特許第6234129号(P6234129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6234129境界条件設定装置及びシミュレーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234129
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】境界条件設定装置及びシミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20171113BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20171113BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F24F11/02 Z
   F24F7/06 B
   G06F1/20 B
   G06F1/20 D
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-189810(P2013-189810)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-55431(P2015-55431A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−063055(JP,A)
【文献】 特開2010−108359(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/010617(WO,A1)
【文献】 特開2011−214738(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0312415(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 7/06
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を収容する室内における気流の分布を求めるシミュレーション用に、境界条件を設定する装置であって、
前記機器の消費電力値を取得する消費電力取得部と、
前記機器の吸気口側の温度を入口温度として取得する入口温度取得部と、
前記機器の排気口側の温度を出口温度として取得する出口温度取得部と、
前記入口温度と前記出口温度との温度差を算出する温度差算出部と、
前記機器の消費電力値と前記温度差とに基づいて、前記機器の通過風速を前記境界条件として算出する通過風速算出部と、を備える境界条件設定装置。
【請求項2】
機器を収容する室内の気流の分布を求めるシステムであって、
前記機器の消費電力値を取得する消費電力取得部と、
前記機器の吸気口側の温度を入口温度として取得する入口温度取得部と、
前記機器の排気口側の温度を出口温度として取得する出口温度取得部と、
前記入口温度と前記出口温度との温度差を算出する温度差算出部と、
前記機器の消費電力値と前記温度差とに基づいて、前記機器の通過風速を境界条件として算出する通過風速算出部と、
前記通過風速算出部により算出された前記境界条件を用い、前記室内の気流の分布を算出するシミュレーション演算部と、を備えるシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記シミュレーション演算部により算出された前記気流の分布に基づいて、前記機器における前記排気口側から前記吸気口側への逆流の発生を検知する逆流検知部を更に備える、請求項2記載のシミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器を収容する室内における気流の分布を求めるシミュレーション用に、境界条件を設定する装置及びこの装置を用いたシミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内に収容された機器(例えばサーバ等)の動作の信頼性を高めるには、室内の空調を適切に管理する必要がある。そのためには、室内の気流の分布をリアルタイムに把握することが有用である。気流の分布を把握する手段として、センサを分散配置して室内各部の気流を実測することが考えられるが、センサを室内に万遍なく配置するのは困難である。