(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234092
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】混合消火剤及びそれを用いたスプリンクラ消火設備
(51)【国際特許分類】
A62D 1/00 20060101AFI20171113BHJP
A62C 35/60 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
A62D1/00
A62C35/60
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-145757(P2013-145757)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-42811(P2014-42811A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-172743(P2012-172743)
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞志
【審査官】
岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−000558(JP,A)
【文献】
特開昭47−044998(JP,A)
【文献】
特開昭52−149898(JP,A)
【文献】
特開平10−151220(JP,A)
【文献】
特開2001−129116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/00
A62C 35/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、揺変剤と、粉末硬化剤と、を含有した混合消火剤であって、
該混合消火剤は、チキソトロピー性を有しており、
該粉末硬化剤は、水と混練されることで硬化することを特徴とする混合消火剤。
【請求項2】
防護領域に設けられ配管に接続されたスプリンクラヘッドと、該配管に消火剤を圧送する加圧手段とを備え、該加圧手段によって、該配管を介して該スプリンクラヘッドから請求項1に記載の混合消火剤を放出するスプリンクラ消火設備であって、
該混合消火剤は、該加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、該配管内を移動して該スプリンクラヘッドから散布されると共に、該スプリンクラヘッドから散布されるとゲル状となり、
該配管には、常時においても該混合消火剤が充填されていることを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
防護領域に設けられ配管に接続されたスプリンクラヘッドと、該配管に消火剤を圧送する加圧手段とを備え、該加圧手段によって、該配管を介して該スプリンクラヘッドから水と、揺変剤と、粉末消火剤と、を含有した混合消火剤を放出するスプリンクラ消火設備であって、
該混合消火剤は、チキソトロピー性を有しており、粒子状の粉末消火剤が該混合消火剤内に略均一に分散されていると共に該加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、該配管内を移動して該スプリンクラヘッドから散布されると共に、該スプリンクラヘッドから散布されるとゲル状となり、
該配管には、常時においても該混合消火剤が充填されていることを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項4】
請求項1に記載の混合消火剤を予め混合し、
前記配管に消火剤を圧送する加圧手段によって該混合消火剤を防護領域に供給することを特徴とする消火設備。
【請求項5】
水と、揺変剤と、粉末消火剤と、を含有した混合消火剤を予め混合し、
前記配管に消火剤を圧送する加圧手段によって該混合消火剤を防護領域に供給する消火設備であって、
