特許第6234427号(P6234427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234427有機化合物、光変調組成物、およびそれを用いる光変調デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234427
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】有機化合物、光変調組成物、およびそれを用いる光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/43 20060101AFI20171113BHJP
   C07C 233/62 20060101ALI20171113BHJP
   C07D 209/48 20060101ALI20171113BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20171113BHJP
   G02F 1/15 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C07C233/43CSP
   C07C233/62
   C07D209/48
   C09K9/02 A
   G02F1/15 505
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-256675(P2015-256675)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-95435(P2017-95435A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】104138432
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】▲きょう▼ 宇睿
(72)【発明者】
【氏名】黄 莉▲てい▼
(72)【発明者】
【氏名】呂 奇明
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−34743(JP,A)
【文献】 特開平2−306960(JP,A)
【文献】 特開昭62−126154(JP,A)
【文献】 特開2009−217054(JP,A)
【文献】 特開2015−132778(JP,A)
【文献】 Journal of the American Chemical Society,2004年,Vol.126, No.39,p.12200-12201
【文献】 Journal of Photopolymer Science and Technology,1998年,Vol.11, No.2,p.211-216
【文献】 Polymer Chemistry,2015年,Vol.6, No.29,p.5225-5232
【文献】 Materials Chemistry and Physics,2013年,Vol.140, No.2-3,p.431-434
【文献】 Theoretical Chemistry Accounts,2012年,Vol.131, No.5,p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 233/43
C07C 233/62
C07D 209/48
C09K 9/02
G02F 1/15
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式により表される有機化合物。
【化1】

【化2】

【化3】

または
【化4】

(式中、RはC1−8アルキル基であり、Rは水素またはC1−8アルキル基であり、Rはシクロヘキシル基である。)
【請求項2】
前記Rはイソプロピル基、シクロヘキシル基またはヘプチル基である請求項1に記載の有機化合物。
【請求項3】
第1の酸化性化合物であって、請求項1または2に記載された第1の酸化性化合物と、
還元性化合物と、
電解質と、
溶媒と、
を含む光変調組成物。
【請求項4】
前記電解質が有機アルミニウム塩または無機リチウム塩である請求項に記載の光変調組成物。
【請求項5】
前記酸化性化合物と前記電解質とのモル比が1:1から1:20であり、前記還元性化合物と前記電解質とのモル比が1:1から1:20であり、かつ前記電解質の濃度が0.01Mから1.5Mの間である請求項3または4に記載の光変調組成物。
【請求項6】
前記還元性化合物が、下記の化合物からなる群より選ばれる請求項3〜5のいずれか一項に記載の光変調組成物。
【化5】

【化6】

およびビオロゲン。
【請求項7】
下記の化合物からなる群より選ばれる第2の酸化性化合物をさらに含む請求項3〜6のいずれか一項に記載の光変調組成物。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

および
【化11】

(式中、RはHまたはアルキルである。)
【請求項8】
その表面上に第1の透明導電層を備えた第1の透明基板、および
その表面上に第2の透明導電層を備えた第2の透明基板を含み、前記第1の透明導電層および前記第2の透明導電層を互いに対面するように配置することにより設けられた一対の電極と、
前記第1および第2の透明導電層の間に挿入されてセルを形成する絶縁ユニットと、
前記セル中に充填された光変調組成物と、
を含む光変調デバイスであって、
前記光変調組成物が、
第1の酸化性化合物であって、請求項1または2に記載の酸化性化合物である第1の酸化性化合物と、
還元性化合物と、
電解質と、
溶媒と、
を含む、光変調デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年11月20日に出願された台湾特許出願第104138432号の優先権を主張し、その全体が参照することにより本明細書において援用される。
【0002】
本開示は、有機化合物、光変調組成物、およびそれを用いる光変調デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
光変調デバイスは、それらの低駆動電圧および双安定性により、グリーンエネルギー産業において魅力がある。近年、より長い寿命および耐久性のために、光変調材料の大部分は無機酸化物となっているが、それらの膜は真空蒸着、噴霧熱分解、またはスパッタリングのような高価なプロセスおよび設備を用いて作製される。たとえプロセスのコストを無視したとしても、無機酸化物は依然として、遅いエレクトロクロミックレート、より少ない色のバリエーション(color variation)などのような欠点を有する。有機系において、光変調有機材料は、より多い色のバリエーションおよび速いエレクトロクロミックレートを有する共役系ポリマーを用いる。しかしながら、共役系化合物は、高価なモノマー、複雑な合成、および電解重合による形成、のような欠点を有している。エレクトロクロミック共役系ポリマーは、その共役長(conjugated length)のために、深色(deep color)を呈する。深色は、電圧を印加することによって明るくなり得るが、共役系ポリマーは完全に透明にはなり得ない。換言すると、共役系ポリマーは、透明状態を生じさせるために電力が供給されなければならず、これにより高い消費エネルギーの問題が生じる。
【0004】
したがって、透明性、膜安定化能(film−firming ability)、およびエレクトロクロミック性の要求を満たす新規なエレクトロクロミック有機材料が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20090231663号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
共役系化合物は、高価なモノマー、複雑な合成、および電解重合による形成、のような欠点を有している。エレクトロクロミック共役系ポリマーは、その共役長(conjugated length)のために、深色(deep color)を呈する。深色は、電圧を印加することによって薄くなり得るが、共役系ポリマーは完全に透明になり得ない。換言すると、共役系ポリマーは、透明状態を生じさせるために電力が供給されなければならず、これにより高い消費エネルギーの問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、有機化合物、光変調組成物、およびそれを用いる光変調デバイスに関する。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、有機化合物が提供される。有機化合物は、式(I)で表される化学構造を有する。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Xは、
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】

