(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の椅子においては、張材の周縁部が基板の外周縁部で裏側に折り返され、その周縁部の端末が内周側に強く引き込まれることにより、張材の前面側での荷重を支えるべく張力が発生する。このとき、張材は基材の外周端部を巻き込んだ状態で周縁部の端末を内周側に引き込まれるため、張材の前面側に作用する張力の支持反力は基板上の張材の巻き込み部分で最も大きくなり、クッション材はこの部分で最も大きく押し潰される。このため、基板の外周端部付近の張材の巻き込み部分でクッション材が基板に対して僅かに滑ると、その僅かな滑りが契機となり、クッション材の巻き込み部分付近での大きな弾性反力が張材を位置ずれさせる可能性が高まる。
また、上記従来の椅子の場合、張材の裏面に配置されるクッション材を基材に対して正確に位置決めする手段を持たないため、クッション材上のどの部分がどれだけ押し潰されて、支持反力がどの部分でどれだけ高まるかを正確に制御することはできない。このため、椅子の個体毎に張材の位置ずれの可能性が異なることになり、均一品質を提供するためには煩雑な品質管理を強いられることになる。
【0006】
また、近年、椅子の背凭れ部や座体のデザインとして、外周縁部が裏面側に向かって連続的に湾曲するものが採用されることが多い。この種のデザインは、椅子の縁部において角張った印象を無くすことを意図しているため、基板の外周縁部が裏面側に向かって湾曲面となるように造形されるとともに、裁断された張材の周縁部が縫製や接着の入ることのない連続的な面であることが必須となる。このため、特に、この種のデザインを採用する場合には、張材の裏面側のクッション材が基板の外周端部において張材の引き込み方向に沿ってより滑り易くなり、張材の上記の位置ずれの可能性がより高まる。
【0007】
そこでこの発明は、張材の周縁部を基体の裏側に折り返し、その周縁部を基体の内周側に引き込んで基体に係止する構造を採用しつつも、クッション材の滑りを契機とした張材の位置ずれ抑制することのできる椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る椅子では、骨格部を成す基体
であって表面側の内側領域に荷重受け面を有する基板と、該
基板の少なくとも表面側に配置されるクッション材と、少なくとも前記クッション材の外側面と前記
基板の外周縁部にかかる部分を覆い、周縁部が前記
基板の外周縁部の裏側に折り返され内周側に引き込まれて支持される張材と、を有する荷重支持体を備えた椅子において、前記
基板の
、前記荷重受け面よりも外側方に位置する外周縁部
の表面に、面方向と交差する
面直方向に突出して前記クッション材を係止する凸部が
、前記張材の前記基板の裏面側からの引き込み方向に沿って複数設けられていることを特徴とするものである。
この発明の場合、クッション材が
基板の外周縁部
の表面に設けられた
複数の凸部によって係止され、
基板の外周縁部でのクッション材の引き込み方向に沿った滑りが規制される。これにより、
基板の外周縁部に対するクッション材の滑りが契機となり、張材がクッション材の弾性反力を受けて
基板に対して位置ずれするのを抑制される。
【0009】
また、この場合、クッション材が、張材の引き込み方向に沿う複数個所で
基板上の凸部によって係止されるため、
基板の裏面側から引き込み力を受ける張材の位置ずれをより有利に抑制することが可能になる。
【0010】
前記クッション材は、前記
基板よりも大きな外形寸法に形成されるとともに、外周縁部が前記
基板の外周縁部の裏側に折り返され、前記凸部は、前記
基板の外周縁部の表面から裏面側に回り込む範囲に、前記張材の前記
基板の裏面側からの引き込み方向に沿って複数設けられるようにしても良い。
これにより、クッション材が
基板の外周縁部を表面側から裏面側にかかる範囲を包み込み、その範囲で複数の凸部によってクッション材の引き込み方向に沿った方向の位置ずれを規制される。また、
基板の外周縁部の表面から裏面側にかかる範囲でクッション材が張材に内側から支持反力を付与し、張材の位置ずれをより強力に規制するようになる。
【0011】
さらに、前記
基板の外周縁部に、裏面側に向かって膨出する外縁膨出部が設けられるとともに、当該外縁膨出部に前記凸部が設けられ、前記
基板の裏面側における前記外縁膨出部よりも内側領域に、前記張材の周縁部を支持する張材支持部が設けられるようにしても良い。
この場合、クッション材が
基板の外周縁部を表面側から裏面側の外縁膨出部にかかる範囲を包み込み、外縁膨出部に設けられた凸部によってクッション材の引き込み方向に沿った方向の位置ずれを規制される。また、
