特許第6234290号(P6234290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234290
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】計量器
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/42 20060101AFI20171113BHJP
   G01G 19/414 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01G23/42 D
   G01G19/414 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-58247(P2014-58247)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-184031(P2015-184031A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 哲也
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036845(JP,A)
【文献】 特開2010−043974(JP,A)
【文献】 特開2011−191173(JP,A)
【文献】 特開2013−134660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 23/42
G01G 19/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量が適量重量範囲内の値となる被計量物からなる商品を生産する定貫作業に用いられ、載置部に載せられた被計量物の重量を計量し、この重量が前記適量重量範囲内の値であるか否かを判定し、前記適量重量範囲内の値であるときに適量である旨を報知する計量器であって、
商品の生産個数を計数する計数手段と、
商品を所定個数生産するたびに、前記所定個数の商品の単位時間当たりの生産個数を算出し、この単位時間当たりの生産個数に基づいて、作業者の作業レベルが予め定められた複数の作業レベルのうちのどのレベルであるかを導出する作業レベル導出手段とを備え、
前記作業レベル導出手段は、
商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数と現在の作業レベルとに基づいて今後の作業レベルを導出するよう構成され、
前記作業レベル導出手段で導出される今後の作業レベルが現在の作業レベルより高いレベルの場合には、範囲が狭くなるように前記適量重量範囲を変更し、今後の作業レベルが現在の作業レベルより低いレベルの場合には、範囲が広くなるように前記適量重量範囲を変更する適量重量範囲変更手段をさらに備えた
量器。
【請求項2】
前記作業レベル導出手段は、
商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を単位時間当たりの目標生産個数と比較し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数より大きいという比較結果が1回または所定回数連続して得られたときには、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ高い作業レベルに変更し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数より小さいという比較結果が1回または前記所定回数連続して得られたときには、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ低い作業レベルに変更するよう構成され、
前記適量重量範囲変更手段は、
今後の作業レベルが現在の作業レベルから変更されたときに、各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲に基づき、前記今後の作業レベルに応じた適量重量範囲に変更するよう構成され、
前記各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲は、その上限値を作業レベルが高いほど小さくなるように定められている、
請求項1に記載の計量器。
【請求項3】
前記作業レベル導出手段は、
商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を算出するとともに前記所定個数の商品の平均重量値を算出し、前記単位時間当たりの生産個数を単位時間当たりの目標生産個数と比較し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数以上であるという比較結果が得られたときには、前記商品の平均重量値に基づいて、今後の作業レベルを、現在と同じ作業レベルと、現在の作業レベルに近接する作業レベルとの中から、いずれの作業レベルにするかを決定し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数より小さいという比較結果が得られたときには、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ低い作業レベルに変更するよう構成され、
前記適量重量範囲変更手段は、
今後の作業レベルが現在の作業レベルから変更されたときに、各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲に基づき、前記今後の作業レベルに応じた適量重量範囲に変更するよう構成され、
前記各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲は、その上限値を作業レベルが高いほど小さくなるように定められている、
請求項1に記載の計量器。
【請求項4】
重量が適量重量範囲内の値となる被計量物からなる商品を生産する定貫作業に用いられ、載置部に載せられた被計量物の重量を計量し、この重量が前記適量重量範囲内の値であるか否かを判定し、前記適量重量範囲内の値であるときに適量である旨を報知する計量器であって、
商品の生産個数を計数する計数手段と、
商品を所定個数生産するたびに、前記所定個数の商品の単位時間当たりの生産個数を算出し、この単位時間当たりの生産個数に基づいて、作業者の作業レベルが予め定められた複数の作業レベルのうちのどのレベルであるかを導出する作業レベル導出手段とを備え、
前記作業レベル導出手段は、
商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を算出するとともに前記所定個数の商品の平均重量値を算出し、前記単位時間当たりの生産個数を各々の作業レベルに対して予め定められた単位時間当たりの目標生産個数と照合するとともに、前記商品の平均重量値を各々の作業レベルに対して予め定められた平均重量値の範囲とを照合し、これらの照合結果に基づいて現在の作業レベルを導出するよう構成された
量器。
【請求項5】
前記作業レベル導出手段で導出される作業レベルを報知する報知手段をさらに備えた、請求項1〜4のいずれかに記載の計量器。
【請求項6】
