特許第6234418号(P6234418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234418
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】スクライビングホイール
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-211440(P2015-211440)
(22)【出願日】2015年10月28日
(62)【分割の表示】特願2012-75718(P2012-75718)の分割
【原出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2016-13707(P2016-13707A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】留井 直子
(72)【発明者】
【氏名】北市 充
(72)【発明者】
【氏名】福西 利夫
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−011475(JP,A)
【文献】 特開2011−213589(JP,A)
【文献】 特開2008−272863(JP,A)
【文献】 特開平05−254865(JP,A)
【文献】 特開平04−224128(JP,A)
【文献】 特開2007−307673(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19753092(DE,A1)
【文献】 特開2011−126754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
B28D 1/24
C03B 33/00−33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周部に沿って稜線が形成され、前記稜線と前記稜線の両側の傾斜面からなる刃先を有するスクライビングホイールであって、
円板の円周に沿って刃先部分が形成されたスクライビングホイール基材と、
前記スクライビングホイール基材の刃先表面に形成されたダイヤモンド膜と、
前記ダイヤモンド膜で形成された稜線の両側の領域に形成された帯状の第1の研磨面と、
前記第1の研磨面の先端の稜線の両側の領域に形成された前記第1の研磨面の幅よりも幅の狭い帯状の第2の研磨面と、を有し、
前記第1の研磨面が交差した頂角は前記ダイヤモンド膜の傾斜面が交差した頂角よりも大きく、前記第2の研磨面が交差した頂角は前記第1の研磨面が交差した頂角よりも大きく、
前記第2の研磨面の算術平均粗さRaが前記第1の研磨面の算術平均粗さRaよりも小さく、
前記第1の研磨面の幅の最小値が10μm以上であり、前記第2の研磨面の算術平均粗さRaが0.015μm以下であり、第2の研磨面で形成された稜線の算術平均粗さRaが0.015μm以下であるスクライビングホイール。
【請求項2】
前記ダイヤモンド膜の傾斜面が交差した頂角が90〜140°である請求項1に記載のスクライビングホイール。
【請求項3】
前記第1の研磨面の幅の最小値が20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のスクライビングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックス基板やガラス基板等の脆性材料基板をスクライブするためのスクライビングホイーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスクライビングホイールは、超硬合金製又は焼結ダイヤモンド製の円板に対して円周部を両側より互いに斜めに削り込み、円周面にV字形の刃先を形成している。スクライビングホイールは中心に貫通孔を有しており、スクライビング装置のスクライブヘッド等に回転自在に軸着して用いられる。
【0003】
従来スクライビングホイールの円周面にV字形の刃先を形成するためには、まず円板101の中心に貫通孔102を形成する。図1(a)はこの円板101の側面図を示している。次いで図1(b)に側面図、図1(c)に正面図を示すように、円周部分を両側よりV字状に研磨して刃先部103とする。場合によっては刃先部103を更に細かい粒度の研磨材によって仕上げ研磨して、スクライビングホイール100を構成している。
【0004】
