特許第6233939号(P6233939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233939
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】通気性帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/08 20060101AFI20171113BHJP
   A42C 5/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A42B1/08 B
   A42C5/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-243471(P2016-243471)
(22)【出願日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年12月16日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399102127
【氏名又は名称】ビルマテル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178009
【弁理士】
【氏名又は名称】小河内 功佑
(72)【発明者】
【氏名】白井 庄史
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3121430(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3177904(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3085543(JP,U)
【文献】 実開昭60−189525(JP,U)
【文献】 国際公開第2014/061364(WO,A1)
【文献】 実開昭59−037318(JP,U)
【文献】 実開昭60−025721(JP,U)
【文献】 特表2002−505385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/08
A42C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つばとクラウンから構成される帽子であって、帽子前部とその対向位置の各々に通気口を設け、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口は、前後方向にカットして分割したクラウンの各々のカット部について、前方のカット部を上方に、後方のカット部を下方にずらして重ね、前記帽子前部の通気口よりも上方に、かつ、クラウンの頂部に配置しつつ、前記カット部を相互に接続しないことにより形成し、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口は帽子の上方かつ後方に向け、その大きさを自由に調整可能としたことを特徴とする帽子。
【請求項2】
前記クラウンのカット部に形状記憶素材を配置することによって、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口の大きさを自由に調整可能とした請求項1記載の帽子。
【請求項3】
帽子後部に緩衝材を設けた請求項1または2記載の帽子。
【請求項4】
前記帽子前部に設けた通気口が、前記クラウンとすべりの間に隙間を設けることによって形成された請求項1〜3のいずれかに記載の帽子。
【請求項5】
前記すべりの前記隙間を設けた部分にサイズ調整機構を設けた請求項4記載の帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通気性帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帽子をかぶりながら帽子のクラウン20を開閉できる帽子が記載されている。本発明によれば、クラウン20の前部をつば10から分離できるので、クラウン20の前部を開けた場合には、周囲の風を頭部に直接導入することが可能になる。しかしながら、帽子の骨組みとなる形状保持部材70や、クラウン20の開閉に必要なサスペンション部材50および回転パーツ60など、一般の帽子と比較して部品点数が多く、製作が困難で製造コストも高い。また、重量も重くなるため被り心地も良くない。
【0003】
