特許第6233926号(P6233926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233926検査用照明装置及びこの照明装置を用いた検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233926
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】検査用照明装置及びこの照明装置を用いた検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G01N21/84 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-17017(P2014-17017)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143648(P2015-143648A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】田林 誠治
(72)【発明者】
【氏名】竹森 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉井 考治
(72)【発明者】
【氏名】上中 和三
(72)【発明者】
【氏名】神澤 啓彰
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−230005(JP,A)
【文献】 特開2013−108944(JP,A)
【文献】 特開2000−18932(JP,A)
【文献】 特開平9−61291(JP,A)
【文献】 特開平8−145906(JP,A)
【文献】 米国特許第5734742(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958、
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の明部及び暗部を交互に配列してなるストライプパターン像を被検査面に投影するための検査用照明装置において、
前記ストライプパターン像は、前記複数本の明部の中から選択される一の明部とこれに隣接する一方の暗部との間に直線状の境界を形成し、前記一方の暗部とは反対側で隣接する他方の暗部との間に曲線状の境界を形成することを特徴とする検査用照明装置。
【請求項2】
前記曲線状の境界は、波状に湾曲した形状をなす請求項1に記載の検査用照明装置。
【請求項3】
協働により前記ストライプパターン像を形成する複数の照明部材を備え、該各々の照明部材に設けられた発光面の幅方向一方側の縁部が直線状をなし、他方側の縁部が曲線状をなす請求項1又は2に記載の検査用照明装置。
【請求項4】
複数本の明部及び暗部を交互に配列してなるストライプパターン像を被検査面に投影しながら前記ストライプパターン像と直交する向きに前記被検査面を移動させることで、前記被検査面上の欠陥を検出するための検査方法において、
前記ストライプパターン像として、前記複数本の明部の中から選択される一の明部とこれに隣接する一方の暗部との間に直線状の境界を形成し、前記一方の暗部とは反対側で隣接する他方の暗部との間に曲線状の境界を形成するものを用いることを特徴とする検査用照明装置を用いた検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用照明装置及びこの照明装置を用いた検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ボデーの塗装ラインにおいては、塗装後に、塗装面に生じたブツやカス等と呼ばれる塗装欠陥の有無を検出する検査工程が設けられている。検査工程では、移動中のボデーに対して縦縞模様のストライプパターン像を投影し、このストライプパターン像をブツ等の欠陥が通過する際の特有の反射態様を作業者が視認することにより、当該欠陥を検出するようになっている。このストライプパターン像は、例えば蛍光灯等の照明部材を一定間隔で平行に配列し、所定の照度の光を照射することにより、照明部材に対向する位置を通過するボデーに投影している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−215049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗装欠陥の1つに、スジと呼ばれる欠陥がある。この欠陥は線状をなすものであり、ブツなどに比べてその幅寸法や高さ寸法は小さい。そのため、ストライプパターン像を通過した際の光の反射度合いは小さく、検出することが難しい。加えて、上述したストライプパターン像の投影を利用した検査方法の場合、ストライプパターン像を構成する明部の長手方向とボデーの進行方向とが直交するように、蛍光灯等を配置するのが一般的であるため、スジの位置や明部に対する角度によっては反射量が非常に小さく、熟練の作業者といえども視認することが非常に難しい、との問題があった。
