特許第6234045号(P6234045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234045
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】外装材の劣化判定方法および判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20171113BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20171113BHJP
   G01J 3/51 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01N21/88 J
   G01N17/00
   G01J3/51
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-72045(P2013-72045)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196927(P2014-196927A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石丸 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将平
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−266121(JP,A)
【文献】 特開平07−260707(JP,A)
【文献】 特開2001−141660(JP,A)
【文献】 特開2011−099709(JP,A)
【文献】 特開2003−28784(JP,A)
【文献】 特開平8−248024(JP,A)
【文献】 特開平3−259734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0195330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 21/84 − G01N 21/958
G01J 3/00 − G01J 4/04
G01J 7/00 − G01J 9/04
G01N 17/00 − G01N 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色の数値が既知の色既知面を有する色既知体を準備する準備過程と、
建物における劣化判定の対象となる外装材と前記色既知体の色既知面とを一緒にカラーのデジタル撮影手段で撮影する撮影過程と、
この撮影されたデジタルデータの画像の色を、この画像における前記色既知面の画像の色を用いて色補正し、補正後の色を数値化する色補正過程と、
この色補正された外装材の色の数値と定められた色の数値との差である、明度差を求めてこの明度差から汚れ程度を判定する汚れ判定過程と、
前記画像、または前記画像とは別に入力された前記外装材の画像の二値化を行って外装材のひび割れの大きさを求め、ひび割れの程度を求めるひび割れ検出過程と、
このひび割れ検出過程で求めたひび割れの程度と前記汚れ判定過程で求めた汚れの程度とを総合的に評価して、前記外装材の劣化の程度を判定する劣化判定過程とを含む、
外装材の劣化判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の外装材の劣化判定方法において、前記劣化判定過程では、前記外装材の劣化の程度から、定められた規則により前記外装材の余寿命を推定する外装材の劣化判定方法。
【請求項3】
建物における劣化判定の対象となる外装材と色の数値が既知の色既知面とを一緒に撮影したデジタルデータのカラーの画像を所定の記憶領域に記憶する入力処理手段と、
前記画像の色を、この画像における前記色既知面の画像の色を用いて色補正し、補正後の色を数値化する色補正手段と、
この色補正された外装材の色の数値と定められた色の数値との差である、明度差を求めてこの明度差から汚れの判定を行う汚れ判定手段と、
前記画像、または前記画像とは別に入力された前記外装材の画像の二値化を行って外装材のひび割れの大きさを求め、ひび割れの程度を求めるひび割れ検出手段と、
このひび割れ検出手段で求めたひび割れの程度と前記汚れ判定手段で求めた汚れの程度とを総合的に評価して、前記外装材の劣化の程度を判定する劣化判定手段とを含む、
