特許第6233957号(P6233957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6233957-積層シート、成形品及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233957
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】積層シート、成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/14 20060101AFI20171113BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20171113BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20171113BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20171113BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B32B15/14
   H05K9/00 W
   B62D25/20 N
   G10K11/16 120
   G10K11/16 160
   G10K11/162
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-174084(P2013-174084)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42448(P2015-42448A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年7月14日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】596024426
【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150774
【氏名又は名称】株式会社槌屋
(73)【特許権者】
【識別番号】593049431
【氏名又は名称】高安株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】大原 康之
(72)【発明者】
【氏名】高見 肇
(72)【発明者】
【氏名】神谷 達志
(72)【発明者】
【氏名】山本 章人
(72)【発明者】
【氏名】林 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 徳孝
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−035557(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/019783(WO,A1)
【文献】 特開2008−115525(JP,A)
【文献】 特開2009−158699(JP,A)
【文献】 特開2009−267230(JP,A)
【文献】 特開2003−115695(JP,A)
【文献】 特開2009−287134(JP,A)
【文献】 特開2004−232162(JP,A)
【文献】 特開2001−207366(JP,A)
【文献】 特開2005−028864(JP,A)
【文献】 特開2008−068799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B62D 25/00−29/04
G10K 11/00−13/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状繊維素材の片面もしくは両面に高導電性金属が被覆されてなる電磁波シールド材の、一方の面に非透水性の表皮材が積層され、他方の面に熱融着性繊維を混合したフェルトからなる剛性熱可塑性シートが積層され、これらが一体に貼り合わされてなることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
剛性熱可塑性シートが、電磁波シールド材との積層面の反対面に、保護層を有している、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
剛性熱可塑性シートの3点曲げ強度(たわみ長さ10mm)が5N以上である、請求項1または2に記載の積層シート。
【請求項4】