商品を前記所定個数生産するたびに、前記所定個数の商品を生産したときの作業レベルと、前記単位時間当たりの生産個数と、前記所定個数の商品の平均重量値と、前記所定個数の商品の重量の標準偏差とを含む生産作業情報を、履歴として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段で履歴として記憶された前記生産作業情報を出力する出力手段とをさらに備えた、請求項1〜5のいずれかに記載の計量器。
【請求項7】
ログイン処理を行い、このログイン処理により予め定められた作業者であることを認識するログイン手段をさらに備え、
前記記憶手段は、前記ログイン手段により認識された作業者を特定するための情報である作業者情報を前記生産作業情報に含めて記憶するよう構成された、請求項6に記載の計量器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が一定量の被計量物を袋又は容器等に詰める作業を行うために用いられる計量器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品等を生産する生産工場、スーパーマーケット等において、一定量の被計量物を袋又は容器等に詰める作業(以下、この作業を「定貫作業」という)を行うために、計量器が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この定貫作業に用いられる計量器では、計量される被計量物の重量値が予め設定された適量重量範囲内であると、適量であることが報知されるよう構成されている。そして、作業者は、被計量物を計量器に載せ、適量と報知された被計量物を計量器から取り出して袋又は容器等に詰める。この作業を繰り返し行うことによって、適量の被計量物が詰められた商品の生産が連続して進められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−71597号公報
【特許文献2】特開2013−36845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような定貫作業は、単調な作業の繰り返しであるので、作業者が高いモチベーションを維持するのは容易ではない。
【0006】
また、例えば、じゃがいものように個々の重量にばらつきのある被計量物の定量詰め(パック詰め)を行う場合、作業者の熟練度によって作業スピードに差が出る。そのため、同じ作業時間内でも作業者の熟練度によって生産数量が大きく異なる。また、同じ数量の商品を生産する場合には作業者の熟練度によって作業時間が大きく異なる。このように、作業者によって作業時間及び生産数量が安定していないと、管理者は生産計画を立てにくくなる。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、定貫作業を行う作業者のモチベーションの向上を図ることができる計量器を提供することを目的としている。また、他の目的は、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる計量器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある形態(aspect)に係る計量器は、重量が適量重量範囲内の値となる被計量物からなる商品を生産する定貫作業に用いられ、載置部に載せられた被計量物の重量を計量し、この重量が前記適量重量範囲内の値であるか否かを判定し、前記適量重量範囲内の値であるときに適量である旨を報知する計量器であって、商品の生産個数を計数する計数手段と、商品を所定個数生産するたびに、前記所定個数の商品の単位時間当たりの生産個数を算出し、この単位時間当たりの生産個数に基づいて、作業者の作業レベルが予め定められた複数の作業レベルのうちのどのレベルであるかを導出する作業レベル導出手段とを備えている。
【0009】
この構成によれば、商品を所定個数生産するたびに、単位時間当たりの生産個数、言い換えれば作業スピードに基づいて作業者の作業レベルを導出できる。そして、この作業レベルを作業者に報知することにより、作業者にとっては自分の熟練度が把握できるので、現時点より高いレベルを目指そうと考え、作業者のモチベーションを向上させることができる。
【0010】
前記作業レベル導出手段は、商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数と現在の作業レベルとに基づいて今後の作業レベルを導出するよう構成され、前記作業レベル導出手段で導出される今後の作業レベルが現在の作業レベルより高いレベルの場合には、範囲が狭くなるように前記適量重量範囲を変更し、今後の作業レベルが現在の作業レベルより低いレベルの場合には、範囲が広くなるように前記適量重量範囲を変更する適量重量範囲変更手段をさらに備えていてもよい。
【0011】
この構成によれば、作業レベルが高いほど適量重量範囲が狭くなるように変更されるので、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる。よって、管理者等が作業計画を立てやすくなる。
【0012】
前記作業レベル導出手段は、商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を単位時間当たりの目標生産個数と比較し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数より大きいという比較結果が1回または所定回数連続して得られたときには、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ高い作業レベルに変更し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数より小さいという比較結果が1回または前記所定回数連続して得られたときには、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ低い作業レベルに変更するよう構成され、前記適量重量範囲変更手段は、今後の作業レベルが現在の作業レベルから変更されたときに、各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲に基づき、前記今後の作業レベルに応じた適量重量範囲に変更するよう構成され、前記各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲は、その上限値を作業レベルが高いほど小さくなるように定められていてもよい。
【0013】
この構成によれば、作業レベルが高いほど適量重量範囲の上限値が小さくなって同範囲が狭くなるように変更されるので、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる。よって、管理者等が作業計画を立てやすくなる。
【0014】
