【文献】
Henry J. Snaith, Richard H. Friend,Photovoltaic devices fabricated from an aqueous dispersion of polyfluorene nanoparticles using an electroplating method,Synthetic Metals,2004年 6月16日,Vol.147, Issues 1-3,105-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において説明される実施形態は、下記の詳細な説明および実施例ならびにその前後の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしながら、本明細書において説明される構成要素、装置、および方法は、詳細な説明および実施例に含まれる特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は本発明の原理を単に説明するものであることを認識されたい。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更や適合化が容易に明らかとなるものである。
【0020】
また、本明細書において開示されるすべての範囲は、その中に含まれる部分範囲のいずれかおよびすべてを含むものであると理解されるべきである。例えば、「1.0〜10.0」という範囲は、最小値が1.0またはそれより多い値から始まって最大値が10.0またはそれより少ない値で終わるいずれかおよびすべての部分範囲(例えば1.0〜5.3、または4.7〜10.0、または3.6〜7.9)を含むものと理解されるべきである。
【0021】
さらに、語句「最大〜まで(up to)」が量に関して用いられる場合には、その量は少なくとも検出可能な量であることが理解されるべきである。例えば、特定の量「まで」の量で存在する材料は、検出可能な量から上限が特定の量までであってその特定の量を含む量で存在することができる。
【0022】
一態様において、導電性共役ポリマー組成物が本明細書において説明され、水性溶媒および/または水相と相溶性であることが示される。いくつかの実施形態において、もともとは非水溶性であった共役ポリマー系から水に対して相溶性である組成物を得る能力によって、生物学的用途を含む様々な用途にこのような系を用いることが促進されるかまたは可能になり得る。本明細書において説明される組成物は、例えば、水性媒体中に共役ポリマーを含む。
【0023】
I.非水溶性共役ポリマーの水溶液
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの水溶液が本明細書において説明される。いくつかの実施形態において、溶液は、水性溶媒と、少なくとも1つの非水溶性共役ポリマーを含む溶質とを含み、この非水溶性共役ポリマーは、共役ポリマーの溶解性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。
【0024】
代替的に、他の実施形態において、溶液は、水性溶媒と、少なくとも1つの非水溶性共役ポリマーを含む溶質とを含み、この非水溶性共役ポリマーは、分散剤によって少なくとも部分的に封入されている。いくつかの実施形態において、分散剤は両親媒性の化学種を含む。さらに、いくつかの実施形態において、分散剤は、非水溶性共役ポリマーと非共有的に結合している。例えば、いくつかの実施形態において、分散剤は、水素結合、静電結合、イオン結合、双極子間力、およびファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。他の実施形態において、分散剤は、1つ以上の共有結合によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。また、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される分散剤は、発光種をさらに含む。
【0025】
ここで特定の構成成分の話に移ると、本明細書において説明される溶液は、水性溶媒を含む。いくつかの実施形態において、水性溶媒は水である。さらに、いくつかの実施形態において、水性溶媒は、水と1つ以上の他の化学種とを含む。水性溶媒が水に加えて化学種を含むいくつかの実施形態において、この化学種は、非水溶性共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上または実質的に向上させるために使用可能ではない。代替的に、水性溶媒は、非水溶性共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能である化学種を含む。
【0026】
本発明の目的に矛盾しない任意の適切な非水溶性導電性共役ポリマーが、本明細書において説明される水性溶液中の溶質として用いられ得る。非水溶性共役ポリマーは、約1.1 eV〜約1.8 eVの範囲に亘るバンドギャップを示し得る。約1.1 eV〜約1.8 eVの範囲に亘るバンドギャップを有することによって、本明細書において説明される溶液の共役ポリマーは、電磁スペクトルの近赤外(NIR)領域において電磁放射線を吸収するために使用可能である。
【0027】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーはホモポリマーである。例えば、ホモポリマーは、ドナーモノマー種(D)から構成され得、Dは、単環式、二環式、もしくは多環式のアリーレン、または単環式、二環式、もしくは多環式のヘテロアリーレンである。いくつかの実施形態において、アリーレン構造は縮合または連結(linked)され得る。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ホモポリマーは、アニリン、ピロール、チオフェン、3-置換チオフェン、ビチオフェン、テルチオフェン、セレノフェン、3-置換セレノフェン、イソチアナフタレン、p-フェニレンビニレン、エチレンジオキシチオフェン、プロピレンジオキシチオフェン、2,7-フルオレン、 置換 2,7-フルオレン、2,7-カルバゾール、置換 2,7-カルバゾール、チエノ[3,2-b]チオフェン、チエノ[3,4-b] チオフェン、ジチエノチオフェン、シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン、 置換シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン、ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール、ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾ[1,2-b;3,4-b’] ジチオフェン、インドロ[3,2-b]カルバゾール、ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]ピロール、ジケトピロロピロール、 ペンタセン、ヘプタセン、およびペリレンジイミンからなる群より選択されるモノマーから構成される。適切なドナーモノマー種のいくつかは、
図1にさらに示されている。
図1の構造式において、XはO、N、S、またはSeであり得る。Xを1つより多く含むいくつかの実施形態において、それぞれのXは独立して、O、N、S、またはSeであり得る。また、R、R
1、R
2、およびR
3は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、O-アルキル、O-アルケニル、およびO-アリールからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、O-アルキル基、O-アルケニル基、またはO-アリール基は、1〜30個の炭素原子または1〜15個の炭素原子を含む。
【0028】
また、非水溶性共役ホモポリマーは、アクセプターモノマー種(A) から構成され得、Aは、単環式、二環式、もしくは多環式のアリーレン、または単環式、二環式、もしくは多環式のヘテロアリーレンである。いくつかの実施形態において、アリーレン構造は縮合または連結(linked)され得る。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ホモポリマーは、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン、p-フェニレンビニレン、ベンゾチアジアゾール、ピリジンチアジアゾール(pydridinethiadiazole)、ピリジンセレナジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、チエノ[3,4-b]ピラジン、チエノ[3,4-b]チオフェン、チエノ[3,2-b]チオフェン、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン、ピラジノ[2,3-g]キノキサリン、チエノピロリジノン、およびイソチアナフタレンからなる群より選択されるモノマーから構成される。適切なアクセプターモノマー種のいくつかは、
図2にさらに示されている。
図2の構造式において、XはO、N、S、またはSeであり得る。Xを1つより多く含むいくつかの実施形態において、それぞれのXは独立して、O、N、S、またはSeであり得る。また、R、R
1、およびR
2は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、O-アルキル、O-アルケニル、およびO-アリールからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、O-アルキル基、O-アルケニル基、またはO-アリール基は、1〜30個の炭素原子または1〜15個の炭素原子を含む。
【0029】
代替的に、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、2つ以上の反復単位からなるコポリマーである。例えば、非水溶性共役ポリマーは、本明細書において説明されるDモノマー種およびAモノマー種からなる群より選択される2つ以上のモノマー種から構成され得る。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、ドナー-アクセプター(D-A)構造を有するコポリマーである。いくつかの実施形態において、例えば、D-A型非水溶性共役ポリマーは、シクロペンタジチオフェンと2,1,3-ベンゾチアジアゾールとから構成される(PCPDTBT)か、またはシクロペンタジチオフェンと2,1,3-ベンゾセレナジアゾールとから構成される(PCPDTBSe)。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、式(I)の構造を有し、
式中、
Dは本明細書において説明されるドナーモノマー種であり、
Aは本明細書において説明されるアクセプターモノマー種であり、
Xはそれぞれ独立してO、N、S、またはSeである。
【化1】
