(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234038
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】差動増幅器、それを用いたΔΣA/Dコンバータ、オーディオ信号処理回路、電子機器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20171113BHJP
H03F 1/22 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
H03F3/45 A
H03F1/22
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-40935(P2013-40935)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-171036(P2014-171036A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坂野 佳久
【審査官】
白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−339259(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01168602(EP,A1)
【文献】
特開平10−084255(JP,A)
【文献】
Behzad Razavi、黒田忠弘,アナログCMOS集積回路の設計 応用編,2003年 3月30日,p. 375-380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/45
H03F 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタおよび第2トランジスタを含む第1差動対と、
前記第1差動対に電流を供給する第1電流源と、
前記第1トランジスタにカスコード接続された第3トランジスタと、
前記第2トランジスタにカスコード接続された第4トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレイン電圧を第1電流に変換するとともに、前記第2トランジスタのドレイン電圧を第2電流に変換するトランスコンダクタンス回路と、
前記トランスコンダクタンス回路からの前記第1電流を、所定係数倍して折り返して第3電流を生成するとともに、前記トランスコンダクタンス回路からの前記第2電流を、所定係数倍して折り返して第4電流を生成するカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路からの、前記第1電流の前記所定係数倍である前記第3電流の経路上に設けられた第1ダイオードおよび前記カレントミラー回路からの前記第2電流の前記所定係数倍である前記第4電流の経路上に設けられた第2ダイオードを含むバイアス回路と、
を備え、
前記第1ダイオードに生ずる電圧降下に応じた第1バイアス電圧が、前記第3トランジスタのゲートに印加され、前記第2ダイオードに生ずる電圧降下に応じた第2バイアス電圧が、前記第4トランジスタのゲートに印加されたことを特徴とする差動増幅器。
【請求項2】
前記トランスコンダクタンス回路は、
ゲートに前記第1トランジスタのドレイン電圧が印加された第5トランジスタおよびゲートに前記第2トランジスタのドレイン電圧が印加された第6トランジスタと、を含む第2差動対と、
前記第2差動対に電流を供給する第2電流源と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の差動増幅器。
【請求項3】
前記バイアス回路は、前記第1ダイオードと直列に設けられたインピーダンス素子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の差動増幅器。
【請求項4】
前記バイアス回路は、前記第1ダイオードと直列に設けられた定電圧素子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の差動増幅器。
【請求項5】
前記第1、第2ダイオードは、PN接合ダイオードを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項6】
前記第1、第2ダイオードは、ゲートとドレインが接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項7】
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣA/Dコンバータであって、
前記デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、
前記入力信号に応じた信号と前記帰還信号に応じた信号の差分に応じた差分信号を生成する差分演算回路と、
前記差分信号をフィルタリングする積分回路であって、直列に接続された複数ステージで構成され、各ステージは差動形式の積分器を含む積分回路と、
