(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1付勢手段のバネ定数K1と、第2付勢手段のバネ定数K2と、第3付勢手段のバネ定数K3と、の関係は、K2<K1<K3である請求項1記載の多機能型基板検査装置。
前記検査回路の前記検査機能は、バウンダリースキャンテスト、インサーキットテスト、ファンクションテストの何れか2つ以上である請求項2記載の多機能型基板検査装置。
前記離間距離は、前記第2付勢手段および前記第3付勢手段の前記付勢力と、前記駆動力および前記第1ポール又はそれと同等の伸縮性支持機構の前記付勢力との強弱関係により、最大と、最小と、中程度と、の3段階に区別することが可能であり、
前記離間距離を最大に広げて前記被検査基板の脱着を可能にし、
前記離間距離を最小に狭めて挟持された前記被検査基板に前記プローブの全数を接触させるとインサーキットテストの機能に対応し、
前記離間距離を中程度に保持し、長短で区別された長いプローブのみを前記被検査基板に接触させるとバウンダリースキャンテスト又はファンクションテストの機能に対応する請求項3記載の多機能型基板検査装置。
第1プローブ基台に植設されて被検査基板の第1面に接触可能で異なる長さのプローブと、第2プローブ基台に植設されて前記被検査基板の第2面に接触可能で異なる長さのプローブと、を検査工程に応じて前記被検査基板に接触させながら電気的検査を実行する多機能型基板検査方法であって、
制御部が駆動手段を駆動して前記第1プローブ基台と前記第2プローブ基台との離間距離を最大に広げて待機させる待機工程と、
前記第1プローブ基台と前記第2プローブ基台との間に位置する中間板の上に前記被検査基板を載置する基板載置工程と、
前記制御部が前記駆動手段を用い、前記被検査基板を前記中間板から遠ざけようとする第2付勢手段および前記中間板を前記第2プローブ基台から遠ざけようとする第3付勢手段の付勢力に抗する駆動力で、前記離間距離を多段階に近付けたり遠ざけたりしながら検査回路の検査機能を切り替えて順次実行する基板検査工程と、
前記制御部が前記駆動手段で前記離間距離を最大に広げることにより、検査の完了した前記被検査基板を離脱させる基板離脱工程と、を有し、
前記基板検査工程では、前記第1プローブ基台に植設された伸縮自在の第1ポール又はそれと同等の伸縮性支持機構が、前記被検査基板の第1面を、前記駆動力に基づく第1付勢手段の介在する付勢力で押圧することにより、前記被検査基板が前記中間板に接近するとともに、該中間板も前記第2プローブ基台に接近する可逆動作におけるストロークの途中で、前記プローブを長さに応じて選択的に接触させるようにした多機能型基板検査方法。
前記基板検査工程は、インサーキットテスト工程と、バウンダリースキャンテスト工程と、ファンクションテスト工程の何れか2つ以上を組み合わせた請求項7記載の多機能型基板検査方法。
前記第1ポールは弾性的に伸縮自在であり、前記離間距離が最大又は中程度のとき、内蔵した第1付勢手段の付勢力によりテレスコピック構造を伸ばし、前記離間距離が最小のとき、前記第1付勢手段の付勢力に抗して前記テレスコピック構造を縮める請求項10に記載の多機能型基板検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本装置および本方法について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図に亘って、同一効果の部材および工程には、同一符号を付して説明の重複を避ける。また、本装置で採用する多種類の検査機能については必要に応じて様々な組み合わせが可能である。例えば、1種類の基板に対して複合的な検査を行うため、インサーキットテスト、バウンダリースキャンテスト、ファンクションテストの3工程を任意に組み合わせることも可能である。
【0024】
インサーキットテストは、アナログ部品を主な検査対象として不良検出する検査であり、全部のプローブを基板に接触させて行う。一方、バウンダリースキャンテストは、基板に実装されたディジタル部品の単品不良又はユニット不良を検出する検査であり、適宜選択されたプローブを基板に接触させて行う。このバウンダリースキャンテストでは、数GHzの高周波クロック動作による不要輻射等の悪影響を受けやすい。このように、不要輻射等の悪影響を受けるプローブおよびそれにつながる線材を、基板に対して非接続状態にすることが望まれる。そうすることによって、より正確な検査結果を得ることが可能となる。
【0025】
ファンクションテストは、基板単位の製品機能を検査する検査であり、電源供給のほか、主に入出力信号用のプローブを基板に接触させれば足りる。このファンクションテストでも、適宜選択されたプローブを基板に接触させて行う。このように検査機能の変化に応じて必要なプローブのみを選択して基板に接触させる手段を「多段階動作によるプローブの選択的接離冶具」又は「二段引き冶具」と仮称し、略して「本冶具」ともいう。本冶具を簡易な構造により半自動化して多機能型検査回路と組み合わせた本装置について、以下に説明する。
【0026】
図1は、本装置の第1プローブ基台と第2プローブ基台を最大に離間し、両者の間に位置する中間板に基板を載置した状態を示す正面図である。
図1に示すように、本装置500は、両者の間を最大の離間距離L1に保持した状態(以下、「離間状態」ともいう)の第1プローブ基台100と第2プローブ基台200のほか、中間板300と、第1ポール60と、第1付勢手段(以下、「コイルバネ」又は単に「バネ」ともいう)61と、第2ポール44と、第2付勢手段(以下、「コイルバネ」又は単に「バネ」ともいう)42と、第3ポール41と、スペーサ301,302と、第3付勢手段(以下、「コイルバネ」又は単に「バネ」ともいう)43と、駆動手段50と、制御部70と、多機能型検査回路(以下、「検査回路」ともいう)80と、を備えて構成されている。
【0027】
第1プローブ基台100は、基板30の第1面(以下、「上面」ともいう)10に接触可能で異なる長さのプローブ111〜114を植設されている。第2プローブ基台200は、基板30の第2面(以下、「下面」ともいう)20に接触可能で異なる長さのプローブ211〜217を植設されている。第2プローブ基台200の上面には複数のスペーサ302が概ね均等に配設され、中間板300が降下して近付いたとき、それに当接して高さを規定するように支持する。
【0028】
中間板300は、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との間で、互いに平行な関係を維持するように位置し、基板30を載置可能に構成されている。中間板300の上面には複数のスペーサ301が概ね均等に配設され、基板30が降下して近付いたとき、それに当接して高さを規定するように支持する。
【0029】
第1ポール60は、第1プローブ基台100でプローブ111〜114と並ぶような同じ方向に植設されている。第1ポール60は、コイルバネ61を内蔵したテレスコピック構造である。第1ポール60は、このバネ61で鞘状部材62から棒状部材63を押し出す方向の付勢力(以下、「弾性力」ともいう)を備えている。
