特許第6233942号(P6233942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233942グラビア印刷版および該グラビア印刷版を用いたグラビア印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233942
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】グラビア印刷版および該グラビア印刷版を用いたグラビア印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/06 20060101AFI20171113BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B41N1/06
   B41M1/10
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-114970(P2017-114970)
(22)【出願日】2017年6月12日
【審査請求日】2017年6月12日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714011259
【氏名又は名称】下村 恭一
(72)【発明者】
【氏名】下村恭一
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−187565(JP,A)
【文献】 特開平11−020117(JP,A)
【文献】 特開平07−329440(JP,A)
【文献】 特開平07−306525(JP,A)
【文献】 特開昭59−200240(JP,A)
【文献】 特開昭59−009662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00
B41N 1/00
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクト網グラビア印刷版の版面に設けられる100%濃度部のセルの形状、若しくはセルを形成する土手を含む1画素の形状が4辺からなる2辺の長さの異なる平行四辺形又は台形の形状で、前記セルを形成する土手を含む1画素の交差する2辺に沿って土手は設けられ、該2辺の土手の一つが隣接する画素の一つの土手と直線状に連り、該直線状に連なる土手と交差する土手は任意の角度で設けられ、前記直線状に連なる土手は前記グラビア印刷版の円周方向に対し±30度の範囲内の角度で設けられていることを特徴とするグラビア印刷版。
【請求項2】
前記直線状に連なる土手の線数が1インチ間に100線から250線で、前記直線状に連なる土手の土手幅とセル幅の線比は1対3から1対6で、前記直線状に連なる土手の土手幅に対し前記交差する土手の土手幅は0.3倍から1.5倍で、セルの前記直線状に連なる土手に垂直な1画素ピッチに対し平行な前記交差する土手の1画素ピッチは0.5倍から3倍であることを特徴とする請求項1のグラビア印刷版。
【請求項3】
前記ダイレクト網グラビア印刷版の100%濃度部においてドクターが接触する位置に関わらず、ドクターが接触する前記交差する土手の合計の長さが、同じ長さになっていることを特徴とする請求項1から請求項2のグラビア印刷版
【請求項4】
墨インキと三原色インキを用いてカラー絵柄を印刷するグラビア印刷版において、直線状に連なる土手の間隔、及び前記直線状に連なる土手に交差する前記交差する土手の間隔を任意に決め、前記グラビア版の100%濃度のセル表面積を同じ面積とし、且つ各色グラビア印刷版における直線状に設けられる土手のピッチ及び交差する土手のピッチを異なるものとすることで、モワレの発生を防止する前記請求項1から前記請求項3のダイレクト網グラビア印刷版を用いて印刷することを特徴とするグラビア印刷方法
【請求項5】
ダイレクト網グラビア印刷版の版面に設けられる100%濃度部のセルは、該セルを形成する土手を含む1画素の形状が長辺と短辺とからなる平行四辺形であって、前記長辺の線数は1インチ間に100線から225線で、短辺方向の土手幅とセル幅の比である線比は1対3から1対6で、前記短辺も長辺と同じ土手幅で、前記長辺と前記短辺とで挟まれた鋭角部の中心線が、前記グラビア印刷版の円周方向から±30度の範囲内の角度であって、前記1画素を1単位としてヘリンボーン模様に配置されていることを特徴とするグラビア印刷版。
【請求項6】
