特許第6233978号(P6233978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233978
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】波長変換焼成体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/44 20060101AFI20171113BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C04B35/44
   C09K11/00 C
   C09K11/80CPP
   C09K11/78CPB
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-23992(P2015-23992)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-138034(P2016-138034A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-40688(P2014-40688)
(32)【優先日】2014年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-10967(P2015-10967)
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】入江 正樹
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−062459(JP,A)
【文献】 特開2011−256371(JP,A)
【文献】 特開2010−174211(JP,A)
【文献】 特開2010−070401(JP,A)
【文献】 特開2014−065800(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/133638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C09K 11/00−11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の主面が光の入射面であり、前記入射面と反対側の主面が光の出射面である板状体であり、
前記板状体は、賦活剤を含有する蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子からなる気孔率が1.0%以下の焼成体からなり、
少なくとも前記入射面及び前記出射面は、前記蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子が非加工で露出する焼成面で、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下であり、
前記焼成面の表面に露出する蛍光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記焼成面の表面に露出する透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下であり、
前記蛍光性材料が、一般式A12:Ce(AはY、Gd、Tb、Yb及びLuのうちから選ばれる少なくとも1種であり、BはAl、Ga及びScのうちから選ばれる少なくとも1種である。)で表される物質であり、前記透光性材料がAl又はAlにSc、Gaのうちから選ばれる1種が含有された物質であることを特徴とする波長変換焼成体。
【請求項2】
前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1は0.5μm以上5μm以下で、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2は1μm以上10μm以下であり、前記蛍光性材料粒子の占める割合が22容積%以上35容積%以下で、前記透光性材料粒子の占める割合が78容積%以上65容積%以下であることを特徴とする請求項1記載の波長変換焼成体。
【請求項3】
前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1が、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2の0.1倍以上0.78倍以下であることを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の波長変換焼成体。
【請求項4】
前記表面に露出する透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が、前記表面に露出する蛍光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1の1.2倍以上2.0倍以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の波長変換焼成体。
【請求項5】
賦活剤含有のYAG系蛍光性材料とAlとからなる第1の層と、
前記第1の層上に積層され、直径20μm以上300μm以下の粒子が全体粒子個数の90%以上を占めるAlからなる中間層と、
前記中間層上に積層され、前記第1の層の賦活剤の含有量の10%以下の賦活剤を含むYAG系材料とAlからなる第2の層とを有し、
前記各層内においてAl粒子同士は連結されると共に、各層界面においてもAl粒子同士が連結される連結構造を有しており、
かつ、前記第1の層、中間層及び第2の層はいずれも気孔率が1.0%以下の焼成体からなり、前記第1の層及び第2の層の表面は非加工で露出する焼成面で、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下であり、
前記表面に露出する前記YAG系蛍光性材料の粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記表面に露出するAlの粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下であり、
前記第1の層に含まれる賦活剤含有のYAG系蛍光性材料が、(Y1−sGds)(Al1−tGa12:Ce(0≦s≦0.33、0≦t≦0.2)であることを特徴とする波長変換焼成体。
【請求項6】
前記第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2の層におけるYAG系材料の粒子の20個平均直径d1は0.5μm以上5μm以下で、前記第1,2の層の各層における前記Alの粒子の20個平均直径d2は1μm以上10μm以下であり、
前記第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2の層におけるYAG材料の粒子の占める割合が、前記第1,2の層の各層において22容積%以上35容積%以下で、前記Alの粒子の占める割合が前記第1層及び前記第2層において各々78容積%以上65容積%以下であることを特徴とする請求項5記載の波長変換焼成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザダイオード(LD:Laser Diode)等の発光素子とともに使用される波長変換焼成体に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは、省電力、長寿命及び小サイズ等の観点から、携帯電話や各種表示装置等に適用されている。さらに、近年の発光効率の向上に伴い、照明用途でも注目され、急激に普及しつつある。
現在、白色LED照明は、青色LEDによる発光と、この青色光の入射光を受けて青色の補色である黄色に発光する蛍光体からの出射光との混合により、白色光を得る方法が主流となっている。このような蛍光体が用いられた波長変換部材は、従来は、樹脂中に蛍光体粉末が分散されたものが一般的であったが、近年、耐熱性の観点から、セラミックスとの複合体としたものが多用されている。
【0003】
しかしながら、均一な発光色が要求されるLED照明において、前記セラミックス複合体による波長変換部材は、色ムラを生じやすいという課題を有していた。
