【文献】
MOLECULAR GENETICS AND METABOLISM,2012年 3月 1日,p. 341-344,Abstrct 78,79,80
【文献】
Pharmacology and safety of glycerol phenylbutyrate in healthy adults and adults with cirrhosis.,Hepatology,2010年,Vol.51,No.6,p2077-2085
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
PAA及びPAGNレベルの測定が、前記グリセリルトリ−[4−フェニルブチレート](HPN−100)の第1の投与量が、定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に行われる、請求項1に記載のグリセリルトリ−[4−フェニルブチレート](HPN−100)の使用。
PAA及びPAGNレベルの測定が、前記グリセリルトリ−[4−フェニルブチレート](HPN−100)の第1の投与量が投与された後、48時間〜1週間で行われる、請求項6に記載のグリセリルトリ−[4−フェニルブチレート](HPN−100)の使用。
【背景技術】
【0002】
アンモニアのレベルが高くなる窒素貯留障害に、尿素回路障害(UCD)、肝性脳症(HE)、及び時に末期腎臓疾患(ESRD)とも呼ばれる進行した腎臓病又は腎不全がある。
【0003】
UCDは、例えば尿素回路に関与する酵素などのアンモニアからの尿素の合成に必要な酵素又は輸送体の遺伝的欠損を有する。尿素回路は、
図1に示され、
図1は、一定のアンモニア捕捉薬が、過剰なアンモニアの除去をどのように補助するよう作用するかも図示している。
図1を参照すると、N−アセチルグルタミンシンセターゼ(NAGS)由来のN−アセチルグルタメートがカルバミルリン酸シンセターゼ(CPS)に結合し、これがCPSを活性化し、この結果、アンモニア及び重炭酸塩がリン酸カルバミルに変換される。次に、リン酸カルバミルがオルニチンと反応し、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)によって媒介された反応で、シトルリンを生成する。廃棄窒素の第2の分子は、アルギノコハク酸シンセターゼ(ASS)により媒介される次の反応で尿素回路内に組み込まれ、シトルリンがアスパラギン酸で縮合され、アルギノコハク酸を形成する。アルギノコハク酸は、アルギノコハク酸リアーゼ(ASL)により切断され、アルギニン及びフマル酸塩を生成する。尿素回路の最終反応において、アルギナーゼ(ARG)は、アルギニンを切断し、オルニチン及び尿素を生成する。尿素に含まれる窒素の2つの原子のうち、一方は遊離アンモニア(NH
4+)に由来し、他方はアスパラギン酸塩に由来する。UCDの患者は、有意な残存尿素合成能力を欠いて生まれ、この能力は典型的には生後数日しか存在しない(新生児発症)。残存機能を有する患者は、典型的にはその後、小児期又は更に成人期に発症し、症状は食事から摂取したタンパク質又は生理学的ストレス(例えば、介入疾患)の増加によって促進される。UCD患者については、血中アンモニアの低下が不可欠となっている。
【0004】
HEは、肝硬変又は他の特定のタイプの肝臓疾患を有する患者で頻繁に起こる、高アンモニア血症から生じると考えられる神経学的徴候及び症状のスペクトラムを指す。HEは、臨床的非代償性肝臓疾患の共通の発症であり、最も一般的には過剰アルコール使用、B型又はC型肝炎ウイルス感染、自己免疫性肝疾患、又は原発性胆汁性肝硬変などの慢性胆汁鬱滞性肝障害を含む多様な疫学を有する肝硬変から生じる。HEを有する患者は、典型的には、UCDを有する患者に類似した特徴である、僅かな変化から昏睡に及ぶ異常な精神状態を示す。食事から摂取したタンパク質を解毒する際の機能不全の肝臓に起因する血中アンモニアの増加が、HEに関連する主要な病態生理であると考えられている(Ong 2003)。
【0005】
ESRDは、糖尿病、高血圧症、及び遺伝性障害を含む多様な病因から生じる。ESRDは、限定するものではないが、尿素及びクレアチニンなどの、通常は尿中に排泄される物質の血流中の蓄積によって発症する。通常尿中に排泄される体毒素を含む物質の血流中のこの蓄積は、尿毒症又は尿毒症症候群とも呼ばれることもあるESRDの臨床的発症をもたらすと一般的に考えられている。ESRDは、通常は、透析又は腎臓移植によって処置される。尿素それ自体がこれら発症に寄与し、フェニル酢酸(PAA)プロドラッグの投与が尿素の合成を低減することができ(例えば、Brusilow 1993を参照)、したがって血中尿素濃度を低下させることが可能である限りにおいて、PAAプロドラッグ投与は、ESRDを有する患者に対して有益であり得る。
【0006】
タンパク質の食事制限及び/又は食事性栄養補給剤によってアンモニアレベル及び/又は症状が適切に制御されていない窒素貯留障害を有する被験者は、フェニル酪酸ナトリウム(NaPBA、合衆国ではBUPHENYL(登録商標)として、ヨーロッパではAMMONAPS(登録商標)として承認)、安息香酸ナトリウム、又はフェニル酪酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムの組み合わせ(AMMONUL(登録商標))などの窒素捕捉薬で一般的には治療される。これら薬剤が、廃棄窒素の排泄のために尿素の代替経路を身体に提供するために、これらは、しばしば、代替経路薬とも呼ばれる(Brusilow 1980;Bruslow 1991)。NaPBAは、PAAプロドラッグである。窒素貯留障害の治療に現在開発されている別の窒素捕捉薬は、グリセリルトリ−[4−フェニルブチレート](HPN−100)であり、これは、米国特許第5,968,979号に記載されている。通常GT4P又はグリセロールPBAと呼ばれるHPN−100は、PBAのプロドラッグ並びにPAAの前プロドラッグである。代謝に関するHPN−100とNaPBAとの間の差は、HPN−100がトリグリセリドであり、PBAを放出するために、おそらくは膵臓リパーゼによる消化を必要としとしているのに対し(McGuire 2010)、NaPBAが塩であり、PBAを放出するために、吸収後に容易に加水分解される点である。
【0007】
HPN−100及びNaPBAは、作用の同一の一般的機構を共有し、PBAはβ酸化を介して、PAAに変換され、PAAは、グルタミンと酵素的に接合しフェニルアセチルグルタミン(PAGN)を形成し、これが尿中に排泄される。PBA、PAA、及びPAGNの構造を以下に記載する。
【化1】
【0008】
NaPBA及びHPN−100の窒素貯留障害に関する臨床的有益性は、尿素を廃棄窒素排泄のためにベヒクルとして効果的に置き換えるための及び/又は尿素合成の必要性を低減するためのPAGNの能力に由来する(Brusilow 1991;Brusilow 1993)。個々のグルタミンが窒素の2つの分子を含有するために、2つの廃棄窒素原子のそれ自体の大部分が、尿中に排泄されるPAGNの全ての分子を取り除く。したがって、PAGNに変換されるPAAの各モルに対して窒素の2当量が除去される。PAGNは、主要な末端代謝産物を代表し、廃棄窒素除去に化学量論的に関連するものであり、窒素貯留状態の症例における有効性の尺度である。
【0009】
窒素貯留状態に加えて、PAAプロドラッグは、PBA及び/又はPAAが、遺伝子発現を変更し及び/又はタンパク質への翻訳後効果を及ぼすと考えられている種々のその他の疾患においても有益であり得る。メープルシロップ尿症(MSUD、分岐鎖ケト酸尿症としても知られる)の場合、例えば、分岐鎖アミノ酸の血漿レベルを低下させる上でのNaPBAの明らかに有用な効果が、分岐鎖α−ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体又はBCKDCの活性を調節するキナーゼのPBA誘導阻害によって仲介されることが報告されている。BCKDCは、通常、分岐鎖アミノ酸を分解する酵素であり、一般的には、MSUD患者では欠損している(Bruneti−Pieri 2011)。同様に、癌(Chung 2000)、神経変性疾患(Ryu 2005)、及び鎌状赤血球症(Perrine 2008)の治療用のPAAプロドラッグに対する推定有益作用は、全てがPBA及び/又はPAAを介しての遺伝子発現の変更及び/又はタンパク質機能に及ぼす翻訳後効果に関与する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の以下の説明は、本発明の種々の実施形態を例示するよう意図されたものに過ぎない。したがって、説明された特定の変形例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。均等本発明の範囲から逸脱することなく、種々の均等物、変更及び変形例が想到し得ることは当業者には明らかであろうし、かかる均等な実施形態は、本明細書に含まれることが理解される。
【0021】
PBAのPAAへのβ酸化に関与している酵素は、エネルギー基質として脂肪酸を使用することができる大部分の細胞型で存在し、これら酵素の広範囲な分布は、おそらく、迅速かつ本質的に完全なPBAのPAAへの変換を説明する。しかしながら、PAAをグルタミンに接合させてPAGNを形成する酵素は、主として肝臓で見られ、腎臓には及んでいない(Moldave 1957)。したがって、PAAのPAGNへの変換は、例えば、a)接合能力が飽和されている場合(例えば、PAAプロドラッグの高用量によって);b)接合能力が損傷されている場合(例えば、重篤な肝機能障害及び/又は腎機能障害によって);c)PAAのPAGNへの接合のための基質(グルタミン)が、律速段階にある場合;d)PAAのPAGNへの変換に関与している酵素中の遺伝的に決定されている変動性(すなわち、遺伝子多型)、若しくはe)小児において、PAAをPAGNに変換する能力が、体表面積として測定される身体寸法で変動する理由で(Monteleone 2012)、のいくつかの環境下で影響を受ける場合がある。これら条件のいずれか1つの存在は、体内のPAAの蓄積につながる可能性があり、これが可逆的毒性を引き起こす。
【0022】