前記積分回路の出力信号を量子化し、前記出力信号を生成する量子化器と、
を備え、
各ステージの積分器は、差動形式のスイッチドキャパシタ回路と、完全差動型の演算増幅器と、を含み、
前記演算増幅器は、請求項1から6のいずれかに記載の差動増幅器を含むことを特徴とするΔΣA/Dコンバータ。
【請求項8】
アナログのオーディオ信号をデジタル信号に変換する請求項7に記載のΔΣA/Dコンバータと、
デジタル化されたオーディオ信号に所定の信号処理を施す信号処理部と、
を備えることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項9】
アナログのオーディオ信号をデジタル信号に変換する請求項7に記載のΔΣA/Dコンバータと、
デジタル化されたオーディオ信号に所定の信号処理を施す信号処理部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
演算増幅器やgmアンプなどに、差動増幅器が利用される。差動増幅器の利得を高めるために、ゲインブースト回路が利用される(非特許文献1参照)。
【0003】
図1(a)、(b)を参照し、ゲインブースト回路について説明する。
図1(a)は、差動増幅器の構成を示す回路図であり、
図1(b)は、
図1(a)の差動増幅器の等価回路図である。
【0004】
この差動増幅器2rは、1段演算増幅器と把握することもできる。入力差動対10を構成する第1トランジスタM1、第2トランジスタM2、テイル電流I
SSを生成する電流源12、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2に対してカスコード接続された第3トランジスタM3、第4トランジスタM4、ゲインブースト回路20rを備える。
【0005】
ゲインブースト回路20rは、トランジスタM1、M2それぞれのドレイン電圧V
D1、V
D2が一定となるように、トランジスタM3、M4それぞれのゲート電圧を調節するアンプと把握される。ゲインブースト回路20rおよびトランジスタM3、M4の構成は、能動カスコードとも称される。
【0006】
図1(b)には、ゲインブースト回路20rの具体的な構成が示される。ここでは理解の容易化、説明の簡素化のため、差動回路の片側のみを示す。
図1(b)のゲインブースト回路20rは、トランスコンダクタンス回路(電圧電流変換素子)22および負荷24を含む。この回路の出力端から見たインピーダンスRoutについて計算する際、入力トランジスタM1は抵抗r
M1として扱うことができる。
【0007】
トランスコンダクタンス回路22は、トランジスタM5を含み、入力トランジスタM1のドレイン電圧V
D1を、電流I1に変換する。トランスコンダクタンス回路22の変換利得をgm
5とする。負荷24は、トランスコンダクタンス回路22に接続され、電流I1を電圧に変換し、トランジスタM3のゲートに印加する。負荷24は、電流源あるいは抵抗である。
【0008】
このゲインブースト回路20rによれば、第3トランジスタM3のゲート電圧を固定した場合に比べて、差動増幅器2の入力段の、出力端から見たインピーダンスR
OUTを高めることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Behzad Razavi、Design of Analog CMOS Integrated Circuits、McGRAW-HILL Higher Education、p.309−311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1(a)、(b)の構成において、ゲインブースト回路20rの利得Aは、第1トランジスタM1のドレイン電圧V
D1と第3トランジスタM3のゲート電圧Vgの比で与えられ、式1(1)で表される。
A=dVg/dV
D1=gm・Ro
gmはトランスコンダクタンス回路22のトランスコンダクタンスを、Roは、電流源24のインピーダンスを表す。
【0011】
この構成では、第1トランジスタのドレイン電圧V
D1の変動が、利得Aで増幅され、第3トランジスタM3のゲートに印加される。したがって第3トランジスタM3のゲート電圧の変動幅(ダイナミックレンジ)が大きく、動作点が不安定となり、回路システム全体に悪影響を及ぼす場合がある。
【0012】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的は、動作点が安定化された差動増幅器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、差動増幅器に関する。差動増幅器は、第1トランジスタおよび第2トランジスタを含む第1差動対と、第1差動対に電流を供給する第1電流源と、第1トランジスタにカスコード接続された第3トランジスタと、第2トランジスタにカスコード接続された第4トランジスタと、第1トランジスタのドレイン電圧を第1電流に変換するとともに、第2トランジスタのドレイン電圧を第2電流に変換するトランスコンダクタンス回路と、トランスコンダクタンス回路からの第1電流を、所定係数倍して第3電流を生成するとともに、トランスコンダクタンス回路からの第2電流を、所定係数倍して第4電流を生成するカレントミラー回路と、カレントミラー回路からの第3電流の経路上に設けられた第1ダイオードおよびカレントミラー回路からの第4電流の経路上に設けられた第2ダイオードを含むバイアス回路と、を備える。第3トランジスタのゲートには、第1ダイオードに生ずる電圧降下に応じた第1バイアス電圧が印加され、第4トランジスタのゲートには、第2ダイオードに生ずる電圧降下に応じた第2バイアス電圧が印加される。
