(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フロントフォーク(30)は、上下に配置された上部筒体(31)及び下部筒体(32)と、前記下部筒体(32)が結合されるとともに前記車軸(3a)を支持するアクスルホルダ(33)と、を備え、
前記ガイド部(40)は、前記アクスルホルダ(33)の車幅方向内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
前記ガイド部(40)は、車幅方向に並んで配置された一対の前記フロントフォーク(30)のうち、サイドスタンド(18)の側とは反対側の前記フロントフォーク(30)に設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のフロントフォーク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような鞍乗り型車両において、アクスルホルダの大きさ及び形状によっては、アクスルホルダに付着した雨水及び泥水等の液体がフロントディスクブレーキにつたわる可能性があった。
【0005】
そこで本発明は、前輪の車軸を支持する鞍乗り型車両のフロントフォークにおいて、フロントフォークに付着した液体がフロントディスクブレーキにつたわることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、前輪(3)の車軸(3a)を支持する鞍乗り型車両(1)のフロントフォーク(30)において、前記フロントフォーク(30)の車幅方向内側には、前記フロントフォーク(30)に付着した液体の流れをガイドするガイド部(40)が設けられ
、前記ガイド部(40)は、上下に並んで配置された上ガイド部(41)及び下ガイド部(42)を備えていることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記フロントフォーク(30)は、上下に配置された上部筒体(31)及び下部筒体(32)と、前記下部筒体(32)が結合されるとともに前記車軸(3a)を支持するアクスルホルダ(33)と、を備え、前記ガイド部(40)は、前記アクスルホルダ(33)の車幅方向内側に配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記フロントフォーク(30)は、倒立式フロントフォークであることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記ガイド部(40)は、車幅方向に並んで配置された一対の前記フロントフォーク(30)のうち、サイドスタンド(18)の側とは反対側の前記フロントフォーク(30)に設けられていることを特徴とする。
請求項
5に記載した発明は、側面視で、前記上ガイド部(41)は前側ほど下方に位置するように傾斜して前後に延びており、側面視で、前記上ガイド部(41)の前端(41a)は、前後に延びる前記下ガイド部(42)の後端(43b)よりも前方に位置し、かつ前記下ガイド部(42)の前端(43a)よりも後方に位置していることを特徴とする。
請求項
6に記載した発明は、側面視で、前記下ガイド部(42)は、V字状をなしていることを特徴とする。
請求項
7に記載した発明は、前記ガイド部(40)は、前記フロントフォーク(30)と一体に形成されたリブであることを特徴とする。
請求項
8に記載した発明は、請求項1から8の何れか一項に記載のフロントフォーク(30)を備えた鞍乗り型車両(1)において、車幅方向においてサイドスタンド(18)の側とは反対側に配置されたフロントディスクブレーキ(71)を更に備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、フロントフォークの車幅方向内側には、フロントフォークに付着した液体の流れをガイドするガイド部が設けられていることで、フロントフォークに雨水及び泥水等の液体が付着した場合であっても、ガイド部によって液体の流れがガイドされる。例えば、フロントフォークの大きさ及び形状にあわせてガイド部を種々の大きさ及び形状とすることによって、狙った位置から液体を滴下させるように液体の流れをガイドすることができる。したがって、フロントフォークに付着した液体がフロントディスクブレーキにつたわることを抑制することができる。また、フロントフォークの車幅方向外側にガイド部を設けた場合と比較して、外部からガイド部が見えにくくなるため、外観性を向上することができる。
