(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233999
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】育毛剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/10 20150101AFI20171113BHJP
A61K 36/00 20060101ALI20171113BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20171113BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20171113BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20171113BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20171113BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20171113BHJP
【FI】
A61K35/10
A61K36/00
A61K8/96
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70 401
A61P17/14
A61Q7/00
A23L33/10
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-752(P2017-752)
(22)【出願日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年5月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507261788
【氏名又は名称】株式会社スタイルアンドバリュージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】金川シーラ
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−327978(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/102813(WO,A1)
【文献】
特開2013−107857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 36/00−36/9068
A61K 8/00−8/99
A61K 9/00−9/72
A23L 33/00−33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FT−IR法における赤外線吸収スペクトルにおいて波数3362,2875,1675,1559,1360,1200,1047及び835cm−1に赤外線吸収ピークを有し、4,000よりも小さい平均分子量を有するフルボ酸を含有する腐植抽出物を有効量含み、そして化粧品学的、皮膚病学的及び/又は薬学的に許容される添加剤あるいは食品添加物を含んでなる育毛剤。
【請求項2】
前記腐植抽出物は、
図1に示す赤外線吸収スペクトルを示すフルボ酸を含有する、請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
前記腐植抽出物は、ナフタレン環構造を有さないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の育毛剤。
【請求項4】
経皮投与用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の育毛剤。
【請求項5】
水剤、液剤、乳剤、乳液、エマルション、クリーム、粉体、又はクレイパックの形態である、請求項4に記載の育毛剤。
【請求項6】
経口投与用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の育毛剤。
【請求項7】
散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、チュアブル錠、ドロップ、水剤、シロップ、又はドリンク剤の形態である、請求項6に記載の育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤に関し、より詳細には腐植抽出物を含有する育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の成長は、毛母細胞の増殖と分化によって起こり、そして毛乳頭細胞によって調節されていることが知られている(非特許文献1)。毛乳頭細胞の集合体である毛乳頭は、毛髪の成長期に大きく成長することから、毛乳頭細胞の増殖が、太くてしっかりした毛髪を形成する重要な役割を果たしていると考えられる。
【0003】