外装材の劣化判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の外装材の劣化判定装置において、前記劣化判定手段は、前記外装材の劣化の程度から、定められた規則により前記外装材の余寿命を推定する外装材の劣化判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅やその他の建物における、外壁材や屋根材などの外側に面する部材である外装材の劣化の程度の判定、余寿命の判定等を行う外装材の劣化判定方法および判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物における外壁材等の外装材は、経年劣化で塗膜の色変化や塗膜のひび割れ、チョーキング、汚れなどの表層の劣化を経て、基材のひび割れなどの寿命に至る。この状態把握や、それを数値化することで、外壁材等がどのような段階にあるかを知り、また今後、どの期間でどのような状況にあるかを知ることができ、余寿命の判定が可能になる。
【0003】
一般的には、外壁材の劣化評価は、色差計を用いることで、色をL* * * 値等で数値化し、色差を求めることで行われる。ひび割れについては、マイクロスコープ等の別の機器を用い、画像を二値化するなどして劣化の程度を数値化する。つまり、色やひび割れなどを、それらの物性値に適した機器を用いてそれぞれ診断する。また、点検診断の多くは、こうした機器に頼らずに、目視であったり、せいぜいデジタルカメラなどの画像で行われているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−99709号公報
【特許文献2】特開2002−298134号公報
【特許文献3】特開2010−117259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
初期に起こる色変化については、色差計を用いることで、L* * * 値など、定量的な色の状態把握が可能である。しかし、色差計は、φ8程度の感知部を直接外壁等に接触させて、接触部の色を数値化するものである。測定範囲が小さいため、多色を含む場合には、部位毎の汚れの数値のばらつきが大きくなり、汚れ評価が難しいという問題がある。また、高額な上に、本体と検出部とを繋ぐ有線を必要とするため、実現場では操作性が悪かったり、測定に制限が出るなどの欠点がある。
【0006】
デジタルカメラなどの画像で汚れを診断する場合は、天候等の撮影時の周辺環境や、カメラの特性等によって画像が変わるため、精度の良い診断が難しい。
【0007】
汚れ、ひび割れについては、マイクロスコープなど、色差計とは別の高額な機器を用いて、例えば二値化などでその範囲を数値化することは可能である。しかし、これらの機器では余寿命を判断することはとできないという問題がある。また、外壁材などの塗膜の状態を精度良く評価するためには、色差などの単独の物性値だけでなく、ひび割れ、汚れなどの含めた総合的な診断が必要である。
【0008】
この発明の目的は、専用の測定機器を用いることなく、また日照、天候等の周辺環境の変化の影響が適切に補正できて、精度良く汚れ程度の判定が行え、かつ汚れとひび割れとを含めた総合的な劣化判定が行える外装材の劣化判定方法、判定装置を提供することである。
この発明の他の目的は、さらに余寿命の判定まで、専用の測定機器を用いることなく、日照、天候、撮影手段の機種等の影響を適切に補正して、精度良く行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の外装材の劣化判定方法は、
色の数値が既知の色既知面を有する色既知体(1)を準備する準備過程(S0)と、
建物における劣化判定の対象となる外装材(4)と前記色既知体(1)の色既知面とを一緒にカラーのデジタル撮影手段(2)で撮影する撮影過程(S1)と、
この撮影されたデジタルデータの画像の色を、この画像における前記色既知面の画像の色を用いて色補正し、補正後の色を数値化する色補正過程(S2)と、
この色補正された外装材(4)の色の数値と定められた色の数値との差である、明度差を求めてこの明度差から汚れの程度を判定する汚れ判定過程(S3)と、
前記画像、または前記画像とは別に入力された前記外装材(4)の画像の二値化を行って外装材(4)のひび割れの大きさを求め、ひび割れの程度を求めるひび割れ検出過程(S4)と、
