【実施例】
【0016】
図1に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム30と、この車体フレーム30で支えられるパワーユニット12と、スイングアーム13で回転自在に支持される後輪14と、車体フレーム30の前部のヘッドパイプ31で支持されるステアリング軸15と、このステアリング軸15の上端に取付けられるトップブリッジ16と、ステアリング軸15の下端に取付けられるボトムブリッジ17と、これらのトップブリッジ16及びボトムブリッジ17で支持され前輪18を回転自在に支えるフロントサスペンション19と、車体フレーム30上に配置される燃料タンク20及びシート21とを備えている。パワーユニット12は、ガソリンエンジンなどの内燃機関が好適であるが、電動モータであってもよい。
【0017】
車体フレーム30は、ヘッドパイプ31と、このヘッドパイプ31から車両後方へ延びるメインフレーム32と、このメインフレーム32の後部から斜め下へ延びるピボットフレーム33と、ヘッドパイプ31から斜め下へ延びるダウンフレーム34を有する。ダウンフレーム34とピボットフレーム33とでパワーユニット12を支持する。
【0018】
ピボットフレーム33でスイングアーム13が上下動自在に支持される。メインフレーム32の後端から車両後方へ延びるシートフレーム35でシート21を支える。そして、シートフレーム35とスイングアーム13とにリヤサスペンション22が渡されている。
【0019】
前輪18と後輪14の間(この例ではパワーユニット12の後方位置)に、運転者が足を載せるメインステップ28及び運転者が操作するキックペダル29が配置されると共に前輪ブレーキ23と後輪ブレーキ24に制動力は分配する連動機構60が設けられている。この連動機構60の詳細は
図2で説明する。
【0020】
トップブリッジ16にハンドルホルダ25を介してステアリングハンドル26が取付けられ、このステアリングハンドル26に取付けられる右グリップ27に第1操作子41が配置され、この第1操作子41から前輪ブレーキ23まで第1線状部材としての第1伝達部材42が延びている。
【0021】
第1操作子41は、フロントブレーキレバーが好適であるが、ブレーキペダルであってもよく、種類形式は問わない。また、第1線状部材としての第1伝達部材42は、制動力を機械的に伝え得るブレーキケーブルが好適であるが、ブレーキロッドや制動油圧を伝えるブレーキホース(又はブレーキ配管)であってもよい。
【0022】
また、パワーユニット12の近傍に配置されている連動機構60から前輪ブレーキ23まで、第2伝達部材としての連動ブレーキケーブル43が延びている。この連動ブレーキケーブル43は車両前後方向において、斜め上に延びた後に前方へ湾曲し、シートフレーム35及びメインフレーム32に沿って延び、ステアリング軸15の近傍で下方へ湾曲して前輪ブレーキ23に達する。
【0023】
なお、連動機構60は、第2操作子45で駆動される。連動機構60から第3伝達部材46が後輪ブレーキ24まで延びている。第2操作子45は、ブレーキペダルが好適であるが、ブレーキレバーであってもよい。第3伝達部材46は、ブレーキロッドが好適であるが、ブレーキホースやブレーキワイヤであってもよい。
【0024】
また、トップブリッジ16の車両前方にスピードメータ47及び前照灯48が配置され、スピードメータ47から第2線状部材としてのスピードメータケーブル49が前輪ブレーキ23の近傍まで延びている。
【0025】
図2に示すように、シートフレーム35は、ピボットフレーム33から斜め上に延びるサブフレーム36で補強されている。このサブフレーム36とピボットフレーム33にL字状のピリオンステップブラケット37が取付けられ、このピリオンステップブラケット37に、同乗者が足を載せるピリオンステップ38が取付けられている。
【0026】
