(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直径25mmのプローブを用いて測定された25℃のプローブタックが5g〜500gである樹脂シート(ただし、前記樹脂シートがポリイソブチレン樹脂を含む場合を除く)で電子デバイスを封止する工程を含み、
前記電子デバイスを封止する工程は、軟化させた前記樹脂シートで前記電子デバイスを覆うステップを含み、
前記樹脂シートは無機充填剤を含み、前記樹脂シート中の前記無機充填剤の含有量が60〜90体積%であり、
前記樹脂シートはエポキシ樹脂をさらに含み、前記エポキシ樹脂の軟化点が100℃以下である、
電子デバイスパッケージの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0020】
[実施形態1]
図1は、実施形態1の樹脂シート11の断面模式図である。なお、樹脂シート11の両面には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの支持体が設けられていてもよい。樹脂シート11からの剥離を容易に行うために、支持体には離型処理が施されていてもよい。
【0021】
樹脂シート11は熱硬化性であることが好ましい。
【0022】
樹脂シート11について、直径25mmのプローブを用いて測定された25℃のプローブタックが5g以上であり、20g以上が好ましい。5g以上であるので、樹脂シート11を封止箇所へ搭載した際に電子デバイスと密着し、その後のハンドリング時に位置ずれが生じず不良率の少ない成型が可能である。25℃のプローブタックは、500g以下である。500g以下であるので、樹脂シート11の搭載時に位置ずれした際、再度位置合わせするために剥がして再度搭載することが可能である。
なお、直径25mmのプローブを用いて測定された25℃のプローブタックは、実施例に記載の方法により測定できる。
【0023】
樹脂シート11の表面粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは200nm以下である。400nm以下であると、上記のタック性を容易に達成できる。表面粗さ(Ra)の下限は特に限定されないが、例えば、20nm以上である。
なお、表面粗さは、実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
樹脂シート11の25℃における引張貯蔵弾性率は、好ましくは10
3MPa以下である。10
3MPa以下であると、良好なタック性が得られる。25℃における引張貯蔵弾性率は、好ましくは10
−2MPa以上である。10
−2MPa以上であると、樹脂シート11と真空包装容器の内面との接触などによる樹脂シート11の変形を防止又は低減できる。
なお、25℃の引張貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0025】
樹脂シート11は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0027】
エポキシ樹脂の軟化点としては、100℃以下が好ましい。100℃以下であると、タック性を高められる。エポキシ樹脂の軟化点としては、80℃以下がより好ましい。一方、エポキシ樹脂の軟化点としては、30℃以上が好ましい。30℃以上であると、原材料の混合の際に取扱いが良好である。
軟化点は、DSC(示差走査熱量測定)により測定できる。具体的には、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製のQ2000)を用いて、測定温度−10℃〜300℃、昇温速度5℃/minの条件で得られたDSC曲線から軟化点を求めることができる。
【0028】
エポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は150〜250が好ましい。
【0029】
樹脂シート11は、フェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0030】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂などが用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が30〜110℃のものを用いることが好ましく、なかでも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0032】
フェノール樹脂の軟化点としては、100℃以下が好ましい。100℃以下であると、タック性を高められる。フェノール樹脂の軟化点としては、80℃以下がより好ましい。一方、フェノール樹脂の軟化点としては、30℃以上が好ましい。30℃以上であると、原材料の混合の際に取扱いが良好である。
【0033】
樹脂シート11中のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計含有量は、5重量%以上が好ましい。5重量%以上であると、電子デバイス、基板などに対する接着力が良好に得られる。樹脂シート11中のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計含有量は、20重量%以下が好ましい。20重量%以下であると、吸湿性を低く抑えることができる。
【0034】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0035】
樹脂シート11は、硬化促進剤を含むことが好ましい。