前記作業レベル導出手段は、商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を算出するとともに前記所定個数の商品の平均重量値を算出し、前記単位時間当たりの生産個数を単位時間当たりの目標生産個数と比較し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数以上であるという比較結果が得られたときには、前記商品の平均重量値に基づいて、今後の作業レベルを、現在と同じ作業レベルと、現在の作業レベルに近接する作業レベルとの中から、いずれの作業レベルにするかを決定し、前記単位時間当たりの生産個数が前記単位時間当たりの目標生産個数より小さいという比較結果が得られたときには、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ低い作業レベルに変更するよう構成され、前記適量重量範囲変更手段は、今後の作業レベルが現在の作業レベルから変更されたときに、各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲に基づき、前記今後の作業レベルに応じた適量重量範囲に変更するよう構成され、前記各々の作業レベルに対して予め定められた適量重量範囲は、その上限値を作業レベルが高いほど小さくなるように定められていてもよい。
【0015】
この構成によれば、作業レベルが高いほど適量重量範囲の上限値が小さくなって同範囲が狭くなるように変更されるので、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる。よって、管理者等が作業計画を立てやすくなる。
【0016】
前記作業レベル導出手段は、商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を、各々の作業レベルに対して予め定められた単位時間当たりの目標生産個数と照合し、この照合結果に基づいて現在の作業レベルを導出するよう構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、商品を所定個数生産するたびに、単位時間当たりの生産個数、言い換えれば作業スピードに基づいて現在の作業レベルを導出できる。
【0018】
前記作業レベル導出手段は、商品を前記所定個数生産するたびに、前記単位時間当たりの生産個数を算出するとともに前記所定個数の商品の平均重量値を算出し、前記単位時間当たりの生産個数を各々の作業レベルに対して予め定められた単位時間当たりの目標生産個数と照合するとともに、前記商品の平均重量値を各々の作業レベルに対して予め定められた平均重量値の範囲とを照合し、これらの照合結果に基づいて現在の作業レベルを導出するよう構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、商品を所定個数生産するたびに、単位時間当たりの生産個数と商品の平均重量値、言い換えれば作業スピードと歩留まりの優劣とに基づいて現在の作業レベルを導出できる。
【0020】
前記作業レベル導出手段で導出される作業レベルを報知する報知手段をさらに備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、作業レベルが報知されることにより、作業者にとっては自分の熟練度が把握できるので、現時点より高いレベルを目指そうと考え、作業者のモチベーションを向上させることができる。
【0022】
商品を前記所定個数生産するたびに、前記所定個数の商品を生産したときの作業レベルと、前記単位時間当たりの生産個数と、前記所定個数の商品の平均重量値と、前記所定個数の商品の重量の標準偏差とを含む生産作業情報を、履歴として記憶する記憶手段と、前記記憶手段で履歴として記憶された前記生産作業情報を出力する出力手段とをさらに備えていてもよい。
【0023】
この構成によれば、このように、生産作業情報の履歴を記憶しておいて出力することにより、作業レベル等の推移がわかり、管理者等が作業者の能力向上過程を把握することが容易になる。
【0024】
ログイン処理を行い、このログイン処理により予め定められた作業者であることを認識するログイン手段をさらに備えていてもよい。
【0025】
前記記憶手段は、前記ログイン手段により認識された作業者を特定するための情報である作業者情報を前記生産作業情報に含めて記憶するよう構成されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、作業者情報を生産作業情報に含めて記憶するので、生産作業情報の履歴を出力することにより、作業者別に、作業レベル等の推移がわかり、管理者等が作業者別に能力向上過程を把握することが容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上に説明した構成を有し、定貫作業を行う作業者のモチベーションの向上を図ることができる計量器を提供することができるという効果を奏する。また、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる計量器を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1(A)は、本発明の実施形態の計量器の一例を示す外観図であり、図1(B)は、図1(A)の計量器の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態の計量器の第1計量モードにおける動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図2における計量処理のステップの詳細の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図2における作業レベル導出処理のステップの詳細の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、本実施形態の計量器による表示の一例を示す図である。
図6図6(A)、図6(B)は、それぞれ、各作業レベルと、単位時間当たりの目標生産個数及び適量重量範囲(下限値及び上限値)との関係の一例を示す図である。
図7図7は、第2計量モードにおける動作例での各作業レベルにおけるレベル変更範囲及びレベル不変範囲の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態の計量器の第3計量モードにおける動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施形態の計量器の第4計量モードにおける動作例での単位時間当たりの生産個数及び生産した商品1個当たりの平均重量値と、作業レベルとの対応関係の一例を示す図である。
図10図10(A)は、本発明の実施形態の計量器の他の例を示す外観図であり、図10(B)は、図10(A)の計量器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0030】
(実施形態)
図1(A)は、本発明の実施形態の計量器の一例を示す外観図であり、図1(B)は、図1(A)の計量器の構成を示すブロック図である。
【0031】
この計量器は、デジタル上皿自動秤であり、例えば、被計量物の定量詰め(例えば、じゃがいも等のパック詰め)の商品を生産するために用いられる。この計量器は、計量部11と、本体15と、制御器20とを備えている。
【0032】
計量部11は、被計量物が載せられる計量皿(載置部)12と、計量皿12を支持して、計量皿12上の被計量物の重量を計量できるロードセル等の重量センサ13等からなる。なお、重量センサ13は、図示しない公知の信号処理回路(例えば、増幅器やA/D変換器等)を介して制御器20に接続されている。これにより、計量皿12に載っている被計量物の重量は、重量センサ13によって逐次、計量されて、制御器20に入力される。重量センサ13及び制御器20は、本体15の筐体内に格納されている。
【0033】
