特許第6234465号(P6234465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヤクルト本社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234465
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】コラーゲン線維の結束能増強剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/745 20150101AFI20171113BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20171113BHJP
   A61L 27/36 20060101ALN20171113BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20171113BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20171113BHJP
   A61K 35/744 20150101ALN20171113BHJP
   A61K 8/99 20170101ALN20171113BHJP
【FI】
   A61K35/745
   A61K36/48
   A61P19/00
   A61P1/02
   A61P17/02
   !A61L27/36 200
   !A61L27/36 312
   !C12N1/20 EZNA
   !C12N1/20 Z
   !C12N15/00 A
   !A61K35/744
   !A61K8/99
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-534177(P2015-534177)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2014071994
(87)【国際公開番号】WO2015029895
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-177632(P2013-177632)
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-6223
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11320
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 優輝
(72)【発明者】
【氏名】工藤 美有紀
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 大輔
(72)【発明者】
【氏名】曽根 俊郎
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−530360(JP,A)
【文献】 特開2002−193735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ブレーベによる発酵豆乳を有効成分とする、靭帯、腱、軟骨、皮膚の真皮および歯周組織から選ばれる生体組織の修復および/または強度低下の予防に用いられるコラーゲン線維の結束能増強剤。
【請求項2】
プロテオグリカン産生促進作用を有するものである請求項1記載のコラーゲン線維の結束能増強剤。
【請求項3】
プロテオグリカンが、デコリンおよび/またはデルマトポンチンである請求項2記載のコラーゲン線維の結束能増強剤。
【請求項4】
バーシカンの産生を実質的に促進しないものである請求項1ないし3の何れか1項記載のコラーゲン線維の結束能増強剤。
【請求項5】
乳液剤、クリーム剤または液剤である請求項1ないしの何れか1項記載のコラーゲン線維の結束能増強剤。
【請求項6】
靭帯、腱、軟骨および歯周組織から選ばれる生体組織の修復および/または強度低下の予防に用いられる請求項1ないし5の何れか1項記載のコラーゲン線維の結束能増強剤。
【請求項7】
コラーゲン組織を利用する再生組織の培養中において、ビフィドバクテリウム・ブレーベによる発酵豆乳を有効成分とする、靭帯、腱、軟骨、皮膚の真皮および歯周組織から選ばれる生体組織の修復および/または強度低下の予防に用いられるコラーゲン線維の結束能増強剤を添加使用することを特徴とする再生組織の強度増強方法。
【請求項8】
コラーゲン組織を利用する再生組織が、人工皮膚および/または人工血管である請求項記載の再生組織の強度増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン線維の結束能増強剤に関し、更に詳細には、ビフィドバクテリウム属細菌および/または乳酸菌から選ばれる微生物による発酵生成物を有効成分とする、コラーゲン線維の結束能増強剤およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌中には、その発酵生成物中に有用な成分を産生するものが数多く知られている。
【0003】
