特許第6234059号(P6234059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234059低分子量アミドゲル化剤およびそれを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234059
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】低分子量アミドゲル化剤およびそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/34 20140101AFI20171113BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20171113BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C09D11/34
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-99628(P2013-99628)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-256649(P2013-256649A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】13/493,545
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン・チョプラ
(72)【発明者】
【氏名】バーケフ・ケシュケリアン
(72)【発明者】
【氏名】ダリル・ダブリュ・ヴァンベシエン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー・エリヤフ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ヴィ・ドラッペル
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エイチ・バニング
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エム・チャペル
(72)【発明者】
【氏名】フーシェン・スー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ・マコンヴィル
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225879(JP,A)
【文献】 特開2011−162786(JP,A)
【文献】 特開2013−234325(JP,A)
【文献】 特開2012−149256(JP,A)
【文献】 特開2012−184406(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/025893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己水平化硬化性固体インクであって、
硬化性ワックスと、
1つ以上のモノマーと、
低分子量アミドゲル化剤と、
光開始剤と、
任意の着色剤と、を含み、前記低分子量アミドゲル化剤は、500〜1,240の数平均分子量を有し、以下の式、
【化1】

を有し、nは0〜10であり、RおよびR’は、それぞれ互いに独立して、
【化2】

からなる群から選択される芳香族基である、自己水平化硬化性固体インク。
【請求項2】
前記低分子量アミドゲル化剤が、500〜1,150の数平均分子量を有する、請求項1に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項3】
前記低分子量アミドゲル化剤が、500〜1,079の数平均分子量を有する、請求項1に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項4】
前記低分子量アミドゲル化剤が、700〜1,079の数平均分子量を有する、請求項1に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項5】
前記硬化性ワックスが、前記自己水平化硬化性固体インクの総重量の0.1重量%〜30重量%の量で、前記自己水平化硬化性固体インク中に存在する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項6】
前記1つ以上のモノマーが、前記自己水平化硬化性固体インクの総重量の50重量%〜95重量%の量で、前記自己水平化硬化性固体インク中に存在する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項7】
前記任意の着色剤が、前記自己水平化硬化性固体インクの総重量の0.1重量%〜10重量%、の量で、前記自己水平化硬化性固体インク中に存在する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項8】
前記低分子量アミドゲル化剤が、前記自己水平化硬化性固体インクの総重量の1重量%〜30重量%の量で、前記自己水平化硬化性固体インク中に存在する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項9】
前記任意の光開始剤が、前記自己水平化硬化性固体インクの総重量の0.5重量%〜15重量%、の量で、前記自己水平化硬化性固体インク中に存在する、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項10】
非硬化性構成成分をさらに含み、前記非硬化性構成成分が、エトキシル化オクチルフェノール誘導体である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項11】
前記低分子量アミドゲル化剤のゲル点が、35℃〜70℃である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項12】