窒素貯留障害を有する被験者に対するPAAプロドラッグ投与の目標は、PAAの過剰な蓄積を回避すると同時に、窒素除去の所望のレベルを得るのに十分な投与量を提供することである。窒素貯留障害を有さない患者(例えば、神経変性疾患の患者)に対するPAAプロドラッグ投与の目標は、遺伝子発現の変更及び/又はタンパク質フォールディング又は機能によって、臨床的有益性を生じるために必要な循環代謝産物レベルを達成することである。しかしながら、窒素貯留障害を有する患者に対して適切な投与量を決定することに関連するいくつかの難しさが存在する。
【0023】
血漿PAAレベル及びPAGNレベルは、薬剤投与に関して採血するタイミング、肝機能、代謝酵素の利用可能度、代謝に必要とされる基質の利用可能度を含む種々の因子によって影響を受ける。付随するPAGNレベルを考慮することなく、レベルが毒性範囲にあるかどうかを判定するために外来患者の来診中にランダムにPAAレベルを抜き取ることは、投与量を報告するには不十分である。第1に、PAAレベルは、ピークレベルとトラフレベルとの間を大きく変動しながら、一日中に何倍も変化するからである。例えば、成人UCDの治療で使用するためにHPN−100を評価するHyperionの中心的な試験(試験番号HPN−100−006、治験番号NCT00992459)において、一連の血液試料が、被験者がHPN−100又はNaPBAを投与されている24時間にわたってPK試験用に採取された。最大濃度(典型的には、最後の一日用量の投与後、又は約12時間後に観察される)と最小濃度(典型的には、一晩の絶食後の朝又は0時間後に観察される)との間の変動を表す、24時間にわたるPAAに関する変動指数は、非常に高程度のバラツキを示した(NaPBAについては2150%、HPN−100については1368%)。したがって、単一のPAAレベルは、患者が一日を通して経験し得る最大PAAレベルを代表することができない。第2に、高血漿PAAレベルは、被験者が効果的にPAAをグルタミンと接合させ、PAGNを形成しているかどうかに関するポイントの指標というよりはむしろ、被験者が服用している高投与量の指標に過ぎない可能性があることである。したがって、付随する血漿PAGNレベルを考慮せずに高PAAレベルのみに投与量調整を基礎におくことは、患者に対する不必要な投与量減少及び処置不十分をもたらし得る。逆に、表面上、毒性に関連するレベルより低いと思われるPAAレベルは、PAAが効果的に利用されておらず、蓄積され得ることを示している状態で、付随するPAGNレベルがPAAと比例し得ないという事実を理解することなく良好な投与量の指標として判定されてしまう可能性がある。
【0024】
過去の試験は、PAAのPAGNへの変換が、患者間でかなり変動する飽和プロセスであり(例えば、Monteleone 2012参照)、肝障害を有する患者が、肝障害を有さない患者よりも高いPAAレベルを有することを示している(Ghabrilら著、「Glycerol phenylbutyrate(GPD) administration in patients with cirrhosis and episodic hepatic encephalopathy(HE)」、Digestive Disease Weekに投稿、2012年)。PAGN形成が上記因子のいずれかにより影響を受ける場合、PAAは蓄積し、廃棄窒素は体内から除去され得ないであろう。過去の試験はまた、健常な成人並びにUCD又はHEを有する患者を含む個人のごく一部が、おそらくは、PAAをPAGNに接合する上での患者差に起因して、集団の残部よりも高いPAAレベルを有すること、並びにPAAレベルが、投与量及び最終投与に対する血液試料の採取のタイミングによっては、一日のうちで何倍も変動すること、そのため、単一の血漿レベルは情報価値があり得ないことを示している(Lee 2010;Lichter 2011)。
【0025】
窒素貯留障害のためのPAAプロドラッグ療法の目標は、正常範囲内のアンモニアレベルを達成することであるが、血漿PAAレベルと血中アンモニアとの間には相関性はない。窒素貯留障害被験者は、通常「ドーズドトゥーエフェクト(dosed to effect)」であり、これは、尿素合成能力がない又は著しく欠陥がある被験者は、軽度の欠陥があるUCD患者が要求するよりもPAAプロドラッグの高い投与量を要求するという意味である。これらのより高い投与量は、一般的により高いPAAレベルに関連し、そのため、従来のPK/PD応答(より高い活性部分、すなわちPAAが、より低い有害物質、すなわちアンモニアと相関する)は適用されない。したがって、患者の血中アンモニアに基づいて、UCD又はその他の窒素貯留障害を有する患者に適用され得る単一の目標血漿PAAレベルは存在しない。
【0026】
重篤な肝障害を有する患者は、PAAプロドラッグで処置される場合、PAA接合酵素の不適切なレベルに起因するPAA蓄積のリスクが増大した状態にある。PAA接合酵素が容易に飽和される肝障害を有さないUCD患者もまた、PAA生成化合物で処置される場合、PAA蓄積のリスクが増大した状態にある。窒素貯留障害を有さないその他の患者は、窒素貯留状態の患者で蓄積するPAA生成化合物で処置される場合、PAGNを形成するための基質としてのグルタミンの制限された利用可能度のために、PAA蓄積のリスクが増大した状態にある。
【0027】
国際公開第09/134460号及び同第10/025303号は、尿中PAGNレベルに基づいてPAAプロドラッグの有効投与量を判定するための方法を開示し、PAA又はその他の代謝産物の血漿レベルよりも、有効投与量についての信頼性が高い指標であることが見出された。かかる測定値は、廃棄窒素除去を評価するために非常に有用ではあるが、これらは、プロドラッグを利用するための被験者の能力に関して完全な情報を提供してはいない。
【0028】
PAA、PAGN、及びアンモニアレベルは、被験者がPBAをPAGNに有効に変換しているかどうか(すなわち、PAAプロドラッグを有効に利用しているか)を判定するのに必要な情報を提供しないために、PAAプロドラッグの投与量を調整し、かかる調整を、窒素貯留障害を治療する方法に組み込む改善された方法の必要性が存在する。
【0029】
本明細書に開示されているように、血漿PAA:PAGN比が、窒素貯留障害及び/又は肝障害を有する被験者において、PAAプロドラッグ代謝の予想外の正確な尺度を提供することを見出した。PAAをPAGNに容易に変換することができ、PAAのPAGNの変換に関して飽和点に到達していない被験者は、血漿PAA:PAGN比が2.5以下(両者が、ug/mLで測定される場合)であり、PAA:PAGN比が2.5よりも高い被験者は、24時間にわたって、400μg/mL又は500μg/mLよりも高いPAAレベルを経験する著しく高いチャンスを有することが見出された。2.5未満よりも低い比を有する被験者が、400μg/mLを超えるPAAレベルを経験する1%の確率を呈し、並びに24時間中のいずれの時点でも500μg/mLを超えるPAAレベルを呈するチャンスがない状態で、2.5未満のPAA/PAGN比は、主として健常な成人又は青年期の被験者並びに正常な肝機能に関連する。一方、2.5を超える比を有する被験者は、中程度の肝障害を有する被験者、健常な被験者の部分集合又は比較的低い飽和ポイント及びPAAを接合しPAGNを形成することの問題を有するUCD患者、並びに低い体表面積を有する患者で一般的に見られた。一方、2.5を超える比を有する被験者は、一日中、400μg/mLを超えるPAAレベルを経験する20〜36%の可能性、及び500μg/mL以上のPAAレベルを経験する約10%の可能性を呈した。3を超える比率を有する被験者では、500μg/mLよりも高いPAAレベルを経験する可能性は、25%だけ増加した。これら結果は、原因不明の神経学的有害事象及び正常なアンモニアを有する患者における2.5を超える血漿PAA:PAGN比が、投与量調整が考えられるべきであることを示すことを示している。したがって、血漿PAA:PAGN比は、PAAのPAGNへの変換の効率を評価するための臨床的に有用な代用物を提供する。
【0030】
血漿PAA:PAGN比は、PAAプロドラッグが有効に利用されかつ窒素を捕捉しているかどうかを示し、したがって、このプロセスで、接合酵素の飽和度、基質の利用可能性、及び肝障害又は腎障害の可能な影響の間接的かつ簡単な尺度を提供する。この比を算出することは、既知の肝障害を有する被験者、高アンモニア血症とPAA毒性との間をオーバーラップしている徴候及び症状を提示する被験者、並びに薬剤の投与量を増加させているにもかかわらず臨床的に制御されていない被験者において有効な治療及び投与量調整を可能にする。
【0031】
当業者は、活性代謝産物のより高いレベルが、高い応答(PAGN産生によって測定される)及び効力の増加(すなわち、廃棄窒素除去)を比例的にもたらすことを予期するので、治療方針の決定を行う場合、PAAなどの活性代謝産物のPAGNなどの最終代謝産物に対する比を一般的に考慮しないであろう。しかしながら、本明細書に提供された結果は、PAAプロドラッグを評価し調整するために血漿PAA:PAGNを使用することが、PAA又はPAGNレベルを単独で使用するよりも予想外に優れていることを示している。一旦被験者が特定のPAA:PAGN比を越えると、活性部分を有効に利用していないこと、並びにPAAプロドラッグの投与量を更に増加させることが効力を増大させ得ず、実際にはPAA蓄積及び毒性をもたらし得ることの高い可能性が存在する。
【0032】
これら所見に基づいて、血漿PAA:PAGN比を基準として、窒素貯留障害を治療し、PAAの投与量を評価かつ調整するための方法が本明細書で提供される。全般的に、これら方法は、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、PAA:PAGN比を算出する工程と、この比が目標範囲内に入るかどうかを判定する工程とを含み、この判定が、PAAプロドラッグの投与量を調整するかどうかを少なくともある程度決定するために使用される。これらの方法において、PAA:PAGN比は、尿中PAGN排出、血漿アンモニア濃度、及び/又は所定の目標範囲内に入るPAAレベルを保証するために使用され得る。かかる方法が、より正確な投与量、より大きな効力、及びPAA蓄積に関連する毒性のリスクを低減することが可能であるという点で、これら方法は、PAAプロドラッグの投与量及び効力を評価するための過去に開発された方法を超える改善をもたらす。
【0033】