墨インキと三原色インキインキを使用し任意のカラー絵柄を印刷するダイレクト網グラビア印刷版において、前記ヘリンボーン模様の角度が任意に振られ、モワレの発生を防止する前記請求項5のダイレクト網グラビア印刷版を用いることを特徴とするグラビア印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷版に設けられるセル形状及び該セル形状を設けたグラビア印刷版を用いたグラビア印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷(凹版印刷方式の一つ印刷方式)に使用されるグラビア版は、過去はコンベンショナル方式と呼ばれた方法で製造されていたが、現在は銅メッキ層を形成した印刷シリンダーの表面をダイアモンド針で彫刻して凹部(以下、セルと呼ばれる通称名称と言う)を形成する電子彫刻グラビア印刷版、又は銅メッキ層を形成した印刷シリンダーの表面に感光樹脂膜を塗布し、土手(セルを囲む腐食されない銅メッキ部分)となる部分をレーザーで露光硬化させ未硬化部を除去した後、銅メッキを腐食しセルを形成するダイレクト網グラビア版により、グラビア印刷版(セルを形成した後は耐刷性を持たせるために銅メッキ槽に6から12ミクロンのクロムメッキ層が設けられる)が製造されている。
【0003】
コンベンショナル方式で、グラビア印刷版を製造する工程は、カーボンティッシュと呼ばれたゼラチンを主成分とする感光膜に45度に透明な線が交差するスクリーンフィルムを焼き付け、更に絵柄となるポジフィルムを焼き付けた後、グラビア版の銅メッキ表面に露光面を転写した後、現像し次の腐食液を感光膜に含侵腐食することで印刷絵柄を形成するセル(凹部)を製造していた。ここで用いられた、スクリーンフィルムの形状が、現在のダイレクト網グラビア版にも引き継がれてきた。
【0004】
画像を表現する一画素(175線の場合は145ミクロン×145ミクロン)が荒いグラビア印刷方式においては、三原色を45度の角度で直交する同じスクリーン角度でグラビア版を作成するとモワレと言われるハレーションが発生するため、この現象が画像に出ないように、各色のスクリーンの角度を15度から30度変える事で対処してきた。
【0005】
また、従来の正四角形を45度傾けてグラビア印刷版に設けるセルを、亀甲版と呼ばれる正六角形を積み重ねたセル形状のグラビア版も使用されるようになっている。
【0006】
いずれにおいても、調子柄を再現するグラビア版は、一定の線数を使用しスクリーンの角度を、先に記述したように変更(スクリーン角度を振る)して製造されるものであ。一般的にグラビア印刷に使用される線数は、175線/インチであり、細かな文字などの場合は、200線/インチが、濃度が必要なベタ柄(調子柄のないもの)などにおいて150線/インチのスクリーンが使用されることが有る。
【0007】
また、これらの線数において、線比と呼ばれる土手となる部分とセルとなる部分の幅の比は、1対3、1対3.5、1対4,1対5などの比率で1画素が構成されている。
【0008】
異なる、グラビア印刷版の製造方法として、ダイアモンド針で銅メッキ層を連続彫刻しセルを形成する電子彫刻方式がある。この方式で形成されるセルの形状は、四角形に近い形状から、四角形を細長くしたダイア形状のまで、使用するダイアモンド針の先端角度の交換により変更している。この形状の組み合わせで印刷時のモワレに対処している。
【0009】
電子彫刻方式においても、調子柄を再現するグラビア版は、一定の線数を使用し、先に記述したように形状変更(ダイアモンド針に先端角度を変更する)して製造されるものである。一般的にグラビア印刷に使用される線数は、70線/cmであり、細かな文字などの場合は、80線/cmが、濃度が必要なベタ柄(調子柄のないもの)などにおいて60線/cm又はこれ以上に荒い線数でグラビア印刷版が製造される。
【0010】
これらの従来製造されるグラビア印刷版は、先に記載した何れの方式においても印刷される絵柄の再現性に重点がおかれたものであった。
【0011】
このようにして製造されたグラビア印刷版は、グラビア印刷機でインキを塗布され、余分なインキはドクターで除去し、グラビア印刷版に設けられたセルのインキが充填され、該インキが被印刷物にニップ圧胴より圧接されることで転写され印刷は完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
先行の特許文献調査を行ったが、セル形状及びドクター摩耗を防止するセル形状の特許はなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
グラビア印刷版に塗布されたインキを、ドクター刃で掻き落とすことにより、グラビア版に設けたセルにインキを充填し被印刷物に転写することでグラビア印刷は行われるが、ドクター刃はグラビア印刷版に加圧されているためドクター刃は摩耗する。ドクター刃の摩耗少なくするセルの形状を検討し、グラビア印刷版の新たなセルの形状を設けることによりドクター刃の摩耗を少なくし、耐刷性の向上を図り且つ三原色を用いたカラー絵柄においてもモワレが発生しないグラビア版の作成方法を提供することができ、ドクター刃の摩耗防止による印刷品質安定を向上するグラビア印刷版及び該グラビア印刷版を使用するグラビア印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のグラビア版はダイレクト網グラビア印刷版の版面に設けられる100%濃度部のセルの形状、若しくはセルを形成する土手を含む1画素の形状が4辺からなる2辺の長さの異なる平行四辺形又は台形の形状で、前記セルを形成する土手を含む1画素の交差する2辺に沿って土手は設けられ、該2辺の土手の一つが隣接する画素の一つの土手と直線状に連り、該直線状に連なる土手と交差する土手は任意の角度で設けられ、前記直線状に連なる土手は前記グラビア印刷版の円周方向に対し±30度の範囲内の角度で設けられていることを特徴とする。