前記低分子量アミドゲル化剤の室温粘度が、1,000cps〜4x10cpsである、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項13】
20℃〜70℃のゲル点を有する、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の自己水平化硬化性固体インク。
【請求項14】
画像をジェット印刷する方法であって、
自己水平化硬化性固体インクをプリント基材上に噴出して、画像を形成する工程と、
前記自己水平化硬化性固体インクと物理的に接触することなく前記画像を水平化する工程と、
前記画像を放射線に曝して、前記プリント基材上の前記自己水平化硬化性固体インクを硬化させる工程と、を含み、前記自己水平化硬化性固体インクが、硬化性ワックスと、1つ以上のモノマーと、ゲル化剤オリゴマー混合物組成物と、光開始剤と、および任意の着色剤と、を含み、前記ゲル化剤オリゴマー混合物組成物が、さらに500〜1,240の数平均分子量を有する低分子量アミドゲル化剤を含み、前記低分子量アミドゲル化剤が、以下の式、
【化3】

を有し、式中、nは0〜10であり、式中、RおよびR’はそれぞれ、互いに独立して、
【化4】

からなる群から選択される芳香族基である、方法。
【請求項15】
前記低分子量アミドゲル化剤が、500〜1,150の数平均分子量を有する、請求項14に記載の画像をジェット印刷する方法。
【請求項16】
前記低分子量アミドゲル化剤が、500〜1,079の数平均分子量を有する、請求項14に記載の画像をジェット印刷する方法。
【請求項17】
前記低分子量アミドゲル化剤が、700〜1,079の数平均分子量を有する、請求項14に記載の画像をジェット印刷する方法。
【請求項18】
前記自己水平化硬化性固体インクが、20℃〜70℃のゲル点を有する、請求項14〜請求項17のいずれか1項に記載の画像をジェット印刷する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、種々の用途においてインクジェット印刷のために使用できる相転移インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的新しいタイプの相転移インクは、紫外線(UV)硬化性固体インクである。UV硬化性固体インクは、室温にてゲル様粘稠性であり、基材上に噴出させるために高温では低粘度液体であることを特徴とする。放出されたインクが基材に衝突する場合に、このインクは、相変化し、液体から、そのより粘稠なゲル粘稠性に戻る。これらのゲルインクは、冷却時に迅速に固化するので、これらのインクは、水または溶媒系インクに優る利点を有し、多くの表面、例えばプラスチック、ボール紙などから湿潤状態を取り除き得る。一旦ゲルインクが、UV放射線に曝されたら、インクは、硬化して、架橋ポリマーマトリックスを形成し、基材上に非常に硬質で耐久性のマークをもたらす。
【0003】
インクを水平または展延し、いわゆる「コーデュロイ」作用を低減し、パッケージングのような用途に必要とされる、より均一な光沢を有し、欠損ジェットをマスクし、より薄い層を得ることが所望されている。しかし、従来の水平化方法およびデバイスは、それらの独特の特性のためにゲルインクと共には使用できない。これらのインクは、ペースト様粘稠性を有するので、インクは、硬化前は粘着強度がほとんどない。加えて、インクは、多くの材料に対して良好な親和性を有するように設計される。結果として、インク層を平坦化するための従来の方法は、UVゲルインクを用いて使用される場合に、インクが水平化デバイスに張り付き、粘着性欠陥(すなわちスプリット)を生じ、水平化デバイス上に残留インクを残すので、役に立たない傾向がある。重合された材料は極めて強靭で非降伏性であるため、硬化後にインクを平坦化することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化前にゲル化UVインクを用いて印刷された画像を水平化するための非接触手法が必要とされている。故に、本実施形態は、硬化性ゲルインク、より詳細にはUV硬化性ゲルインク、ならびにこれらのインクを基材上に水平化するために特に採用される方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に例示される実施形態によれば、自己水平化硬化性固体インクが提供され、このインクが、硬化性ワックス、1つ以上のモノマー、低分子量アミドゲル化剤、光開始剤、および任意の着色剤を含み、ここでこの低分子量アミドゲル化剤が、約800〜約2,500の重量平均分子量を有し、以下の式を有する。
【化1】
nは1〜10であり、ここでRおよびR’はそれぞれ互いに独立して、
【化2】
からなる群から選択される芳香族基である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、現在の硬化性固体インクに使用される従来の(メインライン)アミドゲル化剤のレオロジー特性(複素粘度、G’およびG’’対温度)を示すグラフである。
図2図2は、本実施形態によって製造された低分子量アミドゲル化剤のレオロジー特性(複素粘度、G’およびG’’対温度)を示すグラフである。
図3図3は、種々の分子量のゲル化剤を含むシアンインクについて、ゲル点および室温粘度傾向対EDA:Pripol比を示すグラフである。
図4図4は、本実施形態のアミドゲル化剤の分子量とTgとの間の相関を示すグラフである。
図5図5は、標準硬化性固体インクと、本実施形態によって製造された標準硬化性固体インクとのプリント比較を示す低倍の顕微鏡写真である。
図6図6は、標準硬化性固体インクに比べて、本実施形態によって製造された標準硬化性固体インクによって提供される印刷された画像の所望の特性を示す拡大顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施形態は、一般に、紫外線(UV)硬化性固体インクに関する。特に、本実施形態は、硬化前に印刷されたインク画像においてインクの自己水平化を可能にする特性を示す硬化性固体インク、およびその製造方法を提供する。これらの硬化性固体インクは、低下した相転移温度、および調整された粘弾性特性を有する低分子量(Mw)アミドゲル化剤化合物を含み、このことにより、自己水平化能力を付与し、水平化のために物理的接触を必要としないことを見出した。