これに対しては、例えば、特許文献1には、部材表面に凹凸加工を施すことにより、波長変換した二次光を反射又は屈折して不規則方向に散乱させ、輝度ムラ及び色ムラを解消することができる波長変換焼結体が記載されている。
具体的には、無機物と蛍光体との焼結体をウェットエッチング処理することにより、蛍光体粒子が優先的に溶解され、表面に不規則な凹凸の形成と、蛍光体粒子を表面から離間した配置とすることにより、前記二次光の散乱性を高められることが記載されている。
【0004】
また、白色LED照明に用いられる従来の青色光を受けて黄色光を発光する蛍光体として、例えばCe(セリウム)を含有するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系の蛍光体が知られている。このようなYAG系蛍光体に青色光を照射すると、照射された青色光と、YAG系蛍光体が発する蛍光色が混色されることにより、白色光を得ることができる。
【0005】
特許文献2には、前記蛍光体を含む半導体チップについて提案されている。この特許文献2に開示される半導体チップは、例えばオプトエレクトロニクスデバイス上に搭載され使用される。具体的には、図4に示すように、オプトエレクトロニクスデバイス50は、ヒートシンクとしてのデバイスケーシング51上に半導体チップ52を配置しており、半導体チップ52からの熱をデバイスケーシング51から放出するようになっている。
【0006】
前記半導体チップ52は、図4に示すように、半導体ボディ56のビーム出射面54上に配置されたセラミック変換素子55を備えている。このセラミック変換素子55は、例えば、YAG:Ce系のガーネット蛍光体からなる活性層58と、その上方に配置された担体層57とによって構成されている。尚、図4中の矢印は、熱の排出方向を示している。
更に、前記活性層58及び前記担体層57について説明すると、前記活性層58は、賦活剤(例えばCe)がドープされた蛍光体材料(例えばYAG:Ce)からなり、所定の波長領域の光を他の波長領域の光に変換する機能を有する。また、前記担体層57は、賦活剤を含まない蛍光体材料(例えばYAG)から構成されている。
【0007】
更に、特許文献2では、前記セラミック変換素子55として、図5に示すように、活性層58から担体層57内に賦活剤(Ce)が拡散するのを抑制するために、前記活性層58と担体槽57との間に配置された抑制層59を備えるものが提案されている。この抑制層59は、例えば酸化アルミニウムから構成されている。
【0008】
上記したセラミック変換素子55の製造する場合には、活性層58と担体層57の各層となるグリーンシートをセラミック粉体、バインダ及び添加物により形成し、これらを積層した後、焼結することによって、相互に接続された前記セラミック変換素子を製造することができる。
また、抑制層59を備えるセラミック変換素子55の製造する場合にも同様に、活性層58と担体層57と抑制層59の各層となるグリーンシートをセラミック粉体、バインダ及び添加物により形成し、これらを積層した後、焼結することによって、相互に接続された前記セラミック変換素子を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−157637号公報
【特許文献2】特表2014−504807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されたエッチング処理により粗面化された波長変換焼結体は、蛍光体粒子と無機物のエッチングレイト差が存在するため、蛍光体粒子の溶解に伴い、主として前記無機物からなる表層が形成される。これにより、波長変換焼結体面内に蛍光体粒子濃度の不均一な分布ができ、前記表層から出射される光の色ムラの改善が十分なものとは言えなかった。
また、前記エッチング処理により、蛍光体粒子が浸食され、蛍光体粒子表層の結晶性が低下し、十分な発光効率が得られないという技術的課題があった。
更に、無機物の表面の凹凸の度合が激しいために機械的強度が低く、実装時や使用時にワレが発生しやすいといった技術的課題があった。
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、出射光の色ムラを抑制することができ、かつ優れた発光効率を有し、機械的強度の低下が抑制された波長変換焼成体を提供することを目的とするものである。
【0012】
また、抑制層を備える前記特許文献2に記載された、セラミック変換素子(波長変換焼成体)について、種々評価、研究したところ、以下の技術的課題があることが判明した。
まず、第1に、前記特許文献2に記載された、各層(活性層、抑制層、担体層)を積層し焼結することによって得られたセラミック変換素子における抑制層は充分に機能せず、活性層から担体層への賦活剤が拡散し、拡散低減が充分ではないという技術的課題があった。特に、担体層の中のCe濃度が、活性層の中のCe濃度の40wt%を超えた場合には、担体層も活性(蛍光)機能を有することとなり、担体層から出射する光において狙った色度を得ることが困難であった。
【0013】
第2に、前記活性層がYAG:Ceで構成され、抑制層がAlから構成されている場合には、前記活性層と抑制層との間の屈折率の差が大きくなるため、活性層と抑制層との間の界面において、半導体ボディからの入射光の反射量が多くなり、戻り光の増加による発光効率が低下するという技術的課題があることが判明した。
【0014】
第3に、活性層と担体層とがYAG材料のみで形成されるため低強度であり、しかも、活性層と担体層との間に介在する抑制層のAlの熱膨張係数差が異なるため、各界面での熱応力によって割れが発生しやすいという技術的課題があることが判明した。
【0015】
第4に、前記活性層がYAG材料のみから構成されているため、熱伝導性が低く、半導体ボディから発せられる熱が活性層内で籠もりやすく、発光効率が低下するという技術的課題があることが判明した。
尚、特許文献2には、担体層中に散乱剤としてAl粒子を混入する例も提案されているが、上記のいずれの課題も効果的に解決し得るものではなかった。
【0016】
本発明者らは、上記第1〜第4の技術的課題を解決するために、前記特許文献2に開示された、各層(活性層、抑制層、担体層)を積層し焼結することによって得られたセラミック変換素子(波長変換焼成体)についても鋭意研究した。
その結果、Alからなる中間層(抑制層)のAlの直径を特定範囲になすと共に、第1層(活性層)と第2層(担体層)をいずれも、YAG系蛍光性材料とAlからなる層とし、更に各層内及び各層界面においてAl粒子同士が連結される連結構造を形成することにより、上記第1〜第4の技術的課題を解決することができることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0017】
本発明は、賦活剤含有のYAG系蛍光性材料を含む第1の層と、YAG系材料を含む第2の層との間に中間層が配置されてなる波長変換焼成体において、前記中間層により前記第1の層から第2の層への賦活剤の拡散を抑制し、高い放熱性を有し、所望の色相の光を高い発光効率で出射することができ、且つ、剛性の高い波長変換焼成体を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明にかかる波長変換焼成体は、一の主面が光の入射面であり、前記入射面と反対側の主面が光の出射面である板状体であり、前記板状体は、賦活剤を含有する蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子からなる気孔率が1.0%以下の焼成体からなり、少なくとも前記入射面及び前記出射面は、前記蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子が非加工で露出する焼成面で、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下であり、前記焼成面の表面に露出する蛍光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記焼成面の表面に露出する透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下であり、前記蛍光性材料が、一般式A12:Ce(AはY、Gd、Tb、Yb及びLuのうちから選ばれる少なくとも1種であり、BはAl、Ga及びScのうちから選ばれる少なくとも1種である。)で表される物質であり、前記透光性材料がAl又はAlにSc、Gaのうちから選ばれる1種が含有された物質であることを特徴としている。