基板の裏面側に折り返された張材の周縁部は、外縁膨出部の内側の張材支持部によって内側に引き込まれるため、
基板の外周縁部を包み込むクッション材部分が
基板の外側端面に強く押し付けられ、クッション材や張材の引き込み方向に沿う方向の位置ずれがより確実に防止される。
【0012】
また、前記張材支持部は、前記外縁膨出部よりも前記
基板の裏面側に突出していることが望ましい。
この場合、張材の周縁部を
基板の裏側で内側に引き込む張材支持部が、
基板の外縁膨出部よりも裏面側に突出しているため、張材の周縁部が外縁膨出部の裏側に押し込まれなくなり、クッション材も外縁膨出部で強く折り込まることがなくなる。このため、クッション材が外縁膨出部で強く押し潰されて、
基板の裏側に折り返された張材に外縁膨出部から離間する方向の大きな反力が作用するのを抑制され、
基板の外周縁部の表面側に対して張材が強く押し付けられるようになる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、
基板の外周縁部でのクッション材の引き込み方向に沿った滑りが、
基板の外周縁部
の表面に
面直方向に突出して設けられた
複数の凸部によって規制されるため、張材の周縁部を
基板の裏側に折り返し、その周縁部を
基板の内周側に引き込んで
基板に係止する構造を採用しつつも、クッション材の滑りを契機とした張材の位置ずれを未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明においては、椅子に正規姿勢で着座した人の正面が向く図中矢印FRの指す向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、「上」,「下」と「左」,「右」については、椅子に正規姿勢で着座した人の上方の図中矢印UPの指す向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子に正規姿勢で着座した人の左側の図中矢印LHの指す向きを「左」、それと逆側の向きを「右」と呼ぶものとする。
【0016】
図1,
図2は、この実施形態の椅子1の全体構成を示す側面図と背面図である。
これらの図に示すように、この実施形態の椅子1は、フロアF上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、着座者が着座する座体4と、支基3の上面に取り付けられ座体4を支持する座受部材5と、支基3から後部上方側に延出して座体4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ部6と、を備えている。
脚部2は、キャスタ7a付きの多岐脚7と、多岐脚7の中央部より起立し昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱8と、を備え、脚柱8の上端部に支基3が水平方向に回転可能に取り付けられている。支基3には、脚柱8の昇降調整機構と背凭れ部6の傾動調整機構が内蔵されている。背凭れ部6は、側面視略L字状の背凭れ支持フレーム9と、背凭れ支持フレーム9の後上部に取り付けられ座体4に着座した着座者の背部を直接支持する背凭れ本体10と、を備え、背凭れ支持フレーム9の前部下端が支基3内の傾動調整機構に連結されている。
【0017】
背凭れ部6の背凭れ本体10は、骨格部を成す背板11(
基板,基体)と、背板11の前面から裏面側(後面側)の外周縁部にかかる範囲に配置されるウレタン等から成るクッション材12(
図5参照)と、クッション材12の外側面と背板11の外周縁部と裏面(後面)の一部にかかる部分を被覆するシート状の張材13と、背板11の裏面側(後面側)を覆うカバー部材14と、を備えている。この実施形態の場合、クッション材12は、張材13の裏面に熱溶着によって一体に接合されている。
また、この実施形態においては、背凭れ部6の背凭れ本体10が荷重支持体を構成している。
【0018】
図3は、背板11を裏面側から見た図であり、
図4は、カバー部材14を取り去った背凭れ本体10を裏面側から見た図、
図5は、
図4のV−V断面に対応する断面図である。
背板11は、弾性を有する合成樹脂によって形成されている。背板11は、正面視では四隅が丸みを帯びた縦長の略長方形状に形成され、その前面側で着座者の腰部から背部に亘る部位を支持し得るようになっている。背板11は、高さ方向の下から3分の1程度の高さ位置で着座者の腰部付近を支持し、それよりも上方側の領域で着座者の背部付近を支持する。なお、以下では、背板11のうちの着座者の腰部付近を支持する領域を「腰部支持領域11a」と呼び、それよりも上方側で着座者の背部付近を支持する領域を「背部支持領域11b」と呼ぶものとする。