図1に示すYは、第1プローブ基台100(上側)の短いプローブ112〜114と、第1ポール60との長さの差である。この長さの差Yについては、
図8を用いて後述する。
【0030】
第1ポール60は、基部を駆動力Fで先端方向に押されることにより、バネ61の弾性力を伴って伸縮自在の先端部が、基板30の第1面(上面)10を押力F1で柔軟に押圧することが可能である。押力H(
図1、
図2、
図3および
図8)は、バネ42とバネ43の弾性力に加えて、第2プローブ基台200(下側)のプローブ211〜217の何れかが、基板30の下面20に当接して押し上げる力を合計した押力である。後述するように、バネ43はバネ42よりも相当に硬いので、バネ42の伸縮動作の途中では、バネ43は縮まないものとみなしても良い。制御部70は、押力Hに抗し得る多段階の駆動力Fを駆動手段50に発生させる。駆動手段50は、エアシリンダ等で構成され、適切に加減された駆動力Fを発生することにより、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との離間距離L1〜L3を変化させる。
【0031】
第2ポール44は、中間板300と基板30との対面姿勢を平行に維持しながら近付けたり遠ざけたりする動作を所定範囲に規制する。また、第2ポール44の先端は円錐をなす尖塔部を形成し、位置決めボスの機能を有する。一方、この尖塔部の側面に適合して位置決めできるように、ガイド穴(詳細は不図示)が基板30に穿設されている。コイルバネ42は、第2ポール44にコイルを緩く巻回させるように係合し、基板30を中間板300から遠ざけようとする弾性力を備えている。これらの構成により、基板30は中間板300の上に弾性的に懸架されている。
【0032】
第3ポール41は、第2プローブ基台200に植設され、皿ネジに似た頭部を形成し、その頭部より下方で中間板300を摺動自在に支承している。この第3ポール41は、中間板300と第2プローブ基台200との対面姿勢を平行に維持しながら、両者を近付けたり遠ざけたりする動作を所定範囲に規制する。コイルバネ43は、第3ポール41にコイルを緩く巻回させるように係合し、中間板300を第2プローブ基台200から遠ざけようとする弾性力を備えている。これらの構成により、中間板300は、第2プローブ基台200の上に弾性的に懸架されている。
【0033】
また、制御部70により、検査回路80の検査機能が切り替えられる。検査回路80の検査機能は、バウンダリースキャンテスト、インサーキットテスト、ファンクションテストの何れか2つ以上であることが好ましい。なお、全部のプローブ111〜114,211〜217は、
図4および
図5を用いて後述するように弾性的に伸縮自在であるとともに、検査回路80と不図示の導線により電気接続されている。この導線は、煩雑になることを避けて、
図1、
図3および
図8から省略している。
【0034】
図2は、本装置の第1プローブ基台と第2プローブ基台を最接近させて保持し、挟持された基板に長短2種類のプローブを全数接触させた、インサーキットテストモードを示す正面図である。インサーキットテストは、基板30に実装されたアナログ部品の単品不良又はユニット不良を検出する検査である。
図2に示すように、中間板300の降下位置は、第2プローブ基台200の上面に概ね均等に配設された複数のスペーサ302により高さが規定される。同様に、基板30の降下位置は、中間板300の上面に概ね均等に配設された複数のスペーサ301により高さが規定される。
図2に示す状態(以下、「接近状態」ともいう)で、全部のプローブ111〜114,211〜217を基板30の上面10及び下面20に接触させて、インサーキットテストを行う。
【0035】
図3は、本装置の第1プローブ基台と第2プローブ基台の離間距離を中程度に保持し、挟持された基板に長いプローブのみを接触させ、短いプローブは非接触とする、バウンダリースキャンテストモードを示す正面図である。
図3に示すように、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200とは、中程度の離間距離L3を保持した状態(以下、「中途状態」ともいう)である。なお、中途状態(
図3)は、離間状態(
図1)と接近状態(
図2)の何れの側から移行する場合でも得られる。したがって、接近状態(
図2)と中途状態(
図3)の区別を利用して異なる検査を行う場合の順番は、どちらを先にしても構わない。
【0036】
このとき、基板30の上面10と第1プローブ基台100との距離は、長いプローブ111のみを接触させ、短いプローブ113,114は接触させないように設定されている。同様に、基板30の第2面20と第2プローブ基台200との距離は長いプローブ211,212のみを接触させ、短いプローブ213〜217は接触させないように設定されている。
【0037】
以下、
図4および
図5を用い、本装置に採用可能なプローブについてより詳細な説明をする。
図4は、本装置で用いられる長いプローブの詳細を示す一部縦断面図である。
図4に示す長いプローブ111(211,212も同じ)は、スプリング5を内蔵する鞘状部101に、スプリング5の弾性力で押し出される方向に押力を付勢された針状の心棒部105が伸縮自在に嵌挿され、テレスコピック構成されている。また、このプローブ111は、全ストロークPを縮めると、先端を鞘状部101の上端の近くまで低く沈めることになる。
【0038】
心棒部105は、鞘状部101に常時収容されている下半分に、直径を細くした細径部が形成されている。すなわち、心棒部105の両端以外は、細径部と太径部と概ね2種類の直径により構成されている。これら細径部と太径部との境界には、待機高さ規定段部106およびストローク規定段部108が形成されている。一方、鞘状部101には、その上端から1/3程度下方に位置する内径を、他の大部分の内径よりも細くしたくびれ部を設け、ストローク規定ストッパ107が形成されている。なお、ストローク規定ストッパ107の位置は、鞘状部101の上端から適宜に1/3を越える下方に形成しても良い。
【0039】
テレスコピック構成のプローブ111は、鞘状部101に心棒部105が進退自在に支承されている。心棒部105が進退動作する際、心棒部105の待機高さ規定段部106およびストローク規定段部108が、ストローク規定ストッパ107にそれぞれ当接したとき、そこから先への移動を禁止される。このようにして、プローブ111の心棒部105は、ストロークを規定される。
【0040】
図5は、本装置で用いられる細部の異なる短いプローブを対比して示す一部縦断面図であり、
図5Aは心棒部の進退動作を規制する段部が2箇所ある構造、
図5Bは心棒部の進退動作を規制する段部を1箇所にした構造を、それぞれ示している。
図5に示す短いプローブ112,218(113,114,213〜217も同じ)は、スプリング6を内蔵する鞘状部102,103に、スプリング6の弾性力で押し出される方向に押力を付勢された針状の心棒部125,135が伸縮自在に嵌挿され、テレスコピック構成されている。
