特許第6233923号(P6233923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233923
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】汚物排出装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   E03D11/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-209630(P2013-209630)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-74875(P2015-74875A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 善博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿治
(72)【発明者】
【氏名】本木 勲
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−089971(JP,A)
【文献】 特開平04−297638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 − 7/00,11/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路の下流端に形成され、前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記リム通水路に洗浄水が供給されている状態では、洗浄水が前記連通孔を通って前記中空部内に一時貯留され、
前記リム通水路内の水圧低下に伴い、前記中空部内の洗浄水が前記連通孔を通って前記リム通水路内に流入するようになっていることを特徴とする汚物排出装置。
【請求項2】
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記中空部が前記リム通水路のほぼ直上に配置されていることを特徴とする汚物排出装置。
【請求項3】
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記連通孔が、前記中空部の最低位部に開口されていることを特徴とする汚物排出装置。
【請求項4】
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記リム通水路のうち前記連通孔よりも上流側の領域は、前記連通孔において流路断面積が最小となるように絞られていることを特徴とする汚物排出装置。
【請求項5】
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記リム通水路が、前記給水口から第1流路と第2流路とに二股状に分かれており、
前記第1流路には第1の前記連通孔が設けられ、
前記第2流路には、前記給水口からの給水開始時における洗浄水の到達時間が前記第1の連通孔よりも長くなるようにされた第2の前記連通孔が設けられ、
前記第1の連通孔と前記第2の連通孔が前記中空部を介して繋がっていることを特徴とする汚物排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚物排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、汚物を受ける鉢部と、鉢部の汚物を排出するための排水路を構成する水封部と、鉢部の外周縁に沿って設けたリム通水路とを備え、リム通水路への給水が停止した後、リム通水路内の洗浄水が水封部に補給されることにより、水封部の水位を確保するようにした汚物排出装置が開示されている。この汚物排出装置では、リム通水路への給水停止後の水封部への補給水の水量を確保する手段として、リム通水路の途中に、鉢部の後方へ突き出させるように迂回した形態の延長水路を設けている。延長水路には、鉢部に連通する吐水口が形成されていないので、延長水路に残留する洗浄水が、水封部への補給水として確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平07−002767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の汚物排出装置では、延長水路が鉢部から後方へ突き出した形態となっているため、装置全体が大型化するという問題がある。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、大型化することなく水封部への補給水を確保することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の汚物排出装置は、
