(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<フルオレン系重合体>
本発明のフルオレン系重合体(以下、単に「フルオレン系重合体」ともいう。)は、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物由来の構成単位を主鎖に含む重合体である。一般式(I)においてR
1はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
【0020】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基を挙げることができる。アルキル基は、好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状アルキル基である。
【0021】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)置換シクロペンチル基、アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)置換シクロヘキシル基等の炭素数4〜16(好ましくは炭素数5〜8)のシクロアルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基を挙げることができる。シクロアルキル基は、好ましくはシクロペンチル基又はシクロヘキシル基である。
【0022】
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)置換フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。アリール基は、好ましくはフェニル基又はアルキル置換フェニル基(例えば、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基等)であり、より好ましくはフェニル基である。
【0023】
上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、アルキル基以外の置換基(例えば、アルコキシル基、アシル基、ハロゲン原子等)を有していてもよい。
【0024】
フルオレン系重合体は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂であってもよいが、好ましくは、光学部材等の成形品を製造する際に射出成形が可能である熱可塑性樹脂である。なお、本発明のフルオレン系重合体には、上記したような各種樹脂の変性体が含まれる。変性体としては、重合体の末端に官能基や分子鎖を導入したもの、重合体の側鎖として官能基や分子鎖を導入したもの等が挙げられる。
【0025】
フルオレン系重合体は、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物に由来する構成単位を含むことに起因して、低い複屈折率を示しつつも、極めて高い屈折率を示す。その屈折率(23℃)は、重合体の種類及び重合体を構成する構成単位の化学構造や、上記フルオレン系ジオール化合物以外の他のジオール成分に由来する構成単位の有無、含有率及び/又は化学構造(他のジオール成分の種類)等によって変動し得るが、典型的には1.6以上である。フルオレン系重合体は、1.62以上、さらには1.64以上、なおさらには1.65又はそれ以上の屈折率を示し得る。
【0026】
光学樹脂として汎用されている一般的なポリカーボネート樹脂(ジオール成分として、例えばビスフェノールA等が用いられている。)、シクロオレフィン樹脂、ポリメタクリル樹脂の屈折率(20℃)はそれぞれ、約1.59、約1.53、約1.49である。従って、これらの一般的な従来の汎用光学樹脂に比べて、本発明のフルオレン系重合体は、屈折率の点で極めて優れている。
【0027】
同じくフルオレン系重合体ではあるが、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンをジオール成分とするポリエステル樹脂であり、高屈折率の光学樹脂として従来公知であるフルオレン系重合体に、例えば、大阪ガスケミカル(株)製の商品名「OKP4」及び「OKP4HT」がある。これらのポリエステル樹脂の屈折率(20℃)は、約1.60〜約1.63である。従って、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物に由来する構成単位を含む本発明のフルオレン系重合体は、上記従来公知のフルオレン系重合体と比べても、屈折率の点で優れているといえる。このような屈折率の向上は、2つのフェニル基上のOH基(又はヒドロキシアルコキシル基)の位置の違いによるものと推定される。
【0028】
本発明のフルオレン系重合体は、従来のフルオレン系重合体と同様、フルオレン系ジオール化合物由来の構成単位が有する「カルド(蝶つがい)構造」(フルオレン環と、その9位に結合される2つのフェニル基とからなる構造)により低複屈折率化を実現しているが、その複屈折率は、2つのフェニル基の4位にOH基やヒドロキシアルコキシル基が結合している従来のフルオレン系重合体(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン又は9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンをジオール成分とする重合体)よりも低い傾向にある。これは、2つのフェニル基の2位に嵩高いOH基を有する本発明のフルオレン系重合体においては、上記従来のフルオレン系重合体と比較して、フェニル基がフルオレン骨格に対してより直交した立体配座を採るためであると考えられる。
【0029】
本発明のフルオレン系重合体は、アッベ数が低い点においても光学樹脂として好適な材料である。フルオレン系重合体は、23℃において、30以下、さらには27以下、なおさらには23以下という低いアッベ数を示すことができ、20以下のアッベ数をも示し得る。なお、上記大阪ガスケミカル(株)製の商品名「OKP4」及び「OKP4HT」のアッベ数(20℃)はそれぞれ、27、23である。