【0014】
この態様によれば、動作点を安定化することができる。また、第1カレントミラー回路のミラー比に応じて、利得、すなわち第1トランジスタのドレイン電圧に対する第3トランジスタのゲート電圧の比を調節することができる。
【0015】
トランスコンダクタンス回路は、ゲートに第1トランジスタのドレイン電圧が印加された第5トランジスタおよびゲートに第2トランジスタのドレイン電圧が印加された第6トランジスタを含む第2差動対と、第2差動対に電流を供給する第2電流源と、を備えてもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る差動増幅器によれば、動作点を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、差動増幅器の構成を示す回路図であり、
図1(b)は、
図1(a)の差動増幅器の等価回路図である。
【
図2】実施の形態に係る差動増幅器の構成を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、バイアス回路の変形例を示す回路図である。
【
図5】ΔΣA/Dコンバータを示すブロック図である。
【
図7】
図5のΔΣA/Dコンバータを利用した電子機器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
図2は、実施の形態に係る差動増幅器2の構成を示す回路図である。差動増幅器2は、一段オペアンプであってもよいし、多段オペアンプであってもよいが、
図2の差動増幅器2は、完全差動型の1段オペアンプの一部として示される。
【0021】
差動増幅器2は、第1差動対10、第1電流源12、第3トランジスタM3、第4トランジスタM4、ゲインブースト回路20を備える。
【0022】
第1差動対10は、ソースが共通に接続された第1トランジスタM1および第2トランジスタM2を含む。第1トランジスタM1のゲートには、差動増幅器2の差動入力信号対の一方が、第2トランジスタM2のゲートには、差動増幅器2の差動入力信号対の他方が入力される。
【0023】
第1電流源12は、第1トランジスタM1および第2トランジスタM2のソースと接続され、第1差動対10にテイル電流を供給する。
【0024】
第3トランジスタM3は、第1トランジスタM1に対してカスコード接続され、第4トランジスタM4は、第2トランジスタM2に対してカスコード接続される。具体的には第3トランジスタM3のソースは第1トランジスタM1のドレインと接続され、第4トランジスタM4のソースは第2トランジスタM2のドレインと接続される。
【0025】
第3トランジスタM3、第4トランジスタM4のドレインは、演算増幅器の差動出力OUT1、OUT2となっており、図示しない負荷に接続される。負荷は、抵抗負荷やカレントミラー回路などが例示されるが、特に限定されない。
【0026】
ゲインブースト回路20は、第1トランジスタM1のドレイン電圧V
D1が一定に保たれるように、第3トランジスタM3のゲート電圧をフィードバックにより調節するとともに、第2トランジスタM2のドレイン電圧V
D2が一定に保たれるように、第4トランジスタM4のゲート電圧をフィードバックにより調節する。
【0027】
ゲインブースト回路20は、トランスコンダクタンス回路32、カレントミラー回路34、バイアス回路36を備える。
【0028】
トランスコンダクタンス回路32は、第1トランジスタM1のドレイン電圧V
D1を第1電流I1に変換し、第2トランジスタM2のドレイン電圧V
D2を第2電流I2に変換する。
たとえばトランスコンダクタンス回路32は、第2差動対40、第2電流源42を含む。第2差動対40は、ソースが共通に接続された第5トランジスタM5、第6トランジスタM6を含む。第2電流源42は、第5トランジスタM5、第6トランジスタM6のソースと接続され、第2電流源42にテイル電流を供給する。
【0029】
カレントミラー回路34は、トランスコンダクタンス回路32からの第1電流I1を、所定係数倍(×n)して、折り返して第3電流I3を生成する。またカレントミラー回路34は、トランスコンダクタンス回路32からの第2電流I2を所定係数倍(×n)し、折り返して第4電流I4を生成する。たとえばカレントミラー回路34は、第1電流I1をコピーする、ゲートが共通に接続されたトランジスタM11、M12と、第2電流I2をコピーする、ゲートが共通に接続されたトランジスタM13、M14と、を含む。
【0030】
バイアス回路36は、カレントミラー回路34からの第3電流I3の経路上に設けられた第1ダイオードD1、およびカレントミラー回路34からの第4電流I4の経路上に設けられた第2ダイオードD2を含む。
【0031】
