(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の各ループアンテナには、次のような課題があった。
すなわち、特許文献1に開示されたループアンテナは、上記
図1に示すループアンテナが有する、アンテナスペースの周囲に近接して配設される筐体及び回路基板等の金属体の影響で、そのインピーダンスが変動しやすいという課題は解消されておらず、加えて、携帯通信端末等に問題なく採用できるほど、充分に小型化できているとはいえなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたアンテナは、無給電素子を備えることで、上記
図1に示すループアンテナの50Ω系の給電回路からそのままの給電することが難しい、という課題は解消できる。しかし、このアンテナではグラウンド板が必須であり、グラウンド板とアンテナ素子との位置関係は、アンテナ素子がグラウンド板の側部近傍にグラウンド板の板面に垂直な方向で重ならないように、と限定されている。つまり、アンテナと重なるようにはグラウンド板は配置できないため、スペース効率が悪く、小型化する上で不利である。したがって、アンテナの小型化については充分とはいえなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑み創案されたもので、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を損なうことなく、そのサイズを従来に比べて大幅に小型化することができるループアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、導体線路で同一平面上にあるループを形成し、該ループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部を有するアンテナ素子と、該アンテナ素子に給電するための給電部とを備えるループアンテナである。
【0011】
本発明によれば、ループの外形が十字形を形成することで、その入力インピーダンスを50Ω程度に低減することができる。詳しくは、このアンテナ素子の十字形状のループは、正方形のループアンテナの四つの角を内側に折り込むことで、入力インピーダンスが100Ω程度の長方形ループアンテナを二段並列に接続したのと同等のインピーダンス特性になると考えられ、このような形状にするだけで、入力インピーダンスが50Ωほどになり、インピーダンス特性が改善される。しかも、従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は劣化することなく同等である。
【0012】
なお、アンテナ素子に対する給電という観点からは、一般的に給電線には特性インピーダンスが50Ωのものが使用されるという理由から、本発明のループアンテナのように、アンテナの入力インピーダンスが50Ωに近くなることによって、給電効率が良くなる利点もある。
【0013】
これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を従来の正方形のループアンテナと比べて小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能であり、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を実質的に損なうことなく、そのサイズを従来に比べて大幅に小型化することができる。
【0014】
なお、この「小型化」の意味は、同一平面上にあるアンテナ素子のアンテナ面積及び実質占有面積が小さくなるということである。
本明細書にいう「アンテナ面積」の用語は、アンテナ素子の外形が占める面積を意味し、「実質占有面積」の用語は、後述する各実施の形態のようにループアンテナの実質的な占有形状が四角形である場合、例えばアンテナ素子の外形を内包できる最も小さな四角形の面積を意味する。
【0015】
(2)本発明は、前記アンテナ素子の全体が、誘電体基板の表面に配設されている構成とすることができる。
【0016】
この場合は、誘電体基板と一体化することにより、例えばループアンテナを単独で自由空間に存在させる場合とは相違して、誘電体基板の強度、言い換えれば誘電体基板を形成している材料の強度と同等の強度をループアンテナに付与することができる。
また、アンテナ素子と、後述する導体板を若干の距離(間隔)をもって配することが、誘電体基板の表裏面にこれらを配設することで、容易に実現できる。
【0017】
なお、誘電体基板は、広いバンドギャップを有し、直流電流に対しては電気を通さない絶縁体として振る舞う性質を有する。誘電体基板としては、例えば、プラスチック、セラミック、雲母(マイカ)等を採用できる。
【0018】
また、誘電体基板の表面にアンテナ素子を配設する方法としては、例えば導体線路をプリントする方法や、誘電体基板表面全体に金属薄膜を張り導体線路の部分以外の金属薄膜をエッチング等で除去してアンテナ素子を形成する方法等があるが、これらの方法に限定されるものではなく、各種公知手段が採用できる。
【0019】
(3)本発明は、前記導体線路を延長し、前記導体線路と電気的に接続されている突出線路を有する構成とすることができる。
【0020】
この場合は、突出線路を設けて導体線路の長さを延長することで、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスをアンテナ素子が単に十字形のものと比べて更に調整(低域化)する働きをし、しかも放射特性は同等である。これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
【0021】
すなわち、突出線路は、アンテナ特性を同等にすることを前提とすれば、長ければ長いほど、突出線路を除く導体線路の全長を短くする(張出部の張り出し長さを短くする)ことができる。これにより、本発明のループアンテナは、アンテナ素子が単に十字形のものと比べてアンテナ素子のアンテナ面積を低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで(相似形で)、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0022】
なお、突出線路は、
図38に示すように、互いに横並び又は縦並びに位置するか、又は斜向かいに位置する、隣り合う張出部の間の部分に配置されている。詳しくは、
図38(a)は上側横並び位置、(b)は左側縦並び位置、(c)は下側横並び位置、(d)は右側縦並び位置、(e)は左上、右下の斜向かい位置、(f)は右上、左下の斜向かい位置である。特に(e)、(f)の斜向かい位置が、より効果的である。(a)〜(d)は、方向性を無視すれば同じ構成であり、(e)及び(f)も同様に方向性を無視すれば同じ構成である。また、突出線路は、上記のように二箇所に限定されず、四箇所全部に設けることもできる。
【0023】
突出線路は、上記部分で、設けられる本数が一本である場合もあるし、二本以上である場合もある。また、突出線路は、それぞれが直線的であってもよいし、曲線的であってもよく、各種形状が採用できる。突出線路は、アンテナ素子と同一平面上に配設されていてもよいし、同一平面と所要の角度を以て立体的に設けられていてもよい。
また、突出線路は、例えば直線的又は曲線的に互いに対向して近くなる方向、直線的に互いに平行(角度が同じ場合)又は互いに様々な角度(例えば90°)をもって近くなる方向等に設けることができる。突出線路は、互いに斜向かいに位置する、隣り合う張出部の間に配置することもできる。
更には、突出線路は、アンテナ素子の実質占有面積の領域内に収まる構造であってもよいし、領域内に収まらず領域から出る構造であってもよい。これについては、後述する導体板、渦巻線路、蛇行部等も同様である。
【0024】
(4)本発明は、前記導体線路を延長すると共に前記導体線路と電気的に接続されており、隣り合う前記張出部の導体線路から延長されて互いに電気的に接続されている突出線路を有する構成とすることができる。
【0025】
この場合は、突出線路を設けて導体線路の長さを延長し、更に突出線路は、隣り合う前記張出部の導体線路から延長して互いに電気的に接続しているので、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを突出線路を電気的に接続していないものと比べて更に調整(低域化)する働きをし、しかも放射特性は同等である。
これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
【0026】
すなわち、突出線路は、アンテナ特性を同等にすることを前提とすれば、長ければ長いほど、突出線路を除く導体線路の全長を短くする(張出部の張り出し長さを短くする)ことができる。これにより、本発明のループアンテナは、突出線路が電気的に接続していないものと比べてアンテナ素子のアンテナ面積を低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0027】
(5)本発明は、前記アンテナ素子と同一平面上で、隣り合う前記張出部の間に配置され、前記アンテナ素子と電気的に接続された導体板を有する構成とすることができる。
【0028】
この場合は、導体板を設けることで、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスをアンテナ素子が単に十字形のものと比べて更に調整(低域化)する働きをし、しかも放射特性は同等である。これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
【0029】
すなわち、導体板は、アンテナ特性を同等にすることを前提とすれば、導体線路の全長をより短くすることができる。これにより、本発明のループアンテナは、アンテナ素子が単に十字形のものと比べてアンテナ素子のアンテナ面積を低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。なお、導体板は地板(グラウンド板)という場合もある。
【0030】
(6)本発明は、前記アンテナ素子の全体が誘電体基板の表面に配設されており、該誘電体基板の裏面に配置され、隣り合う前記張出部のそれぞれの一部と前記誘電体基板を介して重なり合い、前記誘電体基板の表面側の前記導体線路と電気的に接続された導体板を有する構成とすることができる。
【0031】
この場合は、アンテナ素子と導体板を誘電体基板を介して所定の間隔で配置し、それらを電気的に接続することで、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスをアンテナ素子が単に十字形のものと比べて更に調整(低域化)する働きをし、しかも放射特性は同等である。これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
【0032】
すなわち、導体板は、アンテナ特性を同等にすることを前提とすれば、導体線路の全長をより短くすることができる。これにより、本発明のループアンテナは、アンテナ素子が単に十字形のものと比べてアンテナ素子のアンテナ面積を低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0033】
また、導体板(地板ともいう)をアンテナ素子の近傍に配置して、導体板をアンテナの入力インピーダンス調整素子として機能させることで、課題であった小型化を達成した本発明は、導体板がアンテナ素子の近傍にすでにあることから、例えば携帯通信端末で、導体板のそのまた近傍に金属体(筐体や回路基板)が近接して配設されていても、アンテナ特性に影響するインピーダンスが変動することを防止でき、アンテナ特性(アンテナ性能)の劣化は抑制される。
【0034】
(7)本発明は、隣り合う前記張出部の間に前記アンテナ素子と同一平面上に配置され、前記導体線路を延長し、前記導体線路と電気的に接続されている渦巻状に形成された渦巻線路を有する構成とすることができる。
【0035】
