特許第6233924号(P6233924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233924移動機器を使用する製造工程における工程管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233924
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】移動機器を使用する製造工程における工程管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-219913(P2013-219913)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-82218(P2015-82218A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】507373128
【氏名又は名称】株式会社シーエムプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】町田 進
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−075941(JP,A)
【文献】 特開平09−036197(JP,A)
【文献】 特開2010−191562(JP,A)
【文献】 特開平09−174386(JP,A)
【文献】 特開昭59−166983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程管理方法であって、
製造工程で使用する各機器に対して固有の番号を提供する段階と、
前記各機器の配置場所を特定する番号を提供する段階と、
前記各機器のうち移動する機器が所定の配置場所に配置されたことを確認する位置情報確認手段を、前記移動する機器とその配置場所又はその配置場所に設ける段階と、
前記各機器がいずれのパイプに連結されているかを表示する連結パイプ表示手段を設ける段階とを含み、
前記移動する機器を移動させて新たな配置場所に配置した際に、前記位置情報確認手段を用いて、所定の配置場所に配置されたことの確認を行い、
前記移動する機器を移動させずに同じ配置場所で使用する際に、前記連結パイプ表示手段を用いて、如何なる工程が実施されているかを把握する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記位置情報確認手段が、機器と配置場所に設けられる位置情報送信部/位置情報受信部であることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記位置情報送信部/位置情報受信部が、バーコードとリーダ、又はRFタグとリーダであることを特徴とする請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記位置情報確認手段が、配置場所に設けられるリミットスイッチであることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、医薬品、医療器具、食品(以下「医薬品等」という)の製造工場における製造工程管理技術に関する。より詳細には、本発明は、移動機器を使用する医薬品等の製造工程において工程を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医薬品等の製造工場においては、複数の製造工程を経て医薬品等が製造されるが、これらの複数の製造工程のうちいずれの工程の処理が行われているのかを管理することが重要である。
【0003】
一方、医薬品等の製造工程では、固定機器を使用する方式と、移動タンクなどの移動機器を使用する方式が知られている。前者の固定機器を使用する方式では、作業員が制御盤のボタンを選択して操作することにより、どの工程が実施されているかを把握することができる。後者の移動機器(特に、近年使用が増加しているディスポーザルバッグ)を使用する方式では、作業員がマニュアル操作することにより移動機器へのチューブ接続が行われるとともに、作業員の目視確認により製造工程の監視が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、移動機器をマニュアル操作すると、例えば、複数の製造品目の製造時に移動機器を混同したり、微量の添加物の投入時に複数の投入を行ってしまう等の、人的な誤りが生ずる可能性がある。従来は、このような人的な誤りの防止策として、作業員による書類確認に専ら依存していた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、移動機器を使用する製造工程において、確実かつ効率的な製造工程の管理を可能にする製造工程管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の製造工程管理方法は、製造工程で使用する各機器に対して固有の番号を提供する段階と、前記各機器の配置場所を特定する番号を提供する段階と、前記各機器のうち移動する機器が所定の配置場所に配置されたことを確認する位置情報確認手段を、前記移動する機器とその配置場所又はその配置場所に設ける段階と、前記各機器がいずれのパイプに連結されているかを表示する連結パイプ表示手段を設ける段階とを含み、前記移動する機器を移動させて新たな配置場所に配置した際に、前記位置情報確認手段を用いて、所定の配置場所に配置されたことの確認を行い、前記移動する機器を移動させずに同じ配置場所で使用する際に、前記連結パイプ表示手段を用いて、如何なる工程が実施されているかを把握することを