(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233994
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】鼻当てパッド及びこれを備える眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 5/12 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
G02C5/12
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-225741(P2016-225741)
(22)【出願日】2016年11月21日
【審査請求日】2017年2月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505425878
【氏名又は名称】中村 正一
(73)【特許権者】
【識別番号】592248835
【氏名又は名称】日本エー・シー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 正一
【審査官】
廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−139118(JP,U)
【文献】
特開2008−145924(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3174805(JP,U)
【文献】
特開2009−098406(JP,A)
【文献】
特開2001−142030(JP,A)
【文献】
特開平08−248359(JP,A)
【文献】
特開昭58−189611(JP,A)
【文献】
実開平04−135725(JP,U)
【文献】
実開昭55−012220(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0234202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡又は双眼ルーペに取り付けられ、鼻に当接して眼鏡を支持する鼻当てパッドであって、
対向する二つの主表面をそれぞれ有する2つの鼻側面対向部と前記2つの鼻側面対向部を接続する中間部とを有し、エラストマ材料から形成されたベース部を備え、
各前記鼻側面対向部が、
一方の前記主表面から、湾曲した凸状表面を有するように隆起して設けられ且つエラストマ材料から形成された隆起部と、
前記ベース部の前記エラストマ材料及び前記隆起部の前記エラストマ材料よりも硬い樹脂材料から形成された、他方の前記主表面から突出する、眼鏡に取り付けるための取付部とを備え、
前記取付部は、前記隆起部とほぼ背中合わせに、前記隆起部の中心よりも前記中間部側に位置するように配置されている、ことを特徴とする鼻当てパッド。
【請求項2】
前記ベース部が、略平行に配置された前記2つの鼻側面対向部と、前記各鼻側面対向部の端部を接続する前記中間部とにより、全体として馬蹄形状を有する、請求項1に記載の鼻当てパッド。
【請求項3】
前記取付部が、前記ベース部内に配置される土台部と、前記土台部から前記ベース部を貫通して前記他方の主表面から突出する、眼鏡に取り付けるための突出部とを有する、請求項1又は2に記載の鼻当てパッド。
【請求項4】
前記取付部が、前記他方の主表面に取り付けられる土台部と、前記土台部から突出する、眼鏡に取り付けるための突出部とを有する、請求項1又は2に記載の鼻当てパッド。
【請求項5】
前記隆起部が、前記ベース部とは別体の部材として形成され、前記ベース部材に係合されている、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の鼻当てパッド。
【請求項6】
前記中間部の幅が前記鼻側面対向部の幅より細い、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の鼻当てパッド。
【請求項7】
前記ベース部及び前記隆起部のエラストマ材料は、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム又はポリイソプレンゴム材である、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の鼻当てパッド。
【請求項8】
レンズを保持するフロント部と、該フロント部の外縁部に連結されるテンプルと、前記フロント部から延びる一対のクリングスと、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の鼻当てパッドとを備え、前記鼻当てパッドが、前記取付部によって前記クリングスに取り付けられることを特徴とする眼鏡。
【請求項9】