このひび割れ検出過程で求めたひび割れの程度と前記汚れ判定過程で求めた汚れの程度とを総合的に評価して、前記外装材(4)の劣化の程度を判定する劣化判定過程(S5)とを含む。
なお、前記の「外装材(4)」は、外壁材や屋根材などの建物の外側に配置される部材を言う。前記「色既知体(1)」は、例えばカラーチャートである。
【0010】
この方法によると、色の数値が既知の色既知面を外装材(4)と一緒にデジタル撮影手段(2)で撮影するため、日照、天候等の撮影時の環境の変化や、デジタル撮影手段(2)の機種による特性の違いがあっても、画像中の色既知面の部分についての色の写り方の変化に応じて外装材(4)の画像を色補正することで、外装材(4)の色を適切に色補正し、数値化できる。この適切に数値化した色の数値と、定められた色の数値、例えば劣化,変色前の外装材(4)の色の初期値との色差を求め、この色差から汚れの程度を判断するため、精度良く汚れの程度を判断することができる。また、多色を含む外装材(4)であっても判断することができる。
上記のように色差によって汚れの程度を判定するが、この汚れの程度は黒系の偏りで判定できるため、色差のうち、明度差のみによって判定する。明度差のみで判定することで、色補正、数値化、判定の各処理が容易となる。
劣化判定に使用する機器としては、デジタル撮影手段(2)とそのデータ処理を行う情報処理装置(3)があれば良く、デジタル撮影手段(2)には、デジタルカメラやカメラ機能付きの携帯電話端末等を用いることができる。情報処理装置(3)には、パーソナルコンピュータや、いわゆるスマートフォン等の多機能電話端末や、タブレット端末等を利用できる。これらのため、高額な専用の測定機器を用いることなく、また日照、天候等の周辺環境の変化の影響が適切に補正できて、精度良く汚れ程度の判定が行える。
ひび割れの程度については、前記画像、または前記画像とは別に入力された前記外装材(4)の画像の二値化を行ってひび割れの大きさを求めるため、適切に判定できる。ひび割れの大きさは、ひび割れの総長さや、最大太さ、数量、それらの面積率等であり、このうちのいずれか一つの項目で判定しても、また複数の項目について総合的に判定しても良い。この二値化によるひび割れの程度の判定は、簡易な画像処理で行え、これについてもパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等で行える。
色差という単独の物性値だけでなく、ひび割れの程度を含めた総合的な評価で劣化の態度を判定するため、より精度良く外装材(4)の劣化が判定できる。
【0011】
この発明の外装材の劣化判定方法において、前記劣化判定過程では、前記外装材(4)の劣化の程度から、定められた規則により前記外装材(4)の余寿命を推定するようにしても良い。
上記のように劣化の程度が、汚れの程度とひび割れの程度との総合的な評価から精度良く判定できるため、外装材(4)の余寿命を精度良く、また時間を掛けずに推定することができる。
【0012】
この発明の外装材の劣化判定装置は、建物における劣化判定の対象となる外装材(4)と色の数値が既知の色既知面とを一緒に撮影したデジタルデータのカラーの画像を所定の記憶領域に記憶する入力処理手段(31)と、
前記画像の色を、この画像における前記色既知面の画像の色を用いて色補正し、補正後の色を数値化する色補正手段(32)と、
この色補正された外装材(4)の色の数値と定められた色の数値との差である、少なくとも明度差の数値を含む色差を求めてこの色差から汚れの判定を行う汚れ判定手段(33)と、
前記画像、または前記画像とは別に入力された前記外装材(4)の画像の二値化を行って外装材(4)のひび割れの大きさを求め、ひび割れの程度を求めるひび割れ検出手段(34)と、
このひび割れ検出手段(34)で求めたひび割れの程度と前記汚れ判定手段で求めた汚れの程度とを総合的に評価して、前記外装材(4)の劣化の程度を判定する劣化判定手段(36)とを含む。
【0013】
この構成の外装材の劣化判定装置によると、この発明の外装材の劣化判定方法について前述したと同様に、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置(3)で実現でき、また画像の取得にはデジタルカメラやカメラ機能付きの携帯電話端末等を用いることができる。このように、専用の測定機器を用いることなく、また日照、天候等の周辺環境の変化の影響が適切に補正できて、精度良く汚れ程度の判定が行え、かつ汚れとひび割れとを含めた総合的な劣化判定が行える。