【0030】
本発明のフルオレン系重合体は、耐熱性の面でも従来の光学樹脂と比較して有利である。すなわち、本発明のフルオレン系重合体は、上述の要因によって変動し得るが、典型的には約140℃以上のガラス転移温度を有しており、160℃以上、さらには170℃以上、なおさらには180℃以上の高いガラス転移温度をも有し得る。これに対して、光学樹脂として汎用されている一般的なポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリメタクリル樹脂のガラス転移温度はそれぞれ、約145℃、約140℃、約110℃であり、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンをジオール成分とするポリエステル樹脂(例えば、大阪ガスケミカル(株)製の商品名「OKP4」及び「OKP4HT」)及びポリカーボネート樹脂のガラス転移温度はそれぞれ、約120〜140℃、約150℃(ジオール成分が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンのみからなる場合)である。
【0031】
本発明のフルオレン系重合体はまた、光学樹脂に要求される十分な透明性、加工性(成形性等)及び耐久性を具備している。
【0032】
以下、代表的なフルオレン系重合体(樹脂)についてさらに具体的に説明する。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂である本発明のフルオレン系重合体は、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物を含むジオール成分と、炭酸ジエステル又はホスゲンとを重合触媒の存在下又は非存在下に反応させる慣用の方法に従って得ることができる。本発明のポリカーボネート樹脂は、上記一般式(I)に示されるOH基(フルオレン環の9位に結合したフェニル基の2位に結合しているOH基)が関与するカーボネート結合を主鎖に含む樹脂であり、具体的には、下記一般式(I−1):
【0034】
[式中のR
1の意味は上述のとおりである。]
で表わされる構成単位を主鎖に含む樹脂である。
【0035】
ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物の1種のみ(例えば、一般式(I)におけるR
1がメチル基である化合物又はエチル基である化合物)を含んでいてもよいし、2種以上(すなわち、一般式(I)におけるR
1が互いに異なる複数の化合物)を含んでいてもよい。また、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物以外の他のジオール成分を含むことができる。他のジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
他のジオール成分の具体例を挙げれば、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物以外のフルオレン系ジオール化合物〔例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−アルキル置換フェニル)フルオレン、及びそれらのアルキレンオキサイド(例:炭素数2〜6のアルキレンオキサイド)付加体等〕;アルキレングリコール〔例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、デカンジオールに代表される炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状アルキレングリコール等〕;(ポリ)オキシアルキレングリコール〔例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールに代表されるジ−、トリ−又はテトラ−アルキレングリコール等〕;脂環族ジオール〔例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン及びそのアルキレンオキサイド付加体等〕;芳香族ジオール〔例えば、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビスフェノールAD、ビスフェノールF及びそれらのアルキレンオキサイド(例:炭素数2〜6のアルキレンオキサイド)付加体、キシリレングリコール等〕などである。
【0037】
ジオール成分における、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物と他のジオール成分との含有比率(モル比)は、例えば、〔一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物〕/〔他のジオール成分〕=100/0〜40/60であり、好ましくは100/0〜50/50、より好ましくは100/0〜60/40、さらに好ましくは100/0〜70/30(例えば、100/0〜80/20又は100/0〜90/10)である。
【0038】
必要に応じて、ジオール成分に加えて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールのような3官能以上のポリオール成分を併用してもよい。
【0039】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等を用いることができる。炭酸ジエステルは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
重合触媒の例を挙げれば、例えば、アルカリ金属〔リチウム、ナトリウム、カリウム等〕、アルカリ土類金属〔マグネシウム、カルシウム、バリウム等〕、遷移金属〔亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、チタン、マンガン、コバルト、ランセリウム等〕の金属化合物などである。金属化合物としては、水酸化物、アルコラート、有機酸塩〔酢酸塩、プロピオン酸塩等〕、無機酸塩〔ホウ酸塩、炭酸塩等〕、酸化物などが挙げられる。重合触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量(ポリスチレン換算)で5,000〜500,000程度であり、好ましくは10,000〜100,000程度である。
