(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234002
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】永久磁石を備える同期電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20171113BHJP
H02K 1/12 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
H02K3/04 Z
H02K1/12 B
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-273267(P2011-273267)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2012-130244(P2012-130244A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】10195053.3
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511304350
【氏名又は名称】インフラノール・ホールディング・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピエロ・タッシナリオ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・フロタツ
(72)【発明者】
【氏名】フランセスク・クルエリャス
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−287285(JP,A)
【文献】
特開2003−070197(JP,A)
【文献】
特開2008−061357(JP,A)
【文献】
特許第2799395(JP,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0182119(US,A1)
【文献】
特開2006−288187(JP,A)
【文献】
特開平01−133544(JP,A)
【文献】
特表2005−522972(JP,A)
【文献】
特開2001−037130(JP,A)
【文献】
特開2004−166388(JP,A)
【文献】
特開昭53−129802(JP,A)
【文献】
特開平05−095644(JP,A)
【文献】
特開2009−131092(JP,A)
【文献】
特開2007−159216(JP,A)
【文献】
特表2007−531485(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/020471(WO,A1)
【文献】
特開2010−098929(JP,A)
【文献】
特開2006−019200(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0308683(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02180581(EP,A2)
【文献】
欧州特許出願公開第02043230(EP,A2)
【文献】
英国特許出願公開第02174252(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を備えたロータと、スロットレスステータの内面に沿って位置する、部分的に重なり合ったコイルと少なくとも3つの電気位相を備えることによって形成される巻線と、を備える永久磁石同期電動機であって、
前記巻線の前記コイルが、前記スロットレスステータの内部の回転軸から360°全周にわたって均一に分布され、コイルの形状を前記コイルの交差点で変形させることによって、巻線の全長に亘って巻線の同一の厚みが得られ、前記コイルの前記交差点での前記コイルの半径方向の断面積は、前記回転軸に沿った変形の前後で一定であり、前記コイルの2つの端部だけが、同一の場所で交差し、これにより、前記スロットレスステータが、前記巻線の両端まで延長され得、磁気抵抗に違いはなく、より高いトルクを可能にする、トルク能力を得ており、これにより、利用可能な銅の体積あたりの最大限可能なトルクを達成するように最適化されることを特徴とする同期電動機。
【請求項2】
円筒形のロータを備えるラジアル磁束電動機であり、前記ロータの外側面上に前記永久磁石が位置付けられ、かつ、前記巻線が管状のスロットレスステータの内部に位置する管状の巻線であることを特徴とする請求項1に記載の同期電動機。
【請求項3】
前記スロットレスステータが、磁性鋼のラミネーションによって作製されることを特徴とする請求項1又は2に記載の同期電動機。
【請求項4】
前記スロットレスステータが、前記管状のスロットレスステータを生産するコイル状にされた磁気ワイヤによって作製されることを特徴とする請求項2に記載の同期電動機。