本体15には、その前面に、操作部16と、表示部17と、判定ランプ18とが備えられている。操作部16は、計量器の動作開始および動作停止等の操作並びに計量器の動作条件(パラメータ)の値等を、制御器20に入力するための手段として機能する。つまり、操作部16を用いることで、操作部16の操作による様々な入力信号が制御器20に入力され、制御器20の記憶部に記憶される。表示部17は、例えば小型の液晶ディスプレイを用いて構成され、制御器20によって演算される被計量物の重量等を表示する。判定ランプ18は、例えば多色LEDを用いて構成され、点灯色を変更できる。
【0034】
制御器20は、例えばマイクロコントローラ等によって構成され、マイクロコントローラのCPU等からなる演算部と、マイクロコントローラのRAM及びROM等からなる記憶部とを有している。
【0035】
制御器20は、重量センサ13及び操作部16からの信号を入力し、表示部17へ表示するデータ等の信号を出力するとともに、判定ランプ18を制御する。また、制御器20は、商品の生産個数を計数する計数手段、作業レベル導出手段、及び適量重量範囲変更手段等として機能する。なお、制御器20は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
【0036】
以上のように構成された計量器の動作について説明する。この計量器の動作は制御器20によって制御され、計量器を動作させるために必要な情報はすべて制御器20の記憶部に記憶されており、また、動作中に記憶される情報はすべて制御器20の記憶部に記憶される。なお、この計量器は、例えば、ひょう量が3000g、目量が1g、最小測定量が20gである。
【0037】
この計量器は、複数の計量モード(動作モード)、ここでは第1〜第4計量モードの4つの計量モードを有し、設定される計量モードに応じて動作するように構成されている。例えば管理者は、操作部16を操作して計量器を設定モードと第1〜第4計量モードとに切り替えることができる。まず、例えば管理者は、作業開始前に、操作部16を操作して設定モードを選択し、設定モードにおいて、第1〜第4計量モードの中からパラメータを設定しようとする計量モードを選択し、さらに、選択した計量モードに必要な各パラメータの値を設定する。これらの設定は、表示部17に設定するために必要な情報が表示され、それを見ながら操作部16を操作して設定することができるように構成されている。また、作業者等が、パラメータが設定されている所望の計量モードに切り替えると、計量器は、所望の計量モード及び各パラメータの値に基づいて動作を行う。
【0038】
〔第1計量モードにおける動作例〕
図2は、本実施形態の計量器の第1計量モードにおける動作の一例を示すフローチャートである。図3は、図2における計量処理のステップS4の詳細の一例を示すフローチャートである。図4は、図2における作業レベル導出処理のステップS9の詳細の一例を示すフローチャートである。また、図5は、本実施形態の計量器による表示の一例を示す図である。
【0039】
前述のように、管理者は、作業者の作業開始前に、操作部16を操作して設定モードにおいて、パラメータを設定する計量モードとして第1計量モードを選択する。そして、第1計量モードにおけるパラメータである、生産する商品1個当たりの目標重量と、最大許容幅と、最小許容幅と、作業レベルの個数(M)、作業レベルを導出するタイミングを決定するための所定回数(k)と、作業レベルごとの単位時間当たりの目標生産個数(Q)と、計量皿12上の被計量物の有無を判定するためのしきい値(Wt)と、レベル変更しきい値(T)とのそれぞれの値を設定する。これらの設定値は、操作部16から入力されて制御器20の記憶部に記憶(設定)される。なお、しきい値Wtには、最小測定量(例えば20g)が自動的に設定されるようにしてもよい。また、上記のパラメータの値は一度設定すれば電源を切っても保持(記憶)されており、変更のない限り、再設定は不要である。また、作業者は、設定モードにおいて、操作部16を操作して作業レベルを入力し、制御器20の記憶部に記憶(設定)させることができる。
【0040】
なお、作業レベルは、作業者の作業能力を示す指標であり、複数(M個)のレベルに分けられている。ここでは、レベル1〜5までの5つのレベルに分けられ(M=5)、その数値が大きいほど作業能力が優れているものとする。また、一例として、目標重量(400g)と、最大許容幅(40g)と、最小許容幅(20g)と、所定回数k(k=20)とが設定され、1〜5の全ての作業レベルにおいて、単位時間当たりの目標生産個数が2個/分に設定されているものとする(図6(A)参照)。
【0041】
計量作業(商品の生産作業)を行う場合には、作業者が、操作部16を操作して計量器を所望の計量モード(ここでは第1計量モード)にする。そして、作業者は、計量皿12に被計量物を載せて、後述のように判定ランプ18が青色に点灯したときに、計量皿12上の被計量物をパックに詰めて1個の商品を生産する。このようにして順次商品を生産する。
【0042】
第1計量モードになると、制御器20は、図2に示すように、作業レベルが設定されているか否かを判定し(ステップS1)、入力されていなければ、作業レベルをレベル1に設定する(ステップS2)。
【0043】
次に、制御器20は、設定されている作業レベルに応じて、生産される商品(パック詰めにされる被計量物)の適量重量範囲と、単位時間当たりの目標生産個数(Q)とを算出し設定する(ステップS3)。
【0044】
適量重量範囲は、その下限値を目標重量とし、上限値を(目標重量+適用許容幅)として算出する。ここで、適用許容幅は次式によって算出する。なお、作業レベルの値(作業レベル設定値)をVとする。
【0045】
適用許容幅=(最大許容幅−最小許容幅)÷(M−1)×(M−V)+最小許容幅
例えば、作業レベルの個数Mが5で、作業レベル設定値Vが3で、目標重量が400g、最大許容幅が40g、最小許容幅が20gの場合、次式によって、適用許容幅は、30gとなる。
【0046】
適用許容幅=(40−20)÷(5−1)×(5−3)+20=30
よって、作業レベル3の適量重量範囲の上限値は400g+30g=430gとなり、適量重量範囲は、400g以上で、430g以下の範囲となる。なお、作業レベルの個数M、目標重量、最大許容幅及び最小許容幅が設定された時点において、各作業レベル(V=1〜M)に応じた適量重量範囲を予め算出しておいてもよい。本例の場合、作業レベル(V)が1,2,3,4,5のそれぞれの適用許容幅は、40g,35g,30g,25g,20gと算出できる。これらに下限値である目標重量(400g)を加算した値が適量重量範囲の上限値となる(図6(A)参照)。
【0047】
なお、作業レベルが設定された時点から、制御器20は、図5の符号100に示す状態のように、表示部17の画面に、設定された作業レベル(例えば「作業レベル3」)を表示させる。
【0048】
次に、計量処理(ステップS4)が図3のフローに基づいて行われる。
【0049】
制御器20は、逐次取得する重量センサ13の重量信号に基づいて計量皿12上の被計量物の重量(W)を算出する(ステップS21)。
【0050】
そして、被計量物の重量(W)が、予め設定されたしきい値(Wt、例えば20g)よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。
【0051】
ここで、被計量物の重量(W)が、しきい値(Wt)以下の場合、図5の符号100に示す状態のように、判定ランプ18を消灯させる(ステップS28)。