【0041】
図5Aに示すプローブ112には、心棒部125の進退動作を規制する段部として、待機高さ規定段部106およびストローク規定段部108が心棒部125の2箇所に形成されている。このように、段部が2箇所ある構造は、
図4に沿って説明したプローブ111と同様である。
図5Aのプローブ112は、
図4のプローブ111と基本的に同様であり、待機高さ規定段部106が、鞘状部102の内部に設けられたストローク規定ストッパ107に当接することにより、待機高さが規定される。また、ストローク規定段部108が、ストローク規定ストッパ107に当接することにより、心棒部125は、鞘状部102の奥部へ沈み込む方向のストロークPを規定される
【0042】
図5Bに示すプローブ218には、心棒部135の進退動作を規制する段部として、待機高さ規定段部106のみが、心棒部135の1箇所に形成されている。この構成によれば、心棒部135が鞘状部103の奥部へ沈み込む方向のストロークは、特に厳格には規制されない。したがって、心棒部135は、スプリング6の収縮する限界か、又は接点1が鞘状部103の上端開口部と同一高さに沈められるまでの進退動作が可能である。
【0043】
図6は、本装置がバウンダリースキャンテストモードにおいて、基板に長いプローブのみを選択的に当接させることを説明するための配置図である。
図6に示すように、基板30は、入力信号端子31と、出力信号端子32と、テストアクセスポート(Test Access Port、以下「TAP」ともいう)86と、を備えて外部との入出力を行う。
【0044】
さらに、基板30は、入力信号端子31と、出力信号端子32と、の間に、バウンダリースキャンレジスタ(以下、「セル」ともいう)33と、デバイスコアロジック(以下、単に「コアロジック(Core Logic)」ともいう)34と、を介挿している。
【0045】
TAP86には、TDI(Test Data In)81と、TMS(Test Mode Select)82と、TCK(Test Clock)83と、TDO(Test Data Out)84と、TRST(Test Reset)85と、を備えている。また、基板30は、TAP86のなかの適切な端子に接続されるように、命令レジスタ(Instruction Register)35と、バイパスレジスタ36と、テストアクセスポートコントローラ(Test Access Port Controller、以下「TAPコントローラ」ともいう)37と、を備えている。
【0046】
命令レジスタ35は、直列に多段接続されて構成されている。この命令レジスタ35にバイパスレジスタ36が並列に接続されている。このように並列接続された命令レジスタ35およびバイパスレジスタ36は、TDI81と、TDO84と、の間に介挿されている。TAPコントローラ37は、TMS82と、TCK83と、TRST85と、に接続されている。
【0047】
コアロジック34は、不図示のCPU(Central Processing Unit)を支援し、周辺回路との間で信号の授受を担う半導体チップである。コアロジック34は、メモリ・コントローラ回路やグラフィックス・インタフェース回路、ストレージ・インタフェース回路、汎用I/O回路等を搭載していることが多い。
【0048】
命令レジスタ35は、CPUの実行ユニットを部分的に構成するものであり、現在実行中の命令を格納する。単純なプロセッサでは、各命令を実行するときに各命令を命令レジスタ35に格納し、デコードして実行するまでの間保持し続ける。なお、基板30に固有の詳細な機能および動作についての説明は省略する。
【0049】
TDI81は、テストデータの入力信号端子である。TMS82は、テスト動作を制御する入力信号端子である。TCK83は、テストクロックの入力信号端子である。TDO84は、結果データの出力信号端子である。TRST85は、TAPコントローラ37の初期化用入力信号端子である。
【0050】
基板30は、バウンダリースキャンテストを実行する機能を内部に構成している。このバウンダリースキャンテスト機能は、入出力信号端子31,32とコアロジック34との間に設定されたバンダリースキャンレジスタ(セル)33と、TAPコントローラ37と、によって構成されている。
【0051】
なお、バウンダリースキャンテストは、全てのデバイスに対して実行できるとは限らない。
図6に示した基板30において、TAPコントローラ37は制御機能を有している。この制御機能により、セル33と協働してバウンダリースキャンテストを実行することが可能となる。したがって、本装置500を用いた本方法において、
図6に一例を示した機能に類するテダバイスを備えた基板30を検査対象とした場合に、バウンダリースキャンテストを実行する。
【0052】
図7および
図9を用いて後述するように、本装置500を用いた本方法において、インサーキットテスト工程(S310)と、バウンダリースキャンテスト工程(S320)と、ファンクションテスト工程(S330)を順次実行する。まず、インサーキットテスト工程(S310)では、本装置500を接近状態(
図2)とし、長短にかかわらず全てのプローブ111〜114,211〜217(ほか不図示)を基板30の各テストランド等(不図示)に対して接触させる。
【0053】
バウンダリースキャンテスト工程(S320)およびファンクションテスト工程(S330)では、本装置500を中途状態(
図3)とし、必要に応じて選択されたプローブのみを、基板30の指定されたテストランド等に接触させる。その一方で、不要なプローブは、基板30から離間させて接触を解除する。なお、中途状態(
図3)は、離間状態(
図1)と接近状態(
図2)の何れの側から移行する場合でも得られる。したがって、接近状態(
図2)で行うインサーキットテスト工程(S310)と、中途状態(
図3)で行うバウンダリースキャンテスト工程(S320)やファンクションテスト工程(S330)の順番は、どちらを先にしても構わない。
【0054】
バウンダリースキャンテスト工程(S320)は、
図6に示すTAP86の5端子のみ、すなわち、TDI81、TMS82、TCK83、TDO84、およびTRST85のみに、
図3に示す長いプローブ111,211,212(ほか不図示)を接触させて実行する。このとき、
図3に示す短いプローブ112〜114,213〜217(ほか不図示)は、バウンダリースキャンテストの障害となるので、基板30の各テストランド等(不図示)から離間して接触を解除される。このため、バウンダリースキャンテストを良好に実行することが可能となる。
【0055】
最後に、ファンクションテスト工程(S330)では、基板30の入力信号端子31と、出力信号端子32と、にそれぞれ選択された適切なプローブ(不図示)を接触させる。これにより、加えた入力信号に対する出力信号が、期待どおりであれば合格である。
【0056】