例えば、本出願人は、ビフィドバクテリウム属細菌であるビフィドバクテリウム・ブレーベについて研究を行い、これで大豆抽出物を発酵させて得た発酵生成物が保湿作用を有し、保湿剤として有効であること(特許文献1)や、この発酵生成物とビタミンA類を組み合わせた皮膚外用剤は、細胞賦活効果やヒアルロン酸産生効果を有し、肌荒れ防止・改善剤として有用であること(特許文献2)を見出した。更に前記発酵生成物を更に有機溶媒抽出して得た組成物は、より高い肌荒れ防止効果および皮膚老化防止効果を有すること(特許文献3)等も見出し、報告している。
【0004】
それ以外にも、豆乳にリゾープス属の微生物を作用させたもの(特許文献4)、乳酸菌を作用させたもの(特許文献5)等、いわゆる発酵生成物の機能性を化粧料等に利用することも知られている。
【0005】
このように、ビフィドバクテリウム属や、他の細菌等の微生物の発酵生成物が種々の機能性を有することが見出されているが、更に、これら発酵生成物から今までに知られていない機能性を新たに見出すことも期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−287540
【特許文献2】特開2002−187838
【特許文献3】WO00/21501
【特許文献4】特開平1−102011
【特許文献5】特開平3−127713
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、ビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌を用いた発酵生成物の有する新規な機能性を見出し、これを利用する製剤やその使用方法の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌を用いた発酵生成物の機能性についてその研究を更に進めていたところ、このものはコラーゲン線維束の形成に不可欠な特定のプロテオグリカンの量を増やす効果を有し、コラーゲン線維の結束能増強剤として有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、ビフィドバクテリウム属細菌および/または乳酸菌から選ばれる微生物による発酵生成物を有効成分とするコラーゲン線維の結束能増強剤である。
【0010】
また本発明は、コラーゲンを含む生体組織に、上記コラーゲン線維の結束能増強剤を投与することを特徴とするコラーゲンを含む生体組織の修復方法である。
【0011】
更に本発明は、コラーゲンを含む生体組織に、前記コラーゲン線維の結束能増強剤を投与することを特徴とするコラーゲンを含む生体組織の強度低下予防方法である。
【0012】
また更に本発明は、コラーゲン組織を利用する再生組織の培養中または組織欠損部分への適用時において、前記コラーゲン線維の結束能増強剤を添加使用することを特徴とする再生組織の強度増強方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤の有効成分として使用されるビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌による発酵生成物は、特定のプロテオグリカンの産生量を増やすことで、コラーゲン線維束の形成を促進させて組織強度を増強させる効果を持ち、且つ、安全性の高いものである。
【0014】
従って、本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤は、事故、疾病等により強度が低下した、靭帯、腱、軟骨、皮膚、歯周組織等の生体組織に使用し、正常なコラーゲン組織に修復することができるものである。また、強度の低下が懸念されるコラーゲンを含む生体組織に予め使用し、その強度低下を予防することもできる。更に、近年注目されている再生医療のために人工的に作られる組織の強度を上げるためなどにも用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「コラーゲン線維の結束能増強剤」とは、コラーゲン線維を束ねて、コラーゲン線維束の形成を促す作用を示す製剤を意味する。特に、コラーゲン線維を束ねる役割を果たし、コラーゲン線維束の形成に不可欠なプロテオグリカンの産生促進作用を示す製剤をさす。なお、ここでいうコラーゲン線維とは、α鎖とよばれるコラーゲン様配列をもつポリペプチド鎖が3本より合わさったらせん構造(以下、トロポコラーゲンという)が1つ以上集まったものをさし、コラーゲン線維中のトロポコラーゲンの数は特に限定されない。この製剤は、特に靭帯、腱、軟骨、皮膚、歯周組織から選ばれる生体組織の修復、あるいは靭帯、腱、軟骨、皮膚、歯周組織から選ばれる生体組織の強度低下の予防に用いられるものである。
【0016】
すなわち、コラーゲンは血管、靭帯、腱、骨、軟骨、歯周組織、皮膚といった結合組織に多量に存在しているタンパク質で細胞間マトリックスの主成分であり、近接する細胞の足場として、細胞の増殖および情報伝達に関与している。そして、この結合組織内においては、コラーゲンは主にコラーゲン線維束と呼ばれるコラーゲンの線維が寄り集まった構造体を形成しており、コラーゲン線維がプロテオグリカンやエラスチンにより強固に束ねられて、かつ規則正しく配列していることにより、組織に適度な強度が与えられている。
【0017】
逆に、事故、疾病等何らかの理由で強固なコラーゲン線維束および配列が維持できなくなると、組織が正常な強度を保てず、また上記のような組織内の細胞の生理作用にも影響がでることが懸念される。
【0018】