前記クリングスの先端に形成された貫通孔と前記取付部に形成された貫通孔とに止めネジを貫通させることにより、前記取付部が前記クリングス先端に搖動可能に取り付けられている、請求項8に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻に当接して眼鏡を支持する眼鏡用の鼻当てパッド及びこれを備える眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡のフレームの例として、レンズを保持するフロント部と、フロント部の両端部に蝶番を介して折り畳み自在に連結されるテンプルとからなり、フロント部が、左右のレンズを保持する一対の環状のリムと、両リムの内縁部の間を連結するブリッジと、各リムの内縁部から延びるクリングスと、所定の範囲で向きを変えられるようにクリングスの先端に取り付けられた鼻当てパッドとを備えるものが知られている。眼鏡の装着時には、テンプルの先端が使用者の耳に掛けられると共に鼻当てパッドが鼻の両脇に当接して、眼鏡が支持される。また、装着者の鼻の大きさや形状は様々であるので、クリングスを変形可能に形成すると共に、クリングスの先端の鼻当てパッドの向きのガタツキを許容することで、鼻の形に適合するようにしている。
尚、本願において、「眼鏡」、通常の「眼鏡」以外にも医療等に用いられる双眼ルーペを含む、これらを総称して「眼鏡」という。
【0003】
このような鼻当てパッドは、眼鏡フレーム及びレンズの重量を支持する部分となるため、鼻当てパッドの周縁部の角などが鼻に食い込み、長時間使用すると、跡になったり、痛みが生じることがある。特に、一般的な鼻当てパッドでは、鼻の側面との対向面が平面状である一方、鼻当てパッドと当接する鼻根付近の鼻の側面は緩やかな凹状になっているため、鼻当てパッドの側縁部分が食い込んで跡になったり、痛みを生じやすく、これらを緩和する要求がある。また、眼鏡がずり落ちにくくすることも要求されている。
【0004】
このため、シリコン樹脂製の柔らかい材質から鼻当てパッドを形成して、痛みの緩和やずり落ちの防止を図っていることも多い。また、特許文献1に記載のように、クッション性を持たせ、鼻の側面との接触面積を大きくして圧力を分散させることにより、跡をつきにくくし、痛みを緩和させる鼻当てパッド、特許文献2に記載のように、化粧落ちや眼鏡のずり落ちを防止するために、吸着性及び通気性の少なくとも一方を備えた軟質部材からなり眼鏡の鼻当て部に取り付けられるパッド、特許文献3に記載のように、ずり落ち防止のために、表面に突起帯を設けられ眼鏡の鼻当て部に貼り付けられるシリコンゴムシールなども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−145924号公報
【特許文献2】実用新案登録第3136076号公報
【特許文献3】特開2010−286805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1から特許文献3に記載されているような鼻当てパッドを備えた眼鏡は、装着後に残る跡や痛みの緩和、化粧落ちや眼鏡のずり落ちに一定の効果がある。しかしながら、特許文献1に記載の鼻当てパッドは、接触面積が大きくなるので跡の残りや痛みを緩和させることができるが、十分とは言えなかった。また、特許文献2や特許文献3に記載のような鼻当てパッドは、眼鏡のずり落ちには効果があるが、鼻の表面の形状に合致するものではなく、局所的に接触して圧力が高くなるため、長時間の眼鏡の装着により、跡が残ったり、痛みを生じてしまう可能性があると共に、眼鏡の鼻当て部に貼り付けるものであるので、意図せずに鼻当て部から剥がれて脱落してしまう可能性があった。
【0007】
よって、本発明は、従来技術に存する問題を解決して、意図せずに眼鏡から脱落する心配がなく、眼鏡の装着後の跡や装着時の痛みを低減させ且つ眼鏡のずり落ちを防止することができる鼻当てパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的に鑑み、眼鏡に取り付けられ、鼻に当接して眼鏡を支持する鼻当てパッドであって、対向する二つの主表面を有し且つエラストマ材料から形成されたベース部と、該ベース部の一方の主表面の両端部に設けられ且つ樹脂材料から形成された、眼鏡から延びるクリングスに取り付けるための取付部と、前記ベース部の他方の主表面の両端部に隆起して設けられ且つエラストマ材料から形成された隆起部とを備え、前記隆起部が湾曲した凸状表面を有し、前記取付部の樹脂材料が前記ベース部の前記エラストマ材料及び前記隆起部の前記エラストマ材料よりも硬くなっている鼻当てパッドを提供する。
【0009】