該混合消火剤は、チキソトロピー性を有しており、粒子状の粉末消火剤が該混合消火剤内に略均一に分散されていることを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関し、より詳細には金属火災に対しても用いることが可能なスプリンクラ消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラ消火設備では、消火用水を火源又はその周囲に散布することにより、人が火源に近づくことなく水の冷却効果により火災を抑制若しくは消火すると共に、火源の周囲を濡らすことによって、延焼防止を図っている。
【0003】
しかしながら、従来、この様な消火設備は、マグネシウムやアルミニウムといった金属が燃焼して起こる金属火災に対しては、高温(表面温度>1000℃)に熱せられたマグネシウムやアルミニウムといった金属と水(熱水)とが化学反応を起こし、継続的に可燃性の水素が発生し、当該水素に周囲の炎が引火して爆発を引き起こすことによって、火災による被害が更に拡大する可能性があるため使用することが出来なかった。
【0004】
そこで、金属火災に対しては、粉末消火剤を散布することによって窒息消火させる消火方法が採られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−93537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粉末消火剤は、人が火源に近づいて、可燃物を覆うように静かに散布する必要があり、利用が困難であるという問題があった。又、この様な粉末消火剤は、消火水とは異なり、冷却作用が乏しく再着火が起こる可能性もあった。
【0007】
そこで、本発明は、従来のスプリンクラ消火設備の問題点を解決し、金属火災に対しても有用なスプリンクラ消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
防護領域に設けられ配管に接続されたスプリンクラヘッドと、該配管に消火剤を圧送する加圧手段とを備え、該加圧手段によって、該配管を介して該スプリンクラヘッドから水と、揺変剤と、粉末消火剤と、を含有した混合消火剤
を放出するスプリンクラ消火設備であって、該混合消火剤は、チキソトロピー性を有しており、粒子状の粉末消火剤が該混合消火剤内に略均一に分散されている
と共に該加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、該配管内を移動して該スプリンクラヘッドから散布されると共に、該スプリンクラヘッドから散布されるとゲル状となり、該配管には、常時においても該混合消火剤が充填されていることを特徴とする
スプリンクラ消火設備である。
又、本発明は、水と、揺変剤と、粉末消火剤と、を含有した混合消火剤を予め混合し、前記配管に消火剤を圧送する加圧手段によって該混合消火剤を防護領域に供給する消火設備であって、該混合消火剤は、チキソトロピー性を有しており、粒子状の粉末消火剤が該混合消火剤内に略均一に分散されていることを特徴とする消火設備である。
【0009】
又、本発明は、水と、揺変剤と、粉末硬化剤と、を含有した混合消火剤であって、該混合消火剤は、チキソトロピー性を有しており、該粉末硬化剤は、水と混練されることで硬化することを特徴とする混合消火剤である。又、本発明は、防護領域に設けられ配管に接続されたスプリンクラヘッドと、該配管に消火剤を圧送する加圧手段とを備え、該加圧手段によって、該配管を介して該スプリンクラヘッドから前記混合消火剤を放出するスプリンクラ消火設備であって、該混合消火剤は、該加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、該配管内を移動して該スプリンクラヘッドから散布されると共に、該スプリンクラヘッドから散布されるとゲル状となり、該配管には、常時においても該混合消火剤が充填されていることを特徴とするスプリンクラ消火設備である。又、本発明は、前記混合消火剤を予め混合し、前記配管に消火剤を圧送する加圧手段によって該混合消火剤を防護領域に供給することを特徴とする消火設備である。
【0010】
尚、本発明は、前記粉末消火剤を、膨張蛭石、膨張真珠岩、塩化ナトリウム又はケイ酸ナトリウムとすることができる。又、本発明は、前記粉末硬化剤を、セメント又石膏とすることができる。又、本発明は、前記揺変剤を、コロイド性含水ケイ酸塩とすることができる。又、本発明は、前記混合消火剤を、前記加圧手段によって加圧されることでゾル状となり、前記配管内を移動して前記スプリンクラヘッドから均等に散布されると共に、該スプリンクラヘッドから散布されて静止するとゲル状となる様にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