【0036】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11−Z)、2−ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1,2−ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z−CN)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS−PW)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;C11Z−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2E4MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA−OK)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ−PW)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ−PW)などのイミダゾール系硬化促進剤が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。
【0037】
なかでも、混練温度での硬化反応を抑えられるという理由からイミダゾール系硬化促進剤が好ましく、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。
【0038】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましい。
【0039】
樹脂シート11は、熱可塑性樹脂(エラストマー)を含むことが好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBTなどの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
樹脂シート11中の熱可塑性樹脂の含有量は、1重量%以上が好ましい。1重量%以上であると、柔軟性、可撓性を付与できる。樹脂シート11中の熱可塑性樹脂の含有量は、30重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。30重量%以下であると、電子デバイスなどに対して良好な接着力が得られる。
【0042】
樹脂シート11は、無機充填剤を含むことが好ましい。無機充填剤を配合することにより、熱膨張係数を小さくできる。
【0043】
無機充填剤としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカなど)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素などが挙げられる。なかでも、熱膨張係数を良好に低減できるという理由から、シリカ、アルミナが好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、流動性に優れるという理由から、溶融シリカが好ましく、球状溶融シリカがより好ましい。
【0044】
無機充填剤の平均粒子径は、好ましくは5μm以上である。5μm以上であると、樹脂シート11の可撓性、柔軟性を得易い。無機充填剤の平均粒子径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。50μm以下であると、無機充填剤を高充填率化し易い。
なお、平均粒子径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0045】
無機充填剤は、シランカップリング剤により処理(前処理)されたものが好ましい。これにより、樹脂との濡れ性を向上でき、無機充填剤の分散性を高めることができる。
【0046】
シランカップリング剤は、分子中に加水分解性基及び有機官能基を有する化合物である。
【0047】
加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基、アセトキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。なかでも、加水分解によって生じるアルコールなどの揮発成分を除去し易いという理由から、メトキシ基が好ましい。
【0048】
有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂と反応し易いという理由から、エポキシ基が好ましい。
【0049】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル基含有シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリル基含有シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリル基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド基含有シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド基含有シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0050】
シランカップリング剤により無機充填剤を処理する方法としては特に限定されず、溶媒中で無機充填剤とシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中で無機充填剤とシランカップリング剤を処理させる乾式法などが挙げられる。
【0051】