第2操作子45は、ピボットフレーム33に回転軸51を介して取付けられる。第2操作子45がブレーキペダルである場合は、前端に踏み面52を備え、後端に且つ回転軸51から上に延びるアーム部53を備える。
【0027】
連動機構60は、アーム部53の上部に連結軸61を介して回転自在に取付けられる縦長板状のイコライザ62と、このイコライザ62の上端とピリオンステップブラケット37の上端とに掛け渡したディレイスプリング63と、連結軸61よりも下方へ延びるイコライザ62の下部に設けられるストッパピン64とを有する。
【0028】
イコライザ62の上部に連動ブレーキケーブル43が連結され、イコライザ62の下部に第3伝達部材46が連結される。
第2操作子45は、ペダルスプリング54で上方へ付勢されている。車体フレーム側に設けたストッパ部39にアーム部53の後面が当たることで、図反時計回りの回転が抑制される。
【0029】
乗員が踏み面52を踏むと、第2操作子45は回転軸51を中心に図時計方向へ回転する。アーム部53は車両前方へ移動する。この移動により、第3伝達部材46が引かれる。
【0030】
なお、第2操作子45の操作初期段階では、縦長のイコライザ62は、上部がディレイスプリング63で車両前方への移動が制限されるため、連動ブレーキケーブル43は引かれない。
イコライザ62の上部とアーム部53とは、車両前方に開くV字形を呈しているが、アーム部53が車両前方へ移動することで、I字になろうとする。ストッパピン64がイコライザ62に接触すると、この後はアーム部53に連動して、イコライザ62は車両前方へ移動し始め、連動ブレーキケーブル43が引かれ始める。
【0031】
第3伝達部材46よりも遅れて連動ブレーキケーブル43が引かれる。
このように第2操作子(ブレーキペダル45)で発生する力は、連動機構60で連動ブレーキケーブル43と第3伝達部材46とに分配される。
【0032】
なお、連動ブレーキケーブル43は、アウターチューブ43aと、このアウターチューブ43a内を移動するインナーケーブル43bとからなる。アウターチューブ43aは、インナーケーブル43bを包んで保護する役割を果たす。
【0033】
図3に示すように、メインフレーム32に沿って車両後方からヘッドパイプ31に向かって延びる連動ブレーキケーブル43は、ステアリング軸15の近傍で下へ方向を変え、下方へ十分に延びた後に車両前方へ方向を変えて前輪ブレーキ23に連結される。
【0034】
また、
図1の第1操作子41から延びる第1伝達部材42は、ステアリング軸15の近傍から連動ブレーキケーブル43に沿って下がり、前輪ブレーキ23に連結される。
また、
図1のスピードメータ47から延びるスピードメータケーブル49は、ステアリング軸15の近傍から連動ブレーキケーブル43に沿って下がり、前輪18のホイールハブ55に連結される。
【0035】
連動ブレーキケーブル43は、メインフレーム32の上面部32Bに設けた第1ケーブル支持部70と、ボトムブリッジ17に設けた第2ケーブル支持部80とで保持される。
第1ケーブル支持部70の軸線71が側面視で車両前方へ斜め上に延びており、第2ケーブル支持部80の軸線81が側面視で後下がりに傾斜するように延びているため、第1ケーブル支持部70と第2ケーブル支持部80との間において、車両斜め前方へ凸となるように、連動ブレーキケーブル43は湾曲している。
【0036】
すなわち、
図3に示すように、第2ケーブル支持部80はケーブルを支持する軸線81が側面視で後下がりに傾斜しており、連動ブレーキケーブル43の湾曲凸部43Aの少なくとも一部は、ステアリング軸15の軸線15Aよりも前方になるように支持されている。
また、
図1に示すように、車両側面視で、シリンダヘッド12Aの前端よりも前側に第1ケーブル支持部70が設けられている。
【0037】
第1ケーブル支持部70と第2ケーブル支持部80の好適な構造を、次に説明する。
図4に示すように第1ケーブル支持部70は、鋼線を曲げて形成した単純な止め金具であり、車幅方向に水平に移動する連動ブレーキケーブル43を収納する第1ポケット部72と、上へ移動する連動ブレーキケーブル43を上から抑える第2ポケット部73とを有する。
