特許第6234464号(P6234464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234464フレキソ印刷または凸版印刷における印刷版の研削の研削プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234464
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷または凸版印刷における印刷版の研削の研削プロセス
(51)【国際特許分類】
   B41N 3/04 20060101AFI20171113BHJP
   B41N 1/12 20060101ALI20171113BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B41N3/04
   B41N1/12
   B41C1/00
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-532347(P2015-532347)
(86)(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公表番号】特表2015-532898(P2015-532898A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2013066774
(87)【国際公開番号】WO2014048632
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】102012109071.8
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501158848
【氏名又は名称】コンテイテヒ・エラストマー−ベシヒトウンゲン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フュルグラーフ・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ラシュドルフ・トルステン
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−326938(JP,A)
【文献】 特表2001−524901(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/005147(WO,A1)
【文献】 特開2000−318330(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0197513(US,A1)
【文献】 国際公開第2001/087600(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 3/04
B41N 1/12
B41C 1/00
B41C 1/18
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷または凸版印刷の分野における印刷版の研削プロセスであって、研削される材料が、エラストマー材料か、またはエラストマーを含む材料である、研削プロセスにおいて、研削除去が研削ベルトまたは研削紙によって行われ、前記研削ベルトまたは研削紙は、前記研削される材料の送りよりも少なくとも5倍速い速度で移動することを特徴とする研削プロセス。
【請求項2】
前記研削ベルトまたは研削紙の粒度は、少なくとも240メッシュの値を取る、請求項1に記載の研削プロセス。
【請求項3】
研削幅は、0.5mmよりも大きく、20mmよりも小さい、請求項1または2に記載の研削プロセス。
【請求項4】
研削は、0°よりも大きく、40°よりも小さい、研削すべき材料に対する研削ベルト又は研削紙の角度設定で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研削プロセス。
【請求項5】
研削中に、軟質または圧縮可能なロールによって対圧が生じる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研削プロセス。
【請求項6】
前記研削は第1のステップおよび第2のステップで行われ、前記研削ベルトまたは研削紙の速度は、前記第2のステップよりも前記第1のステップにおいて速く、かつ/または前記研削ベルトまたは研削紙の粗さは、前記第2のステップよりも前記第1のステップにおいて大きい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の研削プロセス。
【請求項7】
研削された面は、次に続くステップにより磨き仕上げされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の研削プロセス。
【請求項8】
機械加工される材料のロール幅の少なくとも80%が1つの加工工程で研削される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の研削プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による、フレキソ印刷または凸版印刷の分野における印刷版の研削プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