加えて、ガイド部が上ガイド部及び下ガイド部を備えていることで、仮に液体が上ガイド部を超えて下方へ流れたとしても、流れてきた液体を下ガイド部でガイドすることができる。また、一つのガイド部のみを備えた場合と比較して、ガイド部の大型化を抑制することができる。したがって、ガイド部の大型化を抑制するとともに、フロントフォークに付着した液体がフロントディスクブレーキにつたわることを確実に抑制することができる。
請求項2に記載した発明によれば、ガイド部がアクスルホルダの車幅方向内側に配置されていることで、アクスルホルダに流れた液体がフロントディスクブレーキにつたわることを抑制することができる。
請求項3に記載した発明によれば、フロントフォークが倒立式フロントフォークであることで、正立式フロントフォークの場合と比較して、フロントフォークに凹凸ができやすいため、液体がフロントフォークを経由してフロントディスクブレーキにつたわることを抑制する上で特に有効となる。
請求項4に記載した発明によれば、ガイド部がサイドスタンドの側とは反対側のフロントフォークに設けられていることで、サイドスタンド停車時に車両がサイドスタンドの側に傾斜するため、サイドスタンド側に傾斜したフロントフォークの車幅方向内側に向けて液体が可及的に導かれる。そして、導かれた液体の流れをガイド部によってガイドするとともに、フロントフォークの車幅方向内側から垂れる液体をホイールでガイドすることができる。したがって、サイドスタンド停車時において、フロントフォークに付着した液体がフロントディスクブレーキにつたわることを確実に抑制することができる。
請求項
5に記載した発明によれば、側面視で上ガイド部が前側ほど下方に位置するように前後に傾斜して延びていることで、上ガイド部に垂れた液体は、上ガイド部の前端に向けて流れる。また、側面視で上ガイド部の前端が前後に延びる下ガイド部の後端よりも前方に位置し、かつ下ガイド部の前端よりも後方に位置していることで、液体が上ガイド部の前端から下方へ垂れたとしても、垂れてきた液体を下ガイド部でガイドすることができる。したがって、フロントフォークに付着した液体がフロントディスクブレーキにつたわることをより一層確実に抑制することができる。
請求項
6に記載した発明によれば、側面視で下ガイド部がV字状をなしていることで、垂れてきた液体をV字の頂部に集めることができるため、任意の場所に液体を滴下させることができる。
請求項
7に記載した発明によれば、ガイド部がフロントフォークと一体に形成されたリブであることで、ガイド部をフロントフォークと別体に形成した場合と比較して簡素化することができる。また、簡単な構成でフロントフォークを補強することができる。
請求項
8に記載した発明によれば、前記フロントフォークを備えた鞍乗り型車両において、車幅方向においてサイドスタンドの側とは反対側に配置されたフロントディスクブレーキを更に備えていることで、以下の効果を奏する。サイドスタンド停車時に車両がサイドスタンドの側に傾斜するため、サイドスタンド側に傾斜したフロントフォークの車幅方向内側に向けて液体が可及的に導かれる。そして、フロントフォークの車幅方向内側から垂れる液体をホイールでガイドすることができる。また、サイドスタンド停車時において、ホイールに流れた液体がサイドスタンドの側とは反対側のフロントディスクブレーキにつたわることはない。したがって、サイドスタンド停車時において、フロントフォークに付着した液体がフロントディスクブレーキにつたわることを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、及び車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
<車両全体>
図1は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1を示す。
図1を参照し、自動二輪車1は、ハンドル5によって操向される前輪3と、エンジンを含むパワーユニット10によって駆動される後輪4とを備える。以下、自動二輪車を単に「車両」ということがある。
【0011】
ハンドル5及び前輪3を含むステアリング系部品は、車体フレーム2前端部に形成されたヘッドパイプ20に操向可能に枢支されている。ヘッドパイプ20には、ハンドル5に接続された不図示のハンドル操向軸が挿通されている。車体フレーム2の前後中央部にはパワーユニット10が配置されている。パワーユニット10の後部には、スイングアーム6がピボット軸6aを中心に上下に揺動可能に枢支されている。スイングアーム6の前部と車体フレーム2の後部との間には、不図示のリヤサスペンションが介装されている。