【0005】
具体的に図面を参照して説明する。まず図9に示すように、ボデーの塗装面1上に存在するスジ3がストライプパターン像121の明部119と平行である場合、ボデーの進行に伴いスジ3が明部119に接近すると、その全長にわたってスジ3が反射する。そのため、ブツ等に比べて反射量が小さくても、明部119を通過する際の明度の変化(反射)の範囲3aが大きく、作業者はこの変化を比較的容易に視認することができる(よって検出はそれほど困難ではない)。
【0006】
一方、スジ3がストライプパターン像121の明部119と一定の角度をなして交差する(特に図10に示すように直交する)場合、ボデーの進行に伴い、スジ3が明部119に接近すると、その長手方向ではなく幅方向(長手方向に直交する向き。本明細書において以下同じ。)の範囲で反射が生じる。そのため、スジ3が明部119と平行に存在する場合に比べて、明部119を通過する際の明度の変化(反射)の範囲は小さく、作業者はこの変化を視認することがほとんどできない。また、スジ3が明部119と直交する場合、スジ3は通常、その幅方向中央を頂部として凸状をなすことから、スジ3が明部119と直交する向きに接近した際、スジ3に向けて照射された光は幅方向(図10の上下方向)に分散し易い傾向にある。この点においても、作業者は明度の変化を視認することがほとんどできない。
【0007】
以上の理由より、従来の検査方法では、ブツ等の欠陥を検出するための工程とは別に、スジを検出するための専用の工程を別に設ける必要があり、これにより検査工数の増加を招いていた。
【0008】
以上の事情に鑑み、本発明により解決すべき課題は、スジの如き検出困難な欠陥を含め、極力全ての欠陥を1つの工程で効率よく検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る検査用照明装置によって達成される。すなわち、この照明装置は、複数本の明部及び暗部を交互に配列してなるストライプパターン像を被検査面に投影するための検査用照明装置において、ストライプパターン像は、複数本の明部の中から選択される一の明部とこれに隣接する一方の暗部との間に直線状の境界を形成し、一方の暗部とは反対側で隣接する他方の暗部との間に曲線状の境界を形成する点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「直線状」及び「曲線状」とは、上記形態のストライプパターン像を、完全に平坦な平面としての被検査面に投影した際に得られる形態を意味するものであり、実際の検査面に投影した際の形態と必ずしも一致するものではない。
【0010】
上述のように、本発明では、従来、直線状の境界のみであった明暗のストライプパターン像に関し、複数本の明部の中から選択された1本の明部とこれに隣接する一方の暗部との境界を直線状とし、かつ一方の暗部とは反対側で隣接する他方の暗部との境界を曲線状に形成したことを特徴とする。このような形態のストライプパターン像を用いて欠陥の検出を行う場合の利点を、塗装欠陥の検出を行う場合を例にとって以下説明する。図5は、塗装欠陥の1つであるスジ3がストライプパターン像21を構成する明部19又は暗部20の長手方向に対して大きな角度をもって交差(図示例では直交)する場合を示している。このように、ボデーの塗装面1が、ボデーの移動に伴い、ストライプパターン像21を通過する場合において、塗装面1上に存在するスジ3は、直線状をなす境界22だけでなく曲線状をなす境界23も通過する。この際、曲線状の境界23は、その長手方向位置によって接線方向が異なる。そのため、明部19又は暗部20と大きな角度で交差するスジ3が曲線状の境界23を通過する際、当該通過領域とスジ3との交差角度が仮に小さくなかったとしても、その近傍には、高い確率で、スジ3との交差角度が比較的小さい(平行に近い)領域が存在する。よって、このスジ3との交差角度が比較的小さい領域により、暗部20に至ったスジ3が反射し易くなる(反射の度合いが大きくなる)。また、その変化(反射)の範囲3aも従来(直線状の境界22を通過する際)に比べて大きくなる。よって、曲線状の境界23を通過する際の反射を利用して、スジ3の如き欠陥を比較的容易に検出することが可能になる。また、本発明に係るストライプパターン像21は、曲線状の境界23だけでなく直線状の境界22を兼備しているので、ブツ4や、明部19と平行なスジ3など、曲線状の境界23だけでは検出し難い欠陥もこの直線状の境界22を通過した際の反射により確実に検出することができる(後述する図6及び図7を参照)。従って、想定されるほぼ全ての欠陥を検出することができ、これにより不具合が後工程に流出する可能性を低減し、ひいては品質の向上を図ることが可能となる。また、想定されるほぼ全ての欠陥を1つのストライプパターン像を利用して検出することができるので、検査工程は1つで足り、これにより検査工数の低減化を図ることが可能となる。
【0011】