本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤は、特定のプロテオグリカンの量を増やすことで、コラーゲン線維束の形成を促進させ、コラーゲン組織の強度低下を予防するものである。また、上記のようなコラーゲン線維束の形成や配列に問題が生じている場合に、特定のプロテオグリカンの産生を促進することで、コラーゲン線維束の形成を助け、結果として正常なコラーゲン組織に修復するものである。また、本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤は、プロテオグリカンの中でも、特にデコリンおよび/またはデルマトポンチン産生促進作用を有することが好ましい。デコリンやデルマトポンチンは、特にコラーゲン線維束の作成に関与するプロテオグリカンであり、これらを特異的に増やすことにより、コラーゲン線維の結束能をより増強させることができる。一方、プロテオグリカンの1つであるバーシカンは、コラーゲン線維を束ねる働きをするエラスチンの生成を阻害することが知られている。よって、本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤はバーシカンの産生を実質的に促進しない、あるいはその産生量を選択的に低減させるものであることが好ましい。なお、皮膚組織においては、真皮のみにコラーゲンが含まれるが、本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤を使用することで表皮細胞においてもプロテオグリカン量が増加することが確認されている。一般的に、表皮中で発現したプロテオグリカンも真皮のコラーゲン線維の結束に関与することが知られていることから、本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤は、皮膚組織全体に適用することができる。
【0019】
なお、本発明のコラーゲン線維の結束能増強効果は、コラーゲン産生促進作用とは全く異なる別の効果である。コラーゲン産生促進作用はコラーゲン自体の量を増加させるものであるが、特定のプロテオグリカンがなければコラーゲン線維束が形成されず、コラーゲン組織の強度を維持することができない。本願は、コラーゲン自体ではなく、特定のプロテオグリカンの量を増加させることにより、コラーゲン線維束の形成を促進させるものである。
【0020】
本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤(以下、単に「コラーゲン増強剤」という)はビフィドバクテリウム属細菌および/または乳酸菌から選ばれる微生物による発酵生成物(以下、「発酵生成物」と略称する)を有効成分とするものである。ここでいう発酵生成物とは、ビフィドバクテリウム属細菌および/または乳酸菌によって発酵可能な原料を、これら微生物で発酵させて得られるものをいう。これら発酵生成物中には、ビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌の微生物菌体を含有していても、また含有していなくてもよく、これらの微生物菌体をろ過等により培養物から除去した上清等も本発明の発酵生成物中に包含される。
【0021】
上記発酵生成物の原料として使用される培地としては、ビフィドバクテリウム属細菌および/または乳酸菌で発酵可能なものであれば特に限定されず、例えば、アロエ、豆類等の植物由来の原料や、牛乳、人乳、山羊乳等の獣乳、クリーム、脱脂粉乳等の動物由来の原料を含む培地が挙げられる。これらの原料は、ミキサー等による粉砕処理、抽出処理、ろ過や遠心分離処理、溶媒による溶解や希釈処理、酵素処理等を行ってもよい。また、これらの原料の中でも、牛乳、人乳、山羊乳等の獣乳、クリーム、脱脂粉乳等の乳成分を含有する培地または豆類抽出物を含有する培地を使用することが好ましく、豆類抽出物を含有する培地が特に好ましい。豆類としては、例えば大豆、黒豆、空豆、小豆、いんげん豆、えんどう豆、ひよこ豆等の豆類抽出物が挙げられるが、特に大豆抽出物が好ましい。
【0022】
上記豆類抽出物の原料となる豆類の形状としては、特に制限はされないが、油脂を含有した豆類、脱皮豆類、又はフレーク豆類等が好ましい。更に、豆類抽出物は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、原料となる豆類を水につけた後、水又は0.5〜1.0質量%の炭酸ナトリウムを含む水を添加してミキサー等により粉砕し、ろ過処理等によりおからを除去したものを利用することが好ましく、適宜、加熱処理を施してもよい。なお、上記水の温度は限定されず、熱水等も包含される。また、この豆類抽出物を含有する培地は、豆類抽出物由来の固形分濃度が5〜20質量%(以下、単に「%」で示す)のものを用いることが好ましい。
【0023】
前記発酵原料である培地には、必要に応じ、発酵処理に先立ち、ショ糖、ブドウ糖、果糖、転化糖等の食品に用いられる糖類等、肉エキス、酵母エキス、ビタミン類、ペプチド、アミノ酸類、ミネラル類、塩類、界面活性剤、脂肪酸、金属類等の微生物の増殖に必要な栄養素等を添加してもよい。また、原料を微生物の至適pHに調整するために、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸等の食品に用いられる酸を添加してもよい。
【0024】