特許文献1にはガラス基板を切断するためのガラス切断用刃に関し、その寿命を長くするために、V字形状の刃先表面をダイヤモンドで被膜したガラス切断用刃が開示されている。このガラス切断用刃は、ダイヤモンドと相性の良いセラミックで形成された刃先表面にダイヤモンド膜を被覆し、このダイヤモンド膜を表面研磨処理して整形される。このようなガラス切断用刃を用いることにより、刃の寿命が長く、また切断面が平滑となるように硬高度ガラスを切断できると示されている。
【0005】
また、特許文献2には、光ファイバやガラス基板等を切断する際に滑りや切断品位の悪化を防止するため、超硬合金等の基材にダイヤモンド層を被覆したダイヤモンド被覆切断刃が開示されている。この文献ではダイヤモンド層の表面は被覆後に平滑化処理をしないことを特徴としている。
【0006】
特許文献3には、工具母材の表面にダイヤモンド被膜がコーティングされた刃部を有するダイヤモンド被覆工具において、イオンビームを照射してダイヤモンド被膜を研磨する工具が開示されている。この文献には、刃部の先端部分を研磨して元の刃先角よりも大きな刃先角で、且つ刃先幅10〜100nmの範囲を先端研磨部とすることで、所定の刃先強度を確保し優れた切れ味が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−224128号公報
【特許文献2】特開2011−126754号公報
【特許文献3】特開2012−11475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されているガラス切断用刃は基材をセラミックとし断面形状をV字形としてダイヤモンド膜を被覆し、更に研磨した構成としている。しかし1段階のみの研磨であり、研磨後の面粗さを十分に小さくすることができなかった。特許文献2に記載のダイヤモンド被覆切断刃においても、その表面に平滑化処理がされていないことから、脆性材料基板をスクライブすると基板の端面精度が研磨を行わない場合に比べて悪化し、このために端面強度が劣るという問題点があった。
【0009】
ガラス基板等の脆性材料基板を分断する際には、スクライビングホイールを用いてスクライブした後スクライブラインに沿って分断するが、分断した脆性材料基板端面には傷が残るため圧力が加わったときに端面から破壊されることが多い。スクライビングホイールの円周面に形成されたV字形の刃先に凹凸があると分断したときの脆性材料基板端面に傷が残るため、脆性材料基板の機械的な強度が低下する。また、セラミックス等の硬度が高い脆性材料基板をスクライブする場合には、刃先に凹凸があるとスクライブ時に刃先にカケが生じたり、凹凸の部分からダイヤモンド膜が剥離したりことがある。そのため、スクライビングホイールのV字形の刃先の稜線にはできるだけ凹凸が少ない方が好ましい。
【0010】
また、特許文献3に記載のスクライビングホイールはイオンビームの照射により刃先部を研磨するようにしているが、スクライビングホイールの刃先斜面部は十分に研磨されておらず、比較的粗さが粗いままとなっている。このため、このスクライビングホイールを用いて脆性材料基板をスクライブし分断したと基板の端面強度が劣るというという問題点があった。又イオンビームを照射しているため、稜線ラインを境として刃先の両側の斜面の粗さが異なってしまったり、稜線を側面視で直線状にすることが難しいという問題点もあった。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、ダイヤモンド膜を被覆したスクライビングホイールを用いて脆性材料基板をスクライブし分断したときに、分断した基板の端面精度が高く端面強度を大きくすることができるとともに、ダイヤモンド膜の欠けや剥離を防止することができ、スクライビングホイールの長寿命化を図ることができるスクライビングホイール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明のスクライビングホイールは、円周部に沿って稜線が形成され、前記稜線と前記稜線の両側の傾斜面からなる刃先を有するスクライビングホイールであって、円板の円周に沿って刃先部分が形成されたスクライビングホイール基材と、前記スクライビングホイール基材の刃先表面に形成されたダイヤモンド膜と、前記ダイヤモンド膜で形成された稜線の両側の領域に形成された帯状の第1の研磨面と、前記第1の研磨面の先端の稜線の両側の領域に形成された前記第1の研磨面の幅よりも幅の狭い帯状の第2の研磨面と、を有し、前記第1の研磨面が交差した頂角は前記ダイヤモンド膜の傾斜面が交差した頂角よりも大きく、前記第2の研磨面が交差した頂角は前記第1の研磨面が交差した頂角よりも大きく、前記第2の研磨面の算術平均粗さRaが前記第1の研磨面の算術平均粗さRaよりも小さく、前記第1の研磨面の幅の最小値が10μm以上とされたものであり、前記第2の研磨面の算術平均粗さRaが0.015μm以下であり、第2の研磨面で形成された稜線の算術平均粗さRaが0.015μm以下である。