この場合は、渦巻線路を設けて導体線路の長さを延長することで、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスをアンテナ素子が単に十字形のものと比べて更に調整(低域化)する働きをし、しかも放射特性は同等である。これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
【0036】
すなわち、渦巻線路は、アンテナ特性を同等にすることを前提とすれば、渦巻線路を除く導体線路の全長をより短くすることができる。これにより、本発明のループアンテナは、アンテナ素子が単に十字形のものと比べてアンテナ素子のアンテナ面積を低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0037】
(8)本発明は、前記アンテナ素子と同一平面上に設けられ、前記導体線路を延長するための前記導体線路が蛇行した蛇行部を有する構成とすることができる。
【0038】
この場合は、蛇行部を設けて導体線路の長さを延長することで、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスをアンテナ素子が単に十字形のものと比べて更に調整(低域化)する働きをし、しかも放射特性は同等である。これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
【0039】
すなわち、蛇行部は、アンテナ特性を同等にすることを前提とすれば、長ければ長いほど、蛇行部を除く導体線路の全長を短くする(張出部の張り出し長さを短くする)ことができる。これにより、本発明のループアンテナは、アンテナ素子が単に十字形のものと比べてアンテナ素子のアンテナ面積を低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0040】
蛇行部は、例えば正弦波状に曲げてもよいし、矩形波状に折り曲げてもよい。蛇行部の形状は特に限定するものではなく、様々な形状で蛇行させることができる。また、蛇行部は、導体線路の一部だけでなく全体に設けてもよい。
【0041】
(9)本発明は、前記給電部を介さずに隣り合う一組の張出部及び該張出部と斜向かいにある一組の張出部のうち、内角を形成するよう直交する導体線路の辺部を他の導体線路より幅広に形成した構成とすることもできる。
【0042】
この場合は、例えば一様に導体線路の幅を広くしたのでは、インピーダンス特性の周波数が高域側へずれてしまう傾向を示すが、本発明のように導体線路の幅を広くする導体線路の辺部を上記のように適宜選ぶことにより、インピーダンス特性の周波数を低域側へずらすことが可能となる。その結果、アンテナ素子が単に十字形のループアンテナと比べてアンテナ面積及び実質占有面積をより小さくすることができる。
【0043】
(10)本発明は、導体線路で同一平面上にあるループを形成し、該ループの外形が複数の方向に張り出した張出部を有し、該張出部の間に同一平面方向において凹んだ凹部を有するアンテナ素子と、該アンテナ素子に給電するための給電部とを備えるループアンテナである。
【0044】
本発明によれば、ループの外形が複数の方向に張出部を有することで、その入力インピーダンスを50Ω程度に低減することができる。すなわち、このような形状にするだけで、入力インピーダンスが低減され、インピーダンス特性が改善される。しかも、従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は劣化することなく同等である。
【0045】
これにより、本発明のループアンテナは、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を従来の正方形のループアンテナと比べて小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能であり、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を実質的に損なうことなく、そのサイズを従来に比べて大幅に小型化することができる。
【0046】
このループアンテナのアンテナ素子の形状には、張出部を三箇所以上形成したものが含まれる。十字形(四方形)の他、例えば三方形、五方形、六ないし八方形、或いは二つの四角形の一角部同士を一部重合させてつないだ形状(導体線路は外形線に重なる部分のみとする)の二方形等があげられる。
【0047】
上記したように、本発明は、ループアンテナ自身の小型化によってこれを搭載する各種通信機器あるいはICタグの小型化を図ることができると共にスマートフォンのような複数の通信機能、即ち、複数のアンテナを必要とする小型の携帯通信端末への搭載を可能とするループアンテナを提供することができる。
【0048】
また、線路の幅や、張出部の寸法、突出線路の長さや、導体板の大きさ、スルーホールの位置を変化することにより、アンテナのインピーダンスの調整が容易であり、50Ω系の給電回路のみならず、ICタグ用チップなどあらゆる給電回路とのインピーダンス整合が容易なループアンテナを提供することができる。
【0049】
すなわち、ループアンテナの小型化の鍵となる、「ループアンテナのアンテナ素子の形状を十字形にしたり、アンテナ素子に突出線路や導体板を電気的に接続したりすることによるインピーダンス調整」を利用することにより、結果的に、50Ω給電だけではなく、50Ω以外のインピーダンスを有する給電部とアンテナのインピーダンスの整合も容易にできる。
【0050】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「ループ」とは、アンテナ素子の形状を表すものであり、導体線路を例えば円形、楕円形、或いは四角形等の多角形状の環状体を象るように形成したものをいう。又は、同様に形成した導体線路の始点と終点を、アンテナ素子に給電するための給電回路を介し接続することができる閉路をいう。
【0051】
なお、上記課題を解決するための手段、つまり本発明の見方を変えることもできる。
例えば第1の観点では、そのループを、所定の幅と厚さを有する導体線路をその外形が十字形状となるよう四つの張出部を有するように構成し、四つの張出部を有するように構成することができる。また、この導体線路上に給電部を設けた。その結果、本発明のループアンテナは、そのままでその入力インピーダンスを50Ω程に低減し、さらに従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その占有面積を低減できた。また、ループアンテナは所定の誘電率を有する誘電体基板表面に形成してもよい。
【0052】
第2の観点では、そのループを、所定の幅と厚さを有する導体線路をその外形が十字形状となるよう四つの張出部を有するように構成し、この導体線路上に給電部を設け、さらにこれら四つの張出部中の一組の給電部を介さず隣り合う張出部およびそれらと点対称の位置にあるもう一組の給電部を介さず隣り合う張出部は、それぞれ対向する導体線路の幅を他の導体線路の幅よりも広く構成することができる。
この幅を広くした導体線路は、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整(低域化)する働きをするので、四つの張出部の長さを著しく低減することができ、その結果、本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる占有面積を著しく低減できた。また、ループアンテナは所定の誘電率を有する誘電体基板表面に形成してもよい。
【0053】
第3の観点では、そのループを、所定の幅と厚さを有する導体線路をその外形が十字形状となるよう四つの張出部を有するように構成し、この導体線路上に給電部を設け、さらにこれら四つの張出部中の一組の給電部を介さず隣り合う張出部およびそれらと点対称の位置にあるもう一組の隣り合う張出部は、それらの任意の場所からそれぞれ対向させ互いに干渉しないように側方に伸びる突出線路を有するように構成することができる。
これらの突出線路は、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整(低域化)する働きをするので、四つの張出部の長さを著しく低減でき、その結果、本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる占有面積を著しく低減できた。
この突出線路は、その先端部を開放し長さを調整することで、アンテナのインピーダンスを調整する働きをし、また、その先端を対向する突出線路の先端と電気的に接続することでさらにインピーダンスの周波数特性の調整をする働きをする。さらに、上記四つの張出部をそれぞれ形成する辺の長さはそれぞれの張出部で異なる構成にしてもよい。また、ループアンテナおよびこれを構成する四つの張出部および突出線路は所定の誘電率を有する誘電体基板表面に形成してもよい。
【0054】
第4の観点では、上記第3の観点に加え、前記四つの張出部中の他の一組の隣り合う張出部およびそれらと点対称の位置にある他のもう一組の隣り合う張出部も、それらの任意の場所からそれぞれ対向させ互いに干渉しないように伸びる突出線路を有するように構成することができる。これらの突出線路は、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整(低域化)する働きをするので、四つの張出部の長さを著しく低減でき、その結果、本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べてその放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる実質占有面積を著しく低減できた。また、ループアンテナおよびこれを構成する四つの張出部および突出線路は所定の誘電率を有する誘電体基板表面に形成してもよい。
【0055】
第5の観点では、そのループを、所定の幅と厚さを有する導体線路をその外形が十字形状となるよう四つの張出部を有するように構成し、この導体線路上に給電部を設け、さらにこれら四つの張出部中の一組の給電部を介さず隣り合う張出部およびそれらと点対称の位置にあるもう一組の給電部を介さず隣り合う張出部は、それらの任意の場所からそれぞれ近付くように伸びる突出線路を有し、それぞれ対向する張出部と突出線路の任意の場所で電気的に接続され、かつこれらに包囲されるように配設された所定の面積の導体板を有するように構成することができる。
これらの突出線路および導体板はループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整する働きをするので、四つの張出部の長さをさらに著しく低減でき、その結果、本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる実質占有面積をさらに著しく低減できた。また、突出線路は必ずしも有しなくてよい。
さらに、導体板は、突出線路およびそれぞれ対向する張出部上の辺を全て含有するように配設してもよい。また、ループアンテナおよびこれを形成する四つの張出部、突出線路および導体板は、所定の誘電率を有する誘電体基板表面に形成してもよい。
【0056】
第6の観点では、そのループを、所定の幅と厚さを有する導体線路をその外形が十字形状となるよう四つの張出部を有するように構成し、四つの張出部を有するように構成し、この導体線路上に給電部を設け、さらに誘電体基板の裏面上に、これら四つの張出部中の一組の給電部を介さずに隣り合う張出部およびそれらと点対称の位置にあるもう一組の給電部を介さすに隣り合う張出部の一部と、誘電体基板を介してそれぞれ重なり合う導体板およびそれぞれの導体板をそれぞれの組の隣り合う張出部に電気的に接続するためのスルーホールを有するように構成することができる。
これらの誘電体基板の裏面に配設され、スルーホールを通してそれぞれの組の隣り合う張出部に電気的に接続された導体板は、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整(低域化)する働きをするので、四つの張出部の長さをさらに著しく低減でき、その結果、本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べて、その放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる実質占有面積をさらに著しく低減できた。また、スルーホールは、一組の張出部の任意の場所、少なくとも一つまたは複数個形成することもできる。