この問題を解決するための技術として、センサにより室内の風速等を部分的に計測し、その計測値を境界条件として用いたシミュレーションを行うことで、室内の気流の分布を求める空調環境モニタリングシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−63055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主要な境界条件となり得るパラメータとして、機器を通過する風速(以下、「通過風速」という。)が挙げられる。通過風速は、機器内又は機器の近傍に風速センサ等を配置して実測可能である。しかしながら、風速センサ等による計測値には、時間的・空間的な気流のゆらぎに起因する短期的な変動が生じ易い。短期的な変動を取り込んでシミュレーションを実行してしまうと、その影響が室内全域の気流の算出結果に及ぶので、シミュレーション結果が実際の気流の分布から大きくかけ離れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、室内の気流の分布を求めるシミュレーションを高い精度で実行できる境界条件設定装置及びシミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る境界条件設定装置は、機器を収容する室内における気流の分布を求めるシミュレーション用に、境界条件を設定する装置であって、機器の消費電力値を取得する消費電力取得部と、機器の吸気口側の温度を入口温度として取得する入口温度取得部と、機器の排気口側の温度を出口温度として取得する出口温度取得部と、入口温度と出口温度との温度差を算出する温度差算出部と、機器の消費電力値と温度差とに基づいて、機器の通過風速を境界条件として算出する通過風速算出部とを備える。
【0007】
この境界条件設定装置では、境界条件としての通過風速が、通過風速算出部により機器の消費電力及び温度差に基づいて算出される。通過風速の実測値には、時間的・空間的なゆらぎにより短期的な変動が生じるのに比べ、機器の消費電力及び温度差には短期的な変動が生じ難い。このため、境界条件としての通過風速を、機器の消費電力及び温度差に基づいて間接的に算出することにより、境界条件の短期的な変動を抑制できる。この境界条件を用いることにより、室内の気流の分布を求めるシミュレーションを高い精度で実行できる。
【0008】
本発明に係るシミュレーションシステムは、機器を収容する室内の気流の分布を求めるシステムであって、機器の消費電力値を取得する消費電力取得部と、機器の吸気口側の温度を入口温度として取得する入口温度取得部と、機器の排気口側の温度を出口温度として取得する出口温度取得部と、入口温度と出口温度との温度差を算出する温度差算出部と、機器の消費電力値と温度差とに基づいて、機器の通過風速を境界条件として算出する通過風速算出部と、通過風速算出部により算出された境界条件を用い、室内の気流の分布を算出するシミュレーション演算部とを備える。
【0009】
このシミュレーションシステムでは、境界条件としての通過風速が、通過風速算出部により機器の消費電力及び温度差に基づいて算出され、この境界条件を用いて、気流の分布がシミュレーション演算部により算出される。通過風速の実測値には、時間的・空間的なゆらぎにより短期的な変動が生じるのに比べ、機器の消費電力及び温度差には短期的な変動が生じ難い。このため、境界条件としての通過風速を、機器の消費電力及び温度差に基づいて間接的に算出することにより、境界条件の短期的な変動を抑制できる。従って、室内の気流の分布を求めるシミュレーションを高い精度で実行できる。
【0010】
シミュレーション演算部により算出された気流の分布に基づいて、機器における排気口側から吸気口側への逆流の発生を検知する逆流検知部を更に備えてもよい。この場合、シミュレーション結果を活用して逆流の発生を検知することにより、逆流に起因する機器の異常発熱を未然に防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、室内の気流の分布を求めるシミュレーションを高い精度で実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るデータセンタの概略的な構成を示す平面図である。
図2図1中のII−II線に沿う断面図である。
図3図1中のIII−III線に沿う断面図である。
図4】シミュレーションシステムの機能的な構成を示すブロック図である。
図5】境界条件設定装置が実行する処理のフローチャートである。
図6】シミュレーション装置が実行する処理のフローチャートである。
図7】逆流検出装置が実行する処理のフローチャートである。
図8】温度比較箇所を示す平面図である。
図9】第1の温度比較箇所における温度の実測結果及びシミュレーション結果を示すグラフである。
図10】第2の温度比較箇所における温度の実測結果及びシミュレーション結果を示すグラフである。