【0019】
このような本発明にかかる波長変換焼成体によれば、出射光の色ムラを抑制することができ、かつ優れた発光効率を有し、機械的強度の低下を抑制することができる。
【0020】
ここで、前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1は0.5μm以上5μm以下で、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2は1μm以上10μm以下であり、前記蛍光性材料粒子の占める割合が22容積%以上35容積%以下で、前記透光性材料粒子の占める割合が65容積%以上78容積%以下であることが望ましい。
このように構成することによって、より色ムラの少ない、かつより発光効率の高い、波長変換焼成体を得ることができる。
【0021】
また、前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1が、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2の0.1倍以上0.78倍以下であることが望ましい。
このように構成することによって、より色ムラの少ない波長変換焼成体を得ることができる。
【0022】
更に、前記表面に露出する透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が、前記表面に露出する蛍光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1の1.2倍以上2.0倍以下であることが望ましい。
このように構成することによって、より発光効率を高めた波長変換焼成体を得ることができる。
【0023】
また、前記蛍光性材料が、一般式A12:Ce(AはY、Gd、Tb、Yb及びLuのうちから選ばれる少なくとも1種であり、BはAl、Ga及びScのうちから選ばれる少なくとも1種である。)で表される物質であり、前記透光性材料がAl又はAlにSc、Gaのうちから選ばれる1種が含有された物質であることが望ましい。
これら材料を用いることにより、上記波長変換焼成体をより効率よく、かつ確実に、板状体からなる波長変換焼成体を製造することができる。
なお、上記波長変換焼成体は単体の場合にのみならず、内部に賦活剤拡散抑制層(中間層)、担体層を含むものであっても良い。
【0024】
更に、内部に賦活剤拡散抑制層(中間層)を有する本発明にかかる波長変換焼成体は、賦活剤含有のYAG系蛍光性材料とAlとからなる第1の層と、前記第1の層上に積層され、直径20μm以上300μm以下の粒子が全体粒子個数の90%以上を占めるAlからなる中間層と、前記中間層上に積層され、前記第1の層の賦活剤の含有量の10%以下の賦活剤を含むYAG系材料とAlからなる第2の層とを有し、前記各層内においてAl粒子同士は連結されると共に、各層界面においてもAl粒子同士が連結される連結構造を有しており、かつ、前記第1の層、中間層及び第2の層はいずれも気孔率が1.0%以下の焼成体からなり、前記第1の層及び第2の層の表面は非加工で露出する焼成面で、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下であり、前記表面に露出する前記YAG系蛍光性材料の粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記表面に露出するAlの粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下であり、前記第1の層に含まれる賦活剤含有のYAG系蛍光性材料が、(Y1−sGd(Al1−tGa12:Ce(0≦s≦0.33、0≦t≦0.2)であることを特徴とする。
【0025】
このような本発明にかかる波長変換焼成体によれば、出射光の色ムラを抑制することができ、かつ優れた発光効率を有し、機械的強度の低下を抑制することができるとともに、上記の如き、賦活剤含有のYAG系蛍光性材料を含む第1の層と、YAG系材料を含む第2の層との間に中間層が配置されてなる波長変換焼成体とすることで、前記中間層により前記第1の層から第2の層への賦活剤の拡散を抑制し、高い放熱性を有し所望の色相の光をより高い発光効率で出射することができ、且つ、剛性の高い波長変換焼成体を提供することができる。
【0026】
ここで、前記第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2の層におけるYAG系材料の粒子の20個平均直径d1は0.5μm以上5μm以下で、前記第1、2の層の各層における前記Alの粒子の20個平均直径d2は1μm以上10μm以下であり、前記第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2の層におけるYAG材料の粒子の占める割合が、前記第1、2の層の各層において22容積%以上35容積%以下で、前記Alの粒子の占める割合が前記第1層及び前記第2層において各々65容積%以上78容積%以下であることが好ましい。
前記のように粒子径及び含有容積比率を設定することにより、出射光の散乱性を良好なものとし、出射光の視野角依存性をより低減できると共に、特に第1の層でのYAG系蛍光性材料の不均質分布に伴う出射光の面内色ムラをより低減することができる。
【0027】
また、前記第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2層における前記YAG系材料の粒子の各層における20個平均直径d1が、前記Alの粒子の20個平均直径d2の0.1倍以上0.78倍以下であることが好ましい。
このように構成することによって、より色ムラの少ない波長変換焼成体を得ることがきる。
【0028】
また、前記表面に露出するAlの粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が、前記表面に露出する前記第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2層におけるYAG系材料の粒子の各層における測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1の1.2倍以上2.0倍以下であることが好ましい。
このように構成することによって、より発光効率を高めた波長変換焼成体を得ることができる。
【0029】
また、全体を100とした前記第1の層中の賦活剤含有のYAG系蛍光材料の容積組成比をaとした場合、aが22〜35であり、全体を100とした前記第2の層中のYAG系材料の容積組成比をbとした場合、bが25〜40であり、かつ前記bが前記aよりも大きいことがより好ましい。
上記波長変換焼成体を、前記第2の層を発光素子の上面に位置し、発光素子より青色光を照射する様に用いることにより、発光素子より放たれた青色光がYAG系材料の容積組成比が大きい第2の層でより拡散し、前記第1の層に照射される際、青色光はより均質に拡散した状態となり、局所的な照射ムラに伴う発熱を抑制でき、発光効率をより向上させることができる。
【0030】
さらに、前記第1の層に含まれる賦活剤含有のYAG系蛍光性材料が、(YGd(AlGa12:Ce(0≦s≦0.33、0≦t≦0.2)であることが好ましい。
このようなYAG系蛍光性材料によって、上記波長変換焼成体をより確実に製造することができると共に、上述の本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、出射光の色ムラを抑制することができ、かつ優れた発光効率を有し、機械的強度の低下が抑制された波長変換焼成体を得ることができる。
したがって、本発明に係る波長変換焼成体は、LEDやLD等を用いた発光装置に好適に使用することができ、特に、白色LED照明において、色ムラのない安定した白色発光を得る上で好適である。
