(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233945
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】温調シート及び温調シート付製品
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20171113BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20171113BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20171113BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20171113BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B32B5/18
A43B17/00
A47C27/12
A47C27/15
B32B9/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-541878(P2017-541878)
(86)(22)【出願日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2017016850
【審査請求日】2017年8月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390015679
【氏名又は名称】ジャパンマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】塚本 勝朗
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩晃
(72)【発明者】
【氏名】金 鉱鎰
【審査官】
岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−008048(JP,A)
【文献】
特開2015−218086(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/018493(WO,A1)
【文献】
特開2015−110319(JP,A)
【文献】
特開2016−28880(JP,A)
【文献】
特開2003−92384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/18
A43B 17/00−17/18
A47C 27/12−27/22
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一スポンジ層と、
第二スポンジ層と、
面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、
靴、ベッド、イス、座イス又はソファに用いられる温調シートであって、
前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなり、
平面視で前記熱伝導シートの大きさは、前記第一スポンジ層及び前記第二スポンジ層の大きさの85%以上95%以下となっていることを特徴とする温調シート。
【請求項2】
第一スポンジ層と、
第二スポンジ層と、
面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、
靴、ベッド、イス、座イス又はソファに用いられる温調シートであって、
前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなり、
前記熱伝導シートは、第一延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、グラファイトシートと、第二延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムとがこの順に積層されたものであることを特徴とする温調シート。
【請求項3】
第一スポンジ層と、
第二スポンジ層と、
面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、
靴、ベッド、イス、座イス又はソファに用いられる温調シートであって、
前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなり、
前記熱伝導シートは、第一延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、第一グラファイトシートと、第二延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、開繊炭素繊維樹脂テープと、第三延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、第二グラファイトシートと、第四延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムとがこの順に積層されたものであることを特徴とする温調シート。
【請求項4】
第一スポンジ層と、
第二スポンジ層と、