【0014】
この発明の外装材の劣化判定装置において、前記劣化判定手段は、前記外装材(4)の劣化の程度から、定められた規則により前記外装材(4)の余寿命を推定する機能を有するものとしてもよい。上記のように劣化の程度が、汚れの程度とひび割れの程度との総合的な評価から精度良く判定できるため、外装材(4)の余寿命を精度良く、また時間を掛けずに推定することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の外装材の劣化判定方法、判定装置によると、専用の測定機器を用いることなく、また日照、天候等の周辺環境の変化の影響が適切に補正できて、精度良く汚れ程度の判定が行え、かつ汚れとひび割れとを含めた総合的な劣化判定が行える。
前記外装材の劣化の程度から、定められた規則により前記外装材の余寿命を推定する場合は、この余寿命の推定まで、専用の測定機器を用いることなく、日照、天候、撮影手段の機種等の影響を適切に補正して、精度良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の第1の実施形態に係る外装材の劣化判定方法の流れおよび内容を示す説明図である。
図2】同劣化判定方法で用いるデジカメ画像における彩度差、明度差、色差の各算定値と色差計による各算定値とを対比させたグラフである。
図3】外壁塗膜のひび割れ状況とその二値化画像との関係を示す説明図である。
図4】同劣化判定方法の流れ図である。
図5】同判定方法を実施する劣化判定装置のハードウェア構成例を示す概念図である。
図6】同外装材の劣化判定装置の概念構造を示すブロック図である。
図7】同外装材の劣化判定プログラムの流れ図である。
図8】この発明の他の実施形態に係る外装材の劣化判定方法の流れ図である。
図9】同判定方法を実施する劣化判定装置のハードウェア構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の第1の実施形態を図面と共に説明する。この外装材の劣化判定方法は、建物における外壁材や屋根材などの外側に面する部材である外装材4の劣化を判定する方法である。この外装材の劣化判定方法は、図4に各過程の順を、また図1に処理内容を図示するように、準備過程S0、撮影過程S1、色補正過程S2、汚れ判定過程S3、ひび割れ検出過程S4、劣化判定過程S5、表示過程S6をこの順に行う。使用する機器は、図5に示すように、色既知体1、デジタル撮影手段2、および情報処理装置3である。
【0018】
色既知体1は、色補正のために外装材4と共に撮影する補正ツールであって、色の数値が既知の色既知面を有する物である。この色既知体1には、例えば各種の色の表示部1aを区画して並べて表示したカラーチャートが用いられる。このカラーチャート等からなる色既知体1は、例えば平板状ないしシート状とされる。色既知体1は全体を1色としたものであっても良い。
デジタル撮影手段2は、カラーのデジタル画像が撮影できる手段であり、デジタルカメラ(いわゆるデジカメ)の他、カメラ機能を有する携帯電話端末や、他の携帯情報処理端末(PDA,タブレット)等であっても良い。
情報処理装置3は、パーソナルコンピュータや、いわゆるスマートフォン等の多機能次携帯電話端末、PDAやタブレット型の携帯情報処理端末等である。
【0019】
図1において、準備過程S0は、前記色既知体1を撮影のために準備する過程である。撮影過程S1では、建物における劣化判定の対象となる外装材4を、色既知体1の色既知面と一緒にデジタル撮影手段2で撮影する。この撮影は、状況によっては、遮光用のシート等で周囲の光を制限して行う。ストロボを用いて撮影しても良い。なお、図1における撮影過程S1で示す枠内は、デジタル撮影手段2で撮影した画像(色補正処理前のカラー画像)であるが、この画像中の外装材の部分および色既知体の部分に、外装材および色既知体についての参照符号1,4を付した。また、同図の画像中に表れている縦横の模様線は、煉瓦状に凹凸模様が付された外装材4の目地模様部4aである。
【0020】
このように撮影した画像のデータを、情報処理装置3(図5図6)に取り込み、情報処理装置3の各手段で、前記色補正過程S2から表示過程S6に至る各処理を行う。
【0021】