【0042】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂である本発明のフルオレン系重合体は、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを重合触媒の存在下又は非存在下に反応させる慣用の方法〔例えば、直接重合法(直接エステル化法)又はエステル交換法〕に従って得ることができる。本発明のポリエステル樹脂は、上記一般式(I)に示されるOH基(フルオレン環の9位に結合したフェニル基の2位に結合しているOH基)が関与するエステル結合を主鎖に含む樹脂であり、具体的には、下記一般式(I−2):
【0044】
[式中のR
1の意味は上述のとおりである。Qはジカルボン酸成分のカルボキシル基(又はそのエステル形成可能な誘導基)を除く2価の残基である。]
で表わされる構成単位を主鎖に含む樹脂である。
【0045】
ポリカーボネート樹脂の場合と同様、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物の1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物以外の他のジオール成分を含むことができる。他のジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。他のジオール成分の具体例、及び、ジオール成分における一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物と他のジオール成分との含有比率は、ポリカーボネート樹脂について記載したものと同様であることができる。
【0046】
必要に応じて、ジオール成分に加えて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールのような3官能以上のポリオール成分を併用してもよい。
【0047】
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及びそれらのエステル形成可能な誘導体〔例えば、酸無水物、酸塩化物、低級アルキルエステル等〕が挙げられる。ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸の具体例は、飽和脂肪族ジカルボン酸〔例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸等〕;不飽和脂肪族ジカルボン酸〔例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等〕;及び、それらのエステル形成可能な誘導体を含む。
【0049】
脂環族ジカルボン酸の具体例は、飽和脂環族ジカルボン酸〔例えば、シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸等〕;不飽和脂環族ジカルボン酸〔例えば、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、1,3−シクロヘキセンジカルボン酸等〕;多環式アルカンジカルボン酸〔例えば、ボルナンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等〕;多環式アルケンジカルボン酸〔例えば、ボルネンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸等〕;及び、それらのエステル形成可能な誘導体を含む。
【0050】
芳香族ジカルボン酸の具体例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸等)、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、及び、それらのエステル形成可能な誘導体を含む。
【0051】
必要に応じて、ジカルボン酸成分に加えて、トリメリット酸、ピロメリット酸のような3官能以上のカルボン酸成分を併用してもよい。
【0052】
重合触媒としては、ポリカーボネート樹脂について記載したものと同様のものを用いることができる。
【0053】
ポリエステル樹脂の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量(ポリスチレン換算)で5,000〜500,000程度であり、好ましくは10,000〜100,000程度である。
【0054】
(ポリエステルカーボネート樹脂)
ポリエステルカーボネート樹脂である本発明のフルオレン系重合体は、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物を含むジオール成分と、炭酸ジエステル又はホスゲンと、ジカルボン酸成分とを重合触媒の存在下又は非存在下に反応させる慣用の方法に従って得ることができる。本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、上記一般式(I)に示されるOH基(フルオレン環の9位に結合したフェニル基の2位に結合しているOH基)が関与するカーボネート結合と、当該OH基が関与するエステル結合とを主鎖に含む樹脂であり、具体的には、上記一般式(I−1)及び一般式(I−2)で表わされる構成単位を主鎖に含む樹脂である。
【0055】