【0013】
ここで、前記ダイヤモンド膜の傾斜面が交差した頂角が90〜140°であるものでもよい。
【0014】
ここで、前記第1の研磨面の幅の最小値が20μm以下であることを特徴とするものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、スクライビングホイールの刃先をV字形に研磨すると共に、研磨面にダイヤモンド膜を形成し、その先端部分のみを粗研磨し、その後に仕上げ研磨している。従って刃先として必要な稜線部分の凹凸を少なくすることができる。このためスクライビングホイールを用いて脆性材料基板を分断したときに端面精度が高く端面強度を向上させることができる、という優れた効果が得られる。このような特徴は薄い脆性材料基板をスクライブし、切断するときに特に有効となる。又ダイヤモンド膜を用いているため硬度の高い脆性材料基板をスクライブする場合にもスクライビングホイールの磨耗が少なく、稜線部分の凹凸が少ないことにより、スクライブしたときに膜の稜線部分のカケや膜の剥離が起こりにくいため、スクライビングホイールの寿命を長くすることができる。このような特徴は硬質の脆性材料基板をスクライブするときに特に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は従来例によるスクライビングホイールとその製造過程を示す側面図及び正面図である。
図2図2は本発明の実施の形態によるスクライビングホイールの正面図及び側面図である。
図3図3は本実施の形態によるスクライビングホイールの製造過程を示す側面図である。
図4A図4Aは本実施の形態によるスクライビングホイールの基材上にダイヤモンド膜を生成した状態を示す先端部分の拡大断面図である。
図4B図4Bは粗研磨を行ったスクライビングホイールの先端部分を示す拡大断面図である。
図4C図4Cは仕上げ研磨を行ったスクライビングホイールの先端部分を示す拡大断面図である。
図4D図4Dは他の例による仕上げ研磨を行ったスクライビングホイールの先端部分を示す拡大断面図である。
図5A図5Aは本実施の形態の変形例による刃先の研磨前の稜線部分の拡大断面図である。
図5B図5Bは本実施の形態の変形例による刃先の研磨後の稜線部分の拡大断面図である。
図6A図6Aは本発明の実施例1,4によるスクライビングホイールの研磨前後の算術平均粗さを示す図である。
図6B図6Bは本発明の実施例2,5によるスクライビングホイールの研磨前後の算術平均粗さを示す図である。
図6C図6Cは本発明の実施例3,6によるスクライビングホイールの研磨前後の算術平均粗さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2(a)は本発明の実施の形態によるスクライビングホイールの正面図、図2(b)はその側面図である。又図3(a)〜(d)はこの実施の形態のスクライビングホイールの製造過程を示す側面図である。スクライビングホイール10を製造する際には、例えば、超硬合金、又はセラミック製のスクライビングホイール基材となる円板11の中央にまず図3(b)に示すように軸穴となる貫通孔12を形成する。
【0018】
次にこの貫通孔12にモータ等のシャフトを連通して貫通孔12の中心軸を回転軸12aとして回転させつつ、円板11の全円周を両側より研磨して図3(b)に示すように傾斜面と稜線を有する垂直断面V字形に形成し、その斜面を研磨面13とする。このときの頂角は好ましくは80°〜150°であり、より好ましくは90°〜140°である。80°以下であると稜線先端が加工時に破損しやすく、150°以上であると刃先としての実用性がなくなる傾向にある。
【0019】
次に略V字形の研磨面13にダイヤモンド薄膜を形成する。まず図4Aの刃先の稜線部分の拡大断面図を示すように、ダイヤモンド膜の付着が容易になるように略V字形の研磨面13をあらかじめ粗面にしておく。次にサブミクロン以下の粒径の核となるダイヤモンドを斜面部分に形成した後、化学気相反応によってダイヤモンドの核を成長させ、膜厚が例えば10〜30μmのダイヤモンド膜14を形成する。このようなダイヤモンド膜の形成は1回で行って単層のダイヤモンド膜としてもよく、又多数回繰り返して行って多層のダイヤモンド膜としてもよい。ここで、ダイヤモンド膜はスクライビングホイール基材の傾斜面及び稜線に略均一に形成されるため、ダイヤモンド膜の頂角はスクライビングホイール基材の頂角と略等しくなる。このダイヤモンド膜の頂角を第1の頂角α1とする。頂角α1は好ましくは80°〜150°であり、より好ましくは90°〜140°である。80°以下であると稜線先端が加工時に破損しやすく、150°以上であると刃先としての実用性がなくなる傾向にある。