チキソトロピー性を有する混合消火剤に、粉末消火剤又は粉末硬化剤を添加することによって、粉末消火剤や粉末硬化剤を遠方まで均一に散布可能となる。そのため、粉末消火剤又は粉末硬化剤と消火用水を混合して消火性能を高めた混合消火剤をスプリンクラヘッドから均一に散布することが可能となる。
【0012】
又、特に、粉末消火剤が、膨張蛭石、塩化ナトリウム又はケイ酸ナトリウム等の金属火災用消火剤である場合は、混合消火剤がチキソトロピー性を有し、金属火災用消火剤を含有することによって、金属表面にゲル化した混合消火剤を留めることができると共に瞬時に水分が蒸発し、残った金属火災用消火剤が金属表面を覆い、水と該金属との接触を防止し水素の発生を防ぐことができる。そのため、金属火災を窒息消火できると共にゲル化した混合消火剤に含有される水の冷却効果によってその消火を促進することができる。
【0013】
又、セメント等の粉末硬化剤を添加した場合は、粉末硬化剤が金属表面で硬化して、金属表面を覆うため水と該金属との接触を防止し水素の発生を防ぐことができる。そのため、金属火災を窒息消火できると共にゲル化した混合消火剤に含有される水の冷却効果によってその消火を促進することができる。
【0014】
更に、混合消火剤がチキソトロピー性を有することによって、消火用水と金属火災用消火剤又は粉末硬化剤を混合した状態であっても、消火用水内に金属火災用消火剤又は粉末硬化剤が均一に混ざり合った状態を維持できるので、金属火災用消火剤や粉末硬化剤をスプリンクラヘッドから散布しても金属火災を消火できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す図であり、スプリンクラ消火設備の系統図である。
【
図2】本発明の第2実施形態を示す図であり、スプリンクラ消火設備の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態を、湿式スプリンクラ消火設備を例に
図1に基づき説明する。先ず、湿式スプリンクラ消火設備1の構成について説明する。
【0017】
湿式スプリンクラ消火設備1は、スプリンクラヘッド2及び加圧手段としてのポンプ3、薬剤タンク4、消火用水タンク5及び粉末消火剤タンク6を備える。スプリンクラヘッド2は、常時は閉鎖されていると共に防護領域S内に設けられスプリンクラ配管7に接続されている。スプリンクラ配管7は一端が混合器8に接続され、他端が末端試験弁9に接続されている。
【0018】
消火用水タンク5は、消火用水Wを貯留するためのタンクであり、ポンプ3によって連通される2つの配管10a,10bからなる消火用水配管10を介して混合器8と接続されている。
【0019】
薬剤タンク4には、消火用水Wにチキソトロピー性(揺変性)を与える物質(以下、揺変剤Tという)が貯蔵される。又、薬剤タンク4は、薬剤配管11を介して混合器8に接続されている。ここで、チキソトロピー性とは、「単に掻き混ぜたり振り混ぜたりすることによってゲルが流動性のゾルに変わり、これを放置しておくとふたたびゲルにもどる性質」をいう(岩波理化学辞典第4版、岩波書店発行、より引用)。
【0020】
揺変剤Tとしては、例えば、スメクタイト、ベントナイト及びモンモリロナイト等のコロイド性含水ケイ酸塩を含有する鉱物や当該ケイ酸塩からなる合成無機高分子化合物等が挙げられる。
【0021】
粉末消火剤タンク6には、金属火災(特に、消防法で規定される危険物第二類・鉄粉、金属粉若しくはマグネシウム又はこれらのいずれかを含有するものによる火災)の消火に用いられる粉末消火剤等(以下、金属火災用消火剤Pという)が貯蔵される。又、粉末消火剤タンク6は、粉末消火剤配管12を介して混合器8に接続されている。
【0022】
金属火災用消火剤Pとしては、水溶性や非水溶性、又は、粒子状のものがあり、例えば、以下の様な消火剤が挙げられる。
(1)熱によって、結晶水が蒸発することにより膨張し、金属表面に付着した結晶が広がると共に結晶間の架橋作用によって金属表面を覆うことができる消火剤、例えば、膨張蛭石(バーミキュライト)や膨張真珠岩(パーライト)等。
(2)金属表面上で板状に硬化する消火剤、例えば、塩化ナトリウムやケイ酸ナトリウム等。
(3)その他、消火砂等。
【0023】