または
【0016】
【化7】

である。
【0017】
はアルキルであり、RはH、アルキル、またはアルコキシであり、RはHまたはメチルである。
【0018】
Arは、
【0019】
【化8】

または
【0020】
【化9】

である。
【0021】
Ar’は
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
【化13】
【0026】
【化14】

または
【0027】
【化15】

である。
【0028】
Ar”は、
【0029】
【化16】
【0030】
【化17】

または
【0031】
【化18】

である。
【0032】
Arは、
【0033】
【化19】
【0034】
【化20】
【0035】
【化21】
【0036】
【化22】
【0037】
【化23】

または
【0038】
【化24】

である。
【0039】
はH、アルキルまたはアルコキシである。
【0040】
本開示の別の実施形態によれば、光変調組成物が提供される。組成物は、第1の酸化性化合物(oxidizable compound)、還元性化合物(reducible compound)、電解質および溶媒を含み、このうち第1の酸化性化合物は上記有機化合物を含む。
【0041】
本開示の別の実施形態によれば、光変調デバイスが提供される。光変調デバイスは、一対の電極、絶縁ユニット、および光変調組成物を含む。 一対の電極は、その表面上に第1の透明導電層を備える第1の透明基板と、その表面上に第2の透明導電層を備える第2の透明基板とを含む。 一対の電極は、第1の透明導電層と第2の透明導電層とを互いに対面するよう配置することにより、設けられる。絶縁ユニットは、第1および第2の透明導電層間に挿入されて、セルを形成する。そして、光変調組成物がセル中に充填される。組成物は、第1の酸化性化合物、還元性化合物、電解質、および溶媒を含む。第1の酸化性化合物は、上述した有機化合物を含む。
【発明の効果】
【0042】
光変調デバイスは、適した電圧が印加された後に、無色から特定の色(例えば、黄緑色、空色、青色、藍色(deep blue)、または濃い紫色(deep purple))に変化し得る。特定の色および電圧は、光変調組成物の有機酸化性化合物の化学構造によって決まる。電圧がオフになると、1分以内にセルの内容物が再び完全に退色する(bleach)。10000の着色(coloring)/退色(bleaching)サイクルを経た後でも、セルは依然としてよく機能する。つまり、光変調組成物溶液は良好な安定性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0043】
添付の図面を参照しながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【0044】
添付の図面を参照しながら後続の詳細な説明および実施例を読むことによって、本発明をより十分に理解することができる。
図1】本開示の一実施形態における光変調デバイスを示している。
図2】本開示の実施例における有機化合物のサイクリックボルタンメトリー図を示している。
図3】本開示の実施例における有機化合物のサイクリックボルタンメトリー図を示している。
図4】本開示の実施例における有機化合物のニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトルを示している。
図5】本開示の実施例における有機化合物のニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトルを示している。
図6】本開示の実施例における光変調デバイスのニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトルを示している。
図7】本開示の実施例におけるスイッチングサイクル後の光変調デバイスの透過スペクトルを示している。
図8】本開示の実施例における光変調デバイスにそれぞれ異なる電圧を印加した後の透過スペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示のいくつかの実施形態によれば、有機化合物が提供される。当該有機化合物は、式(I)で示される化学構造を有する。
【0046】
【化25】
【0047】
式中、Xは、
【0048】
【化26】
【0049】
【化27】
【0050】
【化28】
【0051】
【化29】
【0052】
【化30】

