特許第6233929号(P6233929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233929化合物、これを用いた定量分析用標準物質およびデスモシン類の定量方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233929
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】化合物、これを用いた定量分析用標準物質およびデスモシン類の定量方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20171113BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20171113BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20171113BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20171113BHJP
   C07D 213/55 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01N27/62 V
   G01N30/88 E
   G01N27/62 X
   G01N30/72 C
   G01N30/86 J
   C07D213/55
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-55337(P2014-55337)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-178957(P2015-178957A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 豊展
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−210564(JP,A)
【文献】 特開2005−249493(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0273586(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0130182(US,A1)
【文献】 特表2003−536070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62、30/00−30/96、
H01J 49/00−49/42、
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)に示される化合物。
【化12】
(上記一般式(I)中、R1は、炭素数2以上6以下のアルキレン基であり、R2は炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R3は、炭素数2以上6以下のアルキレン基である。ここで、R1がトリメチレン基であり、R2がジメチレン基であり、かつ、R3がテトラメチレン基であることはない。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、R2がジメチレン基であり、R3がテトラメチレン基である、化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物において、当該化合物とデスモシンとの分子量差が−14以上28以下である、化合物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の化合物を含む、定量分析用標準物質。
【請求項5】
測定対象の試料に請求項1乃至3いずれか一項に記載の化合物を添加するステップを含む、デスモシン類の定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、これを用いた定量分析用標準物質およびデスモシン類の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)は、気管支炎や肺気腫などの病気の総称である。世界保健機関(World Health Organization:WHO)によると、現在死亡原因の第4位を占めており、2020年までに第3位に浮上すると警告している。COPDについては、そもそもの病態が極めて複雑で未知の部分が多く、根本的治療薬すら存在しない。今世紀、発展途上国での喫煙者の増加や産業発展による大気汚染により、世界規模でのCOPD患者の急増が危惧されているため、迅速かつ簡便な検査法の確立が至上命題となっている。
【0003】
COPD患者の痰・血液・尿を加水分解処理し、高速液体クロマトグラフ−質量分析計(Liquid Chromatography-Mass Spectrometry:LC−MS)で分析すると、肺胞の伸縮を司る弾性繊維エラスチンの架橋アミノ酸であり下記式に示されるデスモシン(化合物1)およびその異性体であり下記式に示されるイソデスモシン(化合物2)が観測される。健常者と比べて、COPD患者におけるそれらの存在量が異なることから、デスモシン類はCOPDのバイオマーカーとして有望視されている。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Toyonobu Usuki他7名、「Total synthesis of COPD biomarker desmosine that crosslinks elastin」、Chem. Commun.、2012年、48号、3233−3235ページ