ポリカーボネート樹脂の場合と同様、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物の1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物以外の他のジオール成分を含むことができる。他のジオール成分、炭酸ジエステル及びジカルボン酸成分は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。他のジオール成分、炭酸ジエステル及びジカルボン酸成分の具体例、並びに、ジオール成分における一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物と他のジオール成分との含有比率は、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂について記載したものと同様であることができる。
【0056】
必要に応じて、ジオール成分に加えて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールのような3官能以上のポリオール成分を併用してもよい。
【0057】
ポリエステルカーボネート樹脂の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量(ポリスチレン換算)で5,000〜500,000程度であり、好ましくは10,000〜100,000程度である。
【0058】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂である本発明のフルオレン系重合体は、上記一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物を含むジオール成分とジイソシアネート成分とを重合触媒の存在下又は非存在下にウレタン化反応させる慣用の方法に従って得ることができる。
【0059】
ポリカーボネート樹脂の場合と同様、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物の1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。また、ジオール成分は、一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物以外の他のジオール成分を含むことができる。他のジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。他のジオール成分の具体例、及び、ジオール成分における一般式(I)で表わされるフルオレン系ジオール化合物と他のジオール成分との含有比率は、ポリカーボネート樹脂について記載したものと同様であることができる。
【0060】
必要に応じて、ジオール成分に加えて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールのような3官能以上のポリオール成分を併用してもよい。
【0061】
ジイソシアネート成分の具体例は、芳香族ジイソシアネート〔例えば、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,2−ビス(イソシアナトフェニル)エタン、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパン、1,4−ビス(イソシアナトフェニル)ブタン、ポリメリックMDI等〕;脂環族ジイソシアネート〔例えば、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等〕;脂肪族ジイソシアネート〔例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等〕を含む。ジイソシアネート成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。必要に応じて、ジイソシアネート成分とともに、3官能以上のポリイソシアネート成分を併用してもよい。
【0062】
ウレタン化反応におけるジイソシアネート成分の使用量は、ジオール成分1モルに対して、通常0.7〜2.5モル程度であり、好ましくは0.8〜2.2モル程度である。重合触媒としては、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒を用いることができる。
【0063】
本発明のフルオレン系重合体(樹脂)は、それ単独で光学部材〔例えば、光学レンズ、光学フィルム〕等の樹脂部材用の材料として用いてもよいし、他の成分と組み合わせて樹脂組成物とし、これを樹脂部材用の材料として用いてもよい。樹脂組成物は、本発明のフルオレン系重合体以外の樹脂を含むことができ、また、必要に応じて、適宜の添加剤を含むことができる。添加剤の具体例は、可塑剤、滑剤、安定剤〔酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等〕、離型剤、帯電防止剤、充填剤、難燃剤、着色剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤等を含む。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
本発明のフルオレン系重合体(樹脂)又はこれを含む樹脂組成物は、例えば射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法等の公知の成形方法により、光学部材等の樹脂部材に成形することができる。
【0065】
<フルオレン系ジオール化合物及びその製造方法>
上記一般式(I)で表わされる本発明に係るフルオレン系ジオール化合物(以下、単に「フルオレン系ジオール化合物」ともいう。)は、上述したフルオレン系重合体形成用の原料モノマーとして好適に用いられる化合物である。一般式(I)においてR
1はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の具体例は上述のとおりである。
【0066】
フルオレン系重合体形成用の原料モノマーとして好適に用いられるフルオレン系ジオール化合物の具体例を挙げれば、例えばR
1がメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基である化合物等であり、より好適な例は、例えばR
1がメチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基である化合物等である。