図11】第3の温度比較箇所における温度の実測結果及びシミュレーション結果を示すグラフである。
図12】第4の温度比較箇所における温度の実測結果及びシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1図3に示すように、データセンター1は、サーバ室R1と、空調機械室R2と、床下空間R3と、シミュレーションシステム2とを備える。サーバ室R1と空調機械室R2とは、隔壁13を介して互いに隣接し、床下空間R3はサーバ室R1及び空調機械室R2の床板14の下に設けられている。以下、「前後左右」は、サーバ室R1を前側、空調機械室R2を後側とした方向を意味する。
【0015】
サーバ室R1は、複数のサーバラック10を収容する。一例として、図1は、8個のサーバラック10が収容された構成を示している。4個のサーバラック10は、サーバ室R1の左側において前後方向に沿うように配列され、残りの4個のサーバラック10は、サーバ室R1の右側において前後方向に沿うように配列されている。
【0016】
サーバ室R1は、区画部材15により、コールドアイルCAとホットアイルHAとに区画されている。コールドアイルCAは、左側のサーバラック10と右側のサーバラック10との間の空間であり、ホットアイルHAは、サーバラック10及びコールドアイルCAを包囲する空間である。
【0017】
床板14のうち、左側のサーバラック10と右側のサーバラック10との間の部分には、グレーチング14aが設けられている。床板14のうち、左側のサーバラック10より左側及び右側のサーバラック10より右側の部分には、グレーチング14bがそれぞれ設けられている。すなわち、コールドアイルCAにはグレーチング14aが設けられ、ホットアイルHAにはグレーチング14bが設けられている。グレーチング14a,14bは、サーバ室R1と床下空間R3とを連通させる網状部である。
【0018】
サーバラック10は、例えば10個のサーバ(機器)16を収容する。サーバラック10のうち少なくともコールドアイルCA側の壁部10a及びその逆側の壁部10bはメッシュ材等の通気可能な板材により構成されている。サーバラック10内は、上下方向において5段に区画されており、各段に2個ずつのサーバ16が収容されている。各段の2個のサーバ16は、前後方向に沿って並んでいる。各サーバ16は、クライアントからの要求に応じて処理を提供するコンピュータであり、演算部及び記憶部を有する。
【0019】
各サーバ16は吸気口16a及び排気口16bを有する。各サーバ16において、吸気口16aはコールドアイルCA側に設けられ、排気口16bは吸気口16aの反対側(ホットアイルHA側)に設けられている。吸気口16aは、コールドアイルCAから冷却ガス(例えば空気)を取り入れるための開口である。排気口16bは、サーバ16内を通過したガスをホットアイルHAに排出するための開口である。
【0020】
壁部10aには、上下方向に沿って並ぶ3個の入口温度センサT5〜T6が設けられている。入口温度センサT5〜T6は、サーバ16の吸気口16a側の温度(以下、「入口温度」という。)を検出する。入口温度センサT5は、最上段のサーバ16に対応する高さに配置され、入口温度センサT6は中段のサーバ16に対応する高さに配置され、入口温度センサT7は最下段のサーバ16に対応する高さに配置されている。なお、入口温度センサの数及び配置はこれに限られない。例えば、10個の入口温度センサを10個のサーバ16にそれぞれ対応するように設けてもよい。
【0021】
壁部10bには、上下方向に沿って並ぶ3個の出口温度センサT8〜T10が設けられている。出口温度センサT8〜T10は、サーバ16の排気口16b側の温度(以下、「出口温度」という。)を検出する。出口温度センサT8は、最上段のサーバ16に対応する高さに配置され、出口温度センサT9は中段のサーバ16に対応する高さに配置され、出口温度センサT10は最下段のサーバ16に対応する高さに配置されている。なお、出口温度センサの数及び配置はこれに限られない。例えば、10個の出口温度センサを10個のサーバ16にそれぞれ対応するように設けてもよい。入口温度センサT5〜T6及び出口温度センサT8〜T10は、後述のシミュレーションに用いられる。
【0022】
空調機械室R2には、共通空調機11が収容されている。共通空調機11は例えば熱交換器及び送風機を有するエアハンドリングユニット(AHU)であり、空調機械室R2内において左右方向の中央に配置されている。共通空調機11は、吸気口11a及び送風口11bを有し、吸気口11aから取り込んだガスを冷却して送風口11bから吹き出す。吸気口11aは、共通空調機11の後側に設けられ、送風口11bは共通空調機11の下側に設けられている。以下、共通空調機11が吹き出すガスを「第1冷却ガス」という。
