(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、疎水性基に実質的に位置する最高被占分子軌道(HOMO)電子密度を有するメタクリラート系キャリア樹脂であって、エステル機能を含むモノマーのカルボニル基に位置するHOMO電子密度が効果的に低下させられ、それにより、大きい電荷および改善されたRH感受性の両方を得るメタクリラート系キャリア樹脂に関連する。
【0008】
1つ以上のモノマーユニットを含むキャリア被覆樹脂が開示され、ただし、この場合、モノマーユニットの少なくとも1つがビニル基を含み、ビニル基の1つの炭素をメチル基により置換することができ、かつ、ビニル基のその同じ炭素原子をエステル基により置換することができ、エステルは、少なくとも1つの芳香族環を含む電子
非局在化基を含み、芳香族環は、多数の環、縮合環などを含むことができ、芳香族環は複素環が可能であり、かつ、芳香族環は置換されることが可能であり、モノマーは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5またはそれ以上の炭素:酸素(C/O)比を有する。そのような芳香族電子
非局在化基の例には、フェニル基、ベンジル基、チオピラニル基、ピリジニル基、ナフチル基およびピラニル基などが含まれる。
【0009】
「基準キャリアに対して負に帯電し得る陰性添加剤」によって、添加剤が、添加剤の存在下または非存在下でトナーの摩擦電気電荷を求めることによって測定されるトナー表面に対して何度も負に帯電することが意味される。同様に、「キャリアに対して正に帯電し得る陽性添加剤」によって、添加剤が、添加剤の存在下および非存在下でトナーの摩擦電気電荷を求めることによって測定されるトナー表面に対して何度も正に帯電することが意味される。
【0010】
キャリアに対して負に帯電し得る陰性添加剤には、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、または、どのような粒子であれ、例えば、ポリマー微小球体を含めて、より小さいサイズの粒子(例えば、どのような技術であれ、好適な技術によって求められるような体積平均粒子直径において約7nm〜約100nm)が含まれ、これらの粒子は場合により、粒子を、粒子との摩擦電気的接触のときにキャリアに対して負に帯電可能にする組成物により処理される。そのような処理用物質は、例えば、フルオロシラン、他のハロゲン含有有機シラン、シラザンおよびシロキサンなどであってよい。
【0011】
「RH感受性」によって、トナーが、より高い湿度レベルにさらされたときには特に、十分な電荷を保持すること、または含むことが意味される。RH比は一般に、C域における電荷(μC/g)に対するA域における電荷(μC/g)の比率であり、ただし、この場合、A域は一般に、28℃および85%RHを含み、C域は一般に、12℃および15%RHを含む。現像剤についてのQ/M帯電RH比を、それ以外の点では類似する条件のもとで測定されるA域におけるトナーQ/Mの、C域におけるトナーQ/Mに対する比率として定量化することができる。RH比はまた、A域におけるトナー電荷Q/Dの、C域におけるトナーQ/Dに対する比率として測定することができる。したがって、そのような方法で定義されるRH比は一般に、0(A域における電荷がゼロである場合)〜1の値(両方の帯域における電荷が同じである場合)の値を取る。いくつかの場合には、RH比の値が1よりも大きくなるかもしれず、このことは、A域における電荷がC域における電荷よりも大きいことを示しており、だが、これは普通でない。RH比が、いくつかの状況では負となる可能性があるかもしれず、このことは、電荷の符号もまた、環境域における変化とともに変化することを示しており、これもまた珍しい。他の環境域が、現像剤のRH比を定義するために、A域およびC域の代わりに使用されてもよい。
【0012】
芳香族の電子
非局在化基を含むエステル基を含む少なくとも1つのビニルモノマーから構成されるポリマー被覆樹脂を含むキャリア組成物であって、モノマーが、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5またはそれ以上の炭素:酸素(C/O)比を有するキャリア組成物が開示される。
【0013】
キャリア樹脂はアクリラートモノマーまたはメタクリラートモノマーである場合がある。キャリア樹脂は約80℃〜140℃の間のTgを有することができ、かつ、トナー添加剤をさらに含む場合がある。様々な実施形態において、トナー添加剤はシリカを含む。様々な実施形態において、添加剤は導電性物質であり、例えば、着色剤、例えば、黒色着色剤などである。
【0014】
記載されるそのような樹脂は、トナー添加剤からモノマーへの電子の逆方向電荷移動のためのエネルギーギャップよりも低い、モノマーからトナー添加剤への電子の順方向電荷移動のためのエネルギーギャップを有する。
【0015】
上記モノマーについての電子の順方向電荷移動のためのギャップは、上記トナー添加剤からの電子の逆方向電荷移動のためのギャップが順方向電荷のギャップよりも大きいことを含めて、約5eV未満、約4.9eV未満、約4.8eV未満、約4.7eV未満、約4.6eV未満またはそれ以下である。
【0016】
樹脂は、疎水性基に実質的に位置する最高被占分子軌道(HOMO)電子密度を有しており、エステル含有モノマーのカルボニル機能に位置するHOMO電子密度が効果的に低下させられる。