【0067】
フルオレン系ジオール化合物はそれ自体、高い屈折率を有しているため、これを用いて形成したフルオレン系重合体は、上述のとおり高い屈折率を示す。フルオレン系ジオール化合物の屈折率(23℃)は、R
1が、例えばメチル基又はエチル基の場合、約1.65である。この屈折率値は、高屈折率を示すものとして従来知られているフルオレン系重合体の原料モノマーである9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの屈折率値約1.62よりもなお高い。
【0068】
また、フルオレン系ジオール化合物はそれ自体、アッベ数が低く、R
1がメチル基の場合で約18、エチル基の場合で約20である(23℃)。これらのアッベ数は、低アッベ数を示すものとして従来知られているフルオレン系重合体の原料モノマーである9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンのアッベ数約22よりもなお低い。
【0069】
フルオレン系ジオール化合物の製造方法は特に制限されないが、好適には、酸性条件下に、9−フルオレノンと上記一般式(II)で表わされるm−アルキルフェノールとを縮合反応させる方法が用いられる。一般式(II)におけるR
1の意味は一般式(I)と同じである。なかでも、酸性化合物(有機酸及び/又は無機酸)とチオール化合物との存在下に上記縮合反応を行う方法は、高い反応選択性で目的のフルオレン系ジオール化合物を形成し得、高純度の当該フルオレン系ジオール化合物が高収率で得られ得ることから好ましく採用することができる。
【0070】
上記縮合反応においてm−アルキルフェノールは通常、9−フルオレノンに対して過剰量用いられる。9−フルオレノンの使用量に対するm−アルキルフェノールの使用量の比は、モル比で、通常2.0〜40倍(例えば2.1〜40倍)であり、好ましくは3〜30倍、より好ましくは4〜20倍である。縮合反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができ、過剰量のm−アルキルフェノールを溶媒として用いることも好ましい。
【0071】
有機酸としては、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等を用いることができる。無機酸としては、塩酸(塩化水素水溶液)のようなハロゲン化水素酸、リン酸等を用いることができる。塩酸の塩化水素濃度は、好ましくは10〜37重量%、より好ましくは20〜37重量%、さらに好ましくは25〜37重量%である。高い反応選択性、ひいては高い収率が得られることから、上記のなかでもパラトルエンスルホン酸や塩酸(とりわけ高濃度の塩酸)等を用いることが好ましい。酸性化合物(有機酸及び/又は無機酸)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
なお、無機酸として硫酸(濃硫酸)を使用すると、下記一般式(III):
【0074】
で表されるキサンテン系化合物が主要な反応生成物として生成することが本発明者らによって明らかになっており、この点で硫酸(濃硫酸)の使用は比較的不利である。パラトルエンスルホン酸、塩酸(とりわけ高濃度の塩酸)等の使用によれば、当該キサンテン系化合物の生成を効果的に抑制し、高い反応選択性で目的のフルオレン系ジオール化合物を得ることが可能である。
【0075】
9−フルオレノンの使用量に対する酸性化合物(有機酸又は無機酸)の使用量(塩酸等の溶液の場合には、溶液に含まれる酸性化合物の量)の比は、モル比で、通常0.05〜3倍であり、好ましくは0.1〜2倍、より好ましくは0.2〜1.5倍である。
【0076】
チオール化合物としては、アルキルメルカプタン〔例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン等の炭素数1〜20のアルキルメルカプタン〕;アラルキルメルカプタン〔例えば、ベンジルメルカプタン等〕;メルカプトカルボン酸〔例えば、チオ酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオシュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸等〕;及び、それらの塩〔例えば、Na塩、K塩等〕を用いることができる。チオール化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0077】
9−フルオレノンの使用量に対するチオール化合物の使用量の比は、モル比で、通常0.01〜0.5倍であり、好ましくは0.02〜0.3倍、より好ましくは0.03〜0.2倍である。
【0078】
上記縮合反応は、例えば酸性化合物(有機酸及び/又は無機酸)とチオール化合物との存在下に当該反応を行う場合であれば、原料の9−フルオレノン及びm−アルキルフェノール、酸性化合物、チオール化合物、並びに、必要に応じて用いられる溶媒を反応容器に仕込み、空気中又は窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で撹拌することにより行うことができる。酸性化合物を含む液〔例えば、液体酸であればそれ自体(塩酸であれば塩酸それ自体)、固体酸であればこれを溶媒に溶解した溶液〕、又は、酸性化合物とチオール化合物とを含む液を、他の試剤を仕込んだ反応容器内へ、撹拌下に滴下する方法も有効である。
【0079】
反応温度は、反応速度の観点から5℃以上とすることが好ましく、10℃以上とすることがより好ましく、15℃以上とすることがさらに好ましい。一方、反応温度が過度に高い場合には上記キサンテン系化合物の副生が顕著になることから、反応温度は60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましく、35℃以下であることが特に好ましい。反応の進行度は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)等により追跡することができる。
【0080】