なお、ファンクションテスト工程(S330)における各プローブの選択的接離動作については、後述するように、バウンダリースキャンテスト工程(S320)で実行した各プローブの選択的接離動作を、より多段化することにより実現可能である。このとき、バウンダリースキャンテスト工程(S320)と、ファンクションテスト工程(S330)と、の順番を入れ替えても構わない。
【0057】
本装置500は、検査機能の切り替えに応じて、基板30に接触させるプローブ111〜114,211〜217を選択することが可能である。選択基準は、プローブ111〜114,211〜217の長さであり、長さの違いに応じて選択的に接触可能である。全部のプローブ111〜114,211〜217は、不図示の導線により検査回路80と常時電気接続されている。これらプローブ111〜114,211〜217と基板30との接続形態は、検査回路80の検査機能が、バウンダリースキャンテストと、インサーキットテストと、ファンクションテストとに変化する都度、適切に対応して変化する。
【0058】
また、
図1、
図2、
図3および
図8に示すように、押力Hは、バネ42、バネ43、あるいは接触中のプローブがあればそれも含めて、基板30の下面20を上向きに押し上げる力の総和である。一方、押力Gは、駆動力Fに基づく第1ポール60、および接触中のプローブがあればそれも含めて、基板30の上面10を下向きに押し下げる力の総和である。制御部70は、駆動力Fを加減することにより、押力Hと押力Gとの強弱関係を調整することができる。その結果、本装置500は、離間距離L1〜L3を、最大L1と、最小L2と、中程度L3と、の3段階、あるいはより多段階に区別することが可能である。
【0059】
離間距離L1〜L3を最大L1に広げて基板30の脱着を可能な状態にする。離間距離L1〜L3を最小L2に狭めて挟持された基板30にプローブ111〜114,211〜217の全数を接触させることにより、インサーキットテストを実行可能に状態にする。離間距離L1〜L3を中程度L3に保持し、長いプローブ111のみを基板30に接触させることにより、バウンダリースキャンテストを実行可能に状態にする。
【0060】
また、第1プローブ基台100には、異なる長さのプローブ111〜114が植設されている。これらは、基板30の上面10に接触可能である。同様に、第2プローブ基台200には、異なる長さのプローブ211〜217が植設されている。これらは、基板30の第2面20に接触可能である。
【0061】
第1プローブ基台100と、第2プローブ基台200は、基板30を挟むように近付いたり遠ざかったりするように動作する。このため、異なる長さの全プローブ111〜114,211〜217を、検査工程に応じて選択的に基板30に接触させながら電気的検査を実行する。
【0062】
図7は、本方法の手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、本方法は、待機工程(S100)と、基板載置工程(S200)と、基板検査工程(S300)と、基板離脱工程(S400)と、を有している。まず、待機工程(S100)では、制御部70が駆動手段50を駆動して、第2プローブ基台200と、第1プローブ基台100と、の離間距離L1〜L3を最大L1に広げて待機させる。なお、中途状態(
図3)は、離間状態(
図1)と接近状態(
図2)の何れの側から移行する場合でも得られる。
【0063】
つぎに、基板載置工程(S200)では、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との間に位置する中間板300の上に基板30を載置する。つぎに、基板検査工程(S300)では、制御部70が駆動手段50に駆動力Fを発生させる。この駆動力Fによって、バネ42,61,43の弾性力に対抗しながら、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との間の離間距離L1〜L3を多段階に近付けたり遠ざけたりさせる。このように、離間距離L1〜L3を変化させる動作に応じて、検査回路80は検査機能を切り替えながら、異なる検査を順次実行する。
【0064】
基板離脱工程(S400)は、制御部70が駆動手段50で離間距離L1〜L3を最大L1に広げた状態となっている。ここで、作業者又は検査員等は、検査の完了した基板30を本装置500から離脱させるとともに、それを不図示の組み立て工程又は基板30の出荷工程へと移動する。
【0065】
基板検査工程(S300)は、インサーキットテスト工程(S310)と、バウンダリースキャンテスト工程(S320)と、ファンクションテスト工程(S330)の何れか2つ以上を組み合わせたものである。
【0066】
第1ポール60は、第1プローブ基台100に植設されて伸縮自在である。この第1ポール60が、基板30の第1面(上面)10を、駆動力Fに基づいた押力F1で押圧すると、基板30が中間板300に接近する。それと同時に、中間板300も第2プローブ基台200に接近する。この可逆動作におけるストロークの途中で、プローブ111〜114,211〜217は、長さの違いに応じて選択的に基板30に接触することが可能である。
【0067】
離間距離L1〜L3は、最大L1と、最小L2と、中程度L3と、の3段階に区別することが可能である。また、待機工程(S100)、基板載置工程(S200)および基板離脱工程(S400)では、離間距離L1〜L3を最大L1に広げて基板30の脱着を可能にする。
【0068】
基板検査工程(S300)の第1段階は、インサーキットテスト工程(S310)である。このインサーキットテスト工程(S310)では、離間距離L1〜L3を最小L2に狭めて挟持された基板30にプローブ111〜114,211〜217の全数を接触させる。
【0069】
基板検査工程(S300)の第2段階は、バウンダリースキャンテスト工程(S320)である。このバウンダリースキャンテスト工程(S320)では、離間距離L1〜L3を中程度L3に保持し、長いプローブ(111,211,212)のみを基板30に接触させる。バウンダリースキャンテスト工程(S320)又はファンクションテスト工程(S330)は、インサーキットテスト工程(S310)に比べて接触数を減らして残された長いプローブ111,211,212(ほか不図示)のみで実行される。
【0070】
また、第1ポール60は、最長から最短の長さの間を弾性的に伸縮自在なものを例示している。この第1ポール60は、内蔵した第1付勢手段(バネ)61の押力F1によりテレスコピック構造を伸縮させながら、基板30の面10を柔軟に押圧する。このように、基板30を柔軟に押圧する機能については、後述するように、基板30上の繊細な構造に対し、急激な曲げ応力等の負担を与えることが少ないので、検査することによる故障発生を防ぐとともに、より高精度な検査結果を得ることが可能となる。
【0071】
ここで、駆動力Fが、
図1〜
図3における下向きに強められ、第2付勢手段(バネ)42の弾性力、第3付勢手段(バネ)43およびその他の弾性力を合計した上向きの押力Hとのバランスを考慮する。下向きの駆動力Fと上向きの押力Hとにより、バネ61、バネ42、バネ43およびその他の弾性力に抗してこれらを縮めることにより、離間距離L1〜L3を最小L2の状態にする。
