特許第6234467号(P6234467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234467ゼータ負のナノダイヤモンド分散液の製造方法およびゼータ負のナノダイヤモンド分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234467
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ゼータ負のナノダイヤモンド分散液の製造方法およびゼータ負のナノダイヤモンド分散液
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/28 20170101AFI20171113BHJP
【FI】
   C01B32/28
【請求項の数】38
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-541203(P2015-541203)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-501811(P2016-501811A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】FI2014050290
(87)【国際公開番号】WO2014174150
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】20135416
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509011374
【氏名又は名称】カルボデオン リミティド オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ベサ ミュッリュマキ
(72)【発明者】
【氏名】イェセ スリアン
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0304545(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/158380(WO,A1)
【文献】 特開2006−225208(JP,A)
【文献】 特表2013−519623(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0315212(US,A1)
【文献】 特表2012−528197(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/138837(WO,A2)
【文献】 特開2006−239511(JP,A)
【文献】 特開2010−126669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0172132(US,A1)
【文献】 特開2005−001983(JP,A)
【文献】 特開2009−209027(JP,A)
【文献】 M. Ozawa et al.,Preparation and Behavior of Brownish, Clear Nanodiamond Colloids,ADVANCED MATERIALS,2007年 5月 7日,Vol.19, No.9,p.1201-1206
【文献】 Y. Liang et al.,A General Procedure to Functionalize Agglomerating Nanoparticles Demonstrated on Nanodiamond,ACS NANO,2009年 7月14日,Vol.3, No.8,p.2288-2296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液からゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の製造方法であって、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHを7以上に調整すること、およびpH調整した、7以上のpHを有する懸濁液をビーズミル処理に付すことを含み、該懸濁液の液体媒質が、水である、方法。
【請求項2】
pHが7〜14の範囲に調整される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
pHが7〜13の範囲に調整される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のゼータ電位が、pH調整前に、3〜5のpHで−30mVより低い、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のゼータ電位が、pH調整前に、3〜5のpHで−35mVより低い、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のゼータ電位が、pH調整前に、3〜5のpHで−40mVより低い、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液が、前記ビーズミル処理の前に、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンドの分子間相互作用を低下させる前処理に付される、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記前処理が、超音波処理である、請求項記載の方法。
【請求項9】
pHが、ブレンステッドまたはルイス塩基で調整される、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
pHが、水酸化アンモニウム、アンモニア、NaHOH、メチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、トリメチルアンモニア、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化セシウム(CsOH),水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化ルビジウム(RbOH)で調整される、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
pHが、水酸化アンモニウムで調整される、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
pHが、水酸化アンモニウム、アンモニア、NaHOH、NaOH、またはKOHで調整される、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記pH調整された懸濁液の前記ビーズミル処理が、超音波処理によって補助される、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−35mVより低い、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−37mVより低い、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−40mVより低い、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−50mVより低い、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、8.5超のpHで測定して、−60mVより低い、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、8.5超のpHで測定して、−70mVより低い、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、1質量%超である、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、2質量%超である、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、2〜10質量%の範囲である、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、3〜8質量%の範囲である、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90一次粒子径分布が、2nm〜30nmである、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90一次粒子径分布が、2nm〜20nmである、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90一次粒子径分布が、2nm〜12nmである、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90一次粒子径分布が、3nm〜8nmである、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子および液体媒質を含むゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液であって、