【0008】
本実施形態のアミドゲル化剤化合物は、次の通りであるエステル末端処理ポリアミドゲル化剤の一般構造を有する。
【化3】
式中、nは、約0〜約20、約0〜約15、または約0〜約10であり、式中、R1およびR1’はそれぞれ互いに独立に、好適な末端キャッピング基(例えばアルコール、芳香族または芳香族アルコール基)である。一部の実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。いくつかの実施形態において、本実施形態のアミドゲル化剤は、約800〜約2,500、または約900〜約2,400、または約1,000〜約2,300の重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかの実施形態において、本実施形態のアミドゲル化剤は、約500〜約2,500、または約700〜約2,300、または約900〜約1,700の数平均分子量(Mn)を有する。
【0009】
一部の実施形態において、R1およびR1’のそれぞれは、互いに独立して、
【化4】
からなる群から選択される芳香族基である。
【0010】
本実施形態のアミドゲル化剤化合物は、2工程プロセスから製造される。第1の工程において、アミドゲル化剤前駆体(オルガノアミド)は、以下のスキームに示されるように、2当量のPripol(Croda Inc.(Edison,New Jersey)から入手可能)および1当量のエチレンジアミン(EDA)を用いて合成される。
【化5】
式中、nは0〜約20、約0〜約15、または約0〜約10であってもよい。
【0011】
第2の工程において、オルガノアミドは、種々の末端キャップアルコールで末端キャップされて、エステルを製造する。オルガノアミドの調製中、エステル末端処理されたポリアミドゲル化剤のオリゴマーまたはx−マーが創出される(最終ゲル化剤中のエステルを製造するための末端キャッピングは、オリゴマー分布を変化させない)。
【0012】
2工程プロセスから、本明細書に開示されるエステル末端処理されたポリアミドゲル化剤のオリゴマーまたはx−マーのブレンドを含むゲル化剤組成物が得られる。ブレンドオリゴマーまたはx−マーは、モノマーまたはユニマーを含んでいてもよく、故に本明細書で使用される場合、「オリゴマー」または「x−マー」という用語は、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマーなどのような複数のモノマーからなる分子に加えてモノマーまたはユニマーを含む。オリゴマー性アミドゲル化剤組成物は、最適なゲル点および室温粘度を提供して、安定な噴出、および印刷されたインクの制御された透き通しを促進する、区別可能な範囲のオリゴマー(「x−マー」とも称される)を含む。
【0013】
安定的な噴出は、圧電プリントヘッドにおけるインクの性能を指す、定性的測定である。安定的な噴出の特徴は、一連の周波数24kHz〜48kHzにわたる液滴体積(すなわち30pL)の均一性を含み、印刷された頁では実線として現れ、印刷された頁で点線として見える場合もあるジェットドロップアウトがほとんどない。制御された透き通しは、生じる「ハロイング」の程度を指し、インクの液体構成成分、例えばモノマー、顔料分散液などが頁からプールし、頁に染み込む。制御された透き通しは、多孔質基材、例えば紙およびボール紙にのみ関連し、非多孔質である、箔またはプラスチックには関連しない。透き通し測定は、濃度計を用いることによって行われ、測定は、印刷された色画像(前面)にて行われ、印刷された頁の裏面と比較される。
【0014】
いくつかの実施形態において、ゲル化剤オリゴマー混合物組成物は、組み合わせまたは混合物にて、以下の2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上)で構成されるオリゴマーのブレンドを含む。ユニマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー、デカマー、ウンデカマー、およびドデカマー。
【0015】
いくつかの実施形態において、オリゴマー混合物における各オリゴマーの割合は、等モーラーである。一部の実施形態において、オリゴマー性混合物は、1を超えて20までのx−マーを含み、ここでxは約1〜約12であり、x−マーは、上記で記載される通りであることができ、上記で列挙されるようなユニマー、ダイマー、トリマーなどを含み、ドデカマーまでを含むことができる。オリゴマー性混合物中に存在するx−マーのいずれかの割合は、おおよそ約0.5%〜約50%、約10%〜約50%、および約20%〜約50%であってもよい。
【0016】
第1の工程に使用されるEDAの量を制御することによって、例えばPripolの量に対して使用されるEDAの量を低減することによって、その分布は、より大きな割合で、より低オーダーのx−マー(繰り返しユニットnのより小さい値)を作製するようにシフトされ得る。通常、Pripolの量に対するEDAの量は、EDA:Pripolモル比として表される。実施形態において、アミドゲル化剤前駆体を合成する際に使用されるEDA:Pripol比は、元々のEDA:Pripol比である1.1:2から、約0.9:2〜約0.05:2、または約0.8:2〜約0.10:2、または約0.75:2〜約0.25:2に低下させることによって変更される。こうした実施形態において、x−マー組成物としての低分子量アミドゲル化剤混合物の組成物は、より高い割合のn=0(ユニマー)、n=1(ダイマー)、n=2(トリマー)種を有する。特定実施形態において、低分子量アミドゲル化剤は、30〜60%のn=1(ダイマー)種を含有し、n=0(ユニマー)、n=1(ダイマー)、およびn=2(トリマー)の合計は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法−飛行時間(MALDI−TOF)質量分析法によって測定される場合に、組成物全体の少なくとも80%を構成する。
【0017】
