(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パターン状の導電膜を有するシート状の第1電極体と、パターン状の導電膜を備えるシート状の第2電極体と、前記第1電極体及び前記第2電極体の間に配置された易変形層とを具備する静電容量式3次元センサであって、
前記易変形層は、発泡ポリマー中に弾性粒子が分散している層である、静電容量式3次元センサ。
前記第1電極体は、Z方向の位置を検出するシート状のZ方向位置検出用電極体であり、該Z方向位置検出用電極体は、Z方向電極用基材シートと該Z方向電極用基材シートの一方の面に設けられたパターン状の導電膜とを有する電極シートであり、
前記第2電極体は、XY方向の位置を検出するシート状のXY方向位置検出用電極体であり、該XY方向位置検出用電極体は、X方向用電極シート及びY方向用電極シートを備え、X方向用電極シートは、X方向電極用基材シートと該X方向電極用基材シートの一方の面に設けられたパターン状の導電膜とを有し、Y方向用電極シートは、Y方向電極用基材シートと該Y方向電極用基材シートの一方の面に設けられたパターン状の導電膜とを有し、X方向用電極シートの導電膜のパターンが、X方向に沿って形成されたX方向電極部を複数有するパターンであり、Y方向用電極シートの導電膜のパターンが、Y方向に沿って形成されたY方向電極部を複数有するパターンである、請求項1に記載の静電容量式3次元センサ。
前記第1電極体作製工程では、Z方向電極用基材シートの一方の面に、X方向又はY方向に沿って形成された電極部を複数有するパターン状の導電膜を形成して、Z方向の位置を検出するためのシート状のZ方向位置検出用電極体を作製し、
前記第2電極体作製工程では、X方向電極用基材シートの一方の面に、X方向に沿って形成されたX方向電極部を複数有するパターン状の導電膜を形成してX方向用電極シートを作製するX方向用電極シート作製工程と、Y方向電極用基材シートの一方の面に、Y方向に沿って形成されたY方向電極部を複数有するパターン状の導電膜を形成してY方向用電極シートを作製するY方向用電極シート作製工程と、前記X方向用電極シートと前記Y方向用電極シートとを貼合して、XY方向の位置を検出するためのシート状のXY方向位置検出用電極体を形成するXY方向位置検出用電極体形成工程とを有する、請求項4に記載の静電容量式3次元センサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の静電容量式3次元センサ(以下、「3次元センサ」と略す。)の一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の3次元センサを示す。本実施形態の3次元センサ1は、支持板10とZ方向位置検出用電極体20と易変形層30とXY方向位置検出用電極体40と保護層50とを備える。
さらに、本実施形態の3次元センサ1では、XY方向位置検出用電極体40がX方向用電極シート40a及びY方向用電極シート40bを有し、X方向用電極シート40aとY方向用電極シート40bとが接着層40cによって貼り合わされている。
【0010】
本実施形態の3次元センサ1では、指又はスタイラスペンを接触させる入力領域が矩形状にされている。本明細書では、入力領域の短手方向をX方向、入力領域の長手方向をY方向、X方向及びY方向に対して垂直な方向をZ方向とする。
また、本発明の3次元センサにおいては、保護層50に指又はスタイラスペンが接触し、保護層50側を「表側」又は「前面側」という。また、支持板10側を「裏側」又は「裏面側」という。
【0011】
(支持板)
支持板10は、両面粘着テープ11を介してZ方向位置検出用電極体20が貼合され、Z方向位置検出用電極体20の撓みを防ぐ板である。具体的に、支持板10は、厚さ(平均値)が100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは500μm以上の板である。支持板10の材質に特に制限はなく、例えば、金属、樹脂、セラミックス、ガラスのいずれであってもよい。
【0012】
(Z方向位置検出用電極体)
Z方向位置検出用電極体20は、Z方向の位置を検出する際に使用される電極体であって、支持板10の表側の面10aに設けられている。
本実施形態におけるZ方向位置検出用電極体20は、Z方向電極用基材シート21と、Z方向電極用基材シート21の表側の面21a(第1面21a)に形成されたパターン状の導電膜22と、Z方向電極用基材シート21及び導電膜22を被覆する絶縁膜23とを有する電極シートである。
本発明において、「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味し、「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上のことである。
【0013】
Z方向電極用基材シート21としては、プラスチックフィルム、ガラス板を使用することができる。