面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、
靴、ベッド、イス、座イス又はソファに用いられる温調シートであって、
前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなり、
前記熱伝導シートの外周縁部の上面、下面及び側面を覆う断面略コ字状の補強材を具備し、
前記補強材の上面と前記熱伝導シートの外周縁部と前記補強材の下面とが、ポリテトラフルオロエチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリプロプレン又はアラミド繊維製の糸で縫製されたものであることを特徴とする温調シート。
【請求項5】
第一スポンジ層と、
第二スポンジ層と、
面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、
靴、ベッド、イス、座イス又はソファに用いられる温調シートであって、
前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなり、
前記第一スポンジ層は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂製スポンジ層であり、
前記第二スポンジ層は、ポリエチレン樹脂製スポンジ層であることを特徴とする温調シート。
【請求項6】
前記グラファイトシートは、発泡黒鉛と熱伝導性フィラーとが含有された混合グラファイトシートであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の温調シート。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラーは、ピッチ系炭素繊維であることを特徴とする請求項6に記載の温調シート。
【請求項8】
前記グラファイトシートの厚さは、0.2mm以上1.5mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の温調シート。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の温調シートが、靴、ベッド、イス、座イス又はソファの所定の領域に取り付けられて一体化されているものであることを特徴とする温調シート付製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、ベッド、イス、座イス、ソファ等の所定空間内、とりわけ身体と接触する箇所の温度を均等にする温調シート及び温調シート付製品に関し、特に靴内で足の前部の温度と足の後部の温度とを出来る限り均等にすることができ、足の血液循環をよくすることができる靴用中敷及び温調シート付靴(温調シート付製品)に関する。
【背景技術】
【0002】
足は、体を動かすことに重要な役割を果たすが、身体の下方に位置しているためその管理が疎かになりやすい。さらに、足や手は心臓から遠い位置にあるため血液の循環が悪くなると足や手が冷たくなる。特に女性の場合には、心臓が小さいため血液の循環がゆっくり進行する。血液の循環がゆっくり進行することと女性の生理的な原因とは関連があり、多くの女性は下腹部の冷え症を持っていたり、妊娠との関連で下肢静脈瘤を持っていたりする。また、妊娠していない女性や定常的に運動しない男性も、血液の循環がよくないため下肢静脈瘤を持っている場合がある。
【0003】
そして、女性は外貌やファッションを重視するため、かかと(足の後部)が高いヒールを好む。ハイヒールを着用した場合、かかとが高くなるので、かかとの温度が足の指先(前部)の温度より4℃〜5℃程度低くなる。また、男性が紳士靴をはじめとするほとんどの靴を着用した場合に、かかとの温度が足の指先(前部)の温度より約2℃〜5℃程度低くなるという傾向がある。逆に、病院や工事現場等の冷える場所では、足の指先(前部)がかかとの温度より約2℃〜5℃程度低くなることがある。
【0004】
また、足が冷えることを防ぐために、断熱性を有する靴用中敷(以下、「インソール」という)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このようなインソールは、中空粒子または/および気泡を内包する樹脂組成物からなる断熱性シートを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−299409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような断熱性を有するインソールが用いられても、人間の平均体温は36.7℃であり、かかとの温度と足の指先(前部)の温度との間の温度差が3.5℃〜4.5℃以上あることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、出願人は、かかとの温度と足の指先(前部)の温度とを人間の平均体温の36.7℃に近づける為に、物理的な手段となるグラファイトシート(天然膨張黒鉛シート又は混合グラファイトシート)を道具として介在することによって、面方向(X軸方向及びY軸方向)には熱伝導性が銅の3.7倍の速さとなり、逆に厚さ方向には断熱性を発揮するグラファイトシートの特性である異方性を利用することにより、他に熱源を付加することなく体温を限りなく均等化できることを見出した。