また、本発明によれば、更に、賦活剤含有のYAG系蛍光性材料を含む第1の層と、YAG系材料を含む第2の層との間に中間層が配置されてなる波長変換焼成体とすることにより、前記中間層により前記第1の層から第2の層への賦活剤の拡散を抑制し、高い放熱性を有し所望の色相の光を高い発光効率で出射することができ、且つ、剛性の高い波長変換焼成体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る第1の実施形態の波長変換焼成体の概略断面図である。
図2図2は、本発明に係る第2の実施形態の波長変換焼成体の断面図である。
図3図3は、図2の第2の実施形態の波長変換焼成体を発光素子上に配置した状態を示す断面図である。
図4図4は、従来のオプトエレクトロニクスデバイスの断面図である。
図5図5は、図4のオプトエレクトロニクスデバイスが備える波長変換素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の第1の実施形態について、図1を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明に係る波長変換焼成体の断面図を示す。図1に示すように、本発明に係る波長変換焼成体1は、一の主面が光の入射面2であり、入射面2と反対側の主面が光の出射面3である板状体である。
【0034】
前記板状体1は、賦活剤を含有する蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子からなる気孔率が1.0%以下の焼成体から構成されている。
前記気孔率が1.0%を超えると、機械的強度が低下するばかりでなく、過度の散乱により、入射面2側への戻り光の割合が増加し、発光効率が低下するといった不具合が生じるため、気孔率1.0%以下が好ましい。
【0035】
また、青色発光素子等と組み合わせて白色発光を得る場合には、前記蛍光性材料として、一般式A12:Ce(AはY、Gd、Tb、Yb及びLuのうちから選ばれる少なくとも1種であり、BはAl、Ga及びScのうちから選ばれる少なくとも1種である。)で表される物質が用いられ、また前記透光性材料として、Al又はAlにSc、Gaのうちから選ばれる1種が含有された物質が好適に用いられる。
【0036】
また、前記入射面2及び前記出射面3は、前記蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子が非加工で露出する焼成面になされている。
前記焼成面とは、原料粉末を成形後、焼成を行ったままの状態の面をいい、焼成後に機械研削、エッチング等の加工が施されていない面を言う。前記入射面2及び前記出射面3を、焼成後に機械研削、エッチング等の加工を施し、いわゆる加工面とすると、機械的強度が低く、実装時や使用時熱応力によるワレが発生し易くなる。また、加工時に発生する欠陥が原因となり発光効率の低下を引き起こす不具合が生じる虞がある。
したがって、前記入射面2及び前記出射面3は、焼成面とすることが好ましい。
【0037】
これに対して、前記入射面2及び前記出射面3以外の4つの側面(図1においては2つの側面4,5を示す)は、側面間の厚さ(縦長さ、横長さ)があるために、加工面とした場合においても、機械的強度が低下することが少なく、実装時や使用時熱応力によるワレも発生し難い。また、加工時に発生する欠陥が原因となる発光効率の低下も発生し難いため、加工面としても良い。更に言えば、発光素子との接着もしくは焼結接合をより高精度に行うためには、前記4つの側面は却って機械研削等の加工が施されていた方が好ましい。
【0038】
また、前記蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子が非加工で露出する焼成面は、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下になされる。
この測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下とは、表面のマクロな凹凸状態を特定するものであり、入射面2および出射面3の任意の箇所において、測定長さ4mmでの算術平均粗さRaを10点測定し、この平均値をとったものである。
このRaが0.1μm未満では、出射面3での反射が多くなり、発光効率が低下するため好ましくなく、一方、Raが0.5μmを越えると、対向する入射面2および出射面3間の厚さのバラツキが大きくなり、出射面3からの発光強度のムラが生じるため好ましくない。
【0039】
前記入射面2および出射面3以外の4つの側面(図1においては2つの側面4,5を示す)は、封止樹脂との密着性を高めるため、測定長4μmでの10点平均の算術平均粗さRaを0.5μm以上とすることが好ましい。
【0040】
前記表面に露出する蛍光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記表面に露出する透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下になされている。
前記表面に露出する蛍光性材料粒子の算術平均粗さRa1、前記表面に露出する透光性材料粒子の算術平均粗さRa2は、表面に露出する蛍光性材料粒子および透光性材料粒子個々の凹凸状態を特定するものであり、各粒子1個につき測定長さ1μmでの算術平均粗さRaを測定し、この粒子20個の平均値をとったものである。
【0041】
蛍光性材料粒子の算術平均粗さRa1が0.2nm未満とすること、及び透光性材料粒子の算術平均粗さRa2が0.3nm未満とすることは、製造上困難であり、生産性が劣るため好ましくない。
また、蛍光性材料粒子の算術平均粗さRa1が0.5nmを越える場合、透光性材料粒子の算術平均粗さRa2が0.7nmを超える場合には、結晶性が悪く結晶欠陥が多くなる。その結果、発光効率が低減するため、好ましくない。
【0042】
また、前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1は0.5μm以上5μm以下で、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2は1μm以上10μm以下になされている。
この前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1、及び前記透光性材料粒子の20個平均直径d2は、波長変換焼成体の任意の断面の顕微鏡観察において、いずれの粒子においても、粒子1つにつき最長径および最短径を測定しその平均値を算出し、これを20個行った後に算出した平均値を言う。
【0043】
また、前記蛍光性材料粒子の占める割合が22容積%以上35容積%以下で、前記透光性材料粒子の占める割合が65容積%以上78容積%以下になされる。
【0044】
このように、前記蛍光性材料粒子および透光性粒子の平均直径を上記数値範囲とし、かつ、各々の含有容積比率を、前記蛍光性材料粒子を22容積%以上35容積%以下、前記透光性材料粒子を65容積%以上78容積%以下とすることによって、前記透光性材料の粒子が、光源(LED素子)から照射される特定波長光及び前記蛍光性材料粒子で吸収・発光される特定波長光の主たる導光路として機能する。その結果、より色ムラの少ない、かつより発光効率の高い、波長変換焼成体が得られる。
【0045】
また、前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1が、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2の0.1倍以上0.78倍以下になされている。
前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1が、前記透光性材料粒子の20個平均直径d2の0.1倍以上0.78倍以下とすることにより、より色ムラを低減することができる。
【0046】
また、前記表面に露出する透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が、前記表面に露出する蛍光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1の1.2倍以上2.0倍以下になされている。