【0072】
本装置500を用いた本方法では、各プローブの選択的接離動作について、離間距離L1〜L3を、最小L2の状態と中程度L3の状態とに区別することで、プローブ111〜114,211〜217の全数を接触させるインサーキットテスト工程(S310)と、長いプローブ111,211,212のみを基板30に接触させるバウンダリースキャンテスト工程(S320)と、の2つの異なる状態を得ている。
【0073】
ここで得られた2つの異なる状態を、3つの異なる状態に多段化することも可能である。これについて、実態的な図面の記載は省略するが、第1ポール60の長さをより多段階に変化できるように構成し、それに応じて制御部70による多段階の制御とあいまって、より多種類の検査を行えるように構成しても良い。例えば、インサーキットテスト工程(S310)から、バウンダリースキャンテスト工程(S320)、およびファンクションテスト工程(S330)への変化をつけるために、基板30に接触させるプローブを、より多段階に区別することが考えられる。
【0074】
まず、長いプローブ111,211,212と、短いプローブ112〜114,213〜217との中間に位置付ける長さのものとして、中位の長さのブローブ(不図示)を設定する。また、制御部70は、検査工程の変化に応じて多段階の制御を行う。すなわち、第1段階として長いもの、中位のもの、および短いプローブの全部を接触させる。第2段階として長いもの、および中位の長さのプローブを接触させる。第3段階として長いプローブだけを接触させる、という要領でプローブの接触を区別することも可能である。
【0075】
最後の基板離脱工程(S400)では、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との間の離間距離L1〜L3を、最大L1に広げて基板30を離脱させる。これにより本方法による基板検査を終了する。
【0076】
図8は、本装置に具備された各種バネ等を説明するために
図3を簡略化した模式説明図(以下、「簡略モデル」ともいう)である。なお、駆動手段50、制御部70および検査回路80は、煩雑になることを避けて
図8から省略している。以下の説明は、
図3および
図8で示したように、バウンダリースキャンテスト工程(S320)を実行可能にするために、以下の第1、第2の条件を明確にして、再現性を高めるための説明である。
【0077】
第1条件は、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との離間距離L1〜L3を中程度L3に維持することである。
第2条件は、バウンダリースキャンテスト工程(S320)のとき、短いプローブ112〜114を基板30の上面10に接触させないことである。同様に、下側の短いプローブ213〜217を基板30の下面20に接触させないことである。
【0078】
図8の簡略モデルにおける諸元を以下に示す。なお、本件でいう「付勢」は、以下の「弾性」と略同じ意味である。
K1:バネ61(第1ポールに内蔵された第1付勢手段)のバネ定数
F10:バネ61の初期弾性力
F1:第1ポール60が基板30を押す力(単に「押力」ともいう)
バネ61の縮み量Xに対するF1は下式(1)のとおりである。ただし、
図2の状態では、下式(1)の右辺に加えて、さらに大きな力が付与される。
【0079】
F1=F10+K1・X・・・(1)
K2:バネ42(中間板300と基板30との間に介在する第2付勢手段)のバネ定数
F20:バネ42の初期弾性力
K3:バネ43(第2プローブ基台200と中間板300との間に介在する第3付勢手段)のバネ定数
ただし、バネ61,42,43の何れも、同一面を複数のバネで懸架している場合、それら複数のバネの合力(バネ定数も並列合成)で作用する。
【0080】
F:第1プローブ基台100(上側)を上下動作させる駆動力
G:基板30の上面10に作用する下向きの押力の総和(単に「押力」ともいう)
H:基板30の下面20に作用する上向きの押力の総和(単に「押力」ともいう)
N:基板30が中間板300のスペーサ301に接しているときに、そのスペーサ301から受ける垂直抗力
Y:第1プローブ基台100(上側)の短いプローブ112〜114と、第1ポール60との長さの差
【0081】
FUL:第1プローブ基台100(上側)の長いプローブ111が基板30の上面10に作用する下向きの押力(一定と仮定)
FUS:第1プローブ基台100(上側)の短いプローブ112〜114が基板30の上面10に作用する下向きの押力(一定と仮定)
FBL:第2プローブ基台200(下側)の長いプローブ211,212が基板30の下面20に作用する上向きの押力(一定と仮定)
FBS:第2プローブ基台200(下側)の短いプローブ213〜217が基板30の下面20に作用する上向きの押力(一定と仮定)
ただし、同じ基板面を複数のプローブが圧接している場合はその合力
【0082】
ここで、上述した簡略モデルの諸元に示したバネ定数は、下式(2)の条件が設定されている。
K2<K1<K3・・・(2)
上式(2)の条件により、上述の第1条件が満足され、かつ、駆動力Fを適切に加減することにより、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との離間距離L1〜L3を中程度L3に維持することが可能になる。
【0083】
上式(2)の条件に基づく第1条件が満足された状態において、
図1の基板載置工程(S200)から、
図2のインサーキットテスト工程(S310)へと進む過程において、最初にバネ42が完全に縮んでから、バネ61が縮み始める(
図3)。つぎに、バネ61が完全に縮んだ後、最後にバネ43が縮み始める(
図2)。
【0084】
このような動作条件に加えて、上述の第2条件も満足させることにより、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との離間距離L1〜L3を中程度L3に維持した状態において、長いプローブ111,211,212のみを基板30に接触させるバウンダリースキャンテスト工程(S320)を実行することが可能となる。
【0085】
上述したように、各プローブの選択的接離動作について、離間距離L1〜L3を、最小L2の状態と中程度L3の状態とに区別することで、プローブ111〜114,211〜217の全数を接触させるインサーキットテスト工程(S310)と、長いプローブ111,211,212のみを基板30に接触させるバウンダリースキャンテスト工程(S320)と、の2つの異なる状態を得ている。
【0086】
駆動手段50の駆動力Fにより、第1プローブ基台100を徐々に降下させると、基板載置工程(S200)からインサーキットテスト工程(S310)へと進む。この過程において、各プローブ111〜114,211〜217は、以下に示す順番どおりに、基板30と接触する。
【0087】
