【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
抗TWEAK抗体を用いて、例えば、炎症性疾患、神経細胞疾患、または本明細書に記載された他の疾患など、さまざまな症状と疾患を治療することができる。ヒト被験体を治療するために使用する場合、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはそれ以外の実質的なヒト抗体である。
【0004】
一つの態様において、本開示は、第一および第二の免疫グロブリン可変領域の配列を含み、例えば、ヒトTWEAKなどのTWEAKに結合するタンパク質を特徴とする。このタンパク質は、例えば、10
−7Mよりも小さい、例えば、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11Mまたはそれ以上のK
Dに相当するアフィニティーでTWEAKに結合することができる。このタンパク質は、本明細書において、「抗TWEAK抗体」とも呼ばれる。第一および第二の免疫グロブリン可変領域の配列は、少なくとも、TWEAKに結合する抗原結合部位を形成するのに十分な免疫グロブリン可変領域の部分を含むことができる。典型的には、第一および第二の免疫グロブリン可変領域の配列は、例えば、一対になっているか、そうでなければ適合性のある重鎖および軽鎖など、それぞれ重鎖および軽鎖の免疫グロブリン可変領域の配列に対応する。
【0005】
この抗体は、P2D10によって認識されるTWEAK上のエピトープに由来する少なくとも1個、2個、3個または4個のアミノ酸残基を含む、TWEAK上のエピトープ、P2D10に結合しているTWEAKに由来するペプチド(例えば、長さ25、20または15アミノ酸よりも短いペプチド)、またはP2D10によって認識されるTWEAK領域に結合する。例えば、この抗体は、例えば、直鎖状エピトープまたは高次構造エピトープなど、TWEAK、特にヒトTWEAKのエピトープ、例えば、TWEAKの可溶性領域に特異的に結合する。この抗体は、TWEAK、例えば、ヒトTWEAKへの結合について、P2D10と競合することができる。この抗体は、TWEAK、例えば、ヒトTWEAKへのP2D10の結合を競合的に阻害することができる。一つの実施態様において、この抗体は、P2D10のエピトープと重複した、例えば、P2D10のエピトープと共通するアミノ酸を、少なくとも1個、2個、3個または4個の含むエピトープ、または、結合されると、TWEAKとP2D10の相互作用を立体的に妨害するエピトープに結合することができる。
【0006】
例えば、抗TWEAK抗体は、TWEAKに結合して、TWEAKと、例えば、Fn14(例えば、ヒトFn14)などのTWEAKレセプターとの相互作用(例えば、結合)を調節、例えば、阻害することができる。また、この抗体は、TWEAKレセプターのシグナル伝達活性を低下させることもできる。この抗体は、TWEAKを標的し、TWEAKを隔離し、および/またはTWEAKのインビボ安定性を調節することができる。
【0007】
一つの実施態様において、本抗体は、Fn14(例えば、ヒトFn14)と接触するTWEAK上の相互作用部位の少なくとも一部に特異的に結合する。本抗体は、TWEAK、例えば、ヒトTWEAKへの結合についてFn14と競合することができる。本抗体は、TWEAKへのFn14の結合を競合的に阻害することができる。本抗体は、TWEAK上のエピトープであって、結合されていると、TWEAKとFn14(例えば、ヒトTWEAKとヒトFn14)の相互作用を立体的に妨害するエピトープと相互作用することができる。
【0008】
一つの実施態様において、本抗体は、一つ以上のTWEAK関連活性を、約50nMから5pM、一般的には約100から250pM以下のIC
50で阻害することができる。例えば、本抗体は、内皮細胞増殖または血管新生を促進するTWEAKの能力を阻害することができる。一つの実施態様において、この抗TWEAK抗体は、少なくとも一つのTWEAK関連活性を低下させて、例えば、抗体が被験体に投与されると炎症症状を調節することができるようにする。
【0009】
別の実施態様において、本抗体は、10
3から10
8M
−1s
−1、一般的には、10
4から10
7M
−1s
−1の範囲の速度でTWEAKと結合することができる。さらに別の実施態様において、本抗体は、10
−2から10
−6s
−1、一般的には、10
−2から10
−5s
−1の範囲の解離速度をもつ。一つの実施態様において、本抗体は、TWEAK、例えば、ヒトTWEAKに、モノクローナル抗体P2D10、またはその改変型、例えば、そのキメラ型またはヒト化型(例えば、本明細書記載のヒト化型)と同様の(例えば、5倍または10倍の範囲内の)結合力および/または速度で結合する。抗TWEAK抗体の結合力および結合速度は、例えば、バイオセンサー技術(商標BIACORE)を用いて試験することができる。
【0010】