毛乳頭細胞の増加は、EGFやFGFといった細胞増殖因子によって促進される、男性ホルモンの一種であり、動物試験等で細胞増殖抑制物質として知られているジヒドロテストステロン(DHT)の産生抑制等が考えられる。したがって、育毛促進方法として、従来、EGF、FGF等の細胞増殖因子を活性化させる方法、DHT等の細胞増殖抑制物質を抑制させる方法等が検討されている。後述の実施例で陽性対照として使用した、抗アンドロゲン薬として知られるフィナステリド(Finasteride)は、EGFやFGFの産生促進というよりも、5αリダクターゼ阻害剤として作用が強いため、阻害作用の結果として、毛乳頭細胞に含まれるアンドロゲンレセプターへ関与し、細胞増殖を示したと考えられている。ミノキシジルもまた、フィナステリドと同様の作用機序と思われる。
【0004】
特許文献1には、腐植土抽出物を含むことを特徴とする育毛剤が開示されている。特許文献1でによれば、人体に優しく、かつ、使用感、保湿効果に優れた育毛剤を提供可能であるとされる。特許文献2には、腐植土抽出物質含有水性液を用いて増毛剤・育毛剤を製造することが開示されている。特許文献1及び特許文献2の実施例で使用された腐植土抽出液は、長崎県北高来郡森山町唐比西名で採取された腐植土の抽出物である。この腐植土抽出物が、後述の比較例2で使用した市販の育毛剤に含まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】勝岡憲生、「毛成長誘導の主役は毛乳頭細胞?毛包幹細胞?」、第74回日本皮膚科学会東京支部学術大会(1)会長講演、(http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-110825.pdf)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−327978(育毛剤)
【特許文献2】特許第3507347(腐植土抽出物質含有水性液)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
腐植は、一般に、約1億年前の多くの栄養素が含まれた肥沃な土壌が石油や石炭に変性することなく、有機物として残存したものである。より詳細には、前記時代に生息した植物が、氷河期に入ると地下に埋没し、バクテリア等の微生物によってピートモスに変化し、その上に新しい有機物が積み重なって、再度、バクテリア等で分解され、時間の経過とともに堆積層を形成したものである。腐植は、土壌中で植物残渣や微生物遺体の中の炭水化物及びタンパク質が微生物によって分解され、さらにその分解産物が縮合してできたフルボ酸やフミン酸といった無定形有機高分子重合体や、多種類のミネラルを含有する。フミン酸は、アルカリに可溶であって酸に不溶な赤褐色ないし黒褐色無定形高分子有機酸であり、フルボ酸は、アルカリ及び酸に可溶な無定形高分子有機酸である。
【0008】
フルボ酸やフミン酸のような無定形重合高分子有機酸は、腐植の産地の土壌やその生成年代期等の要因によって変化する。腐植の効能もまた、無定形重合高分子有機酸の構造や物性の相違によって変化すると考えられる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、腐植抽出物質を含有し、育毛作用に優れた育毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、多種多様な分子構造と置換基を有するフルボ酸の中でも特定の赤外線吸収に基づく構造を有するフルボ酸には、従来、フィナステリドのように育毛作用を発揮し、さらに、従来公知の腐植抽出物含有育毛剤と対比しても優れた育毛作用に発揮することを発見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、FT−IR法における赤外線吸収スペクトルにおいて波数3362,2875,1675,1559,1360,1200,1047及び835cm
−1に赤外線吸収ピークを有するフルボ酸を含有する腐植抽出物を有効量含み、そして化粧品学的、皮膚病学的及び/又は薬学的に許容される添加剤あるいは食品添加物を含んでなる育毛剤を提供する。本明細書において、「育毛剤」は、育毛効果のほかに発毛効果を含む意味で使用される。
【0011】
前記腐植抽出物は、より特定的には、
図1に示す赤外線吸収スペクトルを示すフルボ酸を含有する。
【0012】
前記腐植抽出物は、ナフタレン環構造を有さないことが好ましい。
【0013】
前記腐植抽出物中のフルボ酸の平均分子量は、4,000よりも小さいことが好ましい。
【0014】
本発明の育毛剤は、例えば経皮投与用である。
【0015】
前記経皮投与用の育毛剤の形態は、例えば水剤、液剤、乳剤、乳液、エマルション、クリーム、粉体、又はクレイパックである。
【0016】
本発明の育毛剤は、例えば経口投与用である。
【0017】
前記経口投与用の育毛剤の形態は、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、チュアブル錠、ドロップ、水剤、シロップ、又はドリンク剤である。
【発明の効果】
【0018】