アミドゲル化剤の貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)は、複素粘度のサブコンポーネントであり、ゲルがどの程度ゴム状であり、非弾性であるかの定量的尺度を与える。低分子量のゲル化剤が、低温でG’値よりも低いG’’値を有することを見出し、これはtanδまたはG’’/G’比に反映される。ゲル点は、G’’/G’の交差点として定義される。最適なゲル点は、熱散逸が変動するので、基材に依存する。一部の実施形態に従うインクの最適なゲル点範囲は、周囲室温〜70℃、またはより好ましくは30℃〜60℃、またはより好ましくは40℃〜50℃であるが、ゲル点は、これらの範囲外であることができる。ゲル点は、温度段階動粘度測定においてtanデルタ(またはtanδ)が1に等しい点として定義される。Tanδは、以下の式によって定義されるコンピュータ計算された無単位の値である。
【数1】
式中、G’’は、(Pa単位の)粘弾性率または損失弾性率であり、G’は、(Pa単位の)貯蔵弾性率または弾性率である。さらに、tanδ比が<1である場合、G’’(損失弾性率)がG’(貯蔵弾性率)より小さく、この材料がゲルとして定義される。反対に、tanδ比が>1である場合、G’’(損失弾性率)がG’(貯蔵弾性率)を超え、材料はもはやゲルではない。Tanδ>1が粘稠な(非ゲル)状態であり、Tanδ<1は、弾性(ゲル)状態である。
【0018】
インクのゲル点は、ゲル化剤単独のゲル点によって直接影響を受け、60〜70℃の範囲であることができる。さらに、アミドゲル化剤の分子量は、ゲル点を動かす。現在の硬化性固体インクに使用されるゲル化剤に関して、ゲル点は、図1に示されるように72℃である。本実施形態の低分子量ゲル化剤に関して、ゲル点は、図2に示されるように、59℃で顕著に低い。特定実施形態において、低分子量ゲル化剤は、約10℃〜約70℃、または約40〜約69℃、または約45〜約65℃のゲル点を有する。
【0019】
一般に、EDA:Pripol比が低くなるにつれて、ゲル化剤のゲル点および室温粘度が低くなる。(いくつかの実施形態において、EDA:Pripol比は、約0.9:2〜約0.05:2、または約0.8:2〜約0.1:2、または約0.75:2〜約0.25:2である。さらなる実施形態において、低分子量アミドゲル化剤のゲル点は、約10〜約70、または約40〜約69、または約45〜約65である。こうした実施形態において、低分子量アミドゲル化剤の室温粘度は、約500cps〜約10cps、または約1000cps〜約5x10cps、または約10,000cps〜約10cpsである。
【0020】
硬化性固体インクに使用されるアミドゲル化剤の分子量は、インク粘度に影響を与えることが示されている。種々の分子量分布のアミドゲル化剤をインクに配合して、得られた粘度変化を、図3に示されるように、ゲル点および室温粘度のプロットによって追跡した。Tg(ガラス転移温度)は、図4に示されるように、EDA:Pripol比に対してプロットされている。図3および4に示されるように、アミドゲル化剤前駆体のEDA:Pripol比における変動を通して分子量分布プロファイルを注意深く制御することによって、アミドゲル化剤は、インクが自己水平化でき、またはデバイス接触を必要とせずに水平化できる点まで、その弾性を失い始める。
【0021】
本実施形態のインク組成物は、本明細書に開示される低分子量アミドゲル化剤を含む。本開示はまた、本実施形態の低分子量アミドゲル化剤を含む硬化性インクに関する。
【0022】
いくつかの実施形態において、インク組成物はさらに、場合により、1つ以上の以下のものを含んでいてもよい。硬化性ワックス、モノマー、着色剤、およびフリーラジカル光開始剤、および非硬化性樹脂(例えば粘度調整剤)。
【0023】
アミドゲル化剤は、硬化性固体インクにおいて、インクの約1重量%〜約50重量%、約1重量%〜約30重量%、約2重量%〜約20重量%、約5重量%〜約15重量%、および約5重量%〜約10重量%の量で存在してもよい。
【0024】
硬化性ワックスは、硬化性固体インクの総重量の約0.1〜約30重量%の量で、硬化性固体インク中に存在してもよい。これは、インクの約1重量%〜約30重量%、約1重量%〜約20重量%、および約5重量%〜約10重量%を含む。
【0025】
特定の実施形態において、硬化性モノマーは、硬化性固体インクの総重量の約50〜約95重量%、または約60〜約90重量%の量で、硬化性固体インク中に存在してもよい。これは、インクの約50重量%〜約80重量%、約60重量%〜約80重量%、および約80重量%〜約95重量%を含む。
【0026】
着色剤は、硬化性固体インクの総重量の約0.1重量%〜約10重量%、約1重量%〜約10重量%、約5重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約5重量%の量で硬化性固体インク中に存在してもよい。
【0027】
光開始剤は、硬化性固体インクの総重量の約0.5重量%〜約15重量%、約5重量%〜約15重量%、約1重量%〜約10重量%、約5重量%〜約10重量%、および約1重量%〜約5重量%の量で、硬化性固体インク中に存在してもよい。
【0028】
インク組成物は、いずれかの所望のまたは好適な方法によって調製できる。例えば、インクキャリアの各構成成分は、共に混合されることができ、その後この混合物を少なくともその融点、例えば約60℃〜約110℃、80℃〜約100℃および85℃〜約95℃に加熱する。着色剤は、インク成分を加熱する前またはインク成分を加熱した後に添加されてもよい。顔料が選択された着色剤である場合、溶融混合物は、磨砕機またはボールミル装置での粉砕に供されることができ、インクキャリア中の顔料の分散に影響を与える。次いで加熱された混合物は、約5秒〜約30分以上撹拌され、実質的に均質で、均一な溶融物が得られ、続いてインクを周囲温度(通常約20℃〜約25℃)まで冷却する。インクは周囲温度にて固体である。特定実施形態において、形成プロセス中、それらの溶融状態におけるインクは、モールドに注がれ、次いで冷却され、固化されてインクスティックを形成する。好適なインク調製技術は、参照することでその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,762号明細書に開示される。