一つの実施態様において、本抗体は、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、またはFv断片の一本鎖など、全長抗体の抗原結合断片である。一般的には、本抗体は全長抗体である。本抗体は、モノクローナル抗体でも、単一特異性抗体でもよい。例えば、本抗体は、20種類よりも少ない別の抗TWEAK抗体種を含む組成物、例えば、別の抗TWEAK抗体種を含まない組成物になっている。
【0011】
本抗体は、実質的にヒトである。「実質的にヒト」抗体とは、その抗体が、正常なヒトにおいて免疫原反応を引き起こすことのない十分な数のヒトアミノ酸位置を含む抗体のことである。好ましくは、このタンパク質は、中和抗体反応、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を引き起こさない。HAMAは、例えば、抗体を反復して投与することが望ましい場合、例えば、慢性または再発性の病状を治療する場合など、いくつかの状況下で問題となりうる。HAMA反応は、血清からの抗体クリアランスが増加するため、(例えば、Saleh et al.,Cancer Immunol.Immunother.,32:180−190(1990)参照)、および、またアレルギー反応を起す可能性がある(例えば、LoBuglio et al.(1986)Hybridoma,5:5117−5123参照)ために、反復した抗体投与の効果を失わせる可能性がある。
【0012】
例えば、本抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、キメラ抗体、変異抗体、親和性成熟抗体、脱免疫抗体、合成抗体、またはそれ以外のインビトロ生成抗体、およびこれらを組み合わせたものでありうる。一つの実施態様において、抗TWEAK抗体はヒト化抗体である。
【0013】
抗TWEAK抗体の重鎖および軽鎖は、実質的に全長でもよい。このタンパク質は、少なくとも1個、好ましくは2個の完全な重鎖、および少なくとも1個、好ましくは2個の完全な軽鎖を含むことができ、または、抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、または一本鎖Fv断片)を含むこともできる。さらに別の実施態様において、本抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択された、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択された、さらに特には、IgG1(例えば、ヒトIgG1)である重鎖定常領域を有する。一般的には、この重鎖定常領域は、ヒトの定常領域、またはヒト定常領域の改変型である。別の実施態様において、本抗体は、例えば、κまたはλから選択された、特にκ(例えば、ヒトκ)である軽鎖定常領域を有する。
【0014】
一つの実施態様において、このタンパク質は、本明細書に開示された抗体、例えば、P2D10の軽鎖または重鎖の可変領域に由来する、少なくとも1個、2個、および好ましくは3個のCDRを含む。ここで、CDRは、Chothiaの超可変ループによって規定されるCDRを意味する。例えば、このタンパク質は、重鎖可変ドメイン配列において、以下の配列:
【0015】
【化5】
の少なくとも1個、2個、または3個をCDR領域の内部に含むか、または、前記配列に対して10アミノ酸あたり4、3、2.5、2、1.5、1、もしくは0.5以下(例えば、相違する数は、CDRの長さに比例する)の変化(例えば、置換、挿入、または欠失)、例えば、1つのCDRにつき少なくとも1個はあるが、2個、3個、または4個を超えない変化によって異なるアミノ酸配列を有するCDR。重鎖可変ドメイン配列は、これらのCDR配列を、特にCDR3において、または少なくとも2個のCDR、例えば、CDR1およびCDR3、CDR2およびCDR3、または3個のCDRすべてにおいて含むことができる。
【0016】
このタンパク質は、重鎖可変ドメイン配列において、以下の配列:
【0017】
【化6】
の少なくとも1個、2個、または3個をCDR領域の内部に含むことができる(括弧内のアミノ酸は具体的な位置における変化を示す)。
【0018】
このタンパク質は、軽鎖可変ドメイン配列において、以下の配列:
【0019】
【化7】
の少なくとも1個、2個、または3個をCDR領域の内部に含むことができるか、または、前記配列に対して10アミノ酸あたり4、3、2.5、2、1.5、1、もしくは0.5以下(例えば、相違する数は、CDRの長さに比例する)の変化(例えば、置換、挿入、または欠失)、例えば、1つのCDRにつき少なくとも1個はあるが、2個、3個、または4個を超えない変化によって異なるアミノ酸配列を有するCDR。重鎖可変ドメイン配列は、これらのCDR配列を、特にCDR3において、または少なくとも2個のCDR、例えば、CDR1およびCDR3、CDR2およびCDR3、または3個のCDRすべてにおいて含むことができる。
【0020】
このタンパク質は、軽鎖可変ドメイン配列において、以下の配列:
【0021】
【化8】
の少なくとも1個、2個、または3個をCDR領域の内部に含むことができる(括弧内のアミノ酸は具体的な位置における変化を示す)。
【0022】