【0023】
床板14のうち、共通空調機11の下に位置する部分にはグレーチング14cが設けられている。グレーチング14cは、第1冷却ガスを床下空間R3内に通す網状部である。共通空調機11が吹き出した第1冷却ガスは、グレーチング14cを通って床下空間R3内に進入する。床下空間R3内に進入した第1冷却ガスは、グレーチング14aの下に導かれ、グレーチング14aを通ってコールドアイルCAに進入する。コールドアイルCAに進入した第1冷却ガスは、吸気口16aからサーバ16内に進入し、サーバ16の内部を冷却して排気口16bからホットアイルHAに排出される。第1冷却ガスはサーバ16を通過するのに伴って高温化する。以下、サーバ16を通過して高温化したガスを「排出ガス」という。
【0024】
吸気口11aの外側には、温度センサT1が設けられている。温度センサT1は、共通空調機11により冷却される前のガスの温度を検出する。グレーチング14cの下には、温度センサT2及び風速センサF2が設けられている。温度センサT2は第1冷却ガスの温度を検出し、風速センサF2は第1冷却ガスの風速を検出する。これらの共通空調機用センサT1,T2,F2は、後述のシミュレーションに用いられる。
【0025】
床下空間R3には、例えば4個の個別空調器12が収容されている。2個の個別空調器12は床下空間R3内の左側において前後方向に沿うように配列され、残りの2個の個別空調器12は床下空間R3内の右側において前後方向に沿うように配列されている。各個別空調器12は、前後方向に沿って並ぶ2個のサーバラック10の下に位置しており、ホットアイルHA側に吸気口12aを有し、コールドアイルCA側に送風口12bを有する。各個別空調器12は、グレーチング14b及び吸気口12aを通してホットアイルHAから排出ガスを取り込み、これを冷却して送風口12bから吹き出す。以下、個別空調器12が吹き出すガスを「第2冷却ガス」という。第2冷却ガスはグレーチング14aの下において第1冷却ガスと合流し、コールドアイルCA内に進入してサーバ16を冷却する。
【0026】
グレーチング14bの下には、温度センサT3及び風速センサF3が設けられている。温度センサT3及び風速センサF3は、個別空調器12により冷却される前のガスの温度及び風速をそれぞれ検出する。送風口12bの外側には、温度センサT4及び風速センサF4が設けられている。温度センサT4及び風速センサF4は、第2冷却ガスの温度及び風速をそれぞれ検出する。これらの個別空調機用センサT3,T4,F3,F4は、後述のシミュレーションに用いられる。
【0027】
シミュレーションシステム2は、サーバ室R1、空調機械室R2及び床下空間R3内の気流分布及び温度分布を算出するものであり、境界条件設定装置3と、シミュレーション装置4と、逆流検知装置5とを備える。境界条件設定装置3、シミュレーション装置4及び逆流検知装置5は演算部、記憶部及び入出力部を有するコンピュータである。一台のコンピュータが境界条件設定装置3、シミュレーション装置4及び逆流検知装置5を兼ねていてもよい。
【0028】
図4に示すように、境界条件設定装置3は、消費電力取得部30と、入口温度取得部31と、出口温度取得部32と、空調条件取得部33と、境界条件記憶部34と、温度差算出部35と、通過風速算出部36と、境界条件更新部37とを有する。
【0029】
消費電力取得部30は、各サーバ16の消費電力値を取得する。消費電力値は、例えば各サーバ16への供給電圧及び供給電流に基づいて取得可能である。
【0030】
入口温度取得部31は、入口温度センサT5〜T6から入口温度を取得する。具体的に入口温度取得部31は、最上段のサーバ16の入口温度を入口温度センサT5から取得し、中段のサーバ16の入口温度を入口温度センサT6から取得し、最下段のサーバ16の入口温度を入口温度センサT7から取得する。入口温度取得部31は、入口温度センサT5,T6から取得した温度に補間処理を施して上から2段目のサーバ16の入口温度を更に取得してもよく、入口温度センサT6,T7から取得した温度に補間処理を施して下から2段目のサーバ16の入口温度を更に取得してもよい。
【0031】
出口温度取得部32は、出口温度センサT8〜T10から出口温度を取得する。具体的に出口温度取得部32は、最上段のサーバ16の出口温度を出口温度センサT8から取得し、中段のサーバ16の出口温度を出口温度センサT9から取得し、最下段のサーバ16の出口温度を出口温度センサT10から取得する。出口温度取得部32は、出口温度センサT8,T9から取得した温度に補間処理を施して上から2段目のサーバ16の出口温度を更に取得してもよく、出口温度センサT9,T10から取得した温度に補間処理を施して下から2段目のサーバ16の出口温度を更に取得してもよい。