【0052】
一方、被計量物の重量(W)が、しきい値(Wt)よりも大きい場合、次の判定ステップS23に進み、被計量物の重量(W)が、適量重量範囲の下限値(WD、例えば400g)以上であるか否かを判定する。
【0053】
ここで、被計量物の重量(W)が、下限値(WD)未満の場合、被計量物が軽量であると判定し、図5の符号101に示す状態のように、判定ランプ18を赤色に点灯させる(ステップS27)。これにより、作業者は被計量物の載せ替えや追加を行う。
【0054】
一方、被計量物の重量(W)が、下限値(WD)以上の場合、次の判定ステップS24に進み、被計量物の重量(W)が、適量重量範囲の上限値(WU、例えば430g)よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。
【0055】
ここで、被計量物の重量(W)が、上限値(WU)よりも大きい場合、被計量物が過量であると判定し、図5の符号103に示す状態のように、判定ランプ18を黄色に点灯させる(ステップS26)。これにより、作業者は被計量物の載せ替えや取り出しを行う。
【0056】
一方、被計量物の重量(W)が、上限値(WU)以下の場合、被計量物が適量であると判定し、図5の符号102に示す状態のように、判定ランプ18を青色に点灯させる(ステップS25)。作業者は、このときの計量皿12上の被計量物を商品としてパックに詰める。これにより1個の商品が生産される。
【0057】
制御器20は、上記のように被計量物が適量であると判定した後、計量回数nの値を1増加し(ステップS5)、計量回数nが所定回数k(k=20)になったか否かを判定する(ステップS6)。なお、計量回数nの初期値は0に設定されている。また、ステップS5で計量回数nを算出(更新)することは、重量が適量と判定された被計量物からなる商品の生産個数を計数することに相当する。
【0058】
計量回数nが所定回数kになるまで、ステップS4の計量処理が繰り返される。そして、計量回数nが所定回数kになると、計量回数nを0にして(ステップS7)、生産作業情報を記憶し(ステップS8)、作業レベル導出処理を行う(ステップS9)。すなわち、商品がk個生産されるたびに、生産作業情報が記憶されるとともに、作業レベル導出処理が行われる。
【0059】
ステップS8で記憶する生産作業情報は、例えば、現在の作業レベルと、k個生産した商品の単位時間当たりの生産個数(P)と、k個生産した商品の1個当たりの平均重量値(Ave)と、k個生産した商品の重量の標準偏差とを含む情報である。すなわち、ステップS8では、例えば、単位時間当たりの生産個数(P)と、k個生産した商品1個当たりの平均重量値(Ave)と、k個生産した商品の重量の標準偏差とを算出し、それらを現在の作業レベルと関連付けて記憶する。この生産作業情報は、ステップS8が行われるたびに、履歴として記憶される。
【0060】
ここで、制御器20は、単位時間当たりの生産個数(P)を算出する場合、直近に生産されたk個(所定個数)の商品について、それを生産するのに要した生産時間tを制御器20が計時しており、P=k÷tとして算出する。ここでは、Pは、端数処理(例えば小数点以下を四捨五入)して、整数値として算出している。なお、生産時間tは、例えば、計量開始後すぐの場合は、計量モードが開始されてから最初にステップS7が行われるまでの時間として算出し、その後は、ステップS7が行われてから、次にステップS7が行われるまでの時間として算出することができる。
【0061】
ステップS9の作業レベル導出処理は、図4のフローに基づいて行われる。
【0062】
制御器20は、直近に生産されたk個(所定個数)の商品について、単位時間当たりの生産個数(P)を算出する(ステップS30)。なお、前述のステップS8で、生産作業情報に単位時間当たりの生産個数(P)を含める場合には、ステップS8で算出した値を用いればよく、このステップS30を省略できる。
【0063】
次に、制御器20は、単位時間当たりの生産個数(P)が、単位時間当たりの目標生産個数(Q)より大きいか否かを判定する(ステップS31)。
【0064】
そして、P>Qである場合には、レベルダウンカウンタ値を0にし(ステップS32)、現在の作業レベルが最高レベル(レベル5)ではないか否かを判定する(ステップS33)。
【0065】
現在の作業レベルが最高レベルである場合には、現在の作業レベル導出処理を終了し、最高レベルではない場合には、レベルアップカウンタ値を1増加する(ステップS34)。
【0066】
次に、レベルアップカウンタ値がレベル変更しきい値(T)であるか否かを判定する(ステップS35)。そして、レベルアップカウンタ値がレベル変更しきい値(T)でない場合には、現在の作業レベル導出処理を終了し、レベル変更しきい値(T)である場合には、レベルアップカウンタ値を0にして(ステップS36)、作業レベルを現在のレベルより1つ高いレベルに変更する(ステップS37)。このとき、表示部17に表示される作業レベルも変更後のものに変更する。なお、レベル変更しきい値(T)は、例えば、T=3に設定されている。
【0067】
一方、ステップS31において、P>Qではない場合には、レベルアップカウンタ値を0にし(ステップS38)、単位時間当たりの生産個数(P)が、単位時間当たりの目標生産個数(Q)より小さいか否かを判定する(ステップS39)。
【0068】
そして、P<Qではない場合には、レベルダウンカウンタ値を0にし(ステップS40)、現在の作業レベル導出処理を終了する。
【0069】
一方、P<Qである場合には、現在の作業レベルが最低レベル(レベル1)ではないか否かを判定する(ステップS41)。
【0070】
現在の作業レベルが最低レベルである場合には、現在の作業レベル導出処理を終了し、最低レベルではない場合には、レベルダウンカウンタ値を1増加する(ステップS42)。
【0071】
次に、レベルダウンカウンタ値がレベル変更しきい値(T)であるか否かを判定する(ステップS43)。そして、レベルダウンカウンタ値がレベル変更しきい値(T)でない場合には、現在の作業レベル導出処理を終了し、レベル変更しきい値(T)である場合には、レベルダウンカウンタ値を0にして(ステップS44)、作業レベルを現在のレベルより1つ低いレベルに変更する(ステップS45)。このとき、表示部17に表示される作業レベルも変更後のものに変更する。
【0072】
すなわち、この作業レベル導出処理では、商品がk個生産されるたびに行われ、直近に生産されたk個の商品についての単位時間(例えば1分間)当たりの生産個数(P)と、単位時間(例えば1分間)当たりの目標生産個数(Q)との大小を比較し、P>Qとなる場合がT回(Tはレベル変更しきい値)連続する場合に、作業レベルを現在のレベルより1つ高いレベルに変更し(但し上限はレベル5)、P<Qとなる場合がT回連続する場合に、作業レベルを現在のレベルより1つ低いレベルに変更する(但し下限はレベル1)ようにしている。なお、レベル変更しきい値(T)は、T=1に設定されてあってもよい。
【0073】
次に、制御器20は、図2のステップS10で、ステップS9の作業レベル導出処理において作業レベルの変更が有ったか否かを判定する。
【0074】
そして、作業レベルの変更が無い場合には、ステップS4からの処理を繰り返す。また、作業レベルの変更が有った場合には、ステップS11へ進み、前述のステップS3の場合と同様にして、変更後の作業レベルに応じた、適量重量範囲と、単位時間当たりの目標生産個数(Q)とを設定(更新)し、ステップS4からの処理を繰り返す。