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明される組成物は、水性媒体中に1つ以上のD-A型共役ポリマーを含む。例えば、組成物は、水性媒体中に、本明細書において説明されるD-A型共役ポリマーの任意の組み合わせを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明される水溶液中の非水溶性共役ポリマーは、超音波処理された共役ポリマーである。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの超音波処理は、共役ポリマーの立体配座および/または構造の1以上の変化を誘導するか、またはもたらし得るものであり、それによって、非水溶性共役ポリマーを水溶性または実質的に水溶性にし、溶質としてふるまうことを可能にする。
【0032】
本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態において、水溶液中の非水溶性共役ポリマーである溶質は、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。例えば、本明細書において説明される水溶液中の非水溶性共役ポリマーは、1つ以上の親水性の化学的官能基または化学種によって連結(grafted)または化学的官能化されていない。さらに、いくつかの実施形態において、親水性の官能基および/または構造は、酸/塩基反応および/または酸化還元(redox)反応によって非水溶性共役ポリマーにもたらされていない。
【0033】
さらに、いくつかの実施形態において、水性溶媒は、非水溶性共役ポリマーの溶解性または分散性を向上させるために使用可能な化学種を含まない。いくつかの実施形態において、例えば、水性溶媒は、共役ポリマーの水への溶解性を向上させるために、非水溶性共役ポリマーと相互作用するかまたは非水溶性共役ポリマーを修飾するための、界面活性剤または他の分散剤を含まない。
【0034】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、約0.001%〜約1%の範囲の量の共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、1%または2%を超える量の共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。
【0035】
代替的に、本明細書において説明されるいくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾され得る。いくつかの実施形態において、例えば、非水溶性共役ポリマーは、分散剤によって少なくとも部分的に封入されている。本発明の目的に矛盾しない任意の分散剤が使用されてよい。いくつかの実施形態において、例えば、分散剤は界面活性剤、例えば陰イオン界面活性剤または陽イオン界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、両性界面活性剤または非イオン界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、非イオン界面活性剤はアルコールを含み、このアルコールには、脂肪族アルコール、ポリオール、ポリオキシエチレングリコール(PEG)アルキルエーテル(あるいはPEG アルキルフェノールエーテル)、ポリオキシプロピレングリコール アルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、グリセロール アルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、分散剤は、リン脂質またはリン脂質誘導体、例えばPEGリン脂質を含む。
【0036】
さらに、本明細書において説明されるように、分散剤は標識化剤を含み得る。適切な標識化剤は、発光種、例えば蛍光種またはリン光種を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書において説明される分散剤の発光種は、分散剤に化学的に結合またはコンジュゲートされ、これには分散剤の表面上に化学的に結合またはコンジュゲートされることが含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、発光種は、本明細書において説明されるリン脂質に化学的に結合またはコンジュゲートされる。本発明の目的に矛盾しない任意の発光種が使用されてよい。いくつかの実施形態において、発光種は、可視光領域の波長を有する電磁波を放射する。他の実施形態において、発光種は、赤外(IR)領域の波長、例えば近赤外(NIR)領域の波長、短波長IR (SWIR) 領域の波長、中波長IR (MWIR)領域の波長、または長波長IR (LWIR)領域の波長を有する電磁波を放射する。いくつかの実施形態において、発光種は、マイクロ波領域の波長またはテラヘルツ波領域の波長を有する電磁波を放射する。本明細書において説明されるいくつかの実施形態における用途に適する発光種の非限定的な例には、レーザー色素(例えばローダミン、フルオレセイン、クマリン、またはこれらの誘導体)、および蛍光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP))が含まれる。いくつかの実施形態において、発光種には、フルオレセイン イソチオシアナート(FITC)が含まれる。
【0037】
さらに、発光種は、本発明の目的に矛盾しない任意の方法で分散剤に連結されるかまたはコンジュゲートされ得るものであり、これには本明細書において説明される化学結合または分子間力のうち1種以上によって分散剤に連結されるかまたはコンジュゲートされることが含まれる。いくつかの実施形態において、発光種を含む分散剤を使用することにより、本明細書において説明される非水溶性共役ポリマーを生物学的環境において可視化および/または追跡することを可能にし得る。
【0038】
非水溶性共役ポリマーは、本発明の目的に矛盾しない任意の量で、本明細書において説明される水溶液中に存在することができる。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、表Iに示される量で、本明細書において説明される水溶液中に溶質として存在する。
【0040】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの溶質粒子は、本発明の目的に矛盾しない任意の幾何学的形状を有し得る。いくつかの実施形態において、例えば、非水溶性共役ポリマーは、異方性形状を有する溶質粒子として溶液中に存在する。いくつかの実施形態において、異方性形状は、縦長形状、例えばチューブ形状、ロッド形状、ワイヤ形状、ファイバ形状、米粒形状(a rice shape)、楕円形状、またはさらに複雑な非晶質形状もしくは多面体形状を含む。いくつかの実施形態において、異方性の非水溶性共役ポリマーである溶質粒子のアスペクト比は、1より大きいかまたは10より大きい。本明細書において用いられる場合、アスペクト比は、粒子の長さを粒子の幅または直径で割った値である。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーである溶質粒子は、表IIに記載されるアスペクト比を有する。
【0042】
さらに、非水溶性共役ポリマーの溶質粒子は、本発明の目的に矛盾しない任意のサイズを有し得る。いくつかの実施形態において、溶質粒子の幅または直径の平均値は、約1 nm 〜 約500 nm、または約10 nm 〜約100 nmであり得る。いくつかの実施形態において、溶質粒子の幅または直径の平均値は、最大約50 nmまで、または最大約30 nmまでであり得る。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの溶質粒子の幅または直径の平均値は、約10 nm 〜 約50 nm、または約20 nm 〜約30 nmである。さらに、いくつかの実施形態において、溶質粒子の長さの平均値は、約1 nm 〜約10 μm、約100 nm〜 約1 μmであり得る。
【0043】
また、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの溶質粒子は、1つ以上の活性剤、例えば1つ以上の標的化剤にコンジュゲートされるかまたは連結される。活性剤は、本発明の目的に矛盾しない任意の方法で、非水溶性共役ポリマーにコンジュゲートされ得る。例えば、いくつかの実施形態において、活性剤は、水素結合、静電結合、イオン結合、双極子間力、およびファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上によって、非水溶性共役ポリマーと結合する。他の実施形態において、活性剤は、1つ以上の共有結合によって非水溶性共役ポリマーと結合する。さらに、いくつかの実施形態において、活性剤は、非水溶性共役ポリマーの粒子の外表面に付着または結合する。
【0044】
いくつかの実施形態において、活性剤は標的化剤を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の標的化剤が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、標的化剤は、抗体、ケモカイン受容体、および/または標的リガンド(例えばCXCR12もしくはCXCR4)を含む。いくつかの実施形態において、標的化剤は核酸を含む。いくつかの実施形態において、核酸はDNAを含む。いくつかの実施形態において、核酸はRNAを含み、RNAはsiRNAを含むがこれに限定されない。さらに、核酸は、本発明の目的に矛盾しない任意の構造または形態を採り得る。いくつかの実施形態において、核酸は、球状形態またはらせん状形態を採る。また、いくつかの実施形態において、標的化剤は葉酸を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、活性剤は、腫瘍、バイオフィルム、バクテリア マトリックス、または細胞外マトリックスに対する非水溶性共役ポリマー粒子の結合を促進し得る化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態において、活性剤は、グルカンまたはグリカン(例えばデキストラン、硫酸デキストラン、ヘパリン、もしくは硫酸ヘパリン);構造タンパク質(例えばラミニン);アミノ酸(例えばシリン);ならびに/または成長因子(例えば血管内皮成長因子(VEGF)もしくは繊維芽細胞成長因子(FGF))を含む。
【0046】
さらに、いくつかの実施形態において、活性剤は、1つ以上の細胞外マトリックス構成成分を分解または実質的に分解することができる化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態において、活性剤は酵素を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の酵素が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、酵素は、コラゲナーゼ、トリプシン、またはパパインを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、活性剤は、発光種、例えば本明細書において上述した発光種を含む。いくつかの実施形態において、発光種は、蛍光ポリマーまたは生物発光ポリマーを含む。
【0048】