【0032】
空調条件取得部33は、共通空調機用センサT1,T2,F2の検出値及び個別空調機用センサT3,T4,F3,F4の検出値を空調条件として取得する。
【0033】
境界条件記憶部34は、空調条件及び各サーバ16の通過風速等を境界条件として記憶する。
【0034】
温度差算出部35は、入口温度取得部31により取得された入口温度と出口温度取得部32により取得された出口温度との温度差をサーバ16ごとに算出する。
【0035】
通過風速算出部36は、消費電力取得部30により取得された消費電力値と温度差算出部35により算出された温度差とに基づいて、各サーバ16の通過風速を算出する。通過風速は、例えば次の式により算出可能である。
Velo=Power/(ρ×Cp×(Tout−Tin)×H×W)
Velo:通過風速
Power:消費電力値
ρ:冷却ガス密度
Cp:冷却ガス比熱
Tout:出口温度
Tin:入口温度
H:サーバ筐体の高さ
W:サーバ筐体の前後方向の幅
【0036】
境界条件更新部37は、空調条件取得部33により取得された空調条件及び通過風速算出部36により算出された通過風速を境界条件記憶部34に上書きする。
【0037】
シミュレーション装置4は、境界条件取得部40と、モデル記憶部41と、設定値取得部42と、初期状態記憶部43と、CFD演算部(シミュレーション演算部)44と、シミュレーション結果出力部45とを有する。
【0038】
境界条件取得部40は、境界条件設定装置3の境界条件記憶部34から境界条件を取得する。
【0039】
モデル記憶部41は、サーバ室R1、空調機械室R2及び床下空間R3のモデルを記憶する。サーバ室R1のモデルは、サーバ室R1の形状・大きさ、サーバラック10の形状・大きさ・配置、グレーチング14a,14bの形状・大きさ・配置、区画部材15の形状・大きさ・配置及びサーバ16の形状・大きさ・配置等を含む。空調機械室R2のモデルは、空調機械室R2の形状・大きさ、共通空調機11の形状・大きさ・配置及びグレーチング14cの形状・大きさ・配置等を含む。床下空間R3のモデルは、床下空間R3の形状・大きさ及び個別空調器12の形状・大きさ・配置等を含む。
【0040】
設定値取得部42は、キーボード等のインタフェースを介してシミュレーションのユーザ設定値を取得する。ユーザ設定値は、例えばメッシュ分割数等である。
【0041】
初期状態記憶部43は、シミュレーションの起点として、初期状態の気流分布及び温度分布を記憶する。
【0042】
CFD演算部44は、境界条件取得部40により取得された境界条件、モデル記憶部41に記憶されたモデル、設定値取得部42により取得された設定値及び初期状態記憶部43に記憶された初期状態を用い、サーバ室R1内、空調機械室R2内及び床下空間R3内の気流分布及び温度分布を算出するCFD(Computational Fluid Dynamics)演算を行う。CFD演算部44は、例えばサーバ室R1、空調機械室R2及び床下空間R3のモデルをユーザ設定値に応じてメッシュ分割し、初期状態及び境界条件に基づいてメッシュごとの気流及び温度を算出する。
【0043】
シミュレーション結果出力部45は、CFD演算部44によるシミュレーション結果を出力する。また、シミュレーション結果出力部45はCFD演算部44によるシミュレーション結果を初期状態記憶部43に上書きする。
【0044】
逆流検知装置5は、シミュレーション結果取得部50と、サーバ位置情報取得部51と、サーバ排気抽出部52と、逆流検知部53と、逆流検知出力部54とを備える。
【0045】
シミュレーション結果取得部50は、シミュレーション装置4のシミュレーション結果出力部45から気流分布及び温度分布を取得する。
【0046】
サーバ位置情報取得部51は、シミュレーション装置4のモデル記憶部41から各サーバ16の位置情報を取得する。
【0047】
サーバ排気抽出部52は、シミュレーション結果取得部50により取得されたシミュレーション結果とサーバ位置情報取得部51により取得された各サーバ16の位置情報とに基づいて、各サーバ16の排出ガスの流れを抽出する。
【0048】
逆流検知部53は、サーバ排気抽出部52により抽出された各サーバ16の排出ガスの流れに基づいて、各サーバ16における排気口16b側から吸気口16a側への逆流の発生を検知する。ここで、逆流とは、排気口16b側の排出ガスが、共通空調機11及び個別空調器12のいずれも経ずに吸気口16a側に還流する現象を意味する。