上記鼻当てパッドは、取付部により眼鏡のクリングスに取り付けることができるので、シールタイプの鼻当てパッドのように、意図せずに鼻当て部から脱落することがない。また、ベース部がエラストマ材料から形成されていると共に取付部がエラストマ材料よりも硬い樹脂材料から形成されているので、ベース部が柔軟で眼鏡のクリングスへの取り付けが容易である一方で取付部が耐久性を有し、なおかつ、取付部に金属を使用する場合のように錆が生じてエラストマ部分を変色させることを防止することができる。また、鼻当てパッドは、その両端部に取付部が設けられているので、取付部を眼鏡から延びるクリングスに取り付けたときに、鼻当てパッドの両端部部分が鼻の側面に当接するだけでなく、両端部の間の中間部も鼻根付近に当接する。これにより、鼻との接触面積が大きくなって圧力が分散されるので、跡残りや痛みが生じにくく、眼鏡もずり落ちにくくなる。さらに、鼻当てパッドの両端部の取付部と反対側の主表面に、湾曲した凸状表面の隆起部が設けられており、鼻根付近の鼻の側面の緩やかに窪んだ形状に適合しやすいので、眼鏡がずり落ちにくく、また、角もなく鼻に食い込みにくいので、痛みが生じにくい。加えて、隆起部が設けられていることにより、ベース部と鼻の側面との間に隙間を形成することができるので、皮膚の蒸れを抑制し、鼻の側面の化粧落ちも低減させることができる。また、鼻に当接するベース部や隆起部はエラストマ材料から形成されているので、肌触りもよく、滑りが生じにくい。
【0010】
上記鼻当てパッドでは、前記ベース部が馬蹄形状を有していることが好ましい。
【0011】
この場合、前記取付部及び前記隆起部が設けられた前記ベース部の両端部が前記両端部の間に位置する中間部よりも太くなっていることがさらに好ましい。これにより、中間部を細く形成することができるので、中間部を眼鏡のリムを接続するブリッジの後に隠しやすくなり、外観を損ないにくくすることができる。
【0012】
一つの実施形態として、前記取付部及び前記隆起部が、前記ベース部とは別体の部材として形成され、前記隆起部が前記ベース部材に係合されているようにする。尚、本願において、「係合」とは、化学的、熱的又は機械的な手法により、溶接、溶着、結合、密着させることを意味する。
【0013】
前記ベース部及び前記隆起部のエラストマ材料は、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム又はポリイソプレンゴム材の何れかである。
【0014】
さらに、本発明は、他の態様として、レンズを保持するフロント部と、該フロント部の外縁部に折り畳み自在に連結されるテンプルと、前記フロント部から延びる一対のクリングスと、該一対のクリングスに取り付けられる鼻当てパッドとを備える眼鏡であって、鼻当てパッドとして上記鼻当てパッドを用い、前記鼻当てパッドの各固定部が各クリングスに取り付けられるようにした眼鏡を提供する。
【0015】
上記眼鏡では、前記フロント部は、レンズを保持する一対の環状のリムと、該一対のリムの内縁部の間を連結するブリッジとを含んでおり、前記一対のクリングスが前記リムの内縁部又は前記ブリッジから延びているようにすることができる。
【0016】
また、上記眼鏡では、前記クリングスの先端に、貫通孔が形成された箱型収容部が設けられていると共に、前記取付部に貫通孔が形成されており、前記取付部を前記箱型収容部に収容した状態で、前記取付部の前記貫通孔及び前記箱型収容部の前記貫通孔に止めネジを貫通させることにより、前記取付部が前記箱型収容部に搖動可能に取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鼻当てパッド及びこれを用いた眼鏡によれば、鼻当てパッドが取付部を介して眼鏡のクリングスに取り付けられるので、意図せずに眼鏡から脱落する恐れがない。また、顔に当接する部分がエラストマ材料から形成されており、鼻との接触面積も大きく、隆起部も湾曲した凸状表面で角がなく鼻根付近の鼻の側面の緩やかな窪みに適合するので、痛みが緩和され、眼鏡もずり落ちにくくなる。さらに、隆起部が鼻の側面に当接し、鼻の側面と中間部との間に隙間を形成するので、蒸れにくく、化粧落ちも抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による鼻当てパッドを取り付けた眼鏡の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されている眼鏡のクリングスと鼻当てパッドとの接続部を拡大して示す部分拡大図である。
【
図3】眼鏡へ取り付けていない状態の鼻当てパッドを示す斜視図である。
【
図4】眼鏡を掛けたときに鼻の側面に対向する側から見た
図3に示されている鼻当てパッドの平面図である。
【
図5】
図4と反対側から見た
図3に示されている鼻当てパッドの裏面図である。
【
図6】
図3に示されている鼻当てパッドの側面図である。
【
図7】
図3に示されている線A−Aにおける鼻当てパッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明による鼻当てパッドを備えた眼鏡の実施の形態を説明する。
【0020】
最初に、
図1及び
図2を参照して、本発明による鼻当てパッドを備えた眼鏡の全体構成を説明する。