【0075】
図6(A)、図6(B)は、それぞれ、各作業レベルと、単位時間当たりの目標生産個数及び適量重量範囲(下限値及び上限値)との関係の一例を示す図である。
【0076】
図6(A)の場合、前述の動作例で述べたように、全ての作業レベル1〜5において、単位時間当たりの目標生産個数(Q)が同一に設定されており、各作業レベル1〜5に応じて適量重量範囲が異なるように設定されている。この場合、作業レベルが高くなるほど、適量重量範囲の上限値が小さくなるように、作業レベルに応じて適量重量範囲の上限値が変更される。
【0077】
この図6(A)の場合、例えば現在の作業レベルが3のときには、適量重量範囲の上限値は430gである。このときに、P>2(=Q)の場合がT回連続すると、作業レベル4になり、上限値が425gに変更され、さらに、P>2の場合がT回連続すると、作業レベル5になり、上限値が420gに変更される。反対に、作業レベル3のときに、P<2の場合がT回連続すると、作業レベル2になり、上限値が435gに変更され、さらに、P<2の場合がT回連続すると、作業レベル1になり、上限値が440gに変更される。
【0078】
一方、図6(B)の場合、各作業レベル1〜5に応じて、単位時間当たりの目標生産個数及び適量重量範囲が異なるように設定されている。この場合、作業レベルが高くなるほど、単位時間当たりの目標生産個数が大きくなるとともに、適量重量範囲の上限値が小さくなるように、作業レベルに応じて両者が変更される。
【0079】
この図6(B)の場合、例えば現在の作業レベルが3のときには、目標生産個数Q=3であり、適量重量範囲の上限値は430gである。このときに、P>3(=Q)の場合がT回連続すると、作業レベル4になり、目標生産個数Q=4、上限値は425gに変更される。そして作業レベル4のときに、P>4(=Q)の場合がT回連続すると、作業レベル5になり、目標生産個数Q=5、上限値は420gに変更される。また、作業レベル3のときに、P<3の場合がT回連続すると、作業レベルは2になり、目標生産個数Q=2、上限値は435gに変更される。そして作業レベル2のときに、P>2(=Q)の場合がT回連続すると、作業レベルは3になって目標生産個数Q=3、上限値は430gへ戻る。一方、作業レベル2のときに、P<2(=Q)の場合がT回連続すると、作業レベルは1になって目標生産個数Q=1、上限値は440gに変更される。
【0080】
図6(A)、(B)のいずれの場合も、作業レベルが高くなるほど、適量重量範囲の上限値が小さくなるように変更されるので、作業レベルが高いほど歩留まりがよくなる。よって、作業レベルが高くなるほど、適量重量範囲の上限値が小さくなるように変更されることが好ましい。
【0081】
なお、図6(B)の場合には、作業レベルが1つ高くなると、単位時間当たりの目標生産個数が大きくなるとともに、適量重量範囲の上限値が小さくなるため、隣接する作業レベル間の能力差が大きいように設定されており、作業レベルが高くなったり低くなったりと頻繁に変更されることが考えられる。このような場合、前述の動作例のように、全ての作業レベル1〜5において、単位時間当たりの目標生産個数を同一に設定する方が好ましい。あるいは、いくつかの隣接する作業レベルの単位時間当たりの目標生産個数を同一に設定するようにしてもよい。例えば、作業レベル1〜3については、単位時間当たりの目標生産個数を2個とし、作業レベル4、5については、単位時間当たりの目標生産個数を3個とすることもできる。
【0082】
また、前述の動作例のように(例えば図6(A)の場合)、全ての作業レベル1〜5において、単位時間当たりの目標生産個数を同一に設定し、作業レベルが高くなるほど、適量重量範囲の上限値が小さくなるように変更することにより、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる。よって、管理者等が作業計画を立てやすくなる。
【0083】
また、作業レベルが表示部17に表示されることにより、作業者にとっては自分の熟練度が数値化されて表示されるので、現時点より高いレベルを目指そうと考え、作業者のモチベーションを向上させることができる。
【0084】
〔第2計量モードにおける動作例〕
前述の第1計量モードでは、現在の作業レベルと、k個生産したときの単位時間当たりの生産個数(P)とに基づいて、今後の作業レベルを導出(作業レベルの変更及び非変更)するようにしたが、この第2計量モードでは、現在の作業レベルと、k個生産したときの単位時間当たりの生産個数(P)及び商品1個当たりの平均重量値(Ave)とに基づいて、今後の作業レベルを導出(作業レベルの変更及び非変更)する。
【0085】
すなわち、第2計量モードは、図2の作業レベル導出処理(ステップS9)が第1計量モードとは異なる。また、第2計量モードでは、単位時間当たりの目標生産個数(Q)は、全ての作業レベルにおいて同一に設定される。そのため、図2のステップS3及びステップS11において、第2計量モードの場合には、作業レベルに応じて適量重量範囲が設定ないし更新される処理が行われるが、単位時間当たりの目標生産個数(Q)については設定ないし更新される処理は行われない。単位時間当たりの目標生産個数(Q)は、設定モードにおいて、全ての作業レベルに共通の値(例えば2個/分)が予め設定されたままであり、変更されない。これらのこと以外は前述の第1計量モード(図2)の場合と同様である。
【0086】
この第2計量モードにおける作業レベル導出処理(ステップS9)について説明する。第2計量モードでは、各々の作業レベルに対して、適量重量範囲に相当する重量範囲内にレベル変更範囲及びレベル不変範囲が、予め設定モードにおいて設定されている。
【0087】
図7は、第2計量モードにおける動作例での各作業レベルにおけるレベル変更範囲及びレベル不変範囲の一例を示す図である。この図7では、各作業レベルにおける適量重量範囲の下限値及び上限値は、図6(A)の場合と同じに設定されているものとする。
【0088】
レベル変更範囲には、高レベル変更範囲と低レベル変更範囲とがあり、図7において、作業レベルm(m=1〜5)に対して、高レベル変更範囲をRHm、低レベル変更範囲をRLmで示し、レベル不変範囲をRCmで示している(但し、RH5、RL1は存在しない)。
【0089】
最高レベル及び最低レベルを除く作業レベル2〜4の各々に対しては、各々の適量重量範囲が3つの範囲に区分され、適量重量範囲の下限値を含む範囲が高レベル変更範囲RHmとなり、適量重量範囲の上限値を含む範囲が低レベル変更範囲RLmとなり、これらの範囲RHm、RLmの間の範囲がレベル不変範囲RCmとなる。
【0090】
一方、最低レベルの作業レベル1に対しては、適量重量範囲が2つの範囲に区分され、適量重量範囲の下限値を含む範囲が高レベル変更範囲RH1となり、適量重量範囲の上限値を含む範囲がレベル不変範囲RC1となる。
【0091】
また、最高レベルの作業レベル5に対しては、適量重量範囲が2つの範囲に区分され、適量重量範囲の下限値を含む範囲がレベル不変範囲RC5となり、適量重量範囲の上限値を含む範囲が低レベル変更範囲RL5となる。
【0092】
