せ方によって、片側面のみに流入口1cを有する排水ヘッダーHや、両側面に所望数の流入口1cを有する排水ヘッダーHを組立てることができる。
【0023】
上記のように、ヘッダー用継手1,1同士を接合することで、複数の排水枝管の流入口1cを有する排水ヘッダーHが組立てられるが、その中には使用しない排水枝管の流入口1cが出てくる場合がある。また、配管の取り回しの関係上、上流側排水管3を排水枝管の流入口1cに接続する場合もある。このような場合、使わない流入口1a,1cの開口部を閉塞する必要がある。また、点検口1dは、その開口部より排水ヘッダーHの内部の点検、メンテナンスをするものであり、通常、その開口部は閉塞されている。そこで、これら使わない流入口1a,1cや点検口1dの開口部を閉塞するために、次に説明する蓋部材2を用いる。
【0024】
即ち、蓋部材2は、
図2、
図4に示すように、円筒体の前端(排水ヘッダーH側)が閉塞されたキャップ本体2aと、キャップ本体2aの後端部(排水ヘッダーHの反対側)に周設されたフランジ部2bと、フランジ部2bに形成された係止部2cと、フランジ部2bの端面に設けられた棒状突起2dと、キャップ本体2aの周面に周設されたパッキン嵌着溝2eと、そのパッキン嵌着溝2eに嵌着された防水パッキン2fとを備える。
【0025】
キャップ本体2aは、
図4に示すように、その外径が、上流側排水管3の流入口1a、排水枝管の流入口1c、点検口1dの内径に略等しくなるように形成されたもので、このキャップ本体2aを、流入口1a,1cや点検口1dの開口部に挿入することにより、その周面のパッキン嵌着溝2eに嵌着された防水パッキン2fが、流入口1a,1cや点検口1dの内周面に密着して、良好な止水性が実現されている。
尚、蓋部材2の端面(裏面側)と流入口1aの端面によって確実に止水できる場合は、必ずしも上記キャップ本体2aは必須の構成要素ではない。
【0026】
上記キャップ本体2aの後端部(排水ヘッダーHの反対側)に周設されたフランジ部2bは、
図4に示すように、蓋部材2を流入口1aの開口部に挿入した際に、流入口1aの上流側端面と当接して、蓋部材2が排水ヘッダーHの内部に入り込むのを防止する役割を果たす。このフランジ部2bは、
図2に示すように、完全な円形状をしたものではなく、一方の側縁とそれに対面する側縁が直線的に截断されている(
図2でいうフランジ部2bの上側縁と下側縁)。このフランジ部2bの側縁が截断された部分は流入口1aの外径に略等しく、截断されていない円弧状の部分の直径は、流入口1aの直径よりも大きくなっている。そして、この直径の大きい円弧部の排水ヘッダーH側の端面より次に説明する係止部2cが形成されている。
【0027】
図3、
図5の(a)に示すように、係止部2cは、上記フランジ部2bの排水ヘッダーHの流入口1a側の端面より流入口1aに向って延出されて形成されたL字状の突設片であって、フランジ部2bの直径の大きい円弧部にそれぞれ1つずつ、合計2つ形成されている。この係止部2cは、上記排水ヘッダーHの上流側排水管3の流入口1aや排水枝管の流入口1cや点検口1dに形成された被係止部1eと係止することで、蓋部材2を流入口1a,1cや点検口1dに確実に取付けることができるようにするものである。
【0028】
上記蓋部材2の係止部2cと係止する被係止部1eは、
図1、
図3、
図5の(a)に示すように、流入口1a,1c及び点検口1dの外周面からそれぞれ外側に向って突設された略立方体の凸部であって、この被係止部1eの2側面が上記L字状の係止部2cの内側の2面と当接して係止することで、蓋部材2が流入口1a,1cや点検口1dに外れることなく取付けられる。
【0029】
次に、上記係止部2cが形成されたフランジ部2bの反対側の端面には、
図2、
図3に示すように、4本の棒状突起2dが設けられている。この棒状突起2dは、フランジ部2bの径の大きい円弧部に2本と、その対角線状に位置する径の大きい円弧部に2本が設けられており、一方の棒状突起2d,2dの間に棒やドライバーなどの工具を通すと共に、もう一方の棒状突起2d,2dの間にも工具を通して、棒状突起2dに工具を引っ掛けて回転させることで、上記蓋部材2の係止部2cと流入口1aの被係止部1eを係止させたり、その係止を解除したりして、容易に蓋部材2を取付けたり取外したりできるようになっている。
【0030】
即ち、蓋部材2を排水ヘッダーHの流入口1aに取付けるには、
図3の(a)に示すように、流入口1aの開口部に蓋部材2のキャップ本体2aを挿入する。流入口1aの開口部に蓋部材2のキャップ本体2aを挿入すると、フランジ部2bに設けられた1対の棒状突起2d,2dに工具を引っ掛けて、