【0029】
本実施形態のインク組成物は、場合により、1つ以上の従来の添加剤をさらに含み、こうした従来の添加剤と関連した既知の機能を活用してもよい。いくつかの実施形態において、本実施形態のインク組成物は、液体硬化性インクであってもよい。いくつかの実施形態において、本実施形態のインク組成物はさらに、追加のゲル化剤を含んでいてもよく、これは硬化性および非硬化性ゲル化剤を含む。
【0030】
本実施形態の調製された固体インクは、以前に達成された噴出温度、例えば約100〜約70℃、または約100〜約80℃、約90〜約70℃より低い噴出温度を有する。特に、本実施形態はまた、より迅速な相変化特徴、優れた硬化性能、硬化後の増大した硬度、および低収縮特徴を提供する。
【0031】
本実施形態の固体インクは、周囲室温〜70℃、または30〜60℃、または40〜50℃の最適ゲル点を有するが、このゲル点はこれらの範囲外であることができる。本実施形態の差動透き通し値は、0.01〜0.15、または0.10未満(任意単位)の範囲である。差動透き通しおよび光学密度測定は、X−Rite 938濃度計(X−Rite(Grand Rapids,Michigan)から入手可能)を用いて行われた。開示された差動透き通し値は、内面透き通しと、1つの紙の裏面透き通しとの差を表す。
【0032】
本実施形態は、高い反応性および最小収縮を有する低エネルギー紫外線(UV)硬化性顔料着色固体インクを提供する。本実施形態のこれらのインクは、本実施形態の低分子アミドゲル化剤を含有し、90℃にて20cPs未満、または90℃で約20〜約5cPS、または90℃で約15〜約8cPsの範囲の粘度、ならびに3%未満または約1〜3%の収縮値を有するように配合される。本明細書で使用される場合、収縮値は、液体状態から冷却される際のインクの収縮を示す。加えて、これらのインクは、従来の固体インク、例えばXerox CorporationまたはOce North Americaから市販されるものよりも相当高い硬化後の硬度を示す。硬化速度および硬化後のベンチマークとなる硬度における顕著な改善が、これらのインクにも見られ、ならびに固化時に構成成分間の適合性が改善される。拡張試験では、非硬化性樹脂の濃度は、5重量%未満、または約1〜約3重量%、または1重量%未満であるべきであることが示された。硬化速度は、硬度対s/ft単位におけるUV光への曝露期間(Fusions UVドープされた水銀D−バルブ,600W/cm)をプロットし、以下の式を適用することによって得られた。
【数2】
式中、初期の傾きを初期硬化速度として採用する。本実施形態のインクは、約130〜約250ft/s、例えば約180〜約250ft/sまたは約200〜約250ft/sの硬化速度を示す。UV硬化性ランプに使用されるバルブタイプに依存して、硬化に使用される特徴的なアウトプットは、約200nm〜約450nmであってもよい。
【0033】
本実施形態のインクは、硬化性ワックス、モノマー、本実施形態のゲル化剤オリゴマー混合物組成物、任意の着色剤およびフリーラジカル光開始剤、ならびに場合により5重量%までの非硬化性樹脂、例えば粘度調整剤のブレンドを含んでいてもよい。硬化性ワックス、モノマー、任意の着色剤、およびフリーラジカル光開始剤は、約40℃未満、または約40〜約30℃未満の固体材料であり、ほとんどまたは全く臭いがない。これらの構成成分は、約70〜約100℃、または約80〜約100℃、または約70〜約90℃の範囲の温度にて噴出できるように選択された。故に、これらの固体インクは、これらの温度で約5〜約15cP、または約10〜約15cP、または約8〜約12cPの粘度を有し、高温にて堅牢噴出し、室温では固体であり、多孔質基材上に印刷された液滴の過剰な展延または移動を防止する。印刷後、組成物は、堅牢性の画像を提供するために硬化される。
【0034】
本実施形態の硬化性固体インクは、約0.1〜約11または約0.1〜約5、または約0.1〜約3のプレ硬化された硬度を有する。これらのインクは、約85〜約100、または約90〜約97、または約93〜約97のポスト硬化された硬度を有する。硬化性固体構成成分としては、モノマー、硬化性ワックスおよび本実施形態のゲル化剤オリゴマー混合物組成物を含む。硬化性ワックスは、室温(25℃)で固体であってもよい。ワックスを含むことは、組成物が適用温度から冷却するときに、インク組成物の粘度の増大を促進し得る。硬化性ワックスは、他の構成成分と混和性であり、重合してポリマーを形成するいずれかのワックス構成成分であってもよい。ワックスという用語は、例えば一般にワックスと称される種々の天然、変質天然および合成材料のいずれかを含む。
【0035】
硬化性ワックスは、例えば組成物の約0.1重量%〜約30重量%、例えば約0.5重量%〜約20重量%、または約0.5重量%〜15重量%の量の組成物中に含まれることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、インク組成物はさらに、場合により、モノマーを含んでいてもよい。本実施形態に使用され得るモノマーは、実施形態において、参照することで本明細書に組み込まれる米国特許第7,559,639号明細書に記載されるモノマーである。一部の実施形態において、モノマーは硬化性モノマーである。故に、本実施形態のインクは、本実施形態のゲル化剤オリゴマー混合物組成物、少なくとも1つの硬化性ワックス、少なくとも硬化性モノマー、任意の光開始剤、および任意の着色剤を含んでいてもよい。実施形態において、複数の硬化性液体モノマーは、硬化性相転移インク中に存在する場合、硬化性液体モノマーは、「コモノマー」を指す。コモノマーは、いずれかの好適な硬化性モノマーから選択されてもよい。
【0037】
実施形態のインク組成物は、ゲル化剤材料、例えばエポキシ−ポリアミド複合体ゲル化剤の溶解性およびゲル化特性のため、第1のコモノマーを含んでいてもよく、これは熱駆動された可逆性のゲル相を有するインクビヒクルを含んだインク組成物を製造するために有用であり、ここでこのインクビヒクルは、硬化性液体モノマー、例えばUV硬化性液体モノマーを含む。こうしたインク組成物のゲル相により、インク液滴を受容基材にピン止めできる。