【0012】
例えば、車体フレーム2は、複数種の鋼材を溶接等により一体に結合して形成されている。車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後下方に延びた後に下方に屈曲して延びる左右一対のメインフレーム21と、左右メインフレーム21同士を連結するように車幅方向に延びる不図示のクロスメンバと、左右メインフレーム21の後上端部から後上方に延びる左右一対のシートレール22と、を備えている。左右メインフレーム21の前下端部には、後下方に延びる第一エンジンハンガ25が設けられている。左右メインフレーム21の屈曲部21aには、前下方に突出する第二エンジンハンガ26が設けられている。
【0013】
パワーユニット10は、左右メインフレーム21の後下部、第一エンジンハンガ25及び第二エンジンハンガ26に取り付けられている。パワーユニット10は、クランクケース11と、側面視でクランクケース11の上部から前上方に突出する並列2気筒のシリンダ部12と、を備えている。
【0014】
シリンダ部12の後壁(具体的にはシリンダヘッドの後壁)には、吸気ポートに接続され且つ吸気量を調整する不図示のスロットルボディが設けられている。また、シリンダ部12の上方(具体的にはヘッドカバーの上方)には、パワーユニット10へ吸気を行う不図示のエアクリーナが接続されている。エアクリーナは、左右メインフレーム21の車幅方向間に配置されている。エアクリーナは、前記スロットルボディへの吸気を清浄化する。
【0015】
一方、シリンダ部12の前壁(具体的にはシリンダヘッドの前壁)には、排気ポートに連通する排気管(何れも不図示)が接続されている。排気管は、パワーユニット10の下方を通って、後輪4の右側方に配置されて斜め後上方に延びる不図示のマフラに接続されている。
【0016】
左右メインフレーム21の上方には、燃料タンク8が配置されている。燃料タンク8の後方且つシートレール22上には、シート9が配置されている。
【0017】
車体フレーム2は、車体カバー7で覆われている。車体カバー7は、車体フレーム2の前部を覆うフロントカウル7aと、車体フレーム2の前部側方を覆うフロントサイドカウル7bと、車体フレーム2の下部を覆うアンダーカウル7cと、車体フレーム2の後部を覆うリヤカウル7dと、を備えている。
【0018】
なお、
図1において、符号15はフロントフェンダ、符号16はリヤフェンダ、符号17はメインステップ、符号18はサイドスタンドをそれぞれ示す。サイドスタンド18は、車幅方向左側において、車体フレーム2の下端部(具体的には左メインフレーム21の後下端部)に取り付けられている。
【0019】
<フロントフォーク>
図1及び
図2を併せて参照し、自動二輪車1は、前輪3の車軸3aを支持する左右一対のフロントフォーク30を更に備えている。
図1の側面視で、左右フロントフォーク30は、前側ほど下方に位置するように傾斜して上下に延びている。
【0020】
図2に示すように、フロントフォーク30は、上下に配置された上部筒体31及び下部筒体32と、下部筒体32の下端部が結合されるとともに車軸3aを支持するアクスルホルダ33と、を備えている。上部筒体31は、円筒状をなすアウターチューブである。下部筒体32は、上部筒体31よりも細い円筒状をなすインナーチューブである。すなわち、フロントフォーク30は、倒立式フロントフォークである。
【0021】
<アクスルホルダ>
フロントフォーク30の下端部には、アクスルホルダ33が設けられている。側面視で、アクスルホルダ33は、前側ほど下方に位置するように傾斜して上下に延びるY字状をなしている。
【0022】
図2〜
図4を併せて参照し、アクスルホルダ33は、車軸3aを支持する車軸支持部34と、下端部が車軸支持部34に繋がるとともに下部筒体32よりも太い円筒状をなすホルダ本体35と、
図2の側面視でホルダ本体35の前上部から前上方に突出した後に下部筒体32の軸線に沿うように後上方に傾斜して延びる前延出部36と、
図2の側面視でホルダ本体35の後部から後方に突出した後に後上方に傾斜して延びる後延出部37と、を備えている。例えば、車軸支持部34、ホルダ本体35、前延出部36及び後延出部37は、鋳造等で一体に形成されている。
【0023】
なお、前延出部36には、フロントフェンダ15(