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路の下流端に形成され、前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記リム通水路に洗浄水が供給されている状態では、洗浄水が前記連通孔を通って前記中空部内に一時貯留され、
前記リム通水路内の水圧低下に伴い、前記中空部内の洗浄水が前記連通孔を通って前記リム通水路内に流入するようになっていることを特徴とする。
第2の発明の汚物排出装置は、
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記中空部が前記リム通水路のほぼ直上に配置されていることを特徴とする。
第3の発明の汚物排出装置は、
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記連通孔が、前記中空部の最低位部に開口されていることを特徴とする。
第4の発明の汚物排出装置は、
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記リム通水路のうち前記連通孔よりも上流側の領域は、前記連通孔において流路断面積が最小となるように絞られていることを特徴とする。
第5の発明の汚物排出装置は、
汚物を受ける鉢部と、
前記鉢部の下部を構成する水封部と、
上流端が給水口に連通したリム通水路と、
前記リム通水路内に供給された洗浄水を前記鉢部に吐出する吐水口と、
前記リム通水路に沿うように設けられた中空部と、
前記リム通水路よりも小径であり、前記リム通水路と前記中空部との間での洗浄水の流動を許容する連通孔とを備え、
前記リム通水路が、前記給水口から第1流路と第2流路とに二股状に分かれており、
前記第1流路には第1の前記連通孔が設けられ、
前記第2流路には、前記給水口からの給水開始時における洗浄水の到達時間が前記第1の連通孔よりも長くなるようにされた第2の前記連通孔が設けられ、
前記第1の連通孔と前記第2の連通孔が前記中空部を介して繋がっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第1〜第5の発明によれば、給水口からリム通水路に供給された洗浄水の一部は、連通孔を通って中空部へ流入して一時的に貯留される。そして、給水口からリム通水路への給水が停止すると、中空部内の洗浄水が、連通孔とリム通水路内と吐水口を順に通って鉢部内に流入し、水封部に補給される。水封部への補給水を一時的に貯留するための中空部を、リム通水路に沿うように設けているので、鉢部の後方へ突き出すような延長水路を設ける場合よりも小型化することができる。
第2の発明によれば、水平面視において中空部とリム通水路が重なるので、装置の平面形状の大型化を回避できる。第3の発明によれば、中空部に一時貯留されていた洗浄水を、全て、リム通水路へ流入させることができる。第4の発明によれば、リム通水路を流れる洗浄水は、連通孔に接近するほど水圧が高まるので、リム通水路内の洗浄水が中空部へ流入し易くなり、中空部に一時貯留される水封部への補給水の量が増える。第5の発明によれば、給水口からの給水を開始したとき、供給された洗浄水は、第2の連通孔よりも先に第1の連通孔に到達し、第1の連通孔から中空部内に流入する。このとき、中空部内の空気は、第2の連通孔からリム通水路側へ排出されるので、第1の連通孔から中空部への洗浄水の流入が支障なく行われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の汚物排出装置の平面図
図2図1のA−A線断面図
図3図2のB−B線断面図
図4図2のC−C線断面図
図5図1のD−D線断面図
図6図1のE−E線断面図
図7図1のF−F線断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図7を参照して説明する。本実施例の汚物排出装置は、洋風大便器、汚物流し等、汚物を排出する衛生機器として機能するものと定義される。尚、以下の説明において、前後方向に関しては、図1における下側を前側、図1における上側を後側と定義する。また、左右方向に関しては、装置を正面から視た向き、つまり、図1にあらわれる向きをそのまま左側及び右側と定義する。
【0013】
<汚物排出装置の概要>