【0038】
用語「硬化性モノマー」はまた、組成物に使用されてもよい、硬化性オリゴマーを含むことが意図される。
【0039】
硬化性モノマーまたはオリゴマーは、様々に、粘度低下剤として、組成物が硬化される場合には結合剤として、接着促進剤として、反応性希釈剤として、および硬化画像の架橋密度を増大できる架橋剤として、機能でき、それによって、硬化された画像の靭性を向上させる。好適なモノマーは、低分子量、低粘度、および低表面張力を有していてもよく、UV光のような放射線に曝される際に重合を行う官能基を含んでいてもよい。
【0040】
上述のように、インク組成物はさらに、場合により、開始剤、例えば光開始剤を含んでいてもよい。こうした開始剤は、インクの硬化を補助するために望ましい。実施形態において、放射線、例えばUV光放射線を吸収して、インクの硬化性構成成分の硬化を開始する光開始剤が使用されてもよい。フリーラジカル重合によって硬化されるインク組成物、例えばアクリレート基を含有するまたはポリアミドを含むインクを含有するインク組成物のための光開始剤としては、光開始剤、例えばCibaからIRGACUREおよびDAROCURの商標名で販売される、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アルコキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、およびアシルホスフィン光開始剤を挙げることができる。
【0041】
インク組成物に含まれる開始剤の総量は、例えば、インク組成物の約0.5〜約15重量%、例えば約1〜約10重量%であってもよい。
【0042】
放射線硬化性相転移インクは、一般に、少なくとも1つの硬化性モノマー、ゲル化剤、着色剤、および放射線活性化開始剤、特にインクの硬化性構成成分、特に硬化性モノマーの重合を開始する光開始剤を含む。場合により、インク組成物はまた、アミン共力剤を含有でき、それは水素原子を光開始剤に供与でき、それによって重合を開始するラジカル種を形成し、またフリーラジカル重合を阻害する溶解した酸素を消費でき、それによって重合速度を増加させる共開始剤である。一部の実施形態において、インク組成物は、さらに場合により、着色剤を含んでいてもよい。いずれかの所望のまたは有効な着色剤は、着色剤がインクビヒクル中に溶解または分散でき、他のインク構成成分と相溶性である限り、インク組成物に利用されることができ、それらとしては染料、顔料、これらの混合物などが挙げられる。染料より通常、安価で堅牢性の顔料が、硬化性相転移インク組成物に含まれてもよい。多くの染料の色は、硬化段階中に生じる重合プロセスによって、おそらくフリーラジカルによるそれらの分子構造の攻撃から、変更され得る。組成物は、従来のインク着色剤材料、例えばカラーインデックス(C.I.)溶媒染料、分散染料、改質酸および直接染料、塩基性染料、硫黄染料、バット染料などと組み合わせて使用できる。
【0043】
着色剤は、所望の色または色相を得るためにいずれかの所望のまたは有効な量、例えば少なくともインクの約0.1重量%〜約50重量%、または少なくともインクの約0.2重量%〜約20重量%、または少なくともインクの約0.5重量%〜約10重量%でインク中に存在してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、インク組成物は、さらに場合により、インクビヒクルまたはキャリアを含んでいてもよい。特定実施形態において、本明細書に開示されるインクビヒクルは、いずれかの好適な硬化性モノマーまたはプレポリマーを含むことができる。硬化性モノマーまたはプレポリマーおよび硬化性ワックスは共に、インクの約50重量%を超えて、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%を形成できる。
【0045】
いずれかの好適な基材または記録シートは、普通紙を含むものが利用できる。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、画像をジェット印刷する方法が提供され、硬化性固体インクをプリント基材に噴出して、画像を形成する工程、およびこの画像を放射線に曝して、プリント基材上の硬化性固体インクを硬化する工程を含み、ここでこの硬化性固体インクは、硬化性ワックス、任意の非硬化性構成成分、1つ以上のモノマー、任意の着色剤、本実施形態のゲル化剤オリゴマー混合物組成物および光開始剤を含む。
【実施例】
【0047】
実施例1A
低分子量オルガノアミド前駆体(0.25:2EDA:Pripol)の合成
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パドル、滴下漏斗、Dean−Starkトラップ、還流冷却器、熱電対プローブを備えた1Lケトルに、Pripol1009(ダイマー酸,酸価=194mgKOH/g、Cognis Corp.から入手可能)(454.27g,785mmol)を添加した。このケトルをアルゴンでパージし、撹拌しながら90℃に加熱した。次に、エチレンジアミン(6.55ml,98mmol、Huntsman Chemical Corp.から入手可能)を、滴下漏斗に添加し、5〜10分かけて徐々にPripolに滴下した。このケトルを、コットンウールおよび箔で包み、温度を維持して、120℃に加熱し、次いで150℃まで上昇させ、最終的に170℃にし、4時間半の間保持した。水副生成物をDean−Starkトラップに回収した。4.5時間後、反応器内容物を箔パンに注ぎ、冷却し、固化した。オルガノアミドが、金色の粘稠液体として単離された(酸価=168.72mg/g)。
【0048】
実施例1B
オルガノアミド前駆体(0.25:2EDA:Pripol)を用いる低分子量アミドゲル化剤の合成