【0017】
エステル含有モノマーは芳香族の電子
非局在化基を含み、この場合、このモノマーは、単環化合物、多重環化合物、多環式化合物、縮合環化合物および大環状化合物などを含む。1つの環または少なくとも1つの環が複素環であることが可能であり、ただし、この場合、その炭素原子の1つまたは複数が、例えば、N、S、Si、B、PおよびOなどによって置換される。電子
非局在化基には、フェニル基、ベンジル基、チオピラニル基、ピリジニル基およびピラニル基などが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
芳香族環は、ヘテロ原子基X(ただし、Xは、ハロゲン(例えば、I、Br、ClまたはF)、C
1〜C
10に由来するアルコキシ(例えば、メトキなど)、ヒドロキシル、チオールおよびアミンなどである場合がある)によって環炭素原子の1つまたは複数において置換され得る。
【0019】
被覆用樹脂はさらに、第2のアミノアクリラートモノマーを含む場合がある。そのような第2のアミノアクリラートモノマーには、ジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリラートおよびジエチルアミノプロピルメタクリラートが含まれるが、これらに限定されない。第二級アミノアクリラートモノマーは、樹脂の約0.5重量%〜約1重量%、約1重量%〜約1.5重量%、約1.5重量%〜約2重量%で存在してよい。
【0020】
キャリア樹脂は、約30重量%:約70重量%〜約70重量%:約30重量%の割合で、約40重量%:約60重量%〜約60重量%:約40重量%までの割合で混合されてよい。被覆は、例えば、キャリアの約0.1重量%〜約5重量%の被覆重量を、キャリアの約0.5重量%〜約2重量%の被覆重量を有していてよい。
【0021】
キャリア樹脂ポリマーは場合により、得られるコポリマーが電荷移動およびRH感受性の好適な特性を保持する限り、どのようなコモノマーであれ、所望されるコモノマーと共重合される場合がある。好適なコモノマーには、モノアルキルアミンまたはジアルキルアミン、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジエチルアミノエチルメタクリラート、ジイソプロピルアミノエチルメタクリラートおよびt−ブチルアミノエチルメタクリラートなどが含まれ得る。別の好適なコモノマーがシクロヘキシルメタクリラートである。
【0022】
少なくとも1つのエステル基を含む少なくとも1つモノマーを含む樹脂を含み、エステルが電子
非局在化芳香族基を含む被覆されたキャリアと、ラテックス樹脂、必要に応じて使用される着色剤、必要に応じて使用されるワックスおよび必要に応じて使用されるポリマーシェルを含む、乳化凝集トナーである場合があるトナーとを含む現像剤が開示される。
【0023】
ラテックス樹脂が、第1および第2のモノマー組成物から構成されてよい。好適なモノマーまたはモノマーの好適な混合物はどれもが、第1のモノマー組成物および第2のモノマー組成物を調製するために選択されてよい。第1および/または第2のモノマー組成物のための例示的なモノマーには、スチレン、アルキルアクリラート、例えば、メチルアクリラート、エチルアクリラート、ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート、ドデシルアクリラート、n−オクチルアクリラート、2−クロロエチルアクリラート、β−カルボキシエチルアクリラート(β−CEA)、フェニルアクリラート、メチルα−クロロアクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラートおよびブチルメタクリラートなど、ブタジエン、イソプレン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルおよびビニルエチルエーテルなど、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなど、ビニルケトン、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンおよびメチルイソプロペニルケトンなど、ハロゲン化ビニリデン、例えば、塩化ビニリデン、ポリエステルおよびビニリデンクロロフルオリドなど、N−ビニルインドールおよびN−ビニルピロリデンなど、メタクリラート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウム塩化物、ビニルナフタレン、p−クロロスチレン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびイソブチレンなど、ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
第1のモノマー組成物と第2のモノマー組成物との間における重量比は一般に、約0.1:99.9〜約50:50の範囲であってよい。
【0025】
様々な実施形態において、好適な樹脂がポリエステルである。好適なポリエステル樹脂には、例えば、スルホン化型、非スルホン化型、結晶性、非晶質性およびそれらの組合せなどであるポリエステル樹脂が含まれる。ポリエステル樹脂は、線状、分岐型、架橋型およびそれらの組合せなどであってよい。
【0026】
ポリエステル樹脂は、合成的に、例えば、カルボン酸基を含む試薬と、アルコール基を含む別の試薬とを伴うエステル化反応で得られてよい。