剛性熱可塑性シートが、熱融着性繊維を5〜50重量%混合したフェルトであり、その目付が800〜2,000g/mの範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層シートを用いて形成されてなることを特徴とする成形品。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれかに記載の積層シートを用いて、保護層が車体外側に面するように形成されてなることを特徴とする自動車のアンダーパネル。
【請求項7】
シート状繊維素材の片面もしくは両面に高導電性金属が被覆されてなる電磁波シールド材の、一方の面に非透水性の表皮材を積層し、他方の面に熱融着性繊維を混合したフェルトからなる剛性熱可塑性シートを積層した積層シートを、加熱、圧縮して、表皮材と電磁波シールド材と剛性熱可塑性シートとを一体に成形することを特徴とする積層シート、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のアンダーパネル等に好適に用いられる、電磁波シールド性と形状維持性の双方を有する積層シートであって、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、家屋等の内装材や家具材等としても利用可能な積層シート、それからなる成形品、ならびに製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車で自動車のフロア下にバッテリーが搭載される場合には、大量の電流をモーターに送るときに発生する電磁波がバッテリーより放射されることが問題となっており、車外に放出される電磁波を抑えるための電磁波シールド材を装着する必要がある。
【0003】
電磁波は金属製の筐体にバッテリーを完全に収納することで防げるが、大量のバッテリーを封入するケースに金属を使用することは、ただでさえ重量が問題となっている電気自動車において更なる重量増の原因となる。そこで、樹脂製の筐体が使用されるが、通常の樹脂は電磁波を透過するため、金属繊維を一定の比率で添加した樹脂を使用したり、内面をシールド塗料で塗装したりする。また、成形された金属板や金属メッシュが挿入されることも多くあるが、これらは樹脂により成形されたケースやパネルに取り付けられ、電磁波が放出されるのを防ぎたい方向にバッテリーを覆うように使用される。
【0004】
しかし、筐体全体をシールド特性を持つ樹脂とすることは、非常にコストがかかり、内面をシールド塗料で塗装する方法では十分なシールド性能が得られない。金属製のシールド材では大幅な重量増となる。金属をメッシュ状にすることで軽量化が可能ではあるが、金属製のシールド材を固定するために筐体となる樹脂成形品に強度を持たせる必要があるため、軽量化が図りにくい。金属製のシールド材と筐体を、別々に製作して組み合わせるため、生産コストも高くなる。
【0005】
金属板や金属メッシュに代わるものとして、めっき加工した織物(特許文献1参照)や、めっき繊維を混ぜた不織布(特許文献2参照)などが軽量かつ柔軟な電磁波シールド材として提案されている。しかしながら、これらをシールド部品とするためには裁断、躯体となるプラスチック成形した箱状または板状の枠にホチキス止め、高周波ウエルダーによる熱融着、または接着剤による貼り付け等の方法で固定し装着するといった手間の掛かる加工工程が必要であり、また、安定したシールド特性を得ることも困難である。
【0006】
また、電磁波シールド性能と吸音性能の双方を有する材料として、低密度フェルトとアルミニウム箔等を貼り合せた材料(特許文献3、4参照)も提案されているが、これらの材料の場合も、裁断して壁や天井に貼り付ける工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−209671号公報
【特許文献2】特開2009−277952号公報
【特許文献3】特開平8−306482号公報
【特許文献4】特開2011−181714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電磁波シールド性能を有すると同時に、吸音性、断熱性、形状維持性を有し、シールド部品を裁断して貼り付けるといった手間のかかる加工工程を必要としない積層シート、それからなる成形品、とりわけ、自動車走行中のタイヤノイズ、飛び石の衝撃音、エンジンやパワーステアリング等の各種装置から発生する騒音、熱が車室内外へ伝達するのを抑制して低減させることが可能で、バッテリーケースの下面を覆って保護し車体の空力特性を改善するための簡便かつ確実に製作可能な電磁波シールドアンダーパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、軽量かつ柔軟な電磁波シールド材に、剛性を有する熱可塑性シートを貼り合せると共に、電磁波発生源側の面には非透水性の表皮材を貼り合せ、さらに、車体外側となる面に保護層を設けることにより、上記課題を一挙に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)シート状繊維素材の片面もしくは両面に高導電性金属が被覆されてなる電磁波シールド材の、一方の面に非透水性の表皮材が積層され、他方の面に熱融着性繊維を混合したフェルトからなる剛性熱可塑性シートが積層され、これらが一体に貼り合わされてなることを特徴とする積層シート。