i)該ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−37mVより低く、
ii)該分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、2質量%超であり、
iii)該ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90一次粒子径分布が、2nm〜12nmであ
該液体媒質が、水である、
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項29】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−40mVより低い、請求項28記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項30】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−50mVより低い、請求項28記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項31】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、8.5超のpHで測定して、−60mVより低い、請求項28記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項32】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、8.5超のpHで測定して、−70mVより低い、請求項28記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項33】
前記分散液中の前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、2〜10質量%の範囲である、請求項2832のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項34】
前記分散液中の前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、3〜8質量%の範囲である、請求項2832のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項35】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90一次粒子径分布が3nm〜8nmである、請求項2834のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項36】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のpHが、4.5〜14である、請求項2835のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項37】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のpHが、5〜13である、請求項2835のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【請求項38】
前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のpHが、7〜13である、請求項2835のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の製造方法およびゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンドに関する。
【背景技術】
【0002】
超ナノ結晶性ダイヤモンドまたは超分散ダイヤモンド(UDD)ともまた称されるナノダイヤモンド(ND)は、独特のナノ材料であり、爆発合成によって数百キログラム単位で容易に製造することができる。
【0003】
デトネーション法ナノダイヤモンド(ND)は、1963年にUSSRからの研究者らによって、非酸化性の媒体中での、負の酸素バランスでの高性能爆薬混合物の分解爆発によって、最初に合成された。典型的な爆薬混合物は、トリニトロトルエン(TNT)およびヘキソゲン(RDX)の混合物であり、そして好ましいTNT/RDXの質量比は、40/60である。
【0004】
爆発合成の結果として、爆発混合物とも表される、ダイヤモンドを含む煤が得られる。この混合物は、典型的には、約2〜8nmの平均粒子径を有するナノダイヤモンド粒子ならびに、爆発チャンバの材料に由来する金属および金属酸化物粒子で汚染された異なる種類の非ダイヤモンド炭素を含んでいる。この爆発混合物中のナノダイヤモンドの含有量は、典型的には30〜75質量%の範囲である。
【0005】
爆発から得られるナノダイヤモンド含有混合物は、典型的には約1mmの直径を有する同じ硬質の集塊を含んでいる。そのような集塊は、破壊するのが難しい。更には、この混合物の粒子径分布は、非常に幅広い。
【0006】
タイヤモンド炭素は、sp炭素を含み、そして非ダイヤモンド炭素は、主にsp炭素種、例えばカーボンオニオン、炭素フラーレン殻、アモルファス炭素、黒鉛状炭素またはそれらのいずれかの組合わせを含んでいる。
【0007】
爆発混合物の精製のための多くのプロセスが存在している。精製段階は、ナノダイヤモンドの製造において最も複雑で、そして費用の掛かる段階であると考えられている。
【0008】
最終的なダイヤモンド含有生成品を分離するためには、材料中に存在する不純物の溶解またはガス化のいずれかを目的とした化学的操作の複合体が用いられる。不純物は、通例、2つの種類、非炭素(金属酸化物、塩など)および炭素の非ダイヤモンド形態(グラファイト、ブラック、アモルファス炭素)である。
【0009】
化学的な精製技術は、ダイヤモンドと、炭素の非ダイヤモンド形態との、酸化剤に対する異なる安定性を基にしている。液相の酸化剤は、気体または固体系に対して利点を有しており、何故ならば、それらは、反応領域においてより高い反応物濃度を得ることを可能にさせ、そして従って高い反応速度を与えるからである。
【0010】
近年では、ナノダイヤモンドは、電気メッキ(電気分解および無電界の両方)、研磨、種々のポリマーの機械的および熱的複合材、CVDシーディング、オイルおよび潤滑油添加剤の中の幾つかの現存する用途、ならびに可能性のある新規な用途、例えばルミネッセンス画像作成、薬物送達、量子工学などによってますます注目を受けてきている。
【0011】
入手可能なナノダイヤモンド材料は、多様な種々の表面官能基を有し、そして従って集塊(数百ナノメータから数ミクロンまで)を有しているという事実が、工業的な用途におけるそれらの使用を事実上制限している。凝集性のナノダイヤモンド品種を適用する場合に、充填剤の非常に高い充填量が、典型的には必要とされ、今日の多くの用途において、それらのコスト効率の高い使用を不可能にする。更には、ナノダイヤモンドの凝集は、種々の用途の最終製品の技術的な性質の最適化を事実上制限または抑制する。凝集は、製品の光学的な性質が保持されなければならない用途におけるナノダイヤモンドの使用を不可能にする;凝集は、研磨および精密研磨用途において引掻き傷を生じさせる;凝集は、ポリマー複合材の機械的性質に直接に悪影響を有する可能性がある;電気メッキ電解液または無電解堆積の化学薬品中での凝集(電解液のpH領域に関係した、最適でないナノダイアモンドゼータ電位による)は、機械的に向上した金属被覆の製造におけるそれらの使用を完全に不可能にする;凝集は、薬品担体材料としてのナノダイヤモンドの使用を事実上不可能にする;凝集は、CVDで生成されたダイヤモンド膜の品質などに悪影響を有する。
【0012】