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、トリアセチルセルロース、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂等を使用することができる。これらの中でも、耐熱性及び寸法安定性が高く、低コストであることから、ポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートが好ましい。
Z方向電極用基材シート21の厚さ(平均値)は25〜75μmであることが好ましい。Z方向電極用基材シート21の厚さが前記下限値以上であれば、加工時に折れにくく、前記上限値以下であれば、3次元センサ1を容易に薄型化できる。
【0014】
導電膜22は、導電性ペーストにより形成された膜、導電性高分子を含む膜、金属ナノワイヤーを含む膜、カーボンを含む膜、金属蒸着法によって形成された金属蒸着膜等が挙げられる。
導電性ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、金ペースト等が挙げられる。
導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等が挙げられる。
金属ナノワイヤーとしては、銀ナノワイヤー、金ナノワイヤー等が挙げられる。
カーボンとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
金属蒸着膜を形成する金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、金等を使用することができる。これらの中でも、電気抵抗が低く、低コストであることから、銅が好ましい。
金属蒸着法では、薄い金属膜を容易に形成できる。金属蒸着法としては特に制限されず、例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、などが挙げられる。これらの中でも、成膜スピードが速く、低コストであることから、真空蒸着法が好ましい。
【0015】
導電膜22の表面には、プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、エキシマ光処理等の各種表面処理が施されてもよい。導電膜22に表面処理が施されていると、絶縁膜23との密着性が向上し、接触抵抗が低くなる。
【0016】
導電膜22の厚さ(平均値)は、導電性ペーストにより形成された膜の場合には、1〜25μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。
導電膜22の厚さ(平均値)は、導電性高分子を含む膜の場合には、0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.1〜2.0μmであることがより好ましい。
導電膜22の厚さ(平均値)は、金属ナノワイヤーを含む膜の場合には、20〜1000nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましい。
導電膜22の厚さ(平均値)は、カーボンを含む膜の場合には、0.01〜25μmであることが好ましく、0.1〜15μmであることがより好ましい。
導電膜22の厚さ(平均値)は、金属蒸着膜の場合には、0.01〜1.0μmであることが好ましく、0.05〜0.3μmであることがより好ましい。
導電膜22の厚さ(平均値)が前記下限値未満であると、ピンホールが形成して断線するおそれがあり、前記上限値を超えると、薄型化が困難になる。
【0017】
本実施形態における導電膜22のパターンは、
図2に示すように、Y方向に沿って形成された幅一定の帯状のY方向電極部22aを複数有するパターンである。
Y方向電極部22aの幅は0.05〜2mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることがより好ましい。Y方向電極部22aの幅が前記下限値以上であれば、断線を防止でき、前記上限値以下であれば、位置検出精度を向上させることができる。
隣接するY方向電極部22a,22a同士の間隔(ピッチ)は1〜5mmであることが好ましく、1.5〜3mmであることがより好ましい。隣接するY方向電極部22a,22a同士の間隔が、前記上限値以下であれば、3次元センサ1の位置検出精度を向上させることができる。しかし、隣接するY方向電極部22a,22a同士の間隔を前記下限値未満にすることは困難である。
【0018】
絶縁膜23は絶縁性樹脂の膜である。絶縁膜23によって易変形層30との密着性を向上させることができ、また、導電膜22の劣化(酸化、腐食)を防止することができる。
絶縁性樹脂としては、熱硬化型樹脂、可視光線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂が使用されるが、硬化時の熱収縮が小さい点では、紫外線硬化型樹脂が好ましい。