汚物排出装置は、図2に示すように、上面が開放された形態であって汚物(図示省略)を受ける鉢部10と、鉢部10の下端に連なって鉢部10内の汚物を洗浄水(図示省略)と一緒に排出する排水路23と、水封部26とを備えて構成されている。後述するように水封部26は、鉢部10の下端部と、排水路23の上流側端部とを構成している。
【0014】
図1に示すように、鉢部10の上面の開口部の平面形状は略方形をなしている。鉢部10の上面の開口縁部は、前縁部11と、右側縁部12Rと、左側縁部12Lと、後縁部13とで構成されている。後縁部13の左右方向中央部には、給水口14が形成されている。また、図1,2に示すように、鉢部10の開口縁部には、図示しないフラッシュバルブから給水口14を通して供給された洗浄水を鉢部10に吐出するためのリム通水路15が形成されている。
【0015】
図3に示すように、リム通水路15は、後縁部13の左右方向中央部に配置されて給水口14に連通する給水空間16と、給水空間16から後縁部13の右端部(右側縁部12Rの後端部)に至る第1流路17Rと、給水空間16から後縁部13の左端部を経由して左側縁部12Lの前後方向略中央部に至る第2流路17Lとによって構成されている。第1流路17Rの前端部(下流端部)は、折り返すように屈曲されていて、その先端が第1吐水口18Rとなっている。第1吐水口18Rは、平面視において反時計回り方向に開口している。第2流路17Lの前端部(下流端部)は第2吐水口18Lとなっている。第2吐水口18Lも、第1吐水口18Rと同様、平面視において反時計回り方向に開口している。
【0016】
図1,2に示すように、鉢部10の下端部には、その平面視における略中央部を竪穴状に凹ませた形態の旋回流生成部20が形成されている。図2に示すように、鉢部10の内面のうち旋回流生成部20よりも上方の領域は、旋回流生成部20に向かって下るように傾斜した鉢面21となっている。第1吐水口18Rと第2吐水口18Lとから吐出された洗浄水は、鉢面21上で反時計回りに旋回しながら旋回流生成部20内に流入し、旋回流生成部20内において反時計回り方向の旋回流を生成する。旋回流生成部20のうち略下半分の領域は、溜水部22となっている。溜水部22内でも洗浄水が旋回する。
【0017】
図2に示すように、排水路23は、溜水部22の下流端に連なる上昇路24と、上昇路24の下流端に連なる下降路25とを備えて構成されている。つまり、排水路23の入口(上流端)は、鉢部10(旋回流生成部20)の下端部(下流端)に繋がっている。そして、上昇路24と溜水部22とにより、水封部26が構成されている。水封部26が水封された状態では、洗浄水が溜水Wとして溜水部22と上昇路24とに貯留される。尚、溜水部22の上端の高さは、水封時における溜水面Sと同じ高さであると規定される。鉢面21や旋回流生成部20で受け止められた汚物は、第1吐水口18Rと第2吐水口18Lから吐出された洗浄水に乗じて、鉢面21上及び旋回流生成部20内で旋回し、洗浄水とともに水封部26、排水路23を通って排出されるようになっている。
【0018】
<水封部26への補給水を確保する手段>
本実施例の汚物排出装置は、給水口14からリム通水路15への給水が停止すると、給水停止時点でリム通水路15や鉢面21上や旋回流生成部20を流れている洗浄水が、水封部26に溜水Wとして貯留される。そして、溜水Wの水面を所定高さに確保するための手段として、給水停止時点で、リム通水路15、鉢面21上及び旋回流生成部20とは別に、洗浄水を一時的に貯留するための中空部30を設け、この中空部30内に貯留されている洗浄水を、補給水として水封部26に供給するようになっている。
【0019】
図4に示すように、中空部30は、鉢部10の開口縁部に沿うように形成され、全周に亘って連続した形態となっている。つまり、単一の空間で構成されている。中空部30を構成する上壁部は、鉢部10の開口縁部の上壁部を構成している。中空部30と、リム通水路15を構成する第1流路17R及び第2流路17Lは、上下に重なり合う縦積みの位置関係となっている。但し、リム通水路15を構成する給水空間16の上下方向の形成範囲は、第1流路17R及び第2流路17Lだけでなく中空部30にも対応する領域に亘っている。したがって、鉢部10の後縁部13においては、中空部30が、給水空間16の前面壁に沿うように幅狭の通路状をなしている。
【0020】
