(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234055
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20171113BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 305
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-94061(P2013-94061)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213562(P2014-213562A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ 達郎
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−152957(JP,A)
【文献】
特開2012−016880(JP,A)
【文献】
特開2008−302593(JP,A)
【文献】
特開2013−180539(JP,A)
【文献】
特開2004−330446(JP,A)
【文献】
特開2011−93281(JP,A)
【文献】
特開2012−35620(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0033016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録媒体にインクを吐出し記録を行う記録ヘッドと、
記録媒体の搬送路上方に設けられる案内手段であって、前記記録ヘッドよりも記録媒体の搬送方向の下流側に位置する先端部から前記搬送方向の下流側に延在する第1の延在部と、前記第1の延在部における前記搬送方向の下流側から上方および前記搬送方向の上流側に延在する第2の延在部と、前記第2の延在部における前記搬送方向の上流側から下方に延在すると共に下端部と前記第1の延在部との間に開口部を形成する第3の延在部と、を備える案内手段と、
を有し、
前記第3の延在部に付着するインク滴が前記下端部から前記第1の延在部に落下するように、前記第3の延在部の前記下端部が前記第1の延在部の前記先端部よりも前記搬送方向の下流側に位置することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記案内手段は、前記開口部から流入する気流を案内し、かつ前記気流中のインクミストがインク滴として付着する面を有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1の延在部及び前記第3の延在部は、前記搬送方向の下流側に向かって下方に傾斜することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1の延在部は、前記搬送方向と交差する方向における一端側から他端側に向かって下方に傾斜することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置内に浮遊するインクミストを回収する機能を有する
記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、記録ヘッドから吐出するインクを記録媒体に付与して画像を記録するときに、微小なインク滴がインクミストとなって記録装置内に浮遊するおそれがある。インクミストとしては、記録ヘッドからのインク滴の吐出に伴って生じる微小なインク滴、および記録媒体からのインクの跳ね返りにより生じる微小なインク滴が含まれる。このようなインクミストは、記録装置内において浮遊し、記録装置内のセンサや種々の駆動部等に付着して堆積するおそれがある。このような場合、インクミストがセンサに付着した場合には誤検知を招くおそれがあり、インクミストが駆動部に付着した場合には負荷の増大を招くおそれがある。また、記録媒体を搬送する搬送部にインクミストが付着した場合には、記録媒体の汚損により記録結果物の品質の低下を招くおそれがある。
【0003】
特許文献1には、記録装置内において浮遊するインクミストを吸引回収して、インクミストによる汚染を回避する方法が記載されている。具体的には、記録装置内の空気をファンによって吸気し、その吸気した空気を長尺な排気ダクトに備わるフィルタを通して記録装置外に排気する。排気ダクトは、空気の流れ方向の上流側における内部の流抵抗が大きく、その下流側における流抵抗が小さくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−90480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ファンおよび複雑な構成の排気ダクトなどを必要とするため、インクジェット記録装置の構成の複雑化および大型化を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、簡単な構成によって