ナノダイヤモンド材料の、それらの粉末、懸濁液および分散液の形態での、費用効果が高く、そして技術的に最適化された使用は、ナノダイヤモンドが実質的に単官能化型であり、そして従って、表面改質の種類に応じて、種々の溶媒およびポリマー、金属もしくはセラミック材料への最も高い可能性の親和性を有する場合にのみ達成される。また、この実質的な単官能化は、一桁ナノダイヤモンド分散液の生成を達成しなければならない(ナノダイヤモンドが本質的に、それらの一次粒子の状態であり、集塊がない形態である分散液)。そのような実質的に単官能化ナノダイヤモンドは、表面官能化の種類に応じて、高度に正もしくは負のゼータ電位値のいずれかを有している。
【0013】
ゼータ電位の重要性は、その値が、コロイド状分散液の安定性に関連する可能性があることである。ゼータ電位は、分散液中で隣接する、同様に荷電した粒子の間の反発作用の程度を表している。十分に小さい分子および粒子では、高いゼータ電位は、安定性を与える、すなわち、溶液または分散液は凝集に抵抗する。その電位が低い場合には、吸引力が反発作用を超え、そして分散液は破壊されそして凝集する。従って、高いゼータ電位(負または正の)を有するコロイドは、電気的に安定化されており、一方で低いゼータ電位のコロイドは、凝固または凝集する傾向にある。ゼータ電位が0〜±5mVである場合には、コロイドは、迅速な凝固または凝集を免れない。優れた安定性は、±60mV超のゼータ電位でのみ達成されるので、±10mV〜±30mVの範囲のゼータ電位値は、コロイド(分散液)の初期の不安定性を表し、±30mV〜±40mVの範囲の値は、中等度の安定性を表し、±40mV〜±60mVの範囲の値は、良好な安定性を表す。
【0014】
技術的に実行可能であり、そして費用効果が高くあるためには、ナノダイヤモンドの一桁分散液は、高いナノダイヤモンド濃度を有しなければならない。好ましくは、ナノダイヤモンド濃度は、2質量%超でなければならない。濃度が低過ぎる場合には、適用プロセスに多過ぎる過剰な溶媒が加えられなければならず、電気メッキ中の金属イオンおよび他の添加剤濃度、塗料およびラッカー中のポリマー樹脂含有量に悪影響を与えて、そして硬化プロセスなどを劇的に変化させる。
【0015】
種々の官能基でナノダイヤモンドを官能化させる幾つかの方法が開発されている。典型的な官能化されたナノダイヤモンドとしては、カルボキシル化ナノダイヤモンド、ヒドロキシル化ナノダイヤモンドおよび水素化ナノダイヤモンドがあるが、しかしながらなお典型的には反対に荷電した官能基、そして従って、中途半端なゼータ電位値の混合物を含んでおり、そして従って、それらの溶媒分散液の形態では利用可能ではない。
【0016】
従来技術では、ビーズミルなどの方法が、高度にゼータ負の、カルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液を生成させるために提案されてきた。しかしながら、これらの方法は、非常に成功したものではなかった。
【0017】
当技術分野では、高度にゼータ負の、カルボキシル化ナノダイヤモンド粉末を、ビーズミルにかけた場合には、存在する表面カルボン酸官能基の大きな部分が、ゼータ正のヒドロキシル基への還元を受けることが知られている。この還元は、その材料の全体のゼータ電位に悪影響を有しており、そして激しい凝集をもたらす。最終的には、この凝集は、ビーズミル装置を閉塞させる。
【0018】
文献、A. KruegerおよびD. Lang、Adv. Funct. Mater、2012年、第22巻、p.890-906には、ビーズに補助された音波破壊(ビーズミル処理と超音波処理を組み合わせた方法)を受けたナノダイヤモンド粒子が、有意により親水性になり、ゼータ電位は、約+40mV(中性のpHで)まで上昇し、そしてOH末端のナノダイヤモンド粒子のコロイド状溶液が得られるという現象が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記の開示を基にすれば、高度にゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液を生成する効果的な方法およびその製品に対する質的および量的な必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、請求項1に記載したゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の製造方法に関する。
【0021】
本発明は更に、請求項15に記載したゼータ負の一桁カルボキシル化ナノ分散液に関する。
【0022】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHを、塩基性添加剤によって中性からアルカリ性の領域に調整することによって、ナノダイヤモンドのカルボン酸官能基を、ビーズミルプロセスの間の、それぞれのヒドロキシル基への化学機械的な還元から遮断することが可能であることが、驚くべきことに見出された。還元が起こらないので、ミル処理は、この場合はナノダイヤモンドのいずれかの凝集なしに行うことができ、そして従って、閉塞もまた回避される。ナノダイヤモンドのカルボン酸官能基は上記の還元から保護されているので、高濃度の、高度にゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液を、ビーズミルプロセスによって生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、参照の方法によるビーズミル処理の間のカルボキシル化ナノダイヤモンドのゼータ電位を示している。
図2図2は、参照の方法によるビーズミル処理の間のカルボキシル化ナノダイヤモンドの粒子径を示している。
図3図3は、参照の方法におけるビーズミル装置のホース中のナノダイヤモンドの沈殿を示している。
図4図4は、参照の方法におけるビーズミル装置のふるいシステムの閉塞を示している。
図5図5は、本発明によるビーズミル処理の後の、カルボキシル化ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位を示している。
図6図6は、本発明によるビーズミル処理の後の、カルボキシル化ナノダイヤモンド分散液の粒子径分布を示している。
図7図7は、本発明による、2〜13のpHの範囲内にpH調整されたカルボキシル化ナノダイヤモンド分散液試料の分散安定性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
用語「ゼータ負のナノダイヤモンド」は、負のゼータ電位を有するナノダイヤモンド粒子を意味している。
【0025】
用語「カルボキシル化ナノダイヤモンド」は、その表面にカルボン酸官能基を有するナノダイヤモンド粒子を意味している。
【0026】
用語「ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド」は、その表面上にカルボン酸官能基を有し、そして負のゼータ電位を有するナノダイヤモンド粒子を意味している。
【0027】
用語「ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド」は、実質的にその一次粒子の形態であり、その表面上にカルボン酸官能基を有しており、そして負のゼータ電位を有するナノダイヤモンド粒子を意味している。
【0028】
用語「ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液」は、液体媒質とナノダイヤモンド粒子との分散液を意味しており、ナノダイヤモンド粒子は、実質的にその一次粒子の形態で存在しており、そしてその表面上にカルボン酸官能基を有しており、そしてその分散液は、負のゼータ電位を有している。
【0029】
本発明の第1の態様では、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の製造方法が提供される。
【0030】
より具体的には、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の製造方法が提供され、本方法は、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHを少なくとも7に調整すること、およびpHを調整された懸濁液をビーズミル処理に付すことを含んでいる。
【0031】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液は、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粒子および液体媒質を含んでいる。
