特許第6234536号(P6234536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234536シリンガレシノールを含むSIRT−1活性化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234536
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】シリンガレシノールを含むSIRT−1活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/34 20060101AFI20171113BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 36/55 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 36/254 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61K31/34
   A61P27/02
   A61K36/55
   A61K36/254
   A61K36/258
   A61K36/185
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-213316(P2016-213316)
(22)【出願日】2016年10月31日
(62)【分割の表示】特願2014-536990(P2014-536990)の分割
【原出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2017-48221(P2017-48221A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0106561
(32)【優先日】2011年10月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0108904
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0108914
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0109961
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ビョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ヒョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ス キョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, シ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チャン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, デ バン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ワン ギ
(72)【発明者】
【氏名】イ, サン ジュン
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−292785(JP,A)
【文献】 特開2009−263359(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/154237(WO,A1)
【文献】 SMEDS, A.I. et al.,J. Agric. Food Chem.,2007年,Vol. 55,P. 1337-1346
【文献】 YAMAZAKI,T. et al.,(+)-Syringaresinol-di-O-β-D-glucoside, a phenolic compound from Acanthopanax senticosus Harms, supp,Toxicol. In Vitro,2007年12月,Vol.21,No.8,P.1530-1537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/34
A61K 36/185
A61K 36/254
A61K 36/258
A61K 36/55
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sirtuin 1(SIRT 1)活性化剤を含む、老人性黄斑変性の予防又は改善用組成物であって、
前記SIRT 1活性剤は、下記の一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を含む、組成物。
【化1】

前記式中、前記R、R、R、又はRは、独立して直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C〜C18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、又はC〜Cの環状アルキル基を表し、
前記R、R、R、R、R、R10、又はR11は、独立して水素または直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C1〜18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、C〜Cの環状アルキル基を表す。
【請求項2】