【0019】
背板11は、側面視で腰部支持領域11aが前方側に凸状に湾曲し、その部分が着座する着座者の腰部に最初に接触する膨出領域を構成している。また、背板11の前面は、上下方向のほぼ全域の水平断面が後方側に凹状に湾曲する形状とされている。この背板11の前面の凹形状は上下方向で窪み深さが変化しており、腰部支持領域11aの上下方向の中間部付近が最も大きく窪んでいる。また、背板11の外周縁部は裏面側に向かって湾曲し、特に、上方側の縁部11cは端末部が略水平姿勢に近づくように裏面側(後方側)に向かって大きく湾曲している。
なお、
図3,
図4中の符号90は、背板11の腰部支持領域11aの上下方向の略中央位置から背部支持領域11bに跨る領域に、背板11の柔軟な撓み変形を得るために形成されたスリットがある。
【0020】
さらに、背板11の裏面側には、背板11の外周形状に略沿うように係止溝15が環状に形成されている。この係止溝15は、背板11の裏面に突設された内側壁部15aと外側壁部15bによって形成されている。係止溝15は、背板11の外周端部から中央領域側に設定距離離間した位置に設けられている。係止溝15には、後に詳述するように背板11を被覆した張材13の周縁部13aが挿入されて係止される。
【0021】
また、背板11の裏面のうちの、背板11の左右の側辺と、その側辺に対向する外側壁部15bの間の領域には、背板幅方向に延出して背板11の側辺と外側壁部15bを連結する複数の補強リブ17が設けられている。なお、背板11の水平断面は、腰部支持領域11aが最も大きく凹状に窪んでいるため、この凹形状の窪み深さに応じて腰部支持領域11aに配置される補強リブ17の前後方向の突出高さが他の補強リブ17の突出高さよりも高くなっている。
【0022】
背板11の裏面側を覆うカバー部材14は、背板11の裏面側に凹凸嵌合等の適宜手段によって固定される。この実施形態の場合、座体4の後方側から上方に立ち上がる背凭れ支持フレーム9の延出部9aは、カバー部材14の前面側に締結固定されている。支持フレーム9の延出部9aの前方側は背板11によって覆われている。この実施形態では、カバー部材14は、背凭れ支持フレーム9とともに着座者からの入力荷重を支える強度部材として機能するため、剛性の高い合成樹脂によって形成されている。
なお、カバー部材14は必ずしも強度部材でなくても良く、その場合には、背板11を直接背凭れ支持フレーム9に連結すれば良い。
【0023】
ここで、背板11の前面と外周縁部を覆う張材13は、その周縁部13aが背板11の外周縁部で裏面側に折り返され、その状態で周縁部13aが背板11の裏面に係止固定されている。
張材13は、背板11よりも一回り大きく裁断され、背板11の裏面側に折り返される周縁部13aの複数箇所には、樹脂製の縁材20が取り付けられている。縁材20は、
図5に示すように断面略L字状の板状に形成されている。縁材20は、係止溝15内に挿入される挿入片20aと、挿入片20aの基端から略L字状に屈曲して延出する外側係止片20bと、を有し、張材13の周縁部13aは、挿入片20aと外側係止片20bの連接部の近傍の外側面側に接合されている。この実施形態の場合、張材13の周縁部13aの裏面にはクッション材12が薄く被着され、その肉薄のクッション材12部分に縁材20が接合されている。なお、張材13と縁材20の接合態様は、この実施形態の態様に限らず、張材13の裏面に縁材20を直接接合するようにしても良い。
【0024】
縁材20の挿入片20aには、肉厚方向に貫通する嵌合孔21が形成され、係止溝15の内側壁部15aの内面の開口端の近傍部分には、嵌合孔21に嵌入可能な断面略直角三角形状の突起部22が形成されている。この突起部22の係止溝15の底部側の辺は、内側壁部15aの内面に対して略直角を成す方向に延出している。また、縁材20の外側係止片20bは、基端側の外側面のみが張材13に接合され、その基端部分よりも先端側が張材13から離反する方向に変位可能な係止突起23とされている。
【0025】
また、縁材20の挿入片20aと外側係止片20bの基端の内側コーナ部分は、係止溝15の外側壁部15bの突出端(係止溝15の外側寄りの端縁)に回動可能に当接する第1の当接部24とされている。なお、外側壁部15bの突出端は、縁材20の内側コーナ部分を回動可能に支持するために断面円弧状であることが望ましい。また、縁材20の挿入片20aの先端部は、縁材20が張材13の張力を受けて第1の当接部24を支点として回動したときに、係止溝15の内側壁部15aの内面に当接する第2の当接部25とされている。