【0057】
第7の観点では、上記第6の観点に加え、上記給電部を介しない二組の隣り合う二つの張出部のそれぞれの任意の場所からそれぞれ近付くように伸びる突出線路を構成することができる。これらの突出線路は、さらにインピーダンスを調整(低域化)することができ、その結果、本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べてその放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる実質占有面積を更に低減できた。また、突出線路は他の二組の張出部のそれぞれの任意の場所から互いに近付く方向に伸びるように構成することもできる。また、スルーホールは、張出部のみならず、突出線路のみ、またはその両方へ形成することもできる。
【0058】
第8の観点では、上記第7の観点に加え、上記四つの張出部の少なくとも任意の一部にそれらを形成する導体線路の一部が張出部内側へ向かって少なくとも一度は長方形状に折り込まれた蛇行部を構成することができる。この蛇行部はループ中の電流分布を変えることなく、ループアンテナのインピーダンスを調整(低域化)する働きをするので、四つの張出部の長さをさらに低減でき、その結果、この発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べてその放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる実質占有面積をさらに低減できた。なお、蛇行部は複数回折り込んでもよい。
【0059】
第9の観点では、そのループを、所定の幅と厚さを有する導体線路をその外形が十字形状となるよう四つの張出部を有するように構成し、四つの張出部を有するように構成し、この導体線路上に給電部を設け、さらにこれら四つの張出部中の一組の給電部を介して隣り合う張出部およびそれらと点対称の位置にあるもう一組の隣り合う張出部は、それぞれ対向する導体線路の幅を他の導体線路の幅より広くし、それぞれの張出部の任意の一部に側方に伸びる突出線路を設け、その突出線路の先端に渦巻状の導体線路が電気的に接続するように、かつこれら渦巻き状導体線路が互いに干渉しないように構成することができる。
これらの幅の広い導体線路およびそれぞれの張出部の一部に接続した突出線路とその先端に接続した渦巻状の導体線路は、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整(低域化)する働きをするので、四つの張出部の長さをさらに著しく低減でき、その結果、この本発明のループアンテナは、従来の正方形のループアンテナと比べてその放射特性は同等であるがインピーダンス特性は改善され、かつ、その正方形で囲まれる実質占有面積をさらに著しく低減できた。また、ループアンテナおよびこれを構成する四つの張出部、突出線路および渦巻状の導体線路は所定の誘電率を有する誘電体基板表面に形成してもよい。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を損なうことなく、そのサイズを従来に比べて大幅に小型化することができるループアンテナを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、その占める面積及びアンテナ特性に関して、本発明の比較の対象とする従来の正方形のループアンテナ1の表面図である。
ループアンテナ1は、図示していない誘電体基板表面に、所定の幅と厚さを有する導体線路(符号省略)で同一平面上にある正方形ループを形成するようにしてアンテナ素子2が配設されている。
【0063】
アンテナ素子2の導体線路上には、給電線(図示省略)を接続するための給電部7が設けられている。この正方形のアンテナ素子2の縦横の長さは、例えばループアンテナを構成する導体線路の線路幅を0.2mmとした場合、図示のように74mm×74mmである。
【0064】
上記サイズのループアンテナ1は、例えばUHF帯のRFIDタグに使われる他、UHF帯の地上波デジタル放送の携帯型受信機、自動車のフロントガラス付設用のアンテナ、又は携帯電話(LTEやW−CDMA)の自動車のフロントガラス付設用のアンテナ等に採用される。
【0065】
また、上記正方形のループアンテナ1は、半波長ダイポールアンテナ(50Ω)を2段直列に接続したのと同等のインピーダンス特性であると考えられ、入力インピーダンスは、半波長アンテナの2倍の約100Ωとなる。なお、この正方形のループアンテナ1のインピーダンス特性(リターンロス)及び放射特性(放射パターン)は、それぞれ後述する
図34、
図35に示している。
【0066】
図2は、本発明に係るループアンテナの第1の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ10は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部14a、14b、14c、14dを有するアンテナ素子12を備えている。
また、アンテナ素子12において、導体線路で形成された
図2で右上の内角部(内角部は、導体線路において張出部の間に設けられ同一平面方向において凹んだ凹部に相当)には、給電線を接続するための給電部17が設けられている。
【0067】
このループアンテナ10のアンテナ素子12を取り囲む正方形(ループアンテナ10の実質占有面積)の縦横の長さは、
図2に示すようにアンテナ素子12を構成する導体線路の線路幅wを0.2mmとした場合、70mm×70mmとしている。
ループアンテナ10は、
図1の正方形のループアンテナ1に比べて、アンテナ素子12の十字型のループに取り囲まれるアンテナ面積は著しく小さくなっており、アンテナ素子12の実質占有面積の縦横のサイズも上記のようにやや小さくなっている。
【0068】
このループアンテナ10のインピーダンス特性(リターンロス)及び放射特性(放射パターン)は、それぞれ
図34、
図35に示されているように、
図1の正方形のループアンテナ1と比べてその放射特性は同等であるが、インピーダンス特性は大幅に改善していることが分かる。
【0069】
また、給電部17は、アンテナ素子12の導体線路上の任意の場所に設けてもよいが、
図2に示すように、隣り合う張出部の導体線路同士が接続しあう部分付近に設けるのがより好ましい。その理由の一つは、アンテナ素子を十字形にすることで、中心を境に直線的位置にある各張出部を一組のアンテナとし、アンテナ素子を形成する二組のアンテナを並列に接続するためには、本実施の形態で示される位置に給電部17を設ける必要があるからである。二つめは、電流分布がアンテナ素子に左右もしくは上下対称になることが、全方向にまんべんなく放射がなされ、直線偏波特性をよくするために必要であり、そのためにはアンテナ素子の中心近傍に給電部を設けるのが有利なためである。
【0070】
また、ループアンテナ10を初めとし、十字形状のアンテナ素子を有する後述する各ループアンテナは、
図36に示すように、ループを十字形を象るように形成した導体線路の角部(曲がり角部又は先端形状)を丸めたり(円弧状、湾曲状に形成したり)、角部を落としたり(90°の角部なら45°に傾斜させた線路を形成)することで、電流の流れが良くなり、アンテナの特性も良くなる。
【0071】
(作用)
図2、
図34、
図35を主に参照し、ループアンテナ10の作用を説明する。まず、アンテナ性能は、インピーダンス特性(S11特性)と、放射特性(放射利得)で示されるものである。インピーダンス特性は、アンテナ長(導体線路長)で決まり、放射利得は、アンテナ面積でほぼ決まるとされている。つまり、ある周波数で動作するアンテナを作ろうと思えば、自ずとアンテナ長とアンテナ面積は決まるので、アンテナをそれより小さくすると性能が劣化するというのが常識である。
本発明に係るループアンテナ10は、アンテナ長とアンテナ面積が小さくなっても、インピーダンス特性、放射利得共に、ほとんど劣化しないものである。
【0072】
図34のグラフは、
図2のループアンテナ10のようにアンテナ素子12を十字形状とすることで、
図1のループアンテナ1と比較してインピーダンス特性が改善されることを示している。つまり、ループアンテナ10は、ループアンテナ1と比較してアンテナ素子の正方形の実質占有面積が小さくなっているにも関わらず、インピーダンス特性が大幅に改善されている。また、
図35から分かるように、放射特性に関しては、ループアンテナ10は、ループアンテナ1と比較してそれ程劣化しておらず、ほぼ同等である。
【0073】
これらのことから分かるように、ループアンテナ10は、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を従来の正方形のループアンテナ1と比べて小型化し、なおかつ少なくとも同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。したがって、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を実質的に損なうことなく、そのサイズを従来のループアンテナ1と比べて大幅に小型化することができる。
【0074】
なお、給電部17は、本実施の形態では導体線路12上にあり、アンテナ素子12のループは給電部17を始点および終点とする閉ループであるが、これに限定するものではなく、
図37に示すように、例えば導体線路に近接した給電線路を用いて、アンテナ素子へ間接的に給電することも可能である。この場合、アンテナ素子は、自身が閉ループ(ループの始点と終点が給電部を介さず閉じている)で、給電部のない寄生素子である。
図37(a)は中心ダイポール給電、(b)は外側モノポール給電を表している。これらの給電方法は、後述する各ループアンテナの給電部としても採用できる。なお、後述する第23の実施の形態(
図27参照)で説明する給電手段もアンテナ素子へ間接的に給電する方法の一つである。
【0075】
図3は、本発明に係るループアンテナの第2の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ10aは、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部14a、14b、14c、14dを有するアンテナ素子12を備えている。また、アンテナ素子12において、導体線路で形成された
図2で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部17が設けられている。
【0076】
ループアンテナ10aは、給電部17を介さず隣り合う一組の張出部14a、14d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部17を介さず隣り合う張出部14b、14cにおいて、同じ組で隣り合う張出部の互いに連続する導体線路の辺部12g、12h及び12c、12dの幅を、他の導体線路の辺部12a、12b及び12e、12fの幅より広くしたものである。
【0077】
このループアンテナ10aの実質占有面積の縦横の長さは、70mm×70mmとしている。また、各張出部14a、14b、14c、14dを形成する導体線路において、辺部12c、12d、12g、12hの線路幅w2を、他の辺部12a、12b、12e、12fの線路幅w1に比べ広くしている。本実施の形態では、線路幅w1が0.2mmであり、線路幅w2が1.0mmである。
【0078】
(作用)
図3、
図28を主に参照してループアンテナ10aの作用を説明する。
図28を参照し、上記ループアンテナ10の項で説明したように、導体線路の幅を全て1mmとした場合よりも、導体線路の幅を全て0.2mmとした場合の方が、S11が改善されている(周波数範囲がより低い周波数へと移動している)ことがわかる。
【0079】