特定の赤外線吸収波長によって規定されるフルボ酸を含有する腐植抽出物を含有することを特徴とする本発明の育毛剤によれば、フィナステリドのように育毛作用が発揮され、しかも、その効能は腐植抽出物を含有する公知の腐植物質含有育毛剤よりも顕著に高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1で使用した腐植抽出物(製品名:ヒューミクル(登録商標))のフルボ酸分画のATR法に基づくFT−IR吸収スペクトルの図である。
【
図2】比較例3で使用した段戸産の標準フルボ酸及び標準フミン酸のATR法に基づくFT−IR吸収スペクトル図である。
【
図3】実施例1で使用した腐植抽出物の4%水溶液の3次元蛍光スペクトル図である。
【
図4】比較例3で使用した段戸産フルボ酸の水溶液(濃度10μg/mL)及び段戸産フミン酸の水溶液(濃度10μg/mL)の3次元蛍光スペクトル図である。
【
図5】実施例1、並びに比較例1〜4において、X軸に腐植抽出物の濃度(対数目盛)を、そしてY軸にヒト毛乳頭細胞の増殖率をプロットした図である。増殖率100%は、コントロール(試験品添加無し)を意味する。
図5から、本発明の育毛剤(実施例1)は、人工的に合成されたフルボ酸製品(比較例1)、腐植抽出物を含む既存の育毛剤製品(比較例2)や腐植抽出物標準品(比較例3及び4)よりも高い毛乳頭細胞増殖率を示すことがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の育毛剤は、FT−IR法における赤外線吸収スペクトルにおいて波数3362,2875,1675,1559,1360,1200,1047及び835cm
−1に赤外線吸収ピークを有するフルボ酸を含有する腐植抽出物を有効量含む。
【0021】
本発明の育毛剤には、腐植抽出物の中でも、上記した特定の赤外線吸収ピークを有する腐植抽出物を使用することを必須とする。腐植抽出物は、上記の赤外線吸収特性を有するものであれば、その由来を問わない。
【0022】
上記赤外線吸収ピークを有する腐植抽出物を含んだ腐植を水(例えば蒸留水、イオン交換水、逆浸透圧水等)と混合することにより、腐植抽出物が水内に抽出される。その際、腐植を、水100重量部に対して通常、5〜35重量部、好ましくは15〜25重量部、特に好ましくは、17〜18重量部の割合で混合する。上記混合物を、室温で、通常、24〜96時間、好ましくは48〜72時間日間放置する。上記放置中、適宜、混合物を撹拌してもよい。次いで、上記混合物の上澄液又は濾液を腐植抽出物とする。液状の腐植抽出物のpHは、通常、3.0である。この液状の腐植抽出物を乾固して、粉末としてもよい。
【0023】
上記腐植抽出物中のフルボ酸の平均分子量は、通常、4,000よりも小さく、好ましくは3,500以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、さらに好ましくは3,000〜1,000である。
【0024】
前記腐植抽出物は、市販のものでもよく、日本では例えば株式会社スタイルアンドバリュージャパンより製品名「ヒューミクル(登録商標)HCフルボ酸パウダー」として入手可能である。ヒューミクルの成分分析結果(試料湿重量中の含有量)を、表1に示す。
【0026】
ヒューミクルの4%水溶液の全有機炭素(TOC)の測定、及びフルボ酸分画の全有機炭素(TOC)測定の結果から、ヒューミクル中の炭素のほぼ全量が有機炭素で占められ、そして有機炭素のほぼ全量がフルボ酸を構成していることが確認された。そして、ヒューミクル中のフルボ酸含有量は、約3%と推定された。
【0027】
ヒューミクルのアルカリ(0.1N水酸化ナトリウム)及び酸(塩酸、pH2)可溶成分を抽出することにより、フルボ酸を分画した。ヒューミクル又はフルボ酸分画の物性試験方法とその分析結果を以下に示す。
【0028】
(1)3次元分光蛍光光度法
ヒューミクルの4%水溶液の3次元励起−蛍光スペクトル(測定装置JASCO FP−8200)を
図3に示す。比較のため、愛知県段戸森林土壌から抽出精製されたフルボ酸及びフミン酸(いずれも、日本腐植物質学会から「日本腐植物質学会 標準資料」として頒布されている、以下、それぞれ、段戸産フルボ酸及び段戸産フミン酸という)の3次元蛍光スペクトルを
図4に示す。ヒューミクル及び段戸産フルボ酸の3次元励起−蛍光スペクトルには、フルボ酸由来の蛍光の特徴である、励起250nm付近−蛍光430nm付近のピーク及び、励起320nm付近−蛍光430nm付近のピークが出現している。
【0029】
(2)GPC−UV/TC分析
GPC−UV/TC分析法は、水中溶存有機物を分子の大きさや排除の程度によって高速に分離し、分離した溶存分子をUV検出器及びTC検出器(Total Carbon Analyzer)でモニタリングする手法である。以下GPC−TC装置:
GPC:Shodex GPC SYSTEM 21
分離カラム TOSO HW−50S
溶離液 30mM Na
2HPO
4
UV吸収(220nm)検出器:GL7450(GL サイエンス製)
TC検出器:LCT−100(東レエンジニアリング製)
を用いて、ヒューミクル及び段戸産フルボ酸の分子量を測定した。
【0030】
