特許第6234328号(P6234328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6234328-脱硫装置 図000002
  • 特許6234328-脱硫装置 図000003
  • 特許6234328-脱硫装置 図000004
  • 特許6234328-脱硫装置 図000005
  • 特許6234328-脱硫装置 図000006
  • 特許6234328-脱硫装置 図000007
  • 特許6234328-脱硫装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234328
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】脱硫装置
(51)【国際特許分類】
   C10K 1/12 20060101AFI20171113BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20171113BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20171113BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20171113BHJP
   B01F 5/04 20060101ALI20171113BHJP
   C10K 1/18 20060101ALI20171113BHJP
   B01D 19/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C10K1/12
   B01D53/14
   B01F3/04 Z
   B01F5/00 G
   B01F5/04
   C10K1/18
   !B01D19/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-117101(P2014-117101)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229736(P2015-229736A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 明彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 靖之
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−114233(JP,A)
【文献】 特開2004−067787(JP,A)
【文献】 特開平06−073386(JP,A)
【文献】 特開昭62−192490(JP,A)
【文献】 特開2012−025900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10K 1/00
B01D 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉ガスと吸収液とを向流接触させることで、前記コークス炉ガス中の硫化物を前記吸収液に吸収させる脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された前記吸収液に酸素を含有する気体を供給して前記硫化物を酸化し、少なくとも一部の前記吸収液を前記脱硫塔に循環させる再生塔と、を備え、
前記脱硫塔は、
互いに離間して上下方向に並ぶように設けられ、それぞれ200〜1500mmの厚さを有し、前記吸収液を一時的に保持して上から下に導くと共に、前記コークス炉ガスを下から上に通す複数段の吸収層を有し、
前記再生塔は、
前記脱硫塔から前記吸収液を受け入れると共に、前記酸素を含有する気体を受け入れて気液混合流体を構成し、前記気液混合流体を旋回させながら上昇させる混合槽を有し、
前記混合槽は、
前記気液混合流体を収容する槽本体と、
前記槽本体内の下部に設けられ、前記吸収液及び前記酸素を含有する気体を受け入れて前記気液混合流体を前記槽本体内に噴射する噴射管とを有し、
前記噴射管は、前記気液混合流体の噴射方向に並ぶ複数の管体を有し、エジェクタ―効果により周囲の流体を前記管体同士の間に吸引するように構成されると共に、前記気液混合流体の噴射により前記槽本体内に旋回流を形成するように配置されている、脱硫装置。
【請求項2】