または
【0053】
【化31】

であってよい。
【0054】
はアルキルであってよく、RはH、アルキル、またはアルコキシであってよく、RはHまたはメチルであってよい。Arは、
【0055】
【化32】

または
【0056】
【化33】

であってよい。
【0057】
Ar’は、
【0058】
【化34】
【0059】
【化35】
【0060】
【化36】
【0061】
【化37】
【0062】
【化38】

または
【0063】
【化39】

である。
【0064】
Ar”は、
【0065】
【化40】
【0066】
【化41】

または
【0067】
【化42】

である。
【0068】
Arは、
【0069】
【化43】
【0070】
【化44】
【0071】
【化45】
【0072】
【化46】
【0073】
【化47】

または
【0074】
【化48】

である。
【0075】
はH、アルキルまたはアルコキシであり得る。
【0076】
一実施形態において、RはC1−8アルキル基であり得る。
【0077】
一実施形態において、RはC1−4アルキル基であり得る。
【0078】
一実施形態において、Rは水素、C1−8アルキル基、またはC1−8アルコキシ基であり得る。
【0079】
一実施形態において、RはC1−4アルキル基、またはC1−4アルコキシ基であり得る。
【0080】
一実施形態において、Rは水素、C1−8アルキル基、またはC1−8アルコキシ基であり得る。
【0081】
一実施形態において、RはC1−4アルキル基、またはC1−4アルコキシ基であり得る。
【0082】
有機化合物は、カルボン酸とジアミンとの反応から調製され得る。ジアミンの中間生成物、ジニトロは、文献の方法にしたがって調製され得、そして以下の式2または3に示される還元によりジニトロからジアミンが得られる(J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2006, 44, pp4579−4592、その開示全体が参照することにより本明細書に取り込まれる)。式2および3におけるAr’、Ar”、およびR2は、上記式(1)において定義されたのと同じ意味を持つ。上記有機化合物は、エレクトロクロミック素子、半導体、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス素子、非線形材料の活性物質(active substance)などとして適用可能である。
【0083】
【化49】
【0084】
【化50】
【0085】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示は、次式で表される構造を有する有機化合物も提供する。
【0086】
【化51】
【0087】
式中、RはC1−8アルキル基であり得る。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示は、次式で表される構造を有する有機化合物も提供する。
【0089】
【化52】
【0090】
式中、RはC1−8アルキル基であり得る。
【0091】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示は、次式で表される構造を有する有機化合物も提供する。
【0092】
【化53】
【0093】
式中、RはC1−8アルキル基であり得る。
【0094】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示は、次式で表される構造を有する有機化合物も提供する。
【0095】
【化54】
【0096】
式中、RはC1−8アルキル基であり得る。
【0097】
本開示の一実施形態によれば、上述した有機化合物は、還元性化合物、電解質および溶媒と組み合わせて、光変調組成物を形成することができる第1の酸化性化合物として用いられ得る。一実施形態において、酸化性化合物と電解質とのモル比は1:1から1:20であり、還元性化合物と電解質とのモル比は1:1から1:20である。
【0098】
いくつかの実施形態において、電解質は、少なくとも1つの不活性伝導塩(inert conducting salt)を含み得る。適した不活性伝導塩の例には、リチウム塩、ナトリウム塩、およびテトラアルキルアンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウムが含まれる。適した溶媒には、選択された電圧でレドックス不活性(redox−inert)であり、かつ分解して求電子剤(electrophiles)もしくは求核試薬(nucleophiles)を形成し得ない、またはそれ自体十分に強力な求電子剤もしくは求核試薬として反応し得ないため、着色されたイオン性フリーラジカル(ionic free radicals)と反応し得ない溶媒が含まれる。適した溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、ガンマ−ブチロラクトン(GBL,γ−butyrolactone)、アセトニトリル、プロピオニトリル、グルタロニトリル、メチルグルタロニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、ヒドロキシプロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、スルホラン、3−メチルスルホラン、またはこれらの混合物が含まれる。電解質の濃度は0.01Mから1.5Mの間とすることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、還元性化合物は、
【0100】
【化55】
【0101】
【化56】