【0026】
ここで、張材13の周縁部13aに取り付けられた各縁材20は、張材13の周縁部13aを背板11の裏面側に折り返して内側に引き込んだ状態において、挿入片20aが係止溝15内に挿入されて係止される。
係止溝15内の縁材20の挿入される箇所は、
図3,
図4に示すように、係止溝15の左右の側辺部のうちの、補強リブ17に隣接する各箇所と、係止溝15の上辺部及び下辺部の延出方向に離間した3箇所と、四隅の各角部に対応する箇所とされている。背板11の各補強リブ17の端面(背板11の裏面方向の面)上には、縁材20の係止突起23と嵌合可能な係止凹部26が形成されている。
図5に示すように、係止凹部26は、補強リブ17の端面のうちの係止溝15の外側壁部15bとの連接位置から、背板11の外周端部方向に向かって略三角形状に窪んで形成されている。
【0027】
係止溝15の左右の側辺部に係止される縁材20は、
図5中の仮想線で示すように、挿入片20aが係止溝15内に挿入された後に、張材13から張力を受けて第1の当接部24を支点として回動する。これにより、挿入片20aの嵌合孔21が係止溝15内の突起部22に嵌合されるとともに、外側係止片20bが補強リブ17上の係止凹部26に嵌合される。この結果、各縁材20は係止溝15からの抜けを規制されるとともに、背凭れ幅方向の位置ずれを規制される。
一方、係止溝15の上辺部及び下辺部と、四隅の角部に係止される縁材20は、挿入片20aが係止溝15内に挿入された後に、張材13からの張力を受けて第1の当接部24を支点として回動することにより、挿入片20aの嵌合孔21が係止溝15内の突起部22に嵌合される。この結果、各縁材20は係止溝15からの抜けを規制される。
【0028】
また、
図5に示すように、背板11の外周縁部には裏面側に向かって膨出する外縁膨出部27が一体に形成されている。背板11の外周縁部は、前面から裏面側の外縁膨出部27にかかる部分が連続した湾曲面をなすように形成されている。なお、張材支持部である係止溝15の開口側の端縁は外縁膨出部27よりも背板11の裏面側に大きく突出している。また、背板11の左右の側辺部の裏面に形成された前述の補強リブ17は、その裏面側の端面が、係止溝15の外側壁部15bの突出端と外縁膨出部27の裏面側の頂部とを直線状に接続するように突出高さが変化している。
【0029】
図6は、背板11の外周縁部の断面を拡大して示す図であり、
図7は、背板11の前面側の外周縁部を示す斜視図である。
これらの図に示すように、背板11の外周縁部には、張材13の裏側のクッション材12を係止する微小な(1mm程度の)凸部28が複数形成されている。この実施形態の場合、凸部28は、先端部が若干丸みを帯びた略円錐状に形成され、背板11の面方向と略直交する方向に突出している。凸部28は、具体的には、背板11の外周縁部の前面側領域と外縁膨出部27の背板背面側に向く領域とに、張材13の巻き込み方向に沿って複数列千鳥状に形成されている。なお、この実施形態の場合、凸部28は、背板11の型成形を容易にする観点から、背板11の外周縁部のうちの前面から裏面側に向かう湾曲部分の頂部付近には形成されていないが、凸部28はこの頂部付近にも形成するようにしても良い。
【0030】
ところで、この実施形態では、クッション材12の外形は背板11の外形よりも大きく形成され、張材13の外形とほぼ同寸法に形成されている。ただし、張材13の裏面に接合されるクッション材12は全域で均一厚みでなく、張材13の周縁部13aの端末付近に接合される領域だけは前述のように薄肉に形成されている。背板11の外周縁部に形成された凸部28は、張材13が背板11の前面側に被着され、その周縁部13aが背板11の裏面側に引き込まれて背板11の裏面に係止されたときに、張材13によって押し潰されたクッション材12の厚肉部分に喰い込み、クッション材12の裏面を係止する。
【0031】
実際に、張材13をクッション材12とともに背板11に取り付ける場合には、張材13をクッション材12ととも背板11の前面側に被せ、その状態で張材13とクッション材12の周縁部を背板11の外周縁部の裏側に折り返し、張材13の周縁部13aの端末を内側に引き込んで各縁材20を係止溝15の対応個所に係止固定する。こうして、張材13の周縁部13aが内側に引き込まれて背板11の裏面に係止されると、張材13が背板11の外周縁部に押し付けられて、クッション材12の対応個所を押し潰す。このとき、背板11の外周縁部の複数の凸部28は、クッション材12に喰い込んで、クッション材12の滑りを規制する。
