(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に触媒が担持されかつ所定方向に移動される基板を導き入れるとともに、前記基板の移動方向に沿って、前記基板表面を第1CVD温度に加熱してカーボンナノチューブを所定の長さに成長させる第1CVD温度領域と、さらに前記基板表面を前記第1CVD温度よりも高い第2CVD温度に加熱してカーボンナノチューブの表面にカーボンを付着させる第2CVD領域とが設けられた、化学気相成長法を用いてカーボンナノチューブを連続的に生成する減圧の反応容器を有するカーボンナノチューブの製造装置であって、
前記反応容器において、前記第1CVD温度領域と前記第2CVD温度領域とには、前記基板に前記原料ガスを供給する前記原料ガス供給管に接続されて、前記基板の表面を所定範囲に亘って覆うことで反応空間を制限する第1空間仕切体と第2空間仕切体とがそれぞれ配置され、
前記第1空間仕切体と前記第2空間仕切体との間に熱遮蔽部材が設けられていることを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置。
反応容器において、第1空間仕切体よりも基板の移動方向の後方側及び第2空間仕切体よりも前記基板の移動方向の前方側にさらに熱遮蔽部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
熱遮蔽部材は複数の板材により構成されるとともに、反応容器の壁部に、前記板材間から排出される原料ガスを外部へ排気するガス排気管が接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において、カーボンナノチューブの長さ及びアモルファス層の厚みは、供給される原料ガスの濃度により制御されているが、十分高い濃度の原料ガスを供給しても、得られるアモルファス層の厚みによっては、カーボンナノチューブの表面における電池触媒の凝集が抑制されない場合があった。
【0005】
この問題を解決するためには、例えば、結晶性の高いカーボンナノチューブの成長(いわゆる長さの成長)に適した温度と、カーボンナノチューブの外表面に形成される非晶質のカーボンの成長(いわゆるアモルファス層の成長)に適した温度との2段階でカーボンナノチューブを成長させることで、長さとアモルファス層の厚みとを個別に制御できると思われる。しかし、このようなカーボンナノチューブを連続的に生成する製造装置においては、1つの反応容器内に設けられた、1段階目の成長を行う領域と2段階目の成長を行う領域との間に、長さの成長に適した温度からアモルファス層の成長に適した温度へ遷移させる区間を必要とするが、この区間に誤って原料ガスが流入することによりカーボンナノチューブの長さが余分に伸びてしまい、正確にカーボンナノチューブの長さを制御し得ない場合があると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、カーボンナノチューブの長さ及びアモルファス層の厚みを正確に制御し得るカーボンナノチューブの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカーボンナノチューブの製造装置は、表面に触媒が担持されかつ所定方向に移動される基板を導き入れるとともに、前記基板の移動方向に沿って、前記基板表面を第1CVD温度に加熱してカーボンナノチューブを所定の長さに成長させる第1CVD温度領域と、さらに前記基板表面を前記第1CVD温度よりも高い第2CVD温度に加熱してカーボンナノチューブの表面にカーボンを付着させる第2CVD領域とが設けられた、化学気相成長法を用いてカーボンナノチューブを連続的に生成する減圧の反応容器を有するカーボンナノチューブの製造装置であって、
前記反応容器において、前記第1CVD温度領域と前記第2CVD温度領域とには、前記基板に前記原料ガスを供給する前記原料ガス供給管に接続されて、前記基板の表面を所定範囲に亘って覆うことで反応空間を制限する第1空間仕切体と第2空間仕切体とがそれぞれ配置され、
前記第1空間仕切体と前記第2空間仕切体との間に熱遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、熱遮蔽部材には、セラミックス又は炭化ケイ素が被覆された鋼が用いられることが好ましい。