上記の発酵生成物を製造するために使用される微生物は、ビフィドバクテリウム属細菌または乳酸菌であれば特に限定されない。このうち、ビフィドバクテリウム属細菌の具体例としては、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム等が挙げられ、乳酸菌に属する微生物の具体例としては、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属等に属する微生物が挙げられる。これらの微生物は、1種または2種以上を用いてもよい。
【0025】
この中でも、原料に豆類抽出物を含有する培地を使用する場合には、ビフィドバクテリウム属細菌が好ましく、ビフィドバクテリウム・ブレーベがより好ましく、ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 4065(FERM BP−6223、寄託日:平成8年(1996年)2月29日)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 12272(FERM BP−11320、寄託日:2010年2月16日)が特に好ましい。なお、上記ビフィドバクテリウム・ブレーベ株のうち、ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 4065は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)に寄託されていたが、現在は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(日本国 千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8 120号室(郵便番号292−0818))に移転している。また、上記ビフィドバクテリウム・ブレーベ株のうち、ビフィドバクテリウム・ブレーベYIT 12272は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に寄託されていたが、現在は、上記独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに移転している。
【0026】
上記発酵生成物の製造において培養は、上記菌株を複数種組合せた混合発酵であってもよいし、菌株を複数種組合せた連続発酵であってもよい。その培養に当たっては、前記以外の微生物として、バチルス属、アセトバクター属、グルコノバクター属等の細菌類、あるいはサッカロミセス属、キャンディダ属、ロドトルーラ属、ピチア属、シゾサッカロミセス属、トルラ属、チゴサッカロミセス属等の酵母類、あるいはアスペルギルス属、ユウロチウム属、モナスカス属、ムコール属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、リゾープス属等の糸状菌類を更に使用することもできる。
【0027】
前記のように調製した原料培地に上記微生物を作用させる方法は特に限定されず、例えば、予め培養した微生物の菌液を上記培地中に0.01〜10%、好ましくは0.1〜5%接種した後、20〜45℃、好ましくは25〜42℃で5〜96時間、好ましくは10〜60時間培養すればよい。また、この時の他の培養条件としては、静置、攪拌、振盪、通気、嫌気等が挙げられ、微生物に応じ、これらから培養に適した方法を適宜選択して行えばよい。
【0028】
斯くして得られた発酵生成物はそのまま使用することもできるが、更に、公知のろ過、透析、遠心分離等の分離や精製処理、溶媒等による抽出処理、加熱処理、脱臭処理、pH調整、凍結乾燥処理、濃縮乾固処理等を施すことができる。また、遠心分離、ろ過等により高分子物質や不溶性物質を除去して使用することが好ましく、特に、エタノール等の低級アルコールや、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールを添加した後、遠心分離、ろ過等の処理を行うことが好ましい。
【0029】
以上のようにして得られた発酵生成物は、公知の医薬品、皮膚外用剤あるいは化粧料で利用される成分と適宜配合し、所望の形態のコラーゲン増強剤とすることができる。
【0030】
このコラーゲン増強剤の形態としては、正常なコラーゲン組織に修復することが求められる部位(患部)に注射等で直接注入投与したり、その部位に近接する皮膚上に塗布、貼付するなどして投与する形の、医薬品、皮膚外用剤あるいは化粧料の形態を挙げることができる。具体的な製品の形態の例としては、注射剤、液剤、軟膏剤、乳液剤、クリーム剤、貼付剤、テープ剤、パック剤、入浴剤等が挙げられ、特に乳液剤、クリーム剤または液剤が好ましい。また、別の形態としては、再生医療のために人工的に作られる組織、例えば人工皮膚の培養時に添加する添加剤を挙げることができる。
【0031】
このコラーゲン増強剤には、上記投与形態に応じた量の発酵生成物が配合される。この量は、特に限定されるものではないが、例えば組成物中、発酵生成物として0.0001〜50%、好ましくは0.01〜20%、特に好ましくは0.5〜10%配合すればよい。
【0032】