特に、検査対象が自動車用ボデーの塗装面の場合、想定されるスジやブツ等の塗装欠陥については、ある程度そのサイズが決まっている。そのため、これらの欠陥がストライプパターン像の明部に埋もれてしまわないよう、明部に比べて暗部の幅寸法を大きくとる傾向にある。ここで、作業者が塗装面上の欠陥を目視で検出するに際して、作業者が一度に視認できる範囲はそれほど大きくない(数十センチ四方レベル)。そのため、複数本の明部の中から選択される1つの明部の一方側に直線状の境界を形成し、他方側に曲線状の境界を形成した構成をとることで、仮に、作業者の視界(一度に視認できる範囲)が1本の明部のみを含む程度であったとしても、当該1本の明部を通過するほぼ全ての塗装欠陥を確実に検出することができる。よって、作業者の検出効率(検出速度)を落とすことなく塗装欠陥の検出精度を高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る検査用照明装置は、曲線状の境界が、波状に湾曲した形状をなすものであってもよい。
【0013】
上述のように、曲線状の境界を、波状に湾曲した形状とすれば、比較的短い長手寸法の範囲内に、できる限り多くの接線角度を有する境界を形成することができる。そのため、スジの如き欠陥が曲線状の境界のどの位置(長手方向位置)を通過した場合であっても、当該欠陥の延伸方向との交差角度が小さい(平行に近い)境界の一部領域が通過領域の近傍に存在するような状況を非常に高い確率で再現することができる。よって、明部や暗部の長手方向と直交する向きのスジの検出確率をさらに高めることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る検査用照明装置は、協働によりストライプパターン像を形成する複数の照明部材を備え、各々の照明部材に設けられた発光面の幅方向一方側の縁部が直線状をなし、他方側の縁部が曲線状をなすものであってもよい。
【0015】
このように、ストライプパターン像を複数の照明部材で構成することで、各照明部材をユニット化(モジュール化)することができる。ユニット化できれば、被検査面(を有する物体)の形状に合わせて各照明部材の配置を比較的自由に調整できるので、汎用性が高まる。また、発光面の形状が互いに異なる2種以上の照明部材を用意すれば容易にストライプパターン像のバリエーションを増やせるので、ストライプパターン像の自由度も高まる。さらに、各々の照明部材に設けられた発光面を、その幅方向一方側の縁部が直線状をなし、他方側の縁部が曲線状をなす形状としたので、各照射部材の発光面から被検査面に向けて照射された光をできる限り無駄なくストライプパターン像の形成に用いることができる。よって、検査工程のエネルギー効率を高めて省エネルギー化を図ることが可能になる。
【0016】
また、前記課題の解決は、本発明に係る検査用照明装置を用いた検査方法によっても達成される。すなわち、この検査方法は、複数本の明部及び暗部を交互に配列してなるストライプパターン像を被検査面に投影しながらストライプパターン像と直交する向きに被検査面を移動させることで、被検査面上の欠陥を検出するための検査方法において、ストライプパターン像として、複数本の明部の中から選択される一の明部とこれに隣接する一方の暗部との間に直線状の境界を形成し、一方の暗部とは反対側で隣接する他方の暗部との間に曲線状の境界を形成するものを用いる点をもって特徴付けられる。
【0017】
この検査方法によれば、上述した本発明に係る検査用照明装置と同様に、例えば塗装欠陥の検出を行う場合、明部19又は暗部20の長手方向と大きな角度で交差するスジ3が曲線状の境界23を通過する際、当該通過領域とスジ3との交差角度が仮に小さくなかったとしても、その近傍には、高い確率で、スジ3との交差角度が比較的小さい(平行に近い)領域が存在する(図5)。よって、このスジ3との交差角度が比較的小さい領域により、暗部20に至ったスジ3が反射し易くなる(反射の度合いが大きくなる)。また、その変化(反射)の範囲3aも従来(直線状の境界22を通過する際)に比べて大きくなる。よって、曲線状の境界23を通過する際の反射を利用して、スジ3の如き欠陥を比較的容易に検出することが可能になる。また、本発明に係るストライプパターン像21は、曲線状の境界23だけでなく直線状の境界22を兼備しているので、ブツ4や、明部19と平行なスジ3など、曲線状の境界23だけでは検出し難い欠陥もこの直線状の境界22を通過した際の反射により確実に検出することができる(図6及び図7)。従って、想定されるほぼ全ての欠陥を検出することができ、これにより不具合が後工程に流出する可能性を低減し、ひいては品質の向上を図ることが可能となる。また、想定されるほぼ全ての欠陥を1つのストライプパターン像を利用して検出することができるので、検査工程は1つで足り、これにより検査工数の低減化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、スジの如き検出困難な欠陥を含め、極力全ての欠陥を1つの工程で効率よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る検査用照明装置の側面図である。