【0032】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粒子は、本質的に純粋なナノダイヤモンド粒子であることができ、好ましくは少なくとも87質量%、より好ましくは少なくとも97質量%のナノダイヤモンド含有量を有している。カルボキシル化ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンドの生成に由来する黒鉛状およびアモルファスの炭素を含むことができる。また、それらは幾らかの残渣の金属不純物を、金属として、または金属酸化物の形態のいずれかで含むことができる。
【0033】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粒子は、懸濁液中で、凝集した形態で、または凝集した形態と一桁の形態との混合物として存在することができる。1つの態様では、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粒子は、ビーズミル処理の前に、液体媒質中で、一桁の形態であることができる。
【0034】
凝集した懸濁液の形態の粒径分布は、2nm〜400nmの範囲、好ましくは2nm〜100nmの範囲であることができる。
【0035】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粒子は、商業的に入手可能である。
【0036】
懸濁液の液体媒質は、いずれかの好適な液体媒質であることができる。液体媒質は、好ましくは、極性のプロトン性溶媒、極性の非プロトン性溶媒、両性の非プロトン性溶媒、イオン性液体、またはいずれかのそれらの媒質の混合物からなる群から選ばれる。
【0037】
好ましい極性のプロトン性溶媒としては、水;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、直鎖脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール;分岐ジオール、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、エトヘキサジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール;およびカルボン酸、例えばギ酸および酢酸がある。
【0038】
好ましい極性非プロトン性溶媒としては、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネートおよびラクタム、例えばN−メチル−2−ピロリドン(MNP)およびN−エチル−2−ピロリドン(NEP)がある。
【0039】
好ましい両性の非プロトン性溶媒としては、ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン(MEK);エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル;N,N−メチル−ホルムアミドおよびジメチルスルホキシド(DMSO)がある。
【0040】
好ましいイオン性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムジシアナミド、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−メチルアンモニウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオチアネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムメチルカーボネートおよび1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムメチルカーボネートがある。最も好ましいイオン性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドおよび1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドがある。
【0041】
より好ましくは、液体媒質は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、直鎖脂肪族ジオール、分岐ジオール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)、またはいずれかのそれらの溶媒の混合物からなる群から選択される。
【0042】
最も好ましくは、液体媒質は水である。
【0043】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHは、典型的には酸性の領域にある。すなわち、pHは、典型的には7未満である。
【0044】
本発明では、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHは、中性から塩基性の領域に調整される。すなわち、この懸濁液のpHは、7以上に調整される。好ましくは、pHは、7〜14の範囲に、より好ましくは7〜13の範囲に調整される。
【0045】
pHは、いずれかの既知の方法によって、例えば、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液と塩基を、超音波処理によって、付加的な機械的撹拌のあり、もしくはなしで、混合することによって、調製することができる。
【0046】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHは、いずれかの弱塩基または強塩基、例えばブレンステッドもしくはルイス塩基で調整することができる。好ましくは、pHは、水酸化アンモニウム、アンモニア、NaHOH、メチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、トリメチルアンモニア、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化セシウム(CeOH)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))水酸化ルビジウム(RbOH)、より好ましくは水酸化アンモニウム、アンモニア、NaHOH、NaOH、KOH、そして最も好ましくは水酸化アンモニウムで調整される。
【0047】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHは、必要であれば、酸、例えば強酸または弱酸で、しかしながら、最終的な懸濁液のpHが7以上であるように、低下させることができる。
【0048】
pH調整に先立って、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のゼータ電位は、3〜5のpHで測定して、−30mV超、好ましくは3〜5のpHで−35mV超、より好ましくは3〜5のpHで、−40mV超である。
【0049】
好ましい態様では、pHを調整されたゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のビーズミル処理の前に、ゼータ負のカルビキシル化ナノダイヤモンド懸濁液は、前処理に、好ましくはゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンドの分子間相互作用を低下させる前処理に付される。好ましくは、この前処理法は、超音波処理である。当業者に知られているいずれかの典型的な超音波装置を用いることができる。
【0050】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液は、pH調整の前に、pH調整の後に、またはpH調整の間に、前処理することができる。好ましくは、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液は、pH調整の間に超音波処理で前処理される。
【0051】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpH調整および随意選択的な前処理の後に、この懸濁液は、ビーズミル処理に付される。
【0052】
ビーズミル処理(Beads milling)、またはビーズミル処理(bead milling)は、通常用いられる用語であり、そして当業者には知られている。
【0053】
ビーズミルは、機械的粉砕機の一種である。これは円筒形の装置であり、種々の材料を粉砕(または混合)するのに用いられる。これらのミルは、粉砕される材料および粉砕媒体で充填される。異なる材料、例えば、セラミックボール、フリントボールおよびステンレス鋼ボールが、粉砕媒体として用いられる。内部的なカスケード効果によって、材料が微粉末に粉砕される。ビーズミルは、連続的にまたは周期的に運転することができ、そして種々の材料を湿式または乾式のいずれかで粉砕することができる。