および
【0102】
【化57】

からなる群から選ばれ得る。
【0103】
本開示のいくつかの実施形態において、酸化性化合物は第2の酸化性化合物を含んでいてよく、それは、
【0104】
【化58】
【0105】
【化59】
【0106】
【化60】
【0107】
【化61】
【0108】
【化62】

またはこれらの組み合わせであってよい。
【0109】
式中、RはHまたはアルキル基である。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態によれば、光変調デバイスが提供され得る。図1に示されるように、光変調デバイスは、一対の電極、絶縁ユニット、および光変調組成物を含む。一対の電極12、18は、その表面上に第1の透明導電層13を備える第1の透明基板11、およびその表面上に第2の透明導電層17を備える第2の透明基板19を含む。一対の電極12、18は、第1の透明導電層13と第2の透明導電層17とを互いに対面させるように配することにより設置される。絶縁ユニット14が第1および第2の透明導電層13、17間に挿入されると共にシールされて、セル15が形成される。そして、絶縁ユニット14上のポート(port)(図示せず)から、上述の光変調組成物がセル15内へ導入される。光変調デバイス10が形成されるようポートがシールされる。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態において、透明基板はガラス、またはポリカーボネートのようなプラスチックからなるものとしてよい。導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモン−もしくはフッ素−ドープ酸化スズ、アンチモン−もしくはアルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化スズ、または、例えば、任意で置換されてもよい、ポリチエニル類(polythienyls)、ポリピロール類(polypyrroles)、ポリアニリン類(polyanilines)、ポリアセチレン(polyacetylene)のような導電有機ポリマーからなるものとしてよい。
【0112】
本開示のいくつかの実施形態において、絶縁ユニットは、スペーサエレメントを、熱硬化性または光化学硬化性(photochemically curable)接着剤とブレンドすることによって形成され得る。スペーサーエレメントは、プラスチックもしくはガラスの小球体または特定の砂分(sand fractions)であってよい。
【0113】
本開示のいくつかの実施形態において、第1の導電材料層から第2の導電材料層までの距離は10μmから200μmの間とすることができる。
【0114】
光変調デバイスは、適した電圧が印加されると、無色から、特定の色(例えば、黄緑色、空色、青色、藍色、または濃い紫色)に変化し得る。特定の色および電圧は、光変調組成物の有機酸化性化合物の化学構造によって決まる。電圧がオフになった後、セルの内容物は1分以内に再び完全に脱色する(bleach)。下記の実験は、10000の着色/脱色サイクルを経た後も、セルが依然として十分に機能したことを示している。つまり、光変調組成物溶液は良好な安定性を備える。
【0115】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照しながら、例示的な実施形態を詳細に記載する。本発明概念は、本明細書に述べられた例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形で具体化され得る。明確とするために既知の部分についての記述は省いており、全体にわたり類似する参照数字は類似する構成要素に言及する。
【実施例】
【0116】
以下の実施例では、CH Instruments612Cで電気化学分析を行って、薄膜の電位を走査した。サイクリックボルタンメトリー(CV)を三電極系により行った。このうち、ITOガラス(被覆ポリマー(coated polymer)の面積は約2.0cm×0.8cm)を作用電極として用い、Ag/AgCl電極(飽和KCl溶液中)を参照電極として用い、白金線を補助電極として用い、0.1Mのテトラブチルアンモニウム過塩化物(tetrabutylammonium perchloride)溶液(アセトニトリル中)を電解質として用い、かつ走査速度を50mV/sとした。酸化還元電位の平均値を半波電位として定義した。
【0117】
実施例A1:有機化合物(A1)の調製
【0118】
4−メトキシトリフェニルアミン系ジアミン(化合物(I))10.0gおよびイソ酪酸(化合物(II))6.4gを反応フラスコ中で混合した。溶媒としてのジメチルアセトアミド(DMAc)25mlをその反応フラスコに加え、次いで、触媒としてのリン酸トリフェニル(TPP)20.3gおよびピリジン5.68gをその反応フラスコに加えた。その反応フラスコ中の混合物を105℃、4時間加熱してから、室温まで冷却させた。その冷却した反応混合物をエタノール中に注ぎ入れ、固体を沈澱させてから、ろ過してその固体を回収した。その固体を水で洗浄してから乾燥させて、化合物(A1)(白色の固体)を得た。上記反応の合成経路は次のようであった。
【0119】
【化63】
【0120】
化合物(A1)の物理測定の結果を以下に記す:1H NMR(500MHz,DMSO−d):δ1.02(d,J=7.0Hz,6H),2.49(m,2H),3.66(s,3H),6.78(d,J=9.0Hz,4H),6.81(d,J=8.5Hz,2H),6.87(d,J=8.5Hz,2H),7.41(d,J=9.0Hz,4H),9.65(s,2H).13C NMR(125MHz,DMSO−d6):δ19.5,34.8,55.2,114.8,120.4,122.9,125.7,133.9,140.5,143.0,155.2,174.8.Anal.calcd for C2731:C,72.78;H,7.01;N,9.43;found:C,72.69;H,7.03;N,9.51.
【0121】
化合物(A1)は、図2に示されるサイクリックボルタンメトリーCV図、以下の表1に示される酸化還元電位、図4に示されるニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトル、ならびに以下の表2に示される異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を有する。
【0122】
実施例A2:有機化合物(A2)の調製
【0123】
4−メトキシトリフェニルアミン系ジアミン(化合物(I))10.0gおよびシクロヘキサン酸(cyclohexanoic acid)(化合物(III))8.4gを反応フラスコ中で混合した。溶媒としてのジメチルアセトアミド(DMAc)25mlをその反応フラスコに加え、次いで、触媒としてのリン酸トリフェニル(TPP)20.3gおよびピリジン5.68gをその反応フラスコに加えた。その反応フラスコ中の混合物を105℃、4時間加熱してから、室温まで冷却させた。その冷却した反応混合物をエタノール中に注ぎ入れ、固体を沈澱させてから、ろ過してその固体を回収した。その固体を水で洗浄してから乾燥させて、化合物(A2)(白色の固体)を得た。上記反応の合成経路は次のようであった。
【0124】
【化64】