PAAプロドラッグ療法を受けている被験者における血漿PAGNに対する血漿PAAの比の目標範囲が本明細書に開示される。特定の実施形態では、目標範囲内に入るPAA:PAGN比を呈している被験者は、適切に投与されていると分類され、被験者がPAAプロドラッグ調整を必要としないことを意味し、一方目標範囲を外れるPAA:PAGN比を呈している被験者は、不適切に投与されていると分類され、被験者がPAAプロドラッグの投与量で調整を必要とすることを意味する。これら実施形態の具体例において、目標範囲を超えて入る血漿PAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量の減少が必要であるとして分類され、一方目標範囲よりも低く入る血漿PAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量の増加が必要であるとして分類される。他の実施例では、目標範囲を超える血漿PAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量の減少が必要であるとして分類され、一方、目標範囲を下回る血漿PAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量の増加が潜在的に必要であるとして分類される。更に他の実施形態では、目標範囲を超える血漿PAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量の減少が潜在的に必要であるとして分類され、一方目標範囲を下回る血漿PAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量の増加が潜在的に必要であるとして分類される。被験者が、被験者のPAA:PAGN比に基づいて、PAAプロドラッグの投与量を増加又は減少させることが潜在的に必要であると分類されるこれら実施形態では、投与量を増加又は減少させるかどうかについての決定は、目標の窒素排泄、実際の窒素排泄、症状の重篤度、障害の持続時間、年齢、又は全般的な健康状態等の生化学的プロファイル又は臨床的特性などの1つ以上の追加の特性に基づくことが可能である。
【0034】
特定の実施形態では、血漿PAA:PAGN比は、1〜2.5であり、これはこの範囲内に入るPAA:PAGNを呈している被験者が、適切に投与されているとして分類されることを意味する。他の実施形態では、血漿PAA:PAGN比の目標範囲は、1〜2、1〜1.5、1.5〜2、又は1.5〜2.5である。目標範囲が1〜2.5であるこれら実施形態の具体例において、PAA:PAGN比が2.5よりも高い被験者は、PAAプロドラッグの投与量の増加が必要であるとして分類され、一方、PAA:PAGN比が1を下回る被験者は、PAAプロドラッグの投与量の増加が潜在的に必要であるとして分類される。これら実施形態の具体例では、被験者の比が1よりも低ければ、被験者は、PAAプロドラッグの増加が必要であるとして分類されることが余儀なくされる。他の実施形態では、PAA:PAGN比が1未満の被験者は、1つ以上の臨床的又は生化学的特性が満たされている場合、PAAプロドラッグの投与量の増加が必要であるとしてのみ分類される(例えば、被験者は窒素貯留障害の重篤な症状を呈している)。
【0035】
特定の実施形態では、血漿PAA:PAGN比の目標範囲は、1つ以上の部分範囲を含んでもよく、異なる部分範囲内に入る被験者が、目標範囲内に入っているのも関わらず、異なって処置される。例えば、目標範囲が1〜2.5である場合、1より低く又は2.5よりも高いPAA:PAGN比を呈している被験者は、PAAプロドラッグの投与量での調整が必要であるとして分類されてもよい。PAA:PAGN比が目標範囲内であるが、特定の部分範囲内に入る被験者は、適切に投与されている、不適切に投与されている(すなわち、投与量調整が必要)、又は適切に投与されているがより頻繁なモニタリングが必要として処置され得る。例えば、PAA:PAGN比が2を超えるが2.5以下の被験者は、適切に投与されているが、より頻繁なモニタリングが必要であるとして分類されてもよい。
【0036】
特定の実施形態では、部分範囲境界又は特定の部分範囲内に入る被験者の治療は、例えば、目標の窒素排泄、実際の窒素排泄、症状の重篤度、障害の持続時間、年齢、又は全般的な健康状態等の生化学的プロファイル又は臨床的特性を含む被験者の特定の特性にある程度応じるであろう。例えば、特定の実施形態では、PAA:PAGN比が2〜2.5の部分範囲内に入る第1の被験者は、適切に投与されているが、より頻繁なモニタリングが必要であるとして分類されてもよく、一方、同一の部分範囲内に入る第2の被験者は、PAAプロドラッグの投与量の減少が必要であるとして分類されてもよい。同様に、PAA:PAGN比が1〜1.5の部分範囲内に入る第1の被験者は、適切に投与されているが、より頻繁なモニタリングが必要であるとして分類されてもよく、一方、同一の部分範囲内に入る第2の被験者は、PAAプロドラッグの投与量の増加が必要であるとして分類されてもよい。例えば、最近、特定の障害に関連する特に深刻な症状を呈した被験者は、PAA:PAGN比が1〜1.5を呈している場合、PAAプロドラッグの投与量の増加が必要として分類されてもよい一方、臨床的に制御されている被験者は、同一の部分範囲内に入る比にもかかわらず、適切に投与されているとして分類されてもよい。
【0037】
特定の実施形態では、以前にPAAプロドラッグの第1投与量を投与された被験者において、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害又は病状を治療するための方法が本明細書で提供される。これら方法は、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入るかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、PAAプロドラッグの第2の投与量を投与する工程とを含む。特定の実施形態では、PAA:PAGN比の目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。これら実施例の具体例では、PAA:PAGN比が1未満である場合、第2の投与量は第1の投与量を超え(すなわち、投与量が増やされる)、PAA:PAGN比が2.5を超える場合、第2の投与量は第1の投与量未満である(すなわち、投与量が減らされる)。他の実施形態では、被験者の1つ以上の他の特性に応じて、PAA:PAGN比が1未満である場合、第2の投与量は、第1の投与量を超えてもよく、又はそれ以下でもよい。特定の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜2.5である場合、すなわち、目標範囲内に入る場合、第2の投与量は第1の投与量と等しい。これら実施形態の具体例では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は2〜2.5である場合、第2の投与量は第1の投与量と等しくてもよいが、被験者はより頻繁なモニタリングを受けてもよい。特定の他の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は1〜2であり、被験者が、最近、PAAプロドラッグ投与が、有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状の深刻な症状を呈した場合、第2の投与量は第1の投与量を超えてもよい。同様に、PAA:PAGN比が1.5又は2を超えるが2.5以下である場合、被験者の特定の特性に応じて、第2の投与量は第1の投与量未満であってもよい。特定の実施形態では、第1の投与量に対する第2の投与量での増加又は減少は、正確な血漿PAA:PAGN比に依存する。例えば、血漿PAA:PAGN比がわずかに1未満であるに過ぎない場合、投与量をわずかだけ増加させることができるが、PAA:PAGN比が大きく1を下回る場合、投与量はより多く増加され得る。同様に、2.5を超える比を呈する被験者に対する投与量の減少は、比が2.5からどの程度上昇しているかに応じて変動し得る。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。特定の実施形態では、上記工程は、所望のPAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返すことが可能である。例えば、この方法は、第2の投与量の投与後に、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、PAAプロドラッグの第3の投与量を投与する工程とを含んでもよい。
【0038】
特定の実施形態では、以前にPAAプロドラッグが投与された被験者において、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害又は病状を治療するための方法が提供される。これら方法は、PAAプロドラッグの第1の投与量を投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、PAAプロドラッグの第2の投与量を投与する工程とを含む。特定の実施形態では、PAA:PAGN比の目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。これら実施例の具体例では、PAA:PAGN比が1未満である場合、第2の投与量は第1の投与量を超え(すなわち、投与量が増やされる)、PAA:PAGN比が2.5を超える場合、第2の投与量は第1の投与量未満である(すなわち、投与量が減らされる)。他の実施形態では、被験者の1つ以上の追加の特性に応じて、PAA:PAGN比が1未満である場合、第2の投与量は、第1の投与量を超えてもよく、又はそれ以下でもよい。特定の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜2.5である場合、すなわち、目標範囲内に入る場合、第2の投与量は第1の投与量と等しい。特定の実施形態では、目標範囲が、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は2〜2.5であるが、被験者がより頻繁なモニリングを受けることがある場合、第2の投与量は、第1の投与量に等しくてもよい。