【0054】
ビーズミル装置は、通過法または再循環法で運転することができる。通過法では、材料は、そのミルに一方の端部から供給されて、そして他の端部から排出される。再循環法では、粉砕される材料は、所望の粒子径が得られるまで、系内を循環される。粉砕媒体粒子が小さければ小さいほど、最終的な生成品の粒子径はより小さい。同時に、粉砕媒体粒子は、粉砕される材料の最も大きな材料片よりも大きくなければならない。
【0055】
また、ビーズミルの粉砕室は、ミル内部の周囲空気で起こる可能性がある酸化または爆発反応を防止するために、粉砕されている材料と反応しない不活性遮蔽ガス、例えば窒素で充填することができる。
【0056】
ビーズミル用のビーズは、粉砕された粒子が好適な直径を有するように選択される。本発明では、ビーズミルは、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは20〜50、そして最も好ましくは30μmの直径を有するビーズで運転される。
【0057】
ビーズミルは、好適な粒子径が得られるまで運転される。本発明では、分散液中の得られるゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粒子は、実質的に一桁の形態である。
【0058】
好ましい態様では、pH調整されたゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のビーズミルは、超音波処理で補助される。すなわち、pH調整されたゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液は、同時にビーズミル処理され、そして超音波処理される。また、組み合わされたビーズミル処理と超音波処理は、ビーズ補助超音波解砕プロセス(beads assisted sonic disintegration process)(BASDプロセス)として知られている。BASD装置は、商業的に入手可能である。超音波処理は、ミル処理の全体の間に維持することができ、またはいずれかの段階でスイッチを切って、そして随意選択的に再度スイッチを入れることができる。
【0059】
ビーズミルプロセスで得られるゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液は、2nm〜30nm、好ましくは2nm〜20nm、より好ましくは2〜12nm、最も好ましくは3nm〜8nmの平均一次粒子径分布(D90)を有している。
【0060】
得られたゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位は、7超のpHで測定して、−35mV超、好ましくは−37mV超、より好ましくは−40mV超、そして更により好ましくは−50mV超である。
【0061】
得られたゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位は、8.5超のpHで測定して、好ましくは−60mV超、そしてより好ましくは−70mV超である。
【0062】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液は、ゼータ電位が、7超のpHで測定して、−37mV超である場合に安定である。
【0063】
得られた分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度は、1質量%超、好ましくは2質量%超、より好ましくは2〜10質量%の範囲、最も好ましくは3〜8質量%の範囲である。
【0064】
得られたゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のpHは、塩基性、中性または酸性であることができる。好ましくはpHは、4.5〜14、好ましくは5〜13、より好ましくは7〜13である。
【0065】
得られたゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液は、更に処理することができる。この分散液のpHは、調整することができる。pHは、その分散液のpHに応じて、酸性領域に、または塩基性領域に、または中性に、調整することができる。好ましくは、pHは、8〜12の範囲、より好ましくは9〜12の範囲、最も好ましくは約10〜約11の範囲に調整することができる。pHは、いずれかの好適な弱塩基もしくは強塩基または弱酸もしくは強酸で調整することができる。また、この分散液は遠心分離、ろ過することができ、あるいはナノダイヤモンド濃度は、蒸発または希釈によって調整することができる。
【0066】
本発明の方法では、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のビーズミル処理は、ビーズミルの閉塞によって引き起こされる問題なしに行うことができる。ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHを、塩基性添加物によって中性からアルカリ性領域に調整することによって、ナノダイヤモンドのカルボン酸官能基は、ビーズミルプロセスの間の、それらのそれぞれのヒドロキシル基への化学機械的な還元から遮断される。還元が起こらないので、高度にゼータ負のナノダイヤモンドの一桁の分散液を生成するビーズミル処理を、成功裏に行うことができる。ナノダイヤモンドのカルボン酸官能基が還元から遮断されるので、高度にゼータ負の、一桁ナノダイヤモンド分散液を高濃度で、本発明のプロセスによって生成することができる。
【0067】
本発明の第2の態様では、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子および液体媒質を含む、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液が提供される。
【0068】
より好ましくは、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子および液体媒質を含むゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液が提供され、ここで、
i)ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位は、7超のpHで測定して、−37mV超であり、
ii)ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度は、この分散液中で2質量%超であり、
iii)ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90平均一次粒子径分布は、2nm〜12nmである。
【0069】
この分散液の液体媒質は、いずれかの好適な液体媒質であることができる。液体媒質は、好ましくは、極性のプロトン性溶媒、極性の非プロトン性溶媒、両性の非プロトン性溶媒、イオン性液体、またはいずれかのそれらの媒質の混合物からなる群から選択される。
【0070】
好ましい極性のプロトン性溶媒としては、水;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、直鎖脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール;分岐ジオール、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、エトヘキサジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール;およびカルボン酸、例えばギ酸および酢酸がある。
【0071】
好ましい極性の非プロトン性溶媒としては、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネートおよびラクタム、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN−エチル−2−ピロリドン(NEP)がある。
【0072】
好ましい両性の非プロトン性溶媒としては、ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン(MEK);エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル;N,N−メチル−ホルムアミドおよびジメチルスルホキシド(DMSO)がある。