、インクミストを拡散させないように収集することができる
記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、搬送される記録媒体にインクを吐出し記録を行う記録ヘッドと、
記録媒体の搬送路上方に設けられる案内手段であって、前記記録ヘッドよりも記録媒体の搬送方向の下流側に位置する
先端部から前記搬送方向の下流側に延在する第1の延在部と、前記第1の延在部における前記搬送方向の下流側から上方および前記搬送方向の上流側に延在する第2の延在部と、前記第2の延在部における前記搬送方向の上流側から下方に延在すると共に下端部と前記第1の延在部との間に開口部を形成する第3の延在部と、を備える案内手段と、を有し、前記第3の延在部に付着するインク滴が前記下端部から前記第1の延在部に落下するように、前記第3の延在部の前記下端部が前記第1の延在部の前記先端部よりも前記搬送方向の下流側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば
、簡単な構成によって
、インクミストを拡散させないように収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略側面図である。
【
図2】
図1のインクジェット記録装置の要部の概略斜視図である。
【
図3】
図1のインクジェット記録装置における空気の流れ方向の説明図である。
【
図4】
図3におけるガイド部材の拡大断面図である。
【
図5】
図3のガイド部材におけるインク滴の移動方向の説明図である。
【
図6】
図3のガイド部材におけるインク滴の移動方向の説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略側面図である。
【
図8】
図7のインクジェット記録装置における空気の流れ方向の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態においては、記録媒体が水平方向に搬送され、その搬送中の記録媒体の上方に記録ヘッドが備わる構成を前提として、上下、左右の方向を規定する。したがって、これら上下、左右の方向は、記録媒体の搬送方向および記録ヘッドの位置に応じて、適宜解釈されるべきものである。
【0011】
(第1の実施形態)
図1から
図6は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。
【0012】
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の概略側面図、
図2は、その概略斜視図である。本例の記録装置1はフルラインタイプであり、給紙部2、ベルト搬送部3、記録ヘッド4、排紙部5、およびガイド部材6を備えている。給紙部2は、不図示のトレイ上に積載した記録媒体Pをベルト搬送部3に順次供給する。ベルト搬送部3は、駆動プーリ31、従動プーリ32、および、それらの間に掛け渡されたベルト33を備えている。ベルト搬送部3は、不図示の駆動部によって駆動プーリ31が回転されることにより、給紙部2から供給された記録媒体Pを排紙部5に向かう矢印Aの搬送方向に搬送する。
【0013】
記録ヘッド4は、記録媒体Pの幅方向における記録領域の全域に渡って、搬送方向Aと交差(本例の場合は、直交)する方向に延在する長尺な記録ヘッドであり、その長さ方向に沿って、インクを吐出可能な複数の吐出口が配列されている。記録ヘッド4は、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、吐出口からインクを吐出する構成となっている。電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。
【0014】
ガイド部材6は、記録ヘッド4の位置よりも矢印Aの搬送方向の下流側の位置であって、かつベルト33の搬送面の上方の位置に配備されている。ガイド部材6は、搬送方向Aと交差(本例の場合は、直交)する方向に延在しており、その長さは、記録媒体Pの幅よりも大きく設定されている。本例のガイド部材6は、板部材を折曲したような形状となっており、ガイド部材6の長さ方向と直交する方向における断面形状は、その長さ方向において同一形状となっている。すなわち、ガイド部材6には、第1壁部61、第2壁部62、第3壁部63、および第4壁部64が形成されている。第1壁部61は、ガイド部材6の搬送方向上流側に位置する先端部6Aから搬送方向に延在し、第2壁部62は、第1壁部61の搬送方向下流側の端部から鉛直方向上方に屈曲している。第2,第3,第4壁部62,63,64は略断面コ字状を成している。第3壁部63は、第2壁部62の上端部から搬送方向上流側(