また、いくつかの実施形態において、活性剤は化学療法剤を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の化学療法剤が用いられてよい。化学療法剤は、本明細書における参照目的では、癌を治療する薬剤または細菌感染症を治療する薬剤を含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、化学療法剤は抗癌剤を含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤は抗菌剤を含む。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される化学療法剤は、正常体温または高体温において活性であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、活性剤は金属ナノ粒子を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の金属ナノ粒子が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、金属ナノ粒子は、Au、Ag、Cu、Pd、またはPtを含む。非水溶性共役ポリマーの粒子に複数の金属ナノ粒子が結合しているいくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの粒子は、金属ナノ粒子よりも大きいものであり得、複数の金属ナノ粒子によって装飾、包囲、または実質的に包囲された単一のポリマー粒子を含むコンポジット材料を形成し得る。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、ポリマーが粒子形態になる前または後において、本明細書において説明される非水溶性共役ポリマーに付けられるかまたはコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、例えば、1つ以上の金属ナノ粒子が、直鎖状の非水溶性共役ポリマーに付着され、その後超音波処理されて、金属ナノ粒子を含むポリマー粒子が形成され得る。さらに、本明細書において説明されるように、金属ナノ粒子は、本発明の目的に矛盾しない任意の方法で、非水溶性共役ポリマーに付けられるかまたはコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、水素結合、静電結合、イオン結合、双極子間力、およびファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。他の実施形態において、金属ナノ粒子は、1つ以上の共有結合によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。いくつかの実施形態において、例えば、ナノ粒子のリガンドまたは表面キャップ剤が、非水溶性共役ポリマー中に共有結合的に取り込まれ得、これは、非水溶性共役ポリマーのペンダント基として取り込まれることを含むがこれに限定されない。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子を含む活性剤を用いることにより、粒子に隣接する電場を変調させることができ、これによって、非水溶性共役ポリマーの粒子の熱焼灼特性を向上させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明される水溶液中の非水溶性共役ポリマーは、細胞毒性ではないかまたは実質的に細胞毒性ではなく、これによって、様々な生物学的用途において使用することが可能になる。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される水溶液は凍結乾燥され得、後日、非水溶性共役ポリマーを水溶液中に再溶解させることができる。
【0051】
また、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーを含む、本明細書において説明される水溶液は、室温において少なくとも2週間または少なくとも1カ月の間、安定である。いくつかの実施形態において、水溶液は、少なくとも6カ月または少なくとも1年の間、安定である。
【0052】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明される水溶液はまた、広範囲の温度に亘って安定でもある。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される水溶液は、3℃〜60℃の温度範囲に亘って安定であり、および/または、熱サイクルに対して安定である。
【0053】
意外なことに、本明細書において説明される水溶液中の非水溶性共役ポリマー溶質は、前述の期間および/または温度範囲の1つ以上に亘って、安定であり、および/または分解に対して耐性である。例えば、期間および温度が変動する範囲に亘って共役ポリマーの吸収スペクトルの変化が最小限であることは、水溶液において共役ポリマーが安定であることを示す証拠を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマー溶質を含む、本明細書において説明される水溶液は、共役ポリマーの吸収極大値に適合するかまたは実質的に適合する波長の電磁波を照射されると、温度の上昇を示し、この温度の上昇は、共役ポリマーが約1 ng/ml 〜約100 mg/mlの範囲の量で存在する場合に共役ポリマーの放射線照射に適合する条件下で照射される水の温度の上昇よりも、少なくとも5倍または少なくとも10倍大きい値である。いくつかの実施形態において、温度の上昇は、適合する条件下で照射される水の温度の上昇よりも少なくとも15倍または20倍である。さらに、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、約5 μg/ml〜約120 μg/ml、約5 μg/ml 〜約30 μg/ml、約30 μg/ml〜約50 μg/ml、または約50 μg/ml 〜約100 μg/mlの範囲の量で存在し、前述の温度上昇のいずれかをもたらす。
【0055】
II.非水溶性共役ポリマーのコロイド組成物
別の態様において、コロイド組成物が本明細書において説明される。いくつかの実施形態において、コロイド組成物は、水性または水をベースとする連続相と、少なくとも1つの非水溶性共役ポリマーを含む分散相とを含み、この非水溶性共役ポリマーは、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種を用いて修飾されてはいない。
【0056】
代替的に、他の実施形態において、コロイド組成物は、水性または水をベースとする連続相と、少なくとも1つの非水溶性共役ポリマーを含む分散相とを含み、この非水溶性共役ポリマーは、分散剤によって少なくとも部分的に封入されている。いくつかの実施形態において、分散剤は、非水溶性共役ポリマーと非共有結合的に結合している。例えば、いくつかの実施形態において、分散剤は、水素結合、静電結合、イオン結合、双極子間力、およびファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。他の実施形態において、分散剤は、1つ以上の共有結合によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。また、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される分散剤は、発光種をさらに含む。
【0057】
ここで特定の構成成分の話に移ると、本明細書において説明されるコロイド組成物は、水性または水をベースとする連続相を含む。いくつかの実施形態において、連続相は水である。いくつかの実施形態において、連続相は、水と1つ以上の化学種とを含む。水をベースとする連続相が水に加えて化学種を含む、いくつかの実施形態において、この化学種は、非水溶性共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能ではない。
【0058】
本発明の目的に矛盾しない任意の適切な非水溶性導電性共役ポリマーが、分散相として用いられ得る。いくつかの実施形態において、コロイド組成物中の非水溶性共役ポリマーは、
図1および2に関連して本明細書のセクションIにおいて説明されている非水溶性共役ポリマーから選択される。
【0059】
本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態において、コロイド組成物中の非水溶性共役ポリマー分散相は、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。例えば、本明細書において説明されるコロイド組成物中の非水溶性共役ポリマーは、1つ以上の親水性の化学的官能基または化学種によって連結(grafted)または化学的官能化されていない。さらに、いくつかの実施形態において、親水性の官能基および/または構造は、酸/塩基反応および/または酸化還元(redox)反応によって非水溶性共役ポリマーにもたらされていない。
【0060】
さらに、いくつかの実施形態において、水性または水をベースとする連続相は、非水溶性共役ポリマーの溶解性または分散性を向上させるために使用可能な化学種を含まない。いくつかの実施形態において、例えば、水性連続相は、非水溶性共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために非水溶性共役ポリマーと相互作用するかまたは非水溶性共役ポリマーを修飾するための、界面活性剤または他の分散剤を含まない。
【0061】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、約0.001 %〜約1 %の範囲の量の共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、1%または2%を超える量の共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。
【0062】
代替的に、本明細書において説明されるように、コロイド組成物の中には、そのコロイド組成物中の非水溶性共役ポリマーが、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な化学種と結合するかまたは化学種によって修飾され得るものもある。いくつかの実施形態において、例えば、非水溶性共役ポリマーは、分散剤によって少なくとも部分的に封入されている。本発明の目的に矛盾しない任意の分散剤が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、分散剤は界面活性剤、例えば陰イオン界面活性剤または陽イオン界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、両性界面活性剤または非イオン界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、非イオン界面活性剤はアルコールを含み、このアルコールには、脂肪族アルコール、ポリオール、ポリオキシエチレングリコール アルキルエーテル(あるいはPEG アルキルフェノールエーテル)、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、グルコシド アルキルエーテル、グリセロールアルキルエステル、ソルビタン アルキルエステル、またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、分散剤は、リン脂質またはリン脂質誘導体、例えばPEGリン脂質を含む。