色補正過程S2では、撮影されたデジタルデータの画像の全体の色を、この画像における色既知体1の色既知面の画像の色を用いて色補正し、補正後の色を数値化する。色の数値が既知の色既知体1を外装材4と一緒にデジタル撮影手段で撮影するため、日照、天候等の撮影時の環境の変化や、デジタル撮影手段の機種による特性の違いがあっても、画像中の色既知体1の部分についての色の写り方の変化に応じて外装材の画像を色補正することで、外装材の色を適切に色補正し、数値化できる。色既知体1として、上記のように複数の色の表示部1aを有するカラーチャートを用いた場合、前記の色補正は、いずれか一つの色の表示部1aの画像部分を用いて色補正を行っても良く、また複数の表示部1aの画像部分を用いて色補正を行っても良い。
【0022】
補正後の色の数値化は、例えば、L* * * 表色系で示す数値とする。L* * * 表色系では、明度をL* 、色相と彩度をa* ,b* で示す。この明細書では、下記の数値を用いる。
基準点の色数値(L0* ,a0* ,b0*)、測定点の色数値(L1* ,a1* ,b1*)とすると
明度差:ΔL=√(L1*−L0*2
彩度差:Δa*b*=√(a1*−a0*2+(b1*−b0*2
色差:ΔE=√(L1*−L0*2+(a1*−a0*2+(b1*−b0*2
【0023】
汚れ判定過程S3では、色補正過程S2で色補正された外装材の色の数値と定められた色の数値との差である、明度差を求めてこの明度差から汚れの程度の判定を行う。前記の「定められた色の数値」は、例えば劣化,変色前の外装材4の色の数値の初期値とする。判定結果とする汚れの程度は、例えば、十段階程度の段階として示すようにして良く、またアナログ的に示すようにしても良い。
この場合に、前記の色補正された画像のうち、汚れ判定等の評価を行う評価選択範囲Eは、画像中に重ねて表示された選択枠等で選択し、この選択された評価範囲E内の外装材4の部分について汚れの程度の評価を行う。この選択枠による選択は、例えば前記選択枠をオペレータが情報処理装置3の入力機器11(図5)の操作による選択枠の移動、拡大・縮小、決定によって行うようにしても良く、また設定された規則によって自動で行うようにしても良い。
【0024】
汚れの程度の判定は、この例では明度差のみで行うようにしている。汚れの程度は黒系の偏りで判定できるため、色差のうち、明度差のみによっても、ある程度精度良く判定することができる。明度差のみで判定することで、判定が容易となる。
【0025】
劣化判定過程S5では、汚れ判定過程S3で判定した明度差等の色差を用いて外装材4の劣化の程度を判定するが、明度差、色差の他に、後述のように、ひび割れ検出過程S4で検出したひび割れの程度を用いて総合的に劣化判断を行う。
【0026】
ひび割れ検出過程S4では、前記外装材4の画像の白黒画像への二値化を行って外装材4のひび割れ5の状況(大きさおよび発生部位)を求め、ひび割れの程度を求める。ひび割れの程度を求める評価についても、前記の評価選択範囲Eについて行う。ひび割れの検出のための評価選択範囲Eは、汚れ判定の場合の評価選択範囲Eと異なる範囲であっても良い。また、検出結果となるひび割れの程度は、段階的な値であっても、アナログ的な値であっても良い。
【0027】
ひび割れの大きさは、ひび割れの総長さや、最大太さ、数量、それらの面積率〔%〕等であり、ひび割れの程度の判定は、このうちのいずれか一つの項目で判定しても、また複数の項目について総合的に判定しても良い。二値化によるひび割れの程度の判定は、簡易な画像処理で行える。
【0028】
なお、ひび割れの程度を求める画像は、汚れ判定のための前記画像とは別に入力された前記外装材4の画像であっても良い。例えば、劣化の状況などによっては、ルーペなどを用い、拡大した画像を用いる。
【0029】
劣化判定過程S5では、ひび割れ検出過程で求めたひび割れの程度と前記汚れ判定過程で求めた汚れの程度とを総合的に評価して、前記外装材4の劣化の程度を判定する。また、劣化の程度から、定められた規則により、外装材4の余寿命を推定する。
【0030】
余寿命の解析手順の例を纏めて説明する。
初期外壁色(使用前の外装材の色)のL* * * 値と、画像補正後の外壁色(外装材4の色)のL* * * 値とから、明度差、彩度差、および総合的な色差を搬出する。ここで言う総合的な色差は、明度差および彩度差を持つ色差である。この明度差、彩度差、および色差から、汚れの判定を行う。この汚れの判定は、前記汚れの判定過程S3で行う。