特許文献2には、帽子本体の頭頂部に開口部を設け、これを覆うメッシュのカバーとべた布のカバーを用意し、開口部と二枚のカバーの周縁にはファスナーを取付け、これらを介して帽子本体とカバーとが着脱自在となるようにした帽子が開示されている。本発明によれば、通気の機能と防雨の機能の二つが同時に実現されると言うが、実際上、通気の機能を実現するためにべた布のカバーを開くと、メッシュのカバーを介して雨水が帽子本体の内部に侵入する。また、防雨の機能を実現するためにべた布のカバーを閉じると、通気の機能が阻害される。さらに、カバーを開けるか閉めるかの二つの選択肢しかなく、天候や被着者の体調などに応じて開口部の大きさを変えて、帽子本体の内部に入る空気量を調整するとうこともできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0212776号
【特許文献2】特開2005−194644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は通気性帽子に関するものであって、帽子に当然要求される防雨機能と頭部保護機能を果たしつつ、帽体内に流入する風量を簡単に調整することができる帽子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の帽子は、つばとクラウンから構成される帽子であって、帽子前部とその対向位置の各々に通気口を設け、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口は、前後方向にカットして分割したクラウンの各々のカット部について、前方のカット部を上方に、後方のカット部を下方にずらして重ね、前記帽子前部の通気口よりも上方に、かつ、クラウンの頂部に配置しつつ、前記カット部を相互に接続しないことにより形成し、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口は帽子の上方かつ後方に向け、その大きさを自由に調整可能としたことを特徴とする。
【0007】
前記クラウンのカット部に形状記憶素材を配置することによって、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口の大きさを自由に調整可能としたことが好ましい。
【0008】
帽子後部に緩衝材を設けたことが好ましい。
【0009】
前記帽子前部に設けた通気口が、前記クラウンとすべりの間に隙間を設けることによって形成されたことが好ましい。
【0010】
前記すべりの前記隙間を設けた部分にサイズ調整機構を設けたことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る帽子は、帽子前部とその対向位置の各々に通気口を設けるため、自然対流または強制対流の作用により、帽子前部の通気口から空気が導入され、クラウン内部に導入された空気が帽子前部の対向位置に設けた通気口から排出されるため、クラウン内部に空気の流れが生まれて被着者の清涼感が改善される。また、帽子前部の対向位置に設けた通気口の大きさを自由に調整することができるため、天候や被着者の体調、帽子を被っている状況などに応じてクラウン内部を流れる空気量を適宜調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の帽子の側面図(図1(1)、(2)、(3))である。
図2】本発明の他の実施形態を示す帽子の側面図(図2(1))およびその底面図(図2(2))である。
図3】本発明の別の実施形態を示す帽子の被着状態を示す側面図である。
図4】本発明の別の実施形態を示す帽子の斜視図(図4(1))および本発明のさらに別の実施形態を示す帽子の後方斜視図(図4(2))である。
図5】本発明の別の実施形態を示す帽子の内部を透視して描いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る帽子の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(1)は、本発明の帽子の側面図であり、帽子を構成するつば3およびクラウン2が示されている。
【0014】
帽子前部には、つば3の上部のクラウン2に通気口4aが設けられている。本実施形態では通気口4aにメッシュ地を用いたが、必ずしもメッシュ地を用いる必要はなく、前方からの空気Wをクラウン2内部に導入することができる形態を採っていれば良い。通気口4aの大きさに格別制限はないが、通気口4aの大きさが大きいほど、前方からの空気Wをクラウン2内部に導入しやすく、クラウン2内部に導入される空気量も多くなる。ただし、通気口4aの大きさを大きくするほど、太陽光などの光、埃などの異物、雨水などがクラウン2内部に入り込む余地も広がるため、被着者の快適性を考慮して通気口4aの大きさを適宜決定する必要がある。
【0015】