また、第2CVD温度は第1CVD温度よりも50度〜200度高く設定するとよい。
【0009】
また、反応容器において、第1空間仕切体よりも基板の移動方向の後方側及び第2空間仕切体よりも前記基板の移動方向の前方側にさらに熱遮蔽部材がそれぞれ設けられることが好ましい。
【0010】
また、熱遮蔽部材は複数の板材により構成されるとともに、反応容器の壁部に、前記板材間から排出される原料ガスを外部へ排気するガス排気管が接続されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーボンナノチューブの製造装置によれば、長さの成長に適した温度に加熱された第1CVD温度領域と、アモルファス層の成長に適した温度に加熱された第2CVD温度領域との間に、熱遮蔽部材を設けることにより、第1CVD温度領域と第2CVD温度領域との間の熱移動を防ぐとともに、原料ガスの流入を防ぎ、カーボンナノチューブの長さ及びアモルファス層の厚みが正確に制御されたカーボンナノチューブを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
本発明の実施例1に係るカーボンナノチューブの製造装置について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【0014】
図2及び
図3に示すように、処理用空間部4は、基板2の移動方向に沿って、基板2の温度を所定温度まで上昇させる前処理部10と、前処理部10にて所定温度まで上昇した基板2に原料ガスG2を供給しながら化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition method:CVD法)によりカーボンナノチューブ3を形成する形成部20と、形成部20にて形成されたカーボンナノチューブ3を有する基板2を導いて基板2の温度を下げる後処理部(冷却部ともいえる。)30とを備える。処理用空間部4は、基板2の表面温度によって、
図3に仮想線にて示すように、前処理部10に対応する昇温領域X、形成部20に対応するCVD温度領域Y及び後処理部30に対応する降温領域Zに分けられる。減圧チャンバー5の内壁面には断熱材9が設けられている。
【0015】
まず、前処理部10は、繰出部6側の減圧チャンバー5内に設けられて、基板2の温度を下手側の形成部20での加熱温度(CVD温度)と同等の温度まで上昇させるための加熱装置を少なくとも1つ具備する。本実施例においては、昇温領域Xでは3段階で基板2を昇温させるため、
図3に仮想線にて示すように、上流側から下流側に向かって、第1温度領域A1、第2温度領域A2及び第3温度領域A3が設けられている。前処理部10は、第1温度領域A1に設けられた第1加熱装置11、第2温度領域A2に設けられた第2加熱装置12及び第3温度領域A3に設けられた第3加熱装置13の3つの加熱装置を具備する。第1加熱装置11、第2加熱装置12及び第3加熱装置13の加熱温度は、基板2表面が450℃〜600℃の範囲となるような温度にそれぞれ設定されている。ここで、本実施例においては、基板2表面の温度の計測は、減圧チャンバー5の基板2表面近くに熱電対などの温度計を挿入し、測定された温度から基板2表面の温度を算出することで、加熱装置による加熱温度を維持又は制御している。
【0016】
そして、前処理部10は、繰出部6から送出された所定幅の基板2の周囲を覆うとともに基板2を案内するダクト14を具備する。本実施例においては、
図2及び
図3に示すように、ダクト14は断面矩形状で中空のものが用いられており、前処理部10(昇温領域X)の前端から後端すなわち第1温度領域A1から第3温度領域A3に亘って延設されている。一般的には、ダクト14は、
図4に示すように、少なくとも基板2が挿入され得る大きさであればよい。なお、本実施例のようにロール・ツー・ロール式の製造装置1においては、基板2の厚みは例えば0.03mm〜0.100mmである。また、