特定の他の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は2〜2.5であり、被験者が最近、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状の特に深刻な症状を呈している場合、第2の投与量は第1の投与量を超えてもよい。同様に、PAA:PAGN比が1.5又は2を超えるが、2.5以下である場合、被験者の特定の臨床的又は生化学的特性に応じて、第2の投与量は第1の投与量未満であってもよい。特定の実施形態では、第1の投与量に対する第2の投与量の増加又は減少は、正確な血漿PAA:PAGN比に依存する。例えば、血漿PAA:PAGN比がわずかに1未満であるに過ぎない場合、投与量をわずかだけ増加させることができるが、PAA:PAGN比が大きく1を下回る場合、投与量はより多く増加され得る。同様に、2.5を超える比を呈する被験者に対する投与量の減少は、比が2.5からどの程度上昇しているかに応じて変動し得る。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。特定の実施形態では、上記工程は、所望のPAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返すことが可能である。例えば、この方法は、第2の投与量の投与後に、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、PAAプロドラッグの第3の投与量を投与する工程とを含んでもよい。
【0039】
PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害又は病状を有する被験者に、PAAプロドラッグを投与する方法である。これら方法は、PAAプロドラッグの第1の投与量を投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、PAAプロドラッグの第2の投与量を投与する工程とを含む。特定の実施形態では、PAA:PAGN比の目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。これら実施形態の具体例では、PAA:PAGN比が1未満である場合、第2の投与量は第1の投与量を超え(すなわち、投与量が増やされる)、PAA:PAGN比が2.5を超える場合、第2の投与量は第1の投与量未満である(すなわち、投与量が減らされる)。他の実施形態では、被験者の1つ以上の追加の特性に応じて、PAA:PAGN比が1未満である場合、第2の投与量は、第1の投与量を超えてもよく、又はそれ以下でもよい。特定の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜2.5である場合、すなわち、目標範囲内に入る場合、第2の投与量は第1の投与量と等しい。特定の実施形態では、目標範囲は、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は2〜2.5であるが、被験者がより頻繁なモニリングを受ける場合がある場合、第2の投与量は、第1の投与量に等しくてもよい。特定の他の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は2〜2.5であり、被験者が最近、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状の特に深刻な症状を呈している場合、第2の投与量は第1の投与量を超えてもよい。同様に、PAA:PAGN比が1.5又は2を超えるが、2.5以下である場合、被験者の特定の生化学的又は臨床的特性に応じて、第2の投与量は第1の投与量未満であってもよい。特定の実施形態では、第1の投与量に対する第2の投与量の増加又は減少は、正確な血漿PAA:PAGN比に依存する。例えば、血漿PAA:PAGN比がわずかに1を下回るに過ぎない場合、投与量はわずかだけ増加することができるが、PAA:PAGN比が大きく1を下回る場合、投与量はより多く増加され得る。同様に、2.5よりも高い比を呈する被験者に対する投与量の減少は、比が2.5からどの程度上昇しているかに応じて変動し得る。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。特定の実施形態では、上記工程は、所望のPAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返すことが可能である。例えば、この方法は、第2の投与量の投与後に、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、PAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、PAAプロドラッグの第3の投与量を投与する工程とを含んでもよい。
【0040】
特定の実施形態では、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状を有する被験者において、目標の血漿PAA:PAGN比を達成するための方法が、本明細書で提供される。これら方法は、PAAプロドラッグの第1の投与量を投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程と、このPAA:PAGN比に基づいて、PAAプロドラッグの第2の投与量を投与する工程とを含む。PAA:PAGN比が目標範囲より高い場合、第2の投与量は第1の投与量未満である。PAA:PAGN比が目標範囲より低い場合、第2の投与量は第1の投与量を超える。これら工程は、目標の血漿PAA:PAGN比が得られるまで繰り返される。特定の実施形態では、目標の比は、1〜2.5又は1〜2の目標範囲内に入る。特定の実施形態では、第1の投与量に対する第2の投与量の増加又は減少は、正確な血漿PAA:PAGN比に依存する。例えば、血漿PAA:PAGN比がわずかに1を下回るに過ぎない場合、投与量はわずかだけ増加することができるが、PAA:PAGN比が大きく1を下回る場合、投与量はより多く増加され得る。同様に、2.5よりも高い比を呈する被験者に対する投与量の減少は、比が2.5からどの程度上昇しているかに応じて変動し得る。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。
【0041】
特定の実施形態では、PAAプロドラッグの第1の投与量を以前に投与された被験者において、PAAプロドラッグの投与量を評価するための方法が提供される。これら方法は、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量が有効であるかどうかを判定する工程と、を含む。特定の実施形態では、PAA:PAGN比に関する目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。これら実施形態の具体例では、PAA:PAGN比が1未満である場合、第1の投与量は低すぎると考えられ、PAA:PAGN比が2.5を超える場合、第1の投与量は高すぎると考えられる。他の実施形態では、被験者の1つ以上の追加の特性に応じての最終的判定において、PAA:PAGN比が目標範囲1未満である場合、第1の投与量は潜在的に低すぎると考えられる。特定の実施形態では、目標範囲は、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は2〜2.5であるが、被験者がより頻繁なモニタリングを受ける場合がある場合、第1の投与量は潜在的に有効であると考えられる。特定の他の実施形態では、PAA:PAGN比が1〜1.5又は1〜2であり、被験者が最近、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状の特に深刻な症状を呈している場合、第1の投与量は低すぎると考えられてもよい。同様に、特定の実施形態では、PAA:PAGN比が1.5又は2を超えるが、2.5以下である場合、被験者の生化学的又は臨床的特性に応じて、第1の投与量は高すぎると考えられてもよい。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。特定の実施形態では、この方法は、第1の投与量とは異なる第2の投与量を投与する工程を更に含み、これら実施形態の具体例では、上記工程は、所望のPAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返されてもよい。例えば、この方法は、第1の投与量とは異なる第2の投与量を投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの第2の投与量が有効であるかどうかを判定する工程とを含む。
【0042】
特定の実施形態では、PAAプロドラッグの第1の投与量を以前に投与された被験者において、PAAプロドラッグの投与量を調整するための方法が提供される。これら方法は、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整するかどうかを判定する工程と、を含む。特定の実施形態では、PAA:PAGN比に関する目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。目標範囲が1〜2.5であるこれら実施例の具体例では、1未満のPAA:PAGN比は、PAAプロドラッグの投与量が上方に調整される必要があることを示し、一方2.5よりも高いPAA:PAGN比は、PAAプロドラッグの投与量が下方に調整される必要があることを示唆する。他の実施形態では、1未満のPAA:PAGN比は、被験者の1つ以上の追加の特性に応じての最終的判定において、PAAプロドラッグの投与量が、潜在的に上方に調整される必要があることを示唆する。特定の実施形態では、目標範囲は、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、1〜1.5又は2〜2.5のPAA:PAGN比は、この投与量を調整する必要はないが、被験者がより頻繁なモニタリングを受けるべきであることを示唆する。特定の他の実施形態では、1〜1.5又は1〜2のPAA:PAGN比は、被験者が最近、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状の特に深刻な症状を呈している場合、この投与量を増やす必要があることを示唆する。同様に、特定の実施形態では、1.5又は2を超えるが、2.5以下であるPAA:PAGN比は、被験者の生化学的又は臨床的特性に応じて、この投与量を減らす必要があることを示唆してもよい。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。投与量を調整する必要があると決定が行われた特定の実施形態では、この方法は、第1の投与量とは異なる第2の投与量を投与する工程を更に含み、これら実施形態の具体例では、上記工程は、所望のPAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返されてもよい。例えば、この方法は、第1の投与量とは異なる第2の投与量を投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの第2の投与量を調整する必要があるかどうかを判定する工程とを含む。特定の実施形態では、第1の投与量に対比しての第2の投与量の増加又は減少は、正確な血漿PAA:PAGN比に依存する。例えば、血漿PAA:PAGN比がわずかに1を下回るに過ぎない場合、投与量はわずかだけ増加することができるが、PAA:PAGN比が大きく1を下回る場合、投与量はより多く増加され得る。同様に、2.5よりも高い比を呈する被験者に対する投与量の減少は、比が2.5からどの程度上昇しているかに応じて変動し得る。