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る温調シートは、第一スポンジ層と、第二スポンジ層と、面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、靴、ベッド、イス、座イス又はソファに用いられる温調シートであって、前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなることを特徴とする。
【0009】
ここで、「面方向」とはシートの面に対して平行の方向(X軸方向及びY軸方向)をいい、また「厚さ方向」とはシートの面に対して垂直な方向(Z軸方向)をいう。
本発明に係る温調シートによれば、例えば足への血液が動脈を通じることによった体温の循環移動するという自然な現象をグラファイトシートを介在使用することで起こし靴内における体温の等温蓄熱効果がもたらされる(エンタルピー効果を発揮する)。よって、人間の平均体温の36.7℃である熱含量となる熱力学的内部エネルギを用いて限りなく平均体温に(約1分間〜3分間で)近づける温浴作用をもたらし、足の温度が保たれる(体温蓄熱コンデンサ効果を発揮する)。
【0010】
上記発明においては、前記グラファイトシートは、発泡黒鉛と熱伝導性フィラーとが含有された混合グラファイトシートであることが好ましい。
本発明に係る温調シートによれば、厚み方向の熱伝導が強化される。
【0011】
上記発明においては、前記熱伝導性フィラーは、ピッチ系炭素繊維であることが好ましい。
上記発明においては、平面視で前記熱伝導シートの大きさは、前記第一スポンジ層及び前記第二スポンジ層の大きさの85%以上95%以下となっていることが好ましい。
大きさが95%を超えると、熱伝導シートの外周縁部から外部に熱が逃げる熱放散作用(アース機能)によって温度が上昇しない可能性があり、一方、大きさが85%未満であると等温蓄熱効果が上がらない可能性がある。すなわち、大きさが85%以上95%以下であれば、人間の平均体温の36.7℃に近い35.9℃という飽和温度で安定する。
【0012】
上記発明においては、前記熱伝導シートは、第一延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、グラファイトシートと、第二延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムとがこの順に積層されたものであることが好ましい。
【0013】
上記発明においては、前記熱伝導シートは、第一延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、第一グラファイトシートと、第二延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、開繊炭素繊維樹脂テープと、第三延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムと、第二グラファイトシートと、第四延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムとがこの順に積層されたものであることが好ましい。
【0014】
上記発明においては、前記熱伝導シートの外周縁部の上面、下面及び側面を覆う断面略コ字状の補強材を具備し、前記補強材の上面と前記熱伝導シートの外周縁部と前記補強材の下面とが、ポリテトラフルオロエチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリプロプレン又はアラミド繊維製の糸で縫製されたものであることが好ましい。
【0015】
上記発明においては、前記第一スポンジ層は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂製スポンジ層であり、前記第二スポンジ層は、ポリエチレン樹脂製スポンジ層であることが好ましい。
【0016】
上記発明においては、前記グラファイトシートの厚さは、0.2mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
そして、本発明に係る温調シート付製品は、上述したような温調シートが、靴、ベッド、イス、座イス又はソファの所定の領域に取り付けられて一体化されているものであることが好ましい。
ここで、「所定の領域」とは、身体と接触する箇所となり、例えば靴であれば靴内の底となり、イスや座イスやソファであれば座部になり、ベッドであれば床板上となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る温調シートによれば、面方向の熱伝導率が高い熱伝導シートを有するため、所定空間内に配置されると、所定空間内の温度が高くなった部分から温度が低い部分に熱が熱伝導シートを介して移動して、所定空間内での温度の温度差が小さくなる。その結果、所定空間内の温度を均等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインソールの概略的な斜視図である。
【
図2】
図1に示すインソールの概略的な分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すインソールの概略的な平面図である。