両者のTCクロマトグラムでは、段戸産フルボ酸のピーク位置が51分であるのに対して、ヒューミクル4%溶解液では54分であった。ピーク位置の保持時間を、使用した分離カラムの多糖類やPEG(ポリエチレングリコール)の排除特性で換算すると、段戸フルボ酸の分子量は、約4,000であり、ヒューミクル溶解液中の有機物の分子量は、約1,000〜3,000と推定された。
【0031】
ピークトップとなった保持時間でのTC出力値(mV)とUV(220nm)吸収での出力値(mV)、及びUV出力値/TC出力値(単位有機物量(炭素量)当たりUV吸収の強さ)を表2に示す。
【0033】
表2から、ヒューミクル溶解液のUV/TC値は、段戸産フルボ酸溶解液のものにほぼ近い。有機物の分子構造に由来する紫外吸光(220nm)に類似性があることは、両者の分子構造の骨格や官能基の種類に類似性があることを示している。
【0034】
(3)フーリエ変換赤外分光光度計法(FT−IR)
前記フルボ酸分画のATR法(Attenuated Total Reflection、全反射吸収法)にて赤外線吸収スペクトルを取得した。具体的には、前記フルボ酸分画をDax−8樹脂(Spelco社製)に施用し、そこに吸着した有機物をアルカリ性溶液で脱着した。脱着した有機物を、さらにイオン交換樹脂に通して不要な塩類を取り除いた。得られた試料をATR法に基づくFT−IR分光分析(PerkinElmer Spectrum 65)に供した。
【0035】
腐植抽出物(ヒューミクル)に含有されるフルボ酸の赤外線吸収スペクトルを
図1に示す。比較のため、段戸産のフルボ酸及びフミン酸の赤外線吸収スペクトルを
図2に示す。
図1(ヒューミクル)及び
図2(段戸産フルボ酸)から主要な赤外線吸収ピークをそれぞれ抽出し、その結果を波数で表3に示す。
【0037】
ヒューミクルに含有されるフルボ酸及び段戸産フルボ酸は、共通して1200cm
−1にカルボキシル基(C−O)吸収ピークを有するが、そのレベルは、ヒューミクルの方が段戸産フルボ酸よりも小さい。ヒューミクル中のフルボ酸が段戸産フルボ酸のスペクトルと明確に相違する点は、1559、1047及び835cm
−1にトリ置換ベンゼンタイプのシグナルが観測され、そして3362及び1360cm
−1にフェノールあるいはアルコールタイプのシグナルが観測されることである。
【0038】
赤外分光分析の結果は、ヒューミクル中のフルボ酸が段戸産フルボ酸よりもカルボキシル基が少なく、トリ置換ベンゼンタイプのフェノール化合物の構造を多いことを示唆する。発明を限定する意図ではないが、この分子構造の違いが、後述の実施例と比較例に示すように、毛乳頭細胞の増殖率の相違に反映したと考えられる。すなわち、本発明で特定する特定の赤外線吸収スペクトル特性を有する中のフルボ酸を含有する腐植抽出物が有効量添加された育毛剤は、腐植物質を含む従来の育毛剤よも優れた効能を有する。
【0039】
本発明の経皮用育毛剤には、上記の腐植抽出物以外に、化粧品学的、皮膚病学的及び/又は薬学的に許容される添加剤として汎用されるものが添加される。例えば、水;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンチレングリコール、イソプレングリコール、グルコース、マルトース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、エリスリトール等の多価アルコール;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコール;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;オリーブ油、トウモロコシ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油等の油脂;カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、ラクトース、トレハロース等の糖類;カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、アガロース、アルギン酸塩、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、タマリンドガム等の増粘剤;フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、サリチル酸とその塩類、ソルビン酸とその塩類、デヒドロ酢酸とその塩類、クロルクレゾール、ヘキサクロロフェン等の防腐剤;ラウロイル硫酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の非イオン界面活性剤、アルキルサルフェート塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症剤;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK等のビタミン類やジカプリル酸ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシン、ジパルミチン