反応終了後、適宜の後処理操作を施して、フルオレン系ジオール化合物を結晶として単離することができる。上記後処理操作としては、例えば、フルオレン系ジオール化合物の有機層(有機溶媒)への抽出、アルカリによる酸性化合物の中和、有機層の洗浄、有機層の濃縮、晶析、濾過、乾燥等を挙げることができるが、これらの操作のうち1以上の操作を省略してもよいし、他の操作を付加してもよい。また必要に応じて、単離された結晶を精製してもよい。精製方法としては、再晶析(再結晶)や活性炭等の吸着剤を用いた不純物除去処理を挙げることができる。縮合反応により生成したフルオレン系ジオール化合物を、結晶として単離することなく、上述のフルオレン系重合体の製造工程に供してもよい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
フルオレン系ジオール化合物、フルオレン系重合体について測定した各測定値は、次の方法、測定条件に従った。
【0083】
〔1〕HPLC純度
次の測定条件でHPLC測定を行ったときの面積百分率値をHPLC純度とした。
【0084】
・装置:(株)島津製作所製「LC−2010AHT」、
・カラム:一般財団法人 化学物質評価研究機構製「L−column ODS」
(5μm、4.6mmφ×250mm)、
・カラム温度:40℃、
・検出波長:UV 254nm、
・移動相:A液=水、B液=アセトニトリル、
・移動相流量:1.0ml/分、
・移動相グラジエント:B液濃度:30%(0分)→100%(25分後)→100%(35分後)。
【0085】
〔2〕融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC 7020」)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
【0086】
〔3〕屈折率及びアッベ数
アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR−2M」)を用いて、23℃における屈折率(波長:589nm)及び23℃におけるアッベ数(波長:486、589、656nm)を測定した。なお、フルオレン系ジオール化合物については次のようにして屈折率及びアッベ数を測定した。まず、フルオレン系ジオール化合物をジメチルホルムアミドに溶解して10重量%、20重量%及び30重量%溶液を調製し、各溶液について屈折率及びアッベ数を測定した。次に、得られた3点の測定値から近似曲線を導き、これを100重量%に外挿したときの値をフルオレン系ジオール化合物の屈折率及びアッベ数とした。また、フルオレン系重合体については、これをフィルム状に成形したものから短冊状に切り出した試験片を用いて測定を行った。
【0087】
〔4〕フルオレン系重合体の重量平均分子量
高速GPC装置(東ソー(株)製「HLC−8200 GPC)を用いて、重量平均分子量を測定した(ポリスチレン換算)。
【0088】
〔5〕フルオレン系重合体のヘイズ
ヘイズメータ(スガ試験機(株)製「HGM−2DP」)を用いてヘイズを測定した。
【0089】
(1)フルオレン系ジオール化合物の製造
<実施例1>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた300mlのガラス製反応容器に、9−フルオレノン40.00g(0.222mol)、m−エチルフェノール161.76g(1.324mol)、n−ラウリルメルカプタン(1−ドデカンチオール)2.25g(0.011mol)及び、パラトルエンスルホン酸21.11g(0.111mol)を仕込み、30℃まで昇温した。同温度で12時間攪拌した時点で、HPLCにより反応混合液の分析を行ったところ、9−フルオレノンの残存量は1.0%以下であった。
【0090】
得られた反応混合液にトルエン及び水を加えて85℃に昇温し、24重量%水酸化ナトリウムを加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で3回洗浄した後、有機層を減圧濃縮することにより、トルエン及びm−エチルフェノールを部分的に留去した。得られたスラリーにトルエンを加え、110℃まで昇温した後、室温まで放冷した。析出した結晶を濾過・乾燥して、上記一般式(I)におけるR
1がエチル基であるフルオレン系ジオール化合物Ia〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)フルオレン〕の白色結晶67.59gを得た(9−フルオレノン基準の収率:74.9%)。この白色結晶のHPLC純度は98.7%であった。
【0091】
次に、上記白色結晶の全量及びトルエンをガラス製反応容器に仕込み、110℃まで昇温した後、室温まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾過・乾燥して、精製品47.5gを得た(9−フルオレノン基準の収率:52.5%)。この精製品のHPLC純度は99.2%であった。
【0092】
<実施例2>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた300mlのガラス製反応容器に、9−フルオレノン40.00g(0.222mol)、m−エチルフェノール161.76g(1.324mol)及び、n−ラウリルメルカプタン(1−ドデカンチオール)2.25g(0.011mol)を仕込み、30℃まで昇温した。その後、30℃で35重量%塩酸22.70g(0.218mol)を滴下した。同温度で20時間攪拌した時点で、HPLCにより反応混合液の分析を行ったところ、9−フルオレノンの残存量は1.0%以下であった。
【0093】
得られた反応混合液にトルエン及び水を加えて85℃に昇温し、24重量%水酸化ナトリウムを加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で3回洗浄した後、有機層を減圧濃縮することにより、トルエン及びm−エチルフェノールを部分的に留去した。得られたスラリーにトルエンを加え、110℃まで昇温した後、室温まで放冷した。析出した結晶を濾過・乾燥して、フルオレン系ジオール化合物Ia〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)フルオレン〕の白色結晶61.8gを得た(9−フルオレノン基準の収率:68.5%)。この白色結晶のHPLC純度は97.1%であった。