前記透光性材料粒子が主たる導光路となるが、当該波長変換焼成体1の少なくとも出射面3に露出する前記透光性材料粒子の算術平均粗さを前記蛍光性材料粒子より当該比率で粗くすることで、光源(LED素子)から照射される特定波長光及び前記蛍光性材料粒子で吸収・発光される特定波長光の2つの特定波長光いずれもより効果的に出光させることができ、より発光効率を高めることができる。
【0047】
なお、上記のような焼成体の表面形態は、原子間力顕微鏡(DigitalInstruments製 Dimension 5000)を使用し、シリコンカンチレバーを使用し、各サンプルの表面形状をスキャンすることで、測定することができる。
【0048】
また、前記蛍光性材料は、一般式A12:Ce(AはY、Gd、Tb、Yb及びLuのうちから選ばれる少なくとも1種であり、BはAl、Ga及びScのうちから選ばれる少なくとも1種である。)で表される物質であり、前記透光性材料はAl又はAlにSc、Gaのうちから選ばれる1種が含有された物質である。
この上記各材料を用いることで、上記した板状体からなる波長変換焼成体の効果をより確実に得ることができる。
【0049】
より好ましい材料は、賦活剤がCeであり、蛍光性材料がYAl12からなり、透光性材料がAlからなる場合である。
そして前記組成材料から、上記波長変換焼成体を製造するためには、いずれも平均粒径が、Y原料:0.3μ以上2μm以下、CeO原料:0.1μm以上1μm以下、Al原料:0.1以上0.8μm以下のものを用い、かつ、焼成を1.0×10-2Pa以下の中真空〜低真空程度の真空雰囲気下で行うことが好ましい。
これによって、上述の本発明にかかる波長変換焼成体をより効率良く、かつ確実に製造することができる。尚、焼成体の作製における成形方法及び焼成方法等は、特に限定されるものではない。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態について、図2図3を参照して詳細に説明する。
図2は本発明に係る波長変換焼成体の断面図である。
図2に示すように、この波長変換焼成体11は、波長変換を行う第1の層12と、第1の層12の上に積層された中間層14と、中間層14の上に積層され、LED(発光ダイオード)或いはLD(レーザ・ダイオード)の担体層となる第2の層13とからなる。即ち、波長変換焼成体11は、波長変換積層複合体として形成されている。
前記第1の層12はLED(発光ダイオード)或いはLD(レーザ・ダイオード)のビーム出射面上に配置される。即ち、波長変換焼成体(波長変換積層複合体)10は、LEDやLDから入射された所定波長の光を、第1の層12において異なる波長に変換して出射するものである。
【0051】
前記第1の層12は、LED(発光ダイオード)あるいはLD(レーザ・ダイオード)からの励起光(特定波長)の一部を、その波長より長い波長に変換し透過する波長変換機能を有する。
具体的には、賦活剤(例えばCe)を含有したYAG系蛍光性材料(例えばYAG:Ce)とAlとからなる層である。この第1の層12のような波長変換機能層は、蛍光性材料基材の組成、賦活剤の種類、含有量並びに当該層の厚さ等によって励起光を変換する波長等が調整(色度設計)される。
より詳しくは、前記賦活剤含有の前記YAG系蛍光性材料は、(YGd(AlGa12:Ce、但し0≦s≦0.33、0≦t≦0.2であることが望ましく、このようなYAG系蛍光性材料によって、上記波長変換焼成体(波長変換積層複合体)11をより確実に製造することができると共に、後述する、本発明効果をより顕著なものとすることができる。
【0052】
また、前記したように、第1の層12と第2の層13との間に、Alからなる中間層14が設けられている。この中間層14は、波長変換焼成体11を作製するにあたり、各層12〜14となるグリーンシートを順次積層後、焼成一体化する際に、焼成工程において第1の層12中の賦活剤が第2の層13に拡散することを抑制するものである。
即ち、第1の層12に含まれる賦活剤が、第2の層13に拡散すると、第1の層12での賦活剤の含有量が意図した量より減少し、変換波長がずれるという問題が生じる。また、第2の層13に賦活剤がドープされることで、第2の層13でも励起光の一部変換が生じてしまい、結果、全体での出射光の色度が設計通りに達成できないという問題が生じる。これら問題を解決するため、前記中間層14は設けられている。
【0053】
また、前記中間層14はAlにより形成され、前記Alの直径20μm以上300μm以下の粒子個数が、前記Alの全体粒子個数の90%以上占めるように構成されている。
このように前記グリーンシート積層体の焼成工程終了後の前記Alの直径20μm以上300μm以下の粒子個数が、前記Alの全体粒子個数の90%以上占めるように焼成することで、第1の層12から第2の層13への賦活剤の拡散を充分に低減することができる。また、焼成後の成膜、接着等の再加熱工程においても賦活剤の拡散を抑制することが可能となる。
【0054】
また、中間層14を形成するAl粒子の直径は、5μm以上500μm以下であることが、より好ましい。このようなAl粒子の直径であれば、賦活剤の拡散をより効果的に抑制することができ、また、当該粒子が過大となることに伴う機械的強度の低下を抑制することができる。
また、中間層14は、気孔率が1.0%以下であり、直径0.3μm以上3μm以下の気孔が均一分布されていることがより好ましく、それにより、熱応力による割れをより確実に防止することができる。この効果をより確実に得るには、気孔率が0.1%以上、1.0%以下がより好ましい。
【0055】
また、第2の層13は、賦活剤の有無以外は第1の層12と同等の材質、具体的には、第1の層12の賦活剤の含有量の10%以下のYAG系材料とAlとからなる。
このように第2の層13を形成することによって、当該波長変換焼成体(波長変換積層複合体)10をLEDランプ或いはLDランプとして用いた場合、LED素子やLD素子の発熱に伴う複合体の反りの発生を抑制することができる。
【0056】
また、前記第1の層12におけるYAG系蛍光性材とAlの容積組成比は、YAG系蛍光性材料が、22容積%以上35容積%以下で、Al65容積%以上78容積%以下の範囲内にある。
また、前記第2の層13におけるYAG系材料とAlの容積組成比は、YAG系材料が、22容積%以上35容積%以下で、Al65容積%以上78容積%以下の範囲内にある。
また、前記第1の層12、第2の層13、中間層14の各層においてAl粒子同士は連結されると共に、各層12,13,14の界面においてもAl粒子同士が連結される連結構造を有している。
即ち、波長変換焼成体(波長変換積層複合体)11は、上記組成比からなる第1の層12と第2の層13とが、Alからなる中間層14を狭持する構造であり、また、前記3つの層がAl同士の連結構造を有し、各層界面においてもAl同士の連結構造を有している。
【0057】
特に、第1の層12と第2の層13とは、それぞれ所定の組成比でAlを含むため充分な強度を有し、各層間の熱膨張係数差に伴う使用時の熱応力による割れ発生を抑制することができる。この割れ発生をより低くするためには、第1の層12及び第2の層13のAl容積組成比を±5容積%以内で均一化することが好ましい。また、第1の層12での放熱性が向上するため、熱籠もりによる発光効率の低下も抑制することができる。また、LEDパッケージ等のヒートシンクへの放熱性も優れたものとすることができる。
【0058】
また、各層12,13,14の界面においてAl粒子同士が連結する連結構造を有しているため、各層間の屈折率差に伴う光の界面反射量を低減することができ、その結果、発光効率の低下を抑制することができる。また、Al粒子同士の連結構造を有しているため、前記第1の層12での熱こもりによる発熱効率の低下も抑制することができる。またヒートシンクとしてのデバイスケーシングへの放熱性も向上させることができる。
【0059】
尚、「第1の層12に含まれるYAG系蛍光性材料の容積組成比(容積%)×厚さ(μm)」をA(vol%・μm)とし、「第2の層3に含まれるYAG系材料の容積組成比(容積%)×厚さ(μm)」をB(容積%・μm)とすると、A/Bは0.024以上5以下であることがより好ましい。他の条件を満たし、更にこの範囲に形成することで、使用時に発生する反りをより確実に低減することができる。この効果を更に高めるためには、前記A/Bが0.083〜0.360であることが、より好ましい。
【0060】