好ましくは、連動ブレーキケーブル43に、一対の鍔74、74が付いた筒75を嵌めて固定する。
【0038】
第1ポケット部72の外幅W1は、鍔74と鍔74の内幅W2より若干(0.5mm程度)狭くする。
筒75を第1ポケット部72に嵌めると、一対の鍔74、74により、連動ブレーキケーブル43が車両前後方向へ移動することがなくなる。加えて、第2ポケット部73で上方への移動が抑制されるため、筒75は前・後、左・右、上・下へ移動することがない。
【0039】
図5(a)に示すように、第2ケーブル支持部80は、帯状の金属板82の両端にビス穴83、83を設け、中央にU字切り欠き84、84を設け、U字切り欠き84、84を除く部位に折り曲げ形成したフランジ部85、85を有し、折り曲げられたホルダ部材であって、U字切り欠き84とビス穴83、83との間に、主保持部87と第1副保持部88と第2副保持部89とが形成されている。
【0040】
図5(b)に示すグロメット91、92を準備する。グロメット91、92の各々は、上下に鍔93、93を有する。一方のグロメット91は、連動ブレーキケーブル43が挿通された状態で、主保持部87にセットされる。他方のグロメット92は、第1伝達部材42が挿通された状態で、第2副保持部89にセットされる。
【0041】
図5(c)に示すように、連動ブレーキケーブル43と、スピードメータケーブル49と、第1伝達部材42とが、並んだ状態で第2ケーブル支持部としてのホルダ部材80で保持され、この状態のホルダ部材80がビスやボルトなどの締結部材95により、ボトムブリッジ17に固定される。
【0042】
連動ブレーキケーブル43のアウターチューブ43aは、グロメット91を介してホルダ部材80で挟まれる。グロメット91は鍔93がフランジ部85(断面図につき上のフランジ部は不図示)に当たるため、上下方向(図面表裏方向)に抜ける心配はない。そして、グロメット91が円形を保つため、アウターチューブ43aが偏平化する心配がない。アウターチューブ43aが円形を保つため、内部のインナーケーブル43bの移動が妨げられない。
【0043】
第1伝達部材42は連動ブレーキケーブル43と同様であるため、説明は省略する。
一方、スピードメータケーブル49は、ホルダ部材80の内面から十分な隙間が確保されるため、上下方向(図面表裏方向)に自由に移動する。
【0044】
図6に示すように、ホルダ部材80は、ボトムブリッジ17に締結部材95で固定されるが、締結部材95はステアリング軸15のごく近傍にねじ込みなどにより締結される。
そして、外径が近似する連動ブレーキケーブル43と、スピードメータケーブル49と、第1伝達部材42とは、連動ブレーキケーブル43が最もステアリング軸15に近い位置に配置される。結果、連動ブレーキケーブル43は、転蛇の影響を少なくすることができる。
【0045】
スピードメータケーブル49が、次にステアリング軸15に近い位置に配置される。スピードメータケーブル49も、転蛇の影響を少なくすることができる。
【0046】
図7に示すように、車幅中心線32aの車幅方向一方(この例では左方)に前輪ブレーキ32が配置されている。そして、第1ケーブル支持部70の軸線71は、車幅中心線を兼ねるメインフレーム32の中心軸(車両長手軸)32aに対して、前輪ブレーキ32側へ角度θだけ傾斜している。このような第1ケーブル支持部70で支持される連動ブレーキケーブル43は、車両平面視で、比較的短い経路を通ってホルダ部材80に至る。
【0047】
トップブリッジ16の車両前方に配置されるスピードメータ47から延びるスピードメータケーブル49は、比較的短い経路を通ってホルダ部材80に至る。
第1操作子41から延びる第1伝達部材42は、ステアリングハンドル26に沿って延びた後、トップブリッジ16の下を通ってホルダ部材80に至る。
【0048】
なお、実施例では、