【0027】
好適な界面活性剤はどれもが、本開示による、ラテックス、顔料およびワックスの分散物を調製するために使用される場合がある。乳化系に依存して、所望される非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤など)はどれもが意図されてよい。界面活性剤が、どのような量であれ、一般にはモノマー全体の少なくとも約0.01重量%であるが、所望される量または効果的な量で用いられてよく、だが、この量はそのような範囲から外れてもよい。
【0028】
好適な開始剤または開始剤の好適な混合物はどれもが、本開示によるラテックスプロセスおよびトナープロセスにおいて選択されてよい。典型的な実施形態において、開始剤が、様々に知られているフリーラジカル重合開始剤から選択される。
【0029】
好適なフリーラジカル開始剤の例には、過酸化物、アゾ化合物および同様な化合物、ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
より典型的なフリーラジカル開始剤には、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよびジイソプロピルペルオキシカルボナートなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
重合されるモノマーの総重量に基づいて、開始剤は一般に、約0.1%〜約5%の量で存在してよく、だが、開始剤は、より多い量またはより少ない量で存在してもよい。
【0032】
連鎖移動剤が場合により、ラテックスの重合度を制御するために、かつ、それにより、本開示によるラテックスプロセスおよび/またはトナープロセスの生成物ラテックスの分子量および分子量分布を制御するために使用されてもよい。
【0033】
重合されるモノマーの総重量にもとづいて、連鎖移動剤は一般に、約0.1%〜約7%の量で存在してもよく、だが、連鎖移動剤は、より多い量またはより少ない量で存在してもよい。
【0034】
分岐剤が場合により、目標ラテックスの分岐構造を制御するために第1/第2のモノマー組成物に含まれてもよい。
【0035】
重合されるモノマーの総重量にもとづいて、分岐剤は一般に、約0%〜約2%の量で存在してもよく、だが、分岐剤は、より多い量またはより少ない量で存在してもよい。
【0036】
本開示のラテックスプロセスおよびトナープロセスにおいて、乳化が、どのようなプロセスであれ、好適なプロセスによって、例えば、高い温度での混合などによって行われる場合がある。例えば、乳化混合物が、約200rpm〜約400rpmで、かつ、約40℃〜約80℃の温度で約1分間〜約20分間にわたって均質化される場合がある。
【0037】
どのようなタイプのリアクターも、制限なく、好適に使用されてもよい。リアクターは、組成物をリアクター内で撹拌するための手段を含まなければならない。
【0038】
モノマー添加が完了した後、ラテックスは、冷却前に条件を一定の期間にわたって、例えば、約10分間〜約300分間にわたって維持することによって安定化させられてもよい。場合により、上記プロセスによって形成されるラテックスは、この技術分野で知られている標準的な方法によって、例えば、凝集、溶解および沈殿化、ろ過、洗浄または乾燥などによって単離されてもよい。
【0039】
本開示のラテックスは、トナー、インクおよび現像剤を公知の方法によって形成するための乳化/凝集/合体プロセスのために選択されてもよい。
【0040】
様々に知られている好適な着色剤が、例えば、染料、顔料、染料の混合物、顔料の混合物、染料および顔料の混合物などがトナーに含まれてもよい。着色剤は、例えば、トナーの0重量%〜約35重量%の量でトナーに含まれてよく、だが、そのような範囲から外れる量が利用されてよい。
【0041】
本開示のトナーはまた、ワックスを含有し、ただし、この場合、ワックスは、ただ1つのタイプのワックス、または、2つ以上の異なるワックスの混合物のどちらも可能である。
【0042】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1重量%〜約25重量%の量で存在してもよい。ワックスは、約30℃未満の融点、約35℃未満の融点、約40℃未満の融点を有してもよい。
【0043】
選択され得るワックスには、例えば、約500〜約20,000の重量平均分子量(Mw)を有するワックスが含まれる。
【0044】
トナー粒子製造に関連する実施形態が乳化凝集(EA)プロセスに関して下記に記載されるが、化学的プロセス(例えば、懸濁プロセスおよびカプセル化プロセスなど)を含めて、トナー粒子を調製する好適な方法はどれもが使用されてもよい。
【0045】
上記混合物を調製した後で、凝集剤が混合物に添加されてもよい。好適な凝集剤には、例えば、二価カチオン物質または多価カチオン物質の水溶液が含まれる。凝集剤は、樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度で混合物に添加されてもよい。
【0046】
凝集剤は、例えば、約0.1百分率部(pph)〜約1pphの量で、トナーを形成するために利用される混合物に添加されてもよい。
【0047】
粒子は、所定の所望される粒子サイズが得られるまで凝集させられてもよい。サンプルが成長プロセスの期間中に採取され、平均粒子サイズについて、例えば、COULTER COUNTERを用いて分析されてもよい。粒子サイズは、約3μm〜約8μm、約4μm〜約7μmであってよい。