前記脱硫塔の前段において、前記コークス炉ガスと、1〜6%の含有率でタールを含有する冷却液とを向流接触させることで前記コークス炉ガスを冷却する予冷塔を更に備える、請求項1記載の脱硫装置。
【請求項3】
前記槽本体は円筒状の側壁を有し、前記側壁の高さは前記側壁の内径の2倍以下であり、且つ1m以上である、請求項1又は2記載の脱硫装置。
【請求項4】
前記再生塔は、
前記混合槽を囲むように設けられ、前記混合槽から排出された前記気液混合流体を受け入れ、前記吸収液と気体とに分離して排出するように構成された脱気槽を更に有する、請求項1〜のいずれか一項記載の脱硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を乾留してコークスを製造する際に発生するコークス炉ガスは燃料として利用可能である。コークス炉ガスは硫化物を含有しているので、燃焼すると硫黄酸化物を生じ、環境に影響を及ぼすおそれがある。そこで、コークス炉ガスを燃料として利用するのに先立って、コークス炉ガス中の硫化物を除去することが行われる。硫化物の除去には、例えば特許文献1に示されるように、コークス炉ガスと吸収液とを向流接触させることで、コークス炉ガス中の硫化物を吸収液に吸収させる脱硫装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第201880463U号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、脱硫能力に優れた脱硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る脱硫装置は、コークス炉ガスと吸収液とを向流接触させることで、コークス炉ガス中の硫化物を吸収液に吸収させる脱硫塔と、脱硫塔から排出された吸収液に酸素を含有する気体を供給して硫化物を酸化し、少なくとも一部の吸収液を脱硫塔に循環させる再生塔とを備え、脱硫塔は、互いに離間して上下方向に並ぶように設けられ、それぞれ200〜1500mmの厚さを有し、吸収液を一時的に保持して上から下に導くと共に、コークス炉ガスを下から上に通す複数段の吸収層を有し、再生塔は、脱硫塔から吸収液を受け入れると共に、酸素を含有する気体を受け入れて気液混合流体を構成し、気液混合流体を旋回させながら上昇させる混合槽を有する。
【0006】
脱硫塔の吸収層の厚さが小さ過ぎると、吸収層内におけるコークス炉ガスと吸収液との接触効率が不十分になる。一方、吸収層の厚さが大き過ぎると、再生塔での酸化反応によって生じた固体硫黄の蓄積により吸収層の通気性が低下し、コークス炉ガス及び吸収液の接触効率が低下する。吸収層の厚さが200mm以上であれば、コークス炉ガス及び吸収液の十分な接触効率が得られる。吸収層の厚さが1500mm以下であれば、発生した固体硫黄が吸収液によって押し流されるので、固体硫黄の蓄積に起因したコークス炉ガス及び吸収液の接触効率の低下が抑制される。このため、吸収層の厚さが200〜1500mmであることで、コークス炉ガス及び吸収液の十分な接触効率が長期的に維持される。
【0007】
再生塔においては、吸収液に酸素を含有する気体が混入して気液混合流体が構成され、気液混合流体が混合槽内を旋回しながら上昇する。これにより、混合槽内に収容された気液混合流体全体の流動性が得られることで、酸素を含有する気体と吸収液との攪拌混合が迅速かつ均一となる。このため、吸収液が硫化物を吸収する能力(以下、「吸収液の吸収能力」という。)が十分に回復する。
【0008】
このように、脱硫塔においてはコークス炉ガス及び吸収液の十分な接触効率が長期的に維持され、再生塔においては吸収液の吸収能力が十分に回復されるので、高い脱硫性能を長期的に維持することができる。従って、本開示に係る脱硫装置は脱硫性能に優れる。
【0009】
脱硫塔の前段において、コークス炉ガスと、1〜6%の含有率でタールを含有する冷却液タールを含有する冷却液とを向流接触させることでコークス炉ガスを冷却する予冷塔を更に備えてもよい。
【0010】
吸収液の吸収能力は、コークス炉ガスの温度が低下するにつれて向上する傾向がある。このため、脱硫塔の前段においてコークス炉ガスを冷却することで、コークス炉ガスの脱硫能力が向上する。予冷塔の冷却液はタールを含有しているので、コークス炉ガス中のナフタリンが冷却により析出したとしても、析出したナフタリンはタールに吸収され、冷却液と共に押し流される。このため、予冷塔内におけるナフタリンの蓄積が抑制され、予冷塔がコークス炉ガスを冷却する能力が長期的に維持される。従って、コークス炉ガスの冷却により脱硫能力を向上させると共に、その向上効果を長期的に維持することができる。
