特許第6234019号(P6234019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234019
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20171113BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B65D47/36 DBRL
   B65D47/08 J
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-218486(P2012-218486)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69873(P2014-69873A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年3月27日
【審判番号】不服2016-15470(P2016-15470/J1)
【審判請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
(72)【発明者】
【氏名】井田 辰春
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 熊倉 強
【審判官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−116393(JP,A)
【文献】 特開2012−153429(JP,A)
【文献】 特開2005−280803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されるキャップ基体と、上蓋とからなるキャップにおいて、
キャップ基体は、外筒と、上蓋と係合する係合リングと、注出筒と、注出筒内周に連設される隔壁とを具え、
隔壁には、注出口を形成する密栓部が、凹設された切断溝により形成された破断可能な薄肉の弱化部により画成され、隔壁下面の切断溝の外側周縁に沿って補強リブが下方に向けて凸設された厚肉部が形成され、
密栓部の上面には、支柱を介して指掛けリングが連設され
密栓部の上面の支柱の下端縁および支柱の反対側端部付近に、他の密栓部上面より僅かに高く凸設された補強突部が形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
キャップ基体の外筒に、外周から切り込まれた外周切り込み部と、外周切り込み部の片端側に上部薄肉部を隔てた起点から所定円周角の円弧範囲にわたって円周方向に延びるように、所定の深さまで切り込まれたスリット溝が上方から凹設され、
スリット溝の底面の内周側は、外筒と係合リングを連結する破断可能な薄肉連結部となっていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ、とくに注出筒の内方に連設した隔壁に、注出口を開設するキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容液を収納した容器本体に装着されるキャップ基体と上蓋とからなるキャップにおいて、キャップ本体の注出筒の内方に隔壁を連設し、容器本体内とキャップ内との間を封鎖し、内容液使用時に、隔壁の一部を引っ張り上げ、隔壁に注出口を開設するようにしたキャップは従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−337918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のキャップは、隔壁5からプルトップ部16を摘み部16aを介して引っ張り、脆弱部15を切断し、開口しているが、摘み部16aを引っ張っても、摘み部16aの連設部付近のプルトップ部16の広範囲に力が掛かり、その部分付近の脆弱部15端部を上に引っ張られるだけであるので、脆弱部15が斜めに引っ張られるだけになってしまい、脆弱部15を切断するのに大きい力が必要であるという問題があった。
また、抜栓力を小さくするために隔壁5全体を薄肉にすると、脆弱部5付近が変形して引っ張り力が働いて、やはり脆弱部15を切断するのに大きい力が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、弱い引っ張り力でも、隔壁に注出口を開設できるように開封強度を低減したキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、キャップとして、容器本体の口部に装着されるキャップ基体と、上蓋とからなるキャップにおいて、キャップ基体は、外筒と、上蓋と係合する係合リングと、注出筒と、注出筒内周に連設される隔壁とを具え、隔壁には、注出口を形成する密栓部が、凹設された切断溝により形成された破断可能な薄肉の弱化部により画成され、隔壁下面の切断溝の外側周縁に沿って補強リブが下方に向けて凸設された厚肉部が形成され、密栓部の上面には、支柱を介して指掛けリングが連設され、密栓部の上面の支柱の下端縁および支柱の反対側端部付近に、他の密栓部上面より僅かに高く凸設された補強突部が形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