クラウン2はカットして分割した生地を合わせることにより形成され、当該カットして分割したクラウン2aとクラウン2bの各々のカット部5a、5bを上下方向にずらして重ねて配置し、当該カット部5aと5bを接続しないことにより、帽子前部の対向位置に通気口4bを設けている。本実施形態では、カット部5aを上方に、カット部5bを下方に配置したが、その逆であっても良い。ただし、カット部5aを上方に配置した方が、クラウン2内部に導入された空気がクラウン2aに沿って通気口4bから排出されやすくなるので、より通風効果が高まる。
【0016】
クラウン2の分割方法に格別の制限はないが、通気口4bの位置や数、帽子の製作容易性およびデザイン性を考慮してその分割方法を適宜決定すれば良い。
カットして分割した生地はそれぞれを縫製により繋ぎ合わせることが好ましいが、その方法に格別の制限はなく、縫製によらず接着で貼り合わせてクラウン2を形成しても良い。
【0017】
通気口4bは帽子前部の対向位置であれば、その位置に格別の制限はないが、自然対流を生みやすいという観点から、クラウン2の頂部であることが好ましい。つまり、暖かい空気は上に上り、冷たい空気は下にたまるという性質を利用し、低い位置から高い位置へ風を通すようにすると通風効果が上がる。したがって、空気Wを導入する通気口4aよりも高い位置に通気口4bを配置することが好ましい。
【0018】
クラウン2aにはカット部5aにパイピングが施されており、図示しないが、パイピングの内部には形状記憶素材が配置されている。したがって、図1(1)の状態から図1(2)ないし図1(3)に示されるように、パイピングの内部に配置された形状記憶素材の作用によって、通気口4bの大きさを自由に調整することが可能となる。より具体的には、パイピングを上下方向に移動させることによって、極めて容易に通気口4bの大きさを調整することができるようになり、通気口4bの大きさを調整することによって、クラウン2内部を流れる空気量を適宜調整することが可能になる。
【0019】
前記の形状記憶素材には形状記憶テープなどの軽量で形状を変えやすいものを用いることが好ましいが、針金や形状記憶ポリマーなど、その素材に格別の制限はない。形状記憶素材はクラウン2のカット部5aに配置していれば良く、本実施形態のようにパイピングの内部に配置しても良いし、クラウン2の表面に貼りつける方法であっても良い。また、形状記憶素材は前記カット部5aと5bの両方に配置しても良いし、いずれか一方のみに配置しても良い。
【0020】
本実施形態では、通気口4bの大きさを自由に調整可能とするために、形状記憶素材を用いたが、必ずしもこのような形状記憶素材を用いる必要はない。クラウン2のカット部5a、5bにファスナーやボタンを用いて、通気口4bの大きさを段階的に調整できるようにしても良い。
【0021】
本発明によれば、通気口4bの大きさを自由に調整することができるので、天候や被着者の体調、帽子を被っている状況に応じてクラウン内部を流れる空気量を適宜調整することが可能となる。例えば、被着者がランニング中に強めの風をクラウン2の内部に流したい場合には、図1(3)に示すように通気口4bの大きさを比較的大きく設定しておき、ランニング終了後の休憩中に緩やかな風をクラウン2の内部に流したい場合には、図1(1)または(2)に示すように通気口4bの大きさを比較的小さく設定すれば良い。
【0022】
以上、説明したとおり、通気性を確保するためには、空気Wの入口、その通り道、および出口をつくることが重要であるが、本発明は、空気Wの入り口としての機能を果たす通気口4a、その通り道としての機能を果たすクラウン2の内側、および空気Wの出口としての機能を果たす通気口4bを備えており、特に空気Wの出口としての通気口4bの大きさを自由に調整可能であるため、効果的かつ容易にクラウン2内部を通る空気量を調整することができる。
【0023】
また、本発明の帽子は、通気口4bの大きさを変えることでクラウン2内部を通る空気量を調整するものであるため、帽子前部の通気口4aの大きさを可能な限り小さくして、太陽光や異物、雨水などが通気口4aからクラウン2内部に侵入するのを防ぎつつ、通気口4bの大きさを変えることで十分な通気性を確保することが可能となる。
【0024】
続いて、本発明の他の実施形態について、図2を用いて説明する。
図2には本実施形態における帽子が示されており、図2(1)はその側面図、図2(2)はその底面図である。
【0025】
本実施形態では、帽子前部におけるクラウン2内部に通気口4aを設けている。より具体的には、図2(2)に示すように、クラウン2とすべり6との間に隙間を設けることによって通気口4aを形成している。
【0026】
したがって、図2(1)に示すように、クラウン2の外観に通気口4aは一切現れないのでデザイン性に優れた帽子の製作が可能となる。また、帽子前部から太陽光などの光、埃などの異物、雨水などが侵入するのを防ぐことができる。本実施形態では、クラウン2とすべり6の間にメッシュ地を配置したが、必ずしもメッシュ地を配置する必要はない。
【0027】