【0125】
化合物(A2)の物理測定の結果を以下に記す:1H NMR(500MHz,DMSO−d):δ1.13〜1.44(m,10H),1.63〜1.79(m,10H),2.29(t,2H),3.72(s,3H),6.84(d,J=9.0Hz,4H),6.88(d,J=8.5Hz,2H),6.95(d,J=8.5Hz,2H),7.48(d,J=9.0Hz,4H),9.67(s,2H).13C NMR(125MHz,DMSO−d):δ13.9,22.0,25.1,28.5,28.6,31.2,55.2,114.8,120.2,122.8,125.8,140.5,143.0,155.24,170.8. Anal. calcd for C3339:C,75.4;H,7.48;N,7.99;found:C,74.8;H,7.45;N,7.87.
【0126】
化合物(A2)は、以下の表1に示される酸化還元電位、以下の表2に示される異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を有する。
【0127】
実施例A3:有機化合物(A3)の調製
【0128】
4−メトキシトリフェニルアミン系ジアミン(化合物(I))10.0gおよびオクタン酸(化合物(IV))9.45gを反応フラスコ中で混合した。溶媒としてのジメチルアセトアミド(DMAc)25mlをその反応フラスコに加え、次いで、触媒としてのリン酸トリフェニル(TPP)20.3gおよびピリジン5.68gをその反応フラスコに加えた。その反応フラスコ中の混合物を105℃、4時間加熱してから、室温まで冷却させた。その冷却した反応混合物をエタノール中に注ぎ入れ、固体を沈澱させてから、ろ過してその固体を回収した。その固体を水で洗浄してから乾燥させて、化合物(A3)(白色の固体)を得た。上記反応の合成経路は次のようであった。
【0129】
【化65】
【0130】
化合物(A3)の物理測定の結果を以下に記す:1H NMR(500 MHz,DMSO−d):δ0.86(t,6H),1.26〜1.59(m,16H),2.51(t,4H),3.73(s,3H),6.85(d,J=9.0Hz,4H),6.88(d,J=8.5Hz,2H),6.95(d,J=8.5Hz,2H),7.47(d,J=9.0Hz,4H),9.76(s,2H).13C NMR(125MHz,DMSO−d):δ13.9,22.0,25.2,28.5,28.6,31.2,55.2,114.8,120.2,122.8,125.8,133.8,140.5,143.0,155.2,170.8. Anal. calcd for C3343:C,74.82;H,8.18;N,7.93;found:C,74.89;H,8.09;N,7.88.
【0131】
化合物(A3)は、以下の表1に示される酸化還元電位、以下の表2に示される異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を有する。
【0132】
実施例A4:有機化合物(A4)の調製
【0133】
4−メトキシペンタフェニルアミン系ジアミン(化合物(V))10.0gおよびシクロヘキサン酸(化合物(III))5.1gを反応フラスコ中で混合した。溶媒としてのジメチルアセトアミド(DMAc)25mlをその反応フラスコに加え、次いで、触媒としてのリン酸トリフェニル(TPP)20.3gおよびピリジン5.68gをその反応フラスコに加えた。その反応フラスコ中の混合物を105℃、4時間加熱してから、室温まで冷却させた。その冷却した反応混合物をエタノール中に注ぎ入れ、固体を沈澱させてから、ろ過してその固体を回収した。その固体を水で洗浄してから乾燥させて、化合物(A4)(白色の固体)を得た。上記反応の合成経路は次のようであった。
【0134】
【化66】
【0135】
化合物(A4)の物理測定の結果を以下に記す:1H NMR(500MHz,DMSO−d):δ1.24〜1.38(m,10H),1.40〜1.75(m,10H),1.77(t,2H),3.72(s,6H),6.79(s,4H),6.87〜6.88(m,6H),6.97(d,J=8.5Hz,2H),7.47(d,J=9.0Hz,4H),9.69(s,2H).13C NMR(125MHz,DMSO−d):δ25.2,25.4,29.1,44.7,55.2,114.8,120.3,123.0,123.2,125.9,134.0,140.4,142.0,142.9,155.3,173.8.Anal. calcd for C4652:C,76.21;H,7.23;N,7.73;found:C,75.95;H,7.29;N,7.75.
【0136】
化合物(A4)は、図3に示されるサイクリックボルタンメトリーCV図、以下の表1に示される酸化還元電位、図5に示されるニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトル、ならびに以下の表2に示される異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を有する。