研削プロセスを用いてオフセット印刷用の印刷ブランケットの厚さを調整することは長い間知られてきた。エラストマーフレキソ印刷版も、この目的のためにシリンダ研削盤上で研削され、この場合に、エラストマー材料が、例えば、砥石を使用して研磨される。このタイプの機械では、砥石または研削ディスクが使用される。このために、研削による材料の点状研磨(punctiform abrasion)が、砥石または研削ディスクの幅に対応して行われる。この場合に、研削は、必ずエラストマー材料の混合物の加硫後に行われ、この方法では、前記混合物は完全に硬化し、機械加工して材料を除去することができる。研削は、1つまたは複数の加工工程で行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この場合に、例えば、ショアA硬度が約45ShAを超えるEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー、あるいはエチレンプロピレンジエンゴム)でできたカーボンブラック充填硬質エラストマーゴム混合物(ブラック混合物)の場合に、混合物がきわめて高度に架橋された結果として、研削盤で振動が繰り返し発生するのは不利益である。前記振動は大きくなり、互いに強化し合い、次いで、表面仕上げにおいて、すなわち、印刷版の表面に、びびりマーク、あるいは振動マークとして明白に表れる。前記不均質な表面仕上げは、上塗りおよびインクの転写で見えるようになり、したがって、品質欠陥を示す。
【0004】
例えば、ショアA高度が約45ShA未満のSBR(スチレンブタジエンゴム)でできたきわめて軟質の混合物の場合、極端に軟質の混合物であることから、研削時の寸法精度が常に問題となる。
【0005】
本発明の目的は、冒頭に説明したタイプの研削プロセスを提供することであり、その研削プロセスによって、フレキソ印刷版または凸版印刷版は、カーボンブラックを充填したレーザ彫刻可能な硬質面(ショアA硬度が約45ShAを超える)と、エラストマー材料でできた軟質面(ショアA硬度が約45ShA未満)との両方で、可能な限り経済的に、共に、好ましくは全体幅にわたって約±0.015mmの小さい許容誤差で、均一な面仕上げに研削することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴記載部分の特徴によって達成される。有益な発展形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
したがって、本発明は、フレキソ印刷または凸版印刷の分野において、好ましくはベルトまたはシリンダ研削盤を用いた印刷版の研削プロセスに関し、この研削プロセスは、研削除去(grinding abrasion)が研削ベルトまたは研削紙によって行われ、研削ベルトまたは研削紙は、研削される材料の進行よりも少なくとも5倍速い速度で移動することを特徴とする。
【0008】
フレキソ印刷または凸版印刷の分野において、砥石または研削ディスクを用いた、すなわち、点状研磨を用いた印刷版表面の研削は一般的であり、公知である。しかし、前記研磨は、今まで、例えば、研削ベルトまたは研削紙を用いて、全表面領域にわたって行われなかった。研削プロセスの能力は、研削プロセスの結果、すなわち、実質的には、研削される表面の研削プロセス後の表面状態に影響を及ぼす一連のパラメータ全体および境界条件によっても決まる。
【0009】
上記を受けて、本発明は、全面研磨と、研削される材料の進行速度に対する、研削ベルトまたは研削紙などの進行速度の定めた比率とを組み合わせて使用することにより、対象に応じた表面状態を正確に得ることができるという発見に基づく。
【0010】
したがって、本発明によれば、研削ベルトまたは研削紙は、研削される材料の進行よりも少なくとも5倍速い速度で移動する。このようにして、好ましくは約±0.015mmの小さい許容誤差を有する均一な表面仕上げが、カーボンブラックを充填したレーザ彫刻可能な硬質面(ショアA硬度が約45ShAを超える)の場合と、エラストマー材料でできた軟質面(ショアA硬度が約45ShA未満)の場合の両方にもたらされる。その結果、満足のいくインク転写と、印刷版のゴム表面上での少ないインク蓄積とを含めた均一で均質な表面印刷を達成することができる。
【0011】
同時に、本発明による研削プロセスは、この種の速度比の場合に、比較的すばやく方法を実施することができるので経済的である。その結果、本発明に従って研削される印刷版のコストは低く保つことができる。
【0012】
研削される印刷材料の速度は、好ましくは少なくとも約1m/分、好ましくは最大で約6m/分であり、研削ベルトまたは研削紙の速度は、少なくとも約10m/秒、すなわち、約600m/分である。この場合に、研削ベルトまたは研削紙の速度は、研削される材料の進行よりも少なくとも約600倍速い。
【0013】
研削される印刷材料の速度は、特に好ましくは約1m/分、好ましくは最大で約6m/分であり、研削ベルトまたは研削紙の速度は、少なくとも約20m/秒、すなわち、約1200m/分である。この場合に、研削ベルトまたは研削紙の速度は、研削される材料の進行よりも少なくとも約1200倍速い。
【0014】
エラストマー材料でできた均質材料だけでなく、圧縮可能なエラストマーを含む材料も、本発明によるプロセスを用いて均一に研削することができる。これらの圧縮可能なエラストマーを含む材料には、例えば、少なくとも1つの強化支持層および/または少なくとも1つの圧縮可能層を有するフレキソ印刷および凸版印刷用の印刷版が含まれる。
【0015】
本発明の一態様によれば、研削ベルトまたは研削紙の粒度は、少なくとも約240メッシュである。
【0016】
この場合に、満足の行く研磨および必要とされる表面品質をこの種の粒度の場合に達成できるのは有利である。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、研削幅は、約0.5mmよりも大きく、約20mmよりも小さい。
【0018】
研削幅(ニップ幅とも呼ばれる)または接触面積は、研削ベルトまたは研削紙が材料と係合する幅を意味すると解釈される。ニップ幅は、研削される材料の、例えば、約2000mm、すなわち、約2mのロール幅から始めて、研削ベルトまたは研削紙を材料の方に移動させる距離から決まる。前記ニップ幅にロール幅を乗ずると、接触面積が得られる。ニップ幅は、約0.5mmよりも大きくて、約20mmよりも小さく、好ましくは約1mm以上で、約10mm以下でなければならない。研削厚さおよび表面品質も、実質的にニップ幅によって決まる。
【0019】