また、本発明のコラーゲン増強剤の製造に当たっては、その効果を阻害しない範囲で、医薬品類、医薬部外品類、化粧品類、浴用剤などにおいて通常用いられている原料、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、発泡剤、香料、色素、顔料、紫外線吸収・散乱剤、粉体、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌剤、植物抽出物、動物由来成分、海藻抽出物、各種薬剤、添加剤、水等を任意成分として配合することができる。
【0033】
このうち、界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル等の非イオン性界面活性剤、親油型グリセリンモノステアレート、自己乳化型グリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンアルキレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン性界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤、塩酸アルキルアミノエチルグリシン液、レシチン等の両性界面活性剤等を例示することができる。
【0034】
油分としては、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油等の植物油脂類、ミンク油、卵黄油等の動物油脂類、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、カプリン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等の天然および合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、カプリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の天然および合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレエート等のエステル類等を例示することができる。
【0035】
保湿剤としては、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール等のペンチレングリコール類、イソプレングリコール等の多価アルコール類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿成分(NMF)、キシログルカン、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子物質等を例示することができる。
【0036】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硅酸アルミニウム、マルメロ種子抽出物、トラガントガム、デンプン、アラビアガム、ヒドロキシエチルグァーガム、カルボキシメチルグァーガム、グァーガム、デキストラン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等の天然高分子物質、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン、カチオン化セルロース等の半合成高分子物質、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体等の合成高分子物質等を例示することができる。
【0037】
防腐剤としては、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、エタノール等を例示することができる。
【0038】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸等を、キレート剤としては、エデト酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等を、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素カリウム等をそれぞれ例示することができる。
【0039】
紫外線吸収・散乱剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、3−(4’−メチルベンジリデン)−d−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシシンナメート、酸化チタン、カオリン、タルク等を例示することができる。
【0040】
ビタミン類としては、ビタミンB塩酸塩、ビタミンBトリパルミテート、ビタミンBジオクタノエ−ト、ビタミンBおよびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステルおよびその塩、アスコルビン酸リン酸エステルおよびその塩、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸グルコシド、アシルアスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸テトライソパルミテート等のビタミンC類、ビタミンD、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンF、ビタミンK、パントテン酸、パンテチン、ビタミンH、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸およびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0041】