【0015】
(本発明のグラビア印刷版を作製するための感光膜の形状と作成されたセルの形状は、例えば、深さ25ミクロンの腐食(腐食深度)では、サイドエッチングにより5ミクロン程度感光膜の端下部が腐食されセルは広く、土手は狭くなる。この点を知ったうえで、以下の説明においては、感光膜形状に関しても、セル形状と略同じ形状として説明を加える。ただし、感光膜に関する内容に限定する場合は、感光膜と表現し説明を加えることとする。)
(1画素とは、1つのセルと土手からなるが、線数・線比において、線数は土手の端部から次の土手の端部までを持って算出され、線比は土手の幅とセルの幅を持って算出される。依って、本発明において、1画素は、1画素の交わる2辺に沿って土手を設け、土手を除く部分をセルとして記述をする。)
【0016】
従来汎用的に使用されている、45度の角度で交差する正方形からなるセルは、線数と線比を決めれば土手表面積、セル表面積が決まる。
【0017】
本発明のグラビア版に設けられるセル形状は、2辺の土手が所定の角度、好ましくはグラビア印刷版の円周方向に対して角度±30度の範囲で直線状に設けられ、該2辺の直線状に連なる土手と任意の角度で交差する土手により形成されるセルである。
【0018】
従って、円周方向に直線状に連なり対向する2辺の土手(以下、直線状に連なる土手と呼ぶ)の線数及び線比を決め、該2辺の土手に交差する土手(以下、交差する土手と呼ぶ)を任意に決めることが出来もので、該交差する2辺の土手の間隔を任意に決めれば、任意のセル表面積を持つグラビア版を設けることが出来るものである。
【0019】
本発明のより得られる効果は、円周方向に直線状に連なる土手により、ドクターの加圧を受け止めドクターの摩耗を少なくすることであるが、この点については後段で詳細な説明をする。(尚、円周方向に直線状に連なる土手は円周方向だけでなく、円周方向に対して角度±30度の範囲で振ることができる。)
【0020】
図1は、従来汎用的に使用されているグラビア印刷版のセル形状の1例として、175線・線比1対4の1画素を示している。(周囲の破線は周りの画素を示すものである。)
1画素を実線で示したが、1画素中のセル部を(A)、土手部を(B)で表示した。周りに設けた破線は、周りのセルの位置を示すものである。
尚、以下に図示する1画素図においても、(A)(B)を表示する。
【0021】
図2は、本発明のセル形状の1例であり、円周方向に設ける直線状に連なる土手を175線・線比1対4とし、円周方向に直線状に連なる土手に交差する土手を60度の角度で設け、1画素の面積、土手の面積、セルの面積を、図1の1画素の面積、土手の面積、セルの面積と同一になるようにした1画素を示したものである。
【0022】
本発明は、ドクターの摩耗を少なくするグラビア版に関するものであり、図1図2を比較すると、ドクターが当たるセルの最大幅は、図1に示す白抜き両矢印の幅を、100とすると、図2に示す白抜き両矢印の幅は、70弱となる。従って、セル幅の狭い本発明のグラビア版のドクター摩耗は減少することとなる。
【0023】
セルの幅がドクター摩耗に影響を与えることを次に説明する。セルの幅が狭いことが、セルを通過するドクターのタワミを少なくし、土手からセルへ落ち込むR部の深部には接触しないことにより、ドクター摩耗は少なくなる。次の示す例から容易に類推することができる。
【0024】
ドクターがセルを跨ぐ幅が少なければドクター摩耗が少ない事は、図1のセルを形成する製版方法において、ドクター摩耗を100%濃度部と、セル幅が狭い80%濃度部でのドクター摩耗程度を比較すると前者はドクター摩耗が倍以上に激しいことからも解る。
【0025】
また、175線・線比1対4のグラビア印刷版と、200線・線比1対4のグラビア印刷版で、ドクター摩耗を比較すると前者のドクター摩耗が激しいことからも、セル幅が狭ければドクター摩耗が少ない事が分かる。
【0026】
更に、ドクターが、セルを跨ぐときにセル底の方向へタワミを生じていることは、剛性の異なる2種のドクターを使用して、版面に塗布されたインキを掻き落とし被印刷物に転写させると、インキの使用量は剛性の高いドクターを使用した場合の方が多く、印刷濃度が有る事よりもドクターはセルを通過するときにタワミが少なく、剛性の低いドクターを使用した場合は、ドクターのタワミが大きいことが分かる。従って、タワミによりドクターは、土手の研磨がされていないR部とより広範囲に接触していることが分かる。これより、セル幅が広いとドクター摩耗が大きくなることが分かる。