図3に示すように、本実施例においては、前処理部10のダクト14の上流側の端部は、繰出部6と減圧チャンバー5とを接続する接続部材8内へ突出しており、チャンバー5にはダクト14が挿入されるための挿入口15が形成されている。この挿入口15とダクト14との間に、前処理部10内のガス等の接続部材8内への流入を防ぐシール部材として例えばO‐リング(オーリング)16が設けられている。
【0017】
前処理部10のダクト14には、繰出部6側から接続部材8を介して前処理用ガスG1が供給される。前処理用ガスG1としては、例えば、窒素(N
2)やアルゴン(Ar)などの不活性ガスと、基板2表面の触媒を微粒化する水素(H
2)などの微粒化ガスが用いられる。なお、不活性ガスと併せて微粒化ガスを供給しても構わない。
【0018】
本実施例においては、
図3及び
図4に示すように、前処理部10と形成部20との境界近傍に、前処理部10のダクト14の下流側の端部が位置している。前処理部10のダクト14の下流側の端部には、前処理部10に供給された前処理用ガスG1と形成部20に供給された原料ガスG2(正確には化学反応により発生した原料ガスG2の分解成分を含む。以下、原料ガスG2及びこの分解成分とを併せて原料ガス等G4ということがある。)とが混合した混合ガスG3を排気するための排気用開口部40が設けられている。本実施例において、排気用開口部40は、前処理部10のダクト14の上流側の開口端部である。
【0019】
また、前処理部10と形成部20との境界近傍には、原料ガスG2をより確実に前処理部10のダクト14に流入させないようにするため、排気用開口部40から排気される混合ガスG3を減圧チャンバー5の外へ流出する混合ガス排気管41と混合ガス排気管41を接続するための混合ガス排気口41aとが設けられている。本実施例においては、
図4に示すように、混合ガス排気管41及び混合ガス排気口41aは、減圧チャンバー5の基板2の下方に配置される。
【0020】
このように、前処理部10に設けられたダクト14に前処理用ガスG1を供給することによって、ダクト14内に形成部20から原料ガスG2が流入することを防ぐことができる。ゆえに、基板2表面の触媒に原料ガスG2が接触することを防ぎ、表面に担持された触媒の活性力が損なわれることなく、基板2が形成部20へ送られるので、カーボンナノチューブ3の生成率が向上する。
【0021】
前処理部10が排気用開口部40を備えることによって、原料ガスG2が前処理部10のダクト14に流入されることをより確実に防ぎ、カーボンナノチューブ3の生成率を向上させることができる。
【0022】
次に、本発明の要旨となる前処理部10の下流側に設けられた形成部20すなわちCVD温度領域Yは、
図3及び
図4に示すように、基板2の表面が結晶性の高いカーボンナノチューブの成長(いわゆる長さ方向での成長)に適した第1CVD温度となるように加熱する第1CVD温度領域(第4温度領域)A4と、基板2の表面がカーボンナノチューブの外表面に形成される非晶質のカーボンの成長(いわゆるアモルファス層の成長)に適した第2CVD温度となるように加熱する第2CVD温度領域(第5温度領域)A5とを備える。具体的には、第1CVD温度は600℃〜700℃の範囲であることが好ましく、第2CVD温度は第1CVD温度よりも50℃〜200℃高い温度である650℃〜900℃の範囲であることが好ましい。
【0023】
上流側の第1CVD温度領域A4には、基板2の下方に設けられた第4加熱装置25が、下流側の第2CVD温度領域A5には、基板2の下方に設けられた第5加熱装置26がそれぞれ配置されている。第4加熱装置25及び第5加熱装置26は、主として基板2を、また減圧チャンバー5内の第1CVD温度領域A4と第2CVD温度領域A5とを併せて加熱する。
【0024】
形成部20すなわち第1CVD温度領域A4及び第2CVD温度領域A5には、
図3及び
図4に示すように、減圧チャンバー5内にメタン(CH
4)やアセチレン(C
2H
2)などの炭化水素系の原料ガスG2を供給するための原料ガス供給管21と、原料ガス供給管21を接続するための原料ガス供給口21aと、この原料ガス供給管21に接続されて、基板2の表面を所定範囲に亘って覆うことで、供給された原料ガスG2を基板2上で化学反応させカーボンナノチューブ3を生成する反応空間を制限する第1空間仕切体22A及び第2空間仕切体22Bがそれぞれ備えられる。第1空間仕切体22Aにおいては、主としてカーボンナノチューブの長さを制御し、第2空間仕切体22Bにおいては、主としてアモルファス層の厚み(より具体的にはカーボンナノチューブの太さ)を制御する。