【非特許文献2】Hiroto Yanuma他1名、「Total synthesis of the COPD biomarker desmosine via Sonogashira and Negishi cross-coupling reactions」、Tetrahedron Lett.、2012年、53号、5920−5922ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、生体内に含まれるデスモシン類の絶対量が微量であるため、LC−MS/MS(Liquid Chromatography−tandem Mass Spectrometry)等による厳密な定量分析のためには、内部標準物質の添加が必要となっている。このため、デスモシン類の標準物質として用いられる化合物が容易に合成できるとよい。デスモシンの全合成に関する技術として、非特許文献1および2に記載のものがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、新規なデスモシン類似体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
下記一般式(I)に示される化合物が提供される。
【化2】
(上記一般式(I)中、R1は、炭素数2以上6以下のアルキレン基であり、R2は炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R3は、炭素数2以上6以下のアルキレン基である。ここで、R1がトリメチレン基であり、R2がジメチレン基であり、かつ、R3がテトラメチレン基であることはない。)
【0009】
また、本発明によれば、前記本発明における化合物を含む、定量分析用内部標準物質等の定量分析用標準物質が提供される。
また、本発明によれば、測定対象の試料に前記本発明における化合物を添加するステップを含む、デスモシン類の定量方法が提供される。
なお、本明細書において、デスモシンおよびイソデスモシンをあわせて「デスモシン類」とも呼ぶ。
【0010】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0011】
たとえば、本発明によれば、前記本発明における化合物を内部標準物質等の標準物質として使用する定量分析方法が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における化合物を内部標準物質等の標準物質として使用するデスモシン類の分析または定量方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規なデスモシン類似体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】desmosine-CH2のLC-MS測定結果を示す図である。
図2】desmosine-CH2のLC-MS測定により得られた検量線を示す図である。
図3】desmosine-CH2のLC-MS/MS測定結果を示す図である。
図4】desmosine-CH2のLC-MS/MS測定結果を示す図である。
図5】desmosine-CH2のLC-MS/MS測定により得られた検量線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を具体例に基づいて説明する。以下の実施形態に記載の複数の態様を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
本実施形態における化合物は、デスモシンの類似化合物であって、下記一般式(I)に示される。
【0016】
【化3】
【0017】
(上記一般式(I)中、R1は、炭素数2以上6以下のアルキレン基であり、R2は炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R3は、炭素数2以上6以下のアルキレン基である。ここで、R1がトリメチレン基であり、R2がジメチレン基であり、かつ、R3がテトラメチレン基であることはない。)
【0018】
デスモシンは、一般式(I)において、R1がトリメチレン基であり、R2がジメチレン基であり、かつ、R3がテトラメチレン基である化合物である。そして、本実施形態における化合物は、デスモシンの類似体であって、複素環に結合する一または二以上の側鎖のアルキル鎖長が、デスモシンと異なるものである。
【0019】
一般式(I)において、複素環の4位の炭素原子に結合する側鎖における炭素数が、具体的には当該側鎖におけるアルキレン鎖長がデスモシンと異なるとき、R1は、炭素数2以上6以下のアルキレン基である。このとき、本実施形態における化合物とデスモシンとの分子量差を−14以上42以下の範囲で調整することができる。
【0020】
一般式(I)において、複素環の3位および5位の炭素原子に結合する側鎖における炭素数が、具体的には当該側鎖におけるアルキレン鎖長がデスモシンと異なるとき、2つのR2は、炭素数1以上4以下のアルキレン基である。このとき、本実施形態における化合物とデスモシンとの分子量差を−28以上56以下の範囲で調整することができる。
【0021】
また、一般式(I)において、複素環の1位の窒素原子に結合する側鎖における炭素数が、具体的には当該側鎖におけるアルキレン鎖長がデスモシンと異なるとき、R3は、炭素数2以上6以下のアルキレン基である。このとき、本実施形態における化合物とデスモシンとの分子量差を−28以上28以下の範囲で調整することができる。
【0022】