混合器8は、薬剤配管11を介して供給された揺変剤Tと消火用水配管10を介して供給された消火用水Wとを混合すると共に粉末消火剤配管12を介して供給される金属火災用消火剤Pを消火用水Wに略均一に分散しチキソトロピー性を有する混合消火剤Eを調整し、調整した混合消火剤Eをスプリンクラ配管7に供給するために設けられる。
【0024】
消火用水W、揺変剤T及び金属火災用消火剤Pの混合割合は、求められる混合消火剤Eの性能に応じて適宜調整されるが、少なくとも、混合消火剤Eがゾル状となった際には、その粘度(以下、ゾル状態における混合消火剤Eの粘度を粘度η
sという)が、スプリンクラヘッド2から均等に散布ができる程度に低粘度となり、スプリンクラヘッド2から散布されて静止し、混合消火剤Eがゲル状となった際には、その粘度(以下、ゲル状態における混合消火剤Eの粘度を粘度η
gという)が、可燃物である金属表面上で留まることができる程度に高粘度となる混合割合で調整される。
【0025】
ポンプ3は、消火用水タンク5に貯留された消火用水Wを混合器8に供給すると共にゲル状の混合消火剤Eをゾル状にする加圧手段として設けられる。ポンプ3は、防護領域S内に設けられた火災感知器14と接続された防災盤13によって制御される。
【0026】
次に、湿式スプリンクラ消火設備1の動作について、金属火災を例として説明する。湿式スプリンクラ消火設備1は、常時においてもスプリンクラ配管7に混合消火剤Eが充填されている。この時、混合消火剤Eは静止しており、ゲル状となっている。そのため、スプリンクラ配管7内においても、粒子状の金属火災用消火剤Pが沈殿することなく、消火用水W内に均一に混合された状態で充填することが可能となる。
【0027】
この際、混合消火剤Eの粘度η
gをより高粘度とし、流動性が殆どなくなる程度に、消火用水Wと揺変剤Tとの混合割合を調整することで、スプリンクラヘッド2が外力等で破損し開放された際に、スプリンクラヘッド2から漏れ難くなるため、水損事故を未然に防ぐことが可能となる。又、スプリンクラヘッド2を交換する際にも、スプリンクラ配管7内の混合消火剤Eを事前に抜く必要がなくなり、より容易に交換することができる様になる。
【0028】
防護領域S内で火災が発生すると、その熱等によって、スプリンクラヘッド2が開放されると共に火災感知器14が防護領域S内の火災を感知し、火災信号を防災盤13に送信する。防災盤13は、火災信号を受信すると、ポンプ3に起動信号を送信する。ポンプ3は、起動信号を受信すると起動し、消火用水タンク5に貯留されている消火用水Wを混合器8へと供給する。
【0029】
又、ポンプ3の起動により、スプリンクラ配管7に予め充填されていた混合消火剤Eにはその圧力によって剪断応力が加わり、ゲル状態からゾル状態へと変化し、開放されたスプリンクラヘッド2から放出され、防護領域Sへと散布される。この時、スプリンクラ配管7内に充填されていた混合消火剤Eには、消火用水Wのゲル化によって、金属火災用消火剤Pが均一に混合された状態で充填されているので、スプリンクラヘッド2からも均一に混合された状態で散布される。
【0030】
混合器8に消火用水Wが供給されると、薬剤タンク4内の揺変剤T及び粉末消火剤タンク6内の金属火災用消火剤Pが混合器8へと供給され、ゾル状の混合消火剤Eが調整される。そして、混合消火剤Eはゾル状のまま、スプリンクラ配管7へと供給され、スプリンクラヘッド2から防護領域Sへと散布される。この際、混合消火剤Eは、粘度η
s又はそれに近い比較的低い粘度の状態で放出され、所定の散水半径で均等に散布される。
【0031】
その後、空中を移動する混合消火剤Eは、ポンプ3の圧力による剪断応力から解放されるので、徐々にゲル化、即ち、その粘度が粘度η
gに向かって徐々に増加していき、ゲル状の混合消火剤Eが火災源である金属の表面に付着する。そして、ゲル状の混合消火剤Eは当該金属表面から流れ落ちずに留まる。
【0032】
ゲル状の混合消火剤Eが金属表面に付着すると、混合消火剤Eに略均一に分散された金属火災用消火剤Pは瞬時に水分が蒸発し、残った金属火災用消火剤Pが当該金属表面と混合消火剤Eとの間に被覆層を形成し、混合消火剤Eに含有される水分や水蒸気と当該金属表面との接触を防止すると共に火災を窒息消火していく。そして、混合消火剤Eに含有される消火水Wは、当該被覆層を介して、金属表面を冷却することで、消火を促進する。
【0033】