【0025】
空間仕切体22A,22Bは、
図3及び
図4に示すように、中空の直方体形状の反応本体部23と、その下端部に設けられて基板2の移動方向に沿って延びて基板2の周囲を覆い基板2を案内する基板案内用突出部24とから成る。具体的には、
図3及び
図4に示すように、基板案内用突出部24の断面はダクト14と同一形状にされており、言い換えれば、反応本体部23にダクト14が接続された形状をしている。以下、この基板案内用突出部をダクト部24という。反応本体部23は、熱伝導性及び熱膨張性の小さい石英ガラス製の5枚の板を各接合部に設けられた段部を係合させて溶接することにより形成されている。また、反応本体部23は原料ガス供給管21を接続するための供給管接続口21bを有する。すなわち、原料ガス供給管21は減圧チャンバー5の原料ガス供給口21aに挿通されて供給管接続口21bまで設けられる。なお、本実施例においては、
図4に示すように、前処理部10のダクト14の開口端部の高さH1と、形成部20のダクト部24の前処理部10側(上流側)の開口端部の高さH2とは、同一(H1=H2)にされている。
【0026】
このとき、第1CVD温度領域A4と第2CVD温度領域A5との間で、熱伝導、熱伝達及び輻射などの熱移動が起こると、カーボンナノチューブの長さと太さとを正確に制御することが出来なくなり、生成効率が低下する。そのため、形成部20は、
図4に示すように、第1空間仕切体22Aと第2空間仕切体22Bとの間に、熱遮蔽部材27が設けられている。ここで、製造装置1の構成の簡略化のため、ダクト部24は第1空間仕切体22A及び第2空間仕切体22Bとの間においては設けられていない。
【0027】
熱遮蔽部材27には、第1CVD温度及び第2CVD温度のような高温に耐え得る材料が用いられ、例えばセラミックスや炭化ケイ素が被膜された鋼などが挙げられる。また、熱遮蔽部材27の形状は、例えばブロック状、板状、フィルム状などが挙げられるが、具体的には、
図4に示すように板状であることが好ましい。以下、この熱遮蔽部材を熱遮蔽板27という。また、熱遮蔽板27には、
図5に示すように基板2を挿通し得るスリット27aが形成されている。このスリット27aの幅や高さはダクト部24の高さや幅と同一にされるのが好ましい。
【0028】
熱遮蔽板27は、側方端部及び上方端部をそれぞれ断熱材9に支持されて減圧チャンバー5内に固定されている。具体的には、
図4及び
図5に示すように、断熱材9に熱遮蔽板27の数と同じ数だけ溝部を設け、溝部に熱遮蔽板27が差込まれて固定される。ただし、熱遮蔽板27の下方端部は開放されている。したがって、熱遮蔽板27間にはガスが通過し得る隙間が生じている。
【0029】
熱遮蔽板27の厚さや用いる枚数については、第1CVD温度及び第2CVD温度の値や、第1空間仕切体22Aと第2空間仕切体22Bとの間の間隔の大きさによって適宜決めればよい。特に減圧下では、輻射による熱移動が大きいため、第2CVD温度が第1CVD温度に影響しないようにするのに十分な枚数の熱遮蔽板27を設ける必要がある。そのため、例えば、所定区間(例えば20mmの区間)に所定厚み(例えば50μmの厚さ)の熱遮蔽板27を所定間隔(1mmの間隔)で複数枚並べるような構成にすればよい。具体的には、実施例1においては、1枚につき50℃の輻射による熱移動の抑制が可能である。
【0030】
また、原料ガス供給口21aは反応本体部23の基板2の上方側に設けられるとともに、第1空間仕切体22A及び第2空間仕切体22B内に供給された原料ガス等G4を減圧チャンバー5の外部に排気するガス排気管28を接続するためのガス排気口28aは減圧チャンバー5の基板2の下方側に設けられる。具体的には、原料ガス等G4を排出するガス排気口28aは、各空間仕切体22A,22Bに対応して配置されることが好ましいが、本実施例では、製造装置1の構成の簡略化のために、