【0063】
さらに、本明細書において説明されるように、分散剤は標識化剤を含み得る。適切な標識化剤は、発光種、例えば蛍光種またはリン光種を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書において説明される分散剤の発光種は、分散剤に化学的に結合またはコンジュゲートされ、これには分散剤の表面上に化学的に結合またはコンジュゲートされることが含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、発光種は、本明細書において説明されるリン脂質に化学的に結合またはコンジュゲートされる。本発明の目的に矛盾しない任意の発光種が使用されてよい。いくつかの実施形態において、発光種は、可視光領域の波長を有する電磁波を放射する。他の実施形態において、発光種は、赤外(IR)領域の波長、例えば近赤外(NIR)領域の波長、短波長IR (SWIR) 領域の波長、中波長IR (MWIR)領域の波長、または長波長IR (LWIR)領域の波長を有する電磁波を放射する。いくつかの実施形態において、発光種は、マイクロ波領域の波長またはテラヘルツ波領域の波長を有する電磁波を放射する。本明細書において説明されるいくつかの実施形態における用途に適する発光種の非限定的な例には、レーザー色素(例えばローダミン、フルオレセイン、クマリン、またはこれらの誘導体)、および蛍光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP))が含まれる。いくつかの実施形態において、発光種には、フルオレセイン イソチオシアナート(FITC)が含まれる。
【0064】
さらに、発光種は、本発明の目的に矛盾しない任意の方法で分散剤に連結されるかまたはコンジュゲートされ得るものであり、これには本明細書において説明される化学結合または分子間力のうち1種以上によって分散剤に連結されるかまたはコンジュゲートされることが含まれる。いくつかの実施形態において、発光種を含む分散剤を使用することにより、本明細書において説明される非水溶性共役ポリマーを生物学的環境において可視化および/または追跡することを可能にし得る。
【0065】
非水溶性共役ポリマーは、本発明の目的に矛盾しない任意の量で、本明細書において説明されるコロイド組成物中に存在することができる。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、上述の表Iに示される量で、水性または水をベースとする連続相中に分散相として存在する。
【0066】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの分散された粒子は、本発明の目的に矛盾しない幾何学的形状を有し得る。いくつかの実施形態において、例えば、非水溶性共役ポリマーは、異方性形状を有する分散粒子またはコロイド粒子として組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、異方性形状は、縦長形状、例えばロッド形状、ワイヤ形状、ファイバ形状、米粒形状(a rice shape)、楕円形状、またはさらに複雑な非晶質形状もしくは多面体形状を含む。いくつかの実施形態において、異方性の分散粒子のアスペクト比は、1より大きいかまたは10より大きい。いくつかの実施形態において、分散相中の非水溶性共役ポリマー粒子は、上述の表IIに記載されるアスペクト比を有する。
【0067】
さらに、非水溶性共役ポリマーの分散粒子は、本発明の目的に矛盾しない任意のサイズを有し得る。いくつかの実施形態において、分散粒子の幅または直径の平均値は、約1 nm〜約500 nm、または約10 nm〜約100 nmであり得る。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの分散粒子の粒子サイズの平均値は、200 nm未満、または150 nm未満である。いくつかの実施形態において、分散粒子の粒子サイズの平均値は、約50 nm〜約200 nmの範囲、または約75 nm〜約150 nmの範囲である。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの分散粒子の平均サイズは、約5 nm〜約50 nmである。いくつかの実施形態において、分散粒子の幅または直径の平均値は、最大約50 nm、または最大約30 nmであり得る。いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの分散粒子の幅または直径の平均値は、約10 nm〜約50 nmの範囲、または約20 nm〜約30 nmの範囲である。さらに、いくつかの実施形態において、分散粒子の長さの平均値は、約1 nm〜約10 μmの範囲、または約100 nm〜約1 μmの範囲であり得る。
【0068】
また、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの分散粒子は、1つ以上の活性剤、例えば1つ以上の標的化剤にコンジュゲートされるかまたは連結される。活性剤は、本発明の目的に矛盾しない任意の方法で、非水溶性共役ポリマーにコンジュゲートされ得る。例えば、いくつかの実施形態において、活性剤は、水素結合、静電結合、イオン結合、双極子間力、およびファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上によって、非水溶性共役ポリマーと結合する。他の実施形態において、活性剤は、1つ以上の共有結合によって非水溶性共役ポリマーと結合する。さらに、いくつかの実施形態において、活性剤は、非水溶性共役ポリマーの粒子の外表面に付着または結合する。
【0069】
いくつかの実施形態において、活性剤は標的化剤を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の標的化剤が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、標的化剤は、抗体、ケモカイン受容体、および/または標的リガンド(例えばCXCR12もしくはCXCR4)を含む。いくつかの実施形態において、標的化剤は核酸を含む。いくつかの実施形態において、核酸はDNAを含む。いくつかの実施形態において、核酸はRNAを含み、RNAはsiRNAを含むがこれに限定されない。さらに、核酸は、本発明の目的に矛盾しない任意の構造または形態を採り得る。いくつかの実施形態において、核酸は、球状形態またはらせん状形態を採る。また、いくつかの実施形態において、標的化剤は葉酸を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、活性剤は、腫瘍、バイオフィルム、バクテリア マトリックス、または細胞外マトリックスに対する非水溶性共役ポリマー粒子の結合を促進し得る化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態において、活性剤は、グルカンまたはグリカン(例えばデキストラン、硫酸デキストラン、ヘパリン、もしくは硫酸ヘパリン);構造タンパク質(例えばラミニン);アミノ酸(例えばシリン);ならびに/または成長因子(例えば血管内皮成長因子(VEGF)もしくは繊維芽細胞成長因子(FGF))を含む。
【0071】
さらに、いくつかの実施形態において、活性剤は、1つ以上の細胞外マトリックス構成成分を分解または実質的に分解することができる化合物を含む。例えば、いくつかの実施形態において、活性剤は酵素を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の酵素が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、酵素は、コラゲナーゼ、トリプシン、またはパパインを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、活性剤は、発光種、例えば本明細書において上述した発光種を含む。いくつかの実施形態において、発光種は、蛍光ポリマーまたは生物発光ポリマーを含む。
【0073】
また、いくつかの実施形態において、活性剤は化学療法剤を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の化学療法剤が用いられてよい。例えば、化学療法剤は、癌を治療する薬剤または細菌感染症を治療する薬剤を含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、化学療法剤は抗癌剤を含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤は抗菌剤を含む。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される化学療法剤は、正常体温または高体温において活性であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、活性剤は金属ナノ粒子を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の金属ナノ粒子が用いられてよい。いくつかの実施形態において、例えば、金属ナノ粒子は、Au、Ag、Cu、Pd、またはPtを含む。非水溶性共役ポリマーの粒子に複数の金属ナノ粒子が結合しているいくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーの粒子は、金属ナノ粒子よりも大きいものであり得、複数の金属ナノ粒子によって装飾、包囲、または実質的に包囲された単一のポリマー粒子を含むコンポジット材料を形成し得る。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、ポリマーが粒子形態になる前または後において、本明細書において説明される非水溶性共役ポリマーに付けられるかまたはコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、例えば、1つ以上の金属ナノ粒子が、直鎖状の非水溶性共役ポリマーに付着され、その後超音波処理されて、金属ナノ粒子を含むポリマー粒子が形成され得る。さらに、本明細書において説明されるように、金属ナノ粒子は、本発明の目的に矛盾しない任意の方法で、非水溶性共役ポリマーに付けられるかまたはコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、水素結合、静電結合、イオン結合、双極子間力、およびファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。他の実施形態において、金属ナノ粒子は、1つ以上の共有結合によって、非水溶性共役ポリマーと結合している。いくつかの実施形態において、例えば、ナノ粒子のリガンドまたは表面キャップ剤が、非水溶性共役ポリマー中に共有結合的に取り込まれ得、これは、非水溶性共役ポリマーのペンダント基として取り込まれることを含むがこれに限定されない。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子を含む活性剤を用いることにより、粒子に隣接する電場を変調させることができ、これによって、非水溶性共役ポリマーの粒子の熱焼灼特性を向上させることができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるコロイド組成物中の非水溶性共役ポリマーは、細胞毒性ではないかまたは実質的に細胞毒性ではなく、これによって、様々な生物学的用途において使用することが可能になる。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるコロイド組成物は凍結乾燥され得、後日、非水溶性共役ポリマーを水性連続相中に再分散させることができる。