【0027】
図1の1画素を使用したグラビア版の表面拡大平面図を図3に、図2の1画素を使用したグラビア版の表面拡大平面図を図4に示し説明を加える。表面拡大平面図においは、セルと土手を表示し、図の上がグラビア印刷版の円周方向であり太矢印で示す。
【0028】
図3において、版面の土手はジグザグに形成されており、このジグザグによりドクターはセル部と土手部で、タワミと戻りを繰り返しドクター摩耗は助長されているものと考えられる。これに対し図4は、円周方向に直線状に設けられた図1より狭い土手幅で、且つ同じ幅の土手により支えられ、ドクターは滑らかに移動することで振動は少なくなり、タワミの変化も少なく、摩耗が少なくなると考えられる。
【0029】
また、図1のセルを設けたグラビア版と同じ量のインキを転移させ同濃度の印刷物を得るために、本発明のグラビア版に設けるセル形状は、図2のセルを設けたグラビア版に限るものではなく無限の形状数で、同濃度の印刷物を得ることができる。
【0030】
一部の例として、図5から図9に示す本発明のグラビア版においても同濃度の印刷物を得ることができる。
【0031】
表1に図1図2、及び図5から図9の1画素面積を100とした時の、セル部面積及土手部面積、線比及びドクターがセルを跨ぐ最大幅を汎用的に使用されている図1の幅を100として比較する。
【0032】
本発明においては、線数を変えても交差する土手の間隔を調整すれば、セルの面積を同じにすることができるため、同濃度の印刷物を得ることができる。このことは、図2図5の関係である。
【0033】
また、同じ線数で、線比を変えても土手の幅を調整すれば、同じセル面積のセルを得ることができるため、同濃度の印刷物を得ることができる。このことは、図8図9の関係である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に記載した、図5から図9について説明を加える。
図5は、線数を165線と荒くしたものであるが、ドクターがセルを跨ぐ幅は、図1の74%であり、ドクターへの負荷は低減された。また、直線状に連なる土手幅も広くなってしっかりとドクターを受け止めることができる。1画素面積、セル部面積、土手部面積も変わらず、同濃度の印刷物を得ることができる。
【0036】
図6は、線数を187,5線と細かくしたものである。直線状に連なる土手幅をしっかりとするための線比は1対3,6とたことで、しっかりとドクターを受け止めることができた。また、1画素面積、セル部面積、土手部面積も変わらず、同濃度の印刷物を得ることができる。
【0037】
図7は、線数を200線と更に細かくしたものである。これについても、。直線状に連なる土手幅をしっかりとするための線比は1対3,33とたことで、ドクターを受け止め摩耗は低減することができた。また、1画素面積、セル部面積、土手部面積も変わらず、同濃度の印刷物を得ることができる。
【0038】
図8図9は、線数を210線と更に細かくしたものである。図8は線比を1対4、図9は線比を1対3,33とした。図8については、直線状に連なる土手の幅は狭くなっているが、セル幅が55%と狭くなっており、交差する土手が広いことでドクター摩耗を少なくすることはできた。また、図9のように土手幅を広く取っても同様にドクター摩耗を少なくすることはできた。また、1画素面積、セル部面積、土手部面積も変わらず、同濃度の印刷物を得ることができる。
【0039】
この様に、本発明においてドクターは、円周方向に設けられた直線状に連なる土手幅に対し、該土手に交差する土手幅は、任意の幅とすることが出来るため、先に示した表1より直線状に連なる土手幅を広くし、該土手に直交しない土手幅を狭く、又は広くすることができる。
【0040】
セル表面積、直線状のセル幅を変更せずに、円周方向に直線状に設けられた土手に交差する土手幅を狭くすることもできる。
【0041】
また、本発明において、円周方向に直線状に連なる土手の角度を±30度の範囲で変更し、振ることが出来るが、図2及び5から図9の場合は、時計回りと逆に30度の範囲に振ることが望ましい。後で示す図10においては時計回りに30度の範囲に振ることが望ましい。
【0042】
本発明のグラビア版はダイレクト網グラビア印刷版であって、設けられるセルの1画素の形状が、前記直線状に連なる土手の線数が1インチ間に100線から250線で、前記直線状に連なる土手の土手幅とセル幅の線比は1対3から1対6で、前記直線状に連なる土手の土手幅に対し前記交差する土手の土手幅は0.3倍から1.5倍で、セルの前記直線状に連なる土手に垂直な1画素ピッチに対し平行な前記交差する土手の1画素ピッチは0.5倍から3倍であることを特徴とする。
【0043】