【
図4】第一実施形態に係る熱伝導シートの断面図である。
【
図5】第二実施形態に係る熱伝導シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0020】
(第一実施形態)インソール
第一実施形態では、紳士靴、淑女靴、ロングブーツ、戦闘靴、登山靴、安全靴、作業靴、ゴム長靴、スニーカー等の靴内に挿入配置されることでインソールとして使用され、後述する熱伝導シートが第一延伸e−PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブレンフィルムと混合グラファイトシートと第二延伸e−PTFEメンブレンフィルムとの三層構造の積層体である場合について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るインソールの概略的な斜視図であり、
図2は、
図1に示すインソールの概略的な分解斜視図であり、
図3は、
図1に示すインソールの概略的な平面図である。インソール(温調シート)100は、平面視で靴内の形状に対応した略楕円形状を呈しており、側面視で第一スポンジ層10と熱伝導シート20と第二スポンジ層30とがこの順に積層されたものである。
【0022】
<第一スポンジ層>
第一スポンジ層10は、熱伝導シート20の下面に接着剤が用いられて接着されている。上記第一スポンジ層10としては、中空粒子や気泡を内包する樹脂組成物層等が挙げられ、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂スポンジ層(EVA(Ethylene Vinyl Acetate Copolymer)スポンジ層)や発泡ウレタン層等が挙げられ、第一スポンジ層10の厚さは、1.5mm以上7.0mm以下であることが好ましい。また、上記接着剤としては汎用品を用いればよいが、特にブチル系接着剤を用いることが好ましい。
【0023】
<第二スポンジ層>
第二スポンジ層30は、熱伝導シート20の上面に接着剤が用いられて接着されている。上記第二スポンジ層30としては、中空粒子や気泡を内包する樹脂組成物層等が挙げられ、例えばポリエチレン樹脂スポンジ層(PE(polyethylene)スポンジ層)や発泡ウレタン層等が挙げられ、第二スポンジ層30の厚さは、1.5mm以上7.0mm以下であることが好ましい。また、上記接着剤としては汎用品を用いればよいが、特にブチル系接着剤を用いることが好ましい。
【0024】
<熱伝導シート>
図4は、第一実施形態に係る熱伝導シートの断面図である。熱伝導シート20は、側面視で第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22と混合グラファイトシート21と第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22とがこの順に積層されたものであり、平面視で足底に沿うような形状を呈しており、その外周縁部に補強材221が形成されている。
【0025】
<混合グラファイトシート>
混合グラファイトシート21としては、例えば発泡黒鉛と熱伝導性フィラーとが含有されたもの等が挙げられ、混合グラファイトシート21の厚さは、0.13mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
【0026】
混合グラファイトシート21に含有される発泡黒鉛は、天然グラファイト(黒鉛)を粉砕し粒子状にしたのち硫酸浸漬、中和洗浄し、さらに高温加熱発泡させてできたものである。そして、発泡黒鉛は、混合グラファイトシート21中に70重量%以上95重量%以下で含有されていることが好ましい。
一方、混合グラファイトシート21に含有される熱伝導性フィラーは、人造黒鉛、ボロンナイトライト及びピッチ系炭素繊維からなる群から選択される一種以上のものであり、ピッチ系炭素繊維であることが好ましい。そして、熱伝導性フィラーは、混合グラファイトシート21中に5重量%以上30重量%以下で含有されることが好ましい。
【0027】
このような混合グラファイトシート21は、例えば天然グラファイトを上述のように処理して作製された発泡黒鉛に熱伝導性フィラーを混合させて製造される。発泡黒鉛と熱伝導性フィラーとを混合する方法としては、例えば攪拌機で回転させ混合する方法等が挙げられる。
【0028】
そして、このように製造された混合グラファイトシート21の面方向の熱伝導率は150W/m・K以上400W/m・K以下となり、200W/m・K以上300W/m・K以下となることが好ましく、厚さ方向の熱伝導率は3W/m・K以上15W/m・K以下となる。また、面方向の比抵抗は6μΩm以上7μΩm以下となり、厚さ方向の比抵抗は1000μΩm以上1300μΩm以下となる。
【0029】
<延伸e−PTFEメンブレンフィルム>