【0076】
また、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーを含む、本明細書において説明されるコロイド組成物は、室温において少なくとも2週間または少なくとも1カ月の間、安定である。いくつかの実施形態において、コロイド組成物は、少なくとも6カ月または少なくとも1年の間、安定である。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるコロイド組成物はまた、広範囲の温度に亘って安定でもある。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるコロイド組成物は、3℃〜60℃の温度範囲に亘って安定であり、および/または、熱サイクルに対して安定である。
【0078】
意外なことに、本明細書において説明されるコロイド組成物中に分散された非水溶性共役ポリマーは、前述の期間および/または温度範囲の1つ以上に亘って、安定であり、および/または分解に対して耐性である。例えば、期間および温度が変動する範囲に亘って共役ポリマーの吸収スペクトルの変化が最小限であることは、水性コロイド組成物において共役ポリマーが安定であることを示す証拠を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマー分散相を含む、本明細書において説明されるコロイド組成物は、共役ポリマーの吸収極大値に適合するかまたは実質的に適合する波長の電磁波を照射されると、温度の上昇を示し、この温度の上昇は、共役ポリマーが約1 ng/ml 〜約100 mg/mlの範囲の量で存在する場合に共役ポリマーの放射線照射に適合する条件下で照射される水の温度の上昇よりも、少なくとも5倍または少なくとも10倍大きい値である。いくつかの実施形態において、温度の上昇は、適合する条件下で照射される水の温度の上昇よりも少なくとも15倍または20倍である。さらに、いくつかの実施形態において、非水溶性共役ポリマーは、約5 μg/ml〜約120 μg/ml、約5 μg/ml 〜約30 μg/ml、約30 μg/ml〜約50 μg/ml、または約50 μg/ml 〜約100 μg/mlの範囲の量で存在し、前述の温度上昇のいずれかをもたらす。
【0080】
いくつかの実施形態において、放射線照射後に前述の温度変化のいずれかを示すコロイド組成物は、上述したように、非水溶性共役ポリマーの溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、非水溶性共役ポリマーは、1つ以上の親水性の化学種または化学的官能基によって連結(grafted)または化学的官能化されている。いくつかの実施形態において、親水性の官能化は、酸/塩基反応またはpH変化/変更によってもたらされる。いくつかの実施形態において、親水性の官能化は、酸化還元反応、または共役ポリマーの電離放射線への暴露によって誘導される。さらに、いくつかの実施形態において、水性連続相は、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために共役ポリマーと相互作用するのに使用可能な1つ以上の化学種を含む。いくつかの実施形態において、例えば、水性連続相は、界面活性剤または分散剤を含む。いくつかの実施形態において、水性連続相は、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために、非水溶性共役ポリマーとの酸/塩基反応または酸化還元反応に関与するのに使用可能な化学種を含む。また、本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態において、放射線照射後に前述の温度変化のいずれかを示すコロイド組成物は、非水溶性共役ポリマーの溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種を含まない。
【0081】
III.水溶液およびコロイド組成物の作製方法
別の態様において、非水溶性共役ポリマーの水溶液を作製する方法が、本明細書において説明される。いくつかの実施形態において、水溶液を作製する方法は、有機溶媒中に非水溶性共役ポリマーを含む有機溶媒溶液相を提供するステップと、有機溶媒溶液相に接する水相を提供するステップと、有機溶媒の超音波処理および蒸発によって水相中の非水溶性共役ポリマーの少なくとも一部を可溶化し、水溶液を得るステップとを含み、非水溶性共役ポリマーは、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。いくつかの実施形態において、非水溶性ポリマーの超音波処理は、共役ポリマーの立体配座および/または構造の1以上の変化を誘導するか、またはもたらし得るものであり、それによって、非水溶性共役ポリマーを水溶性、実質的に水溶性、または部分的に水溶性にすることを可能にする。
【0082】
他の実施形態において、水溶液を作製する方法は、有機溶媒中に非水溶性共役ポリマーを含む有機相を提供するステップと、有機溶媒溶液相に接する水相を提供するステップと、有機溶媒の超音波処理および蒸発によって水相中の非水溶性共役ポリマーの少なくとも一部を可溶化し、水溶液を得るステップとを含み、水相は少なくとも1つの分散剤を含み、非水溶性共役ポリマーは、分散剤によって少なくとも部分的に封入されている。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明される方法によって得られる水溶液は、有機溶媒の超音波処理および/または蒸発の後にろ過され、これにより、水相に可溶化しなかった非水溶性共役ポリマーが除去される。いくつかの実施形態において、水溶液は、有機溶媒の超音波処理および/または蒸発の後に遠心分離され、所望されるサイズまたは形状の範囲に含まれるサイズまたは形状を有する非水溶性共役ポリマー粒子が分離または除去される。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、水溶液を遠心分離することにより、第一のサイズおよび第一のアスペクト比を有する非水溶性共役ポリマーの第一の溶質粒子と、第二のサイズおよび第二のアスペクト比を有する非水溶性共役ポリマーの第二の溶質粒子とを分離することをさらに含む。
【0084】
さらに、本明細書において説明される方法に従って作製される水溶液は、非水溶性共役ポリマーの水溶液について上述したセクションIに説明される組成特性、化学特性、および/または物理特性のいずれかを有し得る。
【0085】
別の態様において、コロイド組成物を作製する方法が、本明細書において記載される。いくつかの実施形態において、コロイド組成物を作製する方法は、有機溶媒中に非水溶性共役ポリマーを含む有機溶媒溶液相を提供するステップと、有機溶媒溶液相に接する水相を提供するステップと、有機溶媒の超音波処理および蒸発によって水相中の非水溶性共役ポリマーの少なくとも一部を分散させ、コロイド組成物を得るステップとを含み、非水溶性共役ポリマーは、共役ポリマーの水への溶解性または分散性を向上させるために使用可能な1つ以上の化学種によって修飾されてはいない。いくつかの実施形態において、非水溶性ポリマーの超音波処理は、共役ポリマーの立体配座および/または構造の1以上の変化を誘導するか、またはもたらし得るものであり、それによって、非水溶性共役ポリマーの粒子を水性連続相中に分散させ、コロイドを形成することを可能にする。
【0086】
いくつかの実施形態において、コロイド組成物を作製する方法は、非水溶性共役ポリマーの有機溶媒溶液を含む有機相を提供するステップと、有機溶媒溶液相に接する水相を提供するステップと、有機溶媒の超音波処理および蒸発によって水相中の非水溶性共役ポリマーの少なくとも一部を分散させ、コロイド組成物を得るステップとを含み、水相は少なくとも1つの分散剤を含み、非水溶性共役ポリマーは、分散剤によって少なくとも部分的に封入されている。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるコロイド組成物は、有機溶媒の超音波処理および/または蒸発の後にろ過され、これにより、水相に分散されなかった非水溶性共役ポリマーが除去される。いくつかの実施形態において、コロイド組成物は、有機溶媒の超音波処理および/または蒸発の後に遠心分離され、所望されるサイズまたは形状の範囲に含まれるサイズまたは形状を有する非水溶性共役ポリマー粒子が分離または除去される。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、コロイド組成物を遠心分離することにより、第一のサイズおよび第一のアスペクト比を有する非水溶性共役ポリマーの第一の分散粒子と、第二のサイズおよび第二のアスペクト比を有する非水溶性共役ポリマーの第二の分散粒子とを分離することをさらに含む。
【0088】
さらに、本明細書において説明される方法に従って作製されるコロイド組成物は、コロイド組成物について上述したセクションIIに説明される組成特性、化学特性、および/または物理特性のいずれかを有し得る。
【0089】
IV.病変組織の治療方法
別の態様において、共役ポリマーを含む水性媒体を用いて病変組織を治療する方法が、本明細書において説明される。いくつかの実施形態において、病変組織を治療する方法は、非水溶性共役ポリマーを含む、本明細書において説明される水溶液を提供するステップと、水溶液を病変組織に配置するステップとを含む。共役ポリマーを放射線照射することにより、熱エネルギーが病変組織に供給される。いくつかの実施形態において、共有ポリマーを超音波に暴露することにより、熱エネルギーが病変組織に供給される。いくつかの実施形態において、高体温および/または他の細胞死機構が、導入された熱によって病変組織に誘導され、その結果として、病変組織の細胞の焼灼や死滅に至る。いくつかの実施形態において、本明細書において説明される病変組織を治療する方法に用いるための水溶液は、非水溶性共役ポリマーの水溶液について上述したセクションIに説明される組成特性、化学特性、および/または物理特性のいずれかを有し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、病変組織を治療する方法は、本明細書において説明されるコロイド組成物を提供するステップと、コロイド組成物を病変組織に配置するステップとを含む。共役ポリマーを放射線照射することにより、熱エネルギーが病変組織に供給される。いくつかの実施形態において、共有ポリマーを超音波に暴露することにより、熱エネルギーが病変組織に供給される。いくつかの実施形態において、高体温および/または他の細胞死機構が、導入された熱によって病変組織に誘導され、その結果として、病変組織の細胞の焼灼や死滅に至る。いくつかの実施形態において、本明細書において説明される病変組織を治療する方法に用いるためのコロイド組成物は、非水溶性共有ポリマーを含むコロイド組成物について上述したセクションIIに説明される組成特性、化学特性、および/または物理特性のいずれかを有し得る。