本発明のグラビア版に設けるセルの形状は、図2から図9に示したものに限るものではなく、例えば表1において交差する土手の角度を50度に変えれば、ドクターがセルを跨ぐ幅が小さくなる。
【0044】
本発明のグラビア版に設けるセルの形状は、任意に選択することができ上記の50度にするだけでなく45度でもよく、セル形状を任意に設ければ無限の形状設定ができる。
【0045】
本発明のセルの形状は、種々の選択ができ、図10に示すグラビア版表面図は、図4に対し直線状に連なる土手に対し交差する土手の角度が対称に設けられるもので有る。また、図4図10とが、1列づつ交互に組み合わされ矢羽模様状の配列になっていてもよい。また、図11に示す台形のセルからなるグラビア版であってもよい。
【0046】
本発明のグラビア版は前記ダイレクト網グラビア印刷版であって、100%濃度部においてドクターが接触する位置に関わらず、ドクターが接触する前記交差する土手の合計の長さが、同じ長さになっていることを特徴とする。
【0047】
図2から図11で説明を行なったグラビア版において、直線状に連なる土手に対し交差する土手が配置される位置も、ドクターの摩耗に影響をする。
【0048】
例えば、図12図13図14は、本発明のグラビア版の版面で、同じ線数、同じ土手面積、同じセル面積であるが、グラビア印刷時にドクターが受ける振動は異なるものである。
【0049】
図12は、ドクターが交差する土手を同時に通ることとなり、ドクターが受ける振動は大きくなり、好ましいものでない。
【0050】
図13図14は、ドクターは直線状に連なる土手に交差する土手の配置は異なるが規則性を持って設けられておりドクターが受ける振動は分散されドクター摩耗は少ないものとなる。両者の差としては、インキのレベリングを考慮すれば図14を選択する方が良く、ドクターへの振動をより少なくするには図13が良い。
【0051】
このように、本発明のグラビア版において、グラビア印刷版にドクターが接触する幅が、前記直線状に連なる土手幅と前記直線状に連なる土手に交差する土手幅の合計長さが、同じ長さになっていることが好ましい。
【0052】
また、図15に示した本発明のグラビア版のセルと土手からなる1画素は、4辺が同じ長さ(長辺と短辺を同じ長さとする)の菱形の形状であり、該1画素においては土手幅とセル幅の線比も同じである。
図15の1画素を用い、交差する土手も直線状の配置したグラビア印刷版の表面拡大平面図を、図16に示す。このように、左右上下を対称にすることもできる。図15は、図1の直交する土手形状を、角度を変えて土手が交わるようにしたものであり、同じセル面積、同じ土手面積でドクターがセルを跨ぐ幅を狭くすることができドクター摩耗を少なくすることができる。
【0053】
このようにして得られる本発明のグラビア版を、ベタ柄と呼ばれる100%濃度の絵柄で構成されるグラビア版、全面ベタ絵柄で構成されるグラビア版、及び100%濃度の絵柄と100%濃度以下の階調で構成されるグラビア版として使用すれば、ドクターの摩耗は大幅に減少しグラビア印刷の安定性の向上が図れる。
【0054】
本発明は、汎用的な直線が直角に交差するセル形状と異なるものであるが、なぜ本発明の変形セルの形状が考えられ実用化されなかったのかは、下記2項目の固定概念によるものと考えてよいと思われる。
1、直交する等間隔の土手でセルを形成するとの固定概念と、土手の間隔を変えるとセルの面積が変わるためだと思われる。
2、グラビア印刷版の製造方法の革新は意匠性の向を目的としていたために、セルは正方形が良いとの固定概念により、グラビア印刷の印刷安定性の向上にセル形状及び幅が影響することに対する配慮、更には変形セルを用いる発想がなかったためと思われる。
【0055】
本発明のグラビア印刷方法は、墨インキと三原色インキを用いてカラー絵柄を印刷するグラビア印刷版において、直線状に連なる土手の間隔、及び前記直線状に連なる土手に交差する前記交差する土手の間隔を任意に決め、前記グラビア版の100%濃度のセル表面積を同じ面積とし、且つ各色グラビア印刷版における直線状に設けられる土手のピッチ及び交差する土手のピッチを異なるものとすることで、モワレの発生を防止する前記請求項1から前記請求項3のダイレクト網グラビア印刷版を用いて印刷することを特徴とする。
【0056】
従来の、ダイレクト網グラビア印刷版において、カラーの絵柄を印刷する場合は、黄、紅、藍、墨色グラビア版は、線数を同じにしてスクリーン角度を±30度の範囲で角度を振ることによりモワレ現象を防止している。直交するスクリーンによりセルが形成されるため、スクリーン線数を変更することはセルの表面積を変更することとなりカラー絵柄を表現する黄、紅、藍、墨色において100%濃度のカラーバランスを確保することができないためである。
従って、モワレを防止するために、カラー印刷版はスクリーン角度を、15度又は30度振ったグラビア版を使用することとなる。
【0057】