一つの好適な実施態様において、このタンパク質は、P2D10の6個すべてのCDR、または近縁のCDR、例えば、同一のCDR、または少なくとも1個のアミノ酸変異をもつが、2個、3個、または4個よりも多い変異(例えば、置換、欠失、または挿入)をもたないCDR、または本明細書記載のその他のCDRを含む。
【0023】
さらに別の実施例において、このタンパク質は、P2D10の同一の正準な構造に対応するChothiaのCDR領域を有する、少なくとも1個、2個、または3個のCDR領域、例えば、P2D10の重鎖および/または軽鎖の可変領域の少なくともCDR1および/またはCDR2などを含む。
【0024】
このタンパク質は、以下の配列の一つを含むことが可能である。
【0025】
【化9】
または、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個よりも少ない変異(例えば、置換、挿入、または欠失、例えば、保存的置換、またはP2D10、huP2D10−L1もしくはP2D10−L1の対応する位置あるアミノ酸残基の置換)をもつ配列を含むことが可能である。置換の例は、以下のKabat位の一つにおけるものである。2、4、6、35、36、38、44、47、49、62、64〜69、85、87、98、99、101、および102位。置換は、例えば、P2D10のアミノ酸の1個以上を、例えば、ヒトフレームワーク領域などのフレームワーク領域中の、例えば、FR2中(例えば、連続番号でPheに対して46位にある)およびFR3中(例えば、Pheに対して87位にある)の対応する位置の中に置換することができる。
【0026】
このタンパク質は、重鎖可変領域にある以下の配列の一つを含むことが可能である。
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
または、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個よりも少ない変異(例えば、置換、挿入、または欠失、例えば、保存的置換、またはP2D10の対応する位置あるアミノ酸残基の置換)をもつ配列を含むことが可能である。置換の例は、以下のKabat位の一つにおけるものである。2、4、6、25、36、37、39、47、48、93、94、103、104、106、および107位。置換は、例えば、P2D10のアミノ酸の1個以上を、例えば、ヒトフレームワーク領域などのフレームワーク領域中の対応する位置の中に置換することができる。
【0030】
ひとつの実施態様において、重鎖フレームワーク(例えば、個々のFR1、FR2、FR3、またはFR1、FR2、およびFR3を含むがCDRは含まない配列)は、以下の生殖系列のVセグメントの配列の一つの重鎖フレームワークに少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%またはそれ以上一致するアミノ酸配列を含む:DP−25、DP−1、DP−12、DP−9、DP−7、DP−31、DP−32、DP−33、DP−58、DP−54、他のVHIサブグループの生殖系列の配列、他のVHIIIサブグループの生殖系列の配列、またはクラス1−3の正準な構造と適合性のある別のV遺伝子(例えば、Chothia et al.(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;Tomlinson et al.(1992)J.Mol.Biol.227:776−798参照)。クラス1−3の正準な構造と適合性のある他のフレームワークには、Kabatナンバリングに従った以下の残基の一つ以上を有するフレームワークが含まれる:26位のAla、Gly、Thr、またはVal、26位のGly、27位のTyr、Phe、またはGly、29位のPhe、Val、Ile、またはLeu、34位のMet、Ile、Val、Leu、Thr、Trp、またはIle、94位のArg、Thr、Ala、Lys、54位のGly、Ser、Asn、またはAsp、および71位のArg。
【0031】
一つの実施態様において、軽鎖フレームワーク(例えば、個々のFR1、FR2、FR3、またはFR1、FR2、およびFR3を含むがCDRを含まない配列)は、VκIIサブグループの生殖系列の配列の軽鎖フレームワーク、または以下の生殖系列のVセグメントの配列の一つに少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上一致するアミノ酸配列を含む:A17、A1、A18、A2、A19/A3、A23、VκIサブグループの生殖系列の配列(例えば、DPK9配列)、またはクラス4−1の正準な構造と適合性のある別のV遺伝子(例えば、Tomlinson et al.(1995)EMBO J.14:4628参照)。クラス4−1の正準な構造と適合性のある他のフレームワークには、Kabatナンバリングに従った、以下の残基の一つ以上を有するフレームワークなどがある:2位のValまたはLeuまたはIle、25位のSerまたはPro、27b位のIleまたはLeu、29位のGly、33位のPheまたはLeu、および71位のPhe。さらに、Kabatナンバリングに従って、48位をIleまたはValにすることができる。