眼鏡10は、フロント部12と、フロント部12の両端部に蝶番14を介して折り畳み自在に連結されるテンプル16とを備える。フロント部12は、左右のレンズ18を保持する一対の環状のリム20と、両リム20の内縁部の間を連結するブリッジ22と、リム20又はブリッジ22から延びる脚部材すなわちクリングス24と、所定の範囲で向きを変えられるようにクリングス24の先端に取り付けられた鼻当てパッド30とを含んでおり、各リム20の外縁部にテンプル16が折り畳み可能に連結される。図示されている実施形態では、リム20の内縁部の上下方向中央付近からクリングス24が延びている。
【0021】
クリングス24の先端には、箱型の収容部26が設けられており、収容部26には貫通孔26aが形成されている。後述する鼻当てパッド30の取付部34が収容部26に収容され、鼻当てパッド30の取付部34に設けられた貫通孔34aと収容部26に設けられた貫通孔26aとに止めネジ28を貫通させることにより、取付部34が収容部26に搖動可能に取り付けられる。これにより、取付部34は、クリングス24に対して所定の範囲で向きを変えることができるようになり、個体差のある鼻の側面に鼻当てパッド30の鼻との対向面の向きを適合させて、鼻の側面に当接させ、テンプル16と共にフロント部12を支持する。また、クリングス24は、変形可能な材料から形成されており、
図2に詳細に示されているように、単数又は複数の湾曲部を有していることが好ましい。これにより、クリングス24を変形させ、様々な鼻の形状に合わせて、鼻当てパッド30と鼻との接触具合を調節することが可能となる。
【0022】
次に、
図3から
図7を参照して、鼻当てパッド30の詳細な構成を説明する。鼻当てパッド30は、馬蹄形状のベース部32と、ベース部32から突出した、収容部26と接続するための取付部34と、ベース部32から隆起した隆起部36とを含んでいる。
【0023】
ベース部32は、柔軟で弾力性を有したエラストマ材料から形成されており、概略平行に延びる二つの鼻側面対向部32a,32aと、二つの鼻側面対向部32a,32aを接続する中間部32bとを含む馬蹄形状を有している。エラストマ材料としては、例えばシリコンゴムなどを用いることができる。中間部32bは、鼻側面対向部32aよりも幅が細くなっていることが好ましい。例えば、鼻側面対向部32aの幅を8.3mmとするのに対して、中間部32bの幅を4.5mmとさせることが好ましい。このような構成により、中間部32bをより変形させやすくなり、クリングス22への装着のために湾曲させることが容易となる。また、ベース部32は、概略平行に延びる二つの平坦な主表面38a,38bと、主表面38a、38bの間を接続する湾曲した接続面40とを含んでいる。接続面40は円弧状に延びていることが好ましい。二つの主表面38の間を湾曲した接続面40で接続することにより、角が形成されず、鼻に食い込みにくなって、痛みを生じにくくする効果を奏する。
【0024】
隆起部36は、エラストマ材料から形成されており、ベース部32の長手方向の両端部(中間部32bと反対側に位置する側面対向部32aの端部)において主表面38aから隆起するように設けられている。隆起部36は、ベース部32の厚さの半分程度の高さだけ主表面38aから隆起していることが好ましい。例えば、ベース部32の厚さを2.5mmとしたときに、隆起部36を主表面38aから1.3mmだけ隆起していることが好ましい。隆起部36は、ベース部32と同じエラストマ材料から形成されていることが好ましく、エラストマ材料としては、ベース部32と同様に、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム又はポリイソプレンゴム材の何れかを用いることができる。また、隆起部36は、湾曲した凸状表面を有している。図示されている実施形態では、隆起部36は、ベース部32と別部材として形成され、ベース部32に溶着されているが、ベース部32と一体的に成形することも可能である。
【0025】
取付部34は、ベース部32や隆起部36を形成するエラストマ材料よりも硬い樹脂材料から形成されており、ベース部32の長手方向の両端部において主表面38bから突出して設けられている。取付部34は、隆起部36の中心よりも中間部32b側に配置されることが好ましい。樹脂材料として、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、取付部34には、
図7によく示されているように、貫通孔34aが形成されており、クリングス24の先端に設けられた収容部26に取付部34を収容した状態で、収容部26の貫通孔26aと取付部34の貫通孔34aとに止めネジ28を貫通させることにより、所定の範囲で搖動可能にクリングス24の先端に鼻当てパッド30を取り付けることができるようになっている。したがって、収容部26への取り付けの便宜上、取付部24は、2.5mm程度だけ主表面38bから突出していることが好ましい。図示されている実施形態では、取付部34は、円板状の土台部と土台部から突出して延びる突出部とを含んでおり、突出部をベース部32から突出させるようにベース部32の端部に設けられた凹部に配置された状態で、凹部の入口を覆うように隆起部36を構成する部材をベース部32に溶着することにより、ベース部32に取り付けられている。しかしながら、取付部34は、接着剤によりベース部32に取り付けたり、ベース部32と一体的に設けたりすることも可能である。