図4に示すように、第1空間仕切体22Aに対して配置されるガス排気口28aについては混合ガス排気口41aが兼用され、ガス排気管28aとして、混合ガス排気口41aに接続された混合ガス排気管41が兼用される。また、第2空間仕切体22Bに対しては、減圧チャンバー5において、形成部20と後処理部30との境界(CVD温度領域Yと降温領域Zとの境界)であるダクト部24の下流側端部の真下の位置にガス排気口28aが設けられ、ガス排気管28が接続される。さらに、ガス排気管28は、第1空間仕切体22Aと第2空間仕切体22Bとの間に対応する位置、すなわち熱遮蔽板27の真下にも設けられることがより好ましい。
【0031】
また、形成部20には、
図4に示すように、各空間仕切体22A,22Bにおけるダクト部24の内面の基板2表面の上側位置、すなわちダクト部24の天井の内面に、反応本体部23から流入する原料ガスG2を基板2表面側へ向けるガス偏向部29が設けられている。具体的にはガス偏向部29は、
図4に示すように、基板2の移動方向に交差する方向(具体的には基板2の幅方向)に延びる複数の突条部材29であり、これらが基板2の移動方向において所定間隔でもって配置されている。
【0032】
ここまで説明したように、形成部20において、第1CVD温度領域A4と第2CVD温度領域A5との間に熱遮蔽板27が設けられることによって、第1CVD温度領域A4と第2CVD温度領域A5との間の熱移動を防止することができる。
【0033】
また、形成部20において、原料ガス供給口21aが基板2の上方側に設けられるとともに、ガス排気口28aが基板2の下方側に設けられることによって、原料ガス等G4は、基板2の下方側から排気されるため、第1空間仕切体22A及び第2空間仕切体22B内における原料ガスG2の流れが基板2の上方側から下方側へ向かう方向になる。したがって、原料ガスG2が基板2表面の触媒に接触しやすくなり、カーボンナノチューブ3の生成率が向上する。特に、熱遮蔽板27の真下にガス排気管28が設けられることによって、例えば第1空間仕切体22Aと第2空間仕切体22Bとに供給される原料ガスG2の濃度が異なる場合、それぞれの空間仕切体22A,22Bに供給された原料ガスG2が互いに他の空間仕切体へ混入することを抑制することができ、カーボンナノチューブ3の長さや太さをより精密に制御することができる。
【0034】
ダクト部24の天井の内面にガス偏向部29が設けられていることによって、ダクト部24内に流入した原料ガスG2をガス偏向部(突条部材)29に衝突させて、基板2側に向かう原料ガスG2の流れを作ることができ、基板2表面の触媒に原料ガスG2をより確実に接触させることができるため、カーボンナノチューブ3の生成率が向上する。
【0035】
最後に、形成部20の下流側に設けられた冷却部30すなわち降温領域Zには、
図3に示すように、基板2及び生成されたカーボンナノチューブ3(以下、基板2等ということがある。)を形成部20での第2CVD温度から常温へと低下させるための加熱装置を少なくとも1つ具備する。本実施例においては、降温領域Zでは、3段階で基板2等を降温させるため、
図3に仮想線にて示すように、上流側から下流側に向かって第6温度領域A6、第7温度領域A7及び第8温度領域A8を有する。後処理部30は、第6温度領域A6に設けられた第6加熱装置31、第7温度領域A7に設けられた第7加熱装置32及び第8温度領域A8に設けられた第8加熱装置33の3つの加熱装置を具備する。第6加熱装置31、第7加熱装置32及び第8加熱装置33の加熱温度は、形成部20での加熱温度から冷却するにあたって、基板2の熱変形を防ぐため、基板2表面の温度が500℃〜600℃を経た後、常温まで徐々に低下するようそれぞれ設定されている。
【0036】
また、本実施例においては、加熱装置としては、前処理部10、形成部20及び後処理部30のいずれにも、発熱体(例えばフィラメント)を石英製の円筒に入れて炭化ケイ素を充填したものを複数本、基板2の移動方向に並べて配置し、それらを電源装置に接続したいわゆる石英管ヒーターが採用されている。
【0037】
さらに、減圧チャンバー5に外側から冷風を当てたり、減圧チャンバー5の外周に冷却水管を設けたりすることにより、減圧チャンバー5の温度を一定に保つようにしてもよい。このような冷却によって、例えば、O‐リング16の温度が一定に維持されるため、シール性能が維持される。その結果、減圧チャンバー5内の圧力を一定に維持することができる。