【0032】
別の実施態様において、軽鎖フレームワーク(例えば、個々のFR1、FR2、FR3、またはFR1、FR2、およびFR3を含むがCDRを含まない配列)は、VκIサブグループの生殖系列の軽鎖フレームワーク配列、例えば、DPK9配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上一致するアミノ酸配列を含む。
【0033】
一つの実施態様において、軽鎖または重鎖の可変フレームワーク(例えば、少なくともFr1、FR2、FR3、およびに任意でFR4を含む領域)を以下のものから選択することができる:(a)ヒトの軽鎖または重鎖の可変フレームワーク由来のアミノ酸残基、例えば、ヒト成熟型抗体、ヒト生殖系列配列、ヒトコンセンサス配列、または本明細書記載のヒト抗体に由来する軽鎖または重鎖の可変フレームワークの残基の少なくとも80%、90%、95%、または好ましくは100%を含む軽鎖または重鎖の可変フレームワーク;(b)ヒトの軽鎖または重鎖の可変フレームワーク由来のアミノ酸残基、例えば、ヒト成熟型抗体、ヒト生殖系列配列、ヒトコンセンサス配列に由来する軽鎖または重鎖の可変フレームワーク残基の20%から80%、40%から60%、60%から90%、または70%から95%を含む軽鎖または重鎖の可変フレームワーク;(c)非ヒト由来のフレームワーク(例えば、齧歯動物由来のフレームワーク);または(d)例えば、抗原性または細胞毒性の決定基を除去するために改変されたり、例えば、脱免疫されたり、または部分的にヒト化されたりしている非ヒト由来フレームワーク。一つの実施態様において、前記重鎖可変ドメイン配列は、以下の位置の一つ以上(好ましくは5個、10個、12個、もしくは全部)に、ヒト残基またはヒトコンセンサス配列残基を含む:(軽鎖の可変領域のFR中に)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、および/または(重鎖の可変領域のFR中に)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H、および/または103H(Kabatナンバリングに従う)。
【0034】
一つの実施態様において、このタンパク質は、少なくとも1個の非ヒトCDR、例えばマウスCDR、例えば、P2D10に由来するCDR、またはその変異体、および少なくとも1個のアミノ酸、例えば、少なくとも5個、8個、10個、12個、15個、または18個のアミノ酸がP2D10のフレームワークと異なるフレームワークを少なくとも1個含む。例えば、このタンパク質は、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の非ヒトCDRを含み、HC FR1、HC FR2、HC FR3、LC FR1、LC FR2、およびLC FR3のうちの少なくとも3つの中に、少なくとも1個のアミノ酸の違いを含む。
【0035】
一つの実施態様において、このタンパク質の軽鎖または重鎖の可変ドメイン配列は、本明細書記載の抗体、例えば、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2などの可変ドメイン配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列か、または、本明細書記載の抗体、例えば、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2などの可変ドメイン配列とは、1または5残基以上、40、30、20、または10残基以下が異なるアミノ酸配列を含む。
【0036】
一つの実施態様において、可変領域の一方または両方が、マウス抗体(例えばP2D10)およびヒト化抗体(例えば、56−84mおよびK107)の両方、または生殖系列の配列にさまざまに由来するアミノ酸位置をフレームワーク領域内に含む。例えば、可変領域は、アミノ酸がマウス抗体とヒト抗体(または生殖系列の配列)の両方に同一である位置をいくつも含むはずである。なぜなら、2種類の抗体が、その位置で同一だからである。マウスとヒトで異なる残りのフレームワーク位置の中では、可変領域の位置の少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%がマウス抗体ではなくヒト抗体(または生殖系列の配列)と好適には同一である。そのような残りのフレームワーク位置のうち、0個、または少なくとも1個、2個、3個、もしくは4個が、ヒト抗体ではなくマウス抗体に同一であってもよい。例えば、HC FR1において、1個または2個のそのような位置がマウスのものであってもよく;HC FR2において、1個または2個のそのような位置がマウスのものであってもよく;FR3において、1個、2個、3個、または4個のそのような位置がマウスのものであってもよく;LC FR1において、1個、2個、3個、または4個のそのような位置がマウスのものであってもよく;LC FR2において、1個または2個のそのような位置がマウスのものであってもよく;LC FR3において、1個または2個のそのような位置がマウスのものであってもよい。