【0043】
特定の実施形態では、被験者の窒素貯留障害を治療することで使用される、PAAプロドラッグの治療効力を最適化するための方法が提供される。これら方法は、PAAプロドラッグを以前に投与された被験者において、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲内に入っているかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの投与量を調整するかどうかを判定する工程と、必要に応じて、PAAプロドラッグの調整された投与量を投与する工程と、を含む。これら工程は、被験者が目標範囲(例えば、1〜2.5又は1〜2)内に入る血漿PAA:PAGN比を呈するまで繰り返される。目標範囲が1〜2.5である特定の実施形態では、1未満の血漿PAA:PAGN比は、この投与量が上方に調整される必要があることを示し、一方2.5を超える比は、この投与量を減らす必要があることを示唆する。特定の実施形態では、目標範囲は、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、1〜1.5又は2〜2.5のPAA:PAGN比は、この投与量を調整する必要はないが、被験者がより頻繁なモニタリングを受けるべきであることを示唆する。特定の他の実施形態では、1〜1.5又は1〜2のPAA:PAGN比は、被験者が最近、PAAプロドラッグ投与が有益であると期待される窒素貯留障害、又は別の病状の特に深刻な症状を呈している場合、この投与量を増やす必要があることを示唆する。同様に、特定の実施形態では、1.5又は2を超えるが、2.5以下であるPAA:PAGN比は、被験者の生化学的又は臨床的特性に応じて、この投与量を減らす必要があることを示唆してもよい。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。特定の実施形態では、投与量の増加又は減少の大きさは、正確なPAA:PAGN比に基づくことができる。例えば、血漿PAA:PAGN比がわずかに1を下回るに過ぎない場合、投与量はわずかだけ増加することができる一方、1を大きく下回る比は、投与量をより大きな程度まで増加させる必要があることを示唆してもよい。特定の実施形態では、上記工程は、被験者が、目標範囲内に入るPAA:PAGN比を呈するまで繰り返される。
【0044】
特定の実施形態では、PAAプロドラッグの処方された第1の投与量が、被験者に対して安全に投与され得るかどうかを判定するための方法が提供される。これら方法は、処方された第1の投与量を被験者に投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲を超えて入るかどうかに基づいて、処方された第1の投与量が安全であるかどうかを判定する工程と、を含み、目標範囲を超えて入るPAA:PAGN比は、第1の投与量がこの被験者に安全であり得ない又は潜在的に安全であり得ないことを示唆する。特定の実施形態では、PAA:PAGN比に関する目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。目標範囲が1〜2.5である特定の実施形態では、2.5より高いPAA:PAGN比は、PAAプロドラッグの投与量が安全ではなく、下方に調整される必要があることを示唆する。特定の実施形態では、目標範囲は、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、2〜2.5のPAA:PAGN比は、第1の投与量が安全であるが、被験者がより頻繁なモニタリングを受けるべきであることを示唆する。他の実施形態では、2〜2.5のPAA:PAGN比は、被験者の特定の生化学的又は臨床的特性を考慮しての安全性の最終的判定において、第1の投与量が潜在的に安全ではないことを示唆する。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。第1の投与量が安全ではなく、減少させる必要があるという決定がなされた特定の実施形態では、この方法は、第1の投与量よりも低い第2の投与量を投与する工程を更に含み、これら実施形態の具体例では、上記工程は、所望の血漿PAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返されてもよい。例えば、この方法は、第1の投与量よりも低い第2の投与量を投与する工程と、第2の投与量の投与後に血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲を超えるかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの第2の投与量が、この被験者に安全に投与され得るかどうかを判定する工程と、を含むことができる。
【0045】
特定の実施形態では、PAAプロドラッグの処方された投与量が、PAAプロドラッグの投与が有益であると期待される窒素貯留障害又は別の障害を治療するために有効であるかどうかを判定するための方法が提供される。これら方法は、被験者に処方された第1の投与量を投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲を下回るかどうかに基づいて、処方された第1の投与量がこの被験者に有効であるかどうかを判定する工程と、を含み、目標範囲を下回るPAA:PAGN比は、第1の投与量が障害を治療するために潜在的に有効ではない又は有効ではないことを示唆する。特定の実施形態では、PAA:PAGN比に関する目標範囲は、1〜2.5又は1〜2である。目標範囲が1〜2.5であるこれら実施形態の具体例では、1未満のPAA:PAGN比は、このPAAプロドラッグの投与量が、有効ではない可能性が高く、上方に調整される必要があることを示唆する。他の実施形態では、1未満のPAA:PAGN比は、この投与量が、この被験者の特定の生化学的又は臨床的特性に基づいて無効である可能性が高いどうかの最終的判定において、第1の投与量が潜在的に無効であることを示唆する。特定の実施形態では、目標範囲は、1つ以上の部分範囲に分割される。これら実施形態の具体例では、1〜1.5のPAA:PAGN比は、第1の投与量が有効である可能性が高いが、この被験者がより頻繁なモニタリングを受けるべきであることを示唆する。他の実施形態では、1〜1.5のPAA:PAGN比は、被験者の特定の生化学的又は臨床的特性を考慮して、この投与量が無効である可能性が高いかどうかの最終的判定において、第1の投与量が潜在的に無効であることを示唆する。特定の実施形態では、血漿PAA及びPAGN比の測定は、PAAプロドラッグが定常状態に到達するのに十分な時間を置いた後に(例えば、PAAプロドラッグ投与後48時間、48〜72時間、72時間〜1週間、1週間〜2週間、又は2週間超)、行われる。第1の投与量が無効である可能性が高く、増加させる必要があるという決定がなされた特定の実施形態では、この方法は、第1の投与量よりも高い第2の投与量を投与する工程を更に含み、これら実施形態の具体例では、上記工程は、所望の血漿PAA:PAGN比(例えば、1〜2.5又は1〜2)が得られるまで繰り返されてもよい。例えば、この方法は、第1の投与量よりも高い第2の投与量を投与する工程と、第2の投与量の投与後に血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、このPAA:PAGN比が目標範囲を超えるかどうかに基づいて、PAAプロドラッグの第2の投与量が、障害を治療するために無効である可能性が高いかどうかを判定する工程と、を含むことができる。
【0046】
特定の実施形態において、窒素貯留障害を有する患者でPAAプロドラッグによる療法をモニタリングするための方法が本明細書で提供される。これら方法は、PAAプロドラッグを被験者に投与する工程と、血漿PAAレベル及びPAGNレベルを測定する工程と、血漿PAA:PAGN比を算出する工程と、を含む。これら方法では、目標範囲(例えば、1〜2.5又は1〜2)内に入るPAA:PAGN比は、この療法が有効であることを示唆する一方、この範囲から外れる比は、療法が調整される必要があることを示唆する。特定の実施形態では、PAAプロドラッグ投与の有効性を評価するために、血漿PAA:PAGN比は、同じ被験者から以前に得たPAA:PAGN比と比較される。
【0047】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は、国際公開第09/134460号及び同第10/025303号に記載されている方法と合わせて用いられてもよい。これら実施形態では、血漿PAA:PAGN比に加えて、尿中PAGNレベルが決定されてもよく、両測定値が、PAAプロドラッグの投与量を評価又は調整するために使用される。
【0048】