【0137】
実施例B1:有機化合物(B1)の調製
【0138】
4−メトキシトリフェニルアミン系ジアミン(化合物(I))1.50gおよびヘキサヒドロフタル酸無水物(化合物(VI))1.70gを反応フラスコ中で混合した。溶媒としてのジメチルアセトアミド(DMAc)2.5mlをその反応フラスコに加え、次いで、触媒としての少量のイソキノリンをその反応フラスコに加えた。その反応フラスコ中の混合物を210℃、5時間加熱してから、室温まで冷却させた。その冷却した反応混合物をメタノールで希釈し、水中に注ぎ入れ、固体を沈澱させてから、ろ過してその固体を回収した。その固体を水で洗浄してから乾燥させて、化合物(B1)(ベージュ色の固体)を得た。上記反応の合成経路は次のようであった。
【0139】
【化67】
【0140】
化合物(B1)の物理測定の結果を以下に記す:1H NMR(500MHz,DMSO−d):δ1.38(m,4H),1.73(q,4H),3.08(q,2H),3.75(s,3H),6.97(d,J=9.5Hz,2H),7.02(d,J=9.0Hz,4H),7.11(d,J=9.5Hz,2H),7.14(d,J=9.0Hz,4H).13C NMR(125MHz,DMSO−d6):δ21.4,23.4,55.3,115.4,122.0,126.2,127.9,128.1,139.1,147.0,156.7,178.8. Anal. calcd for C3535:C,72.77;H,6.11;N,7.27;found:C,72.35;H,6.16;N,7.25.
【0141】
化合物(B1)は、図2に示されるサイクリックボルタンメトリーCV図、以下の表1に示される酸化還元電位、図4に示されるニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトル、ならびに以下の表2に示される異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を有する。
【0142】
実施例B2:有機化合物(B2)の調製
【0143】
4−メトキシペンタフェニルアミン系ジアミン(化合物(V))5.0gおよびヘキサヒドロフタル酸無水物(化合物(VI))3.06gを反応フラスコ中で混合した。溶媒としてのジメチルアセトアミド(DMAc)7.5mlをその反応フラスコに加え、次いで、触媒としての少量のイソキノリンをその反応フラスコに加えた。その反応フラスコ中の混合物を210℃、5時間加熱してから、室温まで冷却させた。その冷却した反応混合物をメタノールで希釈し、水中に注ぎ入れ、固体を沈澱させてから、ろ過してその固体を回収した。その固体を水で洗浄してから乾燥させて、化合物(B2)(ベージュ色の固体)を得た。上記反応の合成経路は次のようであった。
【0144】
【化68】
【0145】
化合物(B2)の物理測定の結果を以下に記す:1H NMR(500MHz,DMSO−d):δ1.36〜1.42(m,8H),1.70〜2.00(m,8H),3.08(t,4H),3.74(s,6H),6.92〜7.10(m,20H).13C NMR(125MHz,DMSO−d):δ21.3,21.4,23.3,55.2,115.2,120.2,124.9,125.0,127.5,127.7,139.4,142.2,147.6,156.3,178.8. Anal. calcd for C4846:C,74.40;H,5.98;N,7.23;found:C,74.21;H,6.03;N,7.27.
【0146】
化合物(B2)は、図3に示されるサイクリックボルタンメトリーCV図、以下の表1に示される酸化還元電位、図5に示されるニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトル、ならびに以下の表2に示される異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を有する。
【0147】
【表1】
【0148】
表1ならびに図2および図3は、トリフェニルアミン系(化合物A1〜A3およびB1)が1つの酸化還元ピークのみを有し、ペンタフェニルジアミン系(化合物A4およびB2)が2つの酸化還元ピークを有していたことを示している。アミド基(amido group)とイミド基(imido group)間の電位ピークの差は大きかった(A1 vs.B1、およびA4 vs.B2)。異なる末端官能基を用いることにより、有機化合物の酸化還元電位を調整することができる。
【0149】
【表2】
【0150】
表2、図4は、可視領域において、トリフェニルアミン系(化合物A1およびB1)の遮蔽効果がPSNの遮蔽効果よりも良好であったことを示している。ペンタフェニルジアミン系は可視領域に吸収を持ち、かつNIR領域における熱線吸収が良好であった。言い換えると、ペンタフェニルジアミン系化合物は、抗紫外線活性(anti−ultraviolet activity)およびNIR領域における吸収という特性を有していた。