図3に示すバウンダリースキャンテスト工程(S320)におけるバネ61の縮み量をXとする。このとき、バネ42を最も縮ませた状態にする。
また、上式(2) K2<K1<K3 より、この段階でのバネ43の縮み量は無視する。
基板30の両面10,20それぞれに作用する押力G,Hは、均衡を保つ状態において、下式(3)の両辺に示すとおりである。
【0088】
すなわち、下式(3)の左辺が下向きの押力Gであり、右辺が上向きの押力Hである。
K1・X+F10+FUL=F20+K2・X+N+FBL・・・(3)
ただし、上式(2) K2<K1<K3 より、K2・Xも無視する。
K1・X+F10+FUL=F20+N+FBL・・・(4)
【0089】
スペーサ301から受ける垂直抗力Nは、上式(4)を整理した下式(5)に示すように正である。
N=K1・X+F10−F20+FUL−FBL>0・・・(5)
【0090】
バネ61の縮み量Xを求めるように上式(5)を下式(6),(7)へと順次変換する。
K1・X>F20−F10+FBL−FUL・・・(6)
∴ X>(F20−F10+FBL−FUL)/K1・・・(7)
【0091】
第2条件は、バウンダリースキャンテスト工程(S320)のとき、上側の短いプローブ112〜114を基板30の上面10に接触させないことである。この第2条件を満足させるために、上側の短いプローブ112〜114と、第1ポール60と、の長さの差Y(
図1、
図8)は、上式(7)のXより大きく設定して、下式(8)を満足させることが必要である。
Y>X>(F20−F10+FBL−FUL)/K1・・・(8)
なお、第2条件には、下側の短いプローブ213〜217を基板30の下面20に接触させない条件も含まれているが、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図9は、
図8に示した各種バネの機能に基づいて本方法の手順を示すフローチャートである。この
図9は
図7のフローチャートに基づいて、基板検査工程(S300)をより詳細に説明するものである。
図9に示すように、本方法による基板検査工程(S300)は、プローブ接近開始工程(S301)と、基板降下工程(S302)と、第1(上側)プローブ群選択当接工程(S303)と、降下基板当接工程(S304)と、第2(下側)プローブ群選択当接工程(S305)と、第1(上側)プローブ群全当接工程(S306)と、第2(下側)プローブ群全当接工程(S307)と、インサーキットテスト工程(S310)と、第1(上側)プローブ群選択解除工程(S311)と、第2(下側)プローブ群選択解除工程(S312)と、バウンダリースキャンテスト工程(S320)と、ファンクションテスト工程(S330)と、全プローブ離間工程(S331)と、を有する。
【0093】
プローブ接近開始工程(S301)では、駆動手段50の駆動力Fにより第1プローブ基台100を押し下げる。基板降下工程(S302)では、第1ポール60がバネ42に勝るバネ61の弾性力により基板30を押力F1で押し下げる。なお、
図8を用いて説明したとおり、基板30の上面10に作用する下向きの押力の総和Gには、第1プローブ基台100(上側)の長いプローブ111の押力FULや短いプローブ112〜114の押力FUSまで含まれる。
【0094】
第1(上側)プローブ群選択当接工程(S303)では、第1プローブ基台100の長いプローブ111が基板30に当接する。降下基板当接工程(S304)では、基板30の下面20が中間板300のスペーサ301に当接する。
【0095】
第2(下側)プローブ群選択当接工程(S305)では、第2プローブ基台200の長いプローブ211,212が基板30の下面20に当接する。第1(上側)プローブ群全当接工程(S306)では、バネ42,61の弾性力その他に勝る駆動手段50の駆動力Fが、主として第1ポール60に作用する。その駆動力Fにより、棒状部63がある程度まで鞘状部62に収容されるので中位の長さ、すなわち鞘状部62より少し長い程度の長さにまで縮む。その結果、第1プローブ基台100の長短全てのプローブ111〜114が基板30の上面10に当接する。
【0096】
第2(下側)プローブ群全当接工程(S307)では、バネ61,42,43の弾性力およびその他に勝る駆動手段50の駆動力Fが、主として第1ポール60に作用する。その駆動力Fにより、棒状部63の全部が鞘状部62に収容されるので最短の長さ、すなわち鞘状部62だけの長さにまで縮む。このとき、限界まで縮んで弾力性を失った状態の第1ポール60は、最も強力なバネ43の弾性力に抗しながら、中間板工程300とともに基板30を押し下げる。その結果、第2プローブ基台200の長短全てのプローブ211〜217が基板30に当接する。
【0097】
インサーキットテスト工程(S310)は、上述の第1(上側)、第2(下側)プローブ群全当接工程(S306,S307)において、第1、第2プローブ基台100,200の長短全てのプローブ111〜114,211〜217が基板30に当接した状態で実行される。
【0098】
第1(上側)プローブ群選択解除工程(S311)では、第1プローブ基台100の短いプローブ112〜114が基板30から離れる。同様に、第2(下側)プローブ群選択解除工程(S312)では、第2プローブ基台200の短いプローブ213〜217が基板30から離れる。その結果、長いプローブ111,211,212のみが基板30に接触を維持した状態で残される。
【0099】
バウンダリースキャンテスト工程(S320)又はファンクションテスト工程(S330)は、インサーキットテスト工程(S310)に比べて接触数を減らして残された長いプローブ111,211,212のみで実行される。なお、これら3本の長いプローブ111,211,212以外にも、実際の検査では長いプローブが用いられているとしても説明から省略する。
【0100】
上述のように、中途状態(
図3)は、離間状態(
図1)と接近状態(
図2)の何れの側から移行する場合でも得られる。したがって、接近状態(
図2)で行うインサーキットテスト工程(S310)と、中途状態(
図3)で行うバウンダリースキャンテスト工程(S320)やファンクションテスト工程(S330)の順番は、どちらを先にしても構わない。これを
図9で説明すると、第2(下側)プローブ群選択当接工程(S305)と第1(上側)プローブ群全当接工程(S306)の間に、バウンダリースキャンテスト工程(S320)又はファンクションテスト工程(S330)を実行するようにしても構わない。
【0101】
また、図面の記載は省略するが、長短の中間の長さも含めて異なる3段階の長さのプローブ、すなわち長プローブ、中プローブ、短プローブ、を用いて、3種のテスト工程も実現可能である。すなわち、全プローブ接触による第1テスト工程、中・長プローブ接触による第2テスト工程、長プローブのみ接触による第3テスト工程とする3種のテスト工程である。
【0102】