シランカップリング剤の処理量は特に限定されないが、未処理の無機充填剤100重量部に対して、シランカップリング剤を0.1〜1重量部処理することが好ましい。
【0052】
樹脂シート11中の無機充填剤の含有量は、好ましくは60体積%以上であり、より好ましくは74体積%以上である。60体積%以上であると、熱膨張係数を小さくでき、また吸湿性を低減できる。一方、無機充填剤の含有量は、好ましくは90体積%以下であり、より好ましくは85体積%以下である。90体積%以下であると、良好なタック性、柔軟性、流動性、接着性が得られる。
【0053】
無機充填剤の含有量は、「重量%」を単位としても説明できる。代表的にシリカの含有量について、「重量%」を単位として説明する。
シリカは通常、比重2.2g/cm
3であるので、シリカの含有量(重量%)の好適範囲は例えば以下のとおりである。
すなわち、樹脂シート11中のシリカの含有量は、74重量%以上が好ましく、84重量%以上がより好ましい。樹脂シート11中のシリカの含有量は、94重量%以下が好ましく、91重量%以下がより好ましい。
【0054】
アルミナは通常、比重3.9g/cm
3であるので、アルミナの含有量(重量%)の好適範囲は例えば以下のとおりである。
すなわち、樹脂シート11中のアルミナの含有量は、83重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。樹脂シート11中のアルミナの含有量は、97重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。
【0055】
樹脂シート11は、前記成分以外にも、封止樹脂の製造に一般に使用される配合剤、例えば、難燃剤成分、顔料、シランカップリング剤などを適宜含有してよい。
【0056】
難燃剤成分としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物などの各種金属水酸化物;ホスファゼン化合物などを用いることができる。なかでも、難燃性、硬化後の強度に優れるという理由から、ホスファゼン化合物が好ましい。
【0057】
顔料としては特に限定されず、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0058】
シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して、0.1〜1重量部が好ましい。
【0059】
樹脂シート11の製造方法は特に限定されないが、前記各成分(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填剤及び硬化促進剤など)を混練して得られる混練物をシート状に塑性加工する方法が好ましい。これにより、無機充填剤を高充填でき、熱膨張係数を低く設計できる。
【0060】
具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填剤及び硬化促進剤などをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機で溶融混練することにより混練物を調製し、得られた混練物をシート状に塑性加工する。混練条件として、温度の上限は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。温度の下限は、上述の各成分の軟化点以上であることが好ましく、例えば30℃以上、好ましくは50℃以上である。混練の時間は、好ましくは1〜30分である。また、混練は、減圧条件下(減圧雰囲気下)で行うことが好ましく、減圧条件下の圧力は、例えば、1×10
−4〜0.1kg/cm
2である。
【0061】
溶融混練後の混練物は、冷却することなく高温状態のままで塑性加工することが好ましい。塑性加工方法としては特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、スクリューダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。塑性加工温度としては上述の各成分の軟化点以上が好ましく、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。
【0062】
樹脂シート11の厚みは特に限定されないが、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上である。また、樹脂シート11の厚みは、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下である。上記範囲内であると、電子デバイスを良好に封止できる。
【0063】
なお、
図1では、樹脂シート11が単層である場合を示しているが、樹脂シート11はこれに限定されず、複層であってもよい。
【0064】
樹脂シート11は電子デバイスを封止するために使用される。なかでも、樹脂シート11は、真空包装容器内に配置された電子デバイスを封止するために好適に使用できる。例えば、樹脂シート11は、基板に実装された電子デバイスの上に樹脂シート11を配置する工程と、基板に実装された電子デバイス及び電子デバイスの上に配置された樹脂シート11を、真空包装容器に入れる工程と、真空包装容器内の電子デバイスを樹脂シート11で封止する工程とを含む電子デバイスパッケージの製造方法に特に好適に使用できる。なお、この方法は、国際公開WO2005/071731号、特許第5223657号公報に記載されている。
【0065】