【0037】
一つの実施態様において、このタンパク質の重鎖または軽鎖の可変領域は、本明細書記載の核酸配列、または本明細書記載の核酸配列に、例えば、低厳密度、中厳密度、高厳密度、もしくは非常に高厳密度の条件下でハイブリダイズする核酸(例えば、特異的核酸配列または、本明細書記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列)もしくはその相補配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。
【0038】
抗TWEAK抗体は、誘導体化するか、または別の機能分子、例えば、別のペプチド、タンパク質、または化合物に結合させることができる。例えば、この抗体は、一つ以上の他の分子的実体、とりわけ、例えば、別の抗体(例えば、二重特異性抗体または多重特異性抗体)、毒素、放射性同位体、高分子化合物、細胞毒性薬、または細胞分裂阻害剤に、(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合性会合またはその他の方法によって)機能的に結合させることができる。
【0039】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体および抗TWEAK抗体、例えば、本明細書記載の抗TWEAK抗体を含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供する。
【0040】
さらに別の実施態様において、抗TWEAK抗体(例えば、その薬学的組成物)は、抗TWEAK抗体療法を必要としているか、その症状がこの抗体によって改善されると考えられる被験体に投与される。例えば、抗TWEAK抗体は、炎症性疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、神経細胞疾患、腫瘍性疾患、または本明細書に記載された他の疾患を患っているか、またはその危険がある被験体に投与することができる。一つに実施態様において、本明細書記載の抗TWEAK抗体は、炎症性疾患、免疫疾患、自己免疫疾患、神経細胞疾患、腫瘍性疾患、または本明細書に記載された他の疾患を治療するための薬物を調製するために使用される。
【0041】
別の態様において、本開示は、被験体においてTWEAK関連疾患を治療する方法を特徴とする。この方法は、抗TWEAK抗体を、TWEAK関連疾患を治療(例えば、改善または防止)するのに十分な量にして被験体に投与することを含む。抗TWEAK抗体は、単独、または本明細書に記載された他の治療法と組み合わせて、被験体に投与することができる。一つの実施態様において、被験体とは哺乳動物、例えば、ヒト、例えば、TWEAK関連疾患、例えば、本明細書記載の疾患を患っているヒトのことである。この抗体を使用して、そのような疾患の一つ以上の症状を改善させることができる。「治療する」という用語は、統計的に有意な程度または当業者に検知可能な程度にまで、病状、症状、または疾患(例えば、本明細書記載の疾患)に関連したパラメーターを改善するか予防し、または疾患の発病、進行、または悪化を阻止するのに有効な量、態様、および/または方式で治療法を施すことを意味する。したがって、治療により、治療的利益および/または予防的利益を達成することができる。有効な量、態様、または方式は、被験体によって変わることがあり、被験体に合わせることができる。一つの実施態様において、本明細書記載の抗TWEAK抗体は、TWEAK関連疾患の治療用薬物を調製するために用いられる。
【0042】
別の態様において、本開示は、TWEAKとTWEAKレセプタータンパク質との相互作用を調節する方法を特徴とする。例えば、抗TWEAK抗体を用いて、TWEAKと、Fn14などのTWEAKレセプターとの間の結合を低下させるか、阻止することができる。この方法は、TWEAKまたはTWEAKを含む複合体をこの抗体に接触させることを含む。この方法は、インビトロで、例えば、培養中の、例えばインビトロまたはエキシビボの細胞に対して用いることができる。例えば、TWEAKレセプターを発現する細胞を、培養培地中においてインビトロで培養することができ、この培地に抗TWEAK抗体を添加することにより、接触工程を行うことができる。あるいは、この方法を、例えば、インビボにおける(例えば、治療用または予防用の)プロトコールの一部として、被験体の体中に存在している細胞に対し実施することができる。例えば、この抗TWEAK抗体を局所的または全身に送達することができる。一つの実施態様において、本明細書記載の抗TWEAK抗体は、TWEAKとTWEAKレセプタータンパク質の間の相互作用を調節する薬物を調製するために用いられる。
【0043】