図2図1に示す照明装置の正面図である。
図3図1に示す照明装置に設けられた照明部材の全体形状を示す斜視図である。
図4図3に示す照明部材の発光面を平面視した図である。
図5図1に示す照明装置を用いた検査方法の一例を説明するための図であって、被検査面に投影されたストライプパターン像と被検査面上の欠陥との明暗関係を示す図である。
図6図1に示す照明装置を用いた検査方法の一例を説明するための図であって、被検査面に投影されたストライプパターン像と被検査面上の欠陥との明暗関係を示す図である。
図7図1に示す照明装置を用いた検査方法の一例を説明するための図であって、被検査面に投影されたストライプパターン像と被検査面上の欠陥との明暗関係を示す図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る検査用照明装置を用いた場合に、被検査面に投影されたストライプパターン像と被検査面上の欠陥との明暗関係を示す図である。
図9】従来の検査用照明装置を用いた場合に、被検査面に投影されたストライプパターン像と被検査面上の欠陥との明暗関係を示す図である。
図10】従来の検査用照明装置を用いた場合に、被検査面に投影されたストライプパターン像と被検査面上の欠陥との明暗関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る検査用照明装置及びこの照明装置を用いた検査方法 を図面に基づき説明する。なお、本実施形態では、自動車用ボデーの塗装面を検査対象 (被検査面)とする場合を例にとって説明する。
【0021】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る検査用照明装置10の全体構成を示している。図1及び図2に示すように、この照明装置10は、被検査面としての塗装面1を有する部材(本実施形態では自動車用ボデー2)が通過可能な通路11の側方及び上方を覆うカバー部材12と、カバー部材12の内側に取付けられた複数の照明部材13とを備える。本実施形態では、自動車用ボデー2は、支持部材14上に支持された状態で、通路11上を所定の方向(図1でいえば左方向)に向けて移動するようになっている。カバー部材12の全長(通路11の長手方向に沿った向きの寸法)は、例えば塗装面1を有する自動車用ボデー2の全長よりも大きく設定される。
【0022】
照明部材13は、図3に示すように略長板状をなすもので、その長手方向が自動車用ボデー2の移動方向と直交するよう、カバー部材12の内側に取付けられる。本実施形態では、カバー部材12は略アーチ状の内周面12aを有しており、この内周面12aに沿って連続的に複数の照明部材13が配置されている(図2)。また、このように一列に取付けられた複数の照明部材13は、カバー部材12の長手方向全域にわたって、一定の間隔で複数列に配置されている(図1)。
【0023】
各照明部材13は、図3に示すように、ケーシング15と、ケーシング15の内部に収容される発光源16とを有する。ケーシング15の少なくとも発光面15aを含む部位は透過性を有する材料で形成されており、この発光面15aに向けて発光可能なように発光源16が配置される。発光源16としてはLED等の指向性に優れたものが好適であり、特定の指向性を有する場合には発光面15aを直交する向きに発光源16を配置するのがよい。これにより、発光源16から発光された光を発光面15aの法線方向にかつ極力発光面15aの全面から透過可能としている。もちろん、発光面15aから発光された光が所定の指向性を保ったままで塗装面1にまで到達することを考慮した場合、発光面15aはなるべく平坦であるのがよい。
【0024】
発光面15aは、これを平面視した状態では、その幅方向(図4でいえば左右方向)一方側の縁部17が直線状をなし、他方側の縁部18が曲線状をなす。本実施形態では、曲線状の縁部18は、波状に湾曲した形状をなすもので、例えば各々の曲率中心をこの縁部18の内側と外側とにそれぞれ配置した円弧を交互に連続させた形状をなしている。また、それぞれの円弧の円弧長は同じ長さに設定されると共に、その曲率半径R1,R2も同じ大きさに設定されている。
【0025】
以下、上記構成の検査用照明装置10を用いた検査方法の一例を主に図5図7に基づき説明する。
【0026】
まず、図1に示すように、カバー部材12の内周に設けられた通路11に塗装面1を有する自動車用ボデー2を進入させる。そして、カバー部材12の内周を通過中の自動車用ボデー2に対して複数の照明部材13から所定の照度の光を照射することにより、自動車用ボデー2の移動方向に直交する向きに伸びるライン状の明部19が一定の間隔で塗装面1に投影される(図5を参照)。塗装面1のうち照射光が照射されない領域には、カバー部材12の内周面12aが映り込むので、この内周面12aを暗色とすることで、内周面12aのうち照明部材13が取付けられていない領域(背景部)が暗部20として塗装面1に投影される(図5)。以上より、通路11を通過中の自動車用ボデー2に、明暗の縦縞模様をなすストライプパターン像21が投影される(図5)。