(2)剛性熱可塑性シートが、電磁波シールド材との積層面の反対面に、保護層を有している、上記(1)に記載の積層シート。
(3)剛性熱可塑性シートの3点曲げ強度(たわみ長さ10mm)が5N以上である、上記(1)または(2)に記載の積層シート。
(4)剛性熱可塑性シートが、熱融着性繊維を5〜50重量%混合したフェルトで、その目付が800〜2,000g/mの範囲である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層シート。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層シートを用いて形成されてなることを特徴とする成形品。
(6)上記(2)〜(4)のいずれかに記載の積層シートを用いて、保護層が車体外側に面するように形成されてなることを特徴とする自動車のアンダーパネル。
【0011】
(7)シート状繊維素材の片面もしくは両面に高導電性金属が被覆されてなる電磁波シールド材の、一方の面に非透水性の表皮材を積層し、他方の面に熱融着性繊維を混合したフェルトからなる剛性熱可塑性シートを積層した積層シートを、加熱、圧縮して、表皮材と電磁波シールド材と剛性熱可塑性シートとを一体に成形することを特徴とする積層シート、成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層シートは、電磁波シールド材に剛性熱可塑性シートが貼り合わされているので、電磁波シールド材に剛性、易加工性、吸音性、断熱性を付与することができ、また反対面に非透水性の表皮材が貼り合わされているので、電磁波シールド材内への水の侵入による電磁波シールド性能の低下が生じにくい。
さらに、剛性熱可塑性樹脂シートに保護層を設けることにより、該保護層が積層シートに跳ね石等による衝撃を緩和する効果を付与し、積層シートが衝撃で破壊するのを防止することができる。
【0013】
積層シートは、熱可塑性かつ形状維持性を有しているので、熱成形により簡単に所望の形状に成形可能であり、積層シート製造の際に、自動車のアンダーパネル等の成形品に製造することができる。そのため、従来のように電磁波シールド材を裁断して筐体に貼り付けるといった手間のかかる加工工程が不要である。
【0014】
剛性熱可塑性シートとして、熱融着性繊維を混合した高目付のフェルトを用いることにより、軽量かつ易加工性で、各素材が剥離し難い積層シートが得られる。
【0015】
積層シートからなる成形品を電磁波シールドアンダーパネルとして用いることにより、自動車走行中のタイヤノイズ、飛び石の衝撃音、エンジンやパワーステアリング等の各種装置から発生する駆動騒音や熱が車室内へ伝達するのを抑制して低減する、或いは、バッテリーケースの下面を覆って保護する、或いは、車体の空力特性を改善するといった種々の効果を奏する。本発明の積層シート及びその成形品は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、家屋等の内装材や家具材等としても用いることもできる。
【0016】
本発明の積層シート、成形品の製造方法によれば、表皮材と電磁波シールド材と剛性熱可塑性シートを積層した積層シートを熱成形することにより、これらの素材を一体に成形することができるので、製造工程を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の積層シートの構成を示す断面概略図である。
図2】実施例2の積層シートの構成を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層シートは、シート状繊維素材の片面もしくは両面に高導電性金属が被覆されてなる電磁波シールド材に、少なくとも、非透水性の表皮材と剛性熱可塑性シートとが貼り合わされてなるものである。
【0019】
<電磁波シールド材>
本発明の電磁波シールド材に用いられるシート状繊維素材としては、織物、編物、不織布など柔軟性を有する繊維素材が挙げられるが、成形性、軽量化、コストの点より、不織布または織物(特に平織物)が好ましく用いられる。
