【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムから一部のフィルムを剥離する積層フィルムの剥離装置であって、
吸着部を有し、当該吸着部に前記積層フィルムを吸着させて搬送する第1搬送部と、
前記積層フィルムを間に挟んで前記吸着部と対向する位置に、当該吸着部から所定間隔設けて配置される対向部と、
前記積層フィルムの内、前記吸着部に接しているフィルムを少なくとも残して他のフィルムを反転させる(折り返えさせる)ことで、前記吸着部に接しているフィルムが他のフィルムから剥離される剥離点が可動可能に配置される、かつ前記吸着部と前記対向部との間で形成される剥離領域と、
前記第1搬送部による前記積層フィルムの進行方向に対し逆方向に、前記他のフィルムを搬送する第2搬送部と、を有する。
【0009】
この構成によれば、剥離領域内で、吸着部に接しているフィルム(例えば、セパレータ、樹脂基材)を少なくとも残して他のフィルム(例えば、光学フィルム、薄型偏光膜、偏光フィルムなど)を反転させる(折り返えさせる)ことで、吸着部に接しているフィルムが他のフィルムから剥離される(このような剥離されるポイントを剥離点という)。これにより、吸着部および対向部のそれぞれの面の間に挟んで、剥離されたフィルムを反転させることで形成した曲面(曲率半径R)を強制的に作り込むことができ、残渣のない綺麗な剥離が可能となる。
【0010】
本発明において「吸着部」は、積層フィルムを吸引して吸着搬送する手段であり、例えば、バキューマに接続された吸着ベルト、吸引板などが挙げられる。
【0011】
吸着部から対向部までの所定間隔は、2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上6mm以下である。所定間隔が20mmを越えるように間隔が広すぎると、剥離角度が得られず残渣が発生する虞がある。所定間隔が2mm未満のように間隔が狭すぎると、フィルムの接触などハンドリングの問題が発生する虞がある。また、曲率半径Rは、1mm以上10mm以下、好ましくは1.5mm以上3mm以下である。曲率半径Rが10mmを越えると上記所定間隔E2が広すぎるのと同様に、剥離角度が得られず残渣が発生する虞がある。曲率半径Rが1mm未満だと上記所定間隔E2が狭すぎるのと同様に、フィルムの接触などハンドリングの問題が発生する虞がある。
【0012】
上記発明の一実施形態として、前記吸着部の吸着面に対して平行に前記対向部が配置される。
【0013】
上記発明の一実施形態として、前記吸着部の吸着面に対して非平行に配置され、かつ前記第2搬送部による前記他のフィルムの搬送方向に沿うように前記対向部が配置される。
【0014】
上記発明の一実施形態として、前記対向部が、少なくとも一対のロールと、当該一対のロールに張架された回転可能なベルトを有して構成されている。また、前記ベルトが、吸着孔を有し、かつ当該吸着孔からの吸引によって前記他のフィルムを吸着させて搬送する吸着ベルトであることが好ましい。吸着ベルトは、バキューマに接続される。吸着部と対向部との両方を吸着機能を備えることで、フィルムの搬送ズレも生じず、対向部との摩擦でフィルム面がキズを生じることもないため好ましい。
【0015】
また上記発明の一実施形態として、前記対向部が、板状である。対向部の材料は、特に制限されず、例えば、表面の摩擦抵抗が小さい、滑らかな金属材料、樹脂材料などが挙げられる。
【0016】
また上記発明の一実施形態として、
前記剥離点を検出する検出部と、
前記検出部で検出された剥離点の位置が、前記剥離領域内あるいは当該剥離領域よりも小さい所定範囲内にあるか否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、前記第1搬送部のフィルム搬送速度および/または前記第2搬送部のフィルム搬送速度を制御する第1速度制御部と、をさらに有する。
【0017】
この構成によって、剥離領域内または所定範囲内に剥離点が存在するように、第1搬送部のフィルム搬送速度および第2搬送部のフィルム搬送速度の内、両方またはいずれか一方を制御する。第1搬送部による積層フィルム(および一部のフィルムが剥離された後の積層フィルム)の搬送速度と、第2搬送部による剥離された他のフィルムの搬送速度とを同じ速度に制御することが好ましい。また、上記制御方法として、剥離点の位置を検出し、剥離点が剥離領域内または所定範囲内に存在するように、一方の速度を一定にし、他方を速くまたは遅くすることが好ましい。
【0018】
「剥離領域よりも小さい所定範囲内」は、例えば、剥離領域の境界からの余裕値に基づいて設定される。余裕値は、実験値や実稼働から設定することができ、また、搬送ロールを回転させる回転モータ、検出部、速度制御部などの各種処理速度も考慮される。
【0019】
検出部は、例えば、所定エリアを撮像する1つの撮像部と、当該撮像部で得られた画像を解析して剥離点を認識する画像解析部とを有する。そして判断部が、前記認識された剥離点の位置が剥離領域内または所定範囲内にあるか否かを判断する。また、検出部として、例えば、フィルム搬送方向に沿って、剥離領域の境界位置に2つまたは剥離領域の境界位置よりも内側の狭い範囲に2つのセンサ(例えば、エリア、ライン、ポイントなど)を配置させてもよい。例えば、判断部は、2つの内いずれか一方のセンサの検知結果(ON、OFF)に基づいて、剥離領域内または所定範囲内に剥離点が存在するか否かを判断する。
【0020】
また上記発明の一実施形態として、
前記剥離点を検出する検出部と、
前記検出部で検出された剥離点の位置が、前記剥離領域内あるいは当該剥離領域よりも小さい所定範囲内にあるか否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて、前記第1搬送部のフィルム搬送速度、前記第2搬送部のフィルム搬送速度および前記対向部のベルトの回転速度の内いずれか1つまたは2つ以上を制御する第2速度制御部と、をさらに有する。