【0020】
次にダイヤモンド膜14に対して粗研磨を行う。粗研磨では、例えば粒度8000番又はそれ以下の番号の研磨材を用いる。8000番より大きい研磨材の場合は、研磨材の粒径が細かすぎるためダイヤモンド膜14に対して必要な加工度が得られない。この工程では稜線を中心に含む帯状の部分についてのみ第2の頂角α2(α2>α1)となるように研磨を行う。図4Bはこの先端部分を示す拡大図である。こうして形成した研磨面を第1の研磨面15とする。ここで頂角α2はα1に対してθ1だけ大きな値となるように研磨する。θ1は0より大きな値、例えば5°となるようにする。図4Bの幅w1は第1の研磨面15の幅を示しており、幅w1の最小値は例えば10〜20μmとする。
【0021】
次に図4Cに示すように研磨面15の稜線を中央に含むより狭い幅w2(w2<w1)の帯状の部分についてのみ仕上げ研磨を行う。仕上げ研磨では粗研磨よりも細かい粒度の微粉の研磨材を用いて研磨する。そして研磨した後の稜線から成る円が含まれる面を回転軸12aに対し垂直となるように、また頂角が所望の第3の頂角α3(α3>α2)となるように研磨する。こうして形成した仕上げによる研磨面を第2の研磨面16とする。ここで研磨材の粒度は好ましくは粒度9000番以上であり、より好ましくは10000番以上であり、さらに好ましくは15000番以上である。仕上げ研磨では粗研磨よりも細かい粒度の微粉の研磨材を用いて研磨するため、第2の研磨面の算術平均粗さは第1の研磨面の算術平均粗さよりも小さくなる。仕上げ研磨工程では研磨後の刃先表面及び稜線の算術平均粗さRaが0.03μm以下、好ましくは0.015μm以下となるまで研磨する。研磨材の粒度が9000番より小さければ、研磨後の刃先表面及び稜線の算術平均粗さRaを0.03μm以下にすることが難しい。このためスクライブ時に膜のカケや剥離が生じやすく、また分断した脆性材料基板端面には傷が残りやすい傾向がある。ここで頂角α3はα2に対してθ2だけ大きな値となるように研磨する。θ2は0より大きな値、例えば5°となるようにする。この仕上げ研磨によりダイヤモンド膜の稜線から成る円を含む面がスクライビングホイール基材の中心軸に垂直となるようにする。尚最終の頂角α3が大きいものは高いスクライブ荷重で使用するのに適しており、頂角α3が小さいものは低いスクライブ荷重で使用するのに適している。
【0022】
スクライビングホイールは、砥石などの研磨材によって研磨される。スクライビングホイールの刃先に形成されたダイヤモンド膜の一方の傾斜面を砥石によって粗研磨又は仕上げ研磨を行う。砥石によって加工することにより、傾斜面をスクライビングホイールの全周にわたって同一の角度で研磨することが容易となる。一方の面の粗研磨又は仕上研磨を終えると、他方の面についても同様に研磨する。このように、特に砥石を用いた研磨によれば、頂角α2,α3を所望の値に認定したり、スクライビングホイールの稜線を側面視で直線にしたりすることが容易となる。さらに、確実に所望の幅(w1又はw2)の領域を研磨することが容易にできる。
【0023】
このように刃先を2段のV字状とすることでスクライビングホイールとして必要な刃先のダイヤモンドの先端部分のみ仕上げ研磨とし、加工面積を減らすことで加工時間を短縮しつつ、刃先の稜線の凹凸を少なくすることができる。尚この実施の形態では、w2>w1とし、図4Cに示すように仕上げ研磨後には第2の研磨面16の両側に第1の研磨面15が残るものとしているが、図4Dに示すように第1の研磨面15を第2の研磨面16で完全に置き換えるように仕上げ研磨してもよい。この場合には幅w3はw1以上(好ましくはW3=w1)となる。
【0024】
このように研磨することによって従来の焼結ダイヤモンドによるスクライビングホイールに比べ、脆性材料基板に接する部分の全てがダイヤモンドとなるため、スクライビングホイールの耐摩耗性を向上させることができる。又脆性材料基板に接する部分の全てがダイヤモンド膜となるためスクライブに寄与する刃先部分及び稜線の粗さを細かくすることができる。更にイオンビームによる研磨とは異なり、稜線の両側を同一の条件で研磨することができるため、研磨した両側の研磨面の粗さは同等とすることができ、また稜線を側面視で直線状にすることが容易である。従ってこのスクライビングホイールを用いて脆性材料基板、例えばガラス基板やセラミックス基板をスクライブし、分断すると、脆性材料基板の切断面の端面精度が向上し、これに伴い端面強度も向上させることができるという効果が得られる。更に刃先及び稜線の粗さを細かくすることにより、硬度の高い基板をスクライブする場合においてもダイヤモンド膜が剥離し難くなるという効果が得られる。そのため本発明のスクライビングホイールはセラミックス基板をスクライブするのに好適である。