【0048】
シェルが、形成された凝集トナー粒子に施されてもよい。コア樹脂のために好適であるとして上記で記載される樹脂はどれもが、シェル樹脂として利用されてもよい。シェル樹脂は、どのような方法であれ、当業者の範囲内にある方法によって凝集粒子に施されてもよい。
【0049】
場合により使用されるシェル成分はトナー粒子の約10重量%〜約30重量%であってよい。
【0050】
トナー粒子の所望される最終的なサイズが達成されると、混合物のpHが、約5〜約10の値に塩基または緩衝剤により調製されてもよい。pHの調節はトナー成長を止める(すなわち、停止させる)ことになる。トナー成長を停止させるために利用される塩基には、好適な塩基のどれもが含まれてもよい(例えば、アルカリ金属の水酸化物など)。キレーターまたは緩衝剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが、pHを上記の所望される値に調節することを助けるために添加されてもよい。
【0051】
所望される粒子サイズへの凝集を、必要に応じて使用されるシェルの形成とともに行った後で、粒子はその後、所望される最終的形状に合体させられてもよく、この場合、合体が、例えば、混合物を、可塑化を防止するために、存在するどの結晶性樹脂の融点よりも低いかもしれない、約55℃〜約100℃の温度に加熱することによって達成される。
【0052】
合体が、約0.1時間〜約9時間の期間にわたって、約0.5時間〜約4時間の期間にわたって進行し、達成されてもよい。
【0053】
合体後、混合物は、室温(RT)に、例えば、約20℃〜約25℃などに冷却されてもよい。
【0054】
様々な実施形態において、トナー粒子はまた、必要に応じて使用される他の添加剤を含んでもよい。例えば、トナーは、どのような電荷付加剤であれ、知られている電荷付加剤をトナーの約0.1重量%〜約10重量%の量で含んでもよい。そのような電荷付加剤の例には、アルキルピリジニウム塩化物、重硫酸塩、および、アルミニウム錯体のような負電荷増強添加剤などが含まれる。
【0055】
表面添加剤を洗浄または乾燥の後で本開示のトナー組成物に添加することができる。例には、例えば、金属塩、脂肪酸の金属塩、コロイド状シリカ、金属酸化物、ストロンチウムのチタン酸塩、および、それらの混合物などが含まれる。表面添加剤は、トナーの約0.1重量%〜約10重量%の量で、約0.5重量%〜約7重量%の量で存在してよい。
【0056】
トナー粒子の特徴が、いずれかの好適な技術および装置によって求められてもよい。体積平均粒子直径D
50v、GSDvおよびGSDnが、製造者の説明書に従って操作される測定装置例えば、Beckman Coulter MULTISIZER 3などによって測定される場合がある。
【0057】
キャリア粒子は、ポリマーが機械的固着および/または静電気引力によってキャリアコアに接着するまで、キャリアコアを、被覆されたキャリア粒子の重量に基づいて約0.05重量%〜約10重量%の量で、約0.01重量%〜約5重量%の量で目的とするポリマーと混合することによって調製されてもよい。様々な実施形態において、そのようなキャリア樹脂モノマーのTgが、約80℃〜約100℃、約100℃〜約140℃である。
【0058】
様々な効果的かつ好適な手段を、ポリマーをキャリアコア粒子の表面に施すために使用することができ、例えば、カスケードロール混合、タンブリング、ミリング、振とう、静電的粉末クラウド噴霧、流動床、静電的ディスク加工、静電的カーテンおよびそれらの組合せなどを使用することができる。キャリアコア粒子およびポリマーの混合物がその後、キルンまたは押出し機を含む様々な効果的な手段を使用して、ポリマーが融解し、キャリアコア粒子に融合することを可能にするために加熱されてもよい。被覆されたキャリア粒子はその後冷却され、その後で、所望される粒子サイズに分級されてもよい。
【0059】
キャリア粒子は、様々な好適な組合せでトナー粒子と混合することができる。濃度がトナー組成物の約1重量%〜約20重量%であってよい。しかしながら、トナーおよびキャリアの種々の割合が、所望される特徴を有する現像剤組成物を達成するために使用されてもよい。
【0060】
このようにして形成されたトナー粒子は現像剤組成物に配合される。現像剤におけるトナー濃度は、現像剤の総重量の約1重量%〜約25重量%、現像剤の総重量の約2重量%〜約15重量%であってよい。
【0061】
現像剤は電子写真プロセスのために利用することができる。知られているタイプの現像システムはどれもが、現像デバイスにおいて使用されてもよく、そのようなシステムには、例えば、磁気ブラシ現像、ジャンピング型一成分現像およびハイブリッド型スカベンジレス現像(HSD)などが含まれる。そのような現像システムおよび類似する現像システムは当業者の範囲内である。
【0062】
一実施形態において、キャリア樹脂を設計する方法が開示され、この場合、この方法は、試験ポリマーを特定し、ポリマーの表面をモデル化すること、試験トナー添加剤を特定し、トナー添加剤の表面をモデル化すること、ポリマーおよびトナー添加剤の表面電子の性質を、局所的関数および密度勾配依存的関数のための構造計算値を求める密度汎関数法を使用して求めること、トナー添加剤における吸着した試験ポリマー複合体の初期構造、最適化構造および電子的性質を求めること、トナー添加剤における吸着した試験ポリマー複合体の幾何学的最適化収束を決定すること(ただし、この場合、最適化が、エネルギー、密度勾配および変位がそれぞれ、約2×10