前記化合物はシリンガレシノール(syringaresinol)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性化剤は、有効成分を活性化剤の全重量に対して0.0001〜10重量%の範囲で含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実から選ばれた一種以上の抽出物に含まれた、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記SIRT-1活性化剤は、網膜細胞のSIRT-1(Sirtuin-1)発現及びミトコンドリア合成を増大させる、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記SIRT-1活性化剤を組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%の範囲で含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は食品組成物である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は薬学組成物である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含むSIRT-1活性化剤に関する。また、本発明は、前記SIRT-1活性化剤を含む解毒用、代謝異常症の改善用、眼疾患の予防又は改善用、または免疫性疾患の予防又は改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、喫煙はヒトの主な死亡原因である疾病の重要な危険要因であると知られており、喫煙が原因であるとされている主な疾病としては、肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠動脈疾患、脳卒中といった脳血管疾患、心臓麻痺、循環器系疾患、咽喉癌、口腔癌などが挙げられる。
【0003】
タバコ煙の中には発癌物質など、4、000種余りの毒性物質が含まれており、このうち、多くの毒性物質の混合物であるタールとニコチンが主な有害成分であると知られている。タバコに含まれた有害成分はヒトの長寿遺伝子と呼ばれているSIRT-1を抑制す
るため、炎症または慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった深刻な疾患に脆弱化させる。さらには、喫煙はミトコンドリア機能異常を生じさせるとも知られている。
【0004】
文明の利己による生活方式の変化やあふれる高カロリー食品によって人類は肥満、2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝などに代表される代謝性疾患にかかる危険性に露出している。そのうち肥満が2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝といった代謝性疾患の主な原因であることを勘案するとき、肥満さえ予防又は改善すればそれ以外の代謝性疾患も予防できるであろうと考えられる。
【0005】
肥満は、一般に体内エネルギー消費に比べてエネルギー流入が多くなる場合に生じる。具体的に、余剰エネルギーはトリグリセリド(Triglyceride)の形態で脂肪組織に蓄積される。脂肪組織は、まるでゴム風船のように多量の余剰エネルギーを蓄積することができるが、それと同時に脂肪細胞の大きさを増大させる。さらには、蓄積する余剰エネルギーの量が脂肪組織だけでは耐え切れない場合、筋肉、肝などのその他の組織にエネルギーが蓄積される脂質異常調節(lipid-dysregulation)が生
じて脂肪毒性(lipotoxicity)が現われる。また、各組織に蓄積された脂肪は、脂肪分解(lipolysis)によって遊離脂肪酸(free-fatty-acid)に変わるが、該遊離脂肪酸はJNK、PKCなどのシグナル伝達機転を通じてインシュリンシグナル伝達体系を無力化させると知られている。インシュリンシグナル伝達体系の阻害は必然的にインシュリン抵抗性を引き起こし、その結果、高血糖症、高脂血症、高コレステロール症、2型糖尿病、脂肪肝などといった多様な代謝性疾患が誘発される。このように、肥満は単に外形上の問題だけではなく、各種の成人性疾病を伴うことからその管理が大変重要であると言える。
【0006】
眼球網膜は中枢神経系に属する器官であって、成熟した網膜細胞は脳に存在する大部分のニューロン細胞と同様に正常状態では分裂しない。したがって、網膜細胞の機能が低下すると、他の系に比べて組織、さらには器官の機能にまで異常が現われやすく、老化が早期進行するようになる。網膜細胞の機能が低下する最大の原因としては、酸化的ストレスが挙げられるが、眼球を構成する網膜、視神経、光受容体細胞、水晶体を含む組織は、光、紫外線といった酸化的損傷を生じさせる要因に常に暴露されるからである。酸化的損傷が生じると、眼球細胞内のミトコンドリアDNAが損傷され、ミトコンドリアには損傷されたDNAを復旧できる酵素が不足しているため、損傷されたミトコンドリアは時間が経
つにつれて徐々に細胞内に蓄積される。ミトコンドリアDNAが不安定になると、これにより合成されるミトコンドリアタンパク質に変形が生じ、その結果、ミトコンドリア膜電位差が減少し、さらには、ミトコンドリアのエネルギー(ATP)生成が減少し、相対的に活性酸素種の発生が増大するようになる。これにより、細胞を構成するDNA、タンパク質、脂質に変形が現われ且つ細胞死滅が誘導されながら、眼の老化、ひいては黄斑変性、ブドウ膜炎、緑内障、糖尿病性網膜症、白内障といった眼疾患が発生するようになる。したがって、ミトコンドリアDNAの不安定性を抑制すれば、前記のような眼疾患を予防及び改善できるであろうと考えられる。しかしながら、現在までのところ、眼の老化を遅らせ得る方法として最も広く知られているものは、酸化的ストレスを減少させることができる抗酸化剤を適用するといった間接的な方法しかない。