第3トランジスタM3のゲートには、第1ダイオードD1に生ずる電圧降下V
F1に応じた第1バイアス電圧Vb1が印加される。また第4トランジスタM4のゲートには、第2ダイオードD2に生ずる電圧降下V
F2に応じた第2バイアス電圧Vb2が、第4トランジスタM4のゲートに印加される。
【0032】
以上が差動増幅器2の構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、
図2の差動増幅器2の等価回路図である。
図3には、差動増幅器2の片側のみが示される。
【0033】
図3において、第1トランジスタM1は抵抗r
m1で示される。
第5トランジスタM5のトランスコンダクタンスをg
m1と書くとき、第1電流I1は以下の式で与えられる。
I1=g
m1×V
D1
【0034】
カレントミラー回路34により、第1電流I1がn倍され、式(1)の第3電流I3が生成される。
I3=I1×n=n×g
m1×V
D1 …(1)
【0035】
第1ダイオードD1の順方向電圧(電圧降下)V
F1と、第3電流I3の間には、以下の関係式が成り立つ。Isは定数、V
Tは熱電圧(非反転入力端≒26mV)である。
I3=Is×exp(V
F1/V
T−1)≒Is×exp(V
F1/V
T) …(2)
【0036】
式(1)および式(2)から、第1ダイオードD1の順方向電圧V
F1は、式(3)で表される。
V
F1=V
T・ln(I3/Is)=V
T・ln(n×g
m1×V
D1/Is) …(3)
【0037】
このように
図2の差動増幅器2によれば、第3トランジスタM3のゲートに供給される電圧の変動幅は、第1トランジスタM1のドレイン電圧V
D1の変動幅が対数圧縮されたものとなる。したがって
図1の差動増幅器2rと比べて、動作点を安定化することができる。
【0038】
また、カレントミラー回路34のミラー比nを調節することにより、ゲインブースト回路20の利得を調節することができ、動作点を任意に設定することができる。
【0039】
続いて差動増幅器2の用途を説明する。
オーディオ信号処理などにおいて、ΔΣ変調を利用したA/Dコンバータ(ΔΣA/Dコンバータともいう)が広く利用されている。ΔΣA/Dコンバータを用いることにより、量子化誤差に起因するノイズスペクトラムを、オーディオ帯域外に移動させることができる。これをノイズシェーピングと呼ぶ。
【0040】
図5は、ΔΣA/Dコンバータ402を示すブロック図である。ΔΣA/Dコンバータ402は、入力アナログ入力信号S
INをデジタル信号D
OUTに変換する。A/Dコンバータ402は、主として差分演算回路410、積分回路420、量子化器430、D/Aコンバータ440を備える。
【0041】
差分演算回路410は、アナログ入力信号S
INと、アナログ帰還信号S
FBとの差分を示す差分信号S
DIFFを生成する。積分回路420は、差分信号S
DIFFを積分(フィルタリング)する。量子化器430は、積分された差分信号を量子化する。量子化されたデジタル値D
OUTは、アナログデジタル変換の結果として出力される。D/Aコンバータ440は、量子化されたデジタル値D
OUTをアナログ帰還信号S
FBに変換し、差分演算回路410にフィードバックする。
【0042】
積分回路420は、離散時間型あるいは連続時間型で構成される。離散時間型の積分回路420は、スイッチドキャパシタ回路と演算増幅器の組み合わせによって構成される。
【0043】
図6は、積分回路420の構成を示す回路図である。入力アナログ信号S
INは差動信号であり、積分回路420は、差動形式で構成される。積分回路420には、直列に接続された複数の離散時間型積分器422_1、422_2、…(単に積分器ともいう)が設けられる。積分器422の個数は、フィルタの次数に応じて定められる。積分回路420は、複数の積分器422に加えて、係数回路や加算器を備えるが、
図6には、これらが省略されている。
【0044】
積分器422は、スイッチドキャパシタ回路424と演算増幅器426、キャパシタC1、C2を含む。実施の形態に係る差動増幅器2は、演算増幅器426に利用することができる。
【0045】
図7は、
図5のΔΣA/Dコンバータ402を利用した電子機器500の構成を示すブロック図である。電子機器500は、マイク502、オーディオ信号処理回路504、パワーアンプ506、スピーカ(ヘッドホン)508を備える。
【0046】
たとえば電子機器500は、ICレコーダ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話などである。
マイク502は、音響信号をアナログの電気信号に変換する。
オーディオ信号処理回路504は、マルチプレクサ510、DSP(Digital Signal Processor)512、D/Aコンバータ514を含む。マルチプレクサ510は、マイク502から、および図示しない音源からのアナログオーディオ信号を受け、ひとつを選択する。A/Dコンバータ402は、マルチプレクサにより選択されたオーディオ信号S
INをデジタル信号D
OUTに変換する。DSP512は、デジタルのオーディオ信号D