【0011】
混合槽は、気液混合流体を収容する槽本体と、槽本体内の下部に設けられ、吸収液及び酸素を含有する気体を受け入れて気液混合流体を槽本体内に噴射する噴射管とを有し、噴射管は、気液混合流体の噴射方向に並ぶ複数の管体を有し、エジェクタ―効果により周囲の流体を管体同士の間に吸引するように構成されると共に、気液混合流体の噴射により槽本体内に旋回流を形成するように配置されていてもよい。
【0012】
この場合、気液混合流体の噴射流により槽本体内に旋回流が形成されるので、気液混合流体は槽本体内を旋回しながら上昇する。これにより、気液混合流体の流動性が得られることで、酸素を含有する気体と吸収液との攪拌混合が迅速かつ均一となり、効率的に酸化反応が進む。槽本体内に噴射された気液混合流体の一部は、エジェクタ―効果により再度噴射管内に吸引されるので、気液混合流体が槽本体内を旋回しながら上昇する前段階において、酸素を含有する気体が気液混合流体中に十分に混入される。従って、吸収液の吸収能力を効率よく且つ確実に回復させることができる。なお、気液混合流体の噴射流を利用して気液混合流体を旋回させることは、混合槽の構造の単純化にも寄与する。
【0013】
槽本体は円筒状の側壁を有し、側壁の高さは側壁の内径の2倍以下であり、且つ1m以上であってもよい。
【0014】
槽本体内に収容された気液混合流体の深さが小さ過ぎると、吸収液中の硫化物の酸化率が著しく低下する傾向がある。側壁の高さを大きくすれば、気液混合流体の深さも大きくなるので、吸収液中の硫化物の酸化率は向上するが、吸収液を流動させるための消費エネルギーも上昇する。更に側壁の高さを大きくして気液混合流体の深さを大きくし過ぎると、酸化率の向上が鈍化するため不経済となる。側壁の高さが1m以上であれば、吸収液中の硫化物の酸化率を確保できる。側壁の高さが側壁の内径の2倍以下であれば、消費エネルギーに見合った酸化能力を得ることができる。従って、側壁の高さが側壁の内径の2倍以下であり、且つ1m以上であれば、高いエネルギー効率で酸化能力を確保できる。
【0015】
再生塔は、混合槽を囲むように設けられ、混合槽から排出された気液混合流体を受け入れ、吸収液と気体とに分離して排出するように構成された脱気槽を更に有してもよい。
【0016】
この場合、吸収液S2から気体が除去されるので、吸収液S2を圧送するポンプP2におけるキャビテーションの発生が抑制される。これにより、脱硫塔20と再生塔30との間において吸収液S2を安定して循環させることができる。従って、脱硫能力をより確実に維持できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、脱硫能力に優れた脱硫装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】脱硫装置の概略構成を示す模式図である。
図2】予冷塔の断面図である。
図3】脱硫塔の断面図である。
図4】再生塔の断面図である。
図5】再生塔の平面図である。
図6】脱気槽を展開して示す模式図である。
図7】槽本体内に溜まった気液混合流体の深さと酸素利用率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1に示す脱硫装置1は、コークス炉ガス中の硫化物を除去する装置であり、予冷塔10と、脱硫塔20と、再生塔30とを備える。
【0020】
予冷塔10は、脱硫塔20の前段において、コークス炉ガスと、タールを含有する冷却液とを向流接触させることでコークス炉ガスを冷却する。脱硫塔20は、コークス炉ガス及び吸収液を向流接触させることで、コークス炉ガス中の硫化物を吸収液に吸収させる。再生塔30は、脱硫塔20から排出された吸収液に酸素を含有する気体を供給して硫化物を酸化し、少なくとも一部の吸収液を脱硫塔20に戻す。
【0021】
図2に示すように、予冷塔10は、ガス受入口11と、ガス送出口12と、冷却液受入口13と、ディストリビュータ14と、冷却液送出口15と、複数段の冷却層16とを有する。なお、図2は冷却層16が3段である場合を示しているが、冷却層16の段数に特に制限はなく、適宜変更可能である。
【0022】
ガス受入口11は、予冷塔10の側壁の下部に設けられており、コークス炉ガスG1を受け入れる。ガス送出口12は、予冷塔10の頂部に設けられており、予冷塔10内を上昇したコークス炉ガスG1を送出する。
【0023】