【0007】
身体が外部からウイルス、バクテリアなどの侵入を受けた場合、感染された細胞ではヒスタミン(histamine)やキニン(kinin)などを作り、これらは損傷部位の毛細管を拡張させて大食細胞(macrophage)、キラー細胞(killer-
cell)などの多様な免疫細胞が傷部位に円滑に到逹できるようにする。その後、大食細胞などのような免疫細胞が食細胞作用(phagocytosis)にて侵入したウイルス、バクテリアなどを貪食すれば、リソゾーム中の各種の分解酵素がこれらを分解することで免疫反応が終了する。
【0008】
免疫反応は、エネルギー代謝と共に我が身の恒常性を保つための必須の反応である。先天性免疫作用は外部の非特定の感染源から我が身を保護する一次的防御道具であるため、これにより発生する炎症反応は絶え間ない外部侵入から我が身を防御していることを知らせる信号であると言える。このような炎症反応は、細胞及び組織に及ぼす影響が非常に大きいため、厳しい調節過程を経るようになるが、もしも、かかる炎症反応が正常に調節されていない場合、枯れ草熱(hay-fever)、リウマチ性関節炎、アレルギー、ま
たはアトピー皮膚炎などといった各種の免疫性疾患が発生するようになる。さらには、外部病原体の存在なしでも炎症関連遺伝子の発現が亢進している慢性炎症(chronic-inflammation)状態の場合、インシュリン抵抗性に影響を与えることで2
型糖尿病などの代謝性疾患の原因になることもあって、免疫反応の調節は個体の恒常性調節のためには必須とされる部分であると言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、SIRT-1を活性化させるSIRT-1活性化剤を提供することをその目的とする。
【0010】
本発明は、優れた解毒効果を有する組成物を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明は、優れた代謝異常症の予防又は改善効果、具体的に脂肪代謝を調節することで優れた代謝異常症の予防又は改善効果を有する組成物を提供することをまた他の目的とする。
【0012】
本発明は、優れた眼疾患の予防又は改善効果、具体的に網膜細胞のSIRT-1(Si
rtuin-1)の発現及びミトコンドリア合成を増大させることで老化性眼疾患の予防
又は改善効果を有する組成物を提供することを更なる目的とする。
【0013】
本発明は、優れた免疫性疾患の予防又は改善効果、具体的に免疫細胞においてSIRT-1の発現及び2型免疫細胞への分化を促進させることで免疫性疾患の予防又は改善効果
を有する組成物を提供することをまた更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面は、下記の一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含むSIRT-1活性化剤を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
前記式中、前記R、R、R、又はRは、独立して直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C〜C18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、又はC〜Cの環状アルキル基を表し、
前記R、R、R、R、R、R10、又はR11は、独立して水素または直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C1〜18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、C〜Cの環状アルキル基を表す。
【0017】
本発明の一側面は、SIRT-1活性化剤を含む解毒用組成物を提供する。
【0018】
本発明の一側面は、前記SIRT-1活性化剤を含む代謝異常症の予防又は改善用組成
物を提供する。
【0019】
本発明の一側面は、SIRT-1活性化剤を含む眼疾患の予防又は改善用組成物を提供
する。
【0020】
本発明の一側面は、SIRT-1活性化剤を含む免疫性疾患の予防又は改善用組成物を
提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るSIRT-1活性化剤は、SIRT-1(Sirtuin-1)の発現を増
大させ、SIRT-1の活性を促進する。
【0022】
本発明に係る組成物は、喫煙によって低減したSIRT-1の活性及び細胞活性を促進
し、優れた解毒効果、特に喫煙による毒性を解毒するという優れた効果を有する。
【0023】
本発明に係る組成物は、SIRT-1(Sirtuin-1)の発現を増大させ、脂肪酸合成を抑制すると共に脂肪酸酸化を促進し、PGC-1の発現を増大させることで、代謝
異常症、具体的に肥満、2型糖尿病、高脂血症、または脂肪肝を予防及び改善する効果に優れている。
【0024】
また、本発明に係る組成物は、網膜細胞のSIRT-1発現を促進し、ミトコンドリア
生合成を増進させ、ミトコンドリアの機能を正常化させることで、眼疾患、特に老化性眼疾患を予防又は改善する効果に優れている。
【0025】
本発明に係る組成物は、免疫細胞のSIRT-1発現を促進し、炎症反応を抑制し、免