また、前記第1の層12に含まれるYAG系蛍光性材料と、前記第2の層13に含まれるYAG系材料の平均粒子径は0.5μm以上5μm以下とされ、前記第1の層12と第2の層13に含まれるAlの平均粒子径は1μm以上10μm以下とされる。
前記のように粒子径を設定することにより、出射光の散乱性を良好なものとし、視野角での色ムラをより低減できると共に、特に第1の層でのYAG系蛍光性材料の不均質分布に伴う出射光の面内色ムラをより低減することができる。
【0061】
また、前記第1の層2中の賦活剤含有のYAG系蛍光材料の容積組成比をaとした場合、aが22〜35であり、前記第2の層3中のYAG系材料の容積組成比をbとした場合、bが25〜40であり、かつ前記bが前記aよりも大きいことがより好ましい。
上記波長変換焼成体(波長変換積層複合体)を、図3に示すように、前記第2の層13を発光素子15の上面に位置し、発光素子より青色光を照射する様に用いることにより、発光素子より放たれた青色光がYAG系材料の容積組成比が大きい第2の層13でより拡散し、前記第1の層12に照射される際、青色光はより均質に拡散した状態となり、局所的な照射ムラに伴う発熱を抑制でき、発光効率をより向上させることができる。
尚、この第2に実施形態においても、第1の実施形態で述べたように、前記第1の層12及び第2の層13の表面は非加工で露出する焼成面で、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下であり、前記表面に露出する前記YAG系蛍光性材料の粒子及びYAG系材料の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記表面に露出するAlの粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下に形成されている。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0063】
(YAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.2μm、純度99.9%の酸化イットリウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末と、を所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
【0064】
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、YAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例1〜実施例18、比較例1〜比較例5)。
尚、YAl12:Ce+Al焼成体の気孔率、焼成面の測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さ、蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さ、蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子の20個平均直径は、焼成温度を1500℃〜1750℃の範囲で、またY原料、CeO原料、及びAl原料の平均粒径を上記数値範囲内で、適宜変更することで表1になるものを作製した。
【0065】
また、比較例3においては、上記実施例11と同等の条件でYAl12:Ce+Al焼成体を作製し、その後、入射面及び出射面を3μmのダイヤモンドスラリーを用い鏡面加工を施した。
更に、比較例4においては、上記実施例14と同等の条件でYAl12:Ce+Al焼成体を作製し、その後、入射面及び出射面を#200(メッシュ)の固定砥粒を用い、平面研削加工機により、研削加工を施した。
更に、比較例5においては、上記実施例15と同等の条件でYAl12:Ce+Al焼成体を作製し、その後、入射面及び出射面を熱濃硫酸(25%HSO,150℃)にてエッチング加工を施した。
上記実施例1〜実施例18、比較例1〜比較例5を、表1、表2に示す。
【0066】
(YGdAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.2μm、純度99.9%の酸化イットリウム粉末と、平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化ガドリニウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末とを所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、YGdAl12:Ce+Al焼成体を作製した。
そして、実施例19〜実施例36、比較例6〜比較例10にかかる焼成体を得た。上記実施例19〜実施例36、比較例6〜比較例10を、表3、表4に示す。
尚、実施例19〜実施例36及び比較例6,7における各特性値の変更は、上述のYAl12:Ce+Al焼成体の場合と同様にして行った。比較例8(実施例31と同等のYGdAl12:Ce+Al焼成体)、比較例9(実施例36と同等のYGdAl12:Ce+Al焼成体)、比較例10(実施例25と同等のYGdAl12:Ce+Al焼成体)は、比較例3,4,5と同様な条件で鏡面加工、研削加工、エッチング加工を施した。
【0067】
(LuAl:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.7μm、純度99.9%の酸化ルテチウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末と,を所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、LuAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例37)。尚、実施例37を表5、表6に示す。
【0068】
(YGaAl:Ce+AlO焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.2μm、純度99.9%の酸化イットリウム粉末と、平均粒径2μm、純度99.9%の酸化ガリウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末とを所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、YGaAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例38)。尚、実施例38を表5、表6に示す。
【0069】
(LuScAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.7μm、純度99.9%の酸化ルテチウム粉末と、平均粒径0.3μm、純度99.9%の酸化スカンジウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末とを所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、LuScAl:Ce+Al焼成体を作製した(実施例39)。尚、実施例39を表5、表6に示す。
【0070】
(LuGaAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.7μm、純度99.9%の酸化ルテチウム粉末と、平均粒径2μm、純度99.9%の酸化ガリウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末と、を所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、LuGaAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例40)。尚、実施例40を表5、表6に示す。
【0071】
(YScAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径1.2μm、純度99.9%の酸化イットリウム粉末と、平均粒径0.3μm、純度99.9%の酸化スカンジウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末とを所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、YScAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例41)。尚、実施例41を表5、表6に示す。