【0038】
以下、本発明の実施例1に係るカーボンナノチューブ3の製造装置1を用いた製造方法について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、基板2は繰出部6から減圧チャンバー5内の処理用空間部4に導き入れられて巻取部7へと移動される。
図3に示すように、処理用空間部4の前処理部10において、予め基板2表面に触媒が塗布された基板2は、前処理用ガスG1が供給されたダクト14に導き入れられて第1加熱装置11〜第3加熱装置13により加熱されることによって、昇温領域Xにて昇温されるとともに、基板2表面の触媒が微粒化される。次に、基板2は前処理部10から形成部20へ導き入れられて、第1空間仕切体22Aの第1反応空間P1にて第4加熱装置25により第1CVD温度に、また第2空間仕切体22Bの第2反応空間P2にて第5加熱装置26により第2CVD温度にそれぞれ加熱されながら原料ガスG2を基板2上で反応させる。このことにより、第1反応空間P1では基板2上でカーボンナノチューブ3の長さを成長させ、第2反応空間P2では基板2上でカーボンナノチューブ3の太さを成長させる。そして、基板2は形成部20から後処理部30へ導き入れられて第6加熱装置31〜第8加熱装置33により加熱されることによって、基板2及び基板2上に生成されたカーボンナノチューブ3が降温される。このとき、形成部20において、形成部20から排出された原料ガス等G4は、基板2の下方側、特に熱遮蔽板27の真下に設けられたガス排気管28を介して減圧チャンバー5の外へ排気されている。
【0039】
このように、本発明のカーボンナノチューブの製造装置1によれば、カーボンナノチューブ3の長さの成長に適した温度に加熱された第1CVD温度領域A4と、カーボンナノチューブ3のアモルファス層の成長に適した温度に加熱された第2CVD温度領域A5との間に、熱遮蔽板27を設けることにより、第1CVD温度領域A4と第2CVD温度領域A5との間の熱移動を防ぐとともに、互いの温度領域への原料ガスG2の混入を防ぎ、カーボンナノチューブの長さ及びアモルファス層の厚みが精密に制御されたカーボンナノチューブを製造することができる。
[実施例2]
実施例2について
図6を用いて説明する。実施例1と同一の構成には同一の名称及び符号を付し、説明を省略する。実施例1においては、形成部20の第1空間仕切体22Aと第2空間仕切体22Bとの間に熱遮蔽板27を設けたが、実施例2においては、さらに第1空間仕切体22Aの上流側、より具体的には前処理部10と形成部20との境界と、第2空間仕切体22Bよりも下流側、より具体的には形成部20と後処理部30との境界とに熱遮蔽板27をそれぞれ設けた。
【0040】
また、
図6に示すように、前処理部10と形成部20との境界に設けられた熱遮蔽板27付近にダクト14の排気用開口部40を設けるとともに、この熱遮蔽板27の真下に、混合ガス排気口41a及び混合ガス排気管41を設けた。そして、形成部20と後処理部30との境界に設けられた熱遮蔽板27の真下に、ガス排気口28a及びガス供給管28を設けた。なお、製造装置1の構成の簡略化のため、各空間仕切体22A,22Bにはそれぞれダクト部24が設けられていない。
【0041】
第1CVD温度領域A4と第2CVD温度領域A5との間に加えて、前処理部10と形成部20との境界と、形成部20と後処理部30との境界とにおいても、熱遮蔽板27を設けたことによって、前処理部10で加熱された基板2と第1CVD温度に加熱された基板2との間、及び第2CVD温度に加熱された基板2と後処理部30で降温された基板2との間においても、それぞれ熱移動が抑制される。
【0042】
また、ダクト14に排気用開口部40を設けるとともに、前処理部10と形成部20との境界に設けられた熱遮蔽板27の真下に、混合ガス排気口41a及び混合ガス排気管41を設けることにより、混合ガスG3を熱遮蔽板27間に通してより確実に減圧チャンバー5の外へ排気させることができる。
【0043】
そして、形成部20と後処理部30との境界に設けられた熱遮蔽板27の真下に、ガス排気口28a及びガス供給管28を設けることにより、原料ガス等G4を熱遮蔽板27間に通してより確実に減圧チャンバー5の外へ排気させることができる。