疫細胞を2型免疫細胞に変換させて免疫力を増進させることができ、特にアレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、またはリウマチ関節炎のような免疫性疾患を予防又は改善する効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】高麗人参の実の抽出物からシリンガレシノールを分離及び精製する方法を示す概路図である。
図2】シリンガレシノールのSIRT-1発現促進効果を示すグラフである。
図3】シリンガレシノールの細胞活性促進効果を示すグラフである。
図4】シリンガレシノール20、50、100μMをヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞に処理した後のSIRT-1遺伝子の発現変化を示すグラフである。
図5】シリンガレシノール50μMを処理したヒト脂肪細胞において脂肪酸合成に関連した遺伝子の発現減少量を示すグラフである。
図6】シリンガレシノール50μMを処理したヒト肝細胞において脂肪酸合成に関連した遺伝子の発現減少量を示すグラフである。
図7】シリンガレシノール50μMを処理したヒト筋細胞において脂肪酸合成に関連した遺伝子の発現減少量を示すグラフである。
図8】シリンガレシノール50μMを処理したヒト脂肪細胞において脂肪酸酸化に関連した遺伝子の発現増大量を示すグラフである。
図9】シリンガレシノール50μMを処理したヒト肝細胞において脂肪酸酸化に関連した遺伝子の発現増大量を示すグラフである。
図10】シリンガレシノール50μMを処理したヒト筋細胞において脂肪酸酸化に関連した遺伝子の発現増大量を示すグラフである。
図11】シリンガレシノール50μMを処理したヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞において脂肪酸酸化が増大することを示すグラフである。
図12】シリンガレシノール50μMを処理したヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞においてエネルギー代謝調節遺伝子であるPGC-1aの発現増大の程度を示すグラフである。
図13】シリンガレシノール50μMを処理したヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞においてエネルギー代謝調節遺伝子であるPGC-1bの発現増大の程度を示すグラフである。
図14】シリンガレシノールを処理した老化した網膜上皮細胞におけるSIRT-1遺伝子発現増大の程度を示すグラフである。
図15】シリンガレシノールを処理した老化した網膜上皮細胞におけるミトコンドリア生合成の水準を示すグラフである。
図16】シリンガレシノールを処理した老化した網膜上皮細胞におけるエネルギー(ATP)と活性酸素種の生成程度を示すグラフである。
図17】シリンガレシノールを処理したヒト末梢血単核細胞においてSIRT-1遺伝子発現が増大することを示すグラフである。
図18】シリンガレシノールを処理したヒト末梢血単核細胞において活性酸素種の生成が抑制されることを示すグラフである。
図19】シリンガレシノールを処理したヒト末梢血単核細胞において炎症反応に関連した遺伝子の発現が低減することを示すグラフである。
図20】シリンガレシノールを処理したヒト末梢血単核細胞の移動及び組織内沈着が抑制されることを示すグラフである。
図21】シリンガレシノールを処理したヒト末梢血単核細胞において2型免疫細胞への転換に関連した遺伝子の発現が促進されることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において「抽出物」とは、抽出方法、抽出溶媒、抽出された成分または抽出物の形態を問わず、天然物の成分を抽出して得られた物質をいずれも含む広義の概念である。
【0028】
本明細書において「誘導体」とは、化合物の置換可能な位置で他の置換基に変更されるすべての化合物を意味する。該置換基の種類には制限がなく、例えば、それぞれ独立してヒドロキシル、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、アルキルアルコール、アルキルジアルコール、又は任意置換されたフェニルに置換されていてよいC1−10の非環状炭化水素基;ヒドロキシル、ヒドロキシルメチル、メチル、又はアミノに置換されていてよいC5−6の環状炭化水素基;又は糖残基を含んでいてよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。本明細書において「糖残基」という用語は、多糖類の分子から1個の水素原子の除去時の基を意味し、したがって、例えば単糖類又はオリゴ糖に由来の残基を意味するものであってよい。
【0029】
本明細書において「薬学的に許容し得る」とは、通常の医薬的服用量(medicinal-dosage)にて用いる際に相当な毒性効果を避けることにより、動物、より具
体的には、ヒトに用いていてよいという政府又はこれに準する規制機構の承認を受けることができるか若しくは承認を受けたか、又は薬局方に列挙されているか、その他一般的な処方として認知されることを意味する。
【0030】
本明細書において「薬学的に許容し得る塩」とは、薬学的に許容し得るものであり且つ親化合物(parent-compound)の好適な薬理活性を有する本発明の一側面
に係る塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等といった無機酸により形成されるか;または、酢酸、プロピオン酸、ヘキサエン酸、シクロペンテンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタ
ン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2,2,2]−oct−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸といった有機酸により形成される酸付加塩(acid-additio
n-salt);または、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換される際に形成
される塩を含んでいてよい。また、本明細書における化合物は、薬剤学的に許容し得る塩のみならず、通常の方法にて製造され得るあらゆる塩、水和物、溶媒和物をいずれも含むものであってよい。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本発明の一側面は、下記の一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含むSIRT-1活性化剤であって、
【0033】
【化2】
【0034】
前記式中、前記R、R、R、又はRは、独立して直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C〜C18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、又はC〜Cの環状アルキル基を表し、
前記R、R、R、R、R、R10、又はR11は、独立して水素または直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C1〜18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、C〜Cの環状アルキル基を表す。
【0035】
本発明の一側面であるSIRT-1活性化剤において、前記化合物はシリンガレシノー
ルであってよい。
【0036】
本明細書において「シリンガレシノール(syringaresinol)」とは、一般式2で示すような化学構造を有するリグナン系化合物であって、化学合成を通じて得るか、または亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実のうちの一種以上から抽出することができる。前記亜麻仁、黄白、五加皮、及び胡麻は、各植物の葉、幹、根、実、または種を例に挙げられる植物の各部位をいずれも含み、高麗人参の実は、高麗人参の実の果皮または果肉を含む。
【0037】
【化3】
【0038】
本明細書において前記「シリンガレシノール」は、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実のうちの一種以上を、水、有機溶媒、及び水と有機溶媒との混合物からなる群より選ばれた一つ以上で抽出して収得していてよい。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記アルコールは、C〜Cの低級アルコールを含み、C〜Cの低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、及びイソブタノールからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0039】
本発明の一側面に係るSIRT-1活性化剤は、活性化剤の全重量に対して有効成分を
0.0001〜10重量%の範囲で含有されることが好ましいが、SIRT-1活性促進
効果を示し且つ毒性が現われない範囲内で、使用用途に応じて適宜前記範囲以上または以下で用いられていてよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図した効果を示す上で好適であるだけでなく、製剤の安定性や安全性をいずれも満足することができ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、一般式1で示される化合物、具体的にシリングがレノルが0.0001重量%未満の場合はSIRT-1を活性化させるこ
とができず、また、10重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化することがある。前記のような観点から、本発明の有効成分は、0.0005〜8重量%、0.001〜6重量%、または0.01〜4重量%の範囲で含有されていてよい。
【0040】
本発明の一側面に係るSIRT-1活性化剤において、前記シリンガレシノールは、亜
麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実から選ばれた一種以上の抽出物に含まれていてよい。
【0041】
本発明の一側面において、シリンガレシノールを高麗人参の実から分離及び精製する方法は、次のような段階を含んでいてよい。高麗人参の実の果肉のアルコール抽出物を製造する段階;製造したアルコール抽出物を水とアルコールのうちの一種以上を含む溶媒で溶出させて分画を収得する段階;及び収得した分画に対して有機溶媒を展開溶媒として用いてクロマトグラフィー、具体的には薄膜クロマトグラフィー(TLC)を行う段階。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含み、アルコールは、C1〜C5のアルコールを含む。本発明の一側面に係る組成物は、前記のようにして精製されたシリンガレシノールを有効成分として含んでいてよい。
【0042】
本発明の一側面は、前記SIRT-1活性化剤を含む解毒用組成物を提供する。
【0043】
本明細書において、「解毒」とは、体内に流入された毒性物質の作用を除去することを意味する。