冷却液受入口13は、予冷塔10の側壁の上部に設けられており、タールを含有する冷却液S1を受け入れる。冷却液S1は、例えばタールを含有する水である。ディストリビュータ14は、予冷塔10内の上部に設けられており、冷却液受入口13に接続されている。ディストリビュータ14は、冷却液受入口13から受け入れられた冷却液S1を複数の吐出口14aから下方に吐出する。冷却液送出口15は、予冷塔10の側壁の下部においてガス受入口11よりも下に設けられており、予冷塔10内の底部に落下した冷却液S1を送出する。
【0024】
複数段の冷却層16は、予冷塔10内においてディストリビュータ14とガス受入口11との間に設けられており、互いに離間して上下方向に並んでいる。それぞれの冷却層16は、予冷塔10内を上下に仕切るように設けられており、冷却液S1を一時的に保持して上から下に導くと共に、コークス炉ガスG1を下から上に通す。このため、コークス炉ガスG1と冷却液S1とは冷却層16において向流接触する。具体的に、冷却層16内には多数の充填材16aが充填されている。充填材16aは、例えばポリプロピレン等の樹脂材料からなる通気性の固形部材である。冷却液S1は、充填材16aの表面に付着した状態で上から下に導かれる。コークス炉ガスG1は充填材16aを下から上に通過する。
【0025】
図3に示すように、脱硫塔20は、ガス受入口21と、ガス送出口22と、吸収液受入口23と、ディストリビュータ24と、吸収液送出口25と、複数段の吸収層26とを有する。
【0026】
ガス受入口21は、脱硫塔20の側壁の下部に設けられており、コークス炉ガスG1を受け入れる。ガス送出口22は、脱硫塔20の頂部に設けられており、脱硫塔20内を上昇したコークス炉ガスG1を送出する。
【0027】
吸収液受入口23は、脱硫塔20の側壁の上部に設けられており、吸収液S2を受け入れる。吸収液S2は、例えばアンモニア水であり、外部から供給された水を脱硫塔20と再生塔30との間で循環させることにより得られる。すなわち、外部から供給された水は、脱硫塔20と再生塔30との間を循環する過程において、コークス炉ガスG1中のアンモニアを吸収してアンモニア水となり、吸収液S2として機能する。ディストリビュータ24は、脱硫塔20内の上部に設けられており、吸収液受入口23に接続されている。ディストリビュータ24は、吸収液受入口23から受け入れられた吸収液S2を複数の吐出口24aから下方に吐出する。吸収液送出口25は、脱硫塔20の側壁の下部に設けられており、脱硫塔20内の底部に落下した吸収液S2を送出する。
【0028】
複数段の吸収層26は、脱硫塔20内においてディストリビュータ24とガス受入口21との間に設けられており、互いに上下方向に並んでいる。それぞれの吸収層26は、脱硫塔20内を上下に仕切るように設けられており、吸収液S2を一時的に保持して上から下に導くと共に、コークス炉ガスG1を下から上に通す。このため、コークス炉ガスG1と吸収液S2とは吸収層26において向流接触する。具体的に、吸収層26内には多数の充填材26aが充填されている。充填材26aは、例えばポリプロピレンなどの樹脂材料からなる通気性の固形部材である。吸収液S2は、充填材26aの表面に付着した状態で上から下に導かれる。コークス炉ガスG1は充填材26aを下から上に通過する。
【0029】
吸収層26の厚さh1は200〜1500mmである。吸収層26の段数は、例えば8段以上であるがこれに限られない。吸収層26の段数は、コークス炉ガスG1中の硫化物を吸収液S2に十分吸収させるために必要な向流接触距離を、厚さh1で除算した値以上に設定されていればよい。
【0030】
図4及び図5に示すように、再生塔30は、混合槽40と、脱気槽50とを有する。
【0031】
混合槽40は、脱硫塔20の下部の吸収液送出口25から連通管43及び吸収液受入口44を介して吸収液S2を受け入れると共に、酸素を含有する気体を受け入れて気液混合流体を構成し、気液混合流体を旋回させながら上昇させる。なお、混合槽40が受け入れる気体は酸素を含有していればどのようなものであってもよいが、混合槽40に送気するための動力を低減するためにはより酸素濃度の高いものが望ましい。一例として、混合槽40が受け入れる気体は空気であるものとする。
【0032】
混合槽40は、槽本体41と、6個の噴射管42とを有する。槽本体41は、上方に開口した円筒状の側壁41aを有し、上記気液混合流体を収容する。側壁41aの高さh2は側壁41aの内径d1の2倍以下であり、且つ1m以上である。すなわち、槽本体41の深さは槽本体41の内径の2倍以下であり、且つ1m以上である。側壁41aの高さh2(槽本体41の深さ)は0〜4mであってもよい。