図7では、例えば、作業レベル3の場合、その適量重量範囲(400〜430g)内において、高レベル変更範囲RH3が、400g≦RH3≦415gに設定され、レベル不変範囲RC3が、415g<RC3<420gに設定され、低レベル変更範囲RL3が、420g≦RL3≦430gに設定されている。作業レベル2,4の場合も同様にして、各適量重量範囲内において、高レベル変更範囲(RH2,RH4)、レベル不変範囲(RC2,RC4)及び低レベル変更範囲(RL2,RL4)が設定されている。
【0093】
一方、作業レベル1の場合は、その適量重量範囲(400〜440g)内において、高レベル変更範囲RH1が、400g≦RH1≦425gに設定され、レベル不変範囲RC1が、425g<RC1≦440gに設定され、低レベル変更範囲は無い。
【0094】
また、作業レベル5の場合は、その適量重量範囲(400〜420g)内において、高レベル変更範囲は無く、レベル不変範囲RC5が、400g≦RC5<410gに設定され、低レベル変更範囲RL5が、410g≦RL5≦420gに設定されている。
【0095】
このような高レベル変更範囲、低レベル変更範囲及びレベル不変範囲は、設定モードにおいて、例えば、適量重量範囲の下限値となる目標重量(400g)と、各作業レベルの適量重量範囲の上限値とを設定し、最高レベル以外の作業レベルに対して、高レベル変更上限値(図7の作業レベル1〜4において三角印で示されたところの重量値)を設定するとともに、最低レベル以外の作業レベルに対して、低レベル変更下限値(図7の作業レベル2〜5において白丸印で示されたところの重量値)を設定することにより、設定される。
【0096】
ここでの作業レベル導出処理は、まず、直近に生産されたk個の商品についての単位時間当たりの生産個数(P)と、単位時間当たりの目標生産個数(Q)とを比較し、P<Qである場合には、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ低いレベルに変更する。但し、現在の作業レベルが最低レベル(作業レベル1)の場合には、レベルの変更はない。
【0097】
一方、P≧Qである場合には、例えばステップS8で算出した商品1個当たりの平均重量値(Ave)に基づいて、今後の作業レベルを、現在と同じ作業レベルと、現在の作業レベルに近接する作業レベル(すなわち、現在の作業レベルより1つ低い作業レベル及び/または1つ高い作業レベル)との中から、いずれの作業レベルにするかを決定する。具体的には、平均重量値(Ave)が、現在の作業レベル(m)における高レベル変更範囲(RHm)、低レベル変更範囲(RLm)及びレベル不変範囲(RCm)のいずれの範囲に属するかによって、今後の作業レベルを決める。
【0098】
すなわち、平均重量値(Ave)が現在の作業レベル(m)における高レベル変更範囲(RHm)に属する場合には、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ高いレベルに変更する(図7中の右向き矢印及び「+1」で示す)。また、平均重量値(Ave)が低レベル変更範囲(RLm)に属する場合には、今後の作業レベルを現在の作業レベルより1つ低いレベルに変更する(図7中の左向き矢印及び「−1」で示す)。また、平均重量値Aveがレベル不変範囲(RCm)に属する場合には、作業レベルの変更はしない。
【0099】
例えば、図7において、現在の作業レベルが3の場合に、平均重量値Aveが413gであれば、高レベル変更範囲RH3に属しているので、今後の作業レベルを4に変更する。また、平均重量値Aveが425gであれば、低レベル変更範囲RL3に属しているので、今後の作業レベルを2に変更する。また、平均重量値Aveが418gであれば、レベル不変範囲RC3に属しているので、今後の作業レベルを現在の作業レベル3のままにして、レベルの変更はしない。
【0100】
この第2計量モードの動作例においても、第1計量モードの動作例のように(例えば図6(A)の場合)、全ての作業レベル1〜5において、単位時間当たりの目標生産個数を同一に設定し、作業レベルが高くなるほど、適量重量範囲の上限値が小さくなるように変更することにより、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる。よって、管理者等が作業計画を立てやすくなる。
【0101】
また、作業レベルが表示部17に表示されることにより、作業者のモチベーションを向上させることができる。
【0102】
〔第3計量モードにおける動作例〕
図8は、本実施形態の計量器の第3計量モードにおける動作の一例を示すフローチャートである。
【0103】
この場合、例えば管理者は、作業者の作業開始前に、操作部16を操作して設定モードにおいて、パラメータを設定する計量モードとして第3計量モードを選択する。そして、第3計量モードにおけるパラメータである、生産する商品1個当たりの目標重量と、許容幅と、作業レベルの個数(M)、作業レベルを導出するタイミングを決定するための所定回数(k)と、作業レベルごとの単位時間当たりの目標生産個数(Q)と、計量皿12上の被計量物の有無を判定するためのしきい値(Wt)とのそれぞれの値を設定する。これらの設定値は、操作部16から入力されて制御器20の記憶部に記憶(設定)される。ここでも、しきい値Wtには、最小測定量(20g)が自動的に設定されるようにしてもよい。また、上記のパラメータの値は一度設定すれば電源を切っても保持(記憶)されており、変更のない限り、再設定は不要である。
【0104】
本例では、作業レベルは、第1計量モードの場合と同様、例えば、レベル1〜5までの5つのレベルに分けられ(M=5)、その数値が大きいほど作業能力が優れているものとする。また、一例として、目標重量(400g)と、許容幅(40g)と、所定回数k(k=20)とが設定され、単位時間当たりの目標生産個数(Q)が、レベル1は1個/分(Q1)、レベル2は2個/分(Q2)、レベル3は3個/分(Q3)、レベル4は4個/分(Q4)、レベル5は5個/分(Q5)に設定されているものとする。この第3計量モードでは、適量重量範囲は、全ての作業レベルにおいて同一であり、その下限値(WD)を目標重量とし、上限値(WU)を(目標重量+許容幅)として算出する。
【0105】
計量作業(商品の生産作業)を行う場合には、作業者が、操作部16を操作して計量器を第3計量モードにする。そして、作業者は、第1計量モードの場合と同様、計量皿12に被計量物を載せて、判定ランプ18が青色に点灯したときに、計量皿12上の被計量物をパックに詰めて1個の商品を生産する。このようにして順次商品を生産する。
【0106】
第3計量モードになると、制御器20は、図8に示すように、ステップS51〜S56を繰り返し行う。ステップS51の計量処理は、図2のステップS4(図3のステップS21〜S28)と同様である。但し、前述のように、適量重量範囲の下限値(WD)を目標重量とし、上限値(WU)を(目標重量+許容幅)とする。また、ステップS52、S53、S54は、図2のステップS5、S6、S7と同様である。
【0107】
ステップS55の作業レベル導出処理では、制御器20は、図2のステップS8(あるいは図4のステップS30)の場合と同様にして、k個生産した商品の単位時間当たりの生産個数(P)を算出する。そして、単位時間当たりの生産個数(P)と各作業レベル1〜5の単位時間当たりの目標生産個数(Q1〜Q5)とに基づいて、作業レベルを決定する。具体的には、生産個数(P)と同一の目標生産個数(Q1〜Q5)に対応する作業レベルに決定する。但し、最低の作業レベル1には、生産個数(P)が1個/分の場合に加え、0個/分の場合も含めるものとし、最高の作業レベル5には、生産個数(P)が5個/分の場合に加え、6個/分以上の場合も含めるものとする。