絶縁膜23は絶縁性を確保できる範囲で薄いことが好ましい。絶縁膜23の形成にスクリーン印刷を適用した場合には、ピンホール形成防止の点から、厚さ(平均値)を5μm以上とすることが好ましい。絶縁膜23の形成にインクジェット印刷を適用した場合には、ピンホール形成防止の点から、厚さ(平均値)を0.5μm以上とすることが好ましい。
【0019】
また、Z方向位置検出用電極体20は、引き回し配線24aと、外部接続用端子24bとを有する(
図2参照)。
引き回し配線24aは、Y方向電極部22aと外部接続用端子24bとを接続するための配線である。
引き回し配線24aの幅は20〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。引き回し配線24aの幅が前記下限値以上であれば、引き回し配線24aの断線を防止でき、前記上限値以下であれば、引き回し配線24aに使用する材料を削減できるため、低コスト化できる。
隣接する引き回し配線24a,24a同士の間隔は20〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。隣接する引き回し配線24a,24a同士の間隔が、前記上限値以下であれば、3次元センサ1を容易に小型化できる。しかし、隣接する引き回し配線24a,24a同士の間隔を前記下限値未満にすることは困難である。
外部接続用端子24bは、外部の回路に接続するための端子であり、導電材料からなる。本実施形態における外部接続用端子24bは、矩形状の導電部となっている。
【0020】
(易変形層)
易変形層30は、発泡ポリマー31中に弾性粒子32が分散している層である。また、易変形層30は厚さが一定になるように形成され、ドットスペーサ等の凸部を有さない。
発泡ポリマー31は、厚さ方向に押された際に圧縮変形する程度に発泡したポリマーである。発泡ポリマー31は基体樹脂が発泡したものであり、基体樹脂としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
発泡ポリマー31の発泡倍率は特に制限されないが、1〜30倍であることが好ましい。発泡ポリマー31の発泡倍率が前記下限値以上であれば、易変形層30を容易に圧縮変形でき、前記上限値以下であれば、易変形層30の復元性を充分に確保できる。
【0021】
弾性粒子32は、ゴム又は軟質樹脂の弾性体の粒子であり、易変形層30の形状復元性を向上させる機能を有する。
弾性粒子32を構成するゴムとしては、ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴム、アクリル系ゴム、クロロプレン系ゴム等が挙げられる。軟質樹脂としては、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。これらのなかでも、弾性粒子32は、入手が容易で且つ適度な弾性が得られることから、ポリウレタンの粒子が好ましい。
また、弾性粒子32は、弾性力の異なる複数の粒子からなってもよい。
弾性粒子32の体積平均粒子径は、10〜1000μmであることが好ましい。ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折法によって測定された値である。また、弾性粒子32の粒子径分布は単一ピークの分布でもよいが、複数のピークを有する分布でもよい。複数のピークを有する分布であると、押圧時の弾性力と押圧解放後の復元性とを調整しやすくなる。
弾性粒子32の含有割合は、易変形層30を100質量%とした際に、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。弾性粒子32の含有割合が前記下限値以上であれば、易変形層30の復元性がより高くなり、前記上限値以下であれば、弾性粒子による圧縮変形の阻害が抑制される。
【0022】
易変形層30の厚さ(平均値)は、250μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。一方、接着力を確保する点では、接着層40cの厚さ(平均値)は1μm以上であることが好ましい。
【0023】
(XY方向位置検出用電極体)
XY方向位置検出用電極体40は、X方向及びY方向の位置を検出する際に使用される電極体であって、易変形層30よりも表側に設けられている。本実施形態で使用されるXY方向位置検出用電極体40は、一対の電極シート(X方向用電極シート40a、Y方向用電極シート40b)が積層された積層シートである。
【0024】
X方向用電極シート40aは、X方向電極用基材シート41と、X方向電極用基材シート41の表側の面41a(第1面41a)に形成されたパターン状の導電膜42と、導電膜42を被覆する絶縁膜43とを有する。
X方向電極用基材シート41としては、Z方向電極用基材シート21と同様のものを使用することができる。ただし、Z方向電極用基材シート21と同一のものとする必要はない。