図1参照)が取り付けられる。後延出部37には、下部筒体32の軸線に沿うように上下に離間して配置された上下ボス部37a,37bと、上ボス部37aから上方に離間して配置された上端ボス部37cと、が設けられている。
【0024】
<フロントフォーク側ガイド部>
図4に示すように、フロントフォーク30の車幅方向内側には、フロントフォーク30に付着した液体の流れをガイドするフロントフォーク側ガイド部40が設けられている。なお、フロントフォーク側ガイド部40は、請求項に記載の「ガイド部」に相当する。以下、フロントフォーク側ガイド部40を、単に「ガイド部40」ということがある。
【0025】
フロントフォーク側ガイド部40は、車幅方向に並んで配置された左右一対のフロントフォーク30のうち、サイドスタンド18の側とは反対側のフロントフォーク30に設けられている。すなわち、フロントフォーク側ガイド部40は、右フロントフォーク30に設けられている。フロントフォーク側ガイド部40は、右フロントフォーク30におけるアクスルホルダ33の車幅方向内側に配置されている。
【0026】
フロントフォーク側ガイド部40は、アクスルホルダ33と一体に形成されたリブである。フロントフォーク側ガイド部40は、上下に並んで配置された上ガイド部41及び下ガイド部42を備えている。
【0027】
図4の側面視で、上ガイド部41は、ホルダ本体35及び後延出部37の境界部分に重なる。
図4の側面視で、上ガイド部41は、前側ほど下方に位置するように緩やかに傾斜して前後に延びている。
【0028】
図4の側面視で、下ガイド部42は、上ガイド部41よりも下方に位置するとともに、アクスルホルダ33のホルダ本体35及び後延出部37に重なる。
図4の側面視で、下ガイド部42は、ホルダ本体35下部の前後中央部に頂部42vが位置するV字状をなしている。具体的に、下ガイド部42は、
図4の側面視で、前側ほど下方に位置するように緩やかに傾斜して前後に延びるとともに上ガイド部41よりも前後長さが長い第一リブ43と、ホルダ本体35の軸線に沿うように第一リブ43の前端43aから後上方に延びる第二リブ44と、を備えている。
【0029】
図4の側面視で、上ガイド部41の前端41aは、下ガイド部42の第一リブ43の後端43bよりも前方に位置し、かつ第一リブ43の前端43a及び第二リブ44の上端44aよりも後方に位置している。
図4の側面視で、上ガイド部41の後端41bは、下ガイド部42の第一リブ43の後端43bよりも後方に位置している。なお、
図4の側面視で、下ガイド部42の第一リブ43の後端43bは、上ガイド部41の前後中間部と上下方向で対向している。
【0030】
<ホイール>
図1及び
図6を併せて参照し、車軸3aは、不図示の軸受を介してホイール50に回転自在に支持される。ホイール50は、円筒状のハブ51と、ホイール50の外周に配置される円環状をなすとともに外周部にタイヤが取り付けられるリム52と、ハブ51の外周部から放射状に延びてハブ51の外周部とリム52の内周部とを繋ぐ複数(例えば本実施形態では7つ)のスポーク53と、を備えている。
【0031】
例えば、ハブ51、リム52及びスポーク53は、鋳造等で一体に形成されている。
図2及び
図6を併せて参照し、ハブ51の径方向内側には、車軸3aが回転自在に支持される軸支部55が形成されている。ハブ51の右側面における径方向外側には、フロントディスクブレーキ71が締結される締結部56が設けられている。締結部56は、右方に突出する円筒状をなすとともに、車軸3aの周方向に実質的に等しい間隔を空けて複数(例えば本実施形態では6つ)配置されている。
【0032】
ハブ51の右側面における軸支部55と締結部56との間には、パルサリング81が締結される締結座57が設けられている。締結座57は、右方に突出するとともに
図6の側面視で矩形状の座面を有する。締結座57は、車軸3aの周方向に実質的に等しい間隔を空けて複数(例えば本実施形態では3つ)配置されている。各締結座57は、6つの締結部56のうち互いに隣り合わない(すなわち1つ置きで配置された)3つの締結部56と繋がっている。
【0033】
ハブ51には、ハブ51を車幅方向に貫通する肉抜き孔51hが形成されている。
図6の側面視で、肉抜き孔51hは、車軸3aの周方向に沿う長孔形状を有する。肉抜き孔51hは、車軸3aの周方向に実質的に等しい間隔を空けて複数(例えば本実施形態では6つ)配置されている。各肉抜き孔51hは、車軸3aの周方向において、締結座57と並ぶように、隣り合う2つの締結部56の間に配置されている。
【0034】
<ホイール側ガイド部>