【0033】
噴射管42は、槽本体41内の下部に設けられ、吸収液S2及び空気を受け入れて気液混合気体を槽本体41内に噴射する。噴射管42は、気液混合流体の噴射方向に並ぶ複数の管体42a,42b,42cを有し、エジェクタ―効果により周囲の流体を管体42a,42b,42c同士の間に吸引するように構成されている。6個の噴射管42は、気液混合流体の噴射により槽本体41内に旋回流を生じるように配置されている。具体的に、6個の噴射管42は側壁41aの中心C1を囲むように配置されており、それぞれ同一の旋回方向RDに沿って気液混合流体を噴射するように配置されている。なお、噴射管42の数に制限はなく、6個に限られず、少なくとも1個が設置されていればよい。また、各噴射管42は、三つの管体42a,42b,42cからなる三連式に限られない。
【0034】
脱気槽50は混合槽40を外側から囲むように設けられており、混合槽40の上部から連続的に流出した気液混合流体を受け入れ、吸収液S2と気体とに分離して排出するように構成されている。
【0035】
具体的に、脱気槽50は、図5及び図6に示すように、1枚の堰板51と、2枚の仕切板52と、3枚の仕切板53と、吸収液送出口54とを有する。堰板51及び仕切板52,53は、脱気槽50内にて周方向に並ぶように配置される。堰板51及び仕切板52と、仕切板53とは交互に並んでいる。脱気槽50内の深さ方向において、堰板51は液面から底面の全域に亘るように位置し、仕切板52は液面寄りに位置し、仕切板53は槽底面寄りに位置する。吸収液送出口54は、脱気槽50の側壁の下部に設けられており、脱気槽50内から吸収液S2を送出する。吸収液送出口54は、堰板51に隣接する箇所に開口している。混合槽40から脱気槽50内に受け入れられた気液混合流体は、周方向に沿って吸収液送出口54に向かう。吸収液送出口54に向かう経路において、気液混合流体は、仕切板53の上部と仕切板52の下部とを交互に通過するため、上下動を繰り返す。これにより気液混合流体からの気体の分離(脱気)が促進される。すなわち、気液混合流体は吸収液S2と気体とに分離される。気体は浮上して液面から放出され、十分に脱気された吸収液S2が吸収液送出口54から排出される。
【0036】
このように脱気後の吸収液S2を吸収液送出口55から送出することは、後述するように、ポンプP2におけるキャビテーションを防止することに寄与する。ポンプP2による揚液の支障となるキャビテーションを防止することで、連続して安定的に吸収液S2を脱硫塔20に供給可能となり、脱硫能力をより確実に維持できる。
【0037】
なお、脱気槽50は、吸収液S2の脱気が可能であればどのようなものであってもよく、上述した構成に限定されない。例えば、堰板51及び仕切板52,53の枚数は上記の枚数に限定されるわけではなく、再生塔30の大きさや処理する吸収液の量等に応じて適宜変更可能である。
【0038】
図1に戻り、予冷塔10のガス受入口11は、送気管路L5を介してコークス炉(不図示)に接続されている。予冷塔10のガス送出口12は、送気管路L6を介して脱硫塔20のガス受入口21に接続されている。予冷塔10の冷却液受入口13及び冷却液送出口15は送液管路L1を介して接続されており、送液管路L1にはポンプP1が設けられている。ポンプP1は冷却液送出口15から送出された冷却液S1を冷却液受入口13に圧送する。
【0039】
送液管路L1には、タール導入管路L2、排液管路L3及び補充管路L4が接続されている。タール導入管路L2は、タールの供給源(不図示)から送液管路L1内にタールを導く。タール導入管路L2は、コークスの生成過程で生じたタールを送液管路L1内に導くように配管されていてもよい。排液管路L3は、送液管路L1中を流れる冷却液S1におけるナフタリンの濃度上昇を抑えるために、冷却液S1の一部を排出する。補充管路L4は、排液管路L3から排出された冷却液S1と同量の液体を送液管路L1中に補充する。補充管路L4が補充する液体は例えばアンモニア水又は水等である。
【0040】
なお、コークス炉ガス温度を50℃から35℃まで冷却する予冷塔において、冷却液S1のタールの含有率が1%未満である場合、ナフタリンの吸収能力が不十分であり、そのため長期運転において冷却層16の圧損が上昇する傾向がある。一方、冷却液S1のタールの含有率が6%超である場合、充填物へのタール付着が生じ、冷却層16の圧損が上昇する傾向がある。このため、タール導入管路L2からのタールの導入量は、冷却液S1おけるタールの含有率が1〜6%となるように調整される。