第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22は、混合グラファイトシート21の下面に接着剤Adが用いられて接着されるとともに、第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22は、混合グラファイトシート21の上面に接着剤Adが用いられて接着されている。上記第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22及び上記第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22は、圧縮と引張強度とが大きく、柔軟性が良好であるものが好ましく、特に限定されないが、アメリカドナルドソン社製のe−PTFEメンブレンを使用することができ、市販されているものでも使用することができる。
そして、第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22の厚さ及び第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22の厚さは、30μm〜70μm程度であることが好ましい。上記接着剤Adとしては汎用品を用いればよいが、特に酸化スズ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される一種以上の金属酸化物ゾルと、過硫酸カリウム、酢酸、安息香酸、フェニルホスホン酸及びベンゾイルからなる群から選択される一種以上のOH基を有する化合物と、PVA樹脂とから構成されているものを用いることが好ましい。
【0030】
このような第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22及び第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22が混合グラファイトシート21の両面に形成されることで、混合グラファイトシート21は一般的に脆性が弱い欠点があるが、インソール100として使用されても、着用中に変形したり破れたりすることを防ぐことができる。
【0031】
<補強材>
補強材221は、側面視で熱伝導シート20の外周縁部の上面と下面と側面とを覆う断面略コ字状を呈するとともに、平面視で略楕円環形状を呈しており、熱伝導シート20の全周に形成されている。
そして、補強材221の略楕円環形状の上面と熱伝導シート20の外周縁部と補強材221の略楕円環形状の下面とが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE(Polytetrafluoro Ethylene))、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリプロプレン、アラミド繊維製の糸で縫製されて、略楕円環形状に縫い目222が形成されることで一体化されている。
平面視で熱伝導シート20の大きさは、第一スポンジ層10及び第二スポンジ層30の大きさよりひとまわり小さくなることが好ましく、第一スポンジ層10及び第二スポンジ層30の大きさの85%以上95%以下となることが好ましい。これにより、熱伝導シート20の外周縁部から外部に熱が逃げる熱放散作用(アース機能)によって温度が上昇しなくなることを防止することができる。
【0032】
このような第一実施形態に係るインソール100を靴内に挿入配置して靴を履くと、熱が熱伝導シート20を介して移動する。つまり、高温側から低温側へ向かって熱の移動が起き、足の前部の温度と足の後部の温度との間の温度差が小さくなる。その結果、靴内の温度を均等にすることができ、血液循環を円滑にして健康を増進することができる。また、製造工程が簡単で製造コストが高くない。なお、洗濯すると劣化する虞があるため洗濯せずに使用されるものであることが好ましい。
【0033】
(第二実施形態)イス用クッション
第二実施形態では、イスの座部上に配置されることでイス用クッションとして使用され、後述する熱伝導シートが第一延伸e−PTFEメンブレンフィルムと第一グラファイトシートと第二延伸e−PTFEメンブレンフィルムと開繊炭素繊維樹脂テープと第三延伸e−PTFEメンブレンフィルムと第二グラファイトシートと第四延伸e−PTFEメンブレンフィルムとの七層構造の積層体である場合について説明する。
【0034】
イス用クッション(温調シート)は、平面視で座部の形状に対応する略四角形状を呈しており、側面視で第一スポンジ層10と熱伝導シート20と第二スポンジ層30とがこの順に積層されたものである。
【0035】
<熱伝導シート>
図5は、第二実施形態に係る熱伝導シートの断面図である。なお、
図4に示す熱伝導シート20と同様の構成部材については、同じ符号を付している。熱伝導シート20は、側面視で第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22と第一グラファイトシート21と第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22と開繊炭素繊維樹脂テープ23と第三延伸e−PTFEメンブレンフィルム22と第二グラファイトシート21と第四延伸e−PTFEメンブレンフィルム22とがこの順に積層されたものであり、平面視で略四角形状を呈しており、その外周縁部に補強材221が形成されている。
【0036】
<グラファイトシート>
グラファイトシート21としては、黒鉛をシート状に加工したもの(ジャパンマテックス株式会社製)等が挙げられ、グラファイトシート21の厚さは、0.13mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