電子デバイスとしては、センサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタなどの中空構造を有する電子デバイス(中空型電子デバイス);半導体チップ、IC(集積回路)、トランジスタなどの半導体素子;コンデンサ;抵抗などが挙げられる。なかでも、SAWフィルタに特に好適に使用できる。なお、中空構造とは、電子デバイスを基板に搭載した際に、電子デバイスと基板との間に形成される中空部をいう。基板としては特に限定されず、例えば、プリント配線基板、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)基板(低温同時焼成セラミック基板)、セラミック基板、シリコン基板、金属基板などが挙げられる。
【0066】
真空包装容器としては特に限定されず、例えば、ガスバリア性を備える袋などを用いることができる。また、真空包装容器としては、耐熱性を備えるものが好ましく、具体的には、熱硬化時の温度に耐える耐熱性を有するものがよい。また、真空包装容器としては、柔軟性、ヒートシール性を備えるものが好ましい。
【0067】
真空包装容器としては、具体的には、ポリエステル系フィルムを外層とし、ヒートシール性を備えたポリエチレン系フィルムを内層(シーラント層)とした多層構造のものなどが挙げられる。内層としては、ポリプロピレン系フィルムなども好適に使用できる。外層としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルムなども好適に使用できる。なお、外層と内層の間に、中間層を有していてもよい。中間層としては、ガスバリア性の高い層が好ましく、例えばアルミ層などが好ましい。
【0068】
樹脂シート11で電子デバイスを封止する方法としては、例えば、樹脂シート11に電子デバイスを埋め込む方法、軟化させた樹脂シート11で電子デバイスを覆う方法が代表的である。
【0069】
樹脂シート11は、電子デバイス及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能できる。
【0070】
[電子デバイスパッケージの製造方法]
【0071】
電子デバイスパッケージの製造方法としては、例えば、真空包装後に電子デバイスを封止する第1の製造方法、真空包装前に電子デバイスを封止する第2の製造方法などがある。
【0072】
以下、第1の製造方法及び第2の製造方法について説明する。なお、代表例として、SAWフィルタパッケージの製造例を説明する。
【0073】
[第1の製造方法]
(SAWフィルタ搭載基板準備工程)
SAWフィルタ搭載基板準備工程では、複数のSAWフィルタ13が搭載されたLTCC基板12を準備する(
図2参照)。SAWフィルタ13は、所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することにより形成できる。SAWフィルタ13のLTCC基板12への搭載には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。SAWフィルタ13とLTCC基板12とはバンプなどの突起電極13aを介して電気的に接続されている。また、SAWフィルタ13とLTCC基板12との間は、SAWフィルタ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部14を維持するようになっている。SAWフィルタ13とLTCC基板12との間の距離は適宜設定でき、一般的には15〜50μm程度である。
【0074】
(配置工程)
LTCC基板12に実装されたSAWフィルタ13上に樹脂シート11を配置する(
図3参照)。なお、樹脂シート11のSAWフィルタ13と接触しない面には離型シート(例えば、上述の支持体)が設けられていてもよい。この様子は、国際公開WO2005/071731号の
図5に示されている。
【0075】
(挿入工程)
次いで、LTCC基板12に実装されたSAWフィルタ13及びSAWフィルタ13上の樹脂シート11を、真空包装容器21の中に入れる(
図4参照)。
【0076】
(真空包装工程)
次いで、真空包装容器21の内部を減圧(例えば500Pa以下)した後、真空包装容器21を密封する(
図5参照)。
【0077】
具体的には、LTCC基板12、SAWフィルタ13及び樹脂シート11が入っている真空包装容器21を、密閉容器内に置き、次いで、真空ポンプにより密閉容器内を脱気して、密閉容器内を減圧する。その後、真空包装容器21の開口部の近傍を両側から熱融着用ヒーター(ヒートシーラー)により融着して、真空包装容器21を密封する(
図5参照)。なお、この様子は、国際公開WO2005/071731号の
図3に示されている。真空包装容器21の開口部はクリップなどで閉じることもできる。
【0078】
密封状態の真空包装容器21を、密閉容器から大気圧中に取り出すと、真空包装容器21の内外の圧力差により、真空包装容器21がLTCC基板12及び樹脂シート11と密着した状態となる。
【0079】
なお、真空包装容器21の内部を減圧する方法として、真空ポンプに接続された金属パイプを真空包装容器21の開口部内に気密的に差し込み、真空包装容器21内を脱気する方法なども挙げられる。
【0080】
(加熱工程)
加熱工程では、真空包装容器21ごと樹脂シート11を加熱して軟化させる。加熱温度は、通常、樹脂シート11の硬化温度未満であり、例えば50℃〜140℃である。
【0081】
これよって、LTCC基板12上に実装されたSAWフィルタ13間に、軟化した樹脂シート11が浸入する。その結果、SAWフィルタ13が、樹脂シート11によって覆われる。
【0082】
加熱工程では、真空包装容器21の内部より高い圧力下で(例えば大気圧下で)真空包装容器21を加熱できる。これにより、真空包装容器21の内外の圧力差を利用して、LTCC基板12上に実装されたSAWフィルタ13間に、軟化した樹脂シート11を浸入させることができる。