【0072】
(TbAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径0.7μm、純度99.9%の酸化テルビウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末と、を所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、TbAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例42)。尚、実施例42を表5、表6に示す。
【0073】
(YbAl12:Ce+Al焼成体の試料の作製)
平均粒径0.5μm、純度99.9%の酸化セリウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化イッテルビウム粉末と、平均粒径0.4μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末と、を所定の配合比率で混合し、原料粉末を得た。
この原料粉末に、エタノール、ポリビニルブチラール(PVB)系バインダ及びグリセリン系可塑剤を添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルにて40時間粉砕混合を行い、スラリーを調製した。
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、所定厚さのグリーンシートを成形した。得られたグリーンシートを、大気中で脱脂、仮焼後、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で焼成し、YbAl12:Ce+Al焼成体を作製した(実施例43)。尚、実施例43を表5、表6に示す。
尚、上記実施例37〜実施例43における各特性値の変更は、上記のYAl12:Ce+Al焼成体の場合と同様にして行った。また、実施例1〜43及び比較例1〜10の焼成体における入射面2及び出射面3以外の4つの側面は、#150(メッシュ)の固定砥粒を用い平面研削加工機により研削を行い、いずれの側面も測定長100μmでの20点平均の算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmの範囲であった。
【0074】
(各実施例、各比較例の測定)
そして、各実施例、各比較例について、気孔率,20点平均の算術平均粗さRa1、Ra2,入射面及び前記出射面の平均表面粗さRa,蛍光性材料と透光性材料の含有比率,蛍光性材料粒子の20個平均直径d1及び前記透光性材料粒子の20個平均直径d2,発光効率,発光ムラを測定した。
【0075】
前記気孔率は、アルキメデス法によりを測定した(JIS C 2141)。
【0076】
また、前記表面に露出するYAl12:Ce粒子及びAl粒子の20点平均の算術平均粗さRa1、Ra2は、バネ定数3N/m、共振周波数75kHzのカンチレバー(シリコンカンチレバー)を用いて、ACモード(タッピングモード)で原子間力顕微鏡(Digital Instruments製 Dimension 5000)を使用し、各サンプルの表面形状をスキャンすることで、測定した。
【0077】
測定は標準スキャナの最大範囲10μm四方で走査し、その後に、表面形状の特徴が反映されるよう視野の絞込み(拡大)を行った。算術平均粗さの算出は、1μm長さにて実施した。この測定されたRa1、Ra2から、Ra2/Ra1を求めた。
【0078】
また、入射面及び前記出射面の算術平均粗さRaは、接触式表面粗さ測定機にて測定長4μmで測定した(JIS B0601−2001)。
【0079】
また、蛍光性材料と透光性材料の含有比率は、まず蛍光性材料にかかる原料粉末と透光性材料にかかる原料粉末の混合量を変化させたサンプルを粉末X線解析にて測定し、蛍光性材料及び透光性材料のピーク強度比から検量線を作成した。その後、測定試料を測定し、蛍光性材料及び透光性材料の割合を算出した。
【0080】
前記蛍光性材料粒子の20個平均直径d1及び前記透光性材料粒子の20個平均直径d2は、FE−SEMの反射電子像により、蛍光相と透光相を特定し、それぞれの粒子直径を測定した。尚、1つの粒子の直径は、最長径と最短径を測定し、これを2で割った値とした。
【0081】
また、発光効率は、1mm四方、厚さ0.1mmに加工後、青色LED素子(発光領域1mm四方、発光波長460nm)上にシリコーン樹脂で固定した。発光を積分球にて集光後、分光器(オーシャンオプティクス社製「USB4000 ファイバメルチチャンネル分光器」)を用いて、発光スペクトルを測定した。
得られたスペクトルから発光ピーク波長及び吸収量で規格化した発光強度を算出した。発光強度は市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトニクス社製「P46−Y3」)の測定結果を100とした。
【0082】
発光ムラは、1mm四方、厚さ0.1mmに加工後、背面から直径0.3mmに集光した青色LED光を照射し、前方から分光器(オーシャンオプティクス社製「USB4000 ファイバメルチチャンネル分光器」)を用いて受光した。
得られたスペクトルデータよりCIExを算出した。表に示す値は、5mm四方エリアを0.1mmピッチで51×51(2601ポイント)測定した際の標準偏差を示す。
上記測定結果を表1〜表6に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
従来例として記載した焼成体表面をエッチング処理した波長変換材料(比較例5)は機械的強度が低く、また色ムラが大きなものであった。
また、上記エッチング処理に変え、研削処理を行った波長変換材料(比較例4)は、機械的強度、色ムラ、いずれも比較例5と同程度のものであった。また、研磨処理を行った。
波長変換材料(比較例3)は発光効率が低いものであった。
これらに対し、表1及び表2から分かる通り、気孔率を1.0%以下とし、焼成面における測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaを0.1μm〜0.5μm、表面に露出する蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRaを各々0.2nm〜0.5nm,0.3nm〜0.7nmとした本願発明の波長変換焼成体(実施例1〜実施例3)は、更にこれら数値範囲外(比較例1,2)よりも、発光効率が高く、色ムラが小さくなることが確認された。
【0090】
また、更に蛍光性材料粒子及び透光性材料粒子の20個平均直径を各々d1:0.5〜5μm、d2:1〜10μmとし、各粒子の占める割合を各々22〜35容積%,65〜78容積%とした本願発明の波長変換焼成体(実施例5〜7)は、前記実施例1〜3よりも発光効率が高くなり、また色ムラが小さくなることが確認された。
また、更に蛍光性材料粒子の20個平均直径d1を、透光性材料粒子の20個平均直径d2の0.1〜0.78倍とした本願発明の波長変換焼成体(実施例10〜12)は、上記実施例5〜7よりも色ムラが更に小さくなることが確認され、また透光性材料粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2を、蛍光性材料粒子の同Ra1の1.2〜2.0倍とすることで、発光効率が更に向上することが確認された。
【0091】
また、表3及び表4から蛍光性材料としてYGdAl12:Ceを用いた波長変換焼成体の場合においても、上記YAl12:Ceの場合と同様であることが確認された。
更に、表5及び表6から蛍光性材料としてLuAl12:Ce、LuGaAl12:Ce、YScAl12:Ce、LuGaAl12:Ce、YScAl12:Ce、TbAl12:Ce、YbAl12:Ceを用いた波長焼成体の場合も、良好な発光効率と小さい色ムラとなることが確認された。
【0092】
以下、本発明の第2の実施形態を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0093】