【0037】
このようなグラファイトシート21の面方向の熱伝導率は150W/m・K以上400W/m・K以下となり、200W/m・K以上300W/m・K以下となることが好ましく、厚さ方向の熱伝導率は5W/m・K以上9W/m・K以下となる。また、面方向の比抵抗は6μΩm以上7μΩm以下となり、厚さ方向の比抵抗は1000μΩm以上1300μΩm以下となる。表1は、グラファイトシートの特性を示す表である。
【0039】
<開繊炭素繊維樹脂テープ>
開繊炭素繊維樹脂テープ23の厚さは、0.06mm以上0.12mm以下であることが好ましい。
【0040】
このような開繊炭素繊維樹脂テープ23が熱伝導シート20中に形成されることで、グラファイトシート21は一般的に脆性が弱い欠点があるが、イス用クッションとして使用されても、着用中に変形したり破れたりすることを防ぐことができる。
【0041】
このような第二実施形態に係るイス用クッションをイスの座部上に配置して、イス用クッション上に座ると、面方向の熱伝導率が高い熱伝導シート20を有するため、温度が高い部分から低い部分に熱が熱伝導シート20を介して移動して、温度差が小さくなる。その結果、温度を均等にすることができる。なお、洗濯すると劣化する虞があるため洗濯せずに使用されるものであることが好ましい。
【0042】
(第三実施形態)
第一実施形態においてインソール100として使用され、第二実施形態においてイス用クッションとして使用される場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えばベッドパッドとして使用されたり、ソファカバーとして使用されたり、自動車、電車、列車(汽車)、飛行機、オートバイ等の座イス用クッションとして使用されたりするように構成してもよい。
【0043】
(第四実施形態)
第一実施形態において混合グラファイトシート21の上面及び下面の両面に延伸e−PTFEメンブレンフィルム22がラミネートされたものを用い、第二実施形態においてグラファイトシート21の上面及び下面の両面に延伸e−PTFEメンブレンフィルム22がラミネートされたものを用いた場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、混合グラファイトシート21の上面及び下面の両面に延伸e−PTFEメンブレンフィルム22がラミネートされていないものを用いたり、グラファイトシート21の上面及び下面の両面に延伸e−PTFEメンブレンフィルム22がラミネートされていないものを用いたりするように構成してもよい。
(第五実施形態)
第一実施形態において平面視で靴内の形状に対応した略楕円形状を呈している場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えばつま先を覆うように前部で折り返される折返部が形成されているように構成してもよい。
(第六実施形態)
第一実施形態において、インソール(温調シート)が紳士靴、淑女靴、ロングブーツ、戦闘靴、登山靴、安全靴、作業靴、ゴム長靴、スニーカー等の靴内に挿入配置される場合について述べたが、これに限定されるものではなく、温調シートが初めから紳士靴、淑女靴、ロングブーツ、戦闘靴、登山靴、安全靴、作業靴、ゴム長靴、スニーカー等の靴内等に一体化されている温調シート付製品としてもよい。
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明に係るインソール(断熱、蓄熱に使用する全ての複合シート)を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
発泡黒鉛と熱伝導性フィラーとが混合された厚さ0.5mmの混合グラファイトシート21(ジャパンマテックス株式会社製)を準備した。第一延伸e−PTFEメンブレンフィルム22と混合グラファイトシート21と第二延伸e−PTFEメンブレンフィルム22とをこの順に積層することで熱伝導シート20を作製して、さらに厚さ2mm〜5mmのEVAスポンジ層10と熱伝導シート20と厚さ1.5mm〜3mmのPEスポンジ層30とをこの順に積層することで、実施例1に係るインソールを得た。なお、平面視における熱伝導シート20の大きさは、EVAスポンジ層10及びPEスポンジ層30の大きさの95%とした。そして、実施例1に係るインソールを靴内に挿入配置することで、実施例1に係る紳士靴を得た。
【0046】
(実施例2)
混合グラファイトシート21の上面及び下面の両面に延伸e−PTFEメンブレンフィルム22を形成しなかったこと以外は、実施例1とほぼ同様の手順で、実施例2に係るインソールを得た。そして、実施例2に係るインソールを靴内に挿入配置することで、実施例2に係る紳士靴を得た。
【0047】
(実施例3)
混合グラファイトシート21を熱伝導性フィラーを含有しないグラファイトシート21(ジャパンマテックス株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1とほぼ同様の手順で、実施例3に係るインソールを得た。そして、実施例3に係るインソールを靴内に挿入配置することで、実施例3に係る紳士靴を得た。
【0048】
(実施例4)