【0151】
実施例C1:光変調デバイスの作製
【0152】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(Tetrabutyl ammonium tetrafluoroborate,TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物A2およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物A2の濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。その光変調デバイスに1.4Vの電圧をかけて、以下の表3に示されるように、デバイスの透過率を測定した。
【0153】
実施例C2:光変調デバイスの作製
【0154】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物B1およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物B1の濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。その光変調デバイスに1.6Vの電圧をかけて、以下の表3に示されるように、デバイスの透過率を測定した。デバイスのニュートラル状態(オフ状態)および酸化状態(オン状態)の透過スペクトルは図6に示されるようであった。
【0155】
実施例C3:光変調デバイスの作製
【0156】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物A4およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物A4の濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。その光変調デバイスに1.1Vの電圧をかけて、以下の表3に示されるように、デバイスの透過率を測定した。
【0157】
実施例C4:光変調デバイスの作製
【0158】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物B2およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物B2の濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。その光変調デバイスに1.3Vの電圧をかけて、以下の表3に示されるように、デバイスの透過率を測定した。
【0159】
【表3】
【0160】
表3および図6は、ビオロゲンを加えた実施例の遮蔽効果が、600nmあたりの波長で向上したことを示している。400〜500nm付近の波長におけるペンタフェニルジアミン系の実施例C3およびC4の遮蔽効果は、実施例C1およびC2の遮蔽効果よりも大きかった。トリフェニルアミンおよびペンタフェニルジアミン系はより良好な共役特性を有していたため、PSNと比較して、350〜800nmの範囲内で全ての実施例が遮蔽効果を有していた。
【0161】
実施例D:光変調デバイスの作製
【0162】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物A1およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物A1の濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。
【0163】
光変調デバイスに1.3Vの電圧を3.250秒かけ(オン状態)、−1.3Vの電圧を0.375秒かけ(オフ状態)、次いで0Vを3.675秒維持した。上の手法を繰り返して、デバイスにサイクル寿命試験を行った。図7の透過スペクトルに示されるように、デバイスは、可視領域において全く吸収がない元のニュートラル状態から、藍色(deep blue)(酸化状態)に変わった。さらに、10000のオン/オフサイクル後も、デバイスは依然として機能し、オン/オフの透過スペクトルを有していたため、デバイスは安定している。異なる波長および異なる状態におけるデバイスの透過率は以下の表4に示されるようであった。
【0164】
【表4】
【0165】
実施例E:透明−緑色相補式(complementary)光変調デバイスの作製
【0166】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物A1、5,10−ジメチルフェナジン(5,10−dimethylphenazine,DMP)およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物A1の濃度は0.025M、DMPの濃度は0.025M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。