図1中の右方)に向かって延在し、第4壁部63は、第3壁部63の搬送方向上流側の端部から鉛直方向下方に屈曲している。
【0015】
ガイド部材6の搬送方向上流側に位置する先端部6Aは、
図6のように、ベルト33の搬送面上の記録媒体Pの記録面に対して、鉛直方向上方に所定距離H(本例の場合は、10mm)以下に位置するように設定されている。後述するように先端部6Aは傾斜しており、所定距離Hは、先端部6Aと記録媒体Pの記録面との間の最大距離である。先端部6Aと記録媒体Pの記録面との間の上下方向の距離を所定距離H以下とすることにより、後述するように、インクミストを含む空気をガイド部材6の内部に確実に導入することができる。本例の場合は、先端部6Aと記録媒体Pの記録面との間の上下方向の距離を10mm以下とすることにより、インクミストを含む空気をガイド部材6の内部に確実に導入することができた。
【0016】
ガイド部材6の終端部(第4壁部64の下端部)6Bは、先端部6Aよりも搬送方向下流側に位置する。第1壁部61は、
図4に示すように、搬送方向下流側に向かうにしたがって下方に所定の角度θ1で傾斜している。さらに第1壁部61は、
図6に示すように、搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向における一端側から他端側に向かうにしたがって下方に所定の角度θ2で傾斜している。第3壁部63は、
図4に示すように、搬送方向下流側に向かうにしたがって下方に所定の角度θ3で傾斜している。第3壁部63は、本例の場合とは逆に、搬送方向上流側へ向かうにしたがって下方に傾斜するようにしてもよい。
【0017】
記録媒体Pに画像を記録する際には、給紙部2からベルト搬送部3に記録媒体Pが供給され、その記録媒体Pは、ベルト33上に載置されたまま矢印Aの搬送方向に連続的に搬送されて、記録ヘッド4の下側の記録位置を通過する。不図示のセンサによりベルト33上の記録媒体Pの先端が検知される。その検知信号に基づいて、不図示の制御部が記録ヘッド4を駆動し、記録媒体P上の記録領域が記録位置を通過するタイミングに応じて記録ヘッド4からインクを吐出させる。
【0018】
画像が記録された直後における記録媒体Pの記録面の上方には、記録動作に伴って発生したインクミストが浮遊している。インクミストとしては、記録ヘッドからのインク滴の吐出に伴って生じる微小なインク滴、および記録媒体からのインクの跳ね返りにより生じる微小なインク滴が含まれる。このようなインクミストは、記録媒体Pの記録面(表面)上の空気の粘性の影響を受けて矢印Aの搬送方向に移動する。すなわち、インクミストは、浮遊した状態のまま記録媒体Pの記録面の上方に位置する空気と共に、ベルト33の搬送面および記録媒体Pの記録面近傍にまとわりつきながら、搬送方向に移動する。つまり、インクミストは、記録媒体Pの移動に伴って、記録媒体Pの表面近傍の空気(移動空気)と共に移動する。
【0019】
このように、記録媒体Pの記録面近傍に位置する空気はインクミストと共に搬送方向に移動し、その後、
図3中の矢印Bのように、搬送路下流側に位置するガイド部材6の先端部6Aによってガイド部材6の内部に掬い取られる。つまり、インクミストを含む記録面近傍の空気は、記録媒体Pの記録面から上方に離間されるようにして、ガイド部材6の内部に導入される。そのインクミストを含む空気は、ガイド部材6の内部において上方に移動する乱流となって、流速が高まるため、インクミストを含む後続の空気(搬送方向上流側の空気)を巻き込む。これにより、インクミストを含む空気の、記録媒体Pの記録面の近傍位置からの分離が加速される。
【0020】
インクミストを含む空気は、ガイド部材6内に導かれてからガイド部材6の内側の壁面に接触する。その空気に含まれるインクミストもガイド部材6の壁面に接触し、そのままガイド部材6の壁面に付着する。ガイド部材6の壁面に付着したインクミストは、後続のインクミストの付着に伴って大きなインク滴に成長し、その後、壁面に沿って下方へ落下して、第1壁部61の壁面上に特定の収集位置に収集される。
【0021】
すなわち、第1壁部61の壁面上のインク滴は、第1壁部61の傾斜に沿って、
図5中の矢印C方向および
図6中の矢印G方向に移動する。第2壁部62の壁面上のインク滴は、矢印Dのように下方に移動し、第3壁部63の壁面上のインク滴は、第3壁部63の傾斜に沿って矢印E方向に移動し、第4壁部64の壁面上のインク滴は矢印Fのように下方に移動する。このように、本例のガイド部材6は、空気中のインクミストを収集するための収集部材としての機能を有する。すなわち、第1,第2,第3および第4壁部61,62,63および64の壁面は、インクミストを含む移動空気と接触することにより、その移動空気中のインクミストを収集するための収集部材の壁面として機能する。第1,第2,第3および第4壁部61,62,63および64の壁面の内の少なくとも一部によって、収集部材の壁面を形成してもよい。