【0032】
以上のように、この実施形態に係る椅子1は、背板11の外周縁部に、背板11の面方向と交差する方向に突出してクッション材12の裏面を係止する凸部28が設けられているため、背板11の外周縁部でのクッション材12の引き込み方向に沿う方向の滑りを凸部28によって規制し、クッション材12の僅かな滑りを契機とした張材13の位置ずれを未然に防止することができる。
【0033】
特に、この実施形態の椅子1においては、背板11の外周縁部に、張材13の引き込み方向に沿って凸部28が複数設けられているため、背板11の裏面側から引き込み力を受ける張材13の位置ずれをより有利に抑制することができる。
【0034】
さらに、この実施形態の椅子1は、クッション材12が背板11よりも大きな外形寸法に形成され、その外周縁部が背板11の外周縁部を巻き込んで裏側に折り返されるとともに、背板11の外周縁部の表面側から裏面側に回り込む範囲に複数の凸部28が設けられているため、クッション材12の回り込み方向に沿った滑りを広い範囲で有利に規制することができる。また、背板11の外周縁部の前面側から裏面側にかかる範囲でクッション材12が張材13に内側から支持反力を付与することになるため、張材13の位置ずれをより強力に規制することができる。
【0035】
また、この実施形態の椅子1の場合、背板11の外周縁部に、裏面側に向かって膨出する外縁膨出部27が設けられ、その外縁膨出部27に凸部28が設けられるとともに、背板11の裏面側における外縁膨出部27よりも内側領域に張材13の周縁部の端末を係止する係止溝15が設けられているため、クッション材12が背板11の外周縁部の表面から裏面側の外縁膨出部27にかかる広い範囲を大きく包み込み、その状態で外縁膨出部27の凸部28によってクッション材12の滑りを効率良く規制することができる。そして、この椅子1の場合、外縁膨出部27の内側の係止溝15部分で張材13の端末部を内側に引き込む構造とされているため、背板11の外周縁部を包み込むクッション材12を背板11の外側端面に強く付けることができる。このため、クッション材12や張材13の引き込み方向に沿う方向の位置ずれをより確実に規制することができる。
【0036】
特に、この実施形態においては、張材支持部である係止溝15の突出端が外縁膨出部27よりも背板11の裏面側に大きく突出しているため、張材13の周縁部が外縁膨出部27の裏側(径方向内側の裏面側)に押し込まれることがなく、クッション材12も外縁膨出部27で強く折り込まれることがなくなる。したがって、クッション材12が外縁膨出部27で強く押し潰されて、背板11の裏側に折り返された張材13に外縁膨出部27から離間する方向の大きな反力が作用するのを抑制され、張材13が背板11の外周縁部の前面側に強く押し付けられることになる。このため、背板11の前面側での張材13の張力を充分に高く維持することができるとともに、張材13の位置ずれもより確実に防止することができる。
【0037】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、背板11の外周縁部の前面側領域と外縁膨出部27の背板背面側に向く領域とに略円筒状の凸部28が形成されているが、
図8に示す実施形態のように、背板11の外周縁部の前面側領域と外縁膨出部27の背板背面側とに形成する各凸部28Aを、背凭れ幅方向外側に向く面が成形時の型抜き方向(図中上下方向)に沿うような略三角形状に形成するようにしても良い。この実施形態の場合、背板11の前面中央側から張材13が荷重を受けて引っ張られたときに、凸部28Aの先端部がクッション材12に引っ掛かり易くなり、特に、外縁膨出部27の背板背面側に突設される凸部28Aが上記のように形成されると、外縁膨出部27の外表面に対して凸部28Aの先端がクッション材12のずれを規制する方向に傾斜することになるために、凸部28Aの先端部がクッション材12により引っ掛かり易くなる。したがって、クッション材12や張材13の引き込み方向に沿う方向の位置ずれを規制する上でより有利となる。また、背板11の外周縁部のうちの前面から裏面側に向かう湾曲部分の頂部付近には、型割り位置であれば凸部を形成することも可能である。
【0038】
また、上記の実施形態においては、背板11の外周縁部に設ける凸部28が略円錐形状のものであるが、
図9に示す実施形態のように、背板11の外周方向に略沿って延出する突条128によって凸部を構成するようにしても良い。
また、上記の実施形態は、背凭れ部の背凭れ本体が荷重支持体である実施形態であるが、荷重支持体は座体であっても
良い。