【請求項5】
前記スロットレスステータが、焼結することができる磁粉複合材又は材料によって作製されることを特徴とする請求項2又は3に記載の同期電動機。
【請求項6】
軸方向磁束電動機であり、前記ロータが、前記スロットレスステータを形成する2つの平坦な環状ステータ部の内部に位置するディスクの形状のロータであり、前記巻線が、前記平坦な環状ステータ部と前記ディスクの形状のロータとの間に位置する2つの平坦な環状部によって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の同期電動機。
【請求項7】
前記巻線のワイヤが、グラフェン材で作製されることを特徴とする請求項1から6までの一項に記載の同期電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を装備するロータと、スロットレスステータの内部に位置する重なるコイルによって形成される巻線とを備える、永久磁石を備える同期電動機に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0'123'347号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0'159'069号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0'221'594号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1'715'562号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1'715'559号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0'313'514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、ロータの移動全体にわたるトルク能力の最小の変化を達成するために、スロットのないステータの内部に途切れることなく且つ均一に分布される巻線を装備する、永久磁石を備える同期電動機である。また、設置及びリサイクルの簡単さは、この発明で考慮に入れられる付加価値である。
【0004】
本発明は、導体を交差する電流「i」が、導体に対し垂直な力「F」と同じく導体を交差する磁束「B」とを生成することを示す、ラプラス力の式(F=i(l^B))に基づいている。
【0005】
本発明に係る電動機は、請求項1の特徴部分によって特徴付けられる。
【0006】
巻線の2つの端はコイル巻き目が重なるために普通の突起を与えないので、ステータは、巻線の端に面するように延長される場合がある。そのため、我々は、磁気抵抗の差異が現れないので均一なトルク能力を達成し、そのため、トルクは、設計された巻線にのみ依存する。
【0007】
トルクを一定にしないであろう空気のあらゆる可能性ある欠如を満たす銅のために利用可能なスペースをもつコイルのワイヤ直径を完全に調整することも必要である。磁石がおかれる場所の直径と、巻線の内径もまた、ワイヤの最適な分布を達成する設計に関連する。設計は、要求されるよりも多い量の磁石を無駄にしないだけでなく、銅の量が利用可能な体積あたりの最大限可能なトルクを達成するように最適化されるように、コイルのワイヤだけでなく銅のためのスペースの厚さも考慮に入れている。
【0008】
幾つかの概念は欧州特許出願公開第0'123'347号と類似しているが、効率を増すためにラミネートされた電気鋼又は等価な材料によって巻線が包囲される方法において、この発明はこれとは僅かに異なる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
好ましい実施形態によれば、コイルの端の形状は、それらの断面積を一定に保つことによってコイルの交差点で変形され、前述の環状延長部を得ることを可能にするコイルの端の同じ場所で2つのコイル巻き目だけが交差される。
【0010】
周全体にわたる巻線の断面が一定であり且つ端の同じ場所で2つのコイル巻き目だけが交差される方法でコイルが変形した後で、我々は、ステータの内部に位置するその長さのすべてに沿って一定の幅をもつ巻線を有する。その結果、トルクとしてワイヤの力がかかるのに有用な長さは、より長くなり、その結果、出力密度がより高くなる。
【0011】
さらに、ステータを通した巻線の熱放散は、かなり良好であり、コイルの長さの増分に起因して抵抗の幾らかの増分が現れる可能性があるが、有用な磁気長さの増分と放散の改善により、これを許容することができる。
【0012】
請求項で定義されるように及び以下で説明されることになるように、半径方向磁束電動機並びに軸方向磁束電動機に対して、全体を通して同じ厚さを有する巻線の使用が可能である。
【0013】
特徴によれば、巻線は、グラフェン材料によって作製されてもよい。
【0014】