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、モノステアリン酸アスコルビル等のビタミン誘導体;フラボノイド、カロテノイド等の抗酸化剤;スクワラン、スクワレン、流動パラフィン等の高級脂肪族炭化水素類;セラミド、セレブロシド、スフィンゴミエリン等のスフィンゴ脂質;コレステロール、フィトステロール等のステロール類;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン類;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、アントラニル酸メチル、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート、パラメトキシケイ皮酸オクチル、エチル−4−イソプロピルシンナメート等の紫外線吸収剤;ベントナイト、スメクタイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等の鉱物;ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機顔料;赤色202号、黄色4号、青色404号等の着色料;香料;香油等が挙げられる。
【0040】
本発明の経皮用育毛剤の形態の例は、水剤、液剤、乳剤、乳液、エマルション、クリーム、粉体、及びクレイパックである。皮膚への直接の効果を引き出すために、経皮用育毛剤は、水剤、液剤、乳剤、乳液、エマルション、又はクリームの形態が好ましい。
【0041】
本発明の経皮用育毛剤は、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー等の頭髪用入浴剤;ヘアミスト、ヘアスプレー、ヘアフォーム、ヘアリキッド等の頭髪用化粧品に含有させ、これらの入浴剤や化粧品にさらに育毛作用を付加してもよい。
【0042】
本発明の経皮用育毛剤中の腐植抽出物(フルボ酸を約3%含有)の含有量は、有効量であればよく、通常、0.001〜20重量%でよく、好ましくは0.01〜20重量%であり、さらに好ましくは0.05〜15重量%であり、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0043】
本発明の経皮用育毛剤の1回当たりの適用量もまた、年齢、発毛状況、個人差等に応じて有効量であればよい。
【0044】
本発明の経口用育毛剤は、汎用の食品添加物を添加してもよい。例えば、経口投与の形態に応じて、汎用の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、ビタミン、キサンチン誘導体、アミノ酸、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、粘稠剤、溶解補助剤、抗酸化剤、コーティング剤、可塑剤、界面活性剤、水、アルコール類、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、香料、着色剤等を発明の効果を損なわない質的及び量的範囲で添加することが可能である。
【0045】
本発明の経口用育毛剤の形態は、例えば、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、チュアブル錠、ドロップ、水剤、シロップ、及びドリンク剤のような通常の食品とは異なる経口投与剤に加工される。
【0046】
本発明の経口用育毛剤中の腐植抽出物(フルボ酸を約3%含有)の含有量は、有効量であればよく、通常、0.1〜70重量%でよく、好ましくは0.1〜30重量%であり、より好ましくは0.1〜15重量%である。
【0047】
本発明の経口用育毛剤の1日当たりの摂取量もまた、年齢、発毛状況、個人差等に応じて有効量であればよい。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すことにより、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1、比較例1〜4〕
本発明の育毛剤が育毛作用を有するか否かを、毛乳頭細胞の実験モデル系である毛乳頭細胞増殖効果試験(in vitro)で調べた。具体的には、毛乳頭細胞へ本発明の育毛剤を添加し、MTTアッセイによって毛乳頭細胞の細胞増殖促進率を測定し、さらに毛乳頭細胞増殖率を算出した。
【0050】
1.育毛剤試験品の準備
実施例1として、米国ユタ産の腐植の水性抽出物を乾固した腐植抽出物製品「ヒューミクル」(株式会社スタイルアンドバリュージャパン製)を用意した。ヒューミクルに含まれるフルボ酸分画の物性は、上記したとおりである。
【0051】
また、本発明の育毛剤の効果を評価するための陽性対照として、従来、育毛作用の知られているフィナステリドを用意した。また、コントロール(陰性対照)として、培地(試験品添加無し)を採用した。さらに、本発明を満たさない腐植物質を含む育毛剤と本発明の育毛剤とを対比するために、以下に示す腐植抽出物を含む製品、及び標準フルボ酸を用意した。
比較例1:果物や植物の発酵により得られたフルボ酸100%のM社製健康飲料