【0041】
噴射管42には、空気導入管路L8が接続されている。空気導入管路L8は、吸収液S2に混入させるための空気を噴射管42に導入する。再生塔30の吸収液送出口54は、送液管路L9を介して脱硫塔20の吸収液受入口23に接続されており、送液管路L9にはポンプP2が設けられている。ポンプP2は吸収液送出口54から送出された吸収液S2の大半を吸収液受入口23に圧送する。
【0042】
送液管路L9には、送液管路L7、排液管路L10及び補充管路L11が接続されている。送液管路L7は、送液管路L9中を流れる吸収液S2の一部を噴射管42に戻す。排液管路L10は、送液管路L9中を流れる吸収液S2における固形硫黄の濃度上昇を抑えるために、吸収液S2の一部を排出する。補充管路L11は、排液管路L10から排出された吸収液S2と同量の液体を送液管路L9中に補充する。補充管路L11が補充する液体は例えばアンモニア水又は水等である。
【0043】
送気管路L5によりコークス炉側からガス受入口11に導かれたコークス炉ガスG1は、ガス受入口11から予冷塔10内に受け入れられ、冷却層16を通過しながら上昇し、ガス送出口12から送出される。送液管路L1により冷却液受入口13に導かれた冷却液S1は、冷却液受入口13から予冷塔10内に受け入れられ、冷却層16を通過しながら落下し、冷却液送出口15から送出される。冷却層16において、コークス炉ガスG1及び冷却液S1は互いに向流接触する。これにより、コークス炉ガスG1が冷却されると共に、コークス炉ガスG1中のナフタリンが冷却液S1中のタールに吸収される。
【0044】
ナフタリンを吸収して冷却液送出口15から送出された冷却液S1は、ポンプP1により冷却液受入口13側に圧送される。冷却液受入口13側に流れる冷却液S1には、タール導入管路L2から導入されたタールが混入する。冷却液受入口13側に流れる冷却液S1の一部は、排液管路L3を通って排出される。残りの冷却液S1は、補充管路L4により補充された水等によって希釈された後、再度冷却液受入口13から予冷塔10内に受け入れられる。このようにして、冷却液S1の一部が循環利用される。
【0045】
なお、排液管路L3から排出される冷却液S1の量は、例えば冷却液受入口13から予冷塔10内に入る冷却液S1中のタールに含まれるナフタリンの量が飽和溶解度以下となるように設定される。冷却液S1は補充管路L4から補充された水等によって希釈されるが、タール導入管路L2によりタールが導入されているので、冷却液S1中のタールの含有量は適切な値に保たれる。
【0046】
送気管路L6により予冷塔10から脱硫塔20に導かれたコークス炉ガスG1は、ガス受入口21から脱硫塔20内に受け入れられ、吸収層26を通過しながら上昇し、ガス送出口22から送出される。送液管路L9により吸収液受入口23に導かれた吸収液S2は、吸収液受入口23から脱硫塔20内に受け入れられ、吸収層26を通過しながら落下し、吸収液送出口25から送出される。吸収層26において、コークス炉ガスG1及び吸収液S2は互いに向流接触する。これにより、コークス炉ガスG1中の硫化物が吸収液S2に吸収される。
【0047】
硫化物を吸収して吸収液送出口25から送出された吸収液S2は、送液管路L7により噴射管42内に導かれる。噴射管42内には、空気導入管路L8により空気も導かれる。吸収液S2及び空気は噴射管42内において気液混合流体を構成する。気液混合流体は、噴射管42により槽本体41内に噴射され、槽本体41内を旋回しながら上昇する。吸収液S2に吸収されていた硫化物は、気液混合流体中の酸素によって酸化される。これにより、コークス炉ガスG1の硫化物を吸収する吸収液S2の能力が回復する。
【0048】
槽本体41の上部に到達した気液混合流体は、槽本体41から流出して脱気槽50内に流入する。脱気槽50内に流入した気液混合流体は吸収液S2及び空気に分離され、空気は液面から放出され、吸収液S2は吸収液送出口54から送出される。
【0049】
吸収液送出口54から送出された吸収液S2は、ポンプP2により吸収液受入口23側に圧送される。吸収液受入口23に向かう吸収液S2の一部は、排液管路L10を通って排出される。残りの吸収液S2は、補充管路L11により補充された水等によって希釈された後、再度吸収液受入口23から脱硫塔20内に受け入れられる。このようにして、吸収液S2の少なくとも一部は送液管路L7,L9を通って循環利用される。