次に、本発明の別の実施形態について、図3を用いて説明する。
図3は本実施形態を示す帽子の被着状態を示す側面図である。
【0028】
本実施形態では、帽子前部の対向位置を限りなくクラウン2の後部に設定している。したがって、図3に示すとおり、帽子の前後を逆にして被った場合に通気口4bが被着者の額の前方に位置し、通気口4bから空気Wがクラウン2内部に導入され、被着者の後方に位置する通気口4aから空気Wが排出される。通常どおり、帽子の前方を被着者の前方に合わせて被った場合には、通気口4aから空気Wがクラウン2内部に導入され、通気口4bから空気Wが排出される。
【0029】
本実施形態の帽子によれば、例えば、日差しが比較的強いときには通常の被り方をして、日差しが比較的弱いときには帽子の前後を入れ替えて被るといった場合であっても、通気性を確保するという本発明の機能を損なわない。また、通気口4bの大きさを調整することにより、環境条件や被着者の体調に応じて空気Wのクラウン2内部への導入量を調整することができる。
【0030】
続いて、本発明の別の実施形態について、図4(1)を用いて説明する。
図4(1)は本実施形態を示す帽子の斜視図である。
【0031】
本実施形態では、帽子前部の対向位置をクラウン2の両側部に設定している。つまり、クラウンを両側部前方の2a、2a、両側部後方の2b、2b、中央部の2cと、クラウン2を全部で5つに分割した上で、クラウンのカット部5a、5aとカット部5b、5bを各々上下方向にずらして重ねて配置しつつ、当該カット部5a、5aおよびカット部5b、5bとを相互に接続しないことにより、通気口4b、4bを形成している。本実施形態の帽子のようにクラウン2の分割方法を工夫することで、通気口4bの位置や数を自在に変えることができる。
【0032】
続いて、本発明のさらに別の実施形態について、図4(2)を用いて説明する。
図4(2)は本実施形態を示す帽子の後方斜視図である。
【0033】
本実施形態では、クラウンを中心からほぼ均等に6方向にカットして分割するいわゆる六方型の帽子について、その後面のカット部に沿って通気口4b、4bを設けている。六方型の帽子は、野球帽やゴルフ帽に多く見られる型であり、本実施形態ではそのカット面をそのまま利用して通気口4b、4bを設けるので製作が非常に容易である。
【0034】
次に、本発明のさらに別の実施形態について、図5を用いて説明する。
図5は本実施形態を示す帽子の内部を透視して描いた斜視図である。
【0035】
本実施形態では、図2の実施形態と同様にクラウン2とすべり6の間に隙間を設けることによって帽子前部に通気口4a設けているが、すべり6の隙間を設けた部分にサイズ調整機構7を設けた点、および帽子後部に緩衝材8を設けた点で図2の実施形態とは異なる。本実施形態のサイズ調整機構7にはアメリカンホックを用いたが、面ファスナーやスライドアジャスターなどサイズ調整が可能な機構であればいずれのサイズ調整機構を採用しても良い。帽子後部に設ける緩衝材8については、発泡スチロールやゲル化素材などの外部からの衝撃を和らげる機能を持つ資材を用いる。本実施形態では、帽子後部にサイズ調整機構を設ける代わりに帽子前部にサイズ調整機構を設け、かつ、帽子後部には緩衝材を設けたため、帽子後部に外部から衝撃を受けた場合の頭部へのダメージを軽減することができる。特に、子供たちがサッカー競技において熱中症対策のために帽子を被る必要があるが、つばがヘディング等の邪魔にならないように本実施形態の帽子を後ろ前逆に被れば、ヘディング等による衝撃から前頭部を適切に保護することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上、通気性に関する帽子の実施形態について説明したが、本発明に係る帽子は、キャップだけではなく、ハンチング、キャスケットなど、幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 クラウン
3 つば
4 通気口
5 カット部
6 すべり
7 サイズ調整機構
8 緩衝材
【要約】

【課題】 本発明は通気性帽子に関するものであって、帽体内に流入する風量を簡単に調整することができる帽子を提供する。
【手段】 本発明の帽子は、つばとクラウンから構成される帽子であって、帽子前部とその対向位置の各々に通気口を設け、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口は、カットして分割したクラウンの各々のカット部を上下方向にずらして重ねて配置しつつ、当該カット部を相互に接続しないことにより形成し、前記帽子前部の対向位置に設けた通気口の大きさを自由に調整可能としたことを特徴とする。

【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5