OUTに、所定の信号処理を施す。信号処理には、フィルタリング、イコライジング、エコー、デジタルボリウム制御、ミキシングなどが例示される。D/Aコンバータ514は、DSP512からのデジタル信号をアナログのオーディオ信号に変換する。パワーアンプ506は、オーディオ信号処理回路504からのオーディオ信号にもとづいて、スピーカ508を駆動する。
【0047】
またΔΣA/Dコンバータ402によってデジタルに変換されたオーディオ信号は、図示しないメモリに保存されてもよい。この場合、DSP512は、デジタルオーディオ信号D
OUTを、所定のフォーマットで圧縮(エンコード)してもよい。
【0048】
図7の電子機器500によれば、オーディオ信号を、低ノイズでデジタル信号に変換することができるため、後にデジタル信号をアナログ信号に再変換して再生する際に、高音質なオーディオ信号を得ることができる。
【0049】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0050】
(変形例1)
バイアス回路36に関して、ダイオードを2個スタックして第1ダイオードD1、第2ダイオードD2を構成し、それぞれ電圧降下V
F1、V
F2を第1バイアス電圧Vb1、第2バイアス電圧Vb2としたが、本発明はそれには限定されない。
第3トランジスタM3、第4トランジスタM4のバイアス電圧Vb1、Vb2の電圧範囲は、第1電流源12の電圧降下V
SAT、第1トランジスタM1(M2)の電圧降下V
SAT、および第3トランジスタM3(M4)のゲートソース間電圧V
GSの合計を考慮して決めればよい。
Vb1≒Vb2≒2×V
SAT+V
GS …(4)
図2は、ダイオードを2個スタックすることにより、式(4)を満たすバイアス電圧が生成されている状態を想定しているが、式(4)で与えられるバイアス電圧がもっと高い場合には、ダイオードを3個以上スタックしてもよいし、反対に、バイアス電圧がもっと低い場合には、ダイオードを1個としてもよい。
【0051】
(変形例2)
実施の形態では、PN接合ダイオードを利用する場合を説明したが、MOSFETのゲートドレインを結線したMOSダイオードを利用してもよい。この場合、MOSFETはV
DS>V
GS−V
THが成り立つ活性領域(飽和領域)で動作し、強反転領域(V
GS>V
T)を仮定すると、式(2)に代えて、以下の式(5)が利用できる。V
THはMOSFETのゲートソースしきい値電圧である。
I3=G×(V
F1−V
TH)
2 …(5)
ただしG=μC
OX/2・W/L
式(1)および式(5)から、MOSダイオードの順方向電圧V
F1は、式(6)で表される。
V
F1=√(I3/G)+V
TH=√(n×g
m1×V
D1/G)+V
TH …(6)
【0052】
MOSダイオードを用いた場合、第3トランジスタM3のゲートに供給される電圧の変動幅は、第1トランジスタM1のドレイン電圧V
D1の変動幅が平方根で圧縮されたものとなる。したがって
図1の差動増幅器2rと比べて、動作点を安定化することができる。
【0053】
(変形例3)
図4(a)、(b)は、バイアス回路36の変形例を示す回路図である。ここでは、差動の片側のみを示す。
図4(a)のバイアス回路36aは、ダイオードに加えて、ダイオードと直列なインピーダンス素子R1を含む。インピーダンス素子は、抵抗、トランジスタを用いた電流源などが利用可能である。この変形例では、
Vb1=V
F1+I3×R1
が成り立つ。
【0054】
図4(b)のバイアス回路36bは、ダイオードに加えて、ダイオードと直列な定電圧素子38を含む。定電圧素子38は、電圧源や、トランジスタ、ダイオードが例示される。この変形例では、
Vb1=V
F1+ΔV
が成り立つ。
【0055】
PN接合ダイオードと、MOSダイオードをスタックして、バイアス回路36を構成してもよい。
【0056】
(変形例3)
実施の形態では、差動増幅器が演算増幅器である場合を説明したが、差動増幅器はトランスコンダクタンスアンプであってもよい。また、実施の形態では完全差動型について説明したが、シングルエンドにも適用可能である。
【0057】
(変形例4)
実施の形態では、差動入力対のトランジスタM1、M2がNチャンネルの場合を説明したが、これらをPチャンネルとしてもよい。この場合、
図2において、PチャンネルとNチャンネルを入れ替え、天地を反転した構成としてもよい。
【0058】
(変形例5)
実施の形態では、差動増幅器2の用途として、ΔΣA/Dコンバータについて説明したが、差動増幅器2はこれに限定されることなくさまざまな用途に利用可能である。
【0059】
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
2…差動増幅器、10…第1差動対、12…第1電流源、20…ゲインブースト回路、22…トランスコンダクタンス回路、24…電流源、M1…第1トランジスタ、M2…第2トランジスタ、M3…第3トランジスタ、M4…第4トランジスタ、M5…第5トランジスタ、M6…第6トランジスタ、32…トランスコンダクタンス回路、34…カレントミラー回路、36…バイアス回路、D1…第1ダイオード、D22…第2ダイオード、40…第2差動対、42…第2電流源。