より具体的には、第1テスト工程はインサーキットテスト工程(S310)、第2テスト工程はバウンダリースキャンテスト工程(S320)、第3テスト工程はファンクションテスト工程(S330)とする。なお、3種のテスト工程は一例に過ぎず、第1、第2、第3テスト工程は、必ずしもインサーキットテスト工程(S310)、バウンダリースキャンテスト工程(S320)、ファンクションテスト工程(S330)である必要は無い。
【0103】
全プローブ離間工程(S331)では、制御部70が駆動手段50により第1プローブ基台100を引き上げて、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との離間距離L1〜L3を最大L1に広げた状態にする。つぎに、基板離脱工程(S400)では、本装置500から基板30を離脱させて本方法による基板検査を終了する。なお、第1(上側)プローブ群選択当接工程(S303)と、第2(下側)プローブ群選択当接工程(S305)の順番は逆でも構わない。同様に、第1(上側)プローブ群全当接工程(S306)と、第2(下側)プローブ群全当接工程(S307)の順番も逆で構わない。同様に、第1(上側)プローブ群選択解除工程(S311)と、第2(下側)プローブ群選択解除工程(S312)の順番も逆で構わない。
【0104】
以下、本装置および本方法の効果について、より具体的に説明する。従来の冶具で高速なディジタル検査、例えば、バウンダリースキャンテストを実行する場合、上述のように、数GHzの高周波クロック動作による不要輻射等の悪影響を避けて、正確な検査結果を得るために障害となるプローブを、基板30に接触させないことが重要である。このバウンダリースキャンテストで、不具合がある場合、プローブ基台(
図1〜
図3参照)の裏面(プローブの基部側)において、以下のような対応を余儀なくされていた。
【0105】
1)不具合が想定される配線箇所のプローブを切断するためのリレー(不図示)を介挿し、適宜切断する。
2)想定していなかった箇所で不具合が発生した場合、その都度新たに配線を切断して同様のリレーを取り付ける必要がある。
3)リレーで切り離された条件でも、問題の箇所に接続されるプローブからリレーまでの配線が有するインピーダンスの影響が原因で検査ができない場合がある。その原因を究明してから、その問題の箇所に接続されるプローブを取り外す必要があり検査の稼働率が低下する。
【0106】
上述の不具合に対応するため、本冶具を簡易な構造により半自動化して多機能型検査回路と組み合わせた本装置、および本装置を用いた本方法の効果は大きい。すなわち、本発明によれば、被検査基板の両面に対し、それぞれ必要とされるプローブのみを選択的に接触させることにより、多種類の検査を多段階に分けて実施可能にした両面対応型の多機能型基板検査装置および多機能型基板検査方法を提供できる。
【0107】
以下、第1ポール60の効果について、補足説明する。上述のように、第1ポール60は、基部を駆動力Fで押されることにより、バネ61の弾性力を伴って伸縮自在の先端部が、基板30の第1面(上面)10を押力F1で柔軟に押圧することが可能である。このように、第1ポール60は、鞘状部材62と棒状部材63との間に介在するバネ61の弾性力により、基板30の上面10を柔軟に押力F1で押圧する。
【0108】
ここで、第1ポール60にバネ61の弾性力が無かった場合を想定する。その場合であっても、第1ポール60の長さは、長いプローブ111と、短いプローブ112〜114の中間の長さに固定されていれば、上述の第1条件、および第2条件が実現する。まず第1条件、すなわち、第1プローブ基台100と第2プローブ基台200との離間距離L1〜L3を中程度L3に維持する。この第1条件に連動して、第2条件も実現する。すなわち、バウンダリースキャンテスト工程(S320)のとき、短いプローブ112〜114,213〜217が、基板30の上下面10,20に接触していたところを離間させるという第2条件も実現する。
【0109】
つまり、プローブ111〜114,211〜217の全数を接触させるインサーキットテスト工程(S310)と、長いプローブ111,211,212のみを基板30に接触させるバウンダリースキャンテスト工程(S320)と、の2つの異なる状態が得られる。すなわち、本装置500の基本動作は実現する。しかし、第1ポール60が、基本動作を可能とする適正な長さであったとしても、長さ方向の柔軟性に欠けていた場合、平面形体の基板30が、幾何学的に正しい平面から狂いを生じていた場合の対応が不十分になる。
【0110】
ほとんどの実装基板は、半田付け工程、つまり、半田槽を用いるフロー工程のほか、微細に印刷されたクリーム半田等を用いるリフロー工程において、熱変形のため、ある程度の波打ちが生じて完全な平面から狂いを生じる。特にフレキシブル基板では、平面度が狂うという問題が顕著になる。
【0111】
具体的には、基板30のパタン上の指定位置に半田を溶着させたテストパッド(Test Pat)等の被接触部に、プロービング(Probing)すなわちプローブを接触させる(以下、「探針接触」ともいう)場合、波打った基板ではコンタクトポイント(Contact point)の精度が狂う。さらに、半球状の被接触部から横滑りするなど、接触不良の問題を抱える。
【0112】
そこで、外形ザグリ(Outline counterbore)と呼ばれる個別専用のカバーを実装基板に装着することで、実装基板の平面度を矯正してから、プローブを接触させることもあるが、平面度の矯正にも限度がある。
【0113】
また、外形ザグリを装着しても、基板検査工程が高速で連続実行される場合、実装基板を一瞬に押さえて、探針接触し、検査終了時にも一瞬に解放する為、部品・半田接合部に大きな歪・応力が発生して、基板破壊を起こす懸念もある。
【0114】
第1ポール60が、長さ方向の柔軟性に欠けていた場合に生じる不具合は、以下のとおりである。
1)コンタクトポイント上のプローブが、横滑り等を生じてずれる。
2)ベアボード(bare board)の平面度を無理に矯正しようとするとき、表面実装タイプのICチップ等の場合、BGA(ball grid array)の半田ボールにクラック(crack)が生じる。
3)ベアボードが平らになる際、チップ部品が割れる。
【0115】
上述の不具合に対応するため、上述のように、本装置500に複数が具備された第1ポール60は、鞘状部材62と棒状部材63との間に介在するバネ61の弾性力により、基板30の上面10を、より均一かつ柔軟に押圧する。その動作は、探針接触する前に、基板30を均一かつ緩慢に押さえる作用があるので、基板が平面度を維持して保持され易い。
【0116】
このように、第1ポール60は、波打った基板30に対し、一定の時間を掛けて無理なく平面度を矯正する。すなわち、基板30の反りを無くす効果がある。したがって、平面度の矯正に際して、基板30の品質保証に有害な撓みや曲げ応力の発生が抑制されるという効果を奏する。探針接触の解放時も同様であり、徐々に基板30を元の状態戻す。その結果、検査を高速化しても、検査することによる故障の発生を防ぐとともに、探針接触(Probing)が、高精度かつ安定的になるので、一連の検査精度を高める効果がある。