図7に示すように、第1流路17Rは中空部30のほぼ真下に配置されている。第1流路17Rと中空部30を区画する第1隔壁部31Rには、上下方向に貫通して第1流路17Rと中空部30とを連通させる第1連通孔32R(請求項に記載の第1の連通孔)が形成されている。図4に示すように、第1連通孔32Rは、第1流路17Rの下流端部(前端部)の折返部、つまり第1吐水口18Rの上流側近傍位置に配置されている。また、第1連通孔32Rの開口形状は円形であり、その開口面積は、第1流路17Rの流れ方向と直角に切断した流路断面積に比べて小さく設定されている。
【0021】
図7に示すように、第1隔壁部31Rのうち第1連通孔32Rよりも上流側であって、第1連通孔32Rに近い領域は、下流側に向かって下り傾斜となるように傾いている。これにより、第1流路17Rの流路断面積は、第1連通孔32R(第1流路17Rの下流側)に向かって次第に小さくなり、第1連通孔32Rが形成されている領域で流路断面積が最小となっている。また、第1隔壁部31Rの傾斜により、中空部30のうち第1流路17Rと対応する領域の第1底面33R(請求項に記載の底面)は、高低差を有し、第1連通孔32Rの近傍領域において最も低くなっている。したがって、第1連通孔32Rは、中空部30の第1底面33Rのうち最下端位置に開口していることになる。
【0022】
図5,6に示すように、第2流路17Lも、第1流路17Rと同様、中空部30のほぼ真下に配置されている。第2流路17Lと中空部30を区画する第2隔壁部31Lには、上下方向に貫通して第2流路17Lと中空部30とを連通させる第2連通孔32L(請求項に記載の第2の連通孔)が形成されている。図4に示すように、第2連通孔32Lは、第2流路17Lの下流端部(前端部)、つまり第2吐水口18Lの上流側近傍位置に配置されている。また、第2連通孔32Lの開口形状は円形であり、その開口面積は、第2流路17Lの流れ方向と直角に切断した流路断面積に比べて小さく設定されている。
【0023】
第2隔壁部31Lのうち第2連通孔32Lに近い上流側領域は、第2流路17Lの下流側に向かって下り傾斜となるように傾き、第2連通孔32Lに近い下流側領域は、上流側に向かって下り傾斜となるように傾いている。これにより、第2連通孔32Lの上流側近傍領域では、第2流路17Lの流路断面積が第2連通孔32Lに向かって次第に小さくなり、第2連通孔32Lの下流側近傍領域でも、第2流路17Lの流路断面積が第2連通孔32Lに向かって次第に小さくなっている。つまり、第2流路17Lの流路断面積は、第2連通孔32Lが形成されている領域において最小となっている。
【0024】
また、第2隔壁部31Lの傾斜により、中空部30のうち第2流路17Lと対応する領域の第2底面33L(請求項に記載の底面)は、高低差を有する形態となっていて、第2連通孔32Lの近傍領域において最も低くなっている。したがって、第2連通孔32Lは、中空部30の第2底面33Lのうち最下端位置に開口していることになる。
【0025】
また、図3に示すように、給水口14から第1連通孔32Rに至る洗浄水の流動経路の距離は、給水口14から第2連通孔32Lに至る洗浄水の流動経路の距離よりも短く設定されている。そして、第1連通孔32Rが形成されている第1流路17Rの流路断面積と、第2連通孔32Lが形成されている第2流路17Lの流路断面積は、ほぼ同じ面積に設定されている。したがって、給水口14から洗浄水の供給を開始してから、洗浄水が第1連通孔32Rに到達するまでの時間は、洗浄水が第2連通孔32Lに到達するための時間よりも短くなっている。また、第1連通孔32Rの開口面積は、第2連通孔32Lの開口面積よりも大きく設定されている。
【0026】
<作用及び効果>
鉢部10内を洗浄する際には、給水口14から所定量の洗浄水をリム通水路15に供給する。供給された洗浄水は、第1流路17Rと第2流路17Lを通過して第1吐水口18Rと第2吐水口18Lから鉢面21に吐出され、鉢面21上を旋回しながら鉢面21上の汚物を除去して旋回流生成部20内に流入する。旋回流生成部20内では、鉢面21から流入した洗浄水と汚物が、水封部26の溜水Wを巻き込みながら旋回し、排水路23を通して排出される。
【0027】
また、給水口14からの給水が開始すると、洗浄水が第1流路17Rと第2流路17Lに同時に流入する。そして、二手に分かれた洗浄水のうち、まず、第1流路17Rを流れる洗浄水の流動方向先端が第1連通孔32Rに到達し、その後、第2流路17Lを流れる洗浄水の流動方向先端が第2連通孔32Lに到達する。この時間差により、第2連通孔32Lに洗浄水が到達するまでの間に、第1流路17R内の洗浄水の一部が第1連通孔32Rを通って中空部30内に流入する。このとき、開放状態の第2連通孔32Lにおいては、中空部30内の空気が第2流路17Lへ排出されるので、第1流路17Rから中空部30への洗浄水の流入が滞りなく進む。
【0028】