そして、本実施の形態の、導体線路の一部だけを1mmとし、他の導体線路を0.2mmとしたループアンテナ10aは、周波数範囲が、更に低域側へ移動している。このように、周波数が低域側へ移動した場合、所定の周波数でS11特性がよくなる様にアンテナ長とアンテナ面積を変化させる必要があるが、アンテナ長とアンテナ面積を小さくすることでこれに対応できる。したがって、ループアンテナ10aは、ループアンテナ10と比較して、インピーダンス特性がより改善されており、ループアンテナを更に小型化することが可能である。
【0080】
なお、S11の周波数特性を低域側へ移動させるには、一般的にはアンテナ長を長くする。しかし、本発明のループが十字形のループアンテナ10aは、上記のようにアンテナ長及びアンテナ面積を変えずにS11を低域側へ移動できることになる。つまり、S11の周波数特性を少なくとも従来のループアンテナに合わせることを前提とすれば、従来のループアンテナよりアンテナ面積又は実質占有面積が小さくて、アンテナ性能を高める上で不利な形態であっても、アンテナ性能に遜色のない高感度のループアンテナを作製できることになる。これにより、例えば携帯通信端末等で割り当てられる限られたアンテナスペース内で、アンテナ性能を最大限発揮できるループアンテナが提供できる。
【0081】
なお、ループアンテナ10aのように、四つの張出部14a、14b、14c、14dによってアンテナ素子12を形成し、後述するような突出線路や渦巻線路を付加しない場合は、給電部を介さずに隣り合う一組の張出部及びそれと点対称位置にある他の一組の張出部において、互いに直交して交わり内角部で連続する導体線路の幅だけを広くした方が、ループアンテナを小型化する上ではより効果がある。
【0082】
図4は、本発明に係るループアンテナの第3の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ20は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部24a、24b、24c、24dを有するアンテナ素子22を備えている。また、アンテナ素子22において、導体線路で形成された
図4で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部27が設けられている。
【0083】
ループアンテナ20は、給電部27を介さず隣り合う一組の張出部24a、24d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部27を介さず隣り合う張出部24b、24cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くよう伸びて先端同士は非接触の突出線路26g、26h及び26c、26dを有する。すなわち、突出線路26g、26h及び26c、26dは、アンテナ素子22の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0084】
これら突出線路26c、26d及び26g、26hは、アンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部24a、24b、24c、24dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
本実施の形態においては、各張出部24a、24b、24c、24dの短辺は8mm、長辺を25.4mmとしている。
【0085】
また、ループアンテナ20のアンテナ素子22を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子22を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、図示のように58.8mm×58.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの63%に低減されている。
【0086】
なお、張出部24a、24b、24c、24dから伸びる突出線路の数、位置及びそれらの突出方向は、給電回路のインピーダンスや給電部の配設位置によって適宜最適なものに変更される。
【0087】
(作用)
図4、
図29を主に参照し、ループアンテナ20の作用を説明する。
ループアンテナ20は、上記ループアンテナ10と比較して、突出線路26g、26h及び26c、26dによるインピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子22をアンテナ素子12に比べて小型化し、なおかつ少なくとも同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。
したがって、ループアンテナ20は、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を実質的に損なうことなく、そのサイズを上記ループアンテナ10と比べて更に小型化することができる。
【0088】
なお、
図29は、上記突出線路の長さL1を変化させた場合の、給電部からみたS11特性を示したものである。
図29のグラフには、L1を長くするほうが、S11特性の周波数が低くなり、インピーダンス特性がより改善する傾向が表れている。これは、L1を長くするだけ、インピーダンス特性がより改善し、そのアドバンテージがある分、アンテナ素子22をL1がより短いものと比較して小型化して、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能であることを示している。これにより、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を実質的に損なうことなく、そのサイズを従来に比べて大幅に小型化することができる。
【0089】
図5は、本発明に係るループアンテナの第4の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ20aは、給電部27を介さず隣り合う一組の張出部24a、24dのそれぞれの先端部付近から互いに90°の角度を以て近付くように伸びて先端同士は非接触の突出線路26g、26hを誘電体基板表面に形成したものである。すなわち、突出線路26g、26hは、アンテナ素子22の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0090】
ループアンテナ20aのアンテナ素子22を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子22を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、図示のように64.8mm×64.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの77%に低減されている。
【0091】
図6は、本発明に係るループアンテナの第5の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ20bは、給電部27を介さず隣り合う一組の張出部24a、24d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部27を介さず隣り合う張出部24b、24cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くように伸びて先端部を接点21a、21bで電気的に接続した突出線路26c、26d及び26g、26hを誘電体基板表面に形成したものである。すなわち、突出線路26c、26d及び26g、26hは、アンテナ素子22の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0092】
ループアンテナ20bのアンテナ素子22を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子22を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、図示のように58.8mm×58.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの63%に低減されている。
【0093】
ループアンテナ20bは、上記接点21a、21bで突出線路26c、26d及び26g、26hを電気的に接続することで、上記ループアンテナ20(
図4参照)と比較して、アンテナのインピーダンスを更に調整(低域化)できる。
【0094】
図7は、本発明に係るループアンテナの第6の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ20cは、給電部27を介さず隣り合う一組の張出部24a、24d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部27を介さず隣り合う張出部24b、24cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くように伸びて先端同士は非接触の突出線路26c、26d及び26g、26hを誘電体基板表面に形成したものである。すなわち、突出線路26c、26d及び26g、26hは、アンテナ素子22の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0095】
そして、アンテナ素子22の中心を境に上下方向の直線的位置にある張出部24a、24cの幅S1を、その他の張出部24b、24dの幅S2より広く形成した。
なお、図において、L3は張出部24b、24dの長さを表し、L4は張出部24a、24cの長さを表している。
【0096】
ループアンテナ20cのアンテナ素子22を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子22を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、
図6に示したループアンテナ20bと同様に58.8mm×58.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの63%に低減されている。
【0097】
図8は、本発明に係るループアンテナの第7の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ20dは、給電部27を介さず隣り合う一組の張出部24a、24d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部27を介さず隣り合う張出部24b、24cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くように伸びて先端同士は非接触の突出線路26c、26d及び26g、26hを誘電体基板表面に形成したものである。すなわち、突出線路26c、26d及び26g、26hは、アンテナ素子22の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0098】
そして、アンテナ素子22の中心を境に左右方向の直線的位置にある張出部24b、24dの幅S2を、その他の張出部24a、24cの幅S1より広く形成した。
なお、図において、L3は張出部24b、24dの長さを表し、L4は張出部24a、24cの長さを表している。
【0099】
ループアンテナ20dのアンテナ素子22を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子22を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、
図6に示したループアンテナ20bと同様に58.8mm×58.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの63%に低減されている。
【0100】