また、ひび割れの状況(発生部位)や、ひび割れの大きさ(総長さや、最大太さ、数量、それらの面積率〔%〕など)を検出する。この検出は、前記ひび割れ検出過程(S4)で行う。
このように求められた汚れの判定結果の値と、ひび割れの状況の値とから、外装材4の劣化状態の数値化または段階化した現在値と、余寿命の推定を行う。この劣化状態の現在値を求める処理と余寿命の推定を行う処理とを、劣化判定過程S5で行う。この劣化判定過程S5では、さらに外装材4の適切な塗り替え時期の推定を、定められた規則に従って行う。
【0031】
表示過程S6では、上記のように劣化判定過程S5で求められた外装材4の劣化の状況と、余寿命と、適切な塗り替え時期を、情報処理装置3の液晶表示装置等の画面表示装置12(図8図9)の画面に表示する。
【0032】
図2は、この実施形態の外装材の劣化判定方法で算定した彩度差、明度差、色差各算定値(デジカメによる算定値)と、色差計による上記各算定値との関係を示す。同図からわかるように、この実施形態の外装材の劣化判定方法で算定した各算定値と色差計による各算定値とは、正の相関関係が強く、簡易な算定で色差計による算定と同程度の彩度差、明度差、色差の各値が得られることが分かる。
【0033】
図3は、外装材4である外壁材の塗膜のひび割れの進行と二値化画像の関係について例を示す。ひび割れの初期、中期、後期のそれぞれのひび割れの画像は、同図の「外装材塗膜画像」とある欄に示される。この各段階のひび割れの画像は、二値化することによってその隣に図示するように、明瞭となる。初期では、ひび割れは細くて短いが、中期になるとひび割れは太く長くなる。後期になると、ひび割れは更に太くなり、目視でも判別できるように進行する。このようなひび割れの進行の傾向から、ひび割れの状況が分かる。
【0034】
この外装材の劣化判定方法によると、このように、専用の測定機器を用いることなく、また日照、天候等の周辺環境の変化の影響が適切に補正できて、精度良く汚れ程度の判定が行え、かつ汚れとひび割れとを含めた総合的な劣化判定が行える。さらに余寿命の判定が行える。
【0035】
この実施形態の作用・効果を纏め直すと次の通りである。
・ 外壁材の汚れの程度の他、余寿命を知ることが可能となる。
・ 色差計よりも広い範囲の汚れ評価が可能になる。
・屋根材の余寿命推定も外壁材の場合と同じ方法で行える。
・多色を含む外装材であっても、色を数値化できる。
・汎用のデジタルカメラを用い、安価に余寿命診断ができる。
・時間を掛けない従来に近い方法で精度良く診断できる。
・診断の機器類を減らすことができる。
・余寿命としてユーザーに提示することで、危険度、緊急度を分かり易くユーザーに説明することが可能となる。
・外壁等のメンテナンスの時期の適切な提示が可能となる。
・メンテナンス工事受注のための営業ツールとしての利点が可能となる。
・パソコンなどの情報処理装置3と連動させることで、点検直後にその場で診断結果を提示することが可能になる。
【0036】
つぎに、この外装材の劣化判定装置および判定プログラムにつき、図5図7と共に説明する。
図5において、情報処理層装置3は、前述のようにパーソナルコンピュータ、またはスマートフォン、タブレット端末等の形態端末である。情報処理層装置3は、CPU(中央処理装置)5、記憶手段6、および入出力ポート7を有している。記憶手段6に劣化判定プログラム9が記憶され、この情報処理層装置3により実行可能な状態にインストールされている。記憶手段6は、ハードディスクやSSD等の大容量記憶装置とメモリ等とを纏めて一つで示している。記憶手段6にはOS(オプレーションプログラム)(図示せず)が記憶され、また画像データ等のデータを記憶するデータ記憶領域6aが設けられている。前記劣化判定プログラム9は、前記OS上で実行されるアプリケーションプログラムである。
【0037】
この他に、入出力ポート7を介して、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力機器11と、液晶表示装置等の画像を表示可能な出力機器である画面表示装置が接続されている。入出力ポート7は、USB規格等のインタフェースを有し、デジタル撮影手段2で撮影された画像は、例えば入出力ポート7を介して情報処理装置3に入力される。デジタル撮影手段2で撮影された画像は、着脱可能なメモリチップ(図示せず)に記憶しておき、そのメモリチップから情報処理装置3に入力するようにしても良い。