−5Ha未満、約4×10
−3Ha/Å未満および約5×10
−3Å未満であるときに達成される)、ポリマーとトナー添加剤との間における電荷移動の起こりそうな方向を、ポリマー−トナー添加剤複合体についてのHOMOおよびLUMOを計算することによって決定すること、HOMOおよびLUMOにおける表面電子密度のためのFukui関数を、電荷移動におけるドナー−アクセプター複合体の活性部位を記述するために決定すること、および、順方向電子移動および逆方向電子移動の両方のための最も低いエネルギーギャップを求めること(ただし、この場合、逆方向のギャップが、トナー添加剤における吸着したポリマー複合体についての順方向のギャップよりも大きいときには、負のギャップ差により、大きい負のトナー電荷が、ポリマー−トナー添加剤複合体を含むトナー樹脂を帯電させることにおいて予測される)を含む。
【0063】
部および百分率は、別途示される場合を除き、重量比である。
【0064】
上述されたように、様々な問題が、キャリア被覆樹脂の設計については、変化する環境条件に対する電荷の良好なRH感受性とともに大きい電荷を提供することにおいて存在している。例えば、ポリ(シクロヘキシルメタクリラート)(PCHMA)などのポリマー樹脂が、改善されたRH感受性を伴うことがなければ、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)被覆樹脂を含むそのような樹脂と類似する電荷を提供するためにキャリア被覆樹脂として使用され得るであろう。
【0065】
一般に、キャリア樹脂のモノマーにおいて使用されるモノマーによって示される炭素対酸素(C/O)比がより大きいことは、良好な電荷を依然として提供しながら、RH感受性を改善するようである。例えば、シクロヘキシルメタクリラート(CHMA)の量をCHMAおよびPMMAのコポリマーにおいて増大させるとき、DMAEMAがコポリマーにおいて1%で一定に保たれる場合、そのような挙動が明らかにされる。したがって、樹脂の炭素含有量を、例えば、PMMAにおけるメチル基をCHMAにおけるシクロヘキシル基で置き換えることによって増大させることが望ましかった。
【0066】
したがって、上記データは、PMMA、PCHMAおよびDMAEMAモノマー含有コポリマーなどの樹脂はシリカによる受け入れられ得る電荷レベルを少なくとも乾燥状態のもとでは与えることができることを示す。高RH状態のもとでは、より大きいC/O比が所望される。
【0067】
モデリング研究に基づいて、シリカと、ポリマー樹脂被覆を伴うキャリアとを有するトナーを帯電させることにおける優れた大きい負のトナー電荷のためには、下記の属性が望ましい。
1)キャリア樹脂のHOMO−nから、トナーのシリカ添加剤におけるLUMO+mへの順方向電荷移動のためのギャップは低くなければならない。
2)逆方向のギャップは順方向のギャップよりも大きくなければならない(負のギャップ差。(2)から(1)を引いた場合)。
3)樹脂は、バルク水吸着を制限する、C/O比が大きいモノマーから構成される。
4)樹脂は、疎水性基に実質的に位置するHOMO電子密度を有する。
【0068】
最初の2つの条件により、必要不可欠な電荷移動および電荷レベルがもたらされ、一方、最後の2つの条件により、水吸着に対する電荷のRH感受性が改善される。大きい負電荷をトナー表面のシリカに与えることになるキャリア被覆樹脂材料についての機能的明確化を提供するために、また、改善されたRH感受性をさらにもたらすことになる化学的機能性の説明を提供するために、コンピューターモデリングを、とりわけ、大きい電荷および良好なRH感受性の両方を有する新しい材料を設計するために(また、大きい電荷および良好なRH感受性の両方を有する新しい材料の性質を予測するために)重要である性質を理解し、かつ、明確にするために使用した。
【0069】
メチル、シクロヘキシル、ジメチルアミノ、フェニル、ベンジル、チオピラニル、ピリジニルおよびピラニルの置換基を有するメタクリラートを調べた。4−異性体を、例えば、下記の式(I)で示されるような一般式のヘテロ原子置換モノマー(その異性体を含む)の場合に使用した。
【化2】
式中、Arには、
【化3】
が含まれるが、これらに限定されない。
この場合、ヘテロ原子が芳香族環において様々な位置で代用された(X=Fl、Cl、Br、I、メトキシ、ヒドロキシルまたはチオールなど、2位、3位または4位において)。
【化4】
【0070】
すべての置換メタクリラートについて、三量体を、調べられるポリマーを表すために使用した。ポリマーにおけるC(炭素)リッチ官能基およびO(酸素)リッチ官能基(アルキル/芳香族およびアシル)の可能な影響を区別するために、すべてのアシル基を、同じ側に配位するように設計した。
【0071】
シリカモデルの表面ヒドロキシル基を模倣するために、1層の円筒様シリカモデルを、式Si
12O
32H
16を有する表面処理シリカを設計するために使用した。このモデルにおいて、すべてのシリカが正四面体配置であり、酸素によってつながっていた。円筒の端部が、ジェミナルシラノール[Si(OH)