本発明のおいては、ドクターの摩耗を少なくするため、円周方向に設ける直線状に連なる土手の振り角度を少なくし、黄、紅、藍、墨色グラビア版の線数を個々の版により任意に設定し、線数を変更しても100%濃度を同等のセル表面積を確保でき、且つ線数を変える事でグラビア版の幅方向のピッチは変わり、交差する土手の長さも変化し、言い換えれば円周方向のピッチも変わるため、モワレの発生を防止することができる。
ただ、黄、紅、藍、墨色グラビア版の直線状に連なる土手の半円中に対する角度を同じにする必要はなく、同じ線数、同じ線比、同じセル面積の版で角度を振ることでモワレを防止することもできる。
【0058】
表2に、前出の図1及び図2図5からから図9の版幅方向のピッチ及び円周方向のピッチをまとめる。
【0059】
【表2】
【0060】
本発明のグラビア版を使用すれば、線数を変えても100%濃度部において同一の濃度の印刷物を得られることで、直線状に連なる土手の角度を変えることなく、モワレが発生しない印刷をすることができる。
【0061】
表2に示す、図1のセルと、図5のセルでは、版幅方向でセルは16ピッチで1ピッチズレ、円周方向でセルは15ピッチで1ピッチのズレを生じる。このズレは2,3mmごとに1ピッチズレが発生するものでありモワレと認識できるものでなく、直線状に連なる土手の角度を振ることなくモワレを防止できる。
【0062】
例えば、カラー絵柄を表現する黄、紅、藍、墨色グラビア版に、本発明の表2に示した200線数、187,5線、175線、165線の4版を使用すればモワレが発生しないカラー絵柄の印刷物が得ることができる。
【0063】
また、4種の線数を使わなくても、175線と、187,5線を使用し、同線数については5度から15度程度の角度を振ることで、より繊細なカラー絵柄の印刷物が得ることができる。
【0064】
このように、本発明のグラビア版を使用すれば、ドクター摩耗は大幅に減少し印刷品質が安定し、カラー絵柄の再現性も良好な印刷物を得ることができる。さらに、ドクターの摩耗が少なくなるだけでなく、ドクター摩耗片又は粉による品質不良である、ドクター筋、筋汚れ、ヒゲの発生を皆無にすることが出来た。
【0065】
本発明のグラビア印刷版はダイレクト網グラビア印刷版であって、版面に設けられる100%濃度部のセルは、該セルを形成する土手を含む1画素の形状が長辺と短辺とからなる平行四辺形であって、前記長辺の線数は1インチ間に100線から225線で、短辺方向の土手幅とセル幅の比である線比は1対3から1対6で、前記短辺も長辺と同じ土手幅で、前記長辺と前記短辺とで挟まれた鋭角部の中心線が、前記グラビア印刷版の円周方向から±30度の範囲内の角度であって、前記1画素を1単位としてヘリンボーン模様に配置されていることを特徴とする。
【0066】
ドクター摩耗を低減するために、対向する辺の長さを同じとする、平行四辺形のセル形状であり、長辺と短辺短辺からなる1画素を、交互に一定の角度で配置することにより、従来汎用的に使用される45度の角度で傾けた正方形のセル幅より、ドクターがセルに接する幅を狭くし、且つ正方形のセル表面積と同じセル面積とした本発明のセルにより、ドクター摩耗が低減され同濃度の印刷物を得られるグラビア版とするものである。
【0067】
図17図18図19図20に、本発明のグラビア版のセル配列を表面拡大平面図で示し説明をする。尚、其々の図の右下に破線で1画素を示した。
【0068】
図17は、短辺の長さに対し、長辺の長さが2倍になる1画素をヘリンボーン模様に組み合わせ構成し、グラビア版に設けた表面の拡大平面図である。
【0069】
図18は、短辺の長さに対し、長辺の長さが2倍になる辺を平行四辺形(変形長方形)にした1画素をヘリンボーン模様に組み合わせ構成し、グラビア版に設けた表面の拡大平面図である。
【0070】
図19は、図18と同じ平行四辺形(変形長方形)を別なヘリンボーン模様に組み合わせ構成したものである。
【0071】
図20は、短辺の長さに対し、長辺の長さが3倍になる1画素をヘリンボーン模様に組み合わせ構成し、グラビア版に設けた表面の拡大平面図である。
【0072】
図21は、短辺の長さに対し、長辺の長さが1,5倍になる辺を平行四辺形(変形長方形)にした1画素をヘリンボーン模様に組み合わせ構成し、グラビア版に設けた表面の拡大平面図である。
【0073】
本発明の図17の平行四辺形の1画素を図22に示し、汎用的に使われている正方形のセルである図1と比較した。また、形状はおおよそ、4長辺は247線、短辺は124線で、長辺の線比は、1対2,8であった。
【0074】
図22に、白抜き両矢印にドクターが接するセルの幅を示した。図1と比較するとセルの幅は65%弱、土手幅は93%強となり、ドクターの摩耗は大幅に低減できるものであった。
【0075】
このように、長方形又は平行四辺形(変形長方形)から、任意に選択されたセルを持つグラビア版を用い、ベタ柄と呼ばれる100%濃度の任意の柄印刷を行なえば、グラビア版に設けたセルに加圧され接触するドクターはセル部においてタワミが少なくなることで摩耗が大幅に低減され、印刷品質の向上及びドクター使用数の減少及び作業負荷の低減に大きな効果がある。