【0027】
ここで、塗装面1上にスジ3と呼ばれる塗装欠陥が存在し、かつこのスジ3が明部19又は暗部20の長手方向と大きな角度をもって交差する場合、自動車用ボデー2の移動に伴い(図1)、塗装面1上のスジ3はストライプパターン像21の明部19及び暗部20と直交する向きに、これら明部19と暗部20とを交互に通過する。スジ3のうち明部19と暗部20との間に形成される直線状の境界22を通過する直前の部位においては、その長手方向ではなく幅方向(図5でいえば上下方向)の範囲で反射が生じる。そのため、明部19を通過する際の明度の変化(反射)の範囲3aは小さく、作業者がこの変化を視認することは極めて難しい。
【0028】
これに対して、スジ3が明部19と暗部20との間に形成される曲線状の境界23を通過する際には、当該通過領域とスジ3との交差角度が仮に小さくなかったとしても、その近傍には、高い確率で、スジ3との交差角度が比較的小さい(平行に近い)領域が存在する。よって、このスジ3との交差角度が比較的小さい領域により、スジ3の長手方向の大部分において反射が生じる。また、この際の明度の変化(反射)の範囲3aも比較的大きくなる。よって、作業者はこの変化を比較的容易に視認することができ、これによりスジ3の検出確率が高まる。
【0029】
また、スジ3が明部19又は暗部20の長手方向と平行又は平行に近い状態で存在する場合、ボデーの進行に伴い、スジ3が明部19と暗部20との間に形成される直線状の境界22に接近すると、その全長にわたってスジ3が反射する(図6を参照)。このように、明部19を通過する際の明度の変化(反射)の範囲3aが大きい場合も、作業者はこの変化を比較的容易に視認することができる。
【0030】
また、塗装面1上にブツ4と呼ばれる塗装欠陥が存在する場合、ボデーの進行に伴い、ブツ4が明部19と暗部20との間に形成される直線状の境界22に接近すると、ブツ4のうち特に直線状の境界22に近い部分4aが大きく反射する(図7を参照)。そのため、ブツ4が明部19を通過する際の明度の変化(反射)の度合いは大きくなり、この場合も作業者はこの変化を比較的容易に視認することができる。
【0031】
このように、本発明に係る検査用照明装置10によれば、明部19又は暗部20の長手方向と大きな角度で交差するスジ3が曲線状の境界23を通過する際、スジ3を広範囲にわたって反射させることができる。これによりスジ3を比較的容易に検出することが可能になる。また、本発明に係るストライプパターン像21は、曲線状の境界23だけでなく直線状の境界22を兼備しているので、明部19に直交するスジ3だけでなく、明部19に平行なスジ3やブツ4などの塗装欠陥も比較的容易に検出することができる。もちろん、これら欠陥よりもスケールレベルの大きな塗装面1自体が有する凹凸(うねり等)も直線状の境界22で検出することができる。従って、想定されるほぼ全ての欠陥を検出することができ、これにより不具合が後工程に流出する可能性を低減し、ひいては品質の向上を図ることが可能となる。また、想定されるほぼ全ての欠陥を1つのストライプパターン像21を利用して検出することができるので、検査工程は1つで足り、これにより検査工数の低減化を図ることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、曲線状の境界23として、波状に湾曲した形状をなすものを用いた。このような形状とすることで、明部19の比較的短い長手寸法の範囲内に、できる限り多くの接線角度を有する境界23を形成することができる。そのため、スジ3の如き欠陥が曲線状の境界23のどの位置(長手方向位置)を通過した場合であっても、当該欠陥の延伸方向との交差角度が小さい(平行に近い)境界の一部領域が通過領域の近傍に存在するような状況を非常に高い確率で再現することができる。よって、明部19や暗部20の長手方向と直交する向きのスジ3の検出確率をさらに高めることが可能となる。特に、実際の塗装欠陥を検出する工程においては、比較的短時間で多くの箇所を目視で検査しなければならない事情もあり、作業者が一度に視認できる範囲は非常に狭い(数十センチ四方レベル)。よって、曲線状の境界23を上述のような形状とすることは、検出確率を高める上で非常に有効である。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0034】