この方法は、TWEAKと、TWEAKレセプター複合体、またはそのサブユニットとが相互作用を起こし、それによってTWEAK/TWEAKレセプター混合物を形成させるという条件下で、TWEAKをTWEAKレセプター複合体、またはそのサブユニットに接触させることを含む。通常、抗TWEAK抗体は有効量で提供され、その結果、例えば、TWEAK/TWEAKレセプター混合物を抗TWEAK抗体に接触させると、例えば、TWEAKとレセプタータンパク質の相互作用、またはTWEAKの少なくとも一つの機能、例えば、TWEAKが介在する信号伝達などを調節、例えば、妨害する(例えば、阻害するか、遮断するか、さもなければ低下させる)。
【0044】
また、本開示は、例えば、本明細書に記載されているような抗TWEAK抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードする核酸も特徴とする。例えば、本開示は、P2D10の重鎖および軽鎖の可変領域をそれぞれコードする第1および第2の核酸を特徴とする。別の態様において、本開示は、本明細書記載の核酸を含む宿主細胞およびベクターを特徴とする。
【0045】
また、本開示は、TWEAK、例えば、ヒトTWEAKのエピトープであって、P2D10によって認識されるエピトープ、およびこのエピトープと相互作用することができるタンパク質を特徴とする。例えば、このエピトープを含むタンパク質およびペプチドを用いて、このエピトープと相互作用する他の結合性化合物、例えば、抗体または低分子などのタンパク質を作製またはスクリーニングすることができる。例えば、このエピトープを含むペプチドを免疫原として、または発現ライブラリーをスクリーニングするための標的として用いることができる。また、このペプチドと相互作用する能力について化合物を評価することもでき、あるいは、マッピングまたは構造決定によって、例えば、成熟型TWEAKに関連して、このエピトープと相互作用する能力について化合物を評価することもできる。評価の例には、競合するP2D10抗体の存在下で、化合物がTWEAKと相互作用することができるか否かを判定することなどがある。
【0046】
薬剤、例えば、治療薬(遺伝的因子を含む)または細胞毒性薬を、抗TWEAK抗体(例えば、P2D10または本明細書記載の他の抗体)とともに、インビボでTWEAKを発現する細胞または構造体に送達または標的する方法も開示される。
【0047】
本明細書において「抗体」という用語は、少なくとも1個の免疫グロブリン可変領域、例えば、免疫グロブリン可変領域を提供するアミノ酸配列、または免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質を意味する。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)、および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)を含むことができる。別の例において、抗体は、2個の重(H)鎖可変領域および2個の軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、Fd断片、Fv断片、およびdAb断片)、および全長抗体、例えば、IgA型、IgG型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgE型、IgD型、IgM型(およびこれらのサブタイプ)の免疫グロブリンを包含する。「全長抗体」という用語は、プロセッシングされてシグナル配列が除去される天然抗体の少なくとも96%の長さを有する抗体を意味する。全長抗体は、天然抗体の完全長、例えば、天然抗体のアミノ末端残基(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)からカルボキシ末端残基までの残基を含むことができる。
【0048】
「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、免疫グロブリンの可変領域の構造を形成することができるアミノ酸配列を意味する。例えば、この配列は、天然の可変ドメインのアミノ酸配列の全部または一部を含むことが可能である。例えば、この配列は、1個、2個、またはそれ以上のN末端またはC末端のアミノ酸を含むことも含まないことも可能であり、あるいは、タンパク質の構造の形成と適合する他の変異を含むことも可能である。
【0049】
「単離された組成物」とは、この単離された組成物を得ることができる天然のサンプルの少なくとも一つの成分の少なくとも90%から切り離された組成物を意味する。目的とする組成物種または組成物種集団が重量対重量ベースで少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、98%または99%純粋であれば、人工的または天然にできた組成物は、「少なくともある程度の純度の組成物」でありうる。
【0050】
「エピトープ」は、抗体によって結合される標的化合物上の部位を意味する。例えば、標的化合物がタンパク質である場合、エピトープは、抗体によって結合されるアミノ酸(特にアミノ酸側鎖)を意味する。重複したエピトープは、少なくとも1個の共通アミノ酸残基、例えば、2個、3個、4個、または5個以上の共通アミノ酸残基を含む。
【0051】