この際、混合消火剤Eにチキソトロピー性を有していることが重要となる。混合消火剤Eにチキソトロピー性を有している場合は、混合消火剤Eのゲル化によって、金属火災用消火剤Pをゲル内に留めることができるが、混合消火剤Eにチキソトロピー性を有していない場合、つまり、消火用水Wと金属火災用消火剤Pのみを混合した場合は、金属火災用消火剤Pの自重によって、スプリンクラ配管7内で金属火災用消火剤Pが沈殿してしまい、均一に混合された状態でスプリンクラヘッド2から散布できないだけでなく、スプリンクラヘッド2から散布され金属表面に到達するまでの間に消火水Wと金属火災用消火剤Pとの分離が起こり、消火水Wが直接、金属表面に接触することとなるからである。
【0034】
揺変剤Tが上記ケイ酸塩を含有するものである場合は、消火用水Wが蒸発した後も、耐火性の高いケイ酸塩成分も金属表面に残存するため、当該物体の再着火を更に防止することが可能となる。
【0035】
本発明の第2実施形態を、湿式スプリンクラ消火設備を例に
図2に基づき説明する。第1実施形態との相違は、金属火災用消火剤Pの代わりに粉末硬化剤Cを用いたことである。その他の構成については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0036】
粉末硬化剤Cは、耐火性を有しており、水と混練されることによって硬化する性質を有する化合物又は混合物である。例えば、各種セメント類や石膏等、又は、その他これに類する化合物(混合物)が挙げられる。尚、水硬性であるか気硬性であるかは問わない。
【0037】
本実施形態の混合消火剤Eは、粉末硬化剤Cが消火水W内に分散した状態でゲル化することによって、当該ゲル状態においては、粉末硬化剤Cの硬化反応が非常に減速されるため、例え、湿式スプリンクラ消火設備1であっても、混合消火剤Eをスプリンクラ配管7内で硬化することなく保持がすることが可能である。
【0038】
そして、ゲル状の混合消火剤Eがゾル化し、スプリンクラヘッド2から散布され、その後、金属表面に付着すると、混合消火剤Eに略均一に分散された粉末硬化剤Cは瞬時に水和反応等によって硬化し、更に、水分が蒸発することによって、当該金属表面と混合消火剤Eとの間に被覆層を形成し、混合消火剤Eに含有される水分や水蒸気と当該金属表面との接触を防止すると共に火災を窒息消火していく。そして、混合消火剤Eに含有される消火水Wは、当該被覆層を介して、金属表面を冷却することで、消火を促進する。
【0039】
本実施形態では、粉末硬化剤Cが金属表面で凝結又は重合等し被覆層が形成されるため、より密な被覆層を形成することが可能である。そのため、より消火を促進することが可能である。
【0040】
以上、本発明を上記実施形態で説明したが、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、常時は、スプリンクラ配管7に混合消火剤E(消火用水W)が充填(充水)されていない、乾式のスプリンクラ消火設備に対しても適用が可能である。
【0041】
又、混合器8を設けずに、予め、消火用水W、揺変剤T及び金属火災用消火剤P又は粉末硬化剤Cとを混合し、混合消火剤Eを調整しておき、消火用水Wの替わりにゾル状態の混合消火剤Eを直接供給する様にし、パッケージタイプの消火設備に用いることもできる。そして、スプリンクラヘッド2等の数は適宜変更することが可能である。
【0042】
尚、本発明は、金属火災専用のスプリンクラ消火設備ではなく、一般的にスプリンクラ消火設備の使用が想定される火災に対しても当然使用することができる。より詳しく述べると、金属火災用消火剤Pに限らず、粉末状の消火剤を消火用水Wに添加することによって、粉末消火剤を遠方まで均一に散布可能となる。つまり、粉末消火剤と消火用水Wを混合して消火性能を高めた混合消火剤をスプリンクラヘッドから均一に散布することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 湿式スプリンクラ消火設備 2 スプリンクラヘッド 3 ポンプ
4 薬剤タンク 5 消火用水タンク 6 粉末消火剤タンク
7 スプリンクラ配管 8 混合器 9 末端試験弁
10 消火用水配管 11 薬剤配管 12 粉末消火剤配管
13 防災盤 14 火災感知器 C 粉末硬化剤
E 混合消火剤 P 金属火災用消火剤 S 防護領域
T 揺変剤 W 消火用水