図9は、本発明に係るループアンテナの第8の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ20eは、給電部27を介さず隣り合う一組の張出部24a、24d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部27を介さず隣り合う張出部24b、24cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くように伸びて先端同士は非接触の突出線路26c、26d及び26g、26hを誘電体基板表面に形成したものである。すなわち、突出線路26c、26d及び26g、26hは、アンテナ素子22の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0101】
そして、アンテナ素子22の中心を境に左右方向の直線的位置にある張出部24b、24dの幅S2を、その他の張出部24a、24cの幅S1と同じ幅に形成した。
なお、図において、L3は張出部24b、24dの長さを表し、L4は張出部24a、24cの長さを表している。
【0102】
ループアンテナ20eのアンテナ素子22を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子22を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、
図6に示したループアンテナ20bと同様に58.8mm×58.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの63%に低減されている。
【0103】
ループアンテナ20eは、上下の張出部24a、24cの短辺(横幅)S1を16mmとし、その分、左右の張出部24b、24dの長辺L3を21.4mmと短くしている。同様に、左右の張出部24b、24dの短辺(縦幅)S2を16mmとし、その分、上下の張出部24a、24cの長辺L4を21.4mmと短くしている。
【0104】
(作用)
図30には、上記各ループアンテナ20、20c、20d、20eのインピーダンス特性が示されており、
図31には同じく放射特性が示されている。
図30及び
図31から分かるように、張出部の幅S1や幅S2をより広くすることで、インピーダンス特性や放射特性は、それ程大きくは変化しておらず、ループアンテナを設置する場所に応じて、アンテナ性能に大きく影響を与えることなく、張出部の幅を変化させることが可能であることを示している。
また、
図30、
図31は、張出部の幅S1や幅S2を広くすることは、各ループアンテナのインピーダンス特性を若干ではあるが劣化させ、逆に放射特性は若干であるが向上させることを示している。
【0105】
図10は、本発明に係るループアンテナの第9の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ30は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部34a、34b、34c、34dを有するアンテナ素子32を備えている。また、アンテナ素子32において、導体線路で形成された
図10で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部37が設けられている。
【0106】
ループアンテナ30は、給電部37を介さず隣り合う一組の張出部34a、34d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部37を介さず隣り合う張出部34b、34cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くよう伸びて、互いの先端が接点31a、31bで電気的に接続された突出線路36g、36h及び36c、36dを有している。
【0107】
更にループアンテナ30は、給電部37を介し隣り合う一組の張出部34a、34b及びそれと点対称の位置にあるもう一組の給電部37を介さず隣り合う張出部34c、34dのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くよう伸びて、互いの先端同士が非接触の突出線路36a、36b及び36e、36fを有している。上記突出線路36g、36h、36c、36d及び36a、36b、36e、36fは、アンテナ素子32の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。なお、図においてL2は、各張出部の長さを表している。
【0108】
ループアンテナ30のアンテナ素子32を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子32を構成している導体線路の幅が0.2mmの場合、図示したように50.8mm×50.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの47%に低減されている。
【0109】
(作用)
ループアンテナ30は、上記のように隣り合う全部の張出部34a、34b、34c、34dの間の部分に突出線路36g、36h、36c、36d及び36a、36b、36e、36fを設けたものであり、これら突出線路は、アンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部34a、34b、34c、34dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
【0110】
なお、
図32は、
図10に示すループアンテナ30の各突出線路36g、36h、36c、36d、36a、36b、36e、36fの長さL2をL2=0mm(設けない)、8mm、16mm、20.8mm(
図6のように接続)の各長さに変化させた場合のインピーダンス特性を比較したグラフである。
【0111】
図32は、ループアンテナ30は、各突出線路の長さL2を長くするだけ、インピーダンス特性がより改善し、そのアドバンテージがある分、アンテナ素子22をL2がより短いものと比較して小型化して、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能であることを示している。すなわち、ループアンテナ30は、インピーダンス特性又は放射特性等のアンテナ特性を実質的に損なうことなく、L2がより短いものと比較して、そのサイズをより小型化することができる。
【0112】
また、ループアンテナ30のインピーダンス特性(リターンロス)及び放射特性(放射パターン)は、
図35に示しているように上記ループアンテナ10と比べてその放射特性は若干低下しているが、
図34に示しているようにインピーダンス特性は逆に向上しており、総合的には良好であることが分る。
【0113】
図11は、本発明に係るループアンテナの第10の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ40は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部44a、44b、44c、44dを有するアンテナ素子42を備えている。また、アンテナ素子42において、導体線路で形成された
図11で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部47が設けられている。
【0114】
ループアンテナ40は、給電部47を介さず隣り合う一組の張出部44a、44d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部47を介さず隣り合う張出部44b、44cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くように伸びて先端部を接点41a、41bで電気的に接続した突出線路46c、46d及び46g、46hを誘電体基板表面に形成したものである。
【0115】
更に、突出線路46c、46d及び46g、46hの内側には、正方形状の導体板48a、48bが誘電体基板表面に配設されている。導体板48a、48bは、突出線路46c、46dと張出部44a、44dの導体線路(符号省略)の間を埋めるように、及び突出線路46g、46hと張出部44b、44cの導体線路(符号省略)の間を埋めるように、上記突出線路及び導体線路と電気的に接続されて配設されている。上記突出線路46c、46d、46g、46h及び導体板48a、48bは、アンテナ素子42の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0116】
ループアンテナ40のアンテナ素子42を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子42を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、図示のように53.2mm×53.2mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの52%に低減されている。
【0117】
(作用)
ループアンテナ40は、突出線路46c、46d及び46g、46hに加え、導体板48a、48bも、アンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部44a、44b、44c、44dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
【0118】
ループアンテナ40は、十字形のアンテナ素子に突出線路だけを設けたものと比較して、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。これにより、ループアンテナ40は、アンテナ素子のアンテナ面積をより低減でき、アンテナ素子のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0119】
なお、張出部44a、44b、44c、44dの先端部から伸びる突出線路の数、それらの突出方向、これら突出線路にそれぞれ電気的に接続された導体板の数、位置、形状及び広さ等は、そのループアンテナの給電部の配設位置によって変更される場合がある。これについては、他のループアンテナ20、30、50、60、70、90等も同様である。
【0120】
また、構造的にループアンテナ40とアンテナ性能が同等と推測できる、後述するループアンテナ40cのインピーダンス特性(リターンロス)が
図34に示されており、正方形のループアンテナ1と比べて良好であることが分かる。つまり、ループアンテナ40もループアンテナ40cと同様に、良好なインピーダンス特性を示すことが推測できる。
【0121】
図12は、本発明に係るループアンテナの第11の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ40aは、給電部47を介さず隣り合う一組の張出部44a、44d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部47を介さず隣り合う張出部44b、44cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くよう伸びて、先端同士が非接触の突出線路46g、46h及び46c、46dを有し、突出線路46g、46h及び46c、46dのそれぞれの内方の張出部44a、44b及び44c、44dの導体線路の内角部に突出線路46g、46h及び46c、46dと離隔した導体板48a、48bを有する。すなわち、突出線路46g、46h、46c、46d及び導体板48a、48bは、アンテナ素子42の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0122】
ループアンテナ40aのアンテナ素子42を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子42を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、上記ループアンテナ40と同様、53.2mm×53.2mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの52%に低減されている。