【0091】
例えば、いくつかの実施形態において、病変組織を治療する方法は、本明細書において説明される組成物を提供するステップと、組成物を病変組織に配置するステップとを含み、組成物は、水性媒体と、水性媒体中の少なくとも1つの非水溶性共役コポリマーの粒子とを含み、非水溶性共役ポリマーは、ドナーモノマー種(D)とアクセプターモノマー種(A)とを含むドナー-アクセプター構造を有する。
【0092】
本明細書において説明される水溶液およびコロイド組成物に含まれる非水溶性共役ポリマーは、低バンドギャップを示し得るもので、これにより、近赤外領域の電磁スペクトルにおける放射線を吸収して熱エネルギーを生じることを可能にする。いくつかの実施形態において、例えば、水溶液およびコロイド組成物に含まれる共役ポリマーは、約700 nm〜約1100 nmの範囲の波長を有する放射線に暴露され、病変細胞の焼灼または死滅において熱エネルギーを生じる。他の実施形態において、水溶液およびコロイド組成物に含まれる共役ポリマーは、約300 nm〜約10,000 nmの範囲の波長を有する放射線に暴露され、病変細胞の焼灼または死滅において熱エネルギーを生じる。
【0093】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される共役ポリマーの粒子は、例えば1つ以上の活性剤を用いることにより、特定の生物学的コンパートメントに標的化され得る。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される組成物中のポリマー粒子は、病変細胞などの真核細胞を取り囲む細胞外マトリックスに、またはバイオフィルムなどの細胞外マトリックス成分に、標的化される。
【0094】
本明細書において説明される方法は、本発明の目的に矛盾しない任意の病変組織に用いられ得る。いくつかの実施形態において、病変組織は、高体温療法によって臨床的に治療され得る組織を含む。いくつかの実施形態において、病変組織は、軟部組織、硬部組織、糖尿病または低血糖の組織、熱傷創組織、および腫瘍組織のうちの1つ以上を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、病変組織は癌組織を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において説明される方法は、例えば結腸直腸癌細胞などの癌細胞の死滅または焼灼に使用可能である。いくつかの実施形態において、病変組織は、バクテリアまたは微生物の1つ以上に感染した組織を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において説明される方法は、例えばStaphylococcus aureusおよびEscherichia coliなどのバクテリア細胞の死滅または焼灼に使用可能である。いくつかの実施形態において、水溶液および/またはコロイド組成物は、局所的におよび経皮的に、病変組織に配置される。
【0096】
また、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される組成物は、軽度の高体温(すなわち、組織温度が45℃未満である高体温)を誘導するのに用いられ得る。いくつかの実施形態において、軽度の高体温は、真核細胞または
原核細胞に薬物を送達することにより疾患または感染症の治療を促進し得る。いくつかの実施形態において、軽度の高体温は創傷治癒を促進し得るものであり、創傷治癒には火傷治癒が含まれるがこれに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される組成物によってもたらされる軽度の高体温は、例えばフィブロネクチンおよび/またはコラーゲンなどの創傷治癒化学種を上方制御し得る。
【0097】
V.疾患治療システム
別の態様において、疾患治療システムが本明細書において説明される。いくつかの実施形態において、疾患治療システムは、放射線照射源または超音波源と、水性媒体、および水性媒体中に分散された少なくとも1つの非水溶性共役コポリマーの粒子を含む組成物とを備える。いくつかの実施形態において、放射線照射源または超音波源による照射は、少なくとも部分的に、非水溶性共役ポリマーの吸収プロファイルの範囲内にある。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書において説明される疾患治療システムは、セクションIVにおいて上述された病変組織を治療するための任意の方法を実施するために用いられ得る。
【0098】
ここで疾患治療システムの構成成分の話に移ると、本明細書において説明される疾患治療システムは、水性媒体、および水性媒体中に少なくとも1つの非水溶性共役コポリマーの粒子を含む組成物を含む。本明細書において説明される疾患治療システムに用いるための組成物は、非水溶性共役ポリマーの水溶液について上述したセクションIにおいて、または非水溶性共役ポリマーのコロイド組成物について上述したセクションIIにおいて記載されている組成特性、化学特性、および/または物理特性のいずれかを有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、組成物中の非水溶性共役ポリマーは、ドナーモノマー種(D)およびアクセプターモノマー種(A)を含むドナー-アクセプター構造を有するコポリマーである。
【0099】
本明細書において説明される疾患治療システムはまた、放射線照射源または超音波源を含む。本発明の目的に矛盾しない任意の放射線照射源または超音波源が用いられてよい。いくつかの実施形態において、放射線照射源または超音波源は、赤外(IR)領域の波長、例えば近赤外(NIR)領域の波長、短波長IR (SWIR) 領域の波長、中波長IR (MWIR)領域の波長、または長波長IR (LWIR)領域の波長を有する電磁波を放射する電磁波源を含む。いくつかの実施形態において、放射線照射源はレーザーを含む。いくつかの実施形態において、放射線照射源は、非レーザーダイオードを含む発光ダイオード(LED)を含む。いくつかの実施形態において、超音波源は超音波トランスデューサを含む。いくつかの実施形態において、超音波源は、連続波(CW)プローブまたはパルス波(PW)プローブを含むドップラープローブを含む。
【0100】
本明細書において説明されるいくつかの実施形態は、下記の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0101】
[実施例1]
非水溶性共役ポリマーを含む水溶液またはコロイド組成物を用いる、癌細胞のNIR媒介熱焼灼
<材料および方法>
試薬はすべて、一般的な商業的供給源から購入し、特に記載しない限りはさらに精製することなく用いた。4H-シクロペンタ-[1,2-b:5,4-b’]ジチオフェンはAstar Pharmaから購入した。THFはNa/ベンゾフェノン ケタールで乾燥させた。4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-2,6-ビス(トリメチルスタニル)-4H-シクロペンタ-[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン、4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール、および4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾセレナジアゾールは、文献に記載された方法に従って合成した(J. Hou, T. L. Chen, S. Zhang, H.-Y. Chen, Y. Yang, J. Phys. Chem. C 2009, 113, 1601-1607; Z. Zhu, D. Waller, R. Gaudiana, M. Morana, D. Muhlbacher, M. Scharber, C. Brabec, Macromolecules 2007, 40, 1981-1986; C. W. Bird, G. W. H. Cheeseman, A. A. Sarsfield, J. Chem. Soc. 1963, 4767-4770; I. H. Jung, H. Kim, M.-J. Park, B. Kim, J.-H. Park, E. Jeong, H. Y. Woo, S. Yoo, H.-K. Shim, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2010, 48, 1423-1432; X. Li, W. Zeng, Y. Zhang, Q. Hou, W. Yang, Y. Cao, Eur. Polym. J. 2005, 41, 2923-2933; および Y. Tsubata, T. Suzuki, T. Miyashi, Y. Yamashita, J. Org. Chem. 1992, 57, 6749-6755を参照。これらの文献は参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。)。ポリ[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-シクロペンタ [2,1-b;3,4-b′]ジチオフェン-2,6-ジイル-alt-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル] (PCPDTBT)、およびポリ[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-シクロペンタ[2,1-b;3,4-b′]ジチオフェン-2,6-ジイル-alt-2,1,3-ベンゾセレナジアゾール-4,7-ジイル] (PCPDTBSe)は、Stilleカップリング法をマイクロ波照射下で用いることにより合成した。重合法は、下記に概略が説明される。
【0102】
フラッシュカラムクロマトグラフィは、Biotage Isolera(商標)フラッシュ精製システムで、固定相としてBiotage SNAP フラッシュ精製カートリッジを用いて実施した。CEM Discover マイクロ波反応器を用いて、マイクロ波重合が実施された。300 MHz
1H-NMRスペクトルおよび500 MHz
1H-NMRスペクトルは、それぞれBruker Avance DPX-300装置およびBruker Avance DRX-500装置によって記録された。
13C NMR スペクトルは、Bruker Avance DRX-500装置にて125.76 MHzで記録した。UV-Vis 吸収スペクトルは、Agilent 8453 ダイオード-アレイ分光光度計にて190〜1100 nmの範囲で記録した。GC-MSは、Agilent 6850 シリーズGC システムを、電子衝撃モードで稼働させたAgilent 5973質量選択検出器と連結して記録した。赤外吸収スペクトルは、Mattson Genesis II FT-IR 分光計、またはPerkin-Elmer Spectrum 10 分光計のいずれかにて、ダイヤモンドアンビルを備えるATRサンプリング アクセサリを用いて記録した。ラマンスペクトルは、DeltaNu Advantage 532 ラマン分光計にて532 nmで記録した。