導電膜42としては、導電膜22と同様のものを使用することができる。ただし、導電膜22と同一のものとする必要はない。
絶縁膜43としては、絶縁膜23と同様のものを使用することができる。ただし、絶縁膜23と同一のものとする必要はない。
【0025】
本実施形態における導電膜42のパターンは、
図3に示すように、X方向に沿って形成された帯状のX方向電極部42aを複数有するパターンである。
X方向電極部42aの幅は2〜7mmであることが好ましく、3〜5mmであることがより好ましい。X方向電極部42aの幅が前記下限値以上であれば、断線を防止でき、前記上限値以下であれば、位置検出精度を向上させることができる。
隣接するX方向電極部42a,42a同士の間隔は0.05〜2mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることがより好ましい。隣接するX方向電極部42a,42a同士の間隔が、前記上限値以下であれば、3次元センサ1を容易に小型化できる。しかし、隣接するX方向電極部42a,42a同士の間隔を前記下限値未満にすることは困難である。
【0026】
X方向用電極シート40aは、引き回し配線44aと、外部接続用端子44bとを有する(
図3参照)。引き回し配線44aは、X方向電極部42aと外部接続用端子44bとを接続するための配線である。引き回し配線44aの好ましい幅や間隔は、上記の引き回し配線24aと同様である。
引き回し配線44a及び外部接続用端子44bの形成方法としては、X方向電極用基材シート41の表側の面に導電性ペーストをスクリーン印刷した後、加熱して硬化させる方法が挙げられる。
【0027】
本実施形態におけるY方向用電極シート40bは、X方向用電極シート40aの表側の面40eに、接着層40cによって貼合されている。また、本実施形態におけるY方向用電極シート40bは、Y方向電極用基材シート45と、Y方向電極用基材シート45の表側の面45a(第1面45a)に形成されたパターン状の導電膜46と、導電膜46を被覆する絶縁膜47とを有する。
Y方向電極用基材シート45としては、Z方向電極用基材シート21と同様のものを使用することができる。ただし、Z方向電極用基材シート21と同一のものとする必要はない。
導電膜46としては、導電膜22と同様のものを使用することができる。ただし、導電膜22と同一のものとする必要はない。
絶縁膜47としては、絶縁膜23と同様のものを使用することができる。ただし、絶縁膜23と同一のものとする必要はない。
【0028】
本実施形態における導電膜46のパターンは、導電膜22のパターンと同様に、
図4に示すように、Y方向に沿って形成された帯状のY方向電極部46aを複数有するパターンである。
導電膜46のパターンは、導電膜22のパターンと同一である必要はなく、例えば、幅が異なってもよい。導電膜46のパターンが導電膜22のパターンと同一でない場合、導電膜46の幅は0.05〜2.0mmの範囲内であることが好ましく、0.05〜1.0mmであることがより好ましい。
【0029】
Y方向用電極シート40bは、引き回し配線48aと、外部接続用端子48bとを有する(
図4参照)。引き回し配線48aは、Y方向電極部46aと外部接続用端子48bとを接続するための配線である。引き回し配線48aの好ましい幅や間隔は、上記の引き回し配線24aと同様である。
引き回し配線48a及び外部接続用端子48bの形成方法としては、Y方向電極用基材シート45の表側の面に導電性ペーストをスクリーン印刷した後、加熱して硬化させる方法が挙げられる。
なお、外部接続用端子24b,44b,48bは、互いに重ならないように配置されている。
【0030】
本実施形態における接着層40cは接着剤から構成されてもよいし、両面粘着テープでもよい。
接着剤としては、ホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤等の各種接着剤が使用される。
ホットメルト接着剤としては、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリウレタン系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。これらのうち、低温での接着が可能で、しかも接着力に優れることから、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリウレタン系ホットメルト接着剤が好ましく、ポリエステル系ホットメルト接着剤がより好ましい。
熱硬化性接着剤としては、エポキシ系熱硬化性接着剤、アクリル系熱硬化性接着剤、シリコーン系熱硬化性接着剤等が挙げられる。
光硬化性接着剤としては、アクリル系光硬化性接着剤、エポキシ系光硬化性接着剤等が挙げられる。
【0031】
接着層40cの厚さ(平均値)は、X方向位置検出及びY方向位置検出の感度及び検出精度が高くなることから、25μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。一方、接着力を確保する点では、接着層40cの厚さ(平均値)は1μm以上であることが好ましい。