【0021】
この構成によって、剥離領域内または所定範囲内に剥離点が存在するように、第1搬送部のフィルム搬送速度、第2搬送部のフィルム搬送速度および対向部のベルトの回転速度の内、一つまたは2つ以上を制御する。第1搬送部による積層フィルム(および一部のフィルムが剥離された後の積層フィルム)の搬送速度と、第2搬送部による剥離された他のフィルムの搬送速度と、対向部のベルトの回転速度とを同じ速度に制御することが好ましい。
【0022】
また上記発明の一実施形態として、前記第2搬送部で搬送される前記他のフィルムの厚みが、10μm以下である。
【0023】
また上記発明の一実施形態として、前記積層フィルムが、光学フィルムを含む。
【0024】
また上記発明の一実施形態として、前記積層フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂層を一方面に形成した樹脂基材を少なくとも延伸することで得られた偏光膜と、前記樹脂基材とを有する積層フィルムである。
【0025】
また、他の本発明は、2層以上のフィルムが積層された積層フィルムから一部のフィルムを剥離する積層フィルムの剥離方法であって、
前記積層フィルムを吸着する吸着部と、
前記積層フィルムを間に挟んで前記吸着部と対向する位置に、当該吸着部から所定間隔設けて配置される対向部と、
前記積層フィルムの内、前記吸着部に接しているフィルムを少なくとも残して他のフィルムを反転させる(折り返えさせる)ことで、前記吸着部に接しているフィルムが他のフィルムから剥離される剥離点が可動可能に配置される、かつ前記吸着部と前記対向部との間で形成される剥離領域と、を有し、
前記吸着部に前記積層フィルムを吸着させて搬送する第1搬送工程と、
前記剥離領域で、前記吸着部に接しているフィルムを他のフィルムから剥離する剥離工程と、
前記第1搬送部による前記積層フィルムの進行方向に対し逆方向に、前記他のフィルムを搬送する第2搬送工程と、を含む。
【0026】
この構成によれば、剥離領域内で、吸着部に接しているフィルム(例えば、セパレータ、樹脂基材)を少なくとも残して他のフィルム(例えば、光学フィルム、薄型偏光膜、偏光フィルムなど)を反転させる(折り返えさせる)ことで、吸着部に接しているフィルムが他のフィルムから剥離される(このような剥離されるポイントを剥離点という)。これにより、吸着部および対向部のそれぞれの面の間に挟んで、剥離されたフィルムを反転させることで形成した曲率半径Rを強制的に作り込むことができ、残渣のない綺麗な剥離が可能となる。
【0027】
上記発明の一実施形態として
前記剥離点を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された剥離点の位置が、前記剥離領域内あるいは当該剥離領域よりも小さい所定範囲内にあるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程の判断結果に基づいて、前記第1搬送工程のフィルム搬送速度および/または前記第2搬送工程のフィルム搬送速度を制御する第1速度制御工程と、をさらに含む。
【0028】
この構成によって、剥離領域内または所定範囲内に剥離点が存在するように、第1搬送工程のフィルム搬送速度および第2搬送工程のフィルム搬送速度の内、両方またはいずれか一方を制御する。第1搬送工程による積層フィルム(および一部のフィルムが剥離された後の積層フィルム)の搬送速度と、第2搬送工程による剥離された他のフィルムの搬送速度とを同じ速度に制御することが好ましい。また、上記制御方法として、剥離点の位置を検出し、剥離点が剥離領域内または所定範囲内に剥離点が存在するように、一方の速度を一定にし、他方を速くまたは遅くすることが好ましい。
【0029】
上記発明の一実施形態として
前記剥離点を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された剥離点の位置が、前記剥離領域内あるいは当該剥離領域よりも小さい所定範囲内にあるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程の判断結果に基づいて、前記第1搬送工程のフィルム搬送速度、前記第2搬送工程のフィルム搬送速度および前記対向部を構成するベルトの回転速度の内いずれか1つまたは2つ以上を制御する第2速度制御工程と、をさらに含む。
【0030】
この構成によって、剥離領域内または所定範囲内に剥離点が存在するように、第1搬送工程のフィルム搬送速度、第2搬送工程のフィルム搬送速度および対向部のベルトの回転速度の内、一つまたは2つ以上を制御する。第1搬送工程による積層フィルム(および一部のフィルムが剥離された後の積層フィルム)の搬送速度と、第2搬送工程による剥離された他のフィルムの搬送速度と、対向部のベルトの回転速度とを同じ速度に制御することが好ましい。
【0031】
また、他の本発明は、
ポリビニルアルコール系樹脂層を一方面に形成した樹脂基材を少なくとも延伸して偏光膜を樹脂基材上に形成する偏光膜形成工程と、
前記樹脂基材から前記偏光膜を剥離する剥離工程と、
前記樹脂基材から剥離された偏光膜に、光学フィルムおよび/または保護フィルムを直接または接着剤層を介して積層し光学フィルム積層体を得る積層体作製工程と、を含み、
前記剥離工程は、上記剥離装置を用いてまたは上記剥離方法を用いて、前記樹脂基材から前記偏光膜を剥離することを特徴とする光学フィルム積層体の製造方法である。
【0032】
この構成によれば、基材から薄型偏光膜を綺麗に剥離できるため、薄型の偏光膜を含む光学フィルム積層体を好適に製造できる。
【0033】
上記発明の一実施形態として、前記偏光膜の厚みが、10μm以下である。