本明細書で使用する場合、「PAAプロドラッグ」とは、PAAを含有するか、又は被験者に投与後にPAAに変換される任意の薬剤、若しくはその任意の製薬上許容され得る塩、エステル、酸、又は誘導体を指す。PAAプロドラッグは、経口又は非経口投与を含む任意の経路を介して投与され得る。PAAプロドラッグは、PAA(例えば、PAAの塩又はエステル;PBA若しくはNaPBAなどのその塩又はエステル)に直接的に変換されてもよく、PAAプロドラッグは、中間体(例えば、HPN−100などの前プレドラッグ)を介してPAAに変換されてもよい。PAAの他の例として、前プロドラッグ4−フェニルブチレートが挙げられる。
【0049】
本明細書で説明するPAAプロドラッグの投与量の調整とは、投与当たりの薬剤の量の変更(例えば、3mLの第1の投与量から6mLの第二の投与量への増加)、特定の時間期間内の投与の回数の変更(例えば、一日1回から一日2回への増加)、又はこれらの任意の組み合わせを指すことができる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする被験者」とは、PAAプロドラッグの投与が有益であると期待される病状を有する又は病状を有することが疑われる任意の患者を指す。例えば、被験者は、例えばUCD、HE、及び/又は腎不全/ESRD窒素貯留障害を有する患者又は窒素貯留障害を有することが疑われる患者であり得る(Lee 2010;McGuire 2010;Lichter 2011)。同様に、被験者は、例えば癌(Thiebault 1994;Thiebault 1995)、ハンチントン舞踏病(Hogarth 2007)、筋委縮性側索硬化症(ALS)(Cudkowicz 2009)、及び脊髄性筋委縮症(SMA)(Mercuri 2004;Brahe 2005)などの神経変性疾患、代謝障害(例えば、メープルシロップ尿症(MSUD)(Bruneti−Pieri 2011)、若しくは鎌状赤血球症(Hines 2008)を含む、PAAプロドラッグの投与が有益であると期待される別の病状を有するか、又は別の病状を有することが疑われる場合もある。
【0051】
PAAプロドラッグを以前に投与されたことがある被験者は、定常状態に到達するのに十分な任意の持続時間にわたって投与されていることが可能である。例えば、この被験者は、2〜7日間、1週間〜2週間、2週間〜4週間、4週間〜8週間、8週間〜16週間、又は16週間以上の期間にわたって投与され得る。
【0052】
本明細書で使用する場合、「PAAプロドラッグ」とは、PAAを含有するか、又は被験者に投与後にPAAに変換される任意の薬剤、若しくはその任意の製薬上許容され得る塩、エステル、酸、又は誘導体を指す。PAAプロドラッグは、経口又は非経口投与を含む任意の経路を介して投与され得る。PAAプロドラッグは、PAA(例えば、PAAの塩又はエステル;PBA若しくはNaPBAなどのその塩又はエステル)に直接的に変換されてもよく、PAAプロドラッグは、中間体(例えば、HPN−100などの前プレドラッグ)を介してPAAに変換されてもよい。PAAの他の例として、前プロドラッグ4−フェニルブチレートが挙げられる。
【0053】
本明細書で説明するPAAプロドラッグの投与量の調整とは、投与当たりの薬剤の量の変更(例えば、3mLの第1の投与量から6mLの第2の投与量への増加)、特定の時間期間内の投与の回数の変更(例えば、一日1回から一日2回への増加)、又はこれらの任意の組み合わせを指すことができる。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「治療する、処置する(treat)」、「治療、処置(treating)」、又は「治療、処置(treatment)」とは、障害を予防すること、障害の発症の開始又は速度を遅くすること、障害の発症のリスクを低減すること、障害に関連する症状の発生を抑制又は遅延させること、障害に関連する症状を低減又は終わらせること、障害の完全又は部分的退縮を生じさせること、若しくはこれらのいくつかの組み合わせを指すことができる。例えば、治療される障害が窒素貯留障害である場合、「治療、処置」とは、廃棄窒素レベルを閾値よりも下に低下させること、廃棄窒素レベルが閾値レベルに到達することを防止すること、上昇した廃棄窒素レベルに関連する症状を低減又は終わらせること、又はこれらの組み合わせを指すことができる。
【0055】
本明細書に開示されている治療(処置)の方法に関して、PAA:PAGN比の解釈は、治療目的の関わりの上で実行される。例えば、窒素貯留障害を治療される被験者においては、治療目的は、PAGNの形態の廃棄窒素の排泄である。PAAプロドラッグ投与が有益であると期待されるその他の障害(例えば、神経変性障害、MSUD)を治療される被験者においては、治療目的は、PAA及び/又はPBAの目標血漿レベルを安全に達成することにある。
【0056】
血漿血液試料を得るために、当該技術分野において既知の任意の方法を使用することができる。例えば、被験者から得た血液は、ヘパリン又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有するチューブに採取され得る。特定の実施形態では、試料は、氷上に配置され、遠心分離して採血から15分以内に血漿を得て、2〜8℃(36〜46°F)で保存され、採血から3時間以内に分析され得る。他の実施形態では、血漿試料は、凍結乾燥され、≦−18℃(≦0°F)で保存され、その後分析される。例えば、試料は、凍結後0〜12時間、12〜24時間、24〜48時間、48〜96時間、又は試料が安定性を示した任意のその他の時間枠内で分析され得る。これら実施形態の具体例では、血液試料は、2〜8℃などの0〜15℃の間の温度で保存される。他の実施形態では、血液試料は、0℃よりも低く、又は−18℃よりも低く保存される。
【0057】
血漿試料中のPAA及びPAGNレベルの測定は、当該技術分野において既知の技術を使用して行われる。例えば、PAA及びPAGNレベルは、液体クロマトグラフィー/質量分析を用いて測定することができる。
【0058】
本明細書に記載されている実施形態の任意の組み合わせが想到され得る。個々の特徴は、異なる請求項に含まれ得るが、これらは有利に組み合わせることができる。
【0059】
以下の実施例は、特許を請求する本発明をより詳細に例示するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特定の材料が記載されているが、これは例示の目的に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、発明的な能力を行使することなく、並びに本発明の範囲から逸脱することなく、均等な手段又は反応物を展開することができる。本発明の範囲の限度内になお入りつつ、本明細書に記載されている手順で多くの変形を行うことができることを理解されたい。かかる変形例が本発明の範囲内に含まれることは、本発明者の意図するものである。
【0060】
実施例
実施例1:UCD及びHE被験者におけるPAA:PAGN比の分析
血漿PAAレベル及びPAGNレベル並びにPAA:PAGN比を、健常な成人、臨床的非代償性Child−Pugh B型又はC型肝硬変を有する重症の肝機能障害の成人、並びにUCD患者(生後29日以上)の種々の臨床試験から得た4000個を超える血漿試料で分析した。健常な成人及び肝能障害を有する成人はHPN−100を服用し、一方UCDの被験者は、HPN−100及びNaPBAの双方を服用した。臨床試験集団を、表1及び2に概要をまとめている。
【表1】
【表2】
【0061】
分析集団Aは、上記記載の全ての試験に由来するPAA及びPAGN代謝産物の定量可能なレベルからなる。分析に使用された全てのPAA及びPAGNレベルは、一旦NaPBA又はHPN−100による投与が定常状態に到達したときに採取された血液試料に基づく。分析集団Bは、薬物動態が分析され、採血が定常状態で12又は24時間にわたって行われ、投与に関して血液採取のタイミングが既知である試験中のPAA及びPAGN代謝産物の定量可能なレベルからなる。上記の試験群1、3及び4中の被験者は、これらのポイントに寄与した。分析集団Bは、投与がNaPBA又はHPN−100で行われ得た場合、PAAレベルが投与に対して時間と共にどのように変化するかを検討する分析のソースであった。分析集団Bに適するために、投与期間中の投与の開始に時間に対する採血の時間を記録した。
【0062】
代謝産物レベルに関するデータを、広範囲な年齢段階−乳児、幼児、小児、青年、及び成人にわたってプールした。18歳未満として定義された全ての小児は、UCD患者であった。採血ポイントの大部分は、成人に由来した(89.4%)。新生児(生後29日未満)は、治験薬HPN−100に関する臨床試験のいずれにおいても試験しなかった。採血ポイントの集団を、男性と女性間でほぼ均等に分けた(女性57.3%、男性42.7%)。
【0063】
PAA:PAGN比の予測能力を検討するために、投与開始から最大24時間のいずれのPAA値も400μg/mLに等しいか又はこれを超える場合、若しくは500μg/mLに等しいか又はこれを超える場合、被験者がPAAの高い値を達成したとみなされた。PAA:PAGN比を、3つの分類種別スキーム:a.)[0−<=2.0],[>2.0]、b.)[0−<=2.5,>2.5]、c.)[0−<=3.0,>3.0]にグループ分けした。反復測定分類別結果を、リンク関数にロジットを、独立変数として比カテゴリーを、並びに反復測定因子としてSUBJECTIDを用いる一般化推定方程式(GEE)を使用してモデル化した。予測可能性についての信頼区間を、Davison&Hinkley著、「Bootstrap Methods and Their Application」、Cambrige Univ.Press(1997)、358−362頁に詳説されているように、元のデータの1000個の再サンプリングのブートストラップ推定によって算定した。
【0064】
結果を
図2〜5にまとめる。いかなる所定の時点においても、血漿PAAレベルとPAA:PAGN比との間で顕著な曲線関係が観察された。