【0167】
光変調デバイスに電圧をかけ徐々に1.3Vまでにすると、450nmの波長においてデバイスの透過率が10.4%まで低減したことが、そのスペクトルよりわかる。デバイスは、ニュートラル状態における透明から、深緑色(酸化状態)に変わった。さらに、電圧をオフに切り替えた後、1秒内にデバイスは透明(オフ状態)に戻ることができる。
【0168】
実施例F:透明−藍色(deep blue)相補式光変調デバイスの作製
【0169】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物A1、フェノチアジン(PSN)、メチルフェノチアジン(MePSN)およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物A1の濃度は0.05M、PSNの濃度は0.05M、MePSNの濃度は0.05M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。
【0170】
光変調デバイスに電圧をかけ徐々に1.3Vまでにすると、450nmの波長においてデバイスの透過率が10.4%まで低減したことが、そのスペクトルよりわかる。デバイスは、ニュートラル状態における透明から、藍色(酸化状態)に変わった。さらに、電圧をオフに切り替えた後、1秒内にデバイスは透明(オフ状態)に戻ることができる。
【0171】
実施例G:透明−濃黒色(dark)相補式光変調デバイスの作製
【0172】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、化合物A1、フェノチアジン(PSN)、メチルフェノチアジン(MePSN)およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし化合物A1の濃度は0.1M、PSNの濃度は0.1M、MePSNの濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.1Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。
【0173】
光変調デバイスに電圧をかけ徐々に1.3Vまでにすると、450nmの波長においてデバイスの透過率が10.4%まで低減したことが、そのスペクトルよりわかる。デバイスは、ニュートラル状態における透明から、濃い黒色(酸化状態)に変わった。異なる波長および異なる状態におけるデバイスの透過スペクトルは図8に示すとおりであった。さらに、電圧をオフに切り替えた後、1秒内にデバイスは透明(オフ状態)に戻ることができる。
【0174】
比較例H:光変調デバイスの作製
【0175】
テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBABF)をプロピレンカーボネート(PC)中に溶解し、0.5M溶液を作った。次に、フェノチアジン(PSN)およびビオロゲン[(HV(BF]を上記溶液中に溶解して、光変調組成物溶液を作った。ただし、PSNの濃度は0.1M、ビオロゲンの濃度は0.05Mとした。2枚のITO導電ガラスプレートを所望のサイズにカットし、プレートのITO層を互いに対面させた。絶縁ユニットを2枚のITO導電ガラスプレートに接続してセルを作った。絶縁ユニット上のポートから、上述の光変調組成物をセル中に導き、セルが光変調組成物溶液で満たされるようにした。光変調デバイスが形成されるようポートをシールした。ガラスプレート間の距離は約50μmとした。そのニュートラルおよび酸化状態の透過スペクトルを図4に示し、かつ異なる波長におけるニュートラルおよび酸化状態の透過率を表2に示した。
【0176】
光変調デバイスに電圧をかけ徐々に1.3Vまでにすると、デバイスは、ニュートラル状態における透明から、藍色(酸化状態)に変わった。異なる波長および異なる状態におけるデバイスの透過スペクトルは図6に示すとおりであった。異なる波長におけるデバイスの透過率を表3に示した。
【0177】
当業者には、開示した実施形態に各種修飾および変化を加え得るということが明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なされるように意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。
【符号の説明】
【0178】
10…光変調デバイス
12、18…一対の電極
11…第1の透明基板
13…第1の透明導電層
19…第2の透明基板
17…第2の透明導電層
14…絶縁ユニット
15…セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8