キャップ基体の実施例として、キャップ基体の外筒に、外周から切り込まれた外周切り込み部と、外周切り込み部の片端側に上部薄肉部を隔てた起点から所定円周角の円弧範囲にわたって円周方向に延びるように、所定の深さまで切り込まれたスリット溝が上方から凹設され、スリット溝の底面の内周側は、外筒と係合リングを連結する破断可能な薄肉連結部となっていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のキャップは、隔壁に、切断溝の外側周縁に沿って補強リブが下方に向けて凸設された厚肉部が形成されているので、指掛けリングを引っ張った際に、切断溝の周縁の厚肉部は補強リブによって補強されているのに対して、厚肉部に比較して薄肉の密栓部は容易に変形して厚肉部との間に剪断力が働きやすくなり、弱化部が容易に切断されていくので、開封強度が低減され、弱い引っ張り力でも、隔壁に注出口を開設できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のキャップの説明図で、(a)は閉蓋時の断面図、(b)は開蓋時の下面図である。
図2】キャップの説明図で、(a)は上面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
図3】キャップの分別廃棄時の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のキャップについて、実施例を示して、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図1、2において、Aは容器本体の口部に装着されるキャップ基体、Bはキャップ基体AにヒンジCを介して連設された上蓋である。
【0013】
キャップ基体Aは、ヒンジCにより上蓋Bに連設する外筒1と、外筒1の上部内周側に連設し、上蓋Bを係合する係止突条2を有する係合リング3と、係合リング3の内周側に上部を連設する内筒4と、内筒4の内周側にリング状底壁5を介して立設された注出筒6と、注出筒6の内縁に連設された隔壁7とを具備している。
係合リング3は、上部に係止突条2を外周方向に突設し、上端は平坦面に形成されている。
【0014】
注出筒6の内周面には、打栓時にキャップ内の空気を逃がすエアー抜き凹部8が配設されている。
また、外筒1の上端にも、閉蓋時に空気の流通路となるエアー抜き溝9が配設されている。
【0015】
キャップ基体Aは、外筒1の内周が容器本体の口部外周と係合するとともに、内筒4の外周が容器本体の口筒内周と係合し、容器本体の口部を挟持するようにして容器に装着されている。
外筒1の内周面には、容器本体の口部の外周に係合する膨出環10が形成されている。
【0016】
外筒1のヒンジC近傍には、外周面に平面視で略V字状の外周切り込み部11と、該外周切り込み部11に対応する内周面の膨出環10に内周切り込み部12とが縦方向に刻設されている。
外筒1の外周切り込み部11と内周切り込み部12との間は、縦方向に破断可能な縦方向引き裂きラインとなる縦薄肉部13となっている。
【0017】
外筒1の外周切り込み部11のヒンジC側には、上部薄肉部14を隔てた起点から円周方向に延びるように、所定の深さまで切り込まれたスリット溝15が上方から凹設されている。
スリット溝15は、前記起点から一定の範囲で径方向に開口を広げていき、係合リング3の基部から外筒1の上部内周側にかけて一定の開口幅となって、所定円周角の円弧範囲にわたって周方向に延びている。
【0018】
スリット溝15の底面の内周側は、外筒1と係合リング3を連結する破断可能な周方向引き裂きラインとなる薄肉連結部16となっている。
【0019】
隔壁7には、容器本体内部の内容物を注出するための注出口を形成する密栓部17が下面から凹設された切断溝18を介して形成されており、隔壁7と密栓部17の間は破断可能な弱化部19となっている。
隔壁7は、密栓部17が薄肉に形成され、隔壁7下面の切断溝18の外側周縁には、補強リブ20が下方に向けて凸設された厚肉部が形成されている。
【0020】
密栓部17の上面には、ヒンジC側に、支柱21を介して密栓部17を引き上げて開封する指掛けリング22が連設されており、ヒンジCの反対側の端部付近および支柱21の下端縁には、他の密栓部17上面より僅かに高く凸設された補強突部23a、23bが形成されている。
【0021】
指掛けリング22のヒンジCの反対側の下部には、指先への接圧をやわらかくするための緩衝片24が形成されている。
【0022】
上蓋Bは、頂壁30と、頂壁30外縁に垂設される側周壁31と、頂壁30の裏面に垂設され、閉蓋時に外周がキャップ基体Aの注出筒6の内周と密嵌する密封筒32が設けられている。
頂壁30の裏面には、密封筒32よりも内周側に下面から環状溝が設けられ、内圧吸収薄肉部33が形成されている。
【0023】
側周壁31には、内周下部に、閉蓋時にキャップ基体Aの係止突条2および係止リング3の外周と上端平面部と係合し、閉蓋状態を維持する環状係合部34が設けられ、外周の所定位置にヒンジCが連設されている。
側周壁31のヒンジCの反対側の外周には、下端部に、つまみ35が突設され、つまみ35の上方には、所定範囲に肉抜き凹部36が凹設されている。
【0024】
環状係合部34は、側周嵌合部34aと係合天面34bとからなり、係合天面34bには、打栓時にキャップ内の空気を逃がすためのエアー抜き溝37が設けられている。
【0025】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本発明のキャップは、内容液を容器本体内に充填した後、閉蓋状態で上方から打栓し、容器本体に装着する。
【0026】
打栓時に上蓋Bの上方から押圧力が加えられると、キャップ本体Aに対して上蓋Bが僅かに下降することにより、上蓋Bの密封筒32の外周下端がキャップ本体Aの注出筒6に凹設したエアー抜き凹部8に対応する位置に下降し、エアー抜き凹部8を介して、密封筒32と注出筒6との内方に密封された空気が外方に排出される。
【0027】
また、上蓋Bの側周壁31が下降し、環状係合部34の係合天面34bがキャップ本体Aの係合リング3の上端平面部に押圧されることにより、側周壁31の肉抜き凹部36が変形し、肉抜き凹部36付近の側周壁31の下部を外側に向けさせ、該下部付近の側周嵌合部34aと係合リング3の外側との間に間隙を形成させる。