【0123】
図13は、本発明に係るループアンテナの第12実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ40bは、給電部47を介さず隣り合う一組の張出部44a、44d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部47を介さず隣り合う張出部44b、44cのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くよう伸びて、先端同士が非接触の突出線路46g、46h及び46c、46dを有し、突出線路46g、46h及び46c、46dのそれぞれに電気的に接続され、張出部44a、44b及び44c、44dの内角部を挟む導体線路と離隔した導体板48a、48bを有する。すなわち、突出線路46g、46h、46c、46d及び導体板48a、48bは、アンテナ素子42の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0124】
ループアンテナ40bのアンテナ素子42を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子42を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、上記ループアンテナ40と同様、53.2mm×53.2mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの52%に低減されている。
【0125】
図14は、本発明に係るループアンテナの第13の実施の形態を示すものである。
ループアンテナ40cは、上記ループアンテナ40(
図11参照)の構造に加えて、更に給電部47を介し隣り合う張出部44a、44b及びそれと点対称の位置にあるもう一組の給電部47を介さず隣り合う張出部44c、44dのそれぞれの先端部から互いに90°の角度を以て近付くよう伸びて、先端同士が非接触の突出線路46a、46b及び46e、46fを有する。突出線路46a、46b、46e、46f及び導体板48a、48bは、アンテナ素子42の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0126】
このループアンテナ40cのアンテナ素子42を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子42を構成する導体線路の幅が0.2mmの場合、図示したように46.8mm×46.8mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの40%に低減されている。
なお、上記ループアンテナ40a、40b、40cの作用は、上記ループアンテナ40とほぼ同等であり、詳細な説明については省略する。
【0127】
図15、
図16は、本発明に係るループアンテナの第14の実施の形態を示すものである。
図15は表面図、
図16は裏面図である。
ループアンテナ50は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部54a、54b、54c、54dを有するアンテナ素子52を備えている。
【0128】
また、アンテナ素子52において、導体線路で形成された
図15で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部57が設けられている。
給電部57が設けられている導体線路の内角部の横側の内角部と下側の内角部には、導体線路、誘電体基板及び次に説明する導体板58a、58bを貫通するスルーホール59a、59bが形成されている。
【0129】
誘電体基板の裏面には、給電部57を介さず隣り合う一組の張出部54a、54d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部57を介さず隣り合う張出部54b、54cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子52と電気的に接続されている二枚の導体板58a、58bを有する。導体板58a、58bは、それぞれスルーホール59a、59b(ジャンパー線、ハンダ等、他の手段も採用できる)でアンテナ素子52と接続されている。導体板58a、58bは、アンテナ素子52の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0130】
このループアンテナ50のアンテナ素子52を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、図示したように37mm×37mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの25%に低減されている。
【0131】
(作用)
ループアンテナ50は、導体板58a、58bがアンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部54a、54b、54c、54dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
【0132】
また、ループアンテナ50の放射特性(放射利得)は、
図35に示されているように
図1の正方形のループアンテナ1と比べてその放射特性はやや落ちるが、インピーダンス特性は
図34に示されているように、後述するループアンテナ60と同等であることから、総合的に良好であることが分かる。
【0133】
ループアンテナ50は、単に十字形のアンテナ素子12を有するループアンテナ10と比較して、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子52を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。これにより、ループアンテナ50は、アンテナ素子52のアンテナ面積をより低減でき、アンテナ素子52のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0134】
なお、
図34には、ループアンテナ60(
図17)のS11特性は示しているが、ループアンテナ50(
図15)のS11特性は示していない。しかし、ループアンテナ50の実質占有面積37mm×37mmは、S11特性が920MHz前後で最も良くなるように調整した際のものであり、したがって、突出線路を付けたループアンテナ60の方が、よりインピーダンス調整力がある、すなわちより小型化できる、という根拠となり得る。
【0135】
図17、
図18は、本発明に係るループアンテナの第15の実施の形態を示すものである。
図17は表面図、
図18は裏面図である。
ループアンテナ60は、上記ループアンテナ20(
図4参照)のアンテナ素子22と同等構造のアンテナ素子62を有している。アンテナ素子62は、更に給電部67を介さず隣り合う張出部64a、64dの導体線路の直交する内角部に導体線路、誘電体基板及び次に説明する導体板68a、68bを貫通するスルーホール69a、69bを有している。また、上記ループアンテナ20(
図4参照)の突出線路26c、26d及び26g、26hと同様の突出線路66c、66d及び66g、66hが設けられている。
【0136】
誘電体基板の裏面には、給電部67を介さず隣り合う一組の張出部64a、64d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部67を介さず隣り合う張出部64b、64cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子62と電気的に接続されている二枚の導体板68a、68bを有する。導体板68a、68bは、それぞれスルーホール69a、69bでアンテナ素子62と接続されている。突出線路66c、66d、66g、66h及び導体板68a、68bは、アンテナ素子62の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0137】
ループアンテナ60のアンテナ素子62を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子62を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、図示したように34mm×34mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの21%に低減されている。
【0138】
(作用)
ループアンテナ60は、導体板68a、68bに加え、アンテナ素子62の突出線路66c、66d、66g、66hも、アンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部64a、64b、64c、64dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
【0139】
また、ループアンテナ60の放射特性(放射利得)は、
図1の正方形のループアンテナ1と比べ正面方向の絶対利得が約2dBほど悪くなる。しかし、
図34に示されているように
図1の正方形のループアンテナ1と比較してインピーダンス特性はほぼ同等である。
【0140】
ループアンテナ60は、十字形のアンテナ素子を有し導体板を有するループアンテナ50と比較して、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子62を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。これにより、ループアンテナ60は、アンテナ素子62のアンテナ面積をより低減でき、アンテナ素子62のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0141】
図19は、本発明に係るループアンテナの第16の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ60aは、上記ループアンテナ60(
図18参照)のアンテナ素子62と同等構造のアンテナ素子62を有している。ループアンテナ60aのアンテナ素子62は、更に突出線路66c、66d及び66g、66hの先端部に導体線路、誘電体基板及び次に説明する導体板68a、68bを貫通したスルーホール69c、69d及び69e、69fを有している。
【0142】
誘電体基板の裏面には、給電部67を介さず隣り合う一組の張出部64a、64d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部67を介さず隣り合う張出部64b、64cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子62と電気的に接続されている二枚の導体板68a、68bを有する。導体板68a、68bは、それぞれスルーホール69a、69b、69c、69d、69e、69fでアンテナ素子62と接続されている。突出線路66c、66d、66g、66h及び導体板68a、68bは、アンテナ素子62の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0143】
ループアンテナ60aのアンテナ素子62を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子62を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、上記ループアンテナ60と同様、34mm×34mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの21%に低減されている。
【0144】
図20は、本発明に係るループアンテナの第17の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ60bは、上記ループアンテナ60a(