一般式(I)に示した化合物は、デスモシンの定量分析において標準物質として用いる観点から、デスモシンとの分子量差が−28以上であり、好ましくは−14以上である。同様の観点から、一般式(I)に示した化合物は、デスモシンとの分子量差が56以下であり、好ましくは42以下、さらに好ましくは28以下である。これにより、たとえば一般式(I)に示した化合物をデスモシンと適度な質量差を有する質量分析用の標準物質として用いることができる。
【0023】
また、一般式(I)に示した化合物の安定性の観点からは、一般式(I)中、R3がテトラメチレン基であることが好ましい。また、化合物の安定性および分子量の制御性をさらに高める観点からは、R2がジメチレン基であり、R3がテトラメチレン基である構造とすることが好ましい。このとき、R1は炭素数2または4以上6以下のアルキレン基である。
【0024】
次に、本実施形態における化合物の製造方法を説明する。本実施形態における化合物の製造方法に制限はないが、たとえば非特許文献1または2に記載の方法を用いることができる。さらに具体的には、以下のスキーム1に示す手順とすることができる。
なお、スキーム1においては、アミノ基の保護基をt−ブトキシカルボニル(Boc)基とし、カルボキシル基の保護基をベンジル(Bn)基とする場合を例に挙げて説明するが、アミノ基およびカルボキシル基のそれぞれについて、保護基の有無、数および種類に制限はなく、適宜選択することができる。
【0025】
【化4】
【0026】
スキーム1中、一般式(II)および(III)において、R11基は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基である。すなわち、R11基のアルキレン鎖長は、一般式(I)におけるR1基のアルキレン鎖長より2少ない。また、X1はハロゲンである。
一般式(IV)中、X4およびX5は、それぞれ異なるハロゲンである。一般式(IV)に示した化合物として、たとえば3,5−ジブロモ−4−ヨードピリジンが挙げられる。
一般式(V)中、R2は一般式(I)におけるR2と同じであり、X2はハロゲンである。
また、式(VI)中、R3は一般式(I)におけるR3と同じであり、X3はハロゲンである。
なお、スキーム1において、R11がメチレン基であり、R2がジメチレン基であり、かつ、R3がテトラメチレン基であることはない。
【0027】
スキーム1に示した手順では、まず、一般式(II)に示した化合物を一般式(III)に示した化合物に変換する。そして、薗頭クロスカップリングにより、一般式(IV)に示した化合物のピリジン環の4位に、一般式(III)に示した化合物の−C≡C−R11−C(NHBoc)CO2Bn基を導入する。
また、根岸クロスカップリングにより、ピリジン環の3位および5位に、一般式(V)に示した化合物の−R2−C(NHBoc)CO2Bn基を導入する。ここで、R2は一般式(I)におけるR2と同じであり、X2はハロゲンである。
なお、薗頭クロスカップリングによる反応と根岸クロスカップリングによる反応の順序に制限はない。
【0028】
さらに、ピリジン環の1位に、一般式(VI)に示した化合物の−R3−C(NHBoc)CO2Bn基を導入する。
その後、ピリジン環の4位の側鎖に含まれるエチニレン基の還元反応をおこない、炭素−炭素三重結合を一重結合とする。そして、各側鎖のアミノ基およびカルボキシル基を脱保護する。
以上の手順により、一般式(I)に示した化合物が得られる。
各手順における詳細な反応条件については、実施例の項において後述する。
【0029】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態における化合物は、デスモシン類との構造の類似性が高く、かつ、デスモシン類に対して分子量の絶対値を14m/z以上シフトさせることができる。このため、デスモシン類の定量分析用標準物質として好適に用いられる。さらに具体的には、LC−MSやLC−MS/MS法等の質量分析を含む方法によりデスモシン類を定量分析する際の内部標準物質として好適である。このとき、デスモシン類の定量方法は、たとえば測定対象の試料に本実施形態における化合物を添加するステップを含む。また、本実施形態における化合物は、たとえばCOPDバイオマーカー分析における内部標準物質として用いることができる。
また、本実施形態の化合物は、製造工程中に同位体標識工程を必要としないため、デスモシン類の同位体標識化合物と比べて合成が容易である。このため、本実施形態の化合物は、大量生産に好適である。
また、質量分析において異なる質量数であっても同一の構造の化合物が同時に存在すると、お互いに干渉し合い、厳密性が損なわれる場合がある。これに対し、本実施形態の化合物を質量分析の内部標準物質として用いることにより、たとえばデスモシン類との干渉を抑制することも可能となるため、より厳密な定量分析に寄与しうる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本実施例では、スキーム2に示す手順にてデスモシン−CH2(化合物18)の合成をおこなった。また、デスモシン−CH2(化合物18)およびこれに関連する化合物の炭素原子の番号付けは以下の通りである。
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
本実施例にて用いた試薬、分析装置等は以下の通りである。
(試薬)