該間隙および係合天面34bに設けたエアー抜き溝37とキャップ本体Aの外筒1の上端に設けたエアー抜き溝9を介して、側周壁31の内方に密封された空気がキャップ外に排出される。
【0028】
打栓後、上蓋Bの上方から押圧力が外れると、上蓋Bがすぐに復元し、密封筒32外周下端部と注出筒6内周とが係合して密封されるとともに、側周嵌合部34aと係合リング3の外側とが係合して密封されることにより、キャップ内の空気が僅かに負圧になる。
【0029】
キャップ内の空気が僅かに負圧になることにより、打栓後、滅菌または洗浄のためにキャップの上方から温水シャワーを掛けた際に、キャップ内の空気が暖められて内圧が高められたとしても、負圧の分、余裕ができ、キャップ内の空気の膨張により上蓋が開蓋してしまうことを防止することができる。
また、上蓋Bには、頂壁30に環状の内圧吸収薄肉部33が設けられているので、キャップの密封筒32より内方の空気の内圧がさらに高まったとしても、内圧吸収薄肉部33によって頂壁30の中央部が膨らむように変形して内圧の上昇を抑制するので、上蓋の不用意な開蓋を確実に防止することができる。
【0030】
上蓋Bを開蓋する際は、上蓋Bのつまみ35を持ち上げると、まず側周壁31の肉抜き凹部36が変形し、肉抜き凹部36付近の側周壁31の下部が外側に向けられるので、その部分から環状係合部34とキャップ基体Aの係合リング3の外側との係合が外されていき、簡単に開蓋することができる。
【0031】
内容液を使用する際には、まず、上蓋Bを開蓋した後、キャップ基体Aの隔壁7の指掛けリング22に指を掛けて上方に引っ張り上げ、弱化部19を切断することにより、密栓部17を除去して、隔壁7に注出口を開設する。
【0032】
指掛けリング22を引っ張り上げた際に、支柱側21付近の密栓部17に力が加わって薄肉の密栓部17は変形するが、隔壁7の弱化部19の周りの下面に補強リブ20を設けた厚肉部が形成されていることにより厚肉部は変形しないため、弱化部19には大きな剪断力が働いて引っ張り力は働きにくいため、弱い力で弱化部19を切断することができ、従来のものに比べ、開封強度を低減させることができる。
【0033】
さらに、密栓部17の支柱21との連結部周辺とその反対側の上面に補強突部23が設けられており、密栓部17のその部分が厚肉に形成され、変形が阻害されるので、指掛けリング22を引っ張って抜栓する際の初期と最後で、補強リブ20の効果と合わせて、より開封強度を低減させることができる。
【0034】
次に、実験結果として、従来のものと本発明の実施例による抜栓力の比較を示す。
【表1】
表1からも解るとおり、本発明の実施例では、弱化部の肉厚が従来のものとあまり変わらないが、補強リブ20を設けることで密栓部17の肉厚をも薄くすることができ、弱化部の抜栓力を小さくすることができた。
【0035】
容器を使用後、本発明のキャップを分別廃棄する態様について説明する。
まず、本発明のキャップを開蓋して上蓋Bを把持し外方に引っ張ると、キャップ基体Aの外筒1のヒンジCとの連設部位が引っ張られて変形し、上部薄肉部14が引き裂かれて、外筒1の上端からスリット溝15の底部の位置まで破断される。
【0036】
その後、さらに上蓋Bを引っ張ると、図3に示すように、縦薄肉部13が引き裂かれるとともに、スリット溝15の薄肉連結部16が上部薄肉14側から引き裂かれ、外筒1のスリット溝15の外側および下側が離されていく。
【0037】
外筒1の薄肉連結部16が切断され、外筒1のスリット溝15の外側および下側が離されていくことにより、容器本体の口部外周に係合している外筒1の内周および膨出環10との係合が外されていく。
さらに、上蓋Bまたは切り離された外筒1を上に引っ張ると、容器本体の口部からキャップ基体Aを簡単に外すことができ、キャップと容器本体を分別廃棄することができる。
【0038】
上記実施例では、キャップ基体Aの外筒1に、上面からスリット溝15が凹設され、外筒1の外周に外周切り込み部11を凹設することにより、容器を使用後、容器本体とキャップを簡単に分別廃棄できるようにしているが、分別廃棄の構成はどのような構成でもよく、また、分別廃棄の構成自体をなくしてもよい。
したがって、キャップ基体の外筒の構成は、上記実施例の形態に限定されない。
【0039】
上記実施例では、キャップ基体Aと上蓋BとをヒンジCを介して連設したヒンジキャップとしているが、キャップ基体Aに上蓋Bを開閉自在に装着できればヒンジはなくてもよく、また、上蓋とキャップ基体にそれぞれ螺合するねじ部を設け、ねじ嵌合により開閉する構成でもよく、上蓋とキャップ基体の装着方法の構成は、上記実施例の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のキャップは、キャップ基体の隔壁に注出口を形成する弱化部の周縁に補強リブを形成したので、隔壁から密栓部を切り離していく際に、より小さい力で切り離すことができるから、力の弱いお年寄りや子供など、幅広い年齢層の消費者が安心して使用できるキャップとして広く利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
A キャップ基体
B 上蓋
C ヒンジ
1 外筒
2 係止突条
3 係合リング
4 内筒
5 リング状底壁
6 注出筒
7 隔壁
8 エアー抜き凹部
9、37 エアー抜き溝
10 膨出環
11 外周切り込み部
12 内周切り込み部
13 縦薄肉部
14 上部薄肉部
15 スリット溝
16 薄肉連結部
17 密栓部
18 切断溝
19 弱化部
20 補強リブ
21 支柱
22 指掛けリング
23 補強突部
24 緩衝片
30 頂壁
31 側周壁
32 密封筒
33 内圧吸収薄肉部
34 環状係合部
34a 側周係合部
34b 係合天面
35 つまみ
36 肉抜き凹部
図1
図2
図3