【0073】
好ましいイオン性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムジシアナミド、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−メチルアンモニウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムメチル−カーボネートおよび1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムメチルカーボネートがある。最も好ましいイオン性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドおよび1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドがある。
【0074】
より好ましい液体媒質は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、直鎖脂肪族ジオール、分岐ジオール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)またはいずれかのそれらの溶媒の混合物からなる群から選択される。
【0075】
最も好ましい液体媒質は、水である。
【0076】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位は、7超のpHで測定して、−37mV超、より好ましくは−40mV超、そして最も好ましくは−50mV超である。
【0077】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位は、8.5超のpHで測定して、好ましくは−60mV超、そしてより好ましくは−70mV超である。
【0078】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液は、ゼータ電位が、7超のpHで測定して−37mV超である場合に、安定である。
【0079】
この分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度は、2質量%超、より好ましくは2〜10質量%の範囲、そして最も好ましくは3〜8質量%の範囲である。
【0080】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90平均一次粒子径分布は、好ましくは3nm〜8nmである。
【0081】
ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のpHは、塩基性、中性または酸性であることができる。好ましくはpHは、4.5〜14、好ましくは5〜13、より好ましくは7〜13である。
【実施例】
【0082】
以下に、例によって本発明がより詳細に説明される。これらの例の目的は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0083】

材料および装置
超音波装置:Hielscher UP400S(Hielscher社製)
ビーズミル装置:Buhler PML2(Buhler GmbH社製、独国)
粒子径およびゼータ電位測定器具:Malvern Zetasizer NanoZS
【0084】
ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド:uDiamond(商標)Molto Voxナノダイヤモンド粉末(Carbodeon社から商業的に入手可能)。この市販のゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粉末の酸価は、Ketek Oy(フィンランド)の役務として、34.7と測定された。
【0085】
ナノダイヤモンドの酸価は、滴定によって測定された。いずれの試料の測定も、滴定当たりに1.5gの試料の量で、2度行った。滴定は、自動化されたMetrohm滴定装置で行った。酸官能基の測定:固体試料を精秤した(1.5g)。試料を、75mLの中和されたエタノール中に、Hielscher 400 Wの超音波装置を用いて分散させた(水の含有量0.5質量%)。調製した試料を、0.1MのKOH(メタノール中)で、フェノールフタレイン(phenoliftalene)を指示薬として用いて、滴定した。試料は、滴定の間は、アルゴンガス流で連続的に処理した。滴定の終点は、指示薬を用いることによって、そして電位差測定法で、Methrohm Solvotrode電極を用いて、そして滴定曲線を描いて、検知した。
【0086】
EDX分析(Zeiss Ultra Plus Gemine)から、適用されたナノダイヤモンド材料は、本質的に窒素を含有した表面官能基を含まないことが明らかとなった。印加された加速電圧は20kVであった。
【0087】
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、検定成績≧99.5%を、VWR Chemicals/Prolabo、検定成績≧99.5%から購入した。
【0088】
1−エチル−2−ピロリドン(NEP)、検定成績≧98%を、AppliChem Panreacから購入した。
【0089】
生成品のゼータ電位値は、0.1質量%に希釈した試料で測定した。生成品の粒子径分布は、0.5質量%に希釈した試料で測定した。
【0090】
溶媒ベースのナノダイヤモンド分散液の水分含有量は、Ketek Oy(フィンランド)で、Karl Fischer法によって測定した。
【0091】
参考例−ミル処理前のpH調整なしでの、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のビーズミル処理
試験1
脱イオン水(300g)および、−47mVのゼータ電位を有するuDiamond Molto Voxのゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粉末(25g)を、電磁撹拌機を用いて一緒に混合した。前処理として、この混合物を、ナノダイヤモンド集塊の大きさを低減させるために、容器中で、30分間、100%の強度で、超音波処理に付した。超音波処理は、いずれかの機械的混合なしに行った。灰色がかった、7.69質量%のナノダイヤモンド懸濁液が形成され、そして超音波処理の終了の直後に、ナノダイヤモンド材料の実質的な部分が容器の底に沈殿した(subprecipitated)。
【0092】
結果として得られたナノダイヤモンド懸濁液を、次いでビーズミル処理に付した。初期のミル処理の段階で既に、ミル圧力の水準が上昇し始めて、ビーズミルのふるい装置の閉塞の可能性を示している。内部圧力を低減するために、ミルをポンプ送液なしで5分間運転し、そしてふるいを洗浄した。ミル処理を継続すると、圧力が再度上昇し始め、そしてミル処理を20分間後に停止しなければならなかった。
【0093】
試験2
脱イオン水(345g)および、−47mVのゼータ電位を有するuDiamond Voxのゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド粉末(25g)を電磁攪拌器を用いて一緒に混合して、結果として得た混合物を、前処理として、電磁撹拌の下で、30分間、超音波処理に付した。
【0094】
結果として得た6.8質量%のナノダイヤモンド懸濁液を、次いでビーズミル処理に付した。それをミル処理する前に、ミル全体の可能性のある酸素を、ミルを通して水をポンプ送液することによって除去した。ナノダイヤモンド懸濁液(370g)を、10分間以内に系内にゆっくりと加え、そしてポンプ速度を僅か10%(3kg/時)に調整し、そしてナノダイヤモンドスラリーを超音波装置を通して循環させた。混合物の全てが加えられた後に、ポンプ速度を15%(5kg/時)に増加させ、そして実際の処理を開始させた。
【0095】
ビーズミル処理の間に、規則的に10分間間隔で、直接的な粒子径(direct particle size)およびゼータ電位の測定のために、分析用の試料を採取した。
【0096】
ビーズミル処理の間に、ゼータ電位は、負から正の値に上昇する(図1)。これは、ゼータ負のカルボン酸官能基の、ゼータ正のヒドロキシル基への還元による。
【0097】
また、カルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液の粒子径分布は、ビーズミル処理の間に変化する。初期には、粒子径分布の減少が検知されたが、しかしながら、処理が継続されると再び上昇し始める(図2)。これは、ゼータ正のヒドロキシル基の形成によって引き起こされた凝集による。