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載の製造工程管理方法は、前記請求項1の方法において、前記位置情報確認手段が、機器と配置場所に設けられる位置情報送信部/位置情報受信部であることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項3に記載の製造工程管理方法は、前記請求項2の方法において、前記位置情報送信部/位置情報受信部が、バーコードとリーダ、又はRFタグとリーダであることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項4に記載の製造工程管理方法は、前記請求項1の方法において、前記位置情報確認手段が、配置場所に設けられるリミットスイッチであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、移動機器が実施しているプロセスを確実に把握することができるので、マニュアル操作に頼らない効率的な工程管理が可能になる。また、連結パイプ表示手段を設けることにより、移動機器が同じ配置場所にある状態で異なるプロセスを実施している場合であっても、実施プロセスの把握が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バイオ医薬品製造工程の一部を示した製造工程フロー図である。
図2図1の工程のうち主培養工程を示した拡大図である。
図3図1の工程のうち濃縮工程を示した拡大図である。
図4図1の工程のうち添加工程を示した拡大図である。
図5図1の工程の手順を示した一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る製造工程管理方法について詳細に説明する。図1は、バイオ医薬品製造工程の一部を示した製造工程フロー図である。図1に示される製造工程は、主培養工程、濃縮工程、添加工程の3つに大別される。図2図3図4はそれぞれ、主培養工程、濃縮工程、添加工程が実施される主培養室、UF濃縮室、添加室を示した拡大図である。
【0014】
本発明の製造工程管理方法は、製造工程で使用する各機器に対して固有の番号を提供する段階を含む。ここで、「機器に固有の番号」とは、詳細には後述するように各工程で移動して使用される機器であっても、物理的に同じ機器であれば、同一の番号を付すことを意味する。なお、機器とともに、送液用パイプにも固有の番号が付される。
【0015】
主培養室には、図2に示されるように、培養バッグ(200リットル)を収容する固定機器T001、回収バッグ(200リットル)を収容する移動機器T002、T001からT002に培養液を送液する第1チューブポンプPU001の3つの機器が配置されている。固定機器T001と移動機器T002は、第1チューブポンプPU001を介して、送液用パイプp001で連結されている。
【0016】
UF濃縮室には、図3に示されるように、主培養室から移動させた移動機器T002、UF膜UF001、限外濾過した濃縮液が入ったバッグ(30リットル)を収容する移動機器T003、T002からUF001を経てT003に濃縮液を送液する第2チューブポンプPU002の4つの機器が配置されている。移動機器T002とUF膜UF001は、第2チューブポンプPU002を介して、送液用パイプp002で循環するように連結されている。移動機器T002と移動機器T003は、第2チューブポンプPU002を介して、送液用パイプp003で連結されている。送液用パイプp002と送液用パイプp003は、切り換えバルブv001によって切り換え可能になっている。
【0017】
添加室には、図4に示されるように、UF濃縮室から移動させた移動機器T003、添加剤を収容した添加剤バッグT004、T004からT003に添加剤を送液する第3チューブポンプPU003の3つの機器が配置されている。移動機器T003と添加剤バッグT004は、第3チューブポンプPU003を介して、送液用パイプp004で連結されている。
【0018】
上述のT001、T002、T003、T004、PU001、PU002、PU003、UF001、p001、p002、p003、p004、v001が、機器などに固有の番号となる。したがって、主培養室のT002とUF濃縮室のT002、UF濃縮室のT003と添加室のT003は、物理的に同じ機器である。
【0019】
なお、図2図4における「PH」はPH計、「WIS」は重量計、「TIC」は温度計、「CW」は給水、チューブポンプの「M」はモータをそれぞれ表している。
【0020】
本発明の製造工程管理方法はまた、各機器の配置場所を特定する番号を提供する段階を含む。
【0021】
主培養室では、T001の配置場所はL101、PU001の配置場所はL102、T002の配置場所はL103となる。UF濃縮室では、T002の配置場所はL201、PU002の配置場所はL202、UF001の配置場所はL203、T003の配置場所はL204となる。添加室では、T003の配置場所はL303、PU003の配置場所はL302、T004の配置場所はL301となる。上述のL101〜L103、L201〜L204、L301〜L303が、配置場所を特定する番号である。
【0022】
本発明の製造工程管理方法はまた、各機器のうち移動する機器が所定の配置場所に配置されたことを確認する位置情報確認手段を機器と配置場所、又は配置場所に設ける段階を含む。
【0023】