【0038】
劣化判定プログラム9は、図7に流れ図を示すように、入力処理手順R1、色補正手順R2、汚れ判定手順R3、ひび割れ検出手順R4、劣化判定手順R5、表示手順R6を有する。入力処理手順R1を除く各手順R2〜R6は、情報処理装置3に、図1図4と共に説明した前記各過程S2〜S6、すなわち、前記色補正過程S2、汚れ判定過程S3、ひび割れ検出過程S4、劣化判定過程S5、表示過程S6を行わせる手順である。入力処理手順R1は、デジタル画像撮影手段2で撮影された画像のデータを、オペレータの操作等に従って所定のデータ記憶領域6aに記憶させる手順である。
【0039】
劣化判定プログラム9が情報処理装置3にインストールされることで、情報処理装置3に、機能達成手段である入力処理手段31、色補正手段32、汚れ判定手段33、ひび割れ検出手段34、劣化判定手段35、および表示手段36が構成される。こられの各手段31〜36は、劣化判定プログラム9の前記各手順R1〜R6の手順と情報処理装置3のハードウェアとでそれぞれ構成される。これら色補正手段32、汚れ判定手段33、ひび割れ検出手段34、劣化判定手段35、および表示手段36は、それぞれ、この劣化判定方法における、前記色補正過程S2、汚れ判定過程S3、ひび割れ検出過程S4、劣化判定過程S5、表示過程S6を行う手段である。また、入力処理手段30は、劣化判定プログラム9の入力処理手順R1につき説明した処理を行う手段である。
【0040】
図8図9は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態の劣化判定方法は、図1図7と共に説明した第1の実施形態において、外装材4における1回目の撮影で得た画像を用いた汚れ判定過程S3では明度差のみで汚れの判定を行い、この明度差から汚れが基準を超えと判定された場合に、再撮影過程S7、再補正過程S8、および再汚れ判定過程S9を加える方法である。特に説明する事項の他は、第1の実施形態と同様である。
【0041】
再撮影過程S7は、前記1回目の撮影時とは、外装材4における別の部分につき前記撮影過程S1と同様な撮影を再度行う過程である。再撮影過程S7は、汚れを拭き落とした上で同じ部位で、前記撮影過程S1と同様な撮影を再度行っても良い。
再補正過程S8では、この再撮影により得た画像につき、前記色補正および数値化を行う。
再汚れ判定過程S9では、この色補正された外装材4の色の数値と定められた色の数値との差である色差を求めてこの色差から汚れの程度の判定を行う。この再汚れ判定過程S9では、明度差以外の色の要素を含む色差から汚れの程度の判定を行う。
【0042】
上記のように明度差のみで汚れの判定を行うことで、簡単な演算処理で精度良く汚れの程度が判定できるが、この明度差から汚れが基準を超えと判定された場合は、外装材4における別の部分につき再度撮影するか汚れを拭き落とした上で同じ部位で再度撮影し、汚れの判定を再度行うことで、外装材4の全体としての汚れの程度をより適切に判定することができる。この再度の判定時は、明度差によって汚れの程度がある程度進んでいると判定された外装材につき行うため、明度差以外の要素、つまり彩度差を含んだ色差から汚れの程度の判定を行うことで、より厳密に汚れの程度を判定することが好ましい。
【0043】
再汚れ判定過程S9を経た場合は、後の劣化判定過程S6では、劣化判定、余寿命推定には、汚れ判定の結果として、再汚れ判定過程S9を用いるか、または最初の汚れ判定過程S3の結果と、再汚れ判定過程S9の結果との両方を用いる。
【0044】
図9の劣化判定装置は、図6に示す第1の劣化判定装置において、再入力処理手段37、再色補正手段38、および再汚れ判定手段39を加えたものである。再入力処理手段37は、再撮影過程S7で得た画像を所定の記憶領域に記憶する手段である。再色補正手段38、および再汚れ判定手段39は、それぞれ前記再補正過程S8、および再汚れ判定過程S9の処理を行う手段である。
【符号の説明】
【0045】
1…色既知体
2…デジタル撮影手段
3…情報処理層装置
4…外装材
9…劣化判定プログラム
31…入力処理手段
32…色補正手段
33…汚れ判定手段
34…ひび割れ検出手段
35…劣化判定手段
36…表示手段
37…再入力処理手段
38…再色補正手段
39…再汚れ判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9