図5(c)に示したように、第2ケーブル支持部としてのホルダ部材80に、主保持部87と第1副保持部88と第2副保持部98を設け、主保持部87で連動ブレーキケーブル43を保持し、第1副保持部88で第2線状部材としてのスピードケーブル49を保持し、第2副保持部89で第1線状部材42を保持するようにした。
第1・第2線状部材42、49は、ケーブルと配管の何れであってもよい。
すなわち、実施例では、ホルダ部材80で、1本の連動ブレーキケーブル43と2本ケーブル(又は配管)42、49を保持するようにした。
【0049】
しかし、2本ケーブル(又は配管)は、1本又は3本以上であってもよい。すなわち、ホルダ部材80は、ケーブル又は配管からなる少なくとも1本の線状部材42又は49と、連動ブレーキケーブル43とを一括して支持する第2ケーブル支持部材である。
【0050】
また、
図6にて、外径がほぼ同じ連動ブレーキケーブル43とスピードメータケーブル49と第1伝達部材42のうち、連動ブレーキケーブル43を最もステアリング軸15寄りに配置したが、連動ブレーキケーブル43より十分に小径のワイヤ又は管であれば、連動ブレーキケーブル43よりもステアリング軸15に寄った位置にてホルダ部材80で支持させることは差し支えない。
【0051】
図7にて、連動ブレーキケーブル43を他のケーブル又は配管42、49に比べて、ステアリング軸15寄りに配置した。ステアリング軸15から連動ブレーキケーブル43までの半径は、ステアリング軸15から他のケーブル又は配管42、49までの半径より小さくなり、旋回に係る移動距離が小さくなる。旋回に係る移動距離が小さくなれば、連動ブレーキケーブル43のフリクションを小さくすることができる。結果、他のケーブル又は配管42、49に比べて連動ブレーキケーブル43は、転蛇の影響を少なくすることができる。
【0052】
図6に示すように、ホルダ部材80は、ボトムブリッジ17に取付けられる。
図3に示すように、ボトムブリッジ17は前輪18と共に転蛇される。前輪18はフロントサスペンション19により上下に移動可能に支持される。連動ブレーキケーブル43は、ホルダ部材80よりも上側の部位で転蛇を吸収し、ホルダ部材80よりも下側の部位でフロントサスペンション19の作動を吸収すればよく、それぞれ、転蛇とサスペンションの動きを個別に考慮することができるため、連動ブレーキケーブル43の配索を含む設計が容易になる。
【0053】
図5(c)に示すように、スピードメータケーブル49はグロメットを介することなく第1副保持部88に挿通される。
図3に示すように、スピードメータケーブル49は、前輪18のホイールハブ55と、上方のスピードメータ(
図1、符号47)とを繋いでいる。このスピードメータケーブル49が、第1副保持部88に挿通されるだけであるため、ホイールハブ55とスピードメータ47の間で十分に
スピードメータケーブル49を移動する長さを確保することができる。
【0054】
また、
図3で説明したように、連動ブレーキケーブル43は、第1ケーブル支持部70と第2ケーブル支持部80との間において、車両斜め前方へ凸となるように、連動ブレーキケーブル43は湾曲している。
連動ブレーキケーブル43がメインフレーム32の上面からボトムブリッジ17までの間で円弧を描くように湾曲して支持されているため、屈曲半径は十分な大きさに確保できる。曲率半径が大きいと、インナーケーブル(
図4、符号43b)がアウターチューブ(
図4、符号43a)に強く接触することがなくなり、結果、連動ブレーキケーブル43に発生するフリックションを小さくすることができる。
【0055】
さらには、
図7で説明したように、連動ブレーキケーブル43が、前輪ブレーキ32側に傾斜して設けられるため、連動ブレーキケーブル43を車幅方向に蛇行させる必要が無くなり、ケーブル長さを短くすることができるため、フリックションを小さくすることができる。フリクションが小さいため、制動操作がより円滑に且つより軽く行える。