図3の(b)に示すように、蓋部材2を反時計回りに僅かに回転させる。このように蓋部材2を反時計回りに回転させると、
図3の(c)に示すように、蓋部材2の係止部2cが流入口1aの被係止部1eに係止して、蓋部材2を僅かに回転させるだけで容易に排水ヘッダーHの流入口1aに蓋部材2を取付けることができる。上記の工程で蓋部材2を排水ヘッダーHの流入口1aに取付けると、係止部2cはフランジ部2bの直径が大きい円弧部に形成されているので、係止部2cが流入口1aの外周面側に位置する。従って、排水ヘッダーHーの外側から係止部2cと被係止部1eの係止状態を一目で視認することができるので、取付けたつもりでも係止部2cと被係止部1eが係止していないという失敗を回避することができる。また、係止部2cと被係止部1eを上記形状にすることで、排水ヘッダーHの内部からの圧力によって、排水ヘッダーHから蓋部材2の方向に力(蓋部材2が脱落する方向の力)が作用しても、係止部2cのL字状の内側2面と、被係止部1eの2面(
図3では上側面と左側面)が確実に密接して係止(特に
図3でいう係止部2cの屈曲部から先端に延びる内側面と被係止部1eの左側面)しているので、蓋部材2が脱落する心配は皆無に等しくなる。特に、この排水ヘッダーHの内部は、各水設備からの排水が合流するため圧力変動が非常に起こりやすく、蓋部材2が脱落する恐れのない本発明の採用は非常に好ましい。
尚、ここでは排水ヘッダーHの流入口1aに蓋部材2を取付ける方法を説明したが、排水枝管の流入口1cや点検口1dの開口部に蓋部材2を取付ける場合も同様の手順で行う。
また、排水枝管の流入口1cや点検口1dに取付ける蓋部材2も上記上流側排水管3の流入口1aに取付ける蓋部材2と同様であるが、排水枝管の流入口1cや点検口1dと上流側排水管3の流入口1aの直径が異なることがある。その場合は、それに合わせて蓋部材2の大きさは変化するが、その構成は同様である。
【0031】
上記のように、本発明は、蓋部材2のキャップ本体2aを流入口1aに挿入し、蓋部材2を反時計回りに僅かに回転させるという容易な作業で、蓋部材2を排水ヘッダーHの流入口1aの開口部に取付けることができるものであるが、係止部2cが単にL字状の突設片であると、上記のように排水ヘッダーHの内部からの圧力には強いとはいうものの、振動等によって蓋部材2に時計回りの力が作用すると、係止部2cと被係止部1eの係止状態が解除される恐れがある(当然の如く係止部2cの形状により反時計回りの力で係止状態が解除されることはない)。そこで本発明の蓋部材2の係止部2cには、
図5の(a)に示すように、外れ止め20cが形成されている。この外れ止め20cは、係止部2cの内側面の先端部(フランジ部2bと反対側の端部)に、フランジ部2bの方向に向って形成された突部であって、この外れ止め20cが被係止部1eに当接することにより、振動等によって蓋部材2に時計回りの力が作用しても、係止部2cと被係止部1eの係止状態が解除されるのを確実に防止している。これを更に詳述すると、この外れ止め20cは、蓋部材2を流入口1aの開口部に挿入した際の外れ止め20cからフランジ部2bまでの距離が、被係止部1eの排水ヘッダーH側の面からフランジ部2bまでの距離よりも短くなる位置に形成されており、また、係止部2cと被係止部1eを係止させる際、最初に当接する箇所に形成されている。従って、係止部2cと被係止部1eを係止させるには、まず外れ止め20cが被係止部1eを乗り越えていく必要があり、それには相応の力が必要となる。そして、相応の力を加えると、係止部2cが外側に向って弾性変形して被係止部1eを乗り越え、外れ止め20cが被係止部1eを通過すると、再び復元力により元の形状に戻って係止部2cと被係止部1eは係止する。その逆に、係止部2cと被係止部1eの係止状態を解除するには、再びこの外れ止め20cが被係止部1eを乗り越える必要があるので、上記と同等の力が必要(外れ止め20cの内側面の傾斜角を大きくすることで、相応の力以上を必要とすることもできる。)となり、それ以下の力では係止部2cと被係止部1eの係止状態が解除されることはない。この相応の力とは、通常想定される振動等により作用する力よりも遥かに大きいので、蓋部材2に対して時計回りの方向に力が作用したとしても、係止部2cと被係止部1eの係止状態が解除されることはなく、蓋部材2が脱落する心配は皆無に等しくなる。
【0032】