【0049】
逆流検知出力部54は、逆流検知部53において逆流が検知されたときに、逆流の情報を出力する。逆流の情報は、逆流発生の位置等を含む。
【0050】
モニター6は、例えば液晶モニターであり、シミュレーション結果出力部45から出力されたシミュレーション結果を取得して表示する。また、逆流検知出力部54から出力された逆流の情報を取得して逆流の発生位置等を表示する。モニター6は、各種センサによる検出値を更に取得して表示してもよく、CFD演算部44において用いられる境界条件を更に取得して表示してもよい。
【0051】
境界条件設定装置3、シミュレーション装置4及び逆流検知装置5は、互いに同期して、以下の処理を定周期で実行する。図5に示すように、境界条件設定装置3は、まず消費電力取得部30、入口温度取得部31、出口温度取得部32及び空調条件取得部33から消費電力値、入口温度、出口温度及び空調条件を読み込む(S01)。次に、入口温度と出口温度との温度差を温度差算出部35により算出し(S02)、通過風速算出部36により通過風速を算出する(S03)。次に、境界条件更新部37により、通過風速及び空調条件を境界条件記憶部34に上書きする(S04)。
【0052】
図6に示すように、シミュレーション装置4は、まず境界条件取得部40、モデル記憶部41、設定値取得部42、初期状態記憶部43から境界条件、モデル、ユーザ設定値及び初期状態をそれぞれ読み込む(S11)。次に、CFD演算部44によりCFD演算を行って気流分布を算出し(S12)、温度分布を算出する(S13)。次に、シミュレーション結果出力部45により気流分布及び温度分布の算出結果をモニター6に出力し(S14)、気流分布及び温度分布の算出結果を初期状態記憶部43に上書きする(S15)。
【0053】
図7に示すように、逆流検知装置5は、まずシミュレーション結果取得部50及びサーバ位置情報取得部51から気流分布、温度分布及びサーバの位置情報を読み込む(S21)。次に、サーバ排気抽出部52により、各サーバ16の排気の流れを抽出する(S22)。次に、逆流検知部53により逆流の発生を検知し(S23)、逆流検知出力部54により逆流の情報をモニター6に出力する(S24)。モニター6に表示された気流分布、温度分布及び逆流の発生状況等を参照することにより、オペレータによる適切な空調管理が可能となる。
【0054】
以上に説明したシミュレーションシステム2では、サーバ16の入口温度及び出口温度の温度差が算出され、その温度差とサーバ16の消費電力とに基づいて通過風速が算出される。そして、算出された通過風速が境界条件として用いられて気流の分布が算出される。通過風速の実測値には、時間的・空間的なゆらぎにより短期的な変動が生じるのに比べ、サーバ16の消費電力及び温度差には短期的な変動が生じ難い。このため、境界条件としての通過風速を、サーバ16の消費電力及び温度差に基づいて間接的に算出することにより、境界条件の短期的な変動を抑制できる。従って、室内の気流の分布を求めるシミュレーションを高い精度で実行できる。
【0055】
また、算出された気流の分布に基づいて、サーバ16における排気口16b側から吸気口16a側への逆流の発生が検知される。シミュレーション結果を活用して逆流の発生を検知することにより、逆流に起因するサーバ16の異常発熱を未然に防止できる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、シミュレーションシステム2は必ずしも逆流検知装置5を有していなくてよい。また、本発明の適用対象は、サーバを収容する室内のシミュレーションに限られず、他の様々な機器を収容する室内のシミュレーションに本発明を適用可能である。
【実施例】
【0057】
続いて、実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
〔模擬データセンタの準備〕
実測値とシミュレーション結果との対比を行うために、図8に示す模擬データセンタ1Aを準備した。模擬データセンタ1Aは、図1〜3と同様に構成されている。各寸法を以下のように設定した。
サーバ室R1及び空調機械室R2の左右方向の幅:約7m
サーバ室R1の前後方向の幅:約7m
空調機械室R2お前後方向の幅:約5m
サーバ室R1及び空調機械室R2の高さ:約4m
床下空間R3の高さ:約1m
サーバラック10の左右方向の幅:約1m
サーバラック10の前後方向の幅:約0.7m
【0059】
サーバラック10には、サーバ16に代えて模擬サーバを収容した。模擬サーバは、サーバ16と同じ外形を呈し、吸気口16a及び排気口16bを有し、サーバ16と同程度の電力を消費する。