【0032】
(保護層)
保護層50は、XY方向位置検出用電極体40の表側の面40fに形成され、XY方向位置検出用電極体40を保護する層である。本実施形態では、保護層50は、両面粘着テープ51によって、XY方向位置検出用電極体40に貼合されている。
保護層50は絶縁性樹脂や絶縁性弾性ガラスからなる。絶縁性樹脂としては、絶縁性の熱可塑性樹脂、絶縁性の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂が使用される。保護層50は、必要に応じて加飾されても構わない。
保護層50の厚さ(平均値)は25〜1000μmであることが好ましい。保護層50の厚さ(平均値)が前記下限値以上であれば、XY方向位置検出用電極体40を充分に保護でき、前記上限値以下であれば、押圧時に容易に撓ませることができる。
【0033】
(製造方法)
上記3次元センサ1の製造方法としては、Z方向位置検出用電極体作製工程(第1電極体作製工程)とXY方向位置検出用電極体作製工程(第2電極体作製工程)と発泡性樹脂層形成工程と易変形層形成接合工程と保護層貼合工程と支持板貼合工程とを有する方法が挙げられる。
【0034】
[Z方向位置検出用電極体作製工程]
本実施形態におけるZ方向位置検出用電極体作製工程は、Z方向電極用基材シート21の第1面21aにY方向電極部22aと引き回し配線24aと外部接続用端子24bとを形成し、これらの上に絶縁膜23を形成して、Z方向位置検出用電極体20を得る工程である。
Y方向電極部22a(パターン状の導電膜22)の形成方法としては、Z方向電極用基材シート21の表側の面21a(第1面21a)の少なくとも一部に、パターンのない導電膜を形成した後、その導電膜を所定のパターンとなるようにエッチングする方法が挙げられる。
エッチング方法としては、ケミカルエッチング法(ウェットエッチング法)やレーザーエッチング、アルゴンプラズマや酸素プラズマを利用したプラズマエッチング、イオンビームエッチング等のドライエッチング法が適用できる。これらの中でも、Y方向電極部22aを微細に形成できる点からレーザーエッチングが好ましい。
引き回し配線24a及び外部接続用端子24bの形成方法としては、Z方向電極用基材シート21の第1面21aに導電性ペーストをスクリーン印刷した後、加熱して硬化させる方法が挙げられる。
絶縁膜23の形成方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の各種印刷方法を適用することができる。
絶縁膜23を形成した後には、Z方向位置検出用電極体20を所定の形状にするために周縁をトリミングしてもよい。
【0035】
[XY方向位置検出用電極体作製工程]
XY方向位置検出用電極体作製工程は、X方向用電極シート作製工程とY方向用電極シート作製工程とXY方向位置検出用電極体形成工程とを有する。
本実施形態におけるX方向用電極シート作製工程では、X方向電極用基材シート41の第1面41aにX方向電極部42aと引き回し配線44aと外部接続用端子44bとを形成し、これらの上に絶縁膜43を形成することにより、X方向用電極シート40aを得る。
本実施形態におけるY方向用電極シート作製工程では、Y方向電極用基材シート45の第1面45aにY方向電極部46aと引き回し配線48aと外部接続用端子48bとを形成し、これらの上に絶縁膜47を形成することにより、Y方向用電極シート40bを得る。
X方向電極部42a及びY方向電極部46aの形成方法は、Z方向位置検出用電極体20のY方向電極部22aの形成方法と同様である。
引き回し配線44a,48a及び外部接続用端子44b,48bの形成方法は、Z方向位置検出用電極体20の引き回し配線24a及び外部接続用端子24bの形成方法と同様である。
絶縁膜43,47を形成した後には、X方向用電極シート40a及びY方向用電極シート40bを所定の形状にするために周縁をトリミングしてもよい。
本実施形態におけるXY方向位置検出用電極体形成工程では、X方向用電極シート40aとY方向用電極シート40bとを接着層40cによって貼合する。本実施形態では、具体的には、X方向用電極シート40aの絶縁膜43とY方向用電極シート40bのY方向電極用基材シート45とを接着層40cによって貼合する。
例えば、接着剤がホットメルト接着剤である場合には、X方向用電極シート40aの絶縁膜43の露出面に、接着剤を含む接着剤含有液を印刷又は塗工し、乾燥させて接着層40cを形成する。次いで、接着層40cにY方向用電極シート40bのY方向電極用基材シート45を重ねて接着する。接着の際には、X方向用電極シート40aと接着層40cとY方向用電極シート40bとを加熱圧着する。
また、予め、ホットメルト接着剤のフィルムを作製しておき、そのホットメルト接着剤フィルムを、X方向用電極シート40aとY方向用電極シート40bとの間に挟み、加熱圧着してもよい。