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、タウリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンおよびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0042】
抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、ヘキサクロロフェン等を例示することができる。
【0043】
植物抽出物としては、フユボダイジュ、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ、ブクリョウ、サンシシ、オウゴン、甘草、カワラヨモギ、クジン、ヨクイニン、ニンドウ、シャクヤク、ソウハクヒ、サンザシ、ボタンピ、セファランチン等からの抽出物を例示することができる。
【0044】
海藻抽出物としては、アスコフィルム、コンブ、マコンブ、ワカメ、ヒジキ、ヒバマタ、モズク、オキナワモズク、ヒマンタリア等の褐藻類、テングサ、サンゴモ、パルマリア、ツノマタ、ノリ等の紅藻類、アオサ、アナアオサ等の緑藻類、藍藻類からの抽出物を例示することができる。
【0045】
各種薬剤としては、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸およびその塩、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、プラセンタエキス等を例示することができる。
【0046】
これらの原料の中でも、特に、コラーゲン産生促進作用、またはコラーゲンの分解を阻害する作用を有する原料を併用することが好ましく、これらの効果を有する原料としては、フユボダイジュエキス、アスコフィルムノドスムエキス、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステルおよびその塩、アスコルビン酸リン酸エステルおよびその塩、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸グルコシド、アシルアスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸テトライソパルミテート等のビタミンC類があげられる。
【0047】
以上のようにして得られるコラーゲン増強剤は、事故、疾病等により強度が低下したコラーゲンを含む生体組織、すなわち、靭帯、腱、軟骨、皮膚、歯周組織等の生体組織に使用しその組織の修復を行う、あるいはその組織の強度低下を予防することができる。
【0048】
例えば、膝の軟骨は、コラーゲン線維によって弾力性が維持されているが、コラーゲンの強度が減少すると、クッションの働きが低下して、軟骨がつぶれやすくなるため痛みが発生し、さらにひどくなると変形性関節症の原因となる。これに対し、本発明のコラーゲン増強剤を、例えば膝関節などの損傷した部位に、直接注射等により投与することで、周辺組織中のプロテオグリカン産生が促進され、コラーゲン結束能が増強し、軟骨の強度を増すことができるため、軟骨がすり減ることを防ぐことが可能である。
【0049】
また、歯周病にかかると歯周組織の構成成分であるコラーゲン組織も破壊されてしまうため、歯周組織の治療時に、コラーゲンを再生し歯茎を正常化させるためには、コラーゲン線維を束ね、強化することが重要である。これに対し、本発明のコラーゲン増強剤を歯磨き剤等に混ぜて使用することで、歯肉中のプロテオグリカン産生を促進し、コラーゲン結束能を増強することができるので、歯茎の後退を修復・予防するとともに、上記のような歯周病により損傷を受けた歯茎に対してもその治療・改善のサポートになるので、歯茎の維持や歯周病からの正常化に有効なものである。
【0050】
更に腱や靱帯は、骨と筋肉や、骨同士を結合するという役割を果たすもので、運動の際に大きな力がかかる組織であり、無理な力が加わると損傷しやすいことが知られている。このように損傷した腱や靱帯に本発明のコラーゲン増強剤を使用することで、それらの回復のサポートになる。
【0051】
また更に、事故や手術等で損傷した、傷痕となるような皮膚組織の修復にも本発明のコラーゲン増強剤は有用なものである。本発明のコラーゲン増強剤を、損傷した皮膚組織に直接塗布、注射等により投与することで、皮膚組織中のプロテオグリカン産生が促進され、コラーゲン結束能が増強し、皮膚組織の修復を促進することができる。
【0052】
なお、本発明のコラーゲン増強剤は、生体に直接でなく、コラーゲン組織を利用する人工皮膚や再生医療のために人工的に作られる血管等において、その培養中や、適用時等において添加使用することで再生組織の強度を強めることができる。例えば、人工皮膚、人工血管等の再生組織を培養する際に、本発明のコラーゲン増強剤を培地に添加する、あるいは再生組織を組織欠損部分へ適用する際に、本発明のコラーゲン増強剤を再生組織に塗布、注射等により添加することで、再生組織中のプロテオグリカン産生を促進し、コラーゲン結束能を増強することができるので、再生組織の強度を増強させることが可能となる。
【実施例】
【0053】
次に製造例、試験例および製剤例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0054】