本明細書において、「低厳密度、中厳密度、高厳密度、もしくは非常に高厳密度の条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明するものである。ハイブリダイゼーション反応を実施するための手引きを、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見出すことができる。水性および非水性の方法がこの参考文献に記載されており、いずれかを用いることができる。本明細書記載の具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:1)6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)の中、約45℃で低厳密度ハイブリダイゼーション条件の後、0.2×SSC、0.1%SDSの中、50℃以上で2回洗浄する(低厳密度条件では、洗浄温度を55℃まで上げることができる);2)6×SSCの中、約45℃で中厳密度ハイブリダイゼーション条件の後、0.2×SSC、0.1%SDSの中、60℃以上で1回以上洗浄する;3)6×SSCの中、約45℃で高厳密度ハイブリダイゼーション条件の後、0.2×SSC、0.1%SDSの中、65℃で1回以上の洗浄;および好ましくは、4)非常に高厳密度のハイブリダイゼーション条件は、0.5Mのリン酸ナトリウム、7%SDSで60℃、その後、65℃において0.2×SSC、1%SDSで1回以上洗浄する。高厳密度条件(3)が好適な条件であり、別段の記載がない限り、この条件を用いるべきである。
【0052】
「TWEAK関連疾患」とは、TWEAKが病因に寄与している疾患、またはTWEAK遮断剤を提供することによって病状、症状、または発症の危険が変化する疾患のことである。
【0053】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者に共通して理解されているのと同じ意味を有する。本明細書記載の方法および材料と同様または同等の方法および材料を、本明細書記載の実施または試験において用いることができるが、適当な方法および材料を以下で説明する。さらに、ChotiaのCDRに関して記載された本発明の実施態様も、KabatのCDRを用いて実施することが可能である。
【0054】
本明細書記載のすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それら全体を参照されて本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、定義も含め、本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は例示的なものに過ぎず、限定的なものではない。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトTWEAKに結合する抗原結合部位を形成することができる重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列を含む、単離されたタンパク質であって、以下の特性:
(a)該タンパク質は、ヒトTWEAKへの結合について、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2と競合するか;
(b)該タンパク質は、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2が結合するエピトープと重複する、ヒトTWEAK上のエピトープに結合するか;
(c)該重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン配列が、高ストリンジェント条件下で、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2をコードする核酸の相補配列にハイブリダイズする核酸によってコードされているか;
(d)該重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン配列が、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2の対応する可変ドメインのアミノ酸配列に少なくとも80%同一であるか;
(e)該重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン配列が、CDR領域(集合的に)において、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2の重鎖および/または軽鎖の可変領域のCDR領域に少なくとも95%同一であるか;あるいは
(f)フレームワーク領域(集合的に)において、P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2の重鎖および/または軽鎖の可変領域のフレームワーク領域に少なくとも95%同一である、
の一つ以上を有する、タンパク質。
(項目2)
前記重鎖可変ドメイン配列が、CDR領域の内部に以下の配列:
【化1】
を少なくとも2個含む、項目1記載のタンパク質。