この場合に、材料を除去するなでつけが、したがって研磨作用が、この種の研削幅の場合に、より広い幅にわたって広がるのは有利である。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、研削は、約0°よりも大きく、約40°よりも小さい角度設定で行われる。
【0021】
角度設定は、以下のことを、すなわち、研削される材料が水平方向に進むと仮定した場合に、研削ベルトまたは研削紙が材料に向かって下がり、材料から離れる角度が、実質的に表面品質の決定因子であることを示していると解釈される。この場合に、研削ベルトまたは研削紙の最下端で研削厚さが生じる。前記角度設定は、様々なゴム混合物(硬度)に対して変えることができる。約0°よりも大きく、約40°よりも小さい、好ましくは、約0°よりも大きく、約20°よりも小さい角度が有利であると分かった。
【0022】
この場合に、前記角度設定によって、対象に応じた研削結果をさらに改善できるのは有利である。このようにして、約10μmRz未満の表面粗さを達成することができる。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、研削中に、軟質または圧縮可能なロールによって対圧が生じる。
【0024】
圧縮可能なロールは、研削盤から、研削される材料に振動または励振周波数を伝達しないために有利であると分かった。したがって、圧縮可能なロールは制振要素として機能する。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、研削は第1のステップおよび第2のステップで行われ、研削ベルトまたは研削紙の速度は、第2のステップよりも第1のステップにおいて速く、かつ/または研削ベルトまたは研削紙の粗さは、第2のステップよりも第1のステップにおいて大きい。
【0026】
この場合に、研削の程度または表面品質が、2回の研削パスで決まるのは有利である。この場合に、高速で、少なくとも約240メッシュの粗い研削紙を用いた主研削が行われ、次いで、低速で、少なくとも約600メッシュの精細な研削紙を用いた精密研削(仕上げ研削とも呼ばれる)が行われる。主研削および精密研削によって、少なくとも約0.02mm〜約0.1mm、好ましくは少なくとも約0.5mm〜約0.1mm、特に好ましくは少なくとも約0.8mm〜約0.1mmの厚さが削り取られる。
【0027】
主研削(高速)の場合、約2m/分を超える、好ましくは約4m/分を超える、特に好ましくは約5m/分を超える速度が、および、仕上げ研削(低速)の場合、約2m/分未満、好ましくは約1m/分未満の速度が材料の進行に対して真価を示した。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、研削面は、次に続くステップで磨き仕上げされる。
【0029】
磨き仕上げは、小さめの研削角で行われ、この研削角において、研削紙は、上記のように、研削される材料から約20°未満の角度でゆっくり離れる。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、ロール幅の少なくとも80%は、1つの加工工程で研削される。
【0031】
この場合に、ロール幅は、機械加工される材料の幅を意味すると解釈される。加工工程は、連続的な工程を意味し、連続的な工程において、研削ベルトまたは研削紙が研削される材料と係合し、パラメータを組み合わせて機械加工が連続的に行われる。この種の連続的な機械加工の利点は、大量の材料を短時間で機械加工できることである。このようにして機械加工されたロールの幅にわたって一定の表面状態も、パラメータの一貫性によって保証される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の1つの例示的な実施形態およびさらなる利点が、以下の本文で説明される。
【0033】
本発明による研削方法は、例えば、以下の通りに、シリンダ研削盤上で実施される。
【0034】
第1のステップで、研削ベルトまたは研削紙が研削シリンダに留められ、研削される印刷版が、対圧シリンダのまわりに案内される。この場合に、研削紙が研削シリンダに動かないように留められ、材料は対圧シリンダ上で動くことができるのは重要である。この場合に、研削紙は、複数の印刷版を研削するのに使用することもでき、その結果として、研削プロセスが終了する度に研削紙を交換する必要がない。
【0035】
第2のステップで、研削紙を付けた研削シリンダが、所望の速度まで加速される。その後、材料は対圧シリンダ上で予圧され、さらに、研削シリンダの速度が達成され、対圧シリンダ上での材料の予圧が達成された場合のみ、2つのシリンダは、研削紙が、研削される材料の表面に望ましい所定の係合深さで接触するまで、互いに向かって半径方向に移動する。この場合に、本発明によれば、研削シリンダは、研削される印刷版を付けた対圧シリンダ(受けシリンダ)の速度よりも少なくとも5倍速い速度で動作する。
【0036】
研削プロセス中に、2つのシリンダは、印刷版が所望の厚さに削り取られるまで、互いに向かって半径方向にさらに移動することができる。この場合に、研削シリンダと、研削される材料を付けた対圧シリンダとの両方の速度は、本発明に従った速度比が維持される限り、研削プロセス中に変えることができる。特に、研削紙の、研削される表面への第1の係合は、異なる速度で、好ましくは研削プロセス自体よりも遅い速度で行うことができる。
【0037】
研削プロセスが終了した後、材料は、再度研削シリンダと係合しないように半径方向に移動して止められ、その後、印刷版が対圧シリンダから取り外される。
【0038】
さらなるステップで、研削された印刷版は、同じ機械か、または異なる機械上で磨き仕上げすることができる。このために、対圧シリンダ(受けシリンダ)を含めた印刷版は、1つのシリンダから印刷版を取り外し、その後、次のシリンダに印刷版を取り込むのを不要にするように、研削盤から磨き仕上げ機械に移されるのが好ましい。代替案として、研削シリンダを磨き仕上げシリンダで置き換えるか、または研削シリンダ上の研削紙をより精細なツールで置き換えることにより、同じ研削用機械を使用することもできる。