比較例2:長崎県北高来郡森山町唐比西産の腐植抽出物(フルボ酸)を含んだN社製清涼飲料水
比較例3:段戸産フルボ酸(腐植酸標準物質、日本腐植物質学会製)
比較例4:琵琶湖産フルボ酸(腐植酸標準物質、日本腐植物質学会製)
【0052】
2.ヒト頭髪毛乳頭細胞の基礎培養
試験用細胞には、ヒト頭髪毛乳頭細胞(タカラバイオ社製)を用いた。培養フラスコ(培養面積75cm
2)にヒト頭髪毛乳頭細胞培地及びヒト頭髪毛乳頭細胞懸濁液を培養液中の細胞の最終濃度が2.5×10
4cells/mL、全量10mLとなるように添加し、CO
2インキュベーター(37℃、CO
2 5%)で、7日培養して必要細胞数を確保した。
【0053】
3.試験品溶液の調製
実施例1及び比較例1〜4の育毛剤試験品を、それぞれ、試験品濃度が125、31.25、7.81、1.95、0.48、又は0.12μg/mlとなるように、順次、毛乳頭細胞培地で希釈した。陽性対照のFinasterideは、3ng/mLとなるように希釈した。
【0054】
4.細胞増殖能評価試験
4.1 ヒト頭髪毛乳頭細胞の培養
培養したヒト頭髪毛乳頭細胞をTrypsin処理により培養フラスコから回収し、細胞数をカウントした。細胞を毛乳頭細胞培地で懸濁し、細胞濃度が1×10
4cells/mLの細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を試験プレート(96well micro plate)に0.2mLずつ、各wellに添加し、室温で20分静置した。CO
2インキュベーター(37℃、CO
2 5%)にて18時間の前培養した。前培養後、試験プレート各ウェルの培地と調製した試験品溶液を置き換え、さらにCO
2インキュベーター(37℃、CO
2 5%)にて72時間培養した。72時間後、MTTアッセイによる生存率を確認した。※独立3回にて試験結果を算出した。
【0055】
4.2 MTTアッセイ
培養終了後のプレートの培地を捨て、新たにMTT試薬含有培地(1mgMTT/mL培地)を0.1mLずつ各Wellに添加した。CO
2インキュベーター(37℃、CO
2 5%)にて3時間培養し、呈色反応を行った。MTT可溶化溶液(イソプロパノール)を0.1mLずつ各wellに添加し、生細胞に取り込まれたMTTを抽出した。マイクロプレートリーダーを使用してMTT抽出液の吸光度を570nmで測定した。下記式に示すように、コントロール(試験品未処理細胞)の吸光度を100とした場合の百分率で細胞増殖率を算出した。
【数1】
【0056】
4.3 試験データ及び統計解析
得られたデータについて、分散分析を行い、等分散が確認された場合には統計解析として対応のないt検定を実施し、対照区との比較を実施した。試験結果を表4及び
図5に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
陽性対照である濃度(3ng/ml)のフィナステリドは、コントロール(細胞増殖率100%)に対して、106.8±0.6%の毛乳頭細胞増殖率を示し、毛乳頭細胞増加活性が確認された。
【0059】
それに対して、本発明の育毛剤(実施例1)は、濃度0.48〜125μg/mlにおいて、107.4〜116.2%の細胞増殖率を示した。特に、実施例1の濃度1.95μg/mlでの毛乳頭細胞増殖率116.2%は、陽性対照に対して1.09倍(=116.2/106.8)上回る増殖活性を示した。
【0060】
次に、比較例3(段戸酸フルボ酸)及び比較例4(琵琶湖酸)は、日本腐植学会標準品のフルボ酸である。比較例3及び4を実施例1と対比すると、比較3及び4は、フルボ酸濃度0.48〜125μg/mlにおいて実施例1と似た傾向を示したが、その細胞増殖率は、99.8〜106.7%(比較例3)及び96.4〜102.7%(比較例4)と、実施例1よりも劣った。
【0061】
比較例1は、本発明に使用する腐植抽出物と違って、果物や植物を出発材料として人工的に合成したフルボ酸である。比較例2は、特許文献1及び2の実施例で使用された長崎県北高来郡森山町唐比西産の腐植抽出物と推定される。これらの比較例1及び2を、実施例1と対比すると、比較例1及び2の細胞増殖率は、それぞれ、86.1〜104.4%、及び94.2〜101.2%と実施例1よりも明らかに劣った。
【0062】
以上の結果から、特定の腐植抽出物を含む本発明の育毛剤は、毛乳頭細胞増殖活性が知られているフィナステリド、腐植抽出物標準品、及び腐植抽出物を含む既存の育毛剤製品よりも高い毛乳頭細胞増殖活性があることが判明した。したがって、本発明の育毛剤は、優れた育毛作用を有する育毛剤としての産業上の利用性が期待される。
【要約】
【課題】腐植抽出物質を含有し、育毛作用に優れた育毛剤を提供する。
【解決手段】本発明の育毛剤は、FT−IR法における赤外線吸収スペクトルにおいて波数3362,2875,1675,1559,1360,1200,1047及び835cm
−1に赤外線吸収ピークを有するフルボ酸を含有する腐植抽出物を有効量含み、そして化粧品学的、皮膚病学的及び/又は薬学的に許容される添加剤あるいは食品添加物を含んでなる。
【選択図】
図5