【0044】
前記SIRT-1活性化剤は、体内に流入された毒性物質を解毒することができ、具体
的には、喫煙による体内の毒性物質を解毒することができる。
【0045】
脱アセチル化酵素(Deacetylase)の一種であるSIRT-1(Sirtu
in-1)は、多くのリシン部位でPGC−1αと物理的に相互結合してPGC−1αを
脱アセチル化し、その結果、PGC−1αを活性化させる。活性化されたPGC−1αは転写因子と相互作用してミトコンドリア生合成を促進し、活性酸素などのような細胞毒性物質を除去する。したがって、喫煙によって低減したSIRT-1の活性を回復させれば
、喫煙による毒性を解毒することができることが考えられる。シリンガレシノールを含む
前記一般式1で示される化合物は、喫煙によって低減したSIRT-1の活性及び細胞活
性を促進し、喫煙による毒性を解毒することができる。したがって、シリンガレシノールを含む前記一般式1で示される化合物を含む組成物は、解毒効果を奏し得る。
【0046】
本発明の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、解毒に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0047】
本発明の一側面に係る解毒用組成物は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%、具体的には、0.01重量%〜10重量%、より具体的には、0.1重量%〜5重量%の範囲でSIRT-1活性化剤を含んでいてよい。前記範囲で含む場合、本発明
の意図した効果を示す上で好適であるだけでなく、組成物の安定性や安全性をいずれも満足することができ、且つ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、SIRT-1活性化剤が0.01重量%未満の場合は十分な解毒効果を得ること
ができず、また、20重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化するおそれがある。
【0048】
本発明の一側面は、前記SIRT-1活性化剤を含む代謝異常症の予防又は改善用組成
物を提供する。
【0049】
脂肪代謝を調節した場合、脂肪の過多蓄積を防止することができることから、肥満の予防及び改善することができることが考えられる。脂肪の過多蓄積を防止する方法の一つとして食餌制限、すなわちカロリー制限が挙げられる。食餌を制限すれば、体重を減少させることができるだけでなく、血中脂質濃度を改善することで代謝性疾患を改善することができる。食餌を制限した場合、SIRT-1(Sirtuin-1、サーチュイン-1)タ
ンパク質の発現が増大し、さらには、食餌制限をしなくてもSIRT-1の活性増大を誘
導する場合、食餌制限をした場合と同様な現象が示されることが知られている。SIRT-1は、ブドウ糖の合成、脂肪酸の酸化などのようなエネルギー代謝を調節するNAD
−依存的ヒストンタンパク質脱アセチル化酵素である。したがって、SIRT-1の発現
を調節可能な物質は、脂肪代謝を調節することができ、ひいては、肥満、2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝を例に挙げられる代謝異常症を予防又は改善することができることが考えられる。
【0050】
生命体は生命を維持するために栄養素を摂取し、それを消化吸収して体成分とし、エネルギー源として保存する。また、これを分解し、そのときに遊離されるエネルギーにて各種の生体活動を行うが、このような現象を「代謝」という。
【0051】
本明細書において「代謝異常症」とは、ヒト又は動物を含む生命体が前記代謝活動を滑らかに行うことができなくなった状態を意味し、糖質代謝異常症又は脂質代謝異常症を含む。糖質代謝異常又は脂質代謝異常は、糖質又は脂質代謝の障害に起因する症状又は疾患、具体的に、脂肪酸代謝の障害に起因する脂肪過多蓄積による症状又は疾患を含み、その例としては、肥満、2型糖尿病、高脂血症、または脂肪肝が挙げられる。
【0052】
シリンガレシノールは、SIRT-1の発現を増大させ、脂肪酸の合成を抑制すると共
に脂肪酸の酸化を促進することで体内への脂肪蓄積を阻止することができる。これは、シリンガレシノールがADD1/SREBP1c、ACC、FASのような脂肪酸の合成に関連した遺伝子の発現を抑制すると共に、ACO、CPT1、mCADのような脂肪酸の酸化に関連した遺伝子の発現を促進し、且つ、脂肪酸の酸化を増加させることから確認できる。また、シリンガレシノールは、エネルギー代謝、具体的には脂肪代謝を促進することで体内脂肪の消費を増大させ且つ余剰脂肪の蓄積を阻止することができ、これは、シリ
ンガレシノールがエネルギー代謝に関連した遺伝子の発現を調節するPGC(peroxisome-proliferator−activated-receptor-coa
ctivator)1の発現を増大させるということから確認できる。したがって、シリンガレシノールを含む組成物は、糖質又は脂質代謝の障害に起因する、肥満、2型糖尿病、高脂血症、または脂肪肝のような代謝異常症を予防又は改善することができる。
【0053】
本発明の他の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、エゾウコギ、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、代謝異常症の改善に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0054】