尚、蓋部材2の係止部2cは、流入口1a,1cや点検口1dの被係止部1eと確実に係止するのであれば、上記のように、L字状の突設片に限定されるものではなく、例えば、
図5の(b)に示すようなL字状に切欠かれた係止部2cであってもよいし、或いは、L字状の溝を係止部2cとしてもよい。
【0033】
また、係止部2cに形成された外れ止め20cも、上記の形状に限定されるものではなく、
図5の(b)に示すように、略半円球状に形成された突起であってもよい。更に、
図5の(c)に示すように、被係止部1eに外れ止め20cを形成し、この外れ止め20cを係止部2cに設けた凹部に嵌合するようにして、係止部2cと被係止部1eの係止状態が解除されるのを防止してもよい。
【0034】
更に、上記の実施形態では、蓋部材2に係止部2cを形成しているが、排水ヘッダーHの流入口1a,1cや点検口1dに係止部を形成し、蓋部材2に被係止部を形成してもよく、蓋部材2と流入口1a,1c及び点検口1dに係止部と被係止部の双方を形成してもよい。
【0035】
図7は本発明の他の実施形態に係る蓋部材の取付け構造を示す分解正面図である。
【0036】
本発明の蓋部材の取付け構造は、上記のように、排水ヘッダーHの流入口1a,1cや点検口1dの開口部にのみ採用されるものではなく、例えば
図7に示すような宅地内に埋設された配管設備や、
図6に示す屋外排水桝6の開口部にも適用し得るものである。
【0037】
この
図7に示す宅地内に埋設された配管設備は、宅地内に上流側排水管7、下流側排水管8、排水桝11等が埋設されており、家屋の屋根や宅地内に降った雨水を集水して、公共の下水道設備に導いたりするものである。
【0038】
宅地内に埋設される排水桝11は、
図7に示すように、左右両端部に上流側排水管7と下流側排水管8を挿入する筒状の流入口11bと流出口11cが一体に設けられていると共に、上端部に円形の開口部を有する点検口11aが突設された略逆T字型の合成樹脂製の排水桝11であって、この点検口11aには、高さ調整筒10が嵌入されるようになっている。
【0039】
この高さ調整筒10は、その上側開口部に取付けられる蓋部材20を地表に臨ませるための合成樹脂製の円筒体であって、
図7に示すように、高さ調整筒10の外周面の上端部には、前述した
図1〜
図6に示すのと同様の被係止部1eが相対面する位置に2つ設けられており、この被係止部1eと、次に説明する蓋部材20の係止部2cとが係止することによって、蓋部材20が高さ調整筒10の上側開口部に脱着自在に取付けられている。
【0040】
上記高さ調整筒10に取付けられる蓋部材20は、
図7に示すように、レジンコンクリートや合成樹脂で成形された蓋部材本体20Aと、合成樹脂製のアジャスター20Bからなるもので、アジャスター20Bの上部開口端面に蓋部材本体20Aの裏面縁部を載置するようになっている。このアジャスター20Bの下端部には、上記高さ調整筒10の被係止部1eと係止する係止部2cが2つ形成されている。この係止部2cは、前述した
図5の(b)に示すのと同様のL字状の切欠きであって、その内側面の屈曲部近傍には、上記と同様の外れ止め20cが形成されている。そして、アジャスター20Bの係止部2cの挿入口より高さ調整筒10の被係止部1eを挿入し、相応の力を加えてアジャスター20Bを少し回転させる(この場合は時計回り)と、この外れ止め20cが被係止部1eを乗り越えて、係止部2cと被係止部1eは強固に係止するようになっている。
この
図7に示す蓋部材の取付け構造のその他の構成は、前述した
図1〜
図6に示す実施形態と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0041】
本実施形態の蓋部材の取付け構造は、上記のように、排水桝11の点検口11aに嵌入される高さ調整筒10の上側開口部に、蓋部材20を簡単且つ確実に取付けたものであり、これにより、アジャスター20Bに載置された蓋部材本体20Aのみを取外すだけで、排水桝11の内部を点検・メンテナンスできるようになっている。
尚、蓋部材本体20Aとアジャスター20Bは一体に形成されていてもよく、そのように一体に形成した場合は、宅地内の配管設備の圧力変動によって蓋部材20が外れる方向の力(この場合は上方に向う力)が作用しても、蓋部材20が外れてしまう恐れがなくなる。
【0042】
以上、種々の態様を詳述してきたが、本発明の蓋部材の取付け構造は、これらに限定されるものではなく、開口部を有する管部材を蓋部材によって閉塞するものであれば、これら以外にも適用可能な技術であることは言うまでもない。