【0098】
凝集は、図3中に見ることができ、図3には、ビーズミル装置のホース中のナノダイヤモンドの沈殿を示している。図4には、ビーズミル装置のふるいシステムの閉塞を示している。
【0099】
この閉塞は、カルボン酸官能基のヒドロキシル基への還元が起こるために発生する。ヒドロキシル基が正のゼータ電位を有するので、凝集が起こる。
【0100】
例(本発明による)−pH調整されたゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のビーズミル処理
1000mLの脱イオン水を、0.25mLの26%アンモニア水と、結果として得られるアンモニア懸濁液のpHをアルカリ性領域に調整するために、混合した。得られた懸濁液の初期のpHは、10.3と測定された。180gの調製されたアンモニア懸濁液を、ビーズを事前湿潤させるためにミル中に導入し、そしてビーズミル装置のホースを充填した。
【0101】
525gの脱イオン水および45gのゼータ負のカルボキシル化uDiamond Molto Voxナノダイヤモンド粉末を、慣用の電磁攪拌器で混合して、ナノダイヤモンド懸濁液を形成した。この懸濁液の初期のpHは、3.7であった。懸濁液のpHを、1.5mLの28%水性アンモニアを加えることによって調整し。次いでH14ブレードおよび40%の振幅を用いて、30分間超音波処理した。この懸濁液を、同時に氷浴で冷却しながら、慣用の電磁撹拌器(100rpm)で撹拌した。結果として得た7.9質量%のナノダイヤモンド懸濁液のpHは、9.0であった。
【0102】
この懸濁液は、次いで、30ミクロンのジルコニアビーズを用いたビーズミル処理に付した。ミル処理は、10%のポンプ速度(3kg/時)で、20分間に亘って初期状態とし、同時に超音波装置を通してこの懸濁液を循環した。20分間の処理時間の後に、ポンプ速度を15%(5kg/時)に増加させ、超音波処理を継続した。ミル処理は、合計の処理時間が90分間に到達するまで継続した。
【0103】
結果として得たゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液(試料KT−1010−12と名付けた)の最終的なpHは8.5であり、そしてゼータ電位は−45.2mVと測定された(図5)。粒子径分布は以下のとおりであった:D10が1.63nm;D50が2.89nm;そしてD90が6.61nm。図6には、ビーズミル処理後のカルボキシル化ナノダイヤモンド分散液の粒子径分布が示されている。
【0104】
例(本発明による)−高度にゼータ負の一桁水性ナノダイヤモンド分散液の、2〜13のpH範囲内でのゼータ電位安定性および調節可能性
表1に、2〜13のpH範囲での、カルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の測定されたゼータ電位が開示されている。この分散液のpHは、HClまたはNaHOHのいずれかで調整され、そして超音波で30分間処理された。ゼータ電位を、希釈された0.1質量%ナノダイヤモンド試料で測定した。ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液は、ゼータ電位が−37.5mVまたは−37.5mV超である場合に安定である。ナノダイヤモンド分散液のpHを、約10〜11に微調整することによって、ゼータ電位値を−70mV超に、またこの非常に低いナノダイヤモンド濃度で、到達させることが可能である。より高いナノダイヤモンド濃度で、これらの結果を更に評価する。
【0105】
【表1】
【0106】
2〜13のpH範囲にpH調整されたカルボキシル化ナノダイヤモンド分散液の試料の分散安定性を、図7に描いた。
【0107】
例(本発明による)−高度に負の、NMP中の2.2質量%のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の調製
エバポレータの水浴を45℃に予熱した。190gの、5質量%の水性の高度にゼータ負の、カルボン酸官能化ナノダイヤモンド分散液を2リットルの丸底フラスコ中に秤り容れ、次いで490gのNMP溶媒を加えた。結果として得た混合物を、以下の順序で蒸発留去した:1000ミリバールから200ミリバールへ低下(3分間で)、更に1分間の蒸発の間に100ミリバールへの低下、更にもう1分間の蒸発で50ミリバールへの低下、そして10分間の全蒸発時間まで15ミリバールへの低下。上記の工程は、フラスコをエバポレータ水浴中へ置くことなく行った。その後、蒸発留去を、このフラスコを水浴(T=45℃)中に置くことによって継続し、同時に水浴の温度を25分間で80℃に上昇させた。留去を80℃で8分間に亘って継続した。結果として得た分散液は、466.4gの質量であった。結果として得た分散液の水の含有量は、カールフィッシャー滴定によって、0.49質量%と測定された。オーブン乾燥された試料を、生成されたNMPを基にしたナノダイヤモンド分散液のナノダイヤモンド濃度は、2.2質量%であることが明らかとなった。
【0108】
この分散液は、以下の粒子径分布を示した:D10:3.37nm;D50:6.13nm;D90:14.1nm。分散液のゼータ電位は、−48.3mVと測定された。
【0109】
例(本発明による)−NEP中の高度にゼータ負の1.1質量%のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の調製
エバポレーションの水浴を45℃に予熱した。200gの5質量%の水性の高度にゼータ負の、カルボン酸官能化されたナノダイヤモンド分散液を4リットルの丸底フラスコ中に秤り容れ、次いで200gのイオン交換水および990gのNMP溶媒を加えた。結果として得た混合物を、5分間に亘って激しく撹拌した。次いで、この混合物を以下の順序で留去した:1000ミリバールから200ミリバールへ低下(3分間で)、更に1分間の蒸発の間に100ミリバールへの低下、更にもう1分間の蒸発で50ミリバールへの低下、そして18分間の全蒸発時間まで20ミリバール未満への低下。上記の工程は、フラスコをエバポレータ水浴中へ置くことなく行った。その後、蒸発留去を、このフラスコを水浴(T=45℃)中に置くことによって継続し、水浴の温度を10分間で65℃に上昇させた。次いで、全体の蒸発時間が50分間に到達するまで、留去を継続した。
【0110】
結果として得た分散液は、932.5gの質量であった。結果として得た分散液の水の含有量は、カールフィッシャー滴定によって、0.19質量%と測定された。オーブン乾燥された試料を、生成されたNMPを基にしたナノダイヤモンド分散液のナノダイヤモンド濃度は、1.1質量%であることが明らかとなった。
【0111】
この分散液は、以下の粒子径分布を示した:D10:2.35nm;D50:3.57nm;D90:6.75nm。分散液のゼータ電位は、−63.8mVと測定された。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液の製造方法であって、ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のpHを少なくとも7に調整すること、およびpH調整した懸濁液をビーズミル処理に付すことを含む、方法。
(2)pHが7〜14の範囲に、より好ましくは7〜13の範囲に調整される、(1)記載の方法。
(3)前記懸濁液の液体媒質が、極性のプロトン性溶媒、極性の非プロトン性溶媒、両性の非プロトン性溶媒、イオン性液体、またはそれらの溶媒の混合物からなる群から選択される、(1)または(2)記載の方法。
(4)前記極性のプロトン性溶媒が、水、アルコール、直鎖脂肪族ジオール、分岐ジオールまたはカルボン酸であり、前記極性の非プロトン性溶媒が、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネートまたはラクタムであり、前記両性の非プロトン性溶媒が、ケトン、エステル、N,N−メチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドであり、そして前記イオン性液体が、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムジシアナミド、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−メチルアンモニウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムメチル−カーボネートおよび1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムメチルカーボネートである、(3)記載の方法。