例えば上記実施形態では、塗装面1に投影されるストライプパターン像21として、同一形状の曲線状の境界23が、一定の間隔で全く並列に配置された場合(図5)を例示したが、例えば明部19に直交する向きのスジ3の検出確率をさらに高める目的で、一列ごとに上下方向(明部19の長手方向)にずらして配置してもよい。図8はその一例を示すもので、曲線状の境界23を波状に見立てた場合、例えば4分の1波長分だけ中央の曲線状の境界23から上下何れかの方向(図8では上方向)に左右の曲線状の境界23’をずらした形態をなす。このような形態とするには、例えば照明部材13のカバー部材12内周における取付け位置を同じようにずらせばよい。こうすることで、仮に中央の曲線状の境界23でスジ3が当該境界23の山部頂点付近を通過したとしても、次の左側の曲線状の境界23’においては、その山部と谷部との間の傾斜領域を通過させることができる。これにより、通過する位置によらずスジ3をより広範囲で照らして(反射させて)検出確率をさらに高めることが可能になる。
【0035】
なお、上記実施形態では、波状に湾曲した形状をなす曲線状の境界23として、同一半径の円弧をつなげたものを例示したが、もちろんこれ以外の形態を採ることも可能である。例えば曲率半径R1,R2が互いに異なる円弧をつなげた形態や、非円弧の凸曲線と凹曲線とを交互につなげた形態などが採用可能である。さらにいえば、直線部を交互に屈曲させて擬似的に波状としたものを採用しても構わない。
【0036】
また例えば、曲線状の境界23のスケールレベルに関して、実際の塗装欠陥を検出する工程においては、上述したように、比較的短時間で多くの箇所を目視で検査しなければならない事情もあり、作業者が一度に視認できる範囲は非常に狭い(数十センチ四方レベル)。一方、この種の塗装欠陥として想定されるスジ3やブツ4等のスケールもある程度分かっている。よって、これらの点を考慮して、曲線状の境界23のサイズ(長手方向、幅方向)を定めることが望ましい。長手方向のスケールレベルとしては、作業者が一度に視認できる範囲の中に、少なくとも1組の山部と谷部が含まれるよう、曲線状の境界23の曲率半径R1,R2を定まるのがよい。また、幅方向のスケールレベルとしては、作業者が一度に視認できる範囲の中に、少なくとも1組の直線状の境界22と曲線状の境界23が含まれるよう、好ましくは2組の直線状の境界22と曲線状の境界23が含まれるよう、曲線状の境界23の曲率半径R1,R2を含めた明部19の幅方向寸法と、暗部20の幅方向寸法を定めるのがよい。なお、ここでいう「作業者が一度に視認できる範囲」とは、その作業状況や検査条件(照度、自動車用ボデー2の移動速度など)によっても異なるが、例えば45センチ四方以下、より厳密には30センチ四方以下程度である。
【0037】
また、明部19の基準範囲(例えば作業者が一度に視認できる範囲)に対して占める割合は、特定の塗装欠陥が明部19に埋もれてしまわないよう、例えば面積比で30%以下、好ましくは25%以下に設定するのがよい。具体的には、隣接する直線状の境界22間の距離に対する明部19の幅方向寸法の割合が30%以下となるように、照明部材13の発光面15aの幅方向寸法、及び照明部材13の配置間隔を設定するのがよい。
【0038】
また、以上の説明では、ストライプパターン像21として、直線状の境界22と曲線状の境界23とが交互に配列されてなるものを例示したが、もちろん、これ以外の形態を成すストライプパターン像21を採用することも可能である。例えば図示は省略するが、図3に示す照明部材13を回転させて、直線状の境界22が2本続いた後、曲線状の境界23が2本続くような形態、すなわち、隣接する明部19,19間で両側の境界の形状が異なる(一方の明部19はその左側に直線状の境界22を形成し、他方の明部19はその右側に直線状の境界22を形成する)形態をなすストライプパターン像21を形成してもよい。あるいはこれも図示は省略するが、両縁部17,18が共に直線状をなす発光面15aを設けた照明部材13と、両縁部17,18が共に曲線状をなす発光面15aを設けた照明部材13とを用意して、その両側に直線状の境界22を形成する明部19と、その両側に曲線状の境界23を形成する明部19とが暗部20を介して交互に配列されるストライプパターン像19を形成してもよい。
【0039】
また、以上の説明では、自動車用ボデー2の塗装面1におけるスジ3やブツ4等の塗装欠陥の有無を検出する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、他の部品(製品)の塗装面1における塗装欠陥の有無を検出する場合はもちろん、光を反射するような面、すなわち光沢性を有する面を被検査面とする場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 塗装面(被検査面)
2 自動車用ボデー
3 スジ
4 ブツ
10 検査用照明装置
11 通路
12 カバー部材
13 照明部材
15 ケーシング
15a 発光面
16 発光源
17 直線状の縁部
18 曲線状の縁部
19 明部
20 暗部
21 ストライプパターン像
22 直線状の境界
23 曲線状の境界
119 明部
121 ストライプパターン像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10