図19参照)のアンテナ素子62と、スルーホール69a、69bが設けられていない点を除き同等構造のアンテナ素子62を有している。
【0145】
誘電体基板の裏面には、給電部67を介さず隣り合う一組の張出部64a、64d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部67を介さず隣り合う張出部64b、64cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子62と電気的に接続されている二枚の導体板68a、68bを有する。導体板68a、68bは、それぞれスルーホール69c、69d、69e、69fでアンテナ素子62と接続されている。突出線路66c、66d、66g、66h及び導体板68a、68bは、アンテナ素子62の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0146】
ループアンテナ60bのアンテナ素子62を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子62を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、上記ループアンテナ60と同様、34mm×34mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの21%に低減されている。
【0147】
図21は、本発明に係るループアンテナの第18の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ60cは、スルーホール69a、69bが設けられておらず、突出線路66c、66d及び66g、66hの基部の各張出部64a、64b、64c、64dの導体線路と重なる位置にスルーホール69g、69h及び69i、69jが設けられている点を除き、上記ループアンテナ60(
図17参照)のアンテナ素子62と同等構造のアンテナ素子62を有している。
【0148】
誘電体基板の裏面には、給電部67を介さず隣り合う一組の張出部64a、64d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部67を介さず隣り合う張出部64b、64cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子62と電気的に接続されている二枚の導体板68a、68bを有する。導体板68a、68bは、それぞれスルーホール69g、69h、69i、69jでアンテナ素子62と接続されている。突出線路66c、66d、66g、66h及び導体板68a、68bは、アンテナ素子62の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0149】
ループアンテナ60cのアンテナ素子62を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子62を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、上記ループアンテナ60と同様、34mm×34mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの21%に低減されている。
【0150】
図22は、本発明に係るループアンテナの第19の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ60dは、上記ループアンテナ60(
図17参照)のアンテナ素子62と同等構造のアンテナ素子62を有している。ループアンテナ60dのアンテナ素子62には、スルーホール69a、69bに加えて、更に突出線路66c、66d及び66g、66hの基部の各張出部64a、64b、64c、64dの導体線路と重なる位置にスルーホール69g、69h及び69i、69jが設けられている。
【0151】
誘電体基板の裏面には、給電部67を介さず隣り合う一組の張出部64a、64d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部67を介さず隣り合う張出部64b、64cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子62と電気的に接続されている二枚の導体板68a、68bを有する。導体板68a、68bは、それぞれスルーホール69a、69b、69g、69h、69i、69jでアンテナ素子62と接続されている。突出線路66c、66d、66g、66h及び導体板68a、68bは、アンテナ素子62の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0152】
ループアンテナ60dのアンテナ素子62を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、アンテナ素子62を構成する導体線路の幅を0.2mmとした場合、上記ループアンテナ60と同様、34mm×34mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの21%に低減されている。
【0153】
(作用)
上記ループアンテナ60a、60b、60c、60dは、上記ループアンテナ60とほぼ同等の構造を有しており、アンテナ性能についても同等と推測できる。しかし、ループアンテナ60、60a、60b、60c、60dは、スルーホールの位置、すなわち導体板68a、68bにおいて、誘電体基板を挟み上記アンテナ素子62と電気的に接続する位置がそれぞれ異なっている。
【0154】
図33では、スルーホールの位置が異なるループアンテナ60、60a、60b、60c、60dのインピーダンス特性を比較している。
図33のグラフからは、ループアンテナ60c、60d、ループアンテナ60a、ループアンテナ60、ループアンテナ60bの順で周波数特性が低域へずれており、簡単にいえば、スルーホールが突出線路の基部や導体線路の内角部にあるより、突出線路の先端部にある方がよりインピーダンス特性が改善される傾向にあることが分かる。つまり、
図20に示すループアンテナ60bによれば、ループアンテナの更なる小型化が可能であることを示している。
【0155】
図23、
図24は、本発明に係るループアンテナの第20の実施の形態を示すものである。
図23は表面図、
図24は裏面図を表している。
ループアンテナ70は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部74a、74b、74c、74dを有するアンテナ素子72を備えている。
【0156】
また、アンテナ素子72において、導体線路で形成された
図23で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部77が設けられている。
給電部77が設けられている導体線路の内角部の横側の内角部と下側の内角部には、導体線路、誘電体基板及び後述する導体板78a、78bを貫通するスルーホール79a、79bが形成されている。
【0157】
そして、給電部77を介し隣り合う張出部74a、74bの互いに直交し連続する導体線路及びそれと点対称の位置にあるもう一組の給電部77を介さず隣り合う張出部74c、74dの互いに直交し連続する導体線路には、それぞれ導体線路が矩形波状に蛇行した蛇行部73a、73b及び73c、73dが設けられている。蛇行部73a、73b、73c、73dは、アンテナ素子72の正方形の実質占有面積の領域内に収まっている構造である。
【0158】
蛇行部73a、73b及び73c、73dは、張出部74a、74b、74c、74dの幅方向に連続して複数設けられている。なお、蛇行部は、張出部74a、74b、74c、74dの長さ方向に設けてもよく、その数、ピッチ等は適宜設定できる。
【0159】
誘電体基板の裏面には、給電部77を介さず隣り合う一組の張出部74a、74d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の同じく給電部77を介さず隣り合う張出部74b、74cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板を介して重なり合い、誘電体基板の表面側のアンテナ素子72と電気的に接続されている二枚の導体板78a、78bを有する。導体板78a、78bは、それぞれスルーホール79a、79b(ジャンパー線、ハンダ等、他の手段も採用できる)でアンテナ素子72と接続されている。
【0160】
このループアンテナ70のアンテナ素子72を取り囲む正方形(実質占有面積)の縦横の長さは、図示したように34mm×34mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの21%に低減されている。
【0161】
(作用)
ループアンテナ70は、導体板78a、78bに加え、アンテナ素子72の蛇行部73a、73b及び73c、73dも、アンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部74a、74b、74c、74dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
【0162】
ループアンテナ70は、十字形のアンテナ素子を有し導体板を有するループアンテナ50と比較して、インピーダンス特性のアドバンテージがある分、アンテナ素子72を更に小型化し、なおかつ同等のアンテナ特性が得られるようにすることが可能である。これにより、ループアンテナ70は、アンテナ素子72のアンテナ面積をより低減でき、アンテナ素子72のサイズを十字形状の縦横比はそのままで、更に小型化することで実質占有面積も小さくできる。
【0163】
なお、導体線路の一部を蛇行させることで、導体線路長を伸ばす事ができる。また、蛇行部73a、73b及び73c、73dは、マイクロ波領域ではインダクタンス(インピーダンスの虚数部)として働くので、インピーダンスの調整が可能になる。更に、電流分布に変化を付けることができるので、電流分布の制御による放射特性の制御も可能になる。
【0164】
また、ループアンテナ70の放射特性(放射利得)は、
図35に示されているように、
図1の正方形のループアンテナ1と比べて正面方向の絶対利得が若干悪くなる。また、インピーダンス特性は
図35に示されているように
図2のループアンテナ10と大きく差はないことから、
図1の正方形のループアンテナ1と比べ良好である。
【0165】
図25は、本発明に係るループアンテナの第21の実施の形態を示す表面図である。
ループアンテナ80は、図示していない誘電体基板表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部84a、84b、84c、84dを有するアンテナ素子82を備えている。また、アンテナ素子82において、導体線路で形成された
図25で右上の内角部には、給電線を接続するための給電部87が設けられている。
【0166】
そして、給電部87を介し隣り合う張出部84a、84bの互いに直交し連続する導体線路及びそれと点対称の位置にあるもう一組の給電部87を介さず隣り合う張出部84c、84dの互いに直交し連続する導体線路の辺部82a、82b及び82e、82fは、他の部分の導体線路より極めて幅広く(2.4mm)形成されている。
【0167】
上記辺部82a、82b及び82e、82fのうち、辺部82a、82fの基部寄りには、四角形の渦巻状に形成された左巻きの渦巻線路85a、85cが電気的に接続して設けられている。また、導体線路の幅が狭い(0.2mm)辺部82c、82d及び82g、82hのうち、辺部82d、82gの基部寄りには、四角形の渦巻状に形成された左巻きの渦巻線路85b、85dが電気的に接続して設けられている。なお、渦巻線路85a、85b、85c、85dは、先部側(徐々に径小となる側)が基部より極めて幅広く形成してある。渦巻線路85a、85b、85c、85dは、アンテナ素子82の正方形の実質占有面積の領域内に互いに干渉(接触)することなく収まっている構造である。