【0094】
<実施例3>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた300mlのガラス製反応容器に、9−フルオレノン40.00g(0.222mol)、m−クレゾール279.89g(2.588mol)及び、n−ラウリルメルカプタン(1−ドデカンチオール)2.25g(0.011mol)を仕込み、30℃まで昇温した。その後、30℃で35重量%塩酸22.70g(0.218mol)を滴下した。同温度で8時間攪拌した時点で、HPLCにより反応混合液の分析を行ったところ、9−フルオレノンの残存量は1.0%以下であった。
【0095】
得られた反応混合液にトルエン及び水を加えて85℃に昇温し、24重量%水酸化ナトリウムを加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で3回洗浄した後、有機層を減圧濃縮することにより、トルエン及びm−クレゾールを部分的に留去した。得られたスラリーにトルエンを加え、110℃まで昇温した後、室温まで放冷した。析出した結晶を濾過・乾燥して、上記一般式(I)におけるR
1がメチル基であるフルオレン系ジオール化合物Ib〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン〕の白色結晶48.1gを得た(9−フルオレノン基準の収率:57.3%)。この白色結晶のHPLC純度は90.3%であった。
【0096】
次に、上記白色結晶の全量及びトルエンをガラス製反応容器に仕込み、110℃まで昇温した後、室温まで徐々に冷却した。析出した結晶を濾過・乾燥して、精製品35.1gを得た(9−フルオレノン基準の収率:41.8%)。この精製品のHPLC純度は97.0%であった。
【0097】
<参考例1>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた300mlのガラス製反応容器に、9−フルオレノン40.00g(0.222mol)、m−エチルフェノール161.76g(1.324mol)、β−メルカプトプロピオン酸1.17g(0.011mol)及び、98重量%濃硫酸11.11g(0.111mol)を仕込み、55℃まで昇温した。同温度で6時間攪拌した時点で、HPLCにより反応混合液の分析を行ったところ、最も多い生成物として、上記一般式(III)で表わされるキサンテン系化合物(R
1=エチル基)の生成が確認された(HPLC:35%)。
【0098】
<参考例2>
m−エチルフェノールの代わりに、m−クレゾール143.18g(1.324mol)を用いたこと以外は参考例1と同様にして反応を行った。55℃で6時間攪拌した時点で、HPLCにより反応混合液の分析を行ったところ、最も多い生成物として、上記一般式(III)で表わされるキサンテン系化合物(R
1=メチル基)の生成が確認された(HPLC:67%)。
【0099】
実施例1で得られたフルオレン系ジオール化合物Ia〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)フルオレン〕の精製品、及び、実施例3で得られたフルオレン系ジオール化合物Ib〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン〕の精製品の
1H−NMRデータはそれぞれ次のとおりである。
【0100】
〔a〕フルオレン系ジオール化合物Ia
1H-NMR(CDCl
3,400MHz,TMS)δ(ppm):1.17(t、J=7.56,6H)、2.55(q、J=7.56、4H)、5.26(s、2H)、6.60(d、J=7.79、2H)、6.75(s、2H)、6.81(d、J=8.24、2H)、7.28(t、J=7.56、2H)、7.39(t、J=7.76、2H)7.76(d、J=8.24、2H)。
【0101】
〔b〕フルオレン系ジオール化合物Ib
1H-NMR(CDCl
3,400MHz,TMS)δ(ppm):2.24(s、6H)、5.24(s、2H)、6.57(d、J=7.79、2H)、6.71(s、2H)、6.79(d、J=8.24、2H)、7.27(t、J=7.56,2H)、7.38(t、J=7.56,2H)、7.76(d、J=7.79、4H)。
【0102】
また、フルオレン系ジオール化合物IaのH−H COSY、C−H COSYスペクトルをそれぞれ
図1、
図2に、フルオレン系ジオール化合物IbのH−H COSY、C−H COSYスペクトルをそれぞれ
図3、
図4に示す。これらの2次元NMRスペクトルから、フルオレン系ジオール化合物Ia及びIbは、上記一般式(I)で示されるとおりの構造を有していること、特にOH基がフェニル基の2位に結合しており、R
1が4位に結合していることが確認された。
【0103】
実施例1で得られたフルオレン系ジオール化合物Iaの精製品、及び、実施例3で得られたフルオレン系ジオール化合物Ibの精製品について、融点、屈折率及びアッベ数を測定した。結果を表1に示す。表1には、比較のため、従来公知のフルオレン系ジオール化合物である下記一般式(IV):
【0104】
【化6】
【0105】
で表わされる9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの測定結果を併せて示している。
【0106】
【表1】
【0107】
(2)フルオレン系重合体の製造
<実施例4:ポリカーボネート樹脂の製造>
フルオレン系ジオール化合物Ia〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−エチルフェニル)フルオレン〕17.27重量部、ジフェニルカーボネート9.42重量部及び重合触媒としての炭酸水素ナトリウム2.1×10