【0076】
本発明のグラビア印刷方法は、墨インキと三原色インキインキを使用し任意のカラー絵柄を印刷するダイレクト網グラビア印刷版において、前記ヘリンボーン模様の角度が任意に振られ、モワレの発生を防止する前記請求項5のダイレクト網グラビア印刷版を用いることを特徴とする。
【0077】
本発明の、セルを有するグラビア版を使用しカラー絵柄を印刷する場合は、カラー階調に準じて網点に変換すればよく、またモワレを防止するために、汎用的に使用されている正方形のセルと同様に、墨、三原色について任意にセル角度を±15度及び±30度振ればモワレの発生はない。
【0078】
これにより、ドクターの摩耗が少なくなるだけでなく、ドクター摩耗片又は粉による品質不良である、ドクター筋、筋汚れ、ヒゲの発生を皆無にすることが出来た。
【発明の効果】
【0079】
本発明のグラビア版を用いることにより、ドクターの摩耗を少なくすることができ、またドクター摩耗によるドクター起因の摩耗片、摩耗粉がなくなり、もしくは減少し印刷品質の向上が図れた。また、印刷職場における副材料であるドクター使用量が減少し収益の向上にもつながった。
【0080】
また、本発明のグラビア版は、概長方形のセルを直線状又はヘリンボーン状又は矢羽状などに配置することでカラー絵柄の印刷においても100%濃度のセル表面積を、汎用的に使用されている正方形セル表面積と同じにして、ダイレクト製版による網点で階調表現をすることで、ドクターの摩耗を少なく印刷品質の向上した印刷方法とすることができた。
【0081】
モワレの発生の対しては、セルの角度を振る方法ではなく、セルの表面積を同じにし、セル形状を変える事で、縦横の線数を変えて印刷物のモワレを防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】汎用的な175線 線比1:4の1画素図
図2】本発明の175線 線比1:4の1画素図
図3図1を使用したグラビア印刷版の表面拡大平面図
図4図2を使用したグラビア印刷版の表面拡大平面図
図5】本発明の165線 線比1:4の1画素図
図6】本発明の187,5線 線比1:3,6の1画素図
図7】本発明の200線 線比1:3,33の1画素図
図8】本発明の210線 線比1:4の1画素図
図9】本発明の210線 線比1:3,33の1画素図
図10図5の交差する土手の角度が対称となる1画素図
図11】本発明のセル形状のグラビア印刷版の表面拡大平面図
図12】本発明のグラビア印刷版の表面拡大平面図
図13】本発明の別なグラビア印刷版の表面拡大平面図
図14】本発明の別なグラビア印刷版の表面拡大平面図
図15】本発明の175線で菱形からなる1画素図
図16図15を使用したグラビア印刷版の表面拡大平面図
図17】本発明のグラビア版のセル配列の表面拡大平面図
図18】本発明のグラビア版のセル配列の別な表面拡大平面図
図19】本発明のグラビア版のセル配列の別な表面拡大平面図
図20】本発明のグラビア版のセル配列の別な表面拡大平面図
図21】本発明のグラビア版のセル配列の別な表面拡大平面図
図22図17の1画素図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0083】
図3の汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版と図4の本発明のダイレクト網グラビア版の2版を作製し、ドクター(セラメッキドクター)の摩耗比較を行った。版幅1100mm版円周700mmの版を使用し、絵柄は版の中央部に700mm幅で100%濃度のベタ柄を設け版深は25ミクロンとした。
【0084】
グラビア印刷は、ウレタン系インキの白インキを使用しインキ粘度はザンカップ#3で16秒とし、ドクター加圧は1、2kgとし、印刷速度200m/分とした。ドクターの摩耗は、印刷前のドクターの長さを測定しておき30000m印刷後の測定を行い、ドクターの摩耗を調べた。
【0085】
上記の比較の結果、汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版はドクターが0,7mm摩耗していたのに対し、本発明のダイレクト網グラビア版においては、0,4mmの摩耗であった。
【0086】
同様の比較を、ウレタン系インキの黄インキを使用し行った。結果は、汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版はドクターが0,5mm摩耗していたのに対し、本発明のダイレクト網グラビア版においては、0,3mmの摩耗であった。
【実施例2】
【0087】