【0025】
尚ここで示した研磨材の粒度は一例であり、この粒度に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0026】
次に本実施の形態の変形例について説明する。この変形例では図5Aに刃先部の先端部分の拡大図を示すように、研磨面13を形成した後、さらに稜線をスクライビングホイールの回転軸12aと平行に研磨して、スクライビングホイールの回転軸12aに平行となるように基材の稜線部分に断面が平坦な円周面20を設けておく。円周面20の幅は例えば2〜10μm程である。そしてこの後本実施の形態と同様に、円周面20を有する研磨面13にCVD法によってダイヤモンド膜14のコーティングを行う。ここで、第1の頂角α1は、ダイヤモンド膜14の傾斜面の延長線がなす角度である。このコーティング後に図5Bに示すように円周部分を研磨して、第1の研磨面、第2の研磨面及び稜線を形成する。こうすれば本実施の形態と比較して稜線部分のダイヤモンド膜の厚さを厚くすることができ、スクライビングホイールの耐摩耗性、耐剥離性を向上させることができる。
【実施例】
【0027】
次に本発明の実施例によるスクライビングホイールの研磨前の状態と研磨後の状態について説明する。この実施例はいずれも外径2mmの超硬合金のスクライビングホイール基材に対し、実施例1,2,3は粒径が5μm程度のダイヤモンド膜、実施例4,5,6は粒径が0.5μm程度のダイヤモンド膜を形成したものである。実施例1,4はいずれも研磨前の刃先の頂角α1が110°であり、粗研磨では8000番の研磨材を用いて粗研磨終了後に頂角α2が115°となるように研磨し、仕上げ研磨では15000番の研磨材を用いて仕上げ研磨の終了後に頂角α3が120°となるように研磨したものである。研磨後のダイヤモンド膜14の稜線付近の最も薄い部分の厚さは例えば20μmとする。この2つの例について、稜線部分、及びそこから一定距離離れた稜線に平行なライン上の傾斜面における算術平均粗さRaは図6Aに示すものであった。
【0028】
実施例2,5はいずれも研磨前の刃先の頂角α1が125°であり、8000番の研磨材を用いて粗研磨後に頂角α2が130°、15000番の研磨材を用いて仕上げ研磨後に頂角α3が135°となるように研磨したものである。この2つの例について、稜線部分、及びそこから一定距離離れた稜線に平行なライン上の傾斜面における算術平均粗さRaは図6Bに示すものであった。
【0029】
又実施例3,6はいずれも研磨前の刃先の頂角α1が140°であり、8000番の研磨材を用いて頂角α2が粗研磨後に145°、15000番の研磨材を用いて仕上げ研磨後に頂角α3が150°となるように研磨したものである。この2つの例について、稜線部分、及びそこから一定距離離れた稜線に平行なライン上の傾斜面における算術平均粗さRaは図6Cに示すものであった。
【0030】
実施例1〜6は、いずれも仕上げ研磨時には表面が欠けることなく研磨加工が可能であった。いずれの実施例も仕上げ研磨後の研磨面の算術平均粗さRaが0.022μm以下であり、実施例1における傾斜面の値を除いて0.015μm以下であった。実施例4〜6は実施例1〜3よりも算術平均粗さが小さくなる。これは実施例1〜3の場合粒径が大きいため、研磨前の膜表面の算術平均粗さも大きくなってしまうからであると考えられる。しかし、この場合も仕上げ研磨を行うことにより、仕上研磨後の算術平均粗さRaを十分低くすることができるため、このスクライビングホイールを用いてスクライブ後に切断したときに、脆性材料基板の端面精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のスクライビングホイールは、脆性材料基板をスクライブするスクライブ装置に用いることができ、特に薄い脆性材料基板をスクライブするスクライブ装置に有効である。
【符号の説明】
【0032】
10 スクライビングホイール
11 円板
12 貫通孔
12a 回転軸
13 研磨面
14 ダイヤモンド膜
15 第1の研磨面
16 第2の研磨面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C