2]を表すために2つのヒドロキシル基によって終わっていた。このジェミナルシラノールは、未処理シリカの表面ヒドロキシル基の2つのタイプのうちの1つとして非晶質シリカの表面に実験的に特定されるβ−クリストバライトの表面において典型的に存在する(例えば、Leonardelli et.al.、J Am Chem Soc(1992)、114:6412、Vigne−Maeder & Sautet、J Phys Chem(1997)、101(41):8197を参照のこと。これらは参照することによって全体が本明細書中に組み込まれる)。すべての計算を、Accelrys Materials Studio4.2の商用ソフトウエアパッケージに由来するDMol3モジュールにより行った。密度汎関数理論(DFT)を、すべてのモデルおよび結合したトナー/キャリア複合体の表面の電子的性質の研究のために使用した。妥当なコンピューター計算効率での精度が大きいという主たる利点の理由で、DFT法がこれまで、材料の電子構造モデルリングに首尾良く適用されている。
【0072】
DMol3密度汎関数法の近年の拡張が、必要とされる精度に依存して、局所的汎関数および密度勾配依存的汎関数のための電子構造計算を行うために設計される。今回のモデリング例では、Perdewの91一般化密度勾配近似(PW91PWP91)を密度汎関数法として用いた。基底セットのために、d分極関数を伴う二重数値基底セット(DND)をすべての計算のために使用した。DFTを使用することは、慎重かつ広範囲の汎関数調査を必要とする場合がある。異なる基底セットタイプについては、DNDは、6−31G
*である同じサイズのGaussian型基底セットよりも良好な成績を与えることが報告されている。DND数値解は、分子計算および固体計算のための分離原子の限界についての非常に正確なDFT解を与えることができる。
【0073】
シリカにおける吸着したポリマー複合体の初期構造、最適化構造および電子的性質を研究した。幾何学的最適化収束が、エネルギー、密度勾配および変位がそれぞれ、2×10
−5Ha未満、4×10
−3Ha/Å未満および5×10
−3Å未満であるときに達成された。Haはハートリー原子単位(au)である(1au=4.359×10
−18ジュール)。HOMO−LUMO軌道の計算を、上記モデルの電荷移動の方向を理解するために、また、それらの複合体モデルにおいて電子移動に影響を及ぼし得るであろう最も本質的な要因を特定するために行った。
【0074】
種々の材料における電子移動活性部位が、電子移動の出所および行き先として摩擦電気電荷にとって極めて重要であり、電子供与および電子受容の相対的能力により、特定のトナー/帯電体ペアの摩擦電気電荷特性が直接に決定されるであろう。HOMOおよびLUMOにおける生じた表面電子密度が、電荷移動におけるドナー−アクセプター複合体の活性部位を記述するために使用される。
【0075】
本ポリマー樹脂の疎水性置換基への電子密度移動を定量的に分析するために、Mulliken分配を使用する特定の分子軌道(MO)へのそれぞれの原子軌道(AO)の%寄与を、DMol3モジュールを用いて計算した。その後、それぞれの新規なポリマー樹脂のHOMOに対する疎水性部分におけるAOの寄与を、種々の疎水性置換基における電子密度
非局在化を比較するために組み込んだ。他のヘテロ原子および結合した炭素原子が親水性であるように、COOが親水性であり、他のすべての炭素原子が疎水性であるメタクリラート樹脂の親水性部分および疎水性部分を区別した。
【0076】
モデリングから得られる大きい負のドナー電荷のための重要な属性が下記の通りである。
1)順方向電荷移動のためのギャップは低くなければならない。
2)逆方向のギャップは順方向のギャップよりも大きくなければならない(負のギャップ差、(2)から(1)を引いた場合)。
3)樹脂は、大きいC/O比のモノマーを有する。
4)樹脂のTgは比較的高くなければならない。
5)帯電部位における水吸着は低くなければならない。
属性(1)および属性(2):順方向電荷移動のためのギャップは低いことを必要とし、かつ、逆方向のギャップは順方向のギャップよりも大きくなければならない(負のギャップ差)。
【0077】
キャリア被覆樹脂からシリカトナー添加剤への電子移動をモデル化するために、キャリア樹脂の三量体ユニットおよびシリカ表面モデルを含むキャリア樹脂シリカ複合体を調べた。
【0078】
ただ1つだけの材料の内部における分子間の電子移動では、光子エネルギーまたは衝突エネルギーまたは熱エネルギーからの十分なエネルギーの吸着により、HOMOからLUMOへの電子の移動が生じ得る。電子および(電子がHOMOから去ったときに残る)正孔がともに、同じ分子に存在するので、この分子における正味の電荷変化が何ら認められない。エネルギーギャップのサイズにより、電子を軌道間において移動させるために要求されるエネルギーの量が決定される。したがって、例えば、キャリア樹脂と、トナー添加剤との両方が、接触する前では、HOMOおよびLUMOならびに関連するギャップを有する。LUMOの上方に位置する他のエネルギー準位(これらは、増大するエネルギーのLUMO+1、LUMO+2などとして知られている)、および、HOMOの下方に位置する他のエネルギー準位(これらは、低下するエネルギーのHOMO−1、HOMO−2などとして知られている)もまた潜在的に存在することに留意しなければならない。したがって、一般には、電子を材料内においてHOMO−nからLUMO+mに移動させることが可能である(ただし、この場合、n、mは、0以上である)。HOMOn=0は通常、HOMOとして記載され、LUMOm=0は簡略化のためにLUMOとして記載されることに留意されたい。