4−ブレードのスチールインペラ、バッフル、および冷却器を備えた2LのステンレススチールBuchi反応器に、低分子量オルガノアミド(423.4g,酸価=168.72,423.4mmol)を、添加ポートを介して添加し、ヒートガンを用いて材料を溶融させた。次に、反応器をNガスで、3SCFH(標準毎時立方フィート)流量にてパージし、210℃に加熱し、450RPMでの混合を始動した。次に、2−フェノキシエタノール(211g,1527mmol,Aldrich Chemicals)およびFascat4100(0.42g,2mmol,Arkema Inc.)を、ビーカー中でプレ混合し、反応に添加した。反応ポートを閉じ、反応を210℃で3時間保持した。3時間後、15gのさらなる2−フェノキシエタノールを添加し、反応をさらに4時間継続させた。反応が完了した後、溶融したゲル化剤生成物を箔パンに放出し、室温まで冷却させた。生成物は琥珀色ゼリーであった。酸価=0.65。
【0049】
実施例2A
低分子量オルガノアミド前駆体(0.6:2EDA:Pripol)(NC1049NC30890−21を使用)の合成
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パドル、滴下漏斗、Dean−Starkトラップ、還流冷却器、熱電対プローブを備えた1Lケトルに、Pripol1009(ダイマー酸,酸価=194mgKOH/g、Cognis Corp.から入手可能)(454.38g,785mmol)を添加した。このケトルをアルゴンでパージし、撹拌しながら90℃に加熱した。次に、エチレンジアミン(15.73ml,236mmol、Huntsman Chemical Corp.から入手可能)を、滴下漏斗に添加し、5〜10分かけて徐々にPripolに滴下した。このケトルを、コットンウールおよび箔で包み、温度を維持して、120℃に加熱し、次いで150℃まで上昇させ、最終的に170℃にし、4時間半の間保持した。水副生成物をDean−Starkトラップに回収した。4.5時間後、反応器内容物を箔パンに注ぎ、冷却し、固化した。オルガノアミドが、金色の粘稠半固体として単離された(酸価=133.68mg/g)。
【0050】
実施例2B
オルガノアミド前駆体(0.6:2EDA:Pripol)を用いる低分子量アミドゲル化剤の合成
4−ブレードのスチールインペラ、バッフル、および冷却器を備えた2LのステンレススチールBuchi反応器に、低分子量オルガノアミド(454.7g,酸価=133.68,542mmol)を、添加ポートを介して添加し、ヒートガンを用いて材料を溶融させた。次に、反応器をNガスで、3SCFH(標準毎時立方フィート)流量にてパージし、210℃に加熱し、450RPMでの混合を始動した。次に、2−フェノキシエタノール(180g,1300mmol,Aldrich Chemicals)およびFascat4100(0.45g,2mmol,Arkema Inc.)を、ビーカー中でプレ混合し、反応に添加した。反応ポートを閉じ、反応を210℃で3時間保持した。3時間後、14.5gのさらなる2−フェノキシエタノールを添加し、反応をさらに4時間継続させた。反応が完了した後、溶融したゲル化剤生成物を箔パンに放出し、室温まで冷却させた。生成物は、金色の軟質ゲルであった。酸価=3.44。
【0051】
実施例3A
低分子量オルガノアミド前駆体(0.75:2EDA:Pripol)の合成
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パドル、滴下漏斗、Dean−Starkトラップ、還流冷却器、熱電対プローブを備えた1Lケトルに、Pripol1009(ダイマー酸,酸価=194mgKOH/g、Cognis Corp.から入手可能)(400.81g,693mmol)を添加した。このケトルをアルゴンでパージし、撹拌しながら90℃に加熱した。次に、エチレンジアミン(17.35ml,260mmol、Huntsman Chemical Corp.から入手可能)を、滴下漏斗に添加し、5〜10分かけて徐々にPripolに滴下した。このケトルを、コットンウールおよび箔で包み、温度を維持して、120℃に加熱し、次いで150℃まで上昇させ、最終的に170℃にし、4時間半の間保持した。水副生成物をDean−Starkトラップに回収した。4.5時間後、反応器内容物を箔パンに注ぎ、冷却し、固化した。オルガノアミドが、金色の粘稠半固体材料として単離された(酸価=123.63mg/g)。
【0052】
実施例3B
オルガノアミド前駆体(0.75:2EDA:Pripol)を用いる低分子量アミドゲル化剤の合成
4−ブレードのスチールインペラ、バッフル、および冷却器を備えた2LのステンレススチールBuchi反応器に、低分子量オルガノアミド(405g,酸価=123.26,445mmol)を、添加ポートを介して添加し、ヒートガンを用いて材料を溶融させた。次に、反応器をNガスで、3SCFH(標準毎時立方フィート)流量にてパージし、210℃に加熱し、450RPMでの混合を始動した。次に、2−フェノキシエタノール(150g,1086mmol,Aldrich Chemicals)およびFascat4100(0.42g,2mmol,Arkema Inc.)を、ビーカー中でプレ混合し、反応に添加した。反応ポートを閉じ、反応を210℃で5時間保持した。反応が完了した後、溶融したゲル化剤生成物を箔パンに放出し、室温まで冷却させた。生成物は、琥珀色の軟質ゲルであった。酸価=1.37。
【0053】
実施例4A
低分子量オルガノアミド前駆体(0.8:2EDA:Pripol)の合成
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パドル、滴下漏斗、Dean−Starkトラップ、還流冷却器、熱電対プローブを備えた1Lケトルに、Pripol1009(ダイマー酸,酸価=194mgKOH/g、Cognis Corp.から入手可能)(450.54g,779mmol)を添加した。このケトルをアルゴンでパージし、撹拌しながら90℃に加熱した。次に、エチレンジアミン(20.8ml,312mmol、Huntsman Chemical Corp.から入手可能)を、滴下漏斗に添加し、5〜10分かけて徐々にPripolに滴下した。このケトルを、コットンウールおよび箔で包み、温度を維持して、120℃に加熱し、次いで150℃まで上昇させ、最終的に170℃にし、4時間半の間保持した。水副生成物をDean−Starkトラップに回収した。4.5時間後、反応器内容物を箔パンに注ぎ、冷却し、固化した。オルガノアミドが、金色の粘稠半固体材料として単離された(酸価=112.22mg/g)。