非水系の反応は、すべて、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーを用いておこない、特に記載のない場合には蒸留した新鮮な溶媒を用いた。Diisopropylethylamine (iPr2NEt) および trimethylsilyl chloride (TMSCl) は蒸留により乾燥した。Dimethylformamide (DMF) はMgSO4 により蒸留し、活性化したモレキュラーシーブ上で保存した。脱水したtetrahydrofuran (THF)、methanol (MeOH) および ethanol (EtOH) は関東化学社より購入し、活性化したモレキュラーシーブ上で保存した。すべての試薬を製造業者より入手し、特に記載のない場合にはさらに精製することなく用いた。
【0034】
(分析)
薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography:TLC)分析にはメルク社製のSilica gel 60 F254プレートを用いた。
カラムクロマトグラフィーには、酸性 Silica gel 60 (spherical, 40-50 μm) または中性Silica gel 60N (spherical, 40-50 μm) を用いた(いずれも関東化学社製)。
逆相シリカゲルクロマトグラフィーは、Wako gel 100 C18(和光純薬工業社製)を用いておこなった。
融点の測定には、ATM-01装置(アズワン社製)を用いた。
旋光度の測定には、JASCO P-2200 デジタル旋光計およびナトリウムランプ (λ= 589 nm) D線を用いた。測定結果を「[α]DT (c g/100 mL, solvent)」と表記する。
UVスペクトル測定にはJASCO V-560 UV/VIS分光光度計を用いた。
赤外線(IR)スペクトル測定には、JASCO FT-IR 4100分光計を用いた。測定結果を波数(cm-1) で示す。
1H および 13C NMRスペクトル測定には、JEOL JNM-EXC 300 スペクトロメータ (300 MHz) または JEOL JNM-ECA 500 スペクトロメータ (500 MHz) を用いた。
1H NMRデータは、以下のように示す:化学シフト (δ, ppm)、積分値、多重度 (s, singlet; d, doublet; t, triplet; q, quartet; m, multiplet), カップリング定数 (J) in Hz、帰属。
13C NMR データは、化学シフト (δ, ppm)により示す。
EI-MS スペクトル測定は、Shimadzu GCMS QP-5050 装置またはJEOL JMS-700 装置によりおこなった。FAB-MS スペクトル測定にもJEOL JMS-700を用いた。ESI-MSスペクトル測定は、JEOL JMS-T100LC 装置またはThermo Exactive スペクトロメータを用いた。
【0035】
Benzyl 2-(S)-[(tert-butoxycarbonyl)amino]-hex-5-ynoate(化合物20)の合成
【0036】
【化7】
【0037】
CuCN (322.5 mg, 3.58 mmol, 1.0 eq)およびLiCl (309.3 mg, 7.16 mmol, 2.0 eq) を1つのフラスコに合わせ入れ、減圧下で150℃にて2時間加熱乾燥した。CuCNおよびLiClの乾燥中に、ヒートガンを用いて亜鉛粉末(1.45 g, 22.2 mmol, 6.2 eq)を減圧下で5分間加熱乾燥した。そして、亜鉛粉末の入ったフラスコにDMF (1.5 mL)およびTMSCl (0.14 mL, 1.1 mmol, 5 mol% to Zn)を室温(25℃、以下同じ。)で加えた。室温にて30分撹拌後の懸濁液に、2-(S)-2-(benzyloxycarbonylamino)-4-iodobutyric acid benzyl ester (化合物14)(1.5 g, 3.58 mmol, 1.0 eq)のDMF溶液(1.0 mL, washed with 0.5 mL x 2)を加えた。化合物14にZnが導入されたことをTLCにて確認した。その後、別のフラスコ中で−5℃に冷却しておいたCuCNおよびLiClのDMF (7.5 mL)溶液を、Znが導入された化合物14の溶液に30分かけて添加した。
−5℃にて15分撹拌後、−20℃に冷却し、化合物14の反応混合物に、新たに調製した(2-bromoethynyl)trimethylsilane (1.0 mL, 7.16 mmol, 2.0 eq)を5分かけて滴下した。その後、混合液を徐々に室温まで温め、17時間撹拌を続けた。得られた混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。続いて、EtOAcにより水層を抽出した。有機層をあわせて食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、さらに真空中で濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 20/1→10/1)により精製し、化合物19を非分離副生物とともに得た(870.4 mg)。