グラファイトシート21の上面及び下面の両面に延伸e−PTFEメンブレンフィルム22を形成しなかったこと以外は、実施例3とほぼ同様の手順で、実施例4に係るインソールを得た。そして、実施例4に係るインソールを靴内に挿入配置することで、実施例4に係る紳士靴を得た。
(実施例5)
熱伝導シート20の大きさをEVAスポンジ層10及びPEスポンジ層30の大きさの85%にしたことに変更したこと以外は、実施例1とほぼ同様の手順で、実施例5に係る紳士靴を得た。
(実施例6)
熱伝導シート20の大きさをEVAスポンジ層10及びPEスポンジ層30の大きさの75%にしたことに変更したこと以外は、実施例1とほぼ同様の手順で、実施例6に係る紳士靴を得た。
(実施例7)
熱伝導シート20の大きさをEVAスポンジ層10及びPEスポンジ層30の大きさの100%にしたことに変更したこと以外は、実施例1とほぼ同様の手順で、実施例7に係る紳士靴を得た。
【0049】
(比較例1)
EVAスポンジ層10とPEスポンジ層30とをこの順に積層することで、比較例1に係るインソールを得た。そして、比較例1に係るインソールを靴内に挿入配置することで、比較例1に係る紳士靴を得た。
【0050】
(比較例2)
インソールを挿入配置しない比較例2に係る紳士靴を得た。
【0051】
(評価試験)
室温24℃、湿度40%で靴下を着用し、実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例2に係る紳士靴を着用した。30分間歩行した後、足裏中の10カ所の温度をドイツ画像熱計測器で測定した。そして、10カ所の温度の平均として平均温度を算出した。また、足の前部(5カ所)の平均温度と足の後部(5カ所)の平均温度と間の温度差を、温度差が小さい順に「◎」、「○」、「△」、「×」、「××」で評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
その結果、比較例2に係る紳士靴では、温度差の評価は「××」であった。さらに、平均温度は30.9℃であった。また、比較例1に係る紳士靴では、温度差の評価は「×」であった。さらに、平均温度は30.8℃であった。
【0054】
これに対して、実施例1に係る紳士靴では、温度差の評価は「○」であった。さらに、平均温度は35.0℃であった。実施例2に係る紳士靴では、温度差の評価は「◎」であった。さらに、平均温度は35.5℃であった。実施例3に係る紳士靴では、温度差の評価は「△」であった。さらに、平均温度は33.0℃であった。実施例4に係る紳士靴では、温度差の評価は「○」であった。さらに、平均温度は33.9℃であった。実施例5に係る紳士靴では、温度差の評価は「○」であった。さらに、平均温度は35.9℃であった。実施例6に係る紳士靴では、温度差の評価は「△」であった。さらに、平均温度は34.5℃であった。実施例7に係る紳士靴では、温度差の評価は「△」であった。さらに、平均温度は33.8℃であった。
【0055】
以上のように、比較例1〜比較例2に係る紳士靴では、温度差の評価は「××」、「×」となったが、実施例1〜実施例7に係る紳士靴では、温度差の評価は「◎」、「○」、「△」となり、熱伝導によって足の前部の温度と足の後部の温度との間の温度差が小さいことが確認された。すなわち、インソール100と足との間の摩擦力によって発生した熱が熱伝導シート20によって温度が高い部分から低い部分に熱移動することによって足の血液循環運動を促進させることがわかる。また、実施例1及び実施例2に係る紳士靴は、実施例3及び実施例4に係る紳士靴と比較して、熱伝導によって足の前部の温度と足の後部の温度との間の温度差が非常に小さいことが確認された。また、実施例1、実施例2及び実施例5に係る紳士靴は、実施例6及び実施例7に係る紳士靴と比較して、高い温度で維持されることが確認された。すなわち、熱伝導シート20の大きさが85%以上95%以下であると、混合グラファイトシート21、グラファイトシート21の特性により熱放散作用(アース機能)よりも体温蓄熱コンデンサ効果によって熱の飽和温度を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る温調シートは、靴、ベッド、イス、座イス、ソファ等の所定空間内に挿入配置されて所定空間内の温度を均等にする温調シート等として有用である。また、靴、ベッド、イス、座イス、ソファ等の所定空間内に取り付けられて一体化された靴、ベッド、イス、座イス又はソファ(温調シート付製品)等として有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 第一スポンジ層
20 熱伝導シート
21 混合グラファイトシート
22 延伸e−PTFEメンブレンフィルム
30 第二スポンジ層
221 補強材
222 縫い目
【要約】
(要約)
(課題)所定空間内の体温を限りなく均等化できる温調シートを提供するとともに温調シートが内部に取り付けられて一体化されている温調シート付製品を提供する。
(解決手段)本発明に係る温調シートは、第一スポンジ層と、第二スポンジ層と、面方向の熱伝導率が150W/m・K以上400W/m・K以下であるグラファイトシートを有する熱伝導シートとを具備し、靴、帽子、ベッド又はソファに用いられる温調シートであって、前記熱伝導シートが、前記第一スポンジ層と前記第二スポンジ層との間に介装されてなる。
(選択図)
図4