他の特徴は、従属請求項に列挙される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照しながら説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】半径方向磁束電動機の半径方向断面図である。
【
図3A】従来技術の半径方向磁束電動機の軸方向断面図である。
【
図3B】従来技術の半径方向磁束電動機の側面図である。
【
図4A】本発明に係る半径方向磁束電動機の軸方向断面図である。
【
図4B】本発明に係る半径方向磁束電動機の側面図である。
【
図5】従来技術のコイルの平面図及び側面図である。
【
図6】本発明に係るコイルの平面図及び側面図である。
【
図7】本発明に係る半径方向磁束電動機の巻線の端の半径方向断面図である。
【
図8】半径方向磁束電動機に関係する本発明に係る巻線の斜視図である。
【
図9】半径方向磁束電動機に関係する管状のスロットレスステータの斜視図である。
【
図10】従来技術の軸方向磁束電動機の軸方向断面図である。
【
図11】本発明に係る軸方向磁束電動機の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、ラジアル磁束電動機の半径方向の断面図が示されている。管状のステータ1、管状の巻線2、ロータの外側面4上に位置する永久磁石3が見られる。3つの電気位相U、V、Wの巻線が管状の巻線2の周辺に全周にわたって表されている。
【0018】
ステータの内部表面の全周にわたるワイヤの完全な規則的な分布は、その移動全体にわたって一定のパワーのトルクを生じることができる強力な且つ高効率の電動機を得ることを可能にする。フラットな実施(flat execution)において本発明に似た磁気電動機のソリューションを示す欧州特許出願公開第0'159'069号又は欧州特許出願公開第0'221'594号のような幾つかの他の特許が存在するが、本発明では、常に一定のトルクが生じるように、ワイヤが外周のあらゆる位置に全周にわたって完全に分布されている。
【0019】
さらに、スロットレス又はスロット付き電動機の標準設計では、通常、磁石の長さとステータの長さとが揃えられている。大抵の場合、使用される類の巻線は重ねられている(必要な極の数をより少なくすることにより、速度を高速域にすることが可能となる)ので、電動機の異なる位相のためのコイル巻き目が交差され(
図2)、そのため、それらはその端において巻線の厚さを増加させ、2つの突き出た環状部を創出する。
【0020】
磁石の前にある有用な領域を増加させ、且つワイヤを交差する電流に対して最大のトルクが生じるようにそこでワイヤが揃わないようにするために、コイル巻き目の交差は、ステータの外の「コイルの端」と本発明で呼ぶものにおいてなされる。しかしながら、これは、巻線の端によって標準設計におけるその体積が増加し、ステータをそこにおくことができなくなることを示唆する。電動機のこの部分において生じる熱がほとんど排除されないので、これは極めて重要である。欧州特許出願公開第1'715'562号のような幾つかの発明は、熱が電動機の外に出るのを助けるために巻線をカプセル化(capsulate)するが、それらの効率は、鉄又はアルミニウムの熱放散とは比べものにならない。
【0021】
この挙動と、ハウジング(普通はアルミニウム)の近くに又はステータの近くに巻線のコイルを有することの重要性とを意識して、本発明は、この現象を最適化する巻線を設計する方法を示す。
【0023】
図3A及び
図3Bにおいて、それらには、管状のスロットレスステータ10、コイル巻き目の交差部に位置する環状の突起12Aを有する管状の巻線12、及び永久磁石11を有するロータが表されている。
【0024】
図4A及び
図4Bにおいて、それらには、同じ要素、すなわち、管状のステータ100、コイル巻き目の交差部に位置する環状の突起を有する管状の巻線120、及び永久磁石110を有するロータが表されている。
【0025】
図4A及び
図4Bにおいて、ステータ100が巻線120のほぼすべてを覆っていることは容易にみてとれる。実に、両方の電動機に対して同じである全径D及び長さLに関して、本発明では、環状の突起12Aを無くしたおかげで、ステータの長さLs'>Ls、磁石の長さLm'>Lmを有する。この目標を達成するために、本発明では、コイルの端を変形させ、且つ同じ場所で2つのコイル巻き目だけを交差させなければならない。
【0026】
プレス変形によって作製されているときにコイルの形状を修正することにより、本発明では、コイルの断面積(b×a)を一定に保たなければならないが、「b」及び「a」の値を一定に保つ必要はない。そのため、本発明においてコイル全体にわたってこれらのパラメータを修正する場合、本発明では、より長いコイルであるが、全体として同じ断面を有する巻線を達成することができる(
図5及び
図6)。
【0027】