シート状繊維素材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜2mmである。シート状繊維素材の厚さを0.01mm以上とすることで、電磁波シールド性能を付与するのに十分な量の金属を付着させることができる。また、シート状繊維素材の厚さが2mm以下であれば、加工性を著しく損なうことがない。より好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.01〜0.5mm程度のものが良い。また、単位面積あたりの質量(目付け)は、軽い方が良いが、強度及びシールド性能の点より、好ましくは10〜250g/m、より好ましくは20〜200g/m、さらに好ましくは20〜150g/mである。
【0020】
シート状繊維素材を構成する繊維は、ポリエチレンテレフタレートやポリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の汎用繊維が、コスト面から好ましい。シート状繊維素材への金属の密着性や寸法安定性の面からはポリエステル繊維が好ましい。
【0021】
シート状繊維素材の片面もしくは両面に高導電性金属を被覆する方法は、特に限定されるものではなく、無電解めっき、蒸着、スパッタリング等の公知の方法であって良く、電磁波シールド材のシールド性能や素材の種類等を考慮して適宜選択される。高導電性金属の被覆量は、シート状繊維素材に対し3〜15g/mとすることが好ましく、被覆量が少な過ぎると電磁波シールド性が劣り、被覆量が多過ぎると金属が脱落する等の不都合が生じる。
【0022】
高導電性金属としては、銅、銀、金、ニッケル、鉄、パーマロイ等が挙げられ、これらの金属は単独又は2種以上を併用することができる。なかでも、高いシールド特性を示す銅または銀を用いることが望ましい。銅を用いる場合は、銅が酸化によりシールド性能が低下する傾向が有るため、繊維素材を銅で被覆し、さらにこの銅をニッケル等の銅以外の金属で被覆することが好ましい。
【0023】
<表皮材>
表皮材は、非透水性であることが必要である。表皮材が透水性であると、積層シートに侵入した水が電磁波シールド材中の金属を腐食し、シールド効果を阻害する結果となるからである。
【0024】
表皮材を構成する素材としては、耐水性を有し追従性に優れる、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルム、または、耐水塗料コーティング膜が挙げられる。
【0025】
表皮材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.01〜0.5mmである。表皮材の厚さが0.01mm以上あれば破れにくく、2mm以下であれば積層シートの柔軟性を確保できる。
【0026】
<剛性熱可塑性シート>
剛性熱可塑性シートは、積層シートに剛性を付与するために用いられるが、断熱性や吸音性を付与する効果もあり、電磁波シールド材を挟んで、表皮材の反対面に積層される。剛性熱可塑性シートは、その特性として、たわみ10mm時の3点曲げ強度が5N以上であることが好ましい。より好ましくは、たわみ10mm時の3点曲げ強度が10N以上、特に好ましくは20N以上であるのが良い。ここで、3点曲げ強度は、JIS K7074−1988(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)に準じ、シートが10mmたわんだ時の曲げ強さを測定することにより求めることができる。剛性が不足する場合は、積層シートもしくは成形品の形状維持性能が低下する。
【0027】
剛性熱可塑性シートとしては、剛性と吸音性能を有するという点より、フェルト等が好適に用いられる。剛性熱可塑性シートの素材としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン等の汎用の熱可塑性の素材が、電磁波シールド材に過剰な負荷を与えない成形温度で成形できる点及びコスト面から望ましい。
【0028】
また、軽量かつ熱成形性に優れる点からもフェルトが好ましい。フェルトを構成する繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維等の汎用繊維が、入手の容易性、リサイクル性及びコスト面から好ましく、これらの繊維が混合された繊維でも良い。これらの繊維の再生繊維も好適に用いられる。
【0029】
剛性熱可塑性シートは、そのまま積層しても良いが、電磁波シールド材との積層面の反対面に、耐チップ性の保護層が設けられていることが好ましい。保護層を構成する材料としては、跳ね石の衝撃を緩和する効果のあるものが好ましく、例えば、フィルム、不織布、フェルト、発泡体等が挙げられる。剛性熱可塑性シートの外側に保護用の塗料等を塗布して塗膜を形成させても良い。このなかでも、フェルトは、成形性、吸音性能の面からも好ましい。保護層を構成する材料は、単体で使用することも可能であるが、例えば、不織布やフェルトの外側に保護用の塗料等を塗布することで、地面からの跳ね石に対する耐チッピング性能を上げることも可能である。
【0030】