【0083】
なお、国際公開WO2005/071731号の
図8、9及び特許第5223657号公報の
図8などに示されるように、加熱・加圧ローラー又はプレス機などによって、真空包装容器21を加熱及び加圧して、LTCC基板12上に実装されたSAWフィルタ13間に、軟化した樹脂シート11を浸入させてもよい。
【0084】
(熱硬化工程)
次いで、真空包装容器21ごと樹脂シート11を加熱して、樹脂シート11を熱硬化する。
【0085】
具体的な方法としては、例えば、密封された真空包装容器21を密閉容器に入れた後、密閉容器内に充填された圧力媒体によって真空包装容器21に圧力を加えた状態で、真空包装容器21を加熱して、樹脂シート11を熱硬化する方法がある。この方法では、圧力媒体を介して、真空包装容器21を加圧及び加熱できるので、中空部14の形状や寸法の管理が容易である。圧力媒体としては、空気、水、油などが挙げられる。なお、この様子は、国際公開WO2005/071731号の
図4に示されている。
【0086】
加熱温度は、例えば60℃〜150℃である。
【0087】
他の具体的な方法として、例えば、プレス機によって真空包装容器21を熱プレスして、樹脂シート11を熱硬化する方法、真空包装容器21の内部より高い圧力下で(例えば大気圧下で)真空包装容器21を加熱して、樹脂シート11を熱硬化する方法なども好適である。この様子は、特許第5223657号公報の
図8、
図9に示されている。
【0088】
(分割工程)
その後、樹脂シート11によって封止されたSAWフィルタ13を真空包装容器21から取り出し、LTCC基板12をSAWフィルタ13毎に分割する(
図6及び
図7参照)。これにより、SAWフィルタパッケージ16を得ることができる。分割方法としては、例えばダイシング、カット・ブレイクなどが挙げられる。
【0089】
上記例の方法は、減圧下でSAWフィルタを封止できるためボイドの発生を低減できる、簡素な減圧装置により実施できるなどのメリットがある。
【0090】
なお、上記の例で、SAWフィルタ13に代えて半導体チップを使用する場合は、半導体チップと基板との間にアンダーフィル材を充填してもよい。なお、この様子は、国際公開WO2005/071731号の
図7に示されている。
【0091】
上記の例では、加熱工程と、熱硬化工程を2段階で行う方法を示しているが、これらを併合して1つの工程で行う方法も好適である。
【0092】
以上のとおり、第1の製造方法について、例えば、基板に実装された電子デバイスの上に樹脂シート11を配置する工程と、基板に実装された電子デバイス及び電子デバイスの上に配置された樹脂シート11を、真空包装容器に入れる工程と、真空包装容器に入れられた基板、電子デバイス及び樹脂シート11を真空包装する工程と、真空包装容器内の電子デバイスを樹脂シート11で封止する工程とを含む方法により、電子デバイスパッケージを製造できる。
【0093】
なお、真空包装後の真空包装容器内の真空度は、例えば500Pa以下である。
【0094】
通常、第1の製造方法は、電子デバイスを樹脂シート11で封止することで得られた封止体の樹脂シート11に由来する部分を硬化させる工程、封止体の樹脂シート11に由来する部分を硬化させることで得られた硬化体を真空包装容器から取り出す工程と、硬化体をダイシングする工程とをさらに含む。
【0095】
第1の製造方法において、電子デバイスを樹脂シート11で封止する工程では、例えば、基板に実装された電子デバイス及び電子デバイスの上に配置された樹脂シート11を真空包装容器ごと加熱することにより樹脂シート11を軟化させ、軟化させた樹脂シート11で電子デバイスを覆うことにより、真空包装容器内の電子デバイスを樹脂シート11で封止する。この工程では、真空包装容器の内部より高い圧力下で(例えば大気圧下で)、樹脂シート11などを真空包装容器ごと加熱することが好ましい。
【0096】
封止体の樹脂シート11に由来する部分を硬化させる工程では、例えば、封止体を真空包装容器ごと加熱することにより封止体の樹脂シート11に由来する部分を硬化させる。この工程では、真空包装容器の内部より高い圧力下で(例えば大気圧下で)、封止体を真空包装容器ごと加熱することが好ましい。
【0097】
[第2の製造方法]
第1の製造方法では、真空包装容器21を密封した後、加熱する方法を示しているが、第2の製造方法では、減圧した密閉容器内で、LTCC基板12、SAWフィルタ13及び樹脂シート11が入っている真空包装容器21を樹脂シート11の硬化温度未満で加熱し、その後真空包装容器21を密封する。これにより、樹脂シート11中に溶剤が存在する場合、溶剤を揮発させることができる。この様子は、特許第5223657号公報の
図3に示されている。
【0098】
以上のとおり、第2の製造方法について、例えば、基板に実装された電子デバイスの上に樹脂シート11を配置する工程と、基板に実装された電子デバイス及び電子デバイスの上に配置された樹脂シート11を、真空包装容器に入れる工程と、真空包装容器内の電子デバイスを樹脂シート11で封止する工程と、電子デバイスを樹脂シート11で封止することで得られた封止体を真空包装する工程とを含む方法により、電子デバイスパッケージを好適に製造できる。
【0099】
第2の製造方法において、電子デバイスを樹脂シート11で封止する工程では、例えば、基板に実装された電子デバイス及び電子デバイスの上に配置された樹脂シート11を真空包装容器ごと減圧雰囲気下で加熱することにより樹脂シート11を軟化させ、軟化させた樹脂シート11で電子デバイスを覆うことにより、真空包装容器内の電子デバイスを樹脂シート11で封止する。
【0100】