本発明の一側面に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%、具体的には、0.01重量%〜10重量%、より具体的には、0.1重量%〜5重量%の範囲でSIRT-1活性化剤を含んでいてよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図
した効果を示す上で好適であるだけでなく、組成物の安定性や安全性をいずれも満足することができ、且つ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、SIRT-1活性化剤が0.01重量%未満の場合は十分な代謝異常症の改善効果を得
ることができず、また、20重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化するおそれがある。
【0055】
本発明の一側面は、前記SIRT-1活性化剤を含む眼疾患の予防又は改善用組成物を
提供する。
【0056】
NAD−依存的ヒストンタンパク質脱アセチル化酵素であるSIRT-1(Sirt
uin-1、サーチュイン-1)は、筋肉などのミトコンドリア生合成を増大させて細胞内に安定したDNAを含むミトコンドリアの割合を高めることでミトコンドリア機能を正常化させ、ひいては、細胞の老化現象を抑制することと知られている。特に、網膜退化形質組換えマウスモデルの場合、網膜神経節細胞、内網膜細胞、光受容体細胞、網膜色素上皮細胞を例に挙げられる網膜に存在する細胞で発現するSIRT-1が網膜細胞内の異常な
位置に存在し、また加速化された細胞死滅を示すことが知られている。したがって、SIRT-1の発現を増大させる物質は網膜細胞内のミトコンドリアの生合成を促進すること
でその機能を正常化させると共に、ミトコンドリアDNAの不安定性を抑制することで細胞の損傷及び死滅を減少させ、その結果、眼疾患、特に老化性眼疾患を予防及び改善することができることが考えられる。
【0057】
前記一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、網膜細胞のSIRT-1発現を促進することで、老化した網膜細胞のSIRT-1発現水準を若い網膜細胞のSIRT-1発現水準まで上げると共に、網膜細胞のミトコンドリア合成を促進し、且つ、
ミトコンドリアの機能を正常化させ、エネルギーの生成増大及び活性酸素種の低減を誘導することができる。したがって、前記一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含む組成物は、網膜細胞の老化を抑制又は改善することで眼疾患を予防又は改善することができる。
【0058】
本明細書において「眼疾患」とは、眼に関連して発病する疾患を意味し、眼球疾患を含む。また本明細書において「老化性眼疾患」とは、年を取るに伴う生体機能の衰退に起因する眼疾患だけではなく、実年齢帯よりも生体機能が衰退することで年寄りで主に発病する疾患の症状と類似した症状を示す眼疾患をいずれも含む概念である。本発明の一側面において、眼疾患は、網膜細胞のミトコンドリア機能異常又は酸化的ストレスに起因する眼疾患を含む。本発明の他の一側面において、眼疾患は、老化性眼疾患を含み、老人性黄斑変性を例に挙げられる黄斑変性、ブドウ膜炎、緑内障、糖尿網膜病症、又は白内障を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0059】
本発明の他の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、眼疾患の予防又は改善に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0060】
本発明の一側面に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%、具体的には、0.01重量%〜10重量%、より具体的には、0.1重量%〜5重量%の範囲でSIRT-1活性化剤を含んでいてよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図
した効果を示す上で好適であるだけでなく、組成物の安定性や安全性をいずれも満足することができ、且つ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、SIRT-1活性化剤が0.01重量%未満の場合は十分な眼疾患の改善効果を得るこ
とができず、また、20重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化するおそれがある。
【0061】
本発明の一側面は、前記SIRT-1活性化剤を含む免疫性疾患の予防又は改善用組成
物を提供する。
【0062】
免疫細胞は、炎症反応を誘発(pro−inflammatory-response
)して外部病原体に対する防御役割をする1型免疫細胞と亢進した炎症反応を抑制(anti−inflammatory-response)し且つ組織再構成を助ける2型免
疫細胞とに大別できる。炎症反応が亢進した慢性炎症状態の場合、炎症反応を誘発する1型免疫細胞の数が大きく増加しており、このときに2型免疫細胞への分化を誘導した場合に慢性炎症状態が緩和することが知られている。これは、免疫細胞のタイプを調節すれば、アレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、またはリウマチ関節炎などのような免疫性疾患を予防及び治療することができることを示唆する。
【0063】