そして、洗浄水の流動方向先端が第2連通孔32Lに到達した後は、第2流路17L内の洗浄水の一部が第2連通孔32Lを通して中空部30内に流入する。このとき、中空部30とリム通水路15との連通路である第1連通孔32Rと第2連通孔32Lは、洗浄水によって塞がれた状態となるが、中空部30内の空気は、中空部30に流入しようとする洗浄水と連通孔32L,32Rとの隙間を通ってリム通水路15側へ排出される。したがって、中空部30への洗浄水の流入に支障を来すことはない。
【0029】
しかも、第1流路17Rのうち第1連通孔32Rの上流側近傍は、流路断面積が第1連通孔32Rに向かって小さくなるように絞られているので、第1流路17Rを流れる洗浄水は、第1連通孔32Rに到達した時点で水圧と流速がほぼ最大となる。同じく、第2流路17Lのうち第2連通孔32Lの上流側近傍も、流路断面積が第2連通孔32Lに向かって小さくなるように絞られているので、第2流路17Lを流れる洗浄水は、第2連通孔32Lに到達した時点で水圧と流速がほぼ最大となる。この水圧と流速の上昇により、第1流路17R及び第2流路17Lから中空部30への洗浄水の流入が効果的に行われる。
【0030】
上述のように給水口14からリム通水路15への洗浄水の供給が行われている間は、第1流路17R及び第2流路17Lから中空部30へ洗浄水が流入され続け、水封部26に対する補給水が貯留される。そして、給水口14からリム通水路15への給水が終了すると、第1流路17R内及び第2流路17L内では、洗浄水の水圧が低下するとともに、洗浄水が排出されていく。これに伴い、中空部30内に一次貯留されていた洗浄水が、両連通孔32L,32Rと、両流路17L,17Rと、両吐水口18L,18Rを通過し、鉢面21を伝って旋回流生成部20内に流れ込み、水封部26を水封するための溜水Wとなる。
【0031】
本実施例の汚物排出装置は、大型化することなく水封部26への補給水を確保することができるものであって、そのための手段として、汚物を受ける鉢部10と、鉢部10の下端部を構成する水封部26と、鉢部10の外周縁に沿うように設けられ、上流端が給水口14に連通したリム通水路15と、リム通水路15内に供給された洗浄水を鉢部10に吐出する吐水口18L,18Rと、リム通水路15に沿うように設けられた中空部30と、リム通水路15を構成する第1流路17R及び第2流路17Lよりも小径であって、リム通水路15と中空部30との間での洗浄水の流動を許容する第1連通孔32R及び第2連通孔32Lとを備えている。
【0032】
そして、給水口14からリム通水路15に供給された洗浄水の一部は、連通孔32L,32Rを通って中空部30へ流入して一時的に貯留される。そして、給水口14からリム通水路15への給水が停止すると、中空部30内の洗浄水が、連通孔32L,32Rとリム通水路15内と吐水口18L,18Rを順に通って鉢部10内に流入し、水封部26に補給される。本実施例では、水封部26への補給水を一時的に貯留するための中空部30を、リム通水路15に沿うように設けているので、鉢部10の後方へ突き出すような延長水路を設ける場合よりも小型化することができる。
【0033】
また、本実施例の汚物排出装置は、中空部30がリム通水路15のほぼ直上に配置されているので、水平面視において中空部30とリム通水路15が重なる。したがって、装置の平面形状の大型化を回避できる。また、中空部30は高低差が設けられた第1底面33Rと第2底面33Lを有しており、第1連通孔32Rと第2連通孔32Lが、夫々、第1底面33Rにおける最低位部と第2底面33Lにおける最低部位(つまり、中空部30の最低部位)に開口されている。この構成によれば、中空部30に一時貯留されていた洗浄水を、全て、リム通水路15へ流入させることができる。
【0034】
また、リム通水路15を構成する第1流路17Rのうち第1連通孔32Rよりも上流側の領域は、第1連通孔32Rに向かうほど流路断面積が小さくなるように絞られている。つまり、第1流路17Rの流路断面積は、第1連通孔32Rの形成されている部位で最小となっている。同様に、リム通水路15を構成する第2流路17Lのうち第2連通孔32Lよりも上流側の領域も、第2連通孔32Lに向かうほど流路断面積が小さくなるように絞られている。つまり、第2流路17Lの流路断面積は、第2連通孔32Lの形成されている部位で最小となっている。この構成によれば、リム通水路15を流れる洗浄水は、第1連通孔32R及び第2連通孔32Lに接近するほど水圧が高まるので、リム通水路15内の洗浄水が中空部30へ流入し易くなる。これにより、中空部30に一時貯留される水封部26への補給水の量を増やすことができる。