接着剤が熱硬化性接着剤である場合には、X方向用電極シート40aの絶縁膜43の露出面に、接着剤を含む接着剤含有液を印刷又は塗工し、必要に応じて乾燥させて未硬化接着剤層を形成する。次いで、未硬化接着剤層にY方向用電極シート40bのY方向電極用基材シート45を重ねる。次いで、X方向用電極シート40aと接着層40cとY方向用電極シート40bとを加熱し、接着剤を硬化させ、接着層40cを形成させて接着する。
接着剤が光硬化性接着剤である場合には、X方向用電極シート40aの絶縁膜43の露出面に、接着剤を含む接着剤含有液を印刷又は塗工し、必要に応じて乾燥させて未硬化接着剤層を形成する。次いで、未硬化接着剤層にY方向用電極シート40bのY方向電極用基材シート45を重ねる。次いで、X方向用電極シート40a又はY方向用電極シート40bを通して未硬化接着剤層に紫外線又は電子線を照射し、接着剤を硬化させ、接着層40cを形成させて接着する。
【0036】
[発泡性樹脂層形成工程]
本実施形態における発泡性樹脂層形成工程は、Z方向位置検出用電極体20の一方の面に発泡性インクを印刷又は塗工して発泡性樹脂層を形成する工程である。具体的に、発泡性樹脂層形成工程は、Z方向位置検出用電極体20の絶縁膜23の露出面に発泡性インクを印刷又は塗工して発泡性樹脂層を形成する工程である。
【0037】
発泡性インクは、基体樹脂と発泡剤と弾性粒子と分散媒とを含有する液である。基体樹脂及び弾性粒子は上述したものである。
発泡剤としては、発泡剤は、物理発泡剤でもよいし、化学発泡剤でもよい。
物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタンなどの環式脂肪族炭化水素;メチルクロライド、メチレンクロライド、ジクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、モノクロロペンタフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,2−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。また、物理発泡剤として、二酸化炭素、窒素、水も使用できる。
化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどが挙げられる。
上記の発泡剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
分散媒としては、水、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等を使用でき、2種以上を併用してもよい。
【0039】
発泡性インクの印刷方法としては、スクリーン印刷法、メタルマスク印刷法、パッド印刷法等を適用することができる。
発泡性インクの塗工方法としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、バーコート法、ブレードコート法等、各種塗工方法を適用することができる。
発泡性インクの印刷後又は塗工後には、発泡性インクを乾燥してもよい。ただし、発泡性樹脂層形成工程では、分散媒の5質量%以上が残るように乾燥することが好ましい。分散媒の5質量%以上が残っていると、易変形層形成接合工程において、発泡性樹脂層に対するXY方向位置検出用電極体の密着性を向上させることができる。
【0040】
[易変形層形成接合工程]
本実施形態における易変形層形成接合工程は、前記発泡性樹脂層にXY方向位置検出用電極体40を積層した後、この積層により得た、Z方向位置検出用電極体20と発泡性樹脂層とXY方向位置検出用電極体40との積層体を加熱する工程である。この工程により、発泡性樹脂層を発泡させて易変形層30を形成すると共に易変形層30をZ方向位置検出用電極体20及びXY方向位置検出用電極体40に接合して、Z方向位置検出用電極体20と易変形層30とXY方向位置検出用電極体40との積層体を得る(
図5参照)。
易変形層形成接合工程では、目的とする3次元センサ1の作製が容易になることから、発泡成形用型を用いることが好ましい。
図5に示すように、発泡成形用型Mを用いる場合には、Z方向位置検出用電極体20と発泡性樹脂層30aとXY方向位置検出用電極体40との積層体を発泡成形用型内に配置し、発泡成形用型Mを加熱して発泡性樹脂層30aを発泡させて易変形層30を形成すると同時に、発泡成形用型M内で、易変形層30をZ方向位置検出用電極体20及びXY方向位置検出用電極体40に接合する。
発泡成形用型MのキャビティCは、発泡による体積増加を加味した形状とすることが好ましい。すなわち、Z方向位置検出用電極体20と発泡性樹脂層30aとXY方向位置検出用電極体40との積層体をキャビティC内部に配置したときに、Z方向位置検出用電極体20又はXY方向位置検出用電極体とキャビティC内面との間に隙間が生じる大きさのキャビティCにすることが好ましい。その隙間は、易変形層30が目的の厚さとなるよう調整する。