製 造 例 1
発酵生成物の製造(1):
大豆フレークを水洗後、水に一夜浸漬して十分に吸水させた。この大豆に4重量倍の水を加えてミキサーでペースト状に粉砕した。これを100℃で30分間加熱し、冷却後濾過したものを100℃で90分間蒸気滅菌して豆乳を製造した(固形分濃度約10質量%)。
【0055】
前培養したビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 4065(FERM BP−6223)の菌液を豆乳の全量の1.0%になるように接種した後、窒素雰囲気中、30℃で45時間培養した。得られた発酵豆乳の生菌数は、約1X10cells/mlであった。この発酵豆乳をろ紙にて濾過し、発酵生成物1を製造した。
【0056】
製 造 例 2
発酵生成物の製造(2):
製造例1と同様に製造した発酵豆乳に、3重量倍の1,3−ブチレングリコールを添加してろ紙にて濾過し、発酵生成物2を製造した。
【0057】
製 造 例 3
発酵生成物の製造(3):
ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 12272(FERM BP−11320)を使用する以外は、製造例1と同様にして発酵生成物3を製造した。
【0058】
製 造 例 4
発酵生成物の製造(4):
ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 12272(FERM BP−11320)を使用する以外は、製造例2と同様にして発酵生成物4を製造した。
【0059】
試 験 例 1
デコリン量の測定(1)
(1)線維芽細胞(NHDF)を24ウエルプレートに播種し、D−MEM培地中で被覆率70〜80%になるまで培養した。次いで、培地中に発酵生成物1を1%または2%添加し、37℃で48時間培養した。なお、コントロールは発酵生成物を添加していないD−MEM培地を使用し同様に培養を行った。
【0060】
それぞれの培養上清中の産生されたデコリン量を以下のウェスタンブロット法により測定した。まず、培養上清について電気泳動を実施し、アクリルアミドゲル内の蛋白質を、セミドライ型転写装置を用いてイモビロンPVDFメンブランに転写した。転写後、メンブランをスキムミルクにてブロッキングし、一次抗体(マウス抗デコリン抗体)溶液に4℃で一晩浸した。さらにニ次抗体(HRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体)溶液に室温で2時間浸した後、ChemilumiOneSuper(ナカライテスク)を用いてメンブラン上の目的蛋白質であるデコリンを検出した。検出されたバンドの発光強度を、MultiGauge(FUJI FILM)を用いて求めそれぞれの試料のデコリンの産生量を測定した。得られた値をコントロールのデコリン産生量で除し、コントロールに対するデコリンの相対量を算出した。この結果を表1に示す。
【0061】
(2)(1)と同様の方法で24時間培養した細胞中から、RNeasy mini kit(QIAGEN)を用い、製品添付の説明書に沿ってRNAの抽出操作を行った。RNA抽出後、Revertra Ace qPCR RT kit(TOYOBO)を用いて逆転写反応を行いcDNAを合成した。RT−qPCRには、THUNDERBIRD SYBR qPCR kit(TOYOBO)を用い、7500 Realtime PCRシステム(Applied Biosystems)で以下の条件で増幅を行った。
【0062】
(i)プライマー
ヒトデコリン センスプライマー 5’-ATGAAGGCCACTATCATCCTCC-3’
ヒトデコリン アンチセンスプライマー 5’-GTCGCGGTCATCAGGAACTT-3’
ヒト36B4 センスプライマー 5’-ATGCAGCAGATCCGCATGT-3’
ヒト36B4 アンチセンスプライマー 5’-TTGCGCATCATGGTGTTCTT-3’
(ii)反応条件
95℃ 、1分 1cycle
95℃、30秒→60℃、1分 40cycle
95℃、15秒→60℃、1分→95℃、15秒 1cycle
【0063】
反応終了後、36B4を内標準遺伝子としてデコリン遺伝子発現量を標準化した。使用したプライマーは以下の通りである。コントロールは発酵生成物を添加していないD−MEM培地で培養した細胞を使用し、各試料のデコリン遺伝子発現量をコントロールに対する相対量として算出した。この結果も表1に示す。なお、表中の数値は3ウエルの平均値である。
【0064】
【表1】
【0065】
本試験および以下の試験において、目視での確認では、コントロール、1%、2%添加後の細胞数はほぼ同程度であったので、それぞれの細胞が発現ないし産生するデコリン量や、デルマトポンチン量が増えたと考えられる。なお、遺伝子発現量と培地中の産生量は一般的に相関する値であり、遺伝子発現量が増加した場合、培地中の産生量も増加することが本試験でも確認された。
【0066】
試 験 例 2
デコリン量の測定(2)
発酵生成物2を使用する以外は、試験例1と同様にして、デコリンの産生量および遺伝子発現量を調べた。なお、比較として、未発酵生成物(製造例2において、菌液接種のみを行わず、他は同一工程を経たもの)を使用した。この結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