【0103】
<PCPDTBTの合成>
4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-2,6-ビス(トリメチルスタニル)-4H-シクロペンタ-[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェンは、4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(1.05:1 当量)および2 mLのクロロベンゼンと共に、マイクロ波チューブに加えた。チューブを5分間撹拌して、モノマーを溶解させた。その後、Pd(PPh
3)
4 (2.5 mol %)を加え、チューブはクリンプキャップで密封してマイクロ波反応器中に置き、マイクロ波反応器を200℃まで10分間加熱した。室温まで冷却した後、緑色ポリマーの粘性溶液が反応容器中に観察された。ポリマーは、メタノール中で沈殿させ、減圧ろ過によって回収された。その後、固体はソックスレー(Soxhlet)シンブルに移し、MeOH (3 時間)、ヘキサン(6 時間)、そして最後にクロロホルム(6 時間)で抽出した。クロロホルム抽出物は、ほとんど完全に溶媒蒸発させ、メタノールを加えてポリマーを沈殿させ、沈殿物をろ過して減圧下にて24時間乾燥させた。
1H-NMRは文献値と同等である。
【0104】
<PCPDTBSeの合成>
PCPDTBSeの合成は、4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾールの代わりに4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾセレナジアゾール(1.05:1 当量)を用いたことを除き、上述のPCPDTBTと同様の方法に従う。
1H-NMRは文献値と同等である。PCPDTBSeの合成スキームは
図3に示される。
【0105】
<P3HT、PCPDTBT、およびPCPDTBSeの水溶液またはコロイド組成物の作製>
それぞれのポリマーのトルエン溶液(10 mg/mL)は、等体積のDI水の上部に積層した。積層した混合物は、4〜24時間水浴中で超音波処理し、トルエンをすべて蒸発させた。水層をろ過して、それぞれの非水溶性共役ポリマーについての水溶液またはコロイド溶液を得た。
図4は、前述のプロトコルに従うPCPDTBSeの可溶化を説明する。
図4(a)はトルエンに溶解されたPCPDTBSe(上層)とDI水(下層)とを示し、
図4(b)は1時間超音波処理した後の結果を示す。
図4(c)は超音波処理とトルエンの蒸発とが完了したものを示す(下層は水に溶解されたPCPDTBSeである)。
図4(d)はろ過して新しくトルエン(上層)を追加した後の
図4(c)の水溶液である。PCPDTBSeは水(下層)中に可溶化している。
【0106】
<P3HT、PCPDTBT、およびPCPDTBSeの水溶液またはコロイド組成物の動的光散乱>
P3HT、PCPDTBT、およびPCPDTBSeの水溶液またはコロイド組成物のナノ粒子について調べた。濃度はすべて、水中に0.2〜0.4 mg/mLの範囲であった。P3HTは、z平均(3回の実験の平均)粒径が146.4 nmであり、粒径は32.49〜745.4 nmの範囲であり、多分散指数(PDI)は0.209を示した。PCPDTBTについては、z平均粒径は178.6 nmであり、粒径は36.49〜663.8 nmの範囲であり、PDIは0.207であった。PCPDTBSeについては、z平均粒径は136.8 nmであり、粒径は18.91〜593.0の範囲であり、PDIは0.222であった。これらの結果は表IIIにまとめられている。
【0107】
【表3】
【0108】
<吸光度分光法を用いるP3HT、PCPDTBT、およびPCPDTBSeの定量>
水中に可溶化された非水溶性共役ポリマーの濃度は、上記の溶液の半量を遠心分離および凍結乾燥によって乾燥させることにより測定された。量が既知である場合には、残りの溶液は段階希釈し、吸光度曲線を異なる濃度で作製した。それぞれの濃度についてλ
maxを記録し、濃度に対してグラフを作成した。
図5は、PCPDTBSeについて、水溶液の濃度と対応する吸光度値を示す。
図5中の説明に示されているように、
図5の曲線Aは一番上の曲線であり、曲線Gは一番下の曲線である。
【0109】
<細胞および試薬>
HCT116およびRKO結腸直腸癌細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC)から購入し、2.5 μg/mL アンフォテリシン、1% L-グルタミン、1% ペニシリン/ストレプトマイシン、および10%ウシ胎仔血清を添加したMcCoy培地で培養した。細胞は、6ウェルまたは96ウェルのいずれかの組織培養皿に、それぞれ1ウェルあたり200,000細胞または10,000細胞の播種密度でプレーティングした。細胞生残率は、MTSアッセイ(Promega’s CellTiter 96 AQueousアッセイキット)を用いて測定した。CellTiter 96AQは、電子カップリング試薬としてのフェナジンメトスルファートと共に[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム分子内塩,MTS]を用いる、比色アッセイである。細胞がMTSをホルマザンへと還元し、吸光度が490 nmで記録されることにより、生存細胞の活性および生残能力が認識され得る。
【0110】
<細胞生残率試験のための加熱法>
接着細胞を用いることにより、赤外吸収に影響を与え得る、任意の細胞の沈殿や濁りを排除した。P3HT、PCPDTBT、またはPCPDTBSe ナノ粒子/媒体溶液(0.1 mg/mL)をそれぞれ200マイクロリットル、温度試験および細胞の加熱のために加えた。細胞は、温水ボトル上に置かれ、レーザー照射の間37℃の温度が維持された。Nd:YAGレーザー(808 nm)を出力0.6 Wで用いることにより、1サンプル当たり5分間、ポリマー溶液に赤外線刺激を与えた。熱電対により、レーザー照射直後のポリマー/媒体溶液の温度を測定した。
【0111】
<細胞生残アッセイ>
細胞を4つの96ウェルプレートに播種して一晩、McCoy 5A培地にてコンフルエンシーが〜50%になるまで増殖させた。培地を除去し、媒体中ナノ粒子形態のP3HT、PCPDTBT、またはPCPDTBSeの250 μg/mL、125 μg/mL、62 μg/mL、31 μg/mLのストック溶液を200μL加え、プレートを37℃で2時間インキュベーションした後、レーザー処理を行った。インキュベーションの後、赤外線処理が1ウェルあたり5分間行われた。培地を新鮮な培地と交換し、4つのプレートを37℃で48時間インキュベーションした。インキュベーションの後、MTSアッセイを用いて、細胞生残率が1.5時間に亘って定量された。
【0112】
<細胞毒性アッセイ>
既知の濃度の、水中ナノ粒子形態のP3HT、PCPDTBT、およびPCPDTBSeを遠心分離し、エタノール中に再懸濁した。エタノール溶液を6ウェルプレート(1〜5mL)に加え、溶媒を蒸発させて、ウェルの底部に付着した分散PCPDTBSeのフィルム(250 μg/mL、125 μg/mL、62 μg/mL、31 μg/mL)を得た。その後、細胞をPCPDTBSeの上部に200,000細胞/ウェル (3 mL)で播種して一晩おいた。細胞はMcCoy 5A培地にて37℃で24時間、コンフルエンシーが〜50%になるまで増殖させた。MTS:媒体から構成される1:3混合物(1 mL)を各ウェルに加え、1.5時間インキュベーションすることにより、MTSアッセイを実施した。少量(1 mL)を取り出し、プレートリーダーにて24ウェルプレート中で読み取ることにより、6ウェルプレート中に付着したポリマーが吸光度読み取りに干渉しないようにした。
【0113】
<PCPDTBSeのNIR加熱>
ナノ粒子形態のPCPDTBSeについて加熱効果を試験するために、PCPDTBSeと、NIR刺激条件下で十分に熱くなることが知られている材料とを比較した。個々の濃度の酸化された多層カーボンナノチューブ(MWNT-COOH)がPCPDTBSeナノ粒子と共に試験され(両方ともMcCoy 5A細胞培養培地中)、808 nmのレーザー(0.6 W)を5分間照射した。レーザー処理の後、熱電対を用いて溶液の温度を測定した。MWNT-COOHおよびPCPDTBSeナノ粒子について、濃度に対する温度変化を表すグラフが
図6に示される。MWNT-COOHは、PCPDTBSeナノ粒子に比べてより速い速度でより高温にまで熱くなった。MWNT-COOHは金属部分を含み、半導体の特性を有するPCPDTBSeナノ粒子に比べて1グラム当たりの吸収に利用可能な電子をより多く有しており、このことにより、MWNT-COOHの加熱効率が高められる。5分後に溶液の温度を20℃変化させるために必要なMWNT-COOHはわずか〜15 μgのみであるが、同じ変化を達成するためにPCPDTBSeナノ粒子は〜50 μg必要である。
【0114】
<細胞毒性試験>
PCPDTBSeナノ粒子が細胞にとって有害であるかどうかを調べるために、in vitro細胞毒性アッセイがNIR光の非存在下で実施された。エタノール中のPCPDTBSeナノ粒子は、様々な濃度で、6ウェルプレートの底部に薄いフィルムとしてコーティングされた。溶媒を蒸発させた後、PCPDTBSeナノ粒子フィルムの上部に、HCT116細胞およびRKO細胞を200,000 細胞/ウェルでプレーティングした。ウェルプレートは37℃で24時間インキュベーションした。インキュベーションの後、MTSアッセイを実施して、生残率を100%に正規化した対照ウェルと比較した細胞生残率を決定した。細胞毒性スクリーニングの結果は
図7に示される。PCPDTBSeナノ粒子は、30〜250 μg/mLの範囲のHCT116細胞またはRKO細胞のいずれに対しても、有意な細胞毒性を示さなかった。
【0115】
<細胞生残率試験>
HCT116およびRKO結腸直腸癌細胞株がこの試験に用いられた。異なる濃度の、水性媒体中のPCPDTBSeナノ粒子にNIR照射すると、ポリマーは熱を生じ、この熱が周囲の癌細胞を破壊する。RKO細胞およびHCT116細胞を含む、媒体中4つの異なる濃度のPCPDTBSeナノ粒子水溶液に、出力0.6 Wを生じる808 nmレーザーを5分間照射した。結果は
図8に示される。対照ウェルの生残率は100%に正規化されており、エラーバーは(3つのウェルの)平均値の標準偏差を示す。媒体中
31 μg/mLのPCPDTBSeナノ粒子については、HCT116細胞の細胞生残率は平均〜83%であり、RKO細胞の細胞生残率は平均94%であった。62 μg/mLの場合には、HCT116細胞の細胞生残率は平均68%であり、RKO細胞の細胞生残率は平均89%であった。100 μg/mLを超える濃度 (125 μg/mLおよび250 μg/mL)については、HCT116細胞の細胞生残率はそれぞれ13%および7%であった。125 μg/mLおよび250 μg/mLの場合のRKO細胞の細胞生残率は、20%および0%であった。これは、in vitroでタンパク質変性を開始させるのに必要なのは、媒体中わずか〜125 μg/mLのPCPDTBSeであることを意味する。
【0116】
[実施例2]
非水溶性共役ポリマーを用いる、バクテリアのNIR媒介熱焼灼