得られた粗生成物のTHF (30.0 mL)およびEtOH (654μL)溶液を0 ℃に冷却し、そこにtetrabutylammonium fluoride (TBAF) (607μL, 1.0 M solution in THF)を加えた。0 ℃にて1.5時間撹拌した後、反応混合物をEtOAcにて希釈し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。そして、水層をEtOAcにて抽出した。有機層をあわせて食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、さらに真空中で濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc = 15/1)により精製し、化合物20を白色固体として得た(496.4 mg, 1.18 mmol, 44% (2 steps)); Rf 0.29 (hexane/EtOAc = 8/1); [α]D20 +5.7 (c 0.1, CHCl3); mp 61-62 ℃; IR (ATR, cm-1) 3400, 3326, 1755, 1683, 1514, 1451, 1368, 1295, 1254, 1213, 1160, 1052, 959, 755, 695, 638; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.37-7.33 (5H, m, Bn), 5.22-5.17 (2H, m, Bn), 5.13 (1H, s, 17NH), 4.43 (1H, m, H17), 2.29-2.23 (2H, m, H15), 2.13-2.04 (1H, m, H16), 1.96 (1H, t, J = 2.84 Hz, H13), 1.92-1.79 (1H, m, H16), 1.43 (9H, s, t-Bu); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ171.8, 155.0, 135.0, 128.3, 128.2, 128.0, 82.5, 79.7, 69.0, 66.9, 52.6, 31.1, 28.0, 14.5; FAB-MS (m/z) calcd for C18H24NO4 [M+H]+ 318.17, found 318.25。
【0038】
(S)-Benzyl 2-(tert-butoxycarbonylamino)-6-(3,5-dibromo-pyridin-4-yl)-hex-5-ynoate (化合物21)の合成
【0039】
【化8】
【0040】
3,5-dibromo-4-iodopyridine (化合物12:249.1 mg, 0.69 mmol, 1.0 eq)、2-tert-butoxycarbonylamino-hex-5-ynoic acid benzyl ester (化合物20:327.1 mg, 1.03 mmol, 1.5 eq)、tris(dibenzylideneacetone)dipalladium (0) (Pd2dba3) (64.2 mg, 70.0 μmol, 10 mol%)、P(2-furyl)3 (64.9 mg, 0.28 mmol, 40 mol%)およびCuI (55.7 mg, 0.28 mmol, 40 mol%)のDMF (34.5 mL)溶液を、freeze/pump/thawサイクルにより脱気し、得られた溶液にiPr2NEt (6.9 mL)を加えた。40℃にて17時間撹拌後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。続いて、EtOAcにより水層を抽出した。有機層をあわせて食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、さらに真空中で濃縮した。これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(hexane/ethyl acetate = 5/1)により精製し、化合物21を白色固体として得た(276.3 mg, 0.50 mmol, 73%); Rf 0.27 (hexane/EtOAc = 5/1); [α]D20 +9.9 (c 0.1, CHCl3); mp 114-115 ℃; IR (ATR, cm-1) 3348, 1753, 1682, 1518, 1448, 1360, 1303, 1215, 1166, 1055, 959, 752, 694, 606; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.61 (2H, s, H2/6), 7.37-7.36 (5H, m, Bn), 5.24-5.18 (2H, m, Bn), 5.14 (1H, m, 17NH), 4.52 (1H, m, H17), 2.67-2.61 (2H, m, H15), 2.32-2.21 (1H, m, H16), 2.08-1.96 (1H, m, H16), 1.42 (9H, s, t-Bu); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ172.0, 155.5, 149.7, 135.3, 134.7, 128.8, 128.6, 128.4, 123.5, 104.3, 80.2, 78.1, 67.4, 53.1, 31.3, 28.4, 16.7; ESI-HRMS (m/z) calcd for C23H24Br2N2NaO4 [M+Na]+ 574.9980, found 574.9980。
【0041】
((2S,2'S)-benzyl 4,4'-(4-((S)-6-(benzyloxy)-5-(tert-butoxycarbonyl amino)-6-oxopent-1-ynyl)pyridine-3,5-diyl)bis(2-(tert-butoxycarbonylamino)butanoate))(化合物22)の合成
【0042】
【化9】
【0043】