図6に示すように、ホイール50の車幅方向外側には、ホイール50に付着した液体の流れをガイドするホイール側ガイド部60が設けられている。ホイール側ガイド部60は、車幅方向においてサイドスタンド18の側とは反対側に設けられている。すなわち、ホイール側ガイド部60は、ホイール50の右側部に設けられている。
【0035】
ホイール側ガイド部60は、ホイール50と一体に形成されたリブである。
図6の側面視で、ホイール側ガイド部60は、ハブ51に向けて緩やかな凸をなす山形に形成されている。ホイール側ガイド部60は、車軸3aと締結部56とを結ぶ仮想線C1上に配置されている。ここで、仮想線C1は、車軸3aの中心P1と締結部56の中心P2との間を結ぶ仮想直線である。
図6の側面視で、ホイール側ガイド部60は、仮想線C1と直交するように延びる延在部61と、車軸3aの周方向における延在部61の両端部と肉抜き孔51hとの間を繋ぐ連繋部62と、を備えている。
【0036】
車軸3aの周方向において、延在部61は、隣り合う2つの肉抜き孔51hの間に配置されている。延在部61は、車軸3aの周方向に実質的に等しい間隔を空けて複数(例えば本実施形態では3つ)配置されている。各延在部61は、6つの締結部56のうち互いに隣り合わず(すなわち1つ置きで配置され)、かつ締結座57が繋がっていない3つの締結部56と繋がっている。
【0037】
車軸3aの径方向において、延在部61の内側端は、肉抜き孔51hの外側端よりも僅かに径方向内側に位置している。連繋部62は、車軸3aの周方向において延在部61から離反するほど(すなわち肉抜き孔51hの外側端に近接するほど)車軸3aの径方向外側に位置するように緩やかに傾斜して延びている。
【0038】
<ブレーキ装置>
図2に示すように、自動二輪車1(
図1参照)は、ディスク式のブレーキ装置70を更に備えている。ブレーキ装置70は、前輪3と一体に回転する円環状のフロントディスクブレーキ71と、制動時にフロントディスクブレーキ71に摩擦力を付与するブレーキキャリパ72と、を備えている。
【0039】
フロントディスクブレーキ71は、車幅方向においてサイドスタンド18の側とは反対側に配置されている。すなわち、フロントディスクブレーキ71は、前輪3のホイール50の右側部に取り付けられている。フロントディスクブレーキ71は、ホイール50と同心に配置されている。
【0040】
フロントディスクブレーキ71は、制動時にブレーキキャリパ72に挟持される円環状の制動壁71aと、制動壁71aの径方向内側に配置されるとともに、フロントディスクブレーキ71の厚み方向に貫通する複数の貫通孔71hを有するディスク被取付部71bと、を備えている。フロントディスクブレーキ71は、ディスク被取付部71bにおいてホイール50の右側部の各締結部56(
図6参照)にボルト等で締結されている。
【0041】
ブレーキキャリパ72は、右側のフロントフォーク30に取り付けられたキャリパブラケット90に支持されている。ブレーキキャリパ72には、ブレーキホース73の一端部が接続されている。ブレーキホース73の他端部は、不図示のABS(Antilock Brake System)回路を介してブレーキレバーに接続されている。なお、図中の符号74は、ブレーキキャリパ72内のエアを外部に排出可能とするブリーザである。
【0042】
<車輪速検出装置>
図2に示すように、自動二輪車1(
図1参照)は、前輪3の回転速度を検出する車輪速検出装置80を更に備えている。車輪速検出装置80は、前輪3と一体に回転する円環状のパルサリング81と、パルサリング81の回転を検出するピックアップセンサ82と、を備えている。
【0043】
パルサリング81は、前輪3のホイール50の右側部に取り付けられている。パルサリング81は、フロントディスクブレーキ71の車幅方向右側に配置されている。パルサリング81は、フロントディスクブレーキ71の径方向内側に配置されている。パルサリング81は、ホイール50と同心に配置されている。
【0044】
パルサリング81は、自身の周方向に実質的に等しい間隔を空けて複数のピックアップ孔(不図示)が形成された円環状のベース壁81aと、ベース壁81aの内周縁部から径方向内側に突出する複数(例えば本実施形態では3つ)の舌片状のリング被取付部81bと、を備えている。パルサリング81は、リング被取付部81bにおいて、ホイール50の右側部の各締結座57(
図6参照)にボルト等で締結されている。
【0045】
図2及び
図3を併せて参照し、ピックアップセンサ82は、キャリパブラケット90に支持されている。