図1の汎用的に使用されているセル形状で、墨版、藍版、紅版、黄版のカラー絵柄のダイレクト網グラビア版(紅版は時計と逆回りに15度、藍版は時計回りに15度、黄版は時計回りに30度セル角度を振った)を、版深23ミクロンにして作製した。本発明のセル形状で、墨版、藍版、紅版、黄版のセル形状として墨版は図6、藍版は図2、紅版は図7、黄版は図5の1画素セル形状を選択し、カラー絵柄のダイレクト網グラビア版を作製した。本発明のグラビア版においては角度を振らなかった。
【0088】
上記のカラー絵柄の4版と、実施例1で作成した版を白版として用い、汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版と、本発明の線数の異なるダイレクト網グラビア版を用い、ウレタン系インキを使用し各色のインキ粘度をザンカップ#3で14秒とし、ドクター加圧は1、2kgとし、印刷速度200m/分とし30000mの印刷行い、カラー絵柄の再現性、意匠性を比較した。
【0089】
どちらの版においても、カラー絵柄の再現性、意匠性に問題はなかった。また、モワレの発生もなかった。
【実施例3】
【0090】
実施例2において、本発明のカラー絵柄の版は、角度を振らずに印刷を行なったが、角度を振った場合について、本実施例で確認を行った。
【0091】
紅版を時計回りと逆に15度角度を振り、藍版を図2でなく交差する土手を対称の角度に変え図10のセル形状として、時計回りに15度角度を振りグラビア版を作製し、実施例2と同様の確認をおこなった。結果はカラー絵柄の再現性、意匠性は良好でモワレの発生もなかった。
【実施例4】
【0092】
図3の汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版と本発明の図17(1画素形状は図22)のダイレクト網グラビア版の2版を作製し、ドクター(セラメッキドクター)の摩耗比較を行った。版幅1100mm版円周700mmの版を使用し、絵柄は版の中央部に700mm幅で100%濃度のベタ柄を設け版深は25ミクロンとした。
【0093】
グラビア印刷は、ウレタン系インキの白インキを使用しインキ粘度はザンカップ#3で16秒とし、ドクター加圧は1、2kgとし、印刷速度200m/分とした。ドクターの摩耗は、印刷前のドクターの長さを測定しておき30000m印刷後の測定を行い、ドクターの摩耗を調べた。
【0094】
上記の比較の結果、汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版はドクターが0,7mm摩耗していたのに対し、本発明のダイレクト網グラビア版においては、0,4mmの摩耗であった。
【0095】
同様の比較を、ウレタン系インキの黄インキを使用し行った。結果は、汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版はドクターが0,5mm摩耗していたのに対し、本発明のダイレクト網グラビア版においては、0,3mmの摩耗であった。
【実施例5】
【0096】
図1の汎用的に使用されているセル形状で、墨版、藍版、紅版、黄版のカラー絵柄のダイレクト網グラビア版(紅版は時計と逆回りに15度、藍版は時計回りに15度、黄版は時計回りに30度セル角度を振った)を、版深23ミクロンにして作製した。本発明の図17(1画素形状は図22)のセル形状においても同様に、墨版、藍版、紅版、黄版のカラー絵柄のダイレクト網グラビア版(紅版は時計と逆回りに15度、藍版は時計回りに15度、黄版は時計回りに30度セル角度を振った)を、版深23ミクロンにして作製した。
【0097】
上記のカラー絵柄の4版と、実施例3で作成した版を白版として用い、汎用的に使用されているダイレクト網グラビア版と、本発明のダイレクト網グラビア版を用い、ウレタン系インキを使用し各色のインキ粘度をザンカップ#3で14秒とし、ドクター加圧は1、2kgとし、印刷速度200m/分とし30000mの印刷行い、カラー絵柄の再現性、意匠性を比較した。
【0098】
どちらの版においても、カラー絵柄の再現性、意匠性に問題はなかった。また、モワレの発生もなかった。
【符号の説明】
【0099】
A 1画素に占めるセル部分
B 1画素に占める土手部分
【要約】
グラビア版に設けるセルは、正方形、亀甲型と言う固定概念にとらわれず、ドクター摩耗がしにくいセル形状とするものである。
【課題】ドクター刃の摩耗少なくするセルの形状を検討し、耐刷性の向上を図り且つ三原色を用いたカラー絵柄においてもモワレが発生しないグラビア版の作成方法を提供することができ、印刷品質安定を向上するグラビア印刷版を及び該グラビア印刷版を使用し、新たなモワレの解消方法を織り込んだグラビア印刷方法を課題とする。
【解決手段】ドクターがセルを跨が幅を狭くするため概長方形のセルを直線状又はヘリンボーン状又は矢羽状などに配置することでドクター刃の摩耗少なくするグラビア印刷方法とし、またセルの形状を使用色により変える事で新たなモワレ防止を考案する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22