【0079】
コンピューターモデリング研究から、2つの材料が接触したとき、例えば、トナー添加剤とキャリアとの間における接触のとき、多数の異なる可能性が、HOMO−nおよびLUMO+mの所在について生じることが示されており、したがって、電荷移動の結果は多数の異なる可能性を有する。2つの材料が接触すると、HOMO−nがキャリア樹脂に位置し、かつ、LUMO+mがトナー添加剤に位置することがもたらされる場合がある。その状況では、電子移動はキャリア樹脂を正に帯電させ、トナー添加剤を負に帯電させることになる(これは、負の帯電トナーについては所望される移動である)。一方、LUMO+mがキャリア樹脂に位置し、かつ、HOMO−nがトナー添加剤に位置するならば、電子移動はトナー添加剤を正に帯電させ、キャリア樹脂を負に帯電させることになる(これは、負の帯電トナーについては望まれない移動である)。当然のことながら、HOMOおよびLUMOが、ちょうど1つの分子に位置する場合があり、または、両方の分子に部分的に位置し得るかもしれない。フロンティア分子軌道の配置は2つの材料の性質および両者間の相互作用の結果であり、この場合、その相互作用もまた、接触している2つの分子の配向に依存している。材料のバルクサンプルでは、接触している分子の種々の配向がランダムに得られるであろう。したがって、移動した全電荷が、それらの異なるプロセスの総和である。幸いなことに、電荷移動のための重要なプロセスが最低エネルギーのプロセスであろうし、したがって、モデリングデータを集めることにおいて、このプロセスが、接触の種々の配向を検討するためのものであり、また、所望される順方向電荷移動(例えば、負のトナー電荷)のための最も低いエネルギーギャップ、および、逆方向電荷移動(すなわち、正のトナー電荷)のための最も低いエネルギーギャップを特定するためのものである。
【0080】
したがって、モデリングにより、シリカと、ポリマー樹脂被覆を伴うキャリアとを有するトナーを帯電させることにおける大きい負のトナー電荷については、下記の2つの属性が存在することが示される。
1)順方向電荷移動のためのギャップは低くなければならない。
2)逆方向のギャップは正方向のギャップよりも大きくなければならない(負のギャップ差、(2)から(1)を引いた場合)。
【0081】
下記の表1は、シリカへの電子電荷移動(望ましい)、および、ポリマーへの電子電荷移動(望ましくない)のためのデータをいくつかの異なる被覆材について示す。MMAはメチルメタクリラートであり、PhMAはフェニルメタクリラートであり、BMAはベンジルメタクリラートであり、MAはメタクリラートである。
【表1-1】
【表1-2】
【0082】
データは、MMA、CHMAおよびDMAEMA/CHMAに基づくポリマーは、すべてが、MMAの順方向移動のための電荷移動ギャップとほぼ等しいか、またはそれよりも低い順方向移動のための電荷移動ギャップを有するので、良好な帯電を有することを示す。DMAEMA/CHMAについての計算は、観測されるように、より低いギャップ、従って、より大きい帯電を示す。理論によってとらわれることを望まないが、それは、順方向移動のためのはるかにより低い固有的エネルギーギャップを有するMDAEMAの結果であるようであり、したがって、DMAEMAは、電荷を増大させるための極めて効果的な材料である。電荷増大が、コポリマー被覆へのアミンコモノマーのほんの1%でさえの負荷について、DMAEMA/CHMAにおいて認められた。そのような場合において、逆方向の移動のためのエネルギーは大きくなっており、したがって、有利でない。そのようなものとして、エネルギーギャップ計算データは、観測値のための良好な予測判断材料である。
【0083】
PhMA、ピリジニルMAおよびピラニルMAは、はるかにより大きい逆方向ギャップを伴って、ほぼ同じ順方向エネルギーギャップ(それぞれ、4.7eV、4.8eVおよび4.8eV)を有しており、したがって、良好な帯電(例えば、CHMAと類似する帯電)を有するであろう。チオピラニルMAは4.5eVのより低いエネルギーギャップを有しており、したがって、他の分子よりも大きい電荷を与える。ベンジルMAは5.0eVのより大きいエネルギーギャップを有しており、したがって、少しより低い、だが、依然として良好な帯電を与えるであろう。同様に、4−クロロフェニルMA、4−フルオロフェニルMA、4−ヨードフェニルMA、3−メトキシベンジルMA、2−メトキシベンジルMA、2−ヒドロキシベンジルMAおよび4−チオベンジルMAもまた、はるかにより大きい逆方向ギャップを伴って、より低い順方向エネルギーギャップを有しており、したがって、MMAおよびCHMAよりも大きい電荷を与える。芳香族置換基を変えることによって、電荷が、要求されるように、または、所望されるように増減させられる場合がある。他の異性体が本開示に従って可能であり、また、同様にモデル化される場合があり、この場合、さらなるヘテロ原子(例えば、2個のイオウ)を含む分子を含めて、そのようなさらなる異性体は、電荷レベルを動かすためのドライバー(driver)を提供する場合がある。
【0084】
属性(3):炭素対酸素比