【0022】
ガイド部材6の終端部6Bが先端部6Aよりも搬送方向下流側に位置するため、第4壁部64の壁面上のインク滴は、第1壁部61の壁面上に落下することになり、記録媒体P上やベルト33上に落下することはない。したがって、記録媒体Pやベルト33の搬送面がインク滴によって汚染されることはない。
【0023】
これらの結果、ガイド部材6内に導かれたインクミストはインク滴に成長してから、記録媒体P上やベルト33上に落下することなく、第1壁部61の壁面上の特定の収集位置、つまり
図5中の左側の位置であってかつ
図6中の右側の位置に収集される。第1壁部61の特定の収集位置に収集されたインク滴は、その
図6中の矢印G方向に移動して不図示の廃インクタンクに排出される。
【0024】
(第2の実施形態)
図7および
図8は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【0025】
本実施形態においては、第1の実施形態におけるガイド部材6に代えて、断面L字状のガイド部材7が備えられている。ガイド部材7は、記録ヘッド4の位置よりも矢印Aの搬送方向の下流側の位置であって、かつベルト33の搬送面の上方の位置に配備されている。ガイド部材7は、搬送方向Aと交差(本例の場合は、直交)する方向に延在しており、その長さは、記録媒体Pの幅よりも大きく設定されている。本例のガイド部材7は、板部材を折曲したような形状となっており、ガイド部材7の長さ方向と直交する方向における断面形状は、その長さ方向において同一のL字状となっている。すなわち、ガイド部材7には第1壁部71および第2壁部72が形成されており、第1壁部71は、ガイド部材7の先端部7Aから搬送方向に延在し、第2壁部72は、第1壁部71の搬送方向下流側の端部から鉛直方向上方に屈曲している。先端部7Aは、前述した実施形態と同様に、ベルト33の搬送面上の記録媒体Pの記録面に対して、鉛直方向上方に所定距離H(本例の場合は、10mm)以下に位置するように設定されている。
【0026】
ガイド部材7には、多数の空隙部が形成された空隙体8が取り付けられている。この空隙体8は、後述するようにインクミストを含む空気と接触したときに、そのインクミストを空隙部に吸収することができるものである。例えば、連続または不連続の多数の空隙部が形成されたスポンジ状の発泡体、あるいはメッシュを複数層重ねた集合体の形態とすることができる。また空隙体8は、インクミストを含む空気を内部に取り込みつつインクミストを吸着するように、インクミストを含む空気を取り込むための空間と、多数の空隙部と、を組み合わせた構成であってもよい。空隙体8は、ガイド部材7の先端部7Aよりも搬送方向下流側に備えられている。
【0027】
記録動作時は、前述した実施形態の場合と同様に、記録媒体Pの記録面の上方に位置する空気がインクミストと共に搬送方向に移動し、その後、
図3中の矢印Bのように、搬送路下流側に位置するガイド部材7の先端部7Aによって掬い取られる。したがって、インクミストを含む空気は、記録媒体Pの記録面の近傍位置から上方に分離されて空隙体8に接触する。そのインクミストを含む空気は、上方に移動する乱流となって流速が高まるため、インクミストを含む後続の空気(搬送方向上流側の空気)を巻き込む。これにより、インクミストを含む空気の、記録媒体Pの記録面の近傍位置からの分離が加速される。
【0028】
ガイド部材7によって上方に分離されたインクミストを含む空気は空隙体8に接触し、インクミストは、空隙体8の空隙部によって吸着される。これにより、記録装置本体内にインクミストを拡散させることなく、それを回収することができる。
【0029】
(他の実施形態)
記録媒体の搬送方式はベルトを用いる方式に特定されず任意であり、例えば、静電力や吸引力を利用して記録媒体を吸着しつつ搬送する方式、あるいはプラテンと送り出しローラーを用いたローラー方式であってもよい。また記録媒体は、普通紙、再生紙、コート紙、光沢紙、OHP用シート等の紙類、あるいは各種布地、各種不織布、樹脂、金属、ガラス等を材質とするカットシート状のものであってもよい。また、記録媒体は、連続するシート状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 インクジェット記録装置
4 記録ヘッド
6,7 ガイド部材
8 空隙体(収集部材)
61 第1壁部
62 第2壁部
63 第3壁部
64 第4壁部
P 記録媒体