【0054】
実施例4B
オルガノアミド前駆体(0.8:2EDA:Pripol)を用いる低分子量アミドゲル化剤の合成
4−ブレードのスチールインペラ、バッフル、および冷却器を備えた2LのステンレススチールBuchi反応器に、低分子量オルガノアミド(440g,酸価=112.22,440mmol)を、添加ポートを介して添加し、ヒートガンを用いて材料を溶融させた。次に、反応器をNガスで、3SCFH(標準毎時立方フィート)流量にてパージし、210℃に加熱し、450RPMでの混合を始動した。次に、2−フェノキシエタノール(146g,1055mmol,Aldrich Chemicals)およびFascat4100(0.45g,2.1mmol,Arkema Inc.)を、ビーカー中でプレ混合し、反応に添加した。反応ポートを閉じ、反応を3時間210℃で保持した。3時間後、15gのさらなる2−フェノキシエタノールを添加し、反応をさらに4時間継続させた。反応が完了した後、溶融したゲル化剤生成物を箔パンに放出し、室温まで冷却させた。生成物は、琥珀色の軟質ゲルであった。酸価=0.65。
【0055】
実施例5A
従来のオルガノアミド前駆体(1.1:2EDA:Pripol)の合成
1.125:2のEDA:Pripol比を用いる従来のアミドゲル化剤前駆体を次のように調製した。バッフルおよび4−ブレードインペラを備えた2Lのステンレススチール反応器に、Pripol1009ダイマー二酸(Cognis Corporation)(703.1g,酸価=194mg/g,1215mmol)を添加した。反応器を、アルゴンでパージし、90℃で加熱し、インペラを400RPMで回転させた。次に、エチレンジアミン(Huntsman Chemical Corporation,21.9g,364mmol)を、15分かけて反応器に直接フィードラインを通して徐々に添加した。反応器温度は95℃に設定した。次に、反応器温度を280分にわたって165℃まで上昇させ、165℃で1時間保持した。最終的に、溶融オルガノアミド生成物を箔パンに放出し、室温に冷却した。生成物は、琥珀色固体樹脂であった。酸価:133.7。
【0056】
実施例5B
従来のオルガノアミド前駆体を用いる従来のアミドゲル化剤の合成
従来のアミドゲル化剤は、次のように、上記実施例にて調製された従来のオルガノアミド前駆体から調製された。4−ブレードのスチールインペラ、バッフル、および冷却器を備えた2LのステンレススチールBuchi反応器に、従来のオルガノアミド(711.8g,酸価=133.7,614.65mmol)を、添加ポートを介して添加し、ヒートガンを用いて材料を溶融させた。次に、反応器をNガスで、3SCFH(標準毎時立方フィート)流量にてパージし、210℃に加熱し、450RPMでの混合を始動した。次に、2−フェノキシエタノール(281.2g,2035.4mmol,Aldrich Chemicals)およびFascat4100(0.70g,3.4mmol,Arkema Inc.)を、ビーカー中でプレ混合し、反応に添加した。反応ポートを閉じ、反応を210℃で2.5時間保持した。2.5時間後、反応ポートを開き、27.5gのさらなるフェノキシエタノールを添加し、反応を4時間行った。反応が完了した後、溶融したゲル化剤生成物を箔パンに放出し、室温まで冷却させた。生成物は、琥珀色の堅いゲルであった。酸価=3.9。
【0057】
得られたゲル化剤(実施例1B〜5Bから)および対応する特性を、以下の表1に列挙する。
【表1】
【0058】
試験
DSC測定
DSC測定は、種々のEDA:Pripol比を有するゲル化剤について行った。図4に示されるように、ゲル化剤分子量とゲル化剤Tgとの間には直接相関がある。
【0059】
表2および3は、標準ゲル化剤を用いる硬化性固体インクのためのインク配合物、および本実施形態のゲル化剤を用いる硬化性固体インクのためのインク配合物を与える。
【表2】
【表3】
【0060】
印刷されたインク画像
インクは、5つの異なる基材、コーティングされた紙およびコーティングされていない紙の両方およびプラスチック:SG Elite(スーパーグロスeliteコーティングされた紙)、4200(普通紙)、CX(Colour Expressionsコーティングされた紙)、DCEG(Digital Colour Elite Glossコーティングされた紙)、SG Elite(Silk Gloss Eliteコーティングされた紙)およびBOPP(二軸配向されたポリプロピレンプラスチックフィルム)上に、Typhoonプリントヘッド(Xerox Corp.から入手可能)を用いて印刷された。均一性を定性評価するために顕微鏡を通して写真を撮影した。探すべき3つの特定欠陥は、フィルム中のピンホール(湿潤性が劣ることを示す)、不整配列またはドット形式の「モールス符号」ライン(水平化が劣ることを示す)、および印刷されたライン間の白色ギャップ(同様に水平化が劣ることを示す)であった。
【0061】
図5は、2つのインクの比較を示す低倍の顕微鏡写真である:左に標準分子量アミドゲル化剤(表2)を含有するインク、右に本実施形態の低分子量アミドゲル化剤(表3)を有するインク。本発明のゲルインクは、確実な均一性を示し、印刷されたラインにモールス符号パターンを実質的に示さない。図6は、左の標準分子量アミドゲル化剤に比べて、右の本発明のゲルインクによって得られるシャープな縁部鋭さおよびより平滑なフィルムを示す拡大顕微鏡写真である。
【0062】
実験データは、標準ゲル化剤単独の%を変更することによっては、同じ水平化結果を得ることができないことを確認した。2つのインクの非接触水平化性能における相違は、低分子量アミドゲル化剤に直接起因する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6