亜鉛末(198 mg, 3.0 mmol) を窒素パージした1.5 mLマイクロチューブに入れた。これに乾燥DMF (150 μL) およびTMSCl (60.0 μL, 0.47 mmol) を加え、得られた混合物を室温にて15分間強く撹拌した。撹拌を停止し、マイクロシリンジを用いて溶液を除去した。残った固体を減圧下で熱空気銃を用いて乾燥させた。得られた活性亜鉛を室温に冷却し、これに2-(S)-2-(benzyloxycarbonylamino)-4-iodobutyric acid tert-butyl ester (化合物14:217.5 mg, 0.5 mmol, 5.0 eq)の乾燥DMF (150 μL and rinsed with 100 μL DMF) 溶液を加えた。反応混合物を室温にて1時間撹拌した。TLC分析(hexane/ethyl acetate = 5/1) にて出発物質が残存していないことを確認した後、撹拌を停止し、遠心分離機を用いて亜鉛末を沈澱させた。マイクロシリンジおよび200 μL のDMFにより亜鉛末中の溶液を取り出し、Pd-pyridine-enhanced precatalyst preparation stabilization and initiation (PEPPSI(商標))-IPr (13.2 mg, 20 mol%)および化合物21 (55.2 mg, 0.1 mmol, 1.0 eq) の入った10 mLのフラスコに加えた。60℃にて1.5時間撹拌を続け、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。EtOAcにより水層を抽出した。有機層をあわせて食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、さらに真空中で濃縮して黄色油状の粗生成物を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(hexane/ethyl acetate = 2/1→1/1)により精製し、化合物22の精製物を黄色油状物質として得た (77.8 mg, 0.83 mmol, 83%) ;Rf 0.42 (hexane/EtOAc = 1/1); [α]D20 +23.5 (c 0.1, CHCl3); IR (ATR, cm-1) 3783, 3465, 3084, 2976, 2361, 1713, 1514, 1452, 1367, 1254, 1168, 1053, 859, 748, 697; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.18 (2H, s, H2/6), 7.33-7.30 (15H, m, Bn), 5.38 (1H, s, 17NH), 5.32-5.30 (2H, m, 21NH/21’NH), 5.19-5.09 (6H, m, Bn), 4.43 (1H, m, H17), 4.38-4.36 (3H, m, H11/21/21’), 2.77-2.68 (4H, m, H19/19’), 2.58-2.54 (2H, m, H16), 2.20-1.84 (6H, m, H16/20/20’), 1.43-1.40 (27H, m, t-Bu); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ172.3, 172.1, 155.5, 149.4, 147.7, 135.4, 135.3, 128.7, 128.6, 128.4, 128.3, 80.0, 67.3, 67.1, 53.5, 53.0, 33.0, 28.4, 28.1, 16.5; ESI-MS (m/z) calcd for C55H68N4NaO12 [M+Na]+ 999.47, found 979.44.; ESI-HRMS (m/z) calcd for C55H68N4NaO12 [M+Na]+ 999.4731, found 999.4744。
【0044】
(3,5-bis((S)-4-(Benzyloxy)-3-(tert-butoxycarbonylamino)-4-oxobutyl)-4-((S)-6-(benzyloxy)-5-(tert-butoxycarbonylamino)-6-oxopent-1-ynyl)-1-((S)-6-(benzyloxy)-5-(tert-butoxycarbonylamino)-6-oxohexyl)pyridinium iodide) (化合物26) の合成
【0045】
【化10】
【0046】
化合物22(13.3 mg, 13.6 μmol, 1.0 eq)およびbenzyl 2-(S)-((tert-butoxycarbonyl)amino)-6-iodohexanoate (化合物25:18.3 mg, 40.8 μmol, 3.0 eq) をCH3NO2 (1.0 mL) 中の混合物とし、60℃で23時間加熱した。その後、80℃に昇温して25時間反応させた。反応混合物を真空中で濃縮した。中性シリカゲルクロマトグラフィー (Hexane/Ethyl acetate = 1/1→CH2Cl2/MeOH = 10/1) により精製し、化合物26(15.9 mg, 11.2 μmol, 82%) を黄色油状物質として得た; Rf 0.32 (CH2Cl2/MeOH = 10/1); [α]D25 +10.9 (c 0.1, CHCl3); IR (ATR, cm-1) 3862, 3740, 3360, 2976, 2363, 2224, 1711, 1628, 1513, 1370, 1252, 1167, 1053, 861, 749, 698; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.95 (2H, s, H2/6), 7.34-7.31 (20H, m, Bn), 5.62-5.59 (2H, m, 21NH/21’NH), 