剛性熱可塑性シート及び保護層に用いるフェルトは、ニードルパンチ不織布、ウォータージェットパンチ不織布等を原材料として用いることができ、資源の再利用、吸音性能、製造コスト等の点から反毛工程で再生した反毛綿から形成された反毛フェルトや、反毛綿を混綿したフェルトも好ましく用いられる。これらのフェルトは、熱融着性繊維を含有していることが、成形性、吸音性能、形状維持性能の面から好ましい。
【0031】
フェルトを構成する繊維の繊維長および繊度は、特に限定されず、成形品の用途により適宜決定することができるが、繊維長は10mm以上が好ましく、より好ましくは10〜100mm、特に好ましくは20〜80mmである。繊維長10mm以上の短繊維を使用することにより、交絡させた短繊維がフェルトから脱落しにくくなる。一方、繊維長が長いほど吸音性は良好となるが、カードからの紡出性が劣る傾向にあることより、100mm以下とすることが好ましい。繊度は、0.5〜30dtex、好ましくは1〜20dtex、特に1〜10dtexのものが好ましく用いられる。これらの繊維は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。同種または異種の繊維で、繊度や繊維長の異なる熱可塑性短繊維を混合して用いることもできる。この場合、繊維の混合比は任意であり、積層シートの用途や目的に合せて適宜決定することができる。
【0032】
フェルトに混合する熱融着性繊維の比率は、積層シートを用いる成形品の形状や大きさ等により異なるが、フェルト全体の5〜50重量%の比率とすることが好ましく、より好ましくは10〜40%である。熱融着性繊維の比率を5重量%以上とすることで、剛性熱可塑性シートに適度な剛性を付与し、積層シートを所望の形状に容易に成形することができる。また、熱融着性繊維が最大50重量%混合されていれば、十分な接着性を付与することができ、それ以外の繊維の割合が減少することにより、吸音性能が著しく低下する恐れがない。
【0033】
熱融着性繊維としては、融点が150℃以下のポリマーからなる繊維が好ましく、これにより、フェルトを構成する他の繊維を溶融させることなく成形加工することができる。熱融着性繊維は、剛性熱可塑性シート構成繊維の中から選択しても良いし、公知の熱可塑性短繊維を用いても良い。該熱可塑性短繊維としては、低融点ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、線状低密度ポリエチレン繊維、エチレン−酢酸ビニル共重合体繊維等の低融点ポリマーからなる繊維1種または2種以上を使用するか、ポリエチレンテレフタレート等の高融点のポリエステルを芯部とし、イソフタル酸等を共重合した低融点のポリエステルを鞘部とする芯鞘型複合繊維を使用することができる。熱融着性繊維は、フェルトを構成する他の繊維よりも、20〜150℃低い融点を有するポリマーからなる繊維を使用するのが良い。
【0034】
フェルトを構成する繊維に熱融着性繊維を混合した剛性熱可塑性シートは、開綿、開繊機で両繊維を混合した後、カード機に掛けてウエブとし、これをクロスレイヤーで積層したウエブ積層体を作製し、硬綿製造機またはニードルパンチで熱融着性繊維を溶融する方法や、開繊混合された繊維を高圧空気によって型枠内に詰め込んだ後熱処理する方法等により作成することができる。熱処理により熱融着性繊維を溶融させることで、繊維の交絡部分を接着することができ、フェルトの強度や繊維の脱落防止を向上させる効果もある。熱融着性繊維の繊維長は特に限定されず、他の熱可塑性短繊維との相性や成形品の用途により適宜決定することができ、通常、10〜100mm、特に20〜80mmの短繊維が好ましい。
【0035】
剛性熱可塑性シートの目付は、800〜2,000g/mの範囲が好ましい。目付が800g/m以上あれば、該シートの好ましい厚み(2mm〜15mm)を考慮しても剛性不足となる恐れがなく、目付が2,000g/m以下であれば、成形性が低下する恐れがない。より好ましくは900〜1,500g/m、特に好ましくは1,000〜1,300g/mである。
【0036】
なお、保護層にフェルトを用いる場合は、剛性熱可塑性シートの密度よりも高密度にすると耐チップ性が良好になるので好ましい。
【0037】
本発明の積層シートを構成する各繊維には、必要に応じて、撥水処理ならびに難燃処理が施されていても良い。撥水処理方法としては、フェルトを構成する繊維または作製したフェルトに、シリコン樹脂やフッ素樹脂等の公知の撥水処理剤をコーティングあるいは含浸させる方法や、シランカップリング剤を反応させる方法等が挙げられる。
【0038】
難燃処理方法としては、フェルトを構成する繊維または作製したフェルトに、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化金属化合物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)等の公知の難燃剤をコーティングあるいは含浸させる方法等が挙げられる。難燃剤を配合したアクリル樹脂エマルジョンやアクリル樹脂溶液を、コーティングあるいは含浸させても良い。