図2Aは、PAA及びPAGNの双方について定量可能値を示した血液試料間のμg/mLにおけるPAA:PAGN濃度の比と絶対PAAレベルとの間の関係を示している。比の軸(すなわち、「X」軸)は、対数(底がe)にプロットされる。1.0未満の比については、比の増加は、PAAの対応するレベルの上昇又は増加に関係しない。1.0よりも高い比については、PAAレベルの緩徐な増加、並びに2.0の比の近辺で開始するPAAレベルの注目すべき急増が存在する。この結果は、PAA前駆体のPAGN産物に対する比が、より高い値に近づくとき、PAAの値もそれに応じて高いことを示唆する。前駆体(PAA)の産物(PAGN)に対する比におけるこの増加は、PAAがHPN−100又はNaPBAに由来するかどうかにかかわらず、無効なPAAからPAGNへの変換を意味する。
【0065】
過剰なPAA蓄積が投与の関数であるかどうかを決定するために、上記記載のプロットを繰り返したが、この時点で、採血時にNaPBA又はHPN−100の割り当てられる投与レベルを調整した。UCD集団は、短期療法及び長期療法の両方を受ける小児及び成人の混合から成るために、UCD患者に割り当てられた総一日量を、体表面積に正規化し、PBAと同等のgm
2で報告した。健常な被験者及びHE被験者は全て成人であって、被験者に割り当てられた用量は、体表面積で調整されなかった。健常及びHE被験者に対する用量レベルは、HPN−100と同等のmLで報告した。UDC被験者に対する用量レベルは、NAPBAと同等のグラムで報告した。
【0066】
PAAの増加に伴いより高い比として示されるPAGNを超えるPAAの過剰は、全ての投与群、疾患集団、及びUCD患者における治療の種類(すなわち、NaPBA及びHPN−100の双方に適用)に対して明らかであった。この結果は、産物(PAGN)に対する前駆体(PAA)の比の分析が、肝機能障害を有する又は有さない患者(UCD患者は、被験者の尿素回路機能障害は別にして、正常な肝機能を有する)の間の変換の効率性及び独立して用量の予測値であり得ることを示唆する。当然の結果として、肝機能障害(例えば、肝硬変)の存在それ自体が、特定の患者が高PAAレベルのリスクにあるかどうかの信頼のおける決定因子を必要としない。
【0067】
PAA:PAGN比が極端に高い血漿PAA濃度を予測する能力を、投与前(推定トラフ値)、投与後12時間(推定ピーク値)で算出されたPAGNに対するPAAの比、並びに投与前及び投与後12時間の間の随時に遭遇した最大比に基づいて、被験者が24時間の投与時間中のいつでも400又は500μg/mLのPAA値を超える確率をモデル化することによって判定した。この0〜12時間の間隔は、実際的な理由で選択され、なぜなら、これが通常の外来来診に相当する全間隔を包含するからである。
【0068】
被験者は所定の臨床試験内で複数の投与期間を有する可能性があったために、確率は、一般化推定方程式を用いてモデル化した。比の3つの分類種別:a.)[0−<=2.0],[>2.0]、b.)[0−<=2.5,>2.5]、c.)[0−<=3.0,>3.0]をモデル化した。モデルを、極値と考えられる500μg/mLを超える又はこれに等しいPAA値で繰り返した。結果を表3にまとめる。
表3:PAA:PAGN比(全被験者の組み合わせ)による24時間のPKサンプリング中に遭遇する極限PAA値の確率
【表3】
分析は、個々の比のカットオフ分類について独立して繰り返した。
*リンク関数にロジットを用いた一般化推定方程式から誘導した確率。
**元のデータの1000個の再サンプリングを用いて、Davison&Hinkley著、「Bootstrap Methods and Their Application」、Cambrige Univ.Press(1997)、358−362頁に開示された方法から誘導した信頼区間。
【0069】
PAAが500μg/mLに等しい又はこれを超える試料のスパース性のために、400μg/mLが、より安定かつ予測可能な目標(すなわち、高い)値であることが判明した。考えられる比の3つの分類種別のうち、2.5のカットポイントが、高値を経験するリスクの最適な判別子及び予測因子であった。例えば、表3を参照すると、投与後t=12時間で、PAA:PAGN比が>2.5の被験者は、24時間のpKサンプリング時間中のある時に、PAAで400μg/mLを超える36.4%のチャンス(95%c.i.=0.125、0.752)を有する。
【0070】
結果は、投与前、投与の開始から12時間で血漿から算出される比であっても、又は投与前と投与の開始後12時間の間に遭遇した最大比であっても、結果は同様であった。
【0071】
血漿PAAレベルの非常に高い日内変動のために、投与後のある時点で2.0を超えるとして観察されたPAA:PAGN比は、その後の時点では、2.0を超えたままではない場合がある。PAA:PAGN比の測定値を得るために最適な時間(すなわち、投与時間中にPAA:PAGN比が常に2.0に等しい又はこれを超える被験者を正確に検出する最大の確率を与える時間)を評価するために、比を0(投与前)並びに投与後2、4、6、8、10、及び12時間で評価し、GEE方法論を用いてモデル化した。時点間の感度におけるペアワイズの差を、LS平均を用いて評価し、信頼区間を算出した。
【0072】
図3は、常に2.0に等しい又は2.0を超える比プロファイルを正確に検出する推定確率をプロットしている。時間=2時間及び時間=10時間を除いて、投与後0、4、6、8、及び12時間の時点が、投与時間中のいくつかの時点で2.0のPAA:PAGN比に等しい又はこれを超える被験者を検出する上で等しく有効であった。感度は、75〜90%の範囲であった。時間内差を分析するのに、t=10時間で採集された血液試料はほとんどなかった。予測値における差を観察した。例えば、投与後t=2時間で採取された血液試料は、投与後t=0(p=0.036)、4(p=0.032)、又は6時間(p=0.017)で採取された試料よりも、2.0のPAA:PAGN比に等しい又はこれを超える被験者を検出する著しく低い確率を示した(p値は、他の時点とのt=2時間の確率の比較である)。同様に、投与開始後t=12時間で採取された試料は、その比が常に2.0に等しい又は2.0を超える被験者を検出する最大の確率(87%)を示した。しかしながら、実際の臨床的目的のために、時点間の予測値における差は、PAA値それ自体の劇的に大きな変化性に比べれば取るに足らないものであって、ランダムな採血がPAA:PAGN比の測定に用いられ得ることを意味している。
【0073】
被験者集団を、投与時間中の24時間のPKサンプリング時間の間に達成された最大PAA:PAGN比に従って、コホートに分割することによって、経時的なPAA:PAGN比の変動の更なる調査を行った。コホートは、「低い」(最大比<=2.0)、「中間」(最大比:2.01−2.50)、及び「高い」(最大比>2.50)に分けられた。次いで、各コホートを、投与後t=0(投与前)、4、6及び8時間で、投与時間中に経時的に追跡し、コホート内のPAA:PAGN比の分布を、各時点における箱髭図を用いて要約した。この分析は、PK−時点特異的集団(分析集団B)については全体的に、並びに各疾患の部分集団については別々に行った。
【0074】
図4は、組み合わされた全ての被験者についての比の進行をプロットしている。図のスペースを三等分するプロットの各「パネル」は、1つのコホートを表している。高いコホート中の被験者は、一日を通して、特定の時点ではなく、高い比を示した。したがって、このコホート中の被験者(n=73人の被験者/投与時間)は、高い比(中間の比>2.5)で始まり、最初の12時間にわたって高いままであった。この調査結果は、比における感度の一貫性を明らかにした
図3でプロットされた結果と一致する。
【0075】
PAAレベルとPAA:PAGN比との間の関係を、比を「低い」(最大比<=2.0)、「中間」(最大比:2.01−2.50)、及び「高い」(最大比>2.50)に分類することによって、更に分析した。前の分析とは異なり、この分析は、被験者/投与時間を特定のコホートには関連させなかった(すなわち、全試料及び全時点が、被験者又は投与時間に関して組み合される)。
【0076】
図5Aは、全被験者についてのPAA:PAGN比の上記分類によってグループ分けされたPAAレベルの箱髭図を示し、一方
図5Bは、UCD及びHE被験者のみについての同様な箱髭図を示している。結果は、両分析被験者集団で非常に類似した。統計的に有意な全体クラスカル・ワリス検定に続いて、PAAレベルのペアワイズ比較を、(0.0167)のボンフェローニアルファ補正を用いるウィルコクソン・マン・ホイットニーの検定を用いて行った。両分析被験者集団において、2.5を超える比は、2.0〜2.5の間の比又は2.0未満の比のいずれかよりも、著しく高いPAAレベル(p<0.001)を示した。更に、2.0〜2.5の間の比は、2.0未満の比よりも、著しく高いPAAレベルに関連した(p<0.001)。
【0077】
実施例2:UCD患者における用量調整及びモニタリングに対するガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者1は、15歳の部分的OTCの女児であり、患者のUCDに対する維持療法として、HPN−100を9mL/日の用量で服用していた。この患者のアンモニアは、約6ヶ月前の先回の普段の通院以来、制御されていたが、この3日間、頭痛及び食欲不振を訴えた。一晩の絶食後、アンモニア及び代謝産物レベルを試験し、アンモニア 55μモル/L、PAA及びPAGNの低いレベルの定量値、という結果を得た。医師は、服薬の不遵守であることを疑い、昼食後の日中数時間で試験を繰り返し、以下の結果を見出した:アンモニア117μモル/L;PAA 55μg/L、PAGN 121μg/L、及び約0.5のPAA:PAGN比。患者は、服用を完全に遵守してきたことを示した。0.5のPAGN比に対するPAAの比及び117のアンモニアに基づいて、医師は、HPN−100の投与量を12mL/日に増加させることを決定した。HPN−100の新しい用量による処置から1週間後、全ての症状は解消され、一晩の絶食後の実験室試験は、アンモニア9μモル/L;PAA 12.9μg/L、9μg/LのPAGN、及び1.3のPAA:PAGN比、という結果を得た。日中の試験は、以下の結果を示した:アンモニア35μモル/L、PAA 165μg/L、PAGN 130μg/L、及びPAA:PAGN比約1.2、という結果を得た。この患者は、制御されているとみなされ、用量は12mL/日で留まった。
【0078】