5.33 (1H, s, 17NH), 5.24 (1H, s, 11NH), 5.21-5.11 (8H, m, Bn), 4.73-4.66 (1H, m, H7), 4.57-4.53 (1H, m, H7), 4.40-4.39 (1H, m, H17), 2.97 (4H, t, J = 7.35 Hz, H19/19’), 2.64 (2H, t, J = 6.15 Hz, H15), 2.27-1.94 (8H, m, H8/16/20/20’), 1.91-1.65 (4H, m, H9/10), 1.42-1.39 (36H, m, t-Bu); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ172.2, 155.7, 142.9, 135.4, 135.3, 135.2, 128.7, 128.5, 80.2, 67.5, 67.4, 67.2, 53.1, 29.7, 28.4, 17.1; ESI-HRMS (m/z) calcd for C73H94N5O16 [M]+ 1296.6673, found 1296.6696。
【0047】
Desmosine-CH2 (化合物18) の合成
【0048】
【化11】
【0049】
化合物26(33.3 mg, 23.4 μmol, 1.0 eq) のMeOH (1.0 mL) 溶液を10% Pd/C (125.6 mg, 116.9 μmol, 5.0 eq) で処理し、バルーン圧にて水素添加した。40℃にて4日間撹拌後、中性シリカゲル上のセライトパッドで濾過し、MeOHで溶出することにより不溶物を分離した。濾液を濃縮して得られた粗生成物(19.0 mg) にMeOH (0.6 mL) を加え、10% Pd/C (71.6 mg) で処理し、バルーン圧、40℃にて水素添加した。2日間撹拌後、中性シリカゲル上のセライトパッドで濾過し、MeOHで溶出することにより不溶物を分離し、濾液を真空中で濃縮した。得られた粗生成物 (13.6 mg) をさらに精製することなく次の反応に用いた。
トリフルオロ酢酸(TFA)および蒸留水の混合物 (2.9 mL, TFA/water = 95/5) を濾液に加え、室温で3時間撹拌した。その後、溶媒を真空中で除去した。C18シリカゲルカラムクロマトグラフィー (0.1% TFA in distilled water) により精製し、化合物18 (6.7 mg, 10.3 μmol, 44% (2 steps)) を黄色油状物質として得た; Rf 0.22 [MeOH (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA)]; [α]D20 +16.4 (c 0.1, H2O); 1H NMR (500 MHz, D2O) δ8.55 (2H, s, H2/6),4.1 (2H, t, J = 7.6 Hz, H7), 4.10 (2H, t, J = 6.1 Hz,H21/21’), 5.14 (1H, m, NH), 4.04-3.97 (2H, m, H11/17), 3.10-3.04 and 2.97-2.89 (4H, m, H19/19’), 2.97-2.89 (2H, m, H13), 2.26-2.21 (4H, m, H20/20’), 2.07-1.94 (8H, m, H8/10/15/16), 1.68-1.55 (4H, m, H9/14); 13C NMR (75 MHz, D2O) δ173.2, 173.1, 172.8 (C12/18/22/22’), 160.1 (C4), 142.3 (C2/6), 140.3 (C3/5), 61.2 (C7), 53.7, 53.6 (C11/17/21/21’), 31.0, 30.5, 30.1, 29.8 (C8/10/15/20/20’), 29.1 (C13), 26.1, 25.2 (C9/14), 21.6 (C16); ESI-HRMS (m/z) calcd for C25H42N4O8 [M]+ 540.3033, found 540.3031。
【0050】
(実施例2)
本例では、実施例1で得られたdesmosine-CH2(「des-CH2」とも呼ぶ。)のLC-MSによる分析をおこなった。
desmosine-CH2の溶液(3.4 mg/ml in 1mM HFBA、3 mM NH4Ac aq)を希釈してLC-MS用のサンプル(100 μg/ml)を調製し、以下の条件にて分析をおこなった。
・LC-MS(Waters社製)
・カラム温度:30 ℃
・オートサンプラー内温度:18 ℃
・インジェクション量:10 μL
・流速:0.2 mL/min
・移動相溶媒:A…7 mM heptafluorobutyric acid (HFBA) および 5 mM NH4Ac aq
B…7 mM HFBA および 5 mM NH4Ac in 80% Acetonitrile
・溶媒比率 (A:B):時間(分) A B
0-6 100 0
6-7 95 5
7-8 10 90
・MS分析時間:1-8 min
・Cone voltage:45 V
【0051】
分析の結果、保持時間は6.1 minでありピークが分析時間内に下がりきることが確認された。
また、すべての化合物のMSを検出するfull scan modeにてdesmosine-CH2溶液を分析した結果、desmosine-CH2は540.5 m/zで検出された。そこで、MSで特定の質量の化合物のみを選択して検出するSelected Ion Monioring (SIM)では540.5 m/zを追跡することとした。これによりその他の質量の化合物は検出されなくなるため、より低濃度のサンプルであってもdesmosine-CH2を検出することができるようになる。