【0060】
〔温度の実測〕
ホットアイルHAの右側において、サーバラック10にそれぞれ対応する4箇所を温度比較箇所P1〜P4とした。各箇所P1〜P4において、床板14の上面から約0.4mおきに複数の温度センサを配置した。この状態で、以下の運転条件で模擬データセンタ1Aを稼働させ、温度比較箇所P1〜P4における温度を実測した。
各サーバラック10における模擬サーバの稼働台数:9台
各サーバラック10の消費電力:10.8kW
共通空調機11の吹き出し風量:11000m/h
個別空調器12の吹き出し風量:8900m/h
【0061】
〔実施例〕
温度の実測時と同じ条件で模擬データセンタ1Aを稼働させ、シミュレーションシステム2によるシミュレーションを実行して気流分布及び温度分布を算出した。温度分布の算出結果から温度比較箇所P1〜P4における温度を抽出し、温度の実測結果と比較した。
【0062】
〔比較例〕
入口温度センサT5〜T6及び出口温度センサT8〜T10に対応する位置に風速センサを配置し、温度の実測と同条件で模擬データセンタ1Aを稼働させた。通過風速算出部36による通過風速の算出結果に代えて、風速センサによる通過風速の実測結果を用いてCFD演算部44によるシミュレーションを実行し、気流分布及び温度分布を算出した。温度分布の算出結果から温度比較箇所P1〜P4における温度を抽出し、温度の実測結果と比較した。
【0063】
〔比較結果〕
第1の温度比較箇所P1における温度実測結果、比較例のシミュレーションによる温度算出結果及び実施例のシミュレーションによる温度算出結果を図9に示す。第2の温度比較箇所P2における温度実測結果、比較例のシミュレーションによる温度算出結果及び実施例のシミュレーションによる温度算出結果を図10に示す。第3の温度比較箇所P3における温度実測結果、比較例のシミュレーションによる温度算出結果及び実施例のシミュレーションによる温度算出結果を図11に示す。第4の温度比較箇所P4における温度実測結果、比較例のシミュレーションによる温度算出結果及び実施例のシミュレーションによる温度算出結果を図12に示す。
【0064】
図9に示すように、温度比較箇所P1では、高さ2000mmより上方において比較例による温度算出結果t12が温度実測結果t11を大きく下回った。これに対し、実施例による温度算出結果t13は、いずれの高さにおいても温度実測結果に近い値を示した。
【0065】
図10に示すように、温度比較箇所P2でも、高さ2000mmより上方において比較例による温度算出結果t22が温度実測結果t21を大きく下回った。これに対し、実施例による温度算出結果t23は、いずれの高さにおいても温度実測結果に近い値を示した。
【0066】
図11に示すように、温度比較箇所P3でも、高さ2000mmより上方において比較例による温度算出結果t32が温度実測結果t31を大きく下回った。これに対し、実施例による温度算出結果t33は、いずれの高さにおいても温度実測結果t31に近い値を示した。
【0067】
図12に示すように、温度比較箇所P3では、高さ2000mmの上方及び下方のいずれにおいても、比較例による温度算出結果t42が温度実測結果t41を大きく下回った。これに対し、実施例による温度算出結果t43は、いずれの高さにおいても温度実測結果t41に近い値を示した。
【0068】
以上の結果から、シミュレーションシステム2によれば、室内の温度分布を高い精度で算出できることが確認された。温度分布は、気流分布に基づいて算出されるので、温度分布が高い精度で算出されていれば、気流分布も高い精度で算出されている。従って、シミュレーションシステム2によれば、室内の気流の分布を求めるシミュレーションを高い精度で実行できることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
2…シミュレーションシステム、3…境界条件設定装置、16…サーバ(機器)、16a…吸気口、16b…排気口、30…消費電力取得部、31…入口温度取得部、32…出口温度取得部、35…温度差算出部、36…通過風速算出部、44…CFD演算部(シミュレーション演算部)、53…逆流検知部。
図1
図2
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図4
図5
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図7
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図12