この結果、発酵生成物を用いた場合にはデコリンの産生量の増加が認められたが、未発酵生成物では、デコリンの産生量の増加は認められないことが示された。
【0069】
試 験 例 3
デコリン量の測定(3)
線維芽細胞を表皮角化細胞に変更する以外は、試験例2と同様にしてデコリン遺伝子の発現量を調べた。なお、比較としては、ブチレングリコールを使用した。この結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
試 験 例 4
デルマトポンチン量の測定
試験例1と同様にしてデルマトポンチンの遺伝子発現量を調べた。使用したプライマーは以下の通りである。この結果を表4に示す。
【0072】
(i)プライマー
ヒトデルマトポンチン センスプライマー 5’-TGGGTGAATTTGAACCGGCAA-3’
ヒトデルマトポンチン アンチセンスプライマー 5’-CGTAGTTCCATTGTCTGTCAGAA-3’
【0073】
【表4】
【0074】
試 験 例 5
バーシカンの遺伝子発現量の測定
試験例1と同様にしてバーシカンの遺伝子発現量を調べた。使用したプライマーは以下の通りである。この結果を表5に示す。
【0075】
(i)プライマー
ヒトバーシカン センスプライマー 5’GTAACCCATGCGCTACATAAAGT--3’
ヒトバーシカン アンチセンスプライマー 5’-GGCAAAGTAGGCATCGTTGAAA-3’
【0076】
【表5】
【0077】
この結果から、本発明のコラーゲン増強剤は、バーシカンの量を増加させることはなく、また添加量が増えると、予想外にバーシカンの量を減少させることが確認された。
【0078】
試 験 例 6
デコリン量の測定(4)
表皮角化細胞(NHEK)を使用する以外は、試験例1と同様にして、デコリンの遺伝子発現量を調べた。
【0079】
その結果、試験例1と同様に、コントロールと比較してデコリンの遺伝子発現量が増加することが確認された。
【0080】
試 験 例 7
3次元培養表皮モデル(表皮角化細胞)でのデコリンタンパクの発現
量の測定
ヒト3次元培養表皮モデル(Labcyte Epi-model 24(J−TEC製))を用いて発酵生成物の作用を評価した。まず、最終濃度が2または5%となるようにPBS緩衝液で希釈した発酵生成物2を角質層側に添加し、37℃で48時間培養した。コントロールとしては、発酵生成物を添加していないPBS緩衝液を使用し、同様に培養を行った。
【0081】
培養後、試験例1に記載の方法でそれぞれの基底層側の培養上清中に産生されたデコリン量をウェスタンブロット法により測定した。この結果を、表6に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
この結果、より皮膚の生理的条件に近い系においても発酵生成物2がデコリンの産生を促進することが確認された。この結果から、実際の皮膚組織や人工皮膚においても、本発明のコラーゲン増強剤を適用することにより、プロテオグリカン量が増加し、コラーゲン線維の結束能を増強することが示唆された。
【0084】
製 剤 例 1
乳液の調製:
表7に記載の組成で乳液を調製した。なお、乳液の調製は、9に6、7及び8を加えて加温し、80℃で1〜5を加えて乳化し、室温まで冷却することで行った。
【0085】
【表7】
【0086】
製 剤 例 2
クリームの調製:
表8に記載の組成でクリームを調製した。なお、クリームの調製は、10に7、8及び9を加えて加温し、80℃で1〜6を加えて乳化し、室温まで冷却することで行った。
【0087】
【表8】
【0088】
製 剤 例 3
化粧水の調製:
表9に記載の組成で化粧水を調製した。なお、化粧水の調製は、8に1〜7を加えて十分に攪拌後、9を加えてpHを弱酸性に調整することで行った。
【0089】
【表9】
【0090】
製 剤 例 4
乳液の調製:
表10に記載の組成で乳液を調製した。なお、乳液の調製は、13に1〜7を加えて加温し、80℃で8〜12を加えて乳化後、14及び15を加えた後に室温まで冷却し、16〜18を加えることで行った。
【0091】
【表10】
【0092】
製 剤 例 5
化粧水の調製:
発酵生成物3または4を使用する以外は、製剤例3に記載の方法で化粧水を調製した。
【0093】
製 剤 例 6
乳液の調製:
発酵生成物3または4を使用する以外は、製剤例4に記載の方法で乳液を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤の有効成分である発酵生成物は、デコリン、デルマトポンチン等のプロテオグリカンの量を増やす作用があり、しかもこのプロテオグリカンは、コラーゲン線維束の形成を促進させて組織強度を増強させるものである。
【0095】
従って、本発明のコラーゲン線維の結束能増強剤は、これを、事故、疾病等により強度が低下した、靭帯、腱、軟骨、皮膚、歯周組織等の生体組織に使用することで、特定のプロテオグリカンの量を増やし、正常なコラーゲン組織に修復することができるものであり、医薬品、皮膚外用剤、化粧料等として利用できるものである。また、近年注目されている再生医療のために人工的に作られる組織の強度を上げるための添加剤としても利用することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]