【0035】
また、リム通水路15は、給水口14から第1流路17Rと第2流路17Lとに二股状に分かれていており、第1流路17Rには第1連通孔32Rが設けられ、第2流路17Lには、給水口14からの給水開始時における洗浄水の到達時間が第1連通孔32Rよりも長くなるように配置された第2連通孔32Lが設けられ、第1連通孔32Rと第2連通孔32Lが中空部30を介して繋がっている。この構成によれば、給水口14からの給水を開始したとき、供給された洗浄水は、第2連通孔32Lよりも先に第1連通孔32Rに到達し、第1連通孔32Rから中空部30内に流入する。このとき、中空部30内の空気は、第2連通孔32Lからリム通水路15側へ排出されるので、第1連通孔32Rから中空部30への洗浄水の流入が支障なく行われる。
【0036】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、中空部をリム通水路を構成する第1流路及び第2流路のほぼ真上に配置したが、中空部は、リム通水路の斜め上方に配置してもよく、リム通水路とほぼ同じ高さで横並びとなるように配置してもよい。
(2)上記実施例では、中空部の底面に高低差を設けたが、中空部の底面の高さは一定であってもよい。
(3)上記実施例では、中空部の形成範囲が、鉢部の外周縁のほぼ全領域に亘っているが、中空部の形成範囲は、鉢部の外周縁における一部の領域だけであってもよい。
(4)上記実施例では、中空部が単一の空間となっているが、中空部は、互いに非連通状態となるように複数の空間に区画された形態であってもよい。
(5)上記実施例では、連通孔が、リム通水路と中空部を区画する隔壁部を上下に貫通しているが、連通孔の貫通方向は、リム通水路と中空部との位置関係等に応じて、水平方向や水平に対して傾斜した方向であってもよい。
(6)上記実施例では、洗浄水の到達が早い方の第1連通孔の開口面積を、洗浄水の到達時間が遅い方の第2連通孔の開口面積より大きくしたが、第1連通孔の開口面積は、第2連通孔の開口面積と同じか、それより小さくてもよい。
(7)上記実施例では、給水口から2つの連通孔までの洗浄水の到達時間に差異が生じるようにしたが、給水口から2つの連通孔までの洗浄水の到達時間は、ほぼ同じであってもよい。
(8)上記実施例では、連通孔を吐水口の上流側近傍位置に配置したが、連通孔は、吐水口から離れた位置に配置してもよい。具体的には、給水口から連通孔までの距離が、連通孔から吐水口までの距離とほぼ同じか、それよりも短くなるような配置形態が可能である。
(9)上記実施例では、給水口から吐水口に至る第1と第2の各流路に配置する連通孔の数を、1つだけとしたが、給水口から吐水口に至る第1流路又は第2流路に、複数の連通孔が形成されていてもよい。
(10)上記実施例では、1つの中空部に2つの連通孔が形成されているが、1つの中空部に形成する連通孔の数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
(11)上記実施例では、リム通水路と中空部とを連通する2つの連通孔において、洗浄水の流動と空気の流動とを行わせるようにしたが、中空部と外気との間で空気の流動を行わせるための専用の空気抜き孔を形成してもよい。
(12)上記実施例では、リム通水路のうち連通孔よりも上流側の領域を、連通孔に向かうほど流路断面積が小さくなるように絞った形態としたが、リム通水路の流路断面積はほぼ一定であってもよい。
(13)上記実施例では、リム通水路の形成範囲が、鉢部の外周縁における一部の領域だけであるが、本発明は、リム通水路が鉢部の外周縁の全領域に亘って形成されている場合にも適用できる。この場合、リム通水路は全周に亘って連通した形態でも、2本の経路に分岐した形態のいずれでもよい。
(14)上記実施例では、吐水口の数を2つとしたが、吐水口の開口数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
(15)上記実施例では、洗浄水をフラッシュバルブから供給したが、洗浄水は、ロータンク等の洗浄タンクから供給されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…鉢部
14…給水口
15…リム通水路
17R…第1流路
17L…第2流路
18R…第1吐水口
18L…第2吐水口
26…水封部
30…中空部
32R…第1連通孔(第1の連通孔)
32L…第2連通孔(第2の連通孔)
33R…第1底面(底面)
33L…第2底面(底面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7