図1は、SIM modeおよびFull scan modeでのLC-MS測定結果を示す図である。
【0052】
検量線の作成
様々な濃度のサンプル(200, 1000, 2000, 5000, 10000, 15000, 20000 ng/mL)を調製し、SIMモードにて測定をおこなった。各サンプルについて測定されたピーク面積値から検量線を作成したところ、以下の式が得られた。
y = 4.5928x - 1631.2 (R2 = 0.9978)
上記式中、xはdesmosine-CH2の濃度であり、yはピーク面積値である。
測定結果を表1および図2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
Desmosine-CH2の定量分析
検量線の信頼性を確認するため、QC (Quality Control)サンプルを用いて定量を行った。
QCサンプルとして既知濃度のdesmosine-CH2溶液(entry 1:2600 ng/mL、entry 2:16700 ng/mL)を新たに調製し、これをLC-MSによって分析した。そして得られたピーク面積値を式のyに代入することで濃度xを算出した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
理論値との誤差は±15%までが許容範囲であるとされている。表2より、entry 1および2における誤差はそれぞれ-10.2%、-4.0%であり、ともに許容範囲内であった。よって、得られた検量線は定量分析に用いることができる正確性を有することがわかる。
【0057】
さらに、SIMモードでの分析において、移動相の比率、溶媒比を変える速度(curve)、cone voltageといった条件を1つずつ変えることで、さらなる条件の最適化をおこなった。その結果、desmosine-CH2のLC-MS分析の観点からは、
・溶媒比率(A:B):85:15
・Curve:6
・Cone voltage:45 V
とすることが好ましい条件であった。
【0058】
(実施例3)
本例では、実施例1で得られたdesmosine-CH2のLC-MS/MSによる分析をおこなった。
Full Scan Modeにおけるフラグメンテーションの確認
LC-MS/MS分析では、SIMモードで選択した分子を開裂させることで得られるフラグメンテーションを選択的に検出できる(Selected Reaction Monitoring = SRM )。そのため、SIMモードよりもさらに高感度となり、より低濃度の化合物を分析することが可能となる。
そこでまずはdesmosine-CH2のLC-MS/MS分析をおこなうために、すべての化合物を検出するfull scanにおいて測定し、化合物を開裂させるためのcollision energyを調節することでdesmosine-CH2から得られるフラグメンテーションを確認した。図3は、desmosine-CH2のLC-MS/MS測定で得られたフラグメンテーションを示す図である。
比較的高濃度である10000 ng/mLのdesmosine-CH2の溶液を、シリンジから一定の流速で直接MS/MSにインジェクトした。その後、測定画面を確認しながらcollision energyを調節し、生成するフラグメンテーションを確認したところ、40 Vのcollision energyにおいて495.14 m/zのピークが最も強く検出された。そこでdesmosine-CH2をSRMモードで分析する際には、collision energyを40 Vとし、追跡するフラグメンテーションを495.14 m/zとした。
【0059】
分析条件の最適化、SRM モードにおける感度確認
LC-MS/MSにおけるdesmosine-CH2の分析条件は以下の通りである。
・LC-MS/MS(Thermo社製)
HPLC: FINNIGAN Surveyor
MS/MS: FINNIGAN Quantum discovery
・カラム:N-dc18-2x150 mm
・インジェクション量:10 μL
・流速:0.2 mL/min
・移動相溶媒:A…7 mM HFBA および 5 mM NH4Ac aq
B…7 mM HFBA および 5 mM NH4Ac in 80% Acetonitrile
・溶媒比率(A:B):時間(分) A B
0-10 100 0
10-11 75 25
11-14 10 90
14-17 10 90
17-30 100 0
【0060】
上記の条件において、100 ng/mlのdesmosine-CH2溶液のSRMモードによる分析について感度確認をおこなった結果、desmosine-CH2のピークが明確に確認された。測定結果を図4に示す。また、SRMモードではSIMモードよりもさらに低濃度のサンプルについても分析できることがわかった。
【0061】
検量線の作成
各濃度のサンプル(2, 10, 20, 50, 100, 150, 200 ng/ml)をSRMモードにて分析し、ピーク面積値から検量線を作成したところ、以下の式が得られた。
y = 415.17x - 5379.2 (R2 = 0.967)
上記式中、xはdesmosine-CH2の濃度であり、yはピーク面積値である。
測定結果を表3および図5に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
本明細書において、以下の略語を用いた。
Me:メチル
Et:エチル
Pr:プロピル
Bu:ブチル
Ac:アセチル
rt:室温
min:分
h:時間
d:日
図1
図2
図3
図4
図5