図3の前面視で、ピックアップセンサ82は、フロントフォーク30と重なるようにフロントフォーク30の後方に配置されている。ピックアップセンサ82は、パルサリング81の回転に伴う磁束変化によってパルス信号を発生する不図示のピックアップコイルを備えている。ピックアップセンサ82には、センサケーブル83の一端部が接続されている。センサケーブル83の他端部は、不図示の制御ユニットに接続されている。これにより、前記ピックアップコイルで発生したパルス信号は、制御ユニットに出力される。例えば、前記パルス信号は、前輪3のスリップ率の検出及び車速の検出等に用いられる。
【0046】
<キャリパブラケット>
図3及び
図5を併せて参照し、キャリパブラケット90は、車幅方向に厚みを有するとともに、上下方向に延びる形状をなしている。キャリパブラケット90は、アクスルホルダ33の後延出部37の上下ボス部37a,37bにボルト等で締結されるブラケット被締結部91と、ブレーキキャリパ72がボルト等で締結されるキャリパ締結部92と、ピックアップセンサ82が取り付けられるセンサ取付部93と、を備えている。なお、キャリパブラケット90の上端部の上方には、センサケーブル83を保持する保持ステー94が配置されている。保持ステー94は、アクスルホルダ33の後延出部37の上端ボス部37cにボルト等で締結されている。
【0047】
センサケーブル83は、ピックアップセンサ82から上方に延び、アクスルホルダ33の後延出部37の車幅方向内側を通って後上方に緩やかに湾曲しつつ延びた後に、後方に屈曲し、キャリパブラケット90上方の保持ステー94で保持される。そして、センサケーブル83は、後上方に緩やかに傾斜して延びた後、上方に屈曲して延び、ブレーキホース73とともに、車体フレーム2(
図1参照)に向けて配索される。これにより、アクスルホルダ33の後延出部37の車幅方向外側でセンサケーブル83を配索した場合と比較して、外部からセンサケーブル83が見えにくくなるため、外観性を向上することができる。加えて、センサケーブル83をアクスルホルダ33によって保護することができる。
【0048】
<フロントフォーク側ガイド部の作用>
以下、フロントフォーク側ガイド部40の作用の一例を説明する。なお、実施例は、フロントフォーク側ガイド部40を備えた例であり、比較例は、フロントフォーク側ガイド部40を備えていない例である。
図5において、実線の矢印W1は、実施例における液体の流れを示す。一方、破線の矢印W2は、比較例における液体の流れを示す。
【0049】
図5に示すように、比較例においては、フロントフォーク30の下部筒体32に付着した液体は、自重により、下方のアクスルホルダ33に向けて流れる。そして、比較例においては、液体がアクスルホルダ33を経由してフロントディスクブレーキ71等につたわる(
図5の破線の矢印W2参照)。
【0050】
これに対し、実施例においては、アクスルホルダ33に流れた液体がフロントフォーク側ガイド部40によってガイドされる。具体的に、実施例においては、液体がフロントフォーク側ガイド部40の上ガイド部41に垂れると、垂れた液体は上ガイド部41の前端41aに向けて流れる。その後、液体は上ガイド部41の前端41aから下方へ垂れ、下ガイド部42の第一リブ43の前端43aに向けて流れる。そして、液体はV字の頂部42vに導かれ、頂部42vを起点として滴下(自由落下)される(
図5の実線の矢印W1参照)。そのため、実施例においては、液体がアクスルホルダ33を経由してフロントディスクブレーキ71等につたわることを回避することができる。
【0051】
<ホイール側ガイド部の作用>
以下、ホイール側ガイド部60の作用の一例を説明する。なお、実施例は、ホイール側ガイド部60を備えた例であり、比較例は、ホイール側ガイド部60を備えていない例である。
図6及び
図7において、実線の矢印W1は、実施例における液体の流れを示す。一方、破線の矢印W2は、比較例における液体の流れを示す。
【0052】
図7に示すように、比較例においては、ホイール50のハブ51に付着した液体は、自重により、下方の締結部56に向けて流れる。そして、比較例においては、液体が締結部56を経由してフロントディスクブレーキ71につたわる(
図7の破線の矢印W2参照)。
【0053】
これに対し、実施例においては、ホイール50のハブ51に付着した液体は、自重により、下方のホイール側ガイド部60に向けて流れる。そして、液体はホイール側ガイド部60によってガイドされる。具体的に、実施例においては、