【0039】
本発明の積層シートの厚さは、経済性、加工のし易さ等の点から、好ましくは5〜30mm、より好ましくは10〜25mmである。
【0040】
本発明の積層シートには、用途に応じて適宜、吸音材や遮音材を積層することができ、また、表面に制振塗料等を塗布することもできる。
【0041】
次に、本発明の積層シート及び成形品の製造方法の一例を説明する。
【0042】
本発明の積層シートを製造する場合は、上記の表皮材、電磁波シールド材、剛性熱可塑性シートをこの順に積層し、原シートを作製する。積層順はこれと逆でも良い。原シートは、非接着状態であっても、接着状態であっても良い。また、保護層を有する積層シートを製造する際は、剛性熱可塑性シートと保護層を別個に積層しても良いし、あらかじめ保護層を設けておいた剛性熱可塑性シートを積層しても良い。あらかじめ保護層を設けておいたものを用いることにより、成形時における接着不良や剥がれが生じ難い積層シートを製造することができる。
【0043】
積層シートを構成する表皮材、電磁波シールド材及び剛性熱可塑性シートを貼り合せる場合は、公知の接着方法を用いることができる。例えば、接着剤による接着、熱融着による接着、超音波による接着等の方法を挙げることができる。
接着剤としては、ナイロンやポリエステル等の高温用接着樹脂の粉末やEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)等の低温用接着樹脂の粉末を用いることができ、これらの樹脂を素材の上にばらまき、その上に別の素材を重ね合わせ、熱処理することで接着することができる。
また、低融点樹脂からなるネットやフィルム、不織布、繊維を各素材の間に介在させ、熱処理して接着することもできる。
また、表皮材に、変性ポリアミド樹脂等の熱溶融性樹脂を予めドット状等の任意の形状に転写しておいたものを用い、表皮材と電磁波シールド材とを熱処理して接着させることもできる。
【0044】
本発明の積層シートは、原シートを、カレンダーロール、金型等の公知の方法を用いて熱プレス成形を行うことにより得ることができる。
【0045】
本発明の積層シートからなる成形品は、原シートを、公知の成形機を用いて加熱金型で型締めするなどの方法で熱成形することにより、素材が一体に成形した成形品として得ることができる。前記の熱成形においては、原シートを予め熱処理して積層シートとしたものを用いても良いし、原シートを熱成形と同時に貼り合わせても良い。予め熱処理して素材を一体化した後に成形すれば、成形がし易くなり、各素材が強固に一体となった剥離し難い成形品を得ることができる。
【0046】
熱処理や熱成形時の加熱温度は、140〜200℃が好ましい。加熱温度が低すぎる場合は、成形が不十分になり易く形状保持性の低下、経時での剥離が発生する恐れがある。一方、加熱温度が高すぎる場合は、素材の熱劣化が生じる恐れがある。なお、熱処理時間や圧縮圧力は、積層シートや成形品の要求特性に応じて、適宜決定すれば良い。
【0047】
本発明の積層シートは、吸音・断熱性、形状維持性、電磁波シールド性及び非透水性に優れているため、目的や使途に合わせて適宜の大きさや形状に成形することができる。即ち、平面状の積層シートを製造した後、これを適宜な大きさや形状に裁断して、壁材、天井材等の内装材として用いることができる。例えば、自動車、貨車、船舶、航空機、家屋、建物等の内装材;土木・建築用資材;電気掃除機、電気洗濯機、電気冷蔵庫、換気扇、エアコン、電気芝刈り機等の電化製品の内装材等である。
【0048】
また、積層シートを所望形状の成形品に成形した後、端部を切り落として、電磁波シールド材等として各種用途に用いることができる。各種用途のなかでも、自動車のアンダーパネルとして好適に用いることができる。自動車のアンダーパネルとして使用される場合、本発明の積層シートを保護部材が車体外側に面するようにして成形し、表皮材がエンジン側を向くように配置することで、水の侵入、跳ね石に対する耐チップ性を高めることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
電磁波シールド材として、目付け30g/mのポリエステル織物の両面に、銅とニッケルをこの順に無電解メッキした金属メッキ織物を用意した。
非透水性の表皮材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ20μm)を用意した。
剛性熱可塑性シートとして、熱融着性繊維(融点;150℃以下)を30重量%混合したポリエステルフェルト(厚さ3mm、目付け1,100g/m)からなる硬質フェルトを用意した。