(項目3)
前記軽鎖可変ドメイン配列が、CDR領域の内部に以下の配列:
【化2】
の一つ以上を含む、項目1または2記載のタンパク質。
(項目4)
前記重鎖可変ドメイン配列が以下のCDR:
【化3】
を含み、また、前記軽鎖可変ドメイン配列が、CDR領域の内部に以下の配列:
【化4】
の一つ以上を含む、項目2記載のタンパク質。
(項目5)
組換え全長IgGである、項目1記載のタンパク質。
(項目6)
ヒトFc領域を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目7)
3個以下のアミノ酸置換を有するヒトFc領域を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目8)
FabまたはscFvである、項目1記載のタンパク質。
(項目9)
ヒト生殖系列のフレームワーク領域と少なくとも90%同一のフレームワーク領域を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目10)
前記軽鎖可変ドメイン配列のフレームワーク領域が、集合的に、Vκ1サブグループ生殖系列の配列に少なくとも95%同一である、項目1記載のタンパク質。
(項目11)
前記重鎖可変ドメイン配列のフレームワーク領域が、集合的に、DP54生殖系列の配列に少なくとも95%同一である、項目1記載のタンパク質。
(項目12)
前記軽鎖可変ドメイン配列のフレームワーク領域が、集合的に、DPK9生殖系列の配列に少なくとも95%同一である、項目1記載のタンパク質。
(項目13)
前記重鎖可変ドメイン配列のフレームワーク領域が、集合的に、VHIサブグループ生殖系列の配列に少なくとも95%同一である、項目1記載のタンパク質。
(項目14)
P2D10、huP2D10−1、またはhuP2D10−2と同じ正準な構造をもつ超可変ループを含む、項目1記載のタンパク質。
(項目15)
前記重鎖可変ドメイン配列が、配列番号:65に少なくとも95%同一な配列を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目16)
前記重鎖可変ドメイン配列が配列番号:65を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目17)
前記軽鎖可変ドメイン配列が、配列番号:67または69に少なくとも95%同一な配列を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目18)
前記軽鎖可変ドメイン配列が、配列番号:67または69を含む、項目1または15記載のタンパク質。
(項目19)
前記重鎖可変ドメイン配列が、配列番号:27〜49のいずれか一つ、またはそれに少なくとも95%同一の配列を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目20)
前記軽鎖可変ドメイン配列が、配列番号:17〜26のいずれか一つ、またはそれに少なくとも95%同一の配列を含む、項目1記載のタンパク質。
(項目21)
項目1〜20のいずれか一項に記載のタンパク質、および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
(項目22)
抗体を提供するための方法であって、
重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列を含む項目1記載のタンパク質を発現させるための組換え核酸配列を含む宿主細胞を提供する工程、そして
該細胞を、該タンパク質が発現される条件下で維持する工程
を包含する、方法。
(項目23)
さらに、前記タンパク質を単離して、該タンパク質を医薬上許容される担体とともに処方することを含む、項目22記載の方法。
(項目24)
被験体における自己免疫疾患を治療する方法であって、項目21記載の医薬組成物を、該自己免疫疾患を治療するのに有効な量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目25)
被験体における慢性関節リウマチを治療する方法であって、項目21記載の医薬組成物を、慢性関節リウマチを治療するのに有効な量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
被験体における多発性硬化症を治療する方法であって、項目21記載の医薬組成物を、多発性硬化症を治療するのに有効な量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目27)
被験体における脳卒中を治療する方法であって、項目21記載の医薬組成物を、脳卒中を治療するのに有効な量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目28)
被験体における癌を治療する方法であって、項目21記載の医薬組成物を、癌を治療するのに有効な量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目29)
前記癌が膵臓癌である、項目28記載の方法。