実施例3:UCD患者における用量調整に対するガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者2は、1歳のOTCの男児であり、一日当たりNaPBAの600mg/kgを服用していた。この患者は栄養不良と傾眠状態を示した。実験室試験は、<9μモル/Lのアンモニアレベル、530μg/LのPAAレベル、178μg/LのPAGNレベル、及び>2.5のPAGNレベルを示し、NaPBAの用量が、患者がPAGNに効率的に変換できるものを超えていることを示唆した。治療担当医は、NaPBAの用量を450mg/Kg/日まで減少させることを決定した。新しい投与量による処置から1週間後、患者の母親は、患者がよく食べ、もはや傾眠状態ではないことを報告した。実験室試験は、以下を示した:アンモニア20μモル/L、PAA 280μg/L、及びPAGN 150μg/L。
【0079】
実施例4:UCD患者における高PAAレベルの重要性の評価に対するガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者3は、25歳のOTCの女性であり、HPN−100で処置されていた。正常限度内の臨床的及び血中アンモニアを達成するために、医師は、HPN−100の用量を数回増加させねばならなかった。患者3は、過去一ヶ月間、UCDに対して18mL/日の用量で処置された。次の来院時に、この患者はいずれの異常も訴えず、アンモニア22μモル/L、PAA 409μg/L、PAGN 259μg/L、及びPAA:PAGN比1.5、という実験室試験結果が報告された。患者の比較的高いPAAレベルにもかかわらず、PAA:PAGN比は、患者が適切に処置されていること、並びに患者が服用している高用量のHPN−100を効率的に代謝することができていることを示唆した。医師は、この治療を計画通りに続けることを決定した。
【0080】
実施例5:脊髄性筋委縮症及び合併肝疾患を有する患者における用量調整に対するガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者4は、2歳の女児であり、II型SMAに対してNaPBAの液体形態で処置されていた。この患者はまた、患者の感染した母親から周産期に獲得された慢性C型肝炎ウイルス感染にも冒されていた。患者は、出生後、黄疸発症を伴い、トランスアミナーゼの軽度から中等度の上昇を有し、最近の肝臓生検は、慢性肝炎及び肝硬変の存在を確認した。この患者は、一日当たり4gのNaPBAを服用し、医師は、患者の成長のために、投与量を増加させたかったが、肝臓機能障害が薬剤代謝に及ぼす影響について憂慮した。医師は血漿PAAレベル及びPAGNレベル試験の指示を出し、結果は以下の通りであった:PAA 110μg/L、PAGN 85μg/L、1.2のPAA:PAGN比。医師はNaPBAの投与量を6g/日まで増加させることを決定し、新規レジメンによる処置の1週間後に、血漿代謝産物レベル測定を繰り返した。結果はPAA 155μg/L、PAGN 110μg/L、及びPAA:PAGN比1.4、であった。患者の肝臓が、6gのNaPBAを代謝するための適切な能力を有すると考えられるために、医師は、患者の投与量を6g/日のNaPBAにすることを決めた。
【0081】
実施例6:ハンチントン舞踏病及び合併肝疾患を有する患者における用量調整に対するガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者5は、数年前にハンチントン舞踏病と診断された56歳の男性であった。また、この患者は、アルコール乱用歴を有し、昨年、アルコール性肝硬変と診断された。患者の妻は、患者を、PBAを遅い速度で送達する被験薬が関与する臨床試験に登録したので、薬剤の一日1回投与が可能となった。この試験は、臨床的に安全な場合、処置の2週間後に段階的用量増加をオプションとして有していた。プロトコールは、肝機能障害を有する患者を除外しなかったが、治験担当医は、患者の肝臓機能障害に起因する、PBA代謝及び高用量でのPAA蓄積の可能性を憂慮した。治験担当医は、この患者を低用量群に組み入れ、被験薬による処置の6週間後に、血漿PBA、PAA及びPAGN測定を実施した。患者は、特定の異常がない状態で、患者のHD症状の改善を報告した。処置から6週間後の血漿代謝産物レベルは、PBA 45μg/L;PAA 159μg/L、及びPAGN 134μg/Lである。この薬剤の投与量は50%まで増加された。新規投与量による処置の4日後に、患者は、傾眠の短い発症を訴え始めた。治験担当医は、血液試験を行い、PBA 44μg/L;PAA 550μg/L、PAGN 180μg/L、及びPAA:PAGN比>3を認めた。この2.5を超えるPAA:PAGN比は、患者の肝臓が薬剤のより高い用量を効率的に代謝できないことを示唆し、したがって、治験担当医は、被験薬の投与量を減少させ、段階的用量増加を継続しなかった。
【0082】
実施例7:MSUDを有する患者における用量調整のガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者6は、MSUDに対してHPN−100で処置されている4歳の女児であった。この患者は、6mLのHPN−100を一日1回服用し、医師は、患者の成長のために、投与量を増加させたかった。薬剤投与後の日中の血漿PAA及びPAGN測定値は以下の通りであった:PAA 550μg/L、PAGN 180μg/L、及び>2.5のPAA:PAGN比。医師は、HPN−100のより低い投与量がこの患者には有効ではないと考え、高いPAA:PAGN比に基づいて、6mLのQD代わりに3mLのBIDに投与レジメンを変更することを決定した。新規のBIDレジメンによる処置の1週間後に、試験が繰り返され、PAA 350μg/L、PAGN 190μ/L、及びPAA:PAGN比1.8、という結果を得た。1.8の比に基づいて、医師は、患者が分割用量で与えられる6mL/日の総容量を患者が有効に活用することができるが、ボーラスとしては有効に活用できないために、3mL BIDのままにしておくことを決めた。
【0083】
実施例9:HE及び肝障害を有する患者を監視するためのガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
患者7は、3年前にアルコール性肝硬変と診断された、55歳の白人男性であった。患者のトランスアミラーゼレベルは、少しずつ上昇し、最近、軽度のHEの発症を経験した。グレード2のHE発症のために入院した時点での最近の評価では、患者は、85μモル/Lの血中アンモニア、55U/LのALT、及び47U/LのAST、並びに11の算出されたMELDスコアを示した。医師は、この患者にアンモニア捕捉薬療法を開始することにして、HPN−100の6mL BIDで患者を処置した。3か月後に、患者は経過観察検診のために来院し、この期間中には、患者はHEの発症を経験しなかった。患者の実験室評価は、30μモル/Lのアンモニア、285μg/mLの血漿PAAレベル、120μg/LのPAGNレベル、66U/LのALT、50U/LのAST、及び算出されたMELDスコア13、を示した。医師は、患者の肝機能が悪化している可能性があることを疑い、PAAの蓄積の可能性について憂慮した。医師はPAGNに対するPAAの比を2.4と算出し、患者がめまい、頭痛、又は吐き気などのいかなる異常な症状も経験していないことを確認した。患者のアンモニア制御、特定の副作用の欠如、及び臨床的寛解を考慮して、医師は、用量を変更せずに、2週間にわたって患者を観察し、実験室試験を繰り返すことを決めた。医師はまた、患者がこれら症状のいずれかを経験した場合、すぐに医師に連絡することを警告した。2週間の間に、患者の実験室評価は、先の来院時の2.3のPAGNに対するPAAの比から本質的に変化せず、患者は、いかなる異常な症状も報告しなかった。2.5未満のPAA:PAGN比に基づいて、医師は、次回の定期的通院まで、HPN−100の6mLのBIDで継続投与することを決定した。
【0084】
実施例9:パーキンソン病を有する患者におけるモニタリング処置のガイドとしてのPAA:PAGN比の分析
HPN−100の処置を、パーキンソン病を有する患者で、一日2回、4mLの用量で開始し、臨床的有益性が現われることが期待される目標のPAAの循環レベルを生じた。処置の1週間後に、患者の50μg/mLの循環PAAレベルが、目標範囲よりも低くなり、PAA:PAGN比が0.9であることを決定した。医師は、HPN−100の用量が安全に上方に調整され得るとの結論に達し、用量を6mL BIDに50%まで増加させた。1週間後のPAAレベル及びPAA/PAGN比が、それぞれ75μg/mL及び1.4であると確認した。75μg/mLは、治療的PAAの目標レベルよりも未だ低く、1.4というPAA:PAGN比は、PAAのPAGNへの変換が飽和されていないことを示唆したために、患者の投与量を再び、9mL BIDに50%まで増加させた。1週間後、患者のPAA及びPAA:PAGN比が、それぞれ159μg/mL、及び2.6であることを確認した。目標PAAレベルは、ここでほぼ治療的レベルであったが、PAA:PAGN比は、PAAのPAGNへの変換は、飽和に近づいている状態であることを示唆したために、HPN−100の投与量を8mL BIDに減少させて、この時点で患者の循環PAAレベルを判定し、目標範囲に近いことが判定され、患者のPAA:PAGN比を2と決定した。患者の用量を更に調整し、患者の監視が続けられた。
【0085】
上述のように、前述の内容は、本発明の種々の実施形態を例示するように意図するものに過ぎない。上記記載の特定の変形例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。均等本発明の範囲から逸脱することなく、種々の均等物、変更及び変形例が想到し得ることは当業者には明らかであり、かかる均等な実施形態は本明細書に含まれるべきであると理解される。本明細書に引用された全ての引用文献は、本明細書中に完全に記載したものとして援用される。
【0086】
引用文献
1. Brahe Eur J Hum Genet 13:256(2005)
2. Bruneti−Pieri Human Molec Genet 20:631(2011)
3. Brusilow Science 207:659(1980)
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