(第1の層のグリーンシートの作製)
第2の実施形態における第1層は、前記第1の実施形態の波長変換焼成体に相当するものである。
即ち、平均粒子径0.3〜1.5μmの純度99.9%の酸化セリウム粉末、平均粒子径0.6〜5μmの純度99.9%の酸化イットリウム粉末、及び平均粒子径0.2〜0.9μmの純度99.9%の酸化アルミニウム粉末を表7に示すような後で記載する焼成条件等で焼成した後の組成となるように所定量配合し原料粉末を得た。
前記原料粉末に対してエタノール、PVB系バインダおよびグリセリン系可塑剤を原料粉末に対して添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルによって10時間粉砕混合を行い、スラリーを作製した。
そして、得られたスラリーから、ドクターブレード法により、表7に示す所定厚みのグリーンシートを作製した。次に、作製したグリーンシートを口100mmに打ち抜き加工した。
【0094】
(中間層のグリーンシートの作製)
平均粒子径0.3〜2.1μmの純度99.9%の酸化アルミニウム粉末を、原料粉末とした。後で記載する焼成条件等で焼成した後の酸化アルミニウム粒子の直径が、表8に示す最小値及び最小値の範囲内になるように選定した。
この原料粉末に対してエタノール、PVB系バインダおよびグリセリン系可塑剤を原料粉末に対して添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルによって10時間粉砕混合を行い、スラリーを作製した。
そして、得られたスラリーから、ドクターブレード法により、表8に示す所定の厚みのグリーンシートを作製した。次に、作製したグリーンシートを口100mmに打ち抜き加工した。
【0095】
(第2の層のグリーンシートの作製)
純度99.9%、平均粒子径0.6〜5μmの酸化イットリウム粉末、純度99.9%、平均粒子径0.2〜0.9μmの酸化アルミニウム粉末を、表9に示すような、後で記載する焼成条件等で焼成した後の組成となるように所定量配合し、原料粉末を得た。
前記原料粉末に対してエタノール、PVB系バインダおよびグリセリン系可塑剤を原料粉末に対して添加し、酸化アルミニウムボールを用いたボールミルによって10時間粉砕混合を行い、スラリーを作製した。
そして、得られたスラリーから、ドクターブレード法により、表9に示す所定厚みのグリーンシートを作製した。次に、作製したグリーンシートを口100mmに打ち抜き加工した。
【0096】
(波長変換積層複合体(波長変換焼成体)の作成)
前記第1の層、中間層、第2の層の打ち抜き加工後、第1の層用グリーンシートと、第2の層用グリーンシートとの間に、中間層用のグリーンシートを挟み込み、グリーンシートの積層体した。
次いで、60℃、100MPaの雰囲気下で温間等方圧加圧法(WIP)を行い、積層構造を有する成形体を作製した。
そして、作製した成形体を大気中で脱脂仮焼後、真空雰囲気下、1550〜1750℃で焼成し、波長変換積層複合体(波長変換焼成体)を得た(実施例44〜実施例53、比較例11〜19)。
【0097】
[各実施例、各比較例の測定、評価]
(気孔率等の測定)
本発明の第1の実施形態にかかる実施例、比較例と同様な方法で、本発明の第2の実施形態にかかる実施例、比較例について、気孔率,20点平均の算術平均粗さRa1、Ra2,平均表面粗さRa,YAG系蛍光性材料粒子の20個平均直径d1及びAlO粒子の20個平均直径d2,YAG系蛍光性材料とAlの含有比率、YAG系材料とAlの含有比率を測定した。その結果を表7,8,9に示す。
(Al粒子同士の連結の有無)
実施例44〜実施例53、比較例11〜19について、各層及び各層界面におけるAl粒子同士の連結の有無につて検証した。
各層及び各層界面におけるAl粒子同士の連結の有無は、波長変換積層複合体の厚さ方向の任意の垂直断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、各層及び各層界面においてAl粒子同士が連結(結合)しているか否か、確認した。その結果を表10に示す。
【0098】
(Al粒子個数及び各粒子径の測定)
波長変換積層複合体の厚さ方向の任意の垂直断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、中間層部分を延べ1mmの視野角で撮像した際にAl粒子個数及び各粒子径を測定した。その結果を表8に示す。
【0099】
(焼成後の第1層と第2層におけるCe濃度(atom%)の測定)
焼成後の第1層と第2層におけるCe濃度(atom%)の測定は、各層をそれぞれ、研削加工により削り出した後、ICP発光分析により測定した。
【0100】
(色ムラの測定)
色ムラは、1mm四方に加工後、背面から直径0.3mmに集光した青色LED光を照射し、前方から分光器(オーシャンオプティクス社製「USB4000 ファイバメルチチャンネル分光器」)を用いて受光した。
得られたスペクトルデータよりCIExを算出した。表5に示す値は、5mm四方エリアを0.1mmピッチで51×51(2601ポイント)測定した際の標準偏差を示す。
【0101】
(色度(蛍光ピーク波長)、発光効率の測定)
色度および発光効率は、1mm四方に加工後、青色LED素子(発光領域1mm四方、発光波長460nm)上にシリコーン樹脂で固定した。発光を積分球にて集光後、分光器(オーシャンオプティクス社製「USB4000 ファイバメルチチャンネル分光器」)を用いて、発光スペクトルを測定した。
得られたスペクトルから蛍光ピーク波長の計測および吸収量で規格化した発光強度を算出した。蛍光ピーク波長は第2層にCeが拡散するほど、短波長よりとなる。青色光と組み合わせ所望の白色光(8000K以下)を得るためには発光ピーク波長は540nm以上である必要がある。
発光強度(発光効率)は市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトニクス社製「P46−Y3」)の測定結果を100とした。
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】
【表10】
【0106】
以上の結果、実施例44〜53のように、Alにより形成された中間層において直径20μm以上300μm以下の粒子が全体粒子個数の90%以上を占めることにより、焼成後の第2の層におけるCe(賦活剤)濃度を充分に低いものとすることができ、第2の層へのCe(賦活剤)の拡散を抑制することができることが確認された。
また、実施例44〜53のように、前記第1の層、中間層及び第2の層はいずれも気孔率が1.0%以下の焼成体からなり、前記第1の層及び第2の層の表面は非加工で露出する焼成面で、測定長4mmでの10点平均の算術平均粗さRaが0.1μm以上0.5μm以下であり、前記表面に露出する前記YAG系蛍光性材料の粒子及びYAG系材料の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa1が0.2nm以上0.5nm以下で、前記表面に露出するAlの粒子の測定長1μmでの20点平均の算術平均粗さRa2が0.3nm以上0.7nm以下の場合に、出射光の色ムラを抑制され、かつ優れた発光効率を有することが確認された。
更に、実施例44〜47、49〜50、52、53のように、第1の層における賦活剤含有のYAG系蛍光性材料の粒子及び前記第2の層におけるYAG系材料の粒子の20個平均直径d1は0.5μm以上5μm以下で、前記第1,2の層の各層における前記Alの粒子の20個平均直径d2は1μm以上10μm以下であり、前記第1の層におけるYAG系蛍光性材とAlの容積組成比は、YAG系蛍光性材料が22容積%以上35容積%以下で、Al65容積%以上78容積%以下の範囲内にあり、また前記第2の層におけるYAG系材料とAlの容積組成比は、YAG系材料が22容積%以上35容積%以下で、Al65容積%以上78容積%以下の範囲内にある場合に、より高い発光効率が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0107】
1 波長変換焼成体
2 入射面
3 出射面
4 側面
5 側面
11 波長変換焼成体(波長変換積層複合体)
12 第1の層
13 第2の層
14 中間層
15 発光素子
図1
図2
図3
図4
図5