図6に示すように、液体がホイール側ガイド部60の延在部61に垂れると、垂れた液体は延在部61の端部を経て連繋部62に向けて流れる。その後、液体は連繋部62に沿って流れて肉抜き孔51hに導かれる(
図6の実線の矢印W1参照)。そして、
図7に示すように、液体は肉抜き孔51hを起点としてホイール50のスポーク53に沿って垂れていく(
図7の実線の矢印W1参照)。そのため、実施例においては、液体が締結部56を経由してフロントディスクブレーキ71につたわることを回避することができる。
【0054】
以上説明したように、上記実施形態は、前輪3の車軸3aを支持する自動二輪車1のフロントフォーク30において、フロントフォーク30の車幅方向内側には、フロントフォーク30に付着した液体の流れをガイドするガイド部40が設けられている。
この構成によれば、フロントフォーク30に雨水及び泥水等の液体が付着した場合であっても、ガイド部40によって液体の流れがガイドされる。例えば、フロントフォーク30の大きさ及び形状にあわせてガイド部40を種々の大きさ及び形状とすることによって、狙った位置から液体を滴下させるように液体の流れをガイドすることができる。したがって、フロントフォーク30に付着した液体がフロントディスクブレーキ71につたわることを抑制することができる。また、フロントフォーク30の車幅方向外側にガイド部40を設けた場合と比較して、外部からガイド部40が見えにくくなるため、外観性を向上することができる。なお、上記実施形態では、ガイド部40がアクスルホルダ33の車幅方向内側に配置されていることで、アクスルホルダ33に流れた液体がフロントディスクブレーキ71につたわることを抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、フロントフォーク30が倒立式フロントフォークであることで、正立式フロントフォークの場合と比較して、フロントフォーク30に凹凸ができやすいため、液体がフロントフォーク30を経由してフロントディスクブレーキ71につたわることを抑制する上で特に有効となる。
【0056】
また、上記実施形態では、ガイド部40がサイドスタンド18の側とは反対側のフロントフォーク30に設けられていることで、サイドスタンド停車時に車両がサイドスタンド18の側に傾斜するため、サイドスタンド18側に傾斜したフロントフォーク30の車幅方向内側に向けて液体が可及的に導かれる。そして、導かれた液体の流れをガイド部40によってガイドするとともに、フロントフォーク30の車幅方向内側から垂れる液体をホイール50でガイドすることができる。したがって、サイドスタンド停車時において、フロントフォーク30に付着した液体がフロントディスクブレーキ71につたわることを確実に抑制することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、ガイド部40が上ガイド部41及び下ガイド部42を備えていることで、仮に液体が上ガイド部41を超えて下方へ流れたとしても、流れてきた液体を下ガイド部42でガイドすることができる。また、一つのガイド部のみを備えた場合と比較して、ガイド部40の大型化を抑制することができる。したがって、ガイド部40の大型化を抑制するとともに、フロントフォーク30に付着した液体がフロントディスクブレーキ71につたわることを確実に抑制することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、側面視で上ガイド部41が前側ほど下方に位置するように前後に傾斜して延びていることで、上ガイド部41に垂れた液体は、上ガイド部41の前端41aに向けて流れる。また、側面視で上ガイド部41の前端41aが前後に延びる下ガイド部42の後端43bよりも前方に位置し、かつ下ガイド部42の前端43aよりも後方に位置していることで、液体が上ガイド部41の前端41aから下方へ垂れたとしても、垂れてきた液体を下ガイド部42でガイドすることができる。したがって、フロントフォーク30に付着した液体がフロントディスクブレーキ71につたわることをより一層確実に抑制することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、側面視で下ガイド部42がV字状をなしていることで、垂れてきた液体をV字の頂部42vに集めることができるため、任意の場所に液体を滴下させることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、ガイド部40がフロントフォーク30と一体に形成されたリブであることで、ガイド部40をフロントフォーク30と別体に形成した場合と比較して簡素化することができる。