【0050】
なお、排液管路L10から排出される吸収液S2の量は、例えば吸収液受入口23から脱硫塔20内に入る吸収液S2中の硫黄の量が許容値以下となるように設定される。吸収液S2は補充管路L11から補充された水によって希釈されるが、補充された水がコークス炉ガスG1中のアンモニアを吸収するので、吸収液S2中のアンモニアの含有量は適切な値に保たれる。
【0051】
以上に説明したように、脱硫装置1は、コークス炉ガスG1と吸収液S2とを向流接触させることで、コークス炉ガスG1中の硫化物を吸収液S2に吸収させる脱硫塔20と、脱硫塔20から排出された吸収液S2に酸素を含有する気体を供給して硫化物を酸化し、少なくとも一部の吸収液S2を脱硫塔20に循環させる再生塔30とを備える。脱硫塔20は複数段の吸収層26を有する。複数段の吸収層26は、互いに離間して上下方向に並ぶように設けられ、それぞれ200〜1500mmの厚さを有し、吸収液S2を一時的に保持して上から下に導くと共に、コークス炉ガスG1を下から上に通す。
【0052】
吸収層26の厚さが小さ過ぎると、吸収層26内におけるコークス炉ガスG1と吸収液S2との接触効率が不十分になる。一方、吸収層26の厚さが大き過ぎると、再生塔での酸化反応によって生じた固体硫黄の蓄積により吸収層26の通気性が低下し、コークス炉ガスG1及び吸収液S2の接触効率が低下する。吸収層26の厚さが200mm以上であれば、コークス炉ガスG1及び吸収液S2の十分な接触効率が得られる。吸収層26の厚さが1500mm以上であると、吸収液の落下・衝突エネルギーによる固体硫黄等の洗浄効果が低下し、固体硫黄等が吸収層26内に蓄積して流路が閉塞し、脱硫塔の保守が困難な状態となるおそれがある。これに対し、吸収層26の厚さが1500mm以下であれば、発生した固体硫黄が吸収液S2によって押し流されるので、固体硫黄の蓄積に起因したコークス炉ガスG1及び吸収液S2の接触効率の低下が抑制される。このため、吸収層26の厚さが200〜1500mmであることで、コークス炉ガスG1及び吸収液S2の十分な接触効率が長期的に維持される。
【0053】
再生塔30は、混合槽40を有する。混合槽40は、脱硫塔20から吸収液S2を受け入れると共に、酸素を含有する気体を受け入れて気液混合流体を構成し、気液混合流体を旋回させながら上昇させる。これにより、混合槽40内に収容された気液混合流体全体の流動性が得られることで、酸素を含有する気体と吸収液S2との攪拌混合が迅速かつ均一となる。このため、吸収液S2が硫化物を吸収する能力(以下、「吸収液の吸収能力」という。)が十分に回復する。
【0054】
このように、脱硫塔20においてはコークス炉ガスG1及び吸収液S2の十分な接触効率が長期的に維持され、再生塔30においては吸収液S2の吸収能力が十分に回復されるので、高い脱硫能力を長期的に維持することができる。従って、脱硫装置1は脱硫能力に優れる。
【0055】
脱硫装置1は、予冷塔10を更に備える。予冷塔10は、脱硫塔20の前段において、コークス炉ガスG1と、1〜6%の含有率でタールを含有する冷却液S1とを向流接触させることでコークス炉ガスG1を冷却する。
【0056】
吸収液S2の吸収能力は、コークス炉ガスG1の温度が低下するにつれて向上する傾向がある。このため、脱硫塔20の前段においてコークス炉ガスG1を冷却することで、コークス炉ガスG1の脱硫能力が向上する。予冷塔10の冷却液S1はタールを含有しているので、コークス炉ガスG1中のナフタリンが冷却により析出したとしても、析出したナフタリンはタールに吸収され、冷却液S1と共に押し流される。このため、予冷塔10内におけるナフタリンの蓄積が抑制され、予冷塔10がコークス炉ガスG1を冷却する能力が長期的に維持される。従って、コークス炉ガスG1の冷却により脱硫能力を向上させると共に、その向上効果を長期的に維持することができる。なお、冷却液S1がタールを含有することは必須ではなく、予冷塔10を備えることも必須ではない。
【0057】
混合槽40は、槽本体41と噴射管42とを有する。槽本体41は上記気液混合流体を収容する。噴射管42は、槽本体41内の下部に設けられ、吸収液S2及び酸素を含有する気体を受け入れて気液混合流体を槽本体41内に噴射する。噴射管42は、気液混合流体の噴射方向に並ぶ複数の管体42a〜42cを有し、エジェクタ―効果により周囲の流体を管体42a〜42c同士の間に吸引するように構成されると共に、気液混合流体の噴射により槽本体41内に旋回流を形成するように配置されている。