【0117】
図10は、本装置に用いる第1ポールの変形例を示す一部断面図である。
図10に示す第1ポール90は、基部を形成する支柱93が第1プローブ基台100に植設されるようにネジ97で固定されており、
図1、
図2、
図3、および
図8に示した第1ポール60と同様の機能を有する。すなわち、第1ポール90は、基部を駆動力Fで先端方向に押されることにより、バネ61の弾性力を伴って伸縮自在の先端部94が、基板30の第1面(上面)10を押力F1で柔軟に押圧することが可能である。
【0118】
この第1ポール90が、第1ポール60と異なる点は、以下の2点である。まず、第1プローブ基台100に植設された支柱93の側に基部が形成され、それに被さる鞘状部材92の側に伸縮自在の先端部94が形成されている点が異なる。さらに、先端部94には交換自在のキャップ95がオス・メス関係のネジ部96により固定されており、基板30の第1面10に、キャップ95の当接面98を介して当接する点も異なる。また、キャップ95は、摩耗交換のほか、基板30の形態や検査内容に材質を適合させるため交換自在にしている。なお、キャップ95を構成する材料は、基板30への静電気の害を避けるための絶縁性と、本冶具の多段階動作に伴う衝撃を軽減するためクッション性を有するゴム又は樹脂材料であることが好ましい。
【0119】
[変形実施例]
以下、
図11〜
図13を用いて変形実施例について説明する。これら、
図11〜
図13は、上述の本装置500の構成及び動作を説明する際に用いた
図1〜
図3にそれぞれ対応する。また、
図11〜
図13は、
図1〜
図3に示した本装置500に対し、より安全かつ良好な機能を得るために追加した部材を含めた構成及び動作を説明するための図である。なお、変形装置の動作原理は本装置500と同等であるため、重複する説明は省略する。
【0120】
図11は、変形装置の第1プローブ基台と第2プローブ基台を最大に離間し、両者の間に位置する中間板に実装基板を載置した状態を示す正面図である。
図12は、変形装置の第1プローブ基台と第2プローブ基台を最接近させて保持し、挟持された基板に長短2種類のプローブを全数接触させた、インサーキットテストモードを示す正面図である。
図13は、変形装置の第1プローブ基台と第2プローブ基台の離間距離を中程度に保持し、挟持された基板に長いプローブのみを接触させ、短いプローブは非接触とする、バウンダリースキャンテストモードを示す正面図である。
【0121】
変形装置501は、本装置500に残された課題に対応したものである。その課題とは、基板30が、中間板300の上面に配設されたスペーサ301その他不図示の支持部材と、第1ポール60,90(
図10)の先端で押圧された箇所と、押圧されない箇所と、のそれぞれの間で不均一な曲げ応力を受けることにより、平坦面が撓むだけでなく、甚だしい場合は、損傷する危険性もあった点である。
【0122】
この課題を解決するために、本装置500が第1ポール60によって基板30を押圧していたところ、変形装置501は、第1ポール60と同等機能を有する伸縮性支持機構60で支持された押し板400によって基板30を押圧するようにした。なお、第1ポール60と、伸縮性支持機構60とは、同等機能を有するため同一符号を付しているが、同等機能であれば別の構成でも構わない。
【0123】
図11〜
図13に示すように、多機能型基板検査装置(変形装置)501は、
図1〜
図3に示した本装置500に対し、被検査基板30の表面を弾性的かつ均一に押圧可能にした押し板400をさらに備えて構成される。この押し板400は、第1プローブ基台100と被検査基板30との間に位置する。
【0124】
また、この押し板400は、第1ポール60と同等機能を有する伸縮性支持機構60の先端部に接着剤64で固設されると共に、第1プローブ基台100に対して平行を維持した姿勢で離接可能ある。なお、この押し板400は、第1プローブ基台100に植設されたプローブ111〜114を貫通させる貫通孔1〜4が穿設されている。
【0125】
また、ほとんどの基板30には、高さ方向に突出する不図示の部品が実装されている。これらの実装部品は、基板30の種類別に配置も高さも異なる。したがって、基板30に対面する押し板400には、高さ方向に突出する実装部品を嵌入して高さを吸収するザグリ孔、もしくは貫通孔などが穿設される。このように、押し板400には、基板30の種類別に相当の加工が必要である。これらの加工により、プローブ111〜114を貫通させる貫通孔1〜4と同様に、基板30の種類別に異なる形状に適応させた専用の押し板400が形成される。押し板400は、このような構成であるため、被検査基板30の表面を弾性的かつ均一に押圧可能である。
【0126】
なお、
図11〜
図13示した変形装置501における伸縮性支持機構60は、
図1〜
図3に示した本装置500における第1ポール60と、ほぼ同様に構成されているが、これに限定するものではない。すなわち、全部のバネ61を合計した強度や、バネ61に係合する板材どうしの平行を維持する機能が同等であればそれで良い。
【0127】
したがって、鞘状部材62の形状や、伸縮性支持機構60と押し板400とを固定する固定手段64は、別の構成でも構わない。特に、固定手段64は、例示した接着剤による固定でなくとも一般的なネジ止め等であっても構わない。なお、貫通孔1〜4に対応するように、中間板300にも第2プローブ基台200に植設されたプローブ211〜217を貫通させる貫通孔が穿設されていることは言うまでもない。
【0128】
上述のように、変形装置501は、押し板400で基板30の表面を弾性的に押圧可能である。また、押し板400は、第1プローブ基台100と基板30との間に位置しており、これらは平行を維持した姿勢で離接可能ある。したがって、押し板400は、被検査基板30の表面に対して平行を維持した姿勢で押圧することが可能ある。
【0129】
したがって、基板30が、中間板300の上面に配設されたスペーサ301その他不図示の支持部材と、第1ポール60,90の先端で押圧された箇所と、押圧されない箇所と、のそれぞれの間で不均一な曲げ応力を受けることが少なくて済む。このような作用により、変形装置501は、基板30の平坦面が撓むことや損傷する危険性も軽減できるという効果を奏する。その結果、本装置500に残された課題を解決できた。
基板30の面10,20別に接触可能で異なる長さのプローブ111〜217が植設された第1,第2プローブ基台100,200と、これらの間隔を近付けたり遠ざけたりする駆動手段50と、これらの間で基板30を載置可能な中間板300と、第1プローブ基台100に植設され、駆動手段50の駆動力Fに基づいて第1付勢手段61を介する付勢力F1で基板30を押圧可能な伸縮自在の第1ポール60又はそれと同等の伸縮性支持機構60と、基板30を中間板300から遠ざけようとする第2付勢手段42と、中間板300を第2プローブ基台200から遠ざけようとする第3付勢手段43と、を備え、プローブ111〜217を長さの違いに応じて基板30に選択的に接触させる。