図5において、長方形の断面を有する普通のコイルが表されている。巻き目の前のコイルの長さは「l」であり、巻き目の高さは「h」であり、コイルの全長における長方形の断面の寸法は「a」及び「b」である。そのため、コイル断面積はA=「b」×「a」に等しい。値Aを一定に保つことが重要なので、
図6において、パラメータ「a'」、「h'」は修正されてもコイル巻き目の断面積A'はAに等しいようにコイル巻き目が変形される。
【0028】
目的は、巻線の図(
図2)における2つのコイルの巻き目が交差される点で根本的にコイルの厚さを減少させることである。そのため、本発明では、巻線の半径方向の厚さは増加させず、該厚さは巻線の全長にわたって一定に保たれている。これにより、ステータの長さを増加させることができると共に、大きい長さがトルクにとって有用であるので、より高いトルクを得ることができる。
【0029】
別の利点は、コイルの端が空気の代わりにステータ材料と接触しているので、熱の排除が改善されることである。ステータ材料は、より一層、熱伝導性があり、そのため、熱は非常に容易に排除されるであろう。
【0030】
巻線のコイルは、それに隣接する次のコイルがくるその外形を調整するために、使用されるワイヤと要求される断面に応じて変形されるであろう。交差部が2つの異なるコイルによって実験的に行われることを目的としている。
図1のワイヤ分布の例を挙げると、「コイルの端」の1つの可能性ある形状は、
図7に示されたものとすることができる。このコイル巻き目の特定の形状は、巻線の全体にわたって同じ厚さを有することを可能にする。周全体にわたって2つの交差部が存在することが見受けられる。3つのコイルのコイル巻き目は如何なる点においても決して同時発生しない。最大で2つが存在する。コイルの高さは
図6に示されたように修正されており、銅の体積は本発明がコイルを軸方向に増加させることと同じであることは明らかである。そのため、巻線の内径及び外径は銅が少しも増加されないので、巻線の厚さはステータの全体にわたって一定である。この理由のため、ステータの長さはコイルの端の全体を覆うことができる。巻線は、完全な円筒形の体積を覆っている。この特定の特性は、欧州特許出願公開第1'715'559におけるように、ステータを磁性鋼で構成するだけではなく磁粉で構成することも可能にする。欧州特許出願公開第0'313'514で説明されるように管状のステータを生産するためにコイル状にされた磁気ワイヤを用いることも可能である。こうしたコイル状にされたステータは、これがより少ない量の原材料を用いるのでステータを生産するコストを大いに低下させる。
【0031】
このタイプの構成は幾つかの利点を有する。これは、巻線をステータとは別に設置することができるので、巻線の構造を大いに簡素化し、そのため、組み立てがより一層容易になる。反対の方法で、取り壊すことが必要であればいつでも、ステータから巻線の銅を容易に分離することができる。次いで、より一層効率的にリサイクルを行うことが可能である。
【0032】
図8は、本発明に係る管状の巻線を示す。
図9には、管状のスロットレスステータが示される。これは、磁性鋼の穿孔リングの形状にされたラミネーションをスタックすることによって作製される。スロットレスリングを穿孔するのに用いられるプレスは、その寿命が増加されるのであまり高価ではない。
【0033】
図10には、軸方向磁束電動機の軸方向の断面が示される。ディスクの形状のロータ50は、磁石ホルダ81によって保持される永久磁石80を装備する。スロットレスステータは、磁性材料のラミネーションによって作製された2つの環状部60を備える。巻線60は、それらの端でコイル巻き目の交差に起因するエンボス加工部71を呈する2つの環状部を備える。
【0034】
図11には、本発明に係る軸方向磁束電動機が示される。ディスクの形状のロータ50'は、磁石ホルダ81'によって保持される永久磁石80'を装備する。スロットレスステータは、磁性材料のラミネーションによって作製された2つの環状部60'を備える。巻線60'は、全体を通して同じ厚さを有する。同じ全直径及び長さを有する電動機を比較することにより、巻線の作用面がステータのより大きい表面及び永久磁石のより大きい表面により多く面することは明白である。そのため、我々は、より強力な電動機を有する。前述のようなステータは、どんな種類の磁性材料によって作製されてもよい。
【0035】
巻線のワイヤは、グラフェンを用いることによって作製されてもよい。この材料は、銅よりも大きい電流密度値を有し、そのため、より多くのパワーを得ることができる。さらに、グラフェンは銅よりも高い熱伝導率を呈し、そのため、これは熱を電動機の外により容易に伝達するであろう。
【符号の説明】
【0036】
1 ステータ
2 巻線
3 永久磁石
4 ロータ
10 スロットレスステータ
11 永久磁石
12 巻線
12A 環状の突起
100 スロットレスステータ
110 ロータ
120 巻線
50、50' ロータ
60、60' 環状部、巻線
70、70'
71 エンボス加工部
80 永久磁石
81、81' 磁石ホルダ