【0058】
このため、気液混合流体の噴射流により槽本体41内に旋回流が形成されるので、気液混合流体は槽本体41内を旋回しながら上昇する。これにより、吸収液S2が気液混合流体の流動性が得られることで、酸素を含有する気体と吸収液との攪拌混合が迅速かつ均一となり、効率的に酸化反応が進む。槽本体41内に噴射された気液混合流体の一部は、エジェクタ―効果により再度噴射管42内に吸引されるので、気液混合流体が槽本体41内を旋回しながら上昇する前段階において、酸素を含有する気体が気液混合流体中に十分に混入される。従って、吸収液S2の吸収能力を効率よく且つ確実に回復させることができる。なお、気液混合流体の噴射流を利用して気液混合流体を旋回させることは、混合槽40の構造の単純化にも寄与する。
【0059】
槽本体41は円筒状の側壁41aを有し、側壁41aの高さは側壁41aの内径の2倍以下であり、且つ1m以上である。
【0060】
槽本体41内に収容された気液混合流体の深さが小さ過ぎると、吸収液S2中の硫化物の酸化率が著しく低下する傾向がある。側壁41aの高さを大きくすれば、気液混合流体の深さも大きくなるので、吸収液S2中の硫化物の酸化率は向上するが、吸収液S2を流動させるための消費エネルギー(例えばポンプP2の消費エネルギー)も上昇する。更に側壁41aの高さを大きくして気液混合流体の深さを大きくし過ぎると、酸化率の向上が鈍化するため不経済となる。
【0061】
図7は、側壁41aの内径が2mである槽本体41内に収容された気液混合流体の深さと、酸素利用率との関係を示すグラフである。酸素利用率は、噴射管42に導入された酸素のうち、硫化物の酸化などのために吸収液S2中に吸収された酸素の割合である。酸素利用率が高いことは、硫化物の酸化率が高いことを意味する。図7に示されるように、槽本体41内に収容された気液混合流体の深さが1m未満になると、吸収液S2中の硫化物の酸化率が著しく低下する傾向がある。槽本体41内に収容された気液混合流体の深さが大きくなると、吸収液S2中の酸化物の酸化率は向上するが、気液混合流体の深さが4mを超えると酸化率の向上が鈍化する傾向がある。この結果から、次の事項が推定される。すなわち、側壁41aの高さが1m以上であれば、吸収液中の硫化物の酸化率を確保できる。側壁41aの高さが側壁41aの内径の2倍以下であれば、消費エネルギーに見合った酸化能力を得ることができる。従って、側壁41aの高さが側壁41aの内径の2倍以下であり、且つ1m以上であれば、高いエネルギー効率で酸化能力を確保できる。
【0062】
再生塔30は、脱気槽50を更に有する。脱気槽50は、混合槽40を囲むように設けられ、混合槽40から排出された気液混合流体を受け入れ、吸収液S2と気体とに分離して排出するように構成されている。このため、吸収液S2から気体が除去されるので、吸収液S2を圧送するポンプP2におけるキャビテーションの発生が抑制される。これにより、脱硫塔20と再生塔30との間において吸収液S2を安定して循環させることができる。従って、脱硫能力をより確実に維持できる。
【0063】
なお、再生塔30は、吸収液S2を旋回させながら上昇させるものであればどのようなものであってもよいので、脱気槽50は必須ではない。側壁41aの高さが側壁41aの内径の2倍以下であり、且つ1m以上であることも必須ではない。噴射管42が、エジェクタ―効果により周囲の流体を吸引するように構成されることも必須ではない。噴射管42が、吸収液S2の噴射により旋回流を形成するように配置されることも必須ではなく、旋回流発生用の他の構成が設けられていてもよい。旋回流発生用の他の構成としては、平面視において連通管43を側壁41aに対して傾斜させ、吸収液S2を接線方向に沿って導入する構成、混合槽40の底部から頂部に向かって螺旋状の板を配置した構成、又は旋回流発生用の回転羽根を備える構成等が挙げられる。
【0064】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…脱硫装置、10…予冷塔、20…脱硫塔、26…吸収層、30…再生塔、40…混合槽、41…槽本体、41a…側壁、42…噴射管、42a,42b,42c…管体、50…脱気槽、G1…コークス炉ガス、S1…冷却液、S2…吸収液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7