(5)前記液体媒質が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、直鎖脂肪族ジオール、分岐ジオール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(MEP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)またはそれらの溶媒のいずれかの混合物からなる群から選択され、好ましくは前記液体媒質は水である、(3)または(4)記載の方法。
(6)ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液のゼータ電位が、pH調整前に、3〜5のpHで−30mVより低く、好ましくは3〜5のpHで−35mVより低く、より好ましくは3〜5のpHで−40mVより低い、(1)〜(5)のいずれか1項記載の方法。
(7)前記ゼータ負のカルボキシル化ナノダイヤモンド懸濁液が、前記ビーズミル処理の前に前処理される、(1)〜(6)のいずれか1項記載の方法。
(8)前記前処理が、超音波処理である、(7)記載の方法。
(9)pHが、ブレンステッドまたはルイス塩基で、好ましくは水酸化アンモニウム、アンモニア、NaHOH、メチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、トリメチルアンモニア、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化セシウム(CsOH),水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化ルビジウム(RbOH)で、最も好ましくは水酸化アンモニウムで、より好ましくは水酸化アンモニウム、アンモニア、NaHOH、NaOH、KOH、そして最も好ましくは水酸化アンモニウムで調整される、(1)〜(8)のいずれか1項記載の方法。
(10)前記pH調整された懸濁液の前記ビーズミル処理が、超音波処理によって補助される、(1)〜(9)のいずれか1項記載の方法。
(11)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−35mVより低く、好ましくは−37mVより低く、より好ましくは−40mVより低く、そして最も好ましくは−50mVより低い、(1)〜(10)のいずれか1項記載の方法。
(12)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、8.5超のpHで測定して、−60mVより低く、好ましくは−70mVより低い、(1)〜(10)のいずれか1項記載の方法。
(13)前記分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、1質量%超、好ましくは2質量%超、より好ましくは2〜10質量%の範囲、最も好ましくは3〜8質量%の範囲である、(1)〜(12)のいずれか1項記載の方法。
(14)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90平均一次粒子径分布が、2nm〜30nm、好ましくは2nm〜20nm、より好ましくは2〜12nm、そして最も好ましくは3nm〜8nmである、(1)〜(13)のいずれか1項記載の方法。
(15)ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子および液体媒質を含むゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液であって、
i)該ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−37mVより低く、
ii)該分散液中のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、2質量%超であり、
iii)該ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90平均一次粒子径分布が、2nm〜12nmである、ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(16)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、7超のpHで測定して、−40mVより低く、そして最も好ましくは−50mVより低い、(15)記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(17)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のゼータ電位が、8.5超のpHで測定して、−60mVより低く、そして好ましくは−70mVより低い、(15)記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(18)前記分散液中の前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子の濃度が、2〜10質量%の範囲、より好ましくは3〜8質量%の範囲である、(15)〜(17)のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(19)前記液体媒質が、極性のプロトン性溶媒、極性の非プロトン性溶媒、両性の非プロトン性溶媒、イオン性液体、またはそれらの溶媒の混合物からなる群から選択される、(15)〜(18)のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(20)前記極性のプロトン性溶媒が、水、アルコール、直鎖脂肪族ジオール、分岐ジオールまたはカルボン酸であり、前記極性の非プロトン性溶媒が、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネートまたはラクタムであり、前記両性の非プロトン性溶媒が、ケトン、エステル、N,N−メチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド、そして前記イオン性液体が、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムエチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムジシアナミド、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−メチルアンモニウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムメチル−カーボネートおよび1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムメチルカーボネートである、(19)記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(21)前記液体媒質が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、直鎖脂肪族ジオール、分岐ジオール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(MEP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)またはそれらの溶媒のいずれかの混合物からなる群から選択され、好ましくは前記液体媒質は水である、(15)〜(20)のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(22)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド粒子のD90平均一次粒子径分布が3nm〜8nmである、(15)〜(21)のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
(23)前記ゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液のpHが,4.5〜14、好ましくは5〜13、より好ましくは7〜13である、(15)〜(22)のいずれか1項記載のゼータ負のカルボキシル化一桁ナノダイヤモンド分散液。
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図7