【0108】
すなわち、単位時間当たりの生産個数(P)が1個/分以下の場合には作業レベルを1とし、同生産個数(P)が2個/分の場合には作業レベルを2とし、同生産個数(P)が3個/分の場合には作業レベルを3とし、同生産個数(P)が4個/分の場合には作業レベルを4とし、同生産個数(P)が5個/分以上の場合には作業レベルを5とする。
【0109】
また、制御器20は、ステップS55で作業レベルを決定すると、即座にその作業レベルを表示部17の画面に表示させる。この場合、計量開始後、1回目のステップS55が行われるまでの間は表示部17に作業レベルは表示されない。
【0110】
次のステップS56では、図2のステップS8の場合と同様にして、ステップS55で決定した現在の作業レベルと、単位時間当たりの生産個数(P)と、k個生産した商品1個当たりの平均重量値(Ave)と、k個生産した商品の重量の標準偏差とを含む生産作業情報を、履歴として記憶する。
【0111】
〔第4計量モードにおける動作例〕
前述の第3計量モードでは、作業レベルを、単位時間当たりの生産個数(P)に基づいて決定するようにしたが、この第4計量モードでは、ステップS55の作業レベル導出処理において、作業レベルを、単位時間当たりの生産個数(P)と、k個生産した商品1個当たりの平均重量値(Ave)とに基づいて決定する。このこと以外は前述の第3計量モードの場合と同様である。
【0112】
図9は、第4計量モードにおける動作例での単位時間当たりの生産個数(P)及び生産した商品1個当たりの平均重量値(Ave)と、作業レベルとの対応関係の一例を示す図である。この場合、各作業レベルm(m=1〜5)を、さらに複数の作業レベルmA、mB、mCに細分化していると考えることができる。例えば、単位時間当たりの生産個数(P)に基づいて主レベルmを決め、さらに、商品1個当たりの平均重量値(Ave)に基づいて、作業レベルmA、mB、mCを決めるようにしている。
【0113】
この場合、制御器20は、各作業レベルmA、mB、mCを決めるための、単位時間当たりの目標生産個数(Qm)と、商品1個当たりの平均重量値(Ave)の範囲とを予め記憶している。すなわち、管理者は、予め操作部16を操作して、各作業レベルmA、mB、mCに対応する平均重量値(Ave)の範囲をパラメータとして入力している。他のパラメータは、第3計量モードの場合と同様である。
【0114】
第3及び第4計量モードにおいても、第1計量モードの場合と同様、作業レベルが表示部17に表示されることにより、作業者にとっては自分の熟練度が数値化されて表示されるので、現時点より高いレベルを目指そうと考え、作業者のモチベーションを向上させることができる。
【0115】
また、第4計量モードでは、第3計量モードにおける作業レベルが平均重量値(Ave)に応じて細分化された作業レベルを導出し、表示することができる。
【0116】
なお、本実施形態において、制御器20は、ログイン機能を有するように構成してもよい。この場合、例えば、電源を投入すると、はじめに、表示部17の画面に、作業者名(ユーザー名)及びパスワードを入力する一般的なログイン画面が表示される。操作部16を操作してログイン画面に作業者名及びパスワードを入力すると、制御器20の記憶部に予め記憶されている作業者名及びパスワードとを照合し、一致すれば計量器の種々の操作が可能になる。この場合、制御器20は、生産作業情報を記憶する際(例えば、図2のステップS8、図8のステップS56)、生産作業情報に作業者名を含めて記憶するようにする。
【0117】
また、操作部16を操作して、図2のステップS8あるいは図8のステップS56で記憶した生産作業情報の履歴を表示部17に表示させることができるよう構成されている。また、計量器が、制御器20により制御される内部プリンタ(図示せず)を有し、操作部16を操作して、内部プリンタで生産作業情報の履歴を印刷できるよう構成されていてもよい。また、計量器が、制御器20により制御される通信手段(図示せず)を有し、操作部16を操作して、制御器20から通信手段を介して外部プリンタ等へ生産作業情報の履歴を送信し、外部プリンタで生産作業情報の履歴を印刷できるよう構成されていてもよい。このように、生産作業情報の履歴を表示部17で表示したり、内部あるいは外部プリンタで印刷することにより、作業レベル等の推移がわかり、管理者等が作業者の能力向上過程を把握することが容易になる。また、前述のように、制御器20がログイン機能を有するように構成されており、生産作業情報に作業者名が含まれる場合には、生産作業情報の履歴に作業者名を含めて表示あるいは印刷されるので、作業者別に、作業レベル等の推移がわかり、管理者等が能力向上過程を把握することが容易になる。
【0118】
図10(A)は、本発明の実施形態の計量器の他の例を示す外観図であり、図10(B)は、図10(A)の計量器の構成を示すブロック図である。
【0119】
この計量器は、デジタル台秤であり、例えば、被計量物の定量詰め(例えば、パック詰め)の商品を生産するために用いられる。この計量器は、計量部31と、操作表示部35と、制御器40とを備えている。
【0120】
計量部31は、被計量物が載せられる計量台(載置部)32と、計量台32を支持して、計量台32上の被計量物の重量を計量できるロードセル等の重量センサ33等からなる。なお、重量センサ33は、複数(例えば4個)のロードセル等から構成されていてもよく、図示しない公知の信号処理回路(例えば、増幅器やA/D変換器等)を介して制御器40に接続されている。これにより、計量台32に載っている被計量物の重量は、重量センサ33によって逐次、計量されて、制御器40に入力される。制御器40は、操作表示部35の筐体内に格納されている。
【0121】
操作表示部35には、その前面に、操作部36と、表示部37と、判定ランプ38とが備えられている。これら操作部36、表示部37、判定ランプ38及び制御器40の機能は、図1(A)、(B)に示す操作部16、表示部17、判定ランプ18及び制御器20の機能と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0122】
なお、本実施形態では、作業レベルを表示部17,37で表示するようにしたが、別途、作業レベル表示用の表示手段が設けられてあってもよい。また、作業レベルの表示(報知)は、レベルの値等に限らず、バーグラフでの表示、レベル別に設けられたランプの点灯等でもよく、作業レベルを作業者等に報知することができればよい。
【0123】
また、本実施形態では、第1〜第4の4つの計量モードを有する計量器として説明したが、第1〜第4計量モードのうちのいずれか1つの計量モードの動作、または、いずれか2つの計量モードの動作を行うことができる計量器として構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、定貫作業を行う作業者のモチベーションの向上を図ることができる計量器等として、また、作業者の熟練度による作業スピードの差を緩和し、作業時間及び生産数量の安定化を図ることができる計量器等として有用である。
【符号の説明】
【0125】
11 計量部
12 計量皿
13 重量センサ
15 本体
16 操作部
17 表示部
18 判定ランプ
20 制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10