MMAのC/O比は2.5と低く、MMAは不良なRH感受性を有する。CHMAは5というC/O比および改善されたRH比を有する。DMAEMAは4というC/O比を有しており、したがって、RH感受性を損ない得る。したがって、DMAEMAは、最も良いRH感受性を維持するために、より少ない量で使用することができる。ヘキシルメタクリラートおよびフェニルメタクリラートは、CHMAのC/O比と同様な、5というより大きいC/O比を有しており、したがって、これらもまた、良好なRH比をもたらすにちがいない。フェニルアクリラートが、潜在的なキャリア被覆樹脂として使用されている(例えば、米国特許第6,511,780号を参照のこと。これは参照することによってその全体が本明細書中に組み込まれる)。しかしながら、フェニルアクリラートは、CHMAと比較した場合、より低いC/O比(4.5)を有しており、したがって、フェニルメタクリラートと同じくらい良好なRH感受性をもたらすことが予想されない。実際、すべてのことが等しいならば、C/O比、したがって、RH感受性は、メタクリラート系化合物については、アクリラート系アナログと比較した場合、より大きい改善を示すであろう。ベンジルメタクリラートは最も大きいC/O比(すなわち、5.5)を有しており、したがって、CHMAがもたらすよりも一層大きいRH感受性をもたらすことが予想される。
【0085】
属性(4):樹脂のガラス転移(Tg)温度
キャリア粉末被覆プロセスにおいて、被覆用樹脂のTgは、高い温度(200℃が典型的な被覆温度である)で被覆するために十分に低くなければならず、しかし、樹脂が通常の運搬温度および輸送温度のもとでは流動しないように、また、稼働しているプリンターにおいて遭遇する状態のもとでは流動しないように十分に高くなければならない。現像剤は潜在的には55℃〜60℃に達し得るので、Tgはそのような温度よりも相当に高いことが望ましい。PMMAおよびCHMAは、100℃という高いTgを有する。約80℃〜約140℃のTgの範囲が受け入れられ得る。ポリフェニルメタクリラート(PPHAMAまたはPPhMA)は約110℃のTgを有し、ポリベンジルメタクリラート(PBMA)は約54℃のTgを有し、この場合、より低いTg(これは、ベンジル側鎖基のより大きい柔軟性の結果である)はPBMAをホモポリマーとして不適当にする。しかしながら、BMAは、より大きいTgを有するモノマーとのコポリマーにおいて使用される場合がある。芳香族基における炭素原子を、S、NまたはOにより置換することは、極性における増大に起因して、Tgをわずかに増大させる場合がある。メタクリラート系化合物がアクリラート系化合物よりも好ましい。これは、アクリラート系化合物は、はるかにより低いTg値を有しており、したがって、より大きいTgの成分とキャリア樹脂において組み合わされる場合を除き、一般に不適当であるからである。
【0086】
属性(5):帯電部位における水吸着
別の重要な属性が、HOMO電子密度が樹脂の疎水性基に実質的に位置することである。様々な分子の各原子における電子密度の量を孤立三量体のHOMOにおいて計算した。疎水性基における%を、ヘテロ原子に直接に結合していない炭素における電子密度の%として計算した、ヘテロ原子に結合するすべての他の炭素原子、または、ヘテロ原子が親水性として考慮される。したがって、HOMO電子密度がヘテロ原子またはヘテロ原子に結合する炭素原子に存在するならば、その部位は極性を有するであろう。極性基は優先的に、水を引き寄せる。したがって、親水性基における帯電部位は、水に対して非常に感受性になるであろう。他方で、非極性の、したがって、疎水性の炭素原子における電子密度は、それほど容易に水を引き寄せないであろうし、したがって、高いRHに対してより安定であり、このことは、より良好な電荷性能を湿った状態のもとでもたらすことになる。
【0087】
比較例(MMA)については、カルボニル酸素が、非常に極性であり、かつ、高いRHにおいて水を引き寄せるカルボニル酸素原子に大部分が位置するHOMOフロンティア分子軌道を有している。その帯電部位が、負電荷をトナーのシリカ添加剤アクセプター部位に与える電子移動部位である。したがって、高いRHでの水吸着は、(HOMO荷電部位を物理的に阻止することによって、または、HOMOを実際に妨げることによってそのどちらでも)電荷移動を妨げることになる。表1に示されるように、HOMO電子密度のほんの16%が、MMAについては疎水性炭素に存在するだけである。CHMAについては、より大きいC/O比を有するので、疎水性置換基への、すなわち、シクロヘキシル基へのカルボニル酸素からのHOMOの
非局在化が21%に増大している。DMAEMAでは、HOMOの
非局在化が、再度ではあるが、より大きいC/O比に起因して、24%と類似している。
【0088】
本開示の実施例、すなわち、PhMA、BMA、チオピラニルMAおよびピラニルMAは、分子の疎水性部分へのHOMOのより大きい
非局在化を明らかにしている。この傾向がPhMAについては最大となっており、この場合、密度の84%が疎水性置換基に存在する。ピリジニルMAを除いて、芳香族基を有するすべてのサンプルが、少なくとも43%の
非局在化を示す。ピラニルMAについての3というより低いC/O比の場合においてさえ、疎水性炭素におけるHOMOの電子密度が(65%と)大きく、このことから、帯電部位が疎水性であるので、良好なRH性能が予測される。ピラニルMAは、最も大きい電子密度をN原子および結合した炭素において有しており、したがって、電子
非局在化のために好ましくなく、だが、ピラニルMAは大きいC/O比を有しており、したがって、高いRHでの全体的な水吸着がより良好となるであろう。