【0168】
このループアンテナ80のアンテナ素子82を取り囲む正方形の縦横の長さは、図示したように35mm×35mmとしており、その占める面積は、
図1の正方形のループアンテナ1のそれの22%に低減されている。
【0169】
(作用)
ループアンテナ80は、上記導体線路幅が広い導体線路の辺部82a、82b、82e、82fや渦巻線路85a、85b、85c、85dも先の各実施の形態と同様に、アンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部84a、84b、84c、84dの寸法を縮めた分に見合うようにアンテナのインピーダンス特性を変える調整要素として働く。
【0170】
すなわち、ループアンテナ80を示した
図25では、
図34に見られる正方形のループアンテナ1と同等のS11特性が得られる場合の実質占有面積の寸法を表している。正方形のループアンテナ1の実質占有面積が74mm×74mmであるのに対し、
図25は35mm四方となっているので、導体線路幅が広い導体線路の辺部82a、82b、82e、82fと渦巻き状の導体線路85a、85b、85c、85dがループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整する働きをすることが分かる。
【0171】
図26は、本発明に係るループアンテナの第22の実施の形態を示す説明図である。
ループアンテナ90は、長方形状の誘電体基板99の表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部94a、94b、94c、94dを有するアンテナ素子92を備えている。
【0172】
アンテナ素子92の導体線路において
図26(a)で右上の内角部よりやや上方には、給電線を接続するための給電部97が設けられている。
また、アンテナ素子92において、導体線路で形成された四箇所の内角部には、導体線路、誘電体基板99及び後述する導体板98a、98b、98c、98dを貫通したスルーホール96a、96b、96c、96dを有している。
【0173】
また、張出部94b、94dよりやや長く形成された張出部94a、94cの幅方向中央部には、アンテナ素子92の中心部で近接する(非接触)するように、導体線路を二往復させた矩形波状の蛇行部93a、93cが設けられている。なお、上記誘電体基板99の四隅部分には、誘電体基板99を貫通した取付孔91が形成されている。
【0174】
誘電体基板99の裏面には、隣り合う一組の張出部94a、94d及びそれと点対称の位置にあるもう一組の隣り合う張出部94b、94cのそれぞれの一部(少なくとも内角部を挟み直交した導体線路部分)と誘電体基板99を介して重なり合い、誘電体基板99の表面側のアンテナ素子92と電気的に接続されている四枚の導体板98a、98b、98c、98dを有する。導体板98a、98b、98c、98dは、それぞれスルーホール96a、96b、96c、96dでアンテナ素子92と接続されている。
なお、ループアンテナ90の誘電体基板99の外形寸法は、横50mm、縦35mmであり、アンテナ素子92の外形寸法は、横34mm、縦26mmである。
【0175】
(作用)
ループアンテナ90は、張出部94a、94b、94c、94dを有するアンテナ素子92に、蛇行部93a、93cと導体板98a、98b、98c、98dを備えているので、上記蛇行部を有するループアンテナ70、或いは導体板を有するループアンテナ40、50、60、70等と同様に、上記各構成がアンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部94a、94b、94c、94dの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
【0176】
これにより、ループアンテナ90は、単にアンテナ素子が十字形のループアンテナ10と比較して、アンテナ素子92のアンテナ面積及び長方形状の実質占有面積を小さくすることができ、ループアンテナの小型化を図ることができる。
【0177】
図27は、本発明に係るループアンテナの第23の実施の形態を示す説明図である。
ループアンテナ90aは、長方形状の誘電体基板99の表面に導体線路で同一平面上にあるループを形成し、このループの外形が十字形を形成するよう四方に張り出した張出部94e、94f、94g、94hを有するアンテナ素子92aを備えている。
【0178】
アンテナ素子92aにおいて、導体線路で形成された
図27(a)で右上の内角部よりやや上方には、給電線を接続するための給電部97aが設けられている。
また、アンテナ素子92において、導体線路で形成された四箇所の内角部には、導体線路、誘電体基板99及び後述する導体板98e、98fを貫通したスルーホール96e、96f、96g、96hを有している。上記誘電体基板99の四隅部分には、誘電体基板99を貫通した取付孔91が形成されている。
【0179】
誘電体基板99の裏面には、張出部94e、それと隣り合う張出部94f、94hの一部及び張出部94g、それと隣り合う張出部94f、94hの一部と誘電体基板99を介して重なり合い、誘電体基板99の表面側のアンテナ素子92aと電気的に接続されている二枚の導体板98e、98fを有する。導体板98e、98fは、それぞれスルーホール96e、96f、96g、96hでアンテナ素子92と接続されている。
なお、ループアンテナ90aの誘電体基板99の外形寸法は、横50mm、縦35mmであり、アンテナ素子92aの外形寸法は、横34mm、縦26mmである。
【0180】
(作用)
ループアンテナ90aは、張出部94e、94f、94g、94hを有するアンテナ素子92aに、導体板98e、98fを備えているので、上記導体板を有するループアンテナ40、50、60、70等と同様に、上記構成がアンテナ中の電流分布に影響を与えることなく、四つの張出部94e、94f、94g、94hの寸法を縮めた分に見合うアンテナのインピーダンスを調整する調整要素として働く。
これにより、ループアンテナ90aは、単にアンテナ素子が十字形のループアンテナ10と比較して、アンテナ素子92aのアンテナ面積及び長方形状の実質占有面積を小さくすることができ、ループアンテナの小型化を図ることができる。
【0181】
なお、上記
図1〜
図26に示した各実施の形態では、アンテナ素子上に給電部があり、アンテナ素子のループは給電部を始点および終点とする閉ループだったのに対し、ループアンテナ90aの給電部97aは、給電部97aがアンテナ素子92a上に設けられていない。つまり、アンテナ素子92aは閉ループ構造(ループの始点と終点が給電部を介さず閉じている)であり、そのアンテナ素子92aと導体板98e、98fは、スルーホール96e、96f、96g、96hで電気的に接続され、スルーホール96e、96f、96g、96hの両端に電位差を与えることで給電を行うものである。
【0182】
図28は、給電部からみたS11特性を示し、
図2に示す第1の実施の形態のループアンテナ10(線幅w=0.2及びw=1.0mmの二種類)及び
図3に示す第2の実施の形態のループアンテナ10aのアンテナ特性の一つであるインピーダンス特性を比較したグラフである。
図28においては、
図3のループアンテナ10aの給電部17を介さず隣り合う二つの張出部14a、14dの導体線路のそれぞれの辺部12g、12h及びそれらと点対称の位置にある給電部を介さず隣り合う二つの張出部14b、14cの導体線路のそれぞれの辺部12c、12dを幅w2=1.0mmとし、その他の辺部12a、12b、12e、12fを幅w1=0.2mmとした場合のインピーダンス特性を、
図2のループアンテナ10の導体線路の幅を一様にw=0.2及びw=1.0とした場合のインピーダンス特性と比較している。
【0183】
図28は縦軸がS11の値になっており、例えばS11=0dBの時は100%給電部からアンテナへ与えられるエネルギーが給電部へ反射される(戻される)状態になり、アンテナにはエネルギーが全く伝わらない。また、S11=−10dBの時は、給電部へ反射される電力は10%になり、残り90%のエネルギーがアンテナへ伝わることになる。すなわち、給電部側へ戻る分だけ損失になっているという考えから、S11特性をリターンロス特性ともよび、S11=−10dBの時、リターンロス、つまり戻り(反射)損失が10dBであったという。
【0184】
携帯電話などの情報通信用アンテナの場合は、この−10dBを一つの指標としており、S11が−10dB以下となっている周波数範囲では、アンテナの入力インピーダンスは50Ωの1.22倍(=約61Ω)以下になっていることを示している。
なお、リターンロス特性は、S11特性、もしくはVSWR特性などと表現されることが有り、定義式は異なるが、どちらもアンテナの給電部からみた入力インピーダンスの状態を表すデータである。
【0185】
この結果より、一様に線路幅を広くしたのでは、インピーダンス特性の周波数特性が高域側へずれてしまうが、前述のように線路幅を広くする導体線路の辺部をループアンテナ10aのように選べば、インピーダンス特性の周波数特性を低域側へずらすことが可能となり、その結果、ループアンテナ10aのアンテナ面積及び実質占有面積を小さくすることができる。
【0186】
なお、線路幅を広くする辺部は、
図3のループアンテナ10aに示す以外にも様々に選ぶことが可能であるが、最も効果があった例をループアンテナ10aとして示している。また、前述していないそれぞれの張出部を形成する辺部(各張出部の先端辺部)については、
図3では、辺部12a、12b、12e、12fの幅と同様としたが、これらについても幅を変更することによりインピーダンスの調整が可能である。
【0187】
図29は、
図4に示す第3の実施の形態のループアンテナ20の各突出線路26c、26d、26g、26hの長さL1をL1=0mm(設けない)、8mm、16mm、24.8(
図4)の各長さに変化させた場合のインピーダンス特性を比較したグラフである。
【0188】
図30は、
図4に示す第3の実施の形態のループアンテナ20の張出部24a、24b、24c、24dの寸法を
図7、
図8、
図9に示したように変化させた場合のインピーダンス特性を比較したグラフである。
【0189】
図31は、
図4に示す第3の実施の形態のループアンテナ20の張出部24a、24b、24c、24dの寸法を
図7、
図8、
図9に示したように変化させた場合のアンテナ特性の一つである放射特性(放射パターンの絶対利得表示)を比較したグラフである。
【0190】
図32は、
図10に示す第9の実施の形態のループアンテナ30の各突出線路36g、36h、36c、36d、36a、36b、36e、36fの長さL2をL2=0mm(設けない)、8mm、16mm、20.8mm(
図6のように接続)の各長さに変化させた場合のインピーダンス特性を比較したグラフである。
【0191】
図33は、
図17に示した第15の実施の形態のループアンテナ60のスルーホールの位置を
図19、
図20、
図21、
図22に示したように変化させた場合のインピーダンス特性を比較したグラフである。
【0192】
図34は、
図1に示した比較例であるループアンテナ1、
図2に示した第1の実施の形態のループアンテナ10、
図10に示した第9の実施の形態のループアンテナ30、
図14に示した第13の実施の形態のループアンテナ40c及び
図17に示した第15の実施の形態のループアンテナ60のインピーダンス特性を比較したグラフである。
図34は、突出線路及び導体板は、ループ中の電流分布を変えることなく、アンテナのインピーダンスを調整する働きをする、という現象を証明するものである。本明細書にいう「調整する」とは、アンテナの入力インピーダンスが50Ω、或いはその近辺の値となるようにS11特性の周波数を低域化する意味である。
【0193】
図35は、
図1に示した比較例であるループアンテナ10、
図2に示した第1の実施の形態のループアンテナ10、
図10に示した第9の実施の形態のループアンテナ30、
図15に示した第14の実施の形態のループアンテナ50及び
図23に示した第20の実施の形態のループアンテナ70の放射特性を比較したグラフである。