【0051】
図1に示した順序で、電磁波シールド材(2)とPETフィルム(3)と硬質フェルト(4)を積層し、各素材を貼り合せるために各素材の間にポリアミド系ホットメルト不織布を挟み込んだ。積層したシートがずれないように固定し、200℃の熱板上に5分間保持した後、直ちに金型に挟み十分に冷却されるまでプレスして、150×150mm、厚さ3mmの平板状の積層シートを作製した。
【0052】
(実施例2)
電磁波シールド材と非透水性の表皮材は、実施例1と同じものを用いた。剛性熱可塑性シートは、実施例1で用いた硬質フェルトの片面に、耐チップ塗装を施して保護層を形成したものを用いた。
【0053】
図2に示した順序で、電磁波シールド材(2)とPETフィルム(3)と保護層(5)を設けた硬質フェルト(4)を積層し、各素材を貼り合せるためにアクリル系接着剤を塗布し、実施例1と同様にして、平板状の積層シートを作製した。
【0054】
(比較例1)
PETフィルムを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0055】
(比較例2)
剛性熱可塑性シートとして、低目付けポリエステルフェルト(目付750g/m)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0056】
(比較例3)
剛性熱可塑性シートとして、厚さ1mmのポリプロピレン製樹脂板を用いた以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0057】
実施例及び比較例で得た積層シートについて、以下の試験方法による評価を実施した。
【0058】
[電磁波シールド性]
KEC法に準拠し、各積層シートの10MHzにおけるシールド効果(dB)を測定した。測定は、積層シートの製造初期、及び、老化試験(50℃95%RH×1week)を終了直後に実施した。
初期のシールド効果に対する、老化試験後のシールド効果の割合で評価し、90%以上あれば○、90%未満であれば×とした。
なお、シールド効果は次式(1)により算出した。
SE=20×log10E/E・・・(1)
SE:シールド効果(dB)
:シールド材が無い場合の空間の電界強度
:シールド材が有る場合の空間の電界強度
【0059】
[吸音性]
電磁波シールド性評価後の試験片を用いて評価した。
自動垂直入射吸音率測定器(株式会社ソーテック製)を用い、JIS A−1405「管内法における建築材料の垂直入射吸音率測定方法」により、500Hz〜5kHzにおける垂直入射吸音率を測定した。なお、積層シートの保護層が音源側になるよう取付けた。吸音効果があった場合を○、なかった場合を×と評価した。
【0060】
[成形品強度]
JIS K7074−1988(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)に準拠し、積層シートが10mm撓んだ時の曲げ強度を測定した。曲げ強度20N以上で○と評価した。
【0061】
[形状保持性]
積層シートを成形したサンプルから切り取った試験片を、スガ試験機(株)製のサンシャインウエザーメータに入れ、ブラックパネル63℃、水スプレー2時間に18分間のサイクル条件にて400時間老化させた。
試験片が形状を保持していた場合を○、保持できなかった場合を×と評価した。
【0062】
[耐チップ性]
積層シートから切り取った試験片を、保護層面が上側でPETフィルム面が下側になるよう台上に置き、3kg分の真鍮ナットを計150kg分繰り返す事によるナット落下法による性能試験を実施した。
真鍮ナットを落下させた試験片の表面が破れなかった場合を○、破れた場合を×と評価した。
【0063】
上記の評価結果を表1にまとめて示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、本発明の積層シートは、電磁波シールド性、吸音性、形状維持性、形態保持性及び耐チップ性において、良好な結果を示した。
これに対し、非透水性表皮材を積層していない比較例1の積層シートは、老化試験後の電磁波シールド性が不良であった。
剛性素材として低目付のポリエステル不織布を積層した比較例2の積層シートは、形状維持性、形状保持性、耐チップ性が劣っていた。
剛性素材としてポリプロピレン樹脂板を積層した比較例3の積層シートは、軽量性及び吸音性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の積層シート、成形品は、自動車のアンダーパネル等に特に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 積層シート
2 電磁波シールド材
3 非透水性表皮材
4 剛性熱可塑性シート
5 保護層
図1
図2