通常、第2の製造方法は、真空包装された封止体の樹脂シート11に由来する部分を硬化させる工程と、封止体の樹脂シート11に由来する部分を硬化させることで得られた硬化体を真空包装容器から取り出す工程と、硬化体をダイシングする工程とをさらに含む。
【0101】
以上のとおり、第1の製造方法及び第2の製造方法についてまとめると、例えば、基板に実装された電子デバイスの上に樹脂シート11を配置する工程と、基板に実装された電子デバイス及び電子デバイスの上に配置された樹脂シート11を、真空包装容器に入れる工程と、真空包装容器内の電子デバイスを樹脂シート11で封止する工程とを含む方法により、電子デバイスパッケージを好適に製造できる。
【0102】
上記の方法は、樹脂シート11と袋の内面とが接触し易く、樹脂シートがずれやすいが、樹脂シート11は上記のタック性を満足するため、上記の方法に特に好適に使用できる。
【実施例】
【0103】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量などは、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0104】
実施例で使用した成分について説明する。
エポキシ樹脂:新日鐵化学(株)製のYSLV−80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)
フェノール樹脂A:明和化成社製のMEH−7851−SS(ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂、水酸基当量203g/eq.軟化点67℃、)
フェノール樹脂B:昭和高分子社製のND564(フェノールノボラック樹脂、水酸基当量107g/eq.軟化点60℃)
熱可塑性樹脂:三菱レイヨン社製メタブレンJ−5800(MBS樹脂、一次粒子径0.5μm)
無機充填剤:電気化学工業社製のFB−9454FC(溶融球状シリカ、平均粒子径20μm)
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)
【0105】
実施例で使用したカバーフィルムについて説明する。
カバーフィルム1:三菱樹脂社製のMRF(厚み50μm、表面粗さ50nm)
カバーフィルム2:帝人ヂュポンフィルム社製のU4(厚み50μm、表面粗さ400nm)
カバーフィルム3:三井化学社製のルミラー(サンドマット処理されたフィルム、厚み50μm、表面粗さ200nm)
【0106】
[実施例及び比較例]
表1に記載の配合比に従い、各成分を配合し、ロール混練機により60〜120℃、10分間、減圧条件下(0.01kg/cm
2)で溶融混練し、混練物を調製した。次いで、得られた混練物を2枚のカバーフィルムの間に配置し、平板プレス法により混練物をシート状に形成して、厚さ200μmの樹脂シートを作製した。
【0107】
[評価]
得られた樹脂シートを用いて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(25℃のプローブタック)
粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製のRSA−3)に25mmφ(直径25mm)のブレートを2枚装着した。2枚のプレートのうち下側のプレートに樹脂シートを両面テープで固定した後、25℃雰囲気下において上側のプレート(プローブ)を下降させることにより100gの荷重で上側のプレートを樹脂シートに押し当てた。その後、上側のプレートを上昇させることにより上側のプレートを樹脂シートから引き剥がすために必要な荷重を測定した。
【0109】
(表面粗さ(Ra))
樹脂シートの表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601に基づき、Veeco社製の非接触三次元粗さ測定装置(NT3300)を用いて測定した。測定条件は、50倍とし、測定値は、測定データにMedian filterをかけて求めた。測定は、測定箇所を変更しながら5回行い、その平均値を表面粗さ(Ra)とした。
【0110】
(25℃の引張貯蔵弾性率)
樹脂シートから、短冊状のサンプル(縦30mm×横10mm×厚み200μm)を切り出した。このサンプルについて、動的粘弾性測定装置(レオメトリクスサイエンティフィク社製のRSAIII)を用いて、引張測定モードにてチャック間距離20mm、昇温速度10℃/分、0〜50℃の引張貯蔵弾性率を測定した。測定結果から、25℃の引張貯蔵弾性率を求めた。
【0111】
(位置ずれ)
アルミナ基板(サイズ70mm角、厚み0.25mm)上に樹脂シート(サイズ65mm角、厚み200μm)を載置した後、アルミナ基板及び樹脂シートを真空包装容器(アルミ・レトルト用三方袋、白色タイプ、HA−1013H、サイズ100mm×130mm)に入れ、90℃、1torrの条件で真空包装した。アルミナ基板及び樹脂シートを真空包装容器ごと、150℃、1時間で加熱して、樹脂シートを硬化させた。真空包装容器を室温まで放冷した後、真空包装容器からアルミナ基板及び樹脂シートの硬化物からなる積層体を取り出し、樹脂シートの硬化物が当初の位置からずれているか否かを確認した。30個の積層体について位置ずれを確認し、位置ずれが生じた積層体の個数をカウントした。
((位置ずれが生じた積層体の個数/積層体30個)×100)で表される割合が、10%以下の場合を○と判定し、10%を超える場合を×と判定した。
【0112】
(ハンドリング性)
カバーフィルムを外した樹脂シートを実装基板に搭載する際に、指又はチャックに樹脂シートが密着することにより元のシート形状を保てない場合を「×」と判定とした。一方、元のシート形状を保てる場合を「○」と判定した。
【0113】
【表1】