【0026】
使用の際には、中間部32bがブリッジ22側に配置されるように、各クリングス24の収容部26に鼻当てパッド30の両端部の取付部34を収容して、クリングス24に鼻当てパッド30を取り付ける。これにより、使用者が眼鏡10を着用したときに、鼻当てパッド30の鼻側面対向部32aが使用者の鼻根付近の鼻の側面に対向して配置されて鼻側面対向部32aの少なくとも一部が鼻の側面に当接すると共に、鼻当てパッド30の中間部32bが鼻根と対向して配置されて鼻根付近を覆うように当接するようになる。このように、鼻の側面だけでなく、鼻根付近でも鼻と当接し、使用者の鼻と鼻当てパッドとの接触面積が大きくなって、圧力が分散されるので、長時間の眼鏡10の着用による痛みが緩和されると共に、跡が残りにくくなる。また、鼻パッド30において鼻に当接する部分が滑りにくいエラストマ材料によって形成されていることに加えて、中間部32bが鼻根付近を覆うように当接して落下方向に移動しようとしたときに中間部32bが鼻根に引っかかるので、眼鏡10がずり落ちにくくなる効果も奏する。
【0027】
さらに、隆起部36及び取付部34をそれぞれベース部32の異なる主表面38a,38bの両端部に設けていることから、クリングス24の収容部26に鼻当てパッド30の取付部34に収容して、クリングス24に鼻当てパッド30を取り付けると、隆起部36が鼻の側面と対向する側に配置されることになり、眼鏡10を着用したときに隆起部36が鼻の側面の鼻根の近傍の側面に当接する。鼻根の近傍の側面が緩やかな凹形状となっている一方、ここに当接する隆起部36が湾曲した凸状表面を有しているので、隆起部36は当接する領域の鼻の側面の形状に適合しやすく、眼鏡10がずり落ちにくくなる。また、鼻の側面に確実に当接する隆起部36とクリングス24に取り付けられる取付部26とがベース部32の両端部においてほぼ背中合わせとなる位置に設けられていることから、隆起部36で使用者の鼻の側面を確実に挟むことができ、ずり落ち防止にも効果を奏する。さらに、鼻の側面に当接する隆起部36が湾曲した凸状表面を有しており、鼻に食い込みにくいので、痛みを生じにくく、跡にもなりにくい。加えて、隆起部36はベース部32から隆起しているので、隆起部36が鼻の側面に当接することにより、側面対向部と鼻の側面との間に隙間が形成されやすくなり、側面対向部と鼻との接触面積を低減させることができる。これにより、蒸れによるかぶれを生じにくくすると共に、化粧落ちも低減させることが可能となる。
【0028】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明による鼻当てパッド30及びこれを備えた眼鏡10を説明したが、本発明は、図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、クリングス24が眼鏡10のリム20の内縁部から延びているが、クリングス24は、ブリッジ22から延びていてもよい。また、実施形態では、本発明による鼻当てパッド30がフロント部が一対のリムを有する眼鏡に取り付けられているが、リムがなく、ブリッジやテンプルがレンズに直接接続され、クリングスがブリッジから延びる眼鏡にも、本発明による鼻当てパッド30を取り付けることができる。さらに、取付部34は、クリングス24の先端の収容部26と止めネジ28によって接続されているが、他の手段によって接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 眼鏡
16 テンプル
18 レンズ
20 リム
22 ブリッジ
24 クリングス
26 収容部
26a 貫通孔
28 止めネジ
30 鼻当てパッド
32 ベース部
32a 鼻側面対向部
32b 中間部
34 取付部
36 隆起部
38a,38b 主表面
【要約】
【課題】意図せずに眼鏡から脱落する心配がなく、眼鏡の装着後の跡や装着時の痛みを低減させ且つ眼鏡のずり落ちを防止することができる鼻当てパッドを提供する。
【解決手段】眼鏡に取り付けられ、鼻に当接して眼鏡を支持する鼻当てパッド30は、対向する二つの主表面を有し且つエラストマ材料から形成されたベース部32と、ベース部32の一方の主表面の両端部に設けられ且つ樹脂材料から形成された、眼鏡から延びるクリングスに取り付けるための取付部34と、ベース部32の他方の主表面の両端部に隆起して設けられ且つエラストマ材料から形成された隆起部36とを備え、隆起部36が湾曲した凸状表面を有し、取付部34の樹脂材料がベース部32のエラストマ材料及び隆起部36のエラストマ材料よりも硬くなっている。
【選択図】
図3