-5重量部を、攪拌機及び留出装置付の反応容器に仕込み、窒素雰囲気下で200℃に加熱し、20分間攪拌を行って完全溶融させた。その後、反応容器内の減圧度を27kPaに調整し、200℃、27kPaの条件下で40分間撹拌した。次に、60℃/hrの速度で210℃まで昇温を行い、同温度で30分間撹拌した。引き続き、60℃/hrの速度で220℃まで昇温を行い、同温度で40分間撹拌した。次いで、反応容器内の減圧度を24kPaに調整した後、60℃/hrの速度で230℃まで昇温を行い、同温度で20分間撹拌した。次に、反応容器内の減圧度を20kPaに調整した後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温を行い、同温度で40分間撹拌した。最後に、1時間かけて反応容器内の減圧度を133Pa以下とし、240℃、133Pa以下の条件下で1時間撹拌し、反応終了とした。その後、反応容器内に窒素を吹き込みながら生成したポリカーボネート樹脂A1を取り出した。
【0108】
<実施例5:ポリカーボネート樹脂の製造>
フルオレン系ジオール化合物Ib〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン〕20.49重量部、ジフェニルカーボネート12.01重量部及び重合触媒としての炭酸水素ナトリウム2.7×10
-5重量部を、攪拌機及び留出装置付の反応容器に仕込み、窒素雰囲気下で200℃に加熱し、20分間攪拌を行って完全溶融させた。その後、反応容器内の減圧度を27kPaに調整し、200℃、27kPaの条件下で40分間撹拌した。次に、60℃/hrの速度で210℃まで昇温を行い、同温度で30分間撹拌した。引き続き、60℃/hrの速度で220℃まで昇温を行い、同温度で40分間撹拌した。次いで、反応容器内の減圧度を24kPaに調整した後、60℃/hrの速度で230℃まで昇温を行い、同温度で10分間撹拌した。次に、反応容器内の減圧度を20kPaに調整した後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温を行い、同温度で30分間撹拌した。最後に、1時間かけて反応容器内の減圧度を133Pa以下とし、240℃、133Pa以下の条件下で1時間撹拌し、反応終了とした。その後、反応容器内に窒素を吹き込みながら生成したポリカーボネート樹脂A2を取り出した。
【0109】
<実施例6:ポリエステル樹脂の製造>
フルオレン系ジオール化合物Ib〔9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン〕20.00重量部、テレフタル酸ジメチル15.07重量部、エチレングリコール1.54重量部及び重合触媒としてのチタンテトライソプロポキシド2.65×10
-5重量部を、攪拌機及び留出装置付の反応容器に仕込み、窒素雰囲気下で220℃に加熱し、攪拌を行って溶融させた。その後、220℃で、生成したメタノールを反応系外に留出させながら攪拌を継続した。メタノールがほぼ留出しなくなった時点で酸化ゲルマニウム6.6×10
-5重量部を加えた後、60℃/hrの速度で280℃まで昇温を行い、同温度で10分間撹拌した。さらに、反応容器内の減圧度を徐々に133Pa以下とし、留出したエチレングリコールを反応系外に除きながら3時間攪拌し、反応終了とした。その後、反応容器内に窒素を吹き込みながら生成したポリエステル樹脂A3を取り出した。
【0110】
<比較例1:ポリカーボネート樹脂の製造>
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン20.00重量部、ジフェニルカーボネート10.10重量部及び重合触媒としての炭酸水素ナトリウム2.2×10
-5重量部を、攪拌機及び留出装置付の反応容器に仕込み、窒素雰囲気下で200℃に加熱し、20分間攪拌を行って完全溶融させた。その後、反応容器内の減圧度を27kPaに調整し、200℃、27kPaの条件下で40分間撹拌した。次に、60℃/hrの速度で210℃まで昇温を行い、同温度で30分間撹拌した。引き続き、60℃/hrの速度で220℃まで昇温を行い、同温度で40分間撹拌した。次いで、反応容器内の減圧度を24kPaに調整した後、60℃/hrの速度で230℃まで昇温を行い、同温度で20分間撹拌した。次に、反応容器内の減圧度を20kPaに調整した後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温を行い、同温度で40分間撹拌した。最後に、1時間かけて反応容器内の減圧度を133Pa以下とし、240℃、133Pa以下の条件下で1時間撹拌し、反応終了とした。その後、反応容器内に窒素を吹き込みながら生成したポリカーボネート樹脂B1を取り出した。
【0111】
<比較例2:ポリエステル樹脂の製造>
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン20.00重量部、テレフタル酸ジメチル13.02重量部、エチレングリコール2.66重量部及び重合触媒としてのチタンテトライソプロポキシド2.29×10
-5重量部を、攪拌機及び留出装置付の反応容器に仕込み、窒素雰囲気下で220℃に加熱し、攪拌を行って溶融させた。その後、220℃で、生成したメタノールを反応系外に留出させながら攪拌を継続した。メタノールがほぼ留出しなくなった時点で酸化ゲルマニウム5.7×10
-5重量部を加えた後、60℃/hrの速度で280℃まで昇温を行い、同温度で10分間撹拌した。さらに、反応容器内の減圧度を徐々に133Pa以下とし、留出したエチレングリコールを反応系外に除きながら3時間攪拌し、反応終了とした。その後、反応容器内に窒素を吹き込みながら生成したポリエステル樹脂B2を取り出した。
【0112】
実施例4〜6及び比較例1〜2で得られたポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂について、ガラス転移温度、屈折率、アッベ数、重量平均分子量及びヘイズを測定した。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】