具体的には、位置情報確認手段としては、下記のように、機器と配置場所に位置情報送信部/位置情報受信部を設けることがあげられる。すなわち、移動する機器T002、T003に、位置情報送信部(図示せず)をそれぞれ設け、移動する機器の配置場所に、位置情報受信部(図示せず)をそれぞれ配置し、これらの位置情報受信部と制御ユニット(図示せず)とを有線又は無線で接続する。そして、位置情報送信部から位置情報受信部に情報が伝達される(或いは、位置情報送信部の情報を位置情報受信部で読み取る)ことにより、或る移動機器が或る配置場所に位置する(例えば、機器T002が配置場所L103に位置する)ことの情報が制御ユニットで確認できるように構成されている。なお、制御ユニット自体は、公知の構成のものを使用してよい。
【0024】
位置情報送信部/位置情報受信部としては、例えば、バーコードとバーコードリーダがあげられる。すなわち、機器にバーコードを付け、配置場所にバーコードリーダを配置しておき(これとは逆に、機器にバーコードリーダを設置し、配置場所にバーコードを付してもよい)、当該機器を所定の配置場所に配置したときに、バーコードリーダでバーコードを読み込むことにより、当該機器が所定箇所に位置する情報が制御ユニットに伝達されるようになっている。
【0025】
位置情報発信部/位置情報受信部として、RFID(Radio Frequency IDentification)を用いてもよい。すなわち、機器にRFタグを付け、配置場所にリーダを配置しておき(これとは逆に、機器にリーダを設置し、配置場所にRFタグを付してもよい)、当該機器を所定の配置場所に配置したときに、当該機器が所定箇所に位置する情報が制御ユニットに伝達されるように構成してもよい。
【0026】
或いは、位置情報確認手段として、配置場所にリミットスイッチを設けてもよい。すなわち、機器の配置場所の床などにリミットスイッチを配置しておき、機器を所定の配置場所に配置したときに、リミットスイッチが反応して、当該機器が所定箇所に位置する情報が制御ユニットに伝達されるように構成してもよい。
【0027】
好ましくは、本発明の製造工程管理方法はさらに、各機器がいずれのパイプに連結されているかを表示する連結パイプ表示手段を設ける段階を含む。
【0028】
この段階の付加は、移動機器が移動せずに同じ配置場所にある状態で異なるプロセスを実施しようとする場合に有用である。例えば、図3に示されるUF濃縮室では、機器T003が同じ配置場所L204に位置した状態で、濃縮液を限外濾過する第1プロセスと、限外濾過した濃縮液を機器T002から機器T003に送液する第2プロセスの2つのプロセスが実施されるが、連結パイプ表示手段を設けることにより、第1プロセスと第2プロセスのいずれのプロセスを実施しているのかを区別することが可能になる。
【0029】
連結パイプ表示手段としては、例えば、送液用パイプに設けられた切り換えバルブに発信器を設置しておき、切り換え状態に応じた情報(信号)が制御ユニットに伝達されるように構成することがあげられる。
【0030】
次に、主として図5を参照して、本発明の方法により製造工程を管理する手順の一例について具体的に説明する。まず、製造工程で使用する各機器などに対して固有の番号T001〜T004、PU001〜PU003、p001〜p004、v001を提供する。それとともに、各機器の配置場所を特定する番号L101〜L103、L201〜L204、L301〜L303を提供する。一方、各機器のうち移動機器T002、T003には、バーコードが付されており、移動機器が配置される配置場所L103、L201、L204、L303には、バーコードリーダが設置されている。なお、工程開始の時点では、移動機器T002、T003は、その最初の配置場所L103、L204にそれぞれ配置されているものとする。
【0031】
最初の工程が実施される主培養室では、固定機器T001に培養バッグを収容し、培養工程を実施する。そして、第1チューブポンプPU001を作動させて、培養された培養液を、回収バッグが収容された移動機器T002に送液する(図5(a)参照)。次いで、培養液が入った回収バッグが収容された移動機器T002を、主培養室からUF濃縮室に移動させ、所定の配置場所L201に配置する。その際、移動機器T002に付されたバーコードを、配置場所L201に設置されたバーコードリーダで読み取り、その情報を制御ユニットに伝達する。次いで、第2チューブポンプPU002を作動させて、培養液を送液用パイプp002を介してUF膜UF001に送って限外濾過する(図5(b)参照)。次いで、培養液が送液用パイプp003に流れるように切り換えバルブv001を切り換え、連結パイプ表示手段から制御ユニットに、送液用パイプの切り換え状態に関する情報を伝達する。次いで、第2チューブポンプPU002を作動させて、限外濾過された培養液を、送液用パイプp003を介して移動機器T003に送液する(図5(c)参照)。次いで、限外濾過された培養液が収容された移動機器T003を、UF濃縮室から添加室に移動させ、所定の配置場所L303に配置する。その際、移動機器T003に付されたバーコードを、配置場所L303に設置されたバーコードで読み取り、その情報を制御ユニットに伝達する。次いで、第3チューブポンプPU003を作動させて、限外濾過された培養液に、送液用パイプp004を介して、固定機器T004から添加剤を投入する(図5(d)参照)。
【0032】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0033】
たとえば、図面に示されている各構成要素の大きさや他の細部などは、単なる例示的なものにすぎず、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
T001 固定機器
T002 移動機器
T003 移動機器
T004 固定機器(添加剤バッグ)
PU001 第1チューブポンプ
PU002 第2チューブポンプ
PU003 第3チューブポンプ
UF001 UF膜
p001〜p004 送液用パイプ
v001 切り換えバルブ
図1
図2
図3
図4
図5