<方法>
対照的な表面厚さと分子組成とを有する2種類のバクテリア種を用いて、これらのバクテリア種とのPEDOT NTの高体温相互作用を評価した。バクテリア株は、American Type Culture Collection (ATCC)から購入したものであり、グラム陽性S. aureus, ATCC 25923とグラム陰性E. coli, ATCC 29055である。バクテリアは一晩増殖させ(S. aureusにはトリプシン大豆ブロス、E. coliには栄養ブロス)、これらの指数関数的な増殖相の間に試験し、ナノ粒子に暴露させるために1 ml当たり10
8個のバクテリア濃度で懸濁させた。PEDOT NTはSigma Aldrichから購入した。PEDOT NTの水への溶解性を促進するために、PEDOT NTは、1% Pluronic(登録商標)(F127)界面活性剤を含む水溶液中に懸濁させた。PEDOT NTは、0.1 mg/mlの濃度でバクテリア懸濁物に添加され、ナノ粒子/バクテリア溶液の300 μLアリコートがレーザー照射された。Nd:YAG連続波レーザー(波長1064 nm;出力3W)を用いて、ナノチューブの存在下または非存在下で、バクテリア懸濁物に30秒間、60秒間、または120秒間照射した。ナノ粒子は、レーザー照射の直前にバクテリア懸濁物に導入され、ナノ粒子暴露の総時間は15分間であった。レーザー照射直後、100 μlのナノ粒子/バクテリア懸濁物は、寒天(S. aureusにはコロンビア血液寒天基礎培地、E. coliには栄養寒天培地)プレート上に塗布し、加湿インキュベーターにて37℃で24時間インキュベーションした。コロニー形成単位(CFU)の総数を計数して、バクテリアの死滅の程度を決定した。それぞれのバクテリア懸濁物は三連で行い、それぞれの実験群について寒天プレートは三連で用いた。
【0117】
PEDOT NT組成物の存在下におけるレーザー照射の結果は、
図9に示される。
図9に示されるように、PEDOT N
Tは、照射時間が60秒間以上で、S. aureusおよびE. coliの両方を完全に根絶した。さらに、PEDOT-NTは、照射時間が60秒間未満の場合について、良好な死滅効果を示した。
【0118】
[実施例3]
非水溶性共役ポリマーの水溶液またはコロイド組成物を用いる、癌細胞のNIR媒介熱焼灼
<材料および方法>
試薬はすべて、一般的な商業的供給源から購入し、特に記載しない限りはさらに精製することなく用いた。また、関連する場合には、特に記載しない限り、実施例1に説明されたように、すべての他の材料が入手され、すべての測定方法が実施された。
【0119】
<PCPDTBSeのナノチューブおよび球状ナノ粒子の水溶液またはコロイド組成物の作製>
PCPDTBSe (5 mg)を2 mLのTHFに溶解させた。この溶液は、Pluronic(登録商標)F127 (50 mg)を含む8 mLのDI水中に、ホーン方式超音波処理下にて速やかに注入した。1分間の超音波処理の後、得られた混合物を15分間14,000 RPMで遠心分離して、PCPDTBSeナノチューブと実質的に球状のナノ粒子とを分離した。
図10は、単離されたナノチューブの透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。これらのナノチューブは、幅または直径が約20 nm〜30 nmであり、長さが約200 nm〜600 nmであった。
図11は、PCPDTBSeナノチューブ(曲線C)、少なくとも部分的にPluronic(登録商標)F127によって封入されているPCPDTBSeナノ粒子(曲線B)、非ナノ形態のPCPDTBSeポリマー(曲線A)の吸収スペクトルを示す。
【0120】
<PCPDTBSe等方性ナノ粒子およびPCPDTBSeナノチューブの細胞毒性>
PCPDTBSeのナノ粒子およびナノチューブの細胞毒性試験が、ルシフェラーゼCT 26細胞が用いられたことを除き、実施例1に記載されたように実施された。また、細胞は、ナノ粒子およびナノチューブの存在下で24時間、NIR照射なしで、濃度5、10、20、30、40、50、および100 μg/mLにて、インキュベーションした。得られた結果は、その細胞生残率を100%に正規化した対照ウェルと比較した。
図12はその結果を示す。
図12に示されているように、PCPDTBSeのナノ粒子およびナノチューブは、5〜100 μg/mLの濃度において、ルシフェラーゼCT 26細胞に対する有意な毒性を示さなかった。
【0121】
<細胞生残率試験>
MDA MB 231乳癌細胞株がこの試験に用いられた。異なる濃度の、pluronic(登録商標)で覆われた水性媒体中のPCPDTBSeのナノ粒子およびナノチューブにNIR照射すると、これらのポリマーは熱を生じ、この熱が周囲の癌細胞を破壊する。出力3 Wを生じる800 nmのレーザーが、MDA MB 231細胞を含む、媒体中4つの異なる濃度のPCPDTBSeの等方性ナノ粒子およびナノチューブの水溶液に1分間照射された。結果は
図13に示される。対照ウェルの生残率は100%に正規化されており、エラーバーは(3つのウェルの)平均値の標準偏差を示す。
【0122】
[実施例4]
非水溶性共役ポリマーの水溶液またはコロイド組成物を用いる、癌細胞のNIR媒介熱焼灼
<材料および方法>
試薬はすべて、一般的な商業的供給源から購入し、特に記載しない限りはさらに精製することなく用いた。また、関連する場合には、特に記載しない限り、実施例1に説明されたように、すべての他の材料が入手され、すべての測定方法が実施された。
【0123】
<PCPDTBSe球状ナノ粒子の水溶液またはコロイド組成物の作製>
PCPDTBSe (5 mg)を2 mLのTHFに溶解させた。この溶液は、カルボキシ末端化ポリエチレングリコール リン脂質(PL-PEG-COOH)を含む8 mLのDI水中に、ホーン方式超音波処理下にて速やかに注入した。2分間のホーン方式超音波処理の後、得られた混合物を4時間14,000 RPMで遠心分離し、DI水で2回洗浄して、PL-PEG-COOHによって覆われるかまたは少なくとも部分的に封入されているPCPDTBSeナノ粒子を得た。実施例4A〜4Eについて表IVに示されるように、異なる合成において様々な量のPCPDTBSeおよびPL-PEG-COOHが用いられた。
【0124】
【表4】
【0125】
図14は、単離されたPCPDTBSeナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図15は、PCPDTBSeナノ粒子の吸収スペクトルを示す。
図16は、PCPDTBSeナノ粒子の濃度-吸光度の検量線を示す。PCPDTBSeナノ粒子の動的光散乱分析により、数平均直径が20(± 5) nmであることがわかった。PCPDTBSeナノ粒子のゼータ電位測定により、ゼータ電位値が-44.16 (± 2.76)であることがわかった。
【0126】
<PCPDTBSe-PL-PEG-COOH球状ナノ粒子のNIR加熱>
PCPDTBSe-PL-PEG-COOHナノ粒子について加熱効果を試験するために、平均粒径が25 nmのナノ粒子と、異なる濃度の、酸化された多層カーボンナノチューブ(MWNT-COOH)、粒径が150 nmである実施例3の等方性PCPDTBSeナノ粒子、および実施例3のPCPDTBSeナノチューブとを比較した。すべてのサンプルはMcCoy 5A細胞培養培地中で試験され、808 nmのレーザー(0.5 W)を5分間照射した。レーザー処理の後、熱電対を用いて溶液の温度を測定した。様々なサンプルについて、濃度に対する温度変化を表すグラフが
図17に示される。
図17に示されるように、PCPDTDSeナノチューブは、MWNT-COOHよりも良好な温度上昇を示した。
【0127】
<PCPDTBSe-PL-PEG-COOHナノ粒子の細胞毒性>
平均粒径が20 nm であるPCPDTBSe-PL-PEG-COOHナノ粒子の細胞毒性試験が、RKOおよびCT 26結腸直腸癌細胞を用いて実施された。ナノ粒子のエタノール分散液から溶媒を蒸発させることによる場合には、細胞はナノ粒子層の上部に加えられた。細胞は、24時間NIR照射なしで、濃度が0.01、0.10、および1.00 mg/mL (RKO細胞について)、ならびに10、20、40、60、80、100、および250 μg/mL (CT 26細胞について)であるナノ粒子の存在下でインキュベーションした。得られた結果は、細胞生残率を100%に正規化した対照ウェルと比較した。また、CT 26細胞を用いた試験については、PCPDTBSe-PL-PEG-COOHナノ粒子について得られた結果は、実施例1の平均粒径が154 nmであるPCPDTBSeナノ粒子について得られた結果と比較した。
図18は、RKO細胞について得られた結果を示す。
図19は、CT 26細胞について得られた結果を示し、実施例1の粒径154 nmの粒子は左側の「A」で示されるものであり、粒径20 nmの粒子は右側の「B」で示されるものである。
図18および19に示されるように、PCPDTBSe-PL-PEG-COOHナノ粒子は、試験された濃度において、RKO細胞およびCT 26細胞に対する有意な毒性は示さなかった。
【0128】
<細胞生残率試験>
CT 26結腸直腸癌細胞株がこの試験に用いられた。水性媒体中の異なる濃度および異なる粒径のPCPDTBSeナノ粒子にNIR照射すると、ポリマーは熱を生じ、この熱が周囲の癌細胞を破壊する。出力3 Wを生じる800 nmのレーザーが、CT 26細胞を含む、媒体中4つの異なる濃度(5、10、15、および20 μg/mL)のPCPDTBSeの等方性ナノ粒子の水溶液に60秒間(総照射線量は180 J/cm
2)照射された。平均粒径が154 nmのナノ粒子と、平均粒径が20 nmのナノ粒子とが用いられた。結果は
図20に示され、粒径154 nmの粒子は「A」で示されるものであり、粒径20 nmの粒子は「B」で示されるものである。対照ウェルの生残率は100%に正規化されており、エラーバーは(3つのウェルの)平均値の標準偏差を示す。
【0129】
[実施例5]
非水溶性共役ポリマーの水溶液またはコロイド組成物
<材料および方法>
試薬はすべて、一般的な商業的供給源から購入し、特に記載しない限りはさらに精製することなく用いた。また、関連する場合には、特に記載しない限り、実施例1に説明されたように、すべての他の材料が入手され、すべての測定方法が実施された。
【0130】
<発光種を含むPCPDTBSeナノ粒子の水溶液またはコロイド組成物の作製>
FITCを含むPCPDTBSeナノ粒子は、PL-PEG-COOHをPL-PEG-COOHとPL-PEG-FITC (FITCにコンジュゲートしたPL-PEG)との1:10(重量で)混合物に置き換えたことを除いて、実施例においてPCPDTBSe-PL-PEG-COOHナノ粒子について説明されたように調製された。
【0131】
図21に示されるように、得られたナノ粒子の蛍光は、ナノ粒子が454 nmおよび490 nmで励起されたときに観測された。蛍光プロファイルは、525 nmにピークを示した。
【0132】
本発明の様々な実施形態が、本発明の様々な目的に応じて説明されてきた。これらの実施形態は本発明を単に説明するものであることを認識されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実施形態の多くの変更および適合化が当業者には容易に明らかとなるであろう。