発泡成形用型Mの加熱温度(すなわち、発泡性樹脂層30aの加熱温度)は、基体樹脂及び発泡剤の種類に応じて決められ、例えば、100〜200℃の範囲内とされる。
【0041】
[保護層貼合工程]
保護層貼合工程は、Z方向位置検出用電極体20と易変形層30とXY方向位置検出用電極体40との積層体に保護層50を貼合する工程である。
具体的に、保護層貼合工程では、Z方向位置検出用電極体20と易変形層30とXY方向位置検出用電極体40との積層体を構成するXY方向位置検出用電極体40の絶縁膜47に保護層50を、両面粘着テープ51を用いて貼合する。
【0042】
[支持板貼合工程]
支持板貼合工程は、Z方向位置検出用電極体20と易変形層30とXY方向位置検出用電極体40との積層体に支持板10を貼合する工程である。
具体的に、支持板貼合工程では、Z方向位置検出用電極体20と易変形層30とXY方向位置検出用電極体40との積層体を構成するZ方向位置検出用電極体20のZ方向電極用基材シート21に支持板10を、両面粘着テープ11を用いて貼合する。これにより、3次元センサ1を得る。
【0043】
(使用方法)
上記3次元センサ1を、ノート型パーソナルコンピュータの静電容量式タッチパッドとして用いた使用例について説明する。
パーソナルコンピュータの使用者は、モニタに表示されたポインタのX方向の位置及びY方向の位置を移動させるために、保護層50の表面に沿って指を動かす。その際、3次元センサ1では、XY方向位置検出用電極体40を利用し、入力領域における指のX方向の位置及びY方向の位置を検出する。具体的には、導電膜42,46を利用し、X方向における静電容量の変化、Y方向における静電容量の変化を検出することによって、X方向及びY方向の指の位置を求める。
また、使用者は、ポインタのX方向の位置及びY方向の位置を、目的の処理を実行するための選択領域に移動させた後、指で3次元センサ1の入力領域内を押圧して決定する。
このとき、XY方向位置検出用電極体40及び保護層50は撓み、その撓みによって易変形層30が圧縮変形する。そのため、Z方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40のX方向用電極シート40aとの距離が短くなる。その際の、導電膜22と導電膜42との間の静電容量の変化、すなわちZ方向の静電容量の変化を検出し、その静電容量の変化から押圧量を求める。そして、その押圧量に応じた処理を実行する。
【0044】
(作用効果)
上記実施形態の3次元センサ1を構成する易変形層30は、発泡ポリマー31中に弾性粒子32が分散した層であり、印刷又は塗工等の簡便な工程によって形成できる。また、易変形層30を形成すると同時に易変形層30が接着剤の役割を果たしてZ方向位置検出用電極体20とXY方向位置検出用電極体40とを接合できるため、3次元センサ1を製造する際の工程数を少なくできる。
また、発泡ポリマー31中に弾性粒子32が分散している易変形層30では、入力のために押圧されると、容易に圧縮変形する。また、押圧力が解放されると、弾性粒子32の弾性力によって、易変形層30は押圧前の形状に容易に復元する。
【0045】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態において、Z方向位置検出用電極体のZ方向電極用基材シートに発泡性インクを印刷又は塗工して易変形層を形成し、その易変形層にXY方向位置検出用電極体を接合してもよい。
また、Z方向位置検出用電極体及びXY方向位置検出用電極体においては絶縁膜を備えていなくても構わない。例えば、Z方向位置検出用電極体の絶縁膜を省き、Z方向位置検出用電極体の基材シート及び導電膜に易変形層を直接密着させてもよい。
また、X方向電極部及びY方向電極部は、幅が一定である必要はなく、例えば、幅が周期的に変化しても構わないし、幅が太い部分と、それよりも細い部分とが交互に配置されても構わない。
また、XY方向位置検出用電極体においては、X方向電極部を有するX方向用電極シートが保護層側に配置され、Y方向電極部を有するY方向用電極シートが易変形層側に配置されても構わない。その場合には、Y方向用電極シートのY方向電極用基材シートに易変形層が接する。
また、X方向用電極シート及びY方向用電極シートの両方を備えず、X方向用電極シート及びY方向用電極シートのいずれか一方のみとしてもよい。その場合、Z方向位置検出用電極体の導電膜と、X方向用電極シート又はY方向用電極シートの導電膜とが対向するように配置してもよい。さらに、Z方向位置検出用電極体の導電膜と、X方向用電極シート又はY方向用電極シートの導電膜とを対向させた場合には、絶縁膜を省いて、易変形層が絶縁膜を兼ねるようにしてもよい。
また、本発明においては、発泡ポリマー中に弾性粒子が分散した易変形層を形成した後に、第1電極体及び第2電極体を貼り合せても構わない。
また、本発明において、保護層及び支持板は任意の構成であり、3次元センサは、保護層及び支持板のいずれか一方が省略されたものでも構わない。