また、簡単な構成でフロントフォーク30を補強することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、フロントフォーク30を備えた自動二輪車1において、車幅方向においてサイドスタンド18の側とは反対側に配置されたフロントディスクブレーキ71を更に備えていることで、以下の効果を奏する。サイドスタンド停車時に車両がサイドスタンド18の側に傾斜するため、サイドスタンド18側に傾斜したフロントフォーク30の車幅方向内側に向けて液体が可及的に導かれる。そして、フロントフォーク30の車幅方向内側から垂れる液体をホイール50でガイドすることができる。また、サイドスタンド停車時において、ホイール50に流れた液体がサイドスタンド18の側とは反対側のフロントディスクブレーキ71につたわることはない。したがって、サイドスタンド停車時において、フロントフォーク30に付着した液体がフロントディスクブレーキ71につたわることを確実に抑制することができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、フロントフォーク30が倒立式フロントフォークである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、フロントフォーク30が正立式フロントフォークであってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ガイド部40がサイドスタンド18の側とは反対側のフロントフォーク30に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ガイド部40がサイドスタンド18の側のフロントフォーク30に設けられていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ガイド部40が上ガイド部41及び下ガイド部42を備えている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ガイド部40が一つのガイド部のみを備えていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、側面視で下ガイド部42がV字状をなしている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、側面視で下ガイド部42がU字状又はW字状をなしていてもよい。すなわち、下ガイド部42の側面視形状は、任意の場所に液体を滴下させることが可能な範囲で、種々の形状を採用することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、ガイド部40がフロントフォーク30と一体に形成されたリブである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ガイド部40がフロントフォーク30と別体に形成されたガイド部材であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、フロントディスクブレーキ71が車幅方向においてサイドスタンド18の側とは反対側にのみ配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、フロントディスクブレーキ71が車幅方向においてサイドスタンド18の側に配置されていてもよい。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪且つ後二輪の他に、前二輪且つ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。また、本発明は、自動二輪車のみならず、自動車等の四輪の車両にも適用可能である。
実施形態のエンジンは、例えば並列2気筒のエンジンであるが、4気筒でもよい。また、後傾シリンダを備えるエンジンであってもよい。また、クランク軸を車幅方向に沿わせたいわゆる横置きエンジンであることに限らず、クランク軸を車両前後方向に沿わせたいわゆる縦置きエンジンであってもよく、かつこの場合もシリンダ配置は種々である。さらに、パワーユニット10は、駆動源に電気モータを含むものであってもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。