一方、NAD−依存的ヒストンタンパク質脱アセチル化酵素にてエネルギー代謝、細胞周期、DNA復旧などといった様々な細胞反応を調節するSIRT-1(Sirtui
n-1、サーチュイン-1)が活性化すれば、慢性炎症反応を抑制することが知られている。したがって、SIRT-1の発現を促進する物質が炎症反応を抑制することで免疫性疾
患を改善することができることが考えられる。
【0064】
前記一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、B細胞、T細胞、大食細胞、樹状細胞(dendritic-cell)、NK細胞などの免疫細胞を含む末
梢血単核細胞(PBMC、peripheral-blood-mononuclear-
cells)でSIRT-1発現を促進し、先天性免疫反応の一つである炎症反応を抑制
すると共に、炎症反応のシグナル伝逹媒介物質で且つ炎症反応の産物である活性酸素種(reactive-oxygen-species)の生成を阻害する。また、前記一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、PGC-1α、PGC-1βのように2型免疫細胞への分化を誘導するのに必要な転写調節因子の発現を促進すると共に、IL−10、アルギナーゼIのように2型免疫細胞で主に発現する遺伝子を増大させており、このことから、前記一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、免疫細胞に対して2型免疫細胞への転換を促進することが分かる。したがって、前記一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、有効成分として含む組成物が免疫力を増進させることができ、ひいては、免疫性疾患、特に慢性の免疫性疾患を予防又は改善することができる。
【0065】
本発明の一側面において、免疫性疾患は身体危害を加え得る外部病原体(pathogen)の侵入から身体を守るための防御機転に起因する疾患であって、抗原−抗体反応、血管拡張、発熱、炎症反応のような各種の免疫反応を示す疾患を意味する。本発明の他の
一側面において、免疫性疾患は、アレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、及びリウマチ関節炎のうちの一つ以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0066】
本発明の他の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、免疫性疾患の予防又は改善に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0067】
本発明の一側面に係る組成物は、組成物の全重量に対して0.001重量%〜20重量%、具体的には、0.01重量%〜10重量%、より具体的には、0.1重量%〜5重量%の範囲でSIRT-1活性化剤を含んでいてよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図
した効果を示す上で好適であるだけでなく、組成物の安定性や安全性をいずれも満足することができ、且つ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、SIRT-1活性化剤が0.01重量%未満の場合は十分な免疫性疾患の予防又は改善
効果を得ることができず、また、20重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化するおそれがある。
【0068】
本発明の一側面である前記解毒用、代謝異常症の予防又は改善用、眼疾患の予防又は改善用、または免疫性疾患の予防又は改善用組成物は、経口用組成物であってよい。
【0069】
本発明の一側面である前記解毒用、代謝異常症の予防又は改善用、眼疾患の予防又は改善用、または免疫性疾患の予防又は改善用組成物は、食品組成物であってよく、嗜好食品または健康食品組成物を含む。
【0070】
前記組成物は、肥満、2型糖尿病、高脂血症、または脂肪肝のような代謝異常症を予防又は改善することができる。
【0071】
前記食品組成物は、黄斑変性、ブドウ膜炎、緑内障、糖尿網膜病症、または白内障のような眼疾患を予防又は改善することができる。
【0072】
前記食品組成物は、アレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、またはリウマチ関節炎のような免疫性疾患を予防又は改善することができる。
【0073】
前記食品組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、ドリンク剤のような液剤、キャラメル、ゲル、バーなどに剤形化することができる。各剤形の食品組成物は、有効成分の他に当該分野において通常に用いられる成分を剤形または使用目的に応じて当業者が難なく適宜選定して配合することができ、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果が生じることがある。
【0074】
前記有効成分の投与量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与用量は、例えば、0.1mg/kg/日〜5000mg/kg/日、より具体的には、50mg/kg/日〜500mg/kg/日であってよいが、必ずしもこれに制限されるのではなく、投与しようとする対象の年齢、健康状態、合併症などといった様々な要因によって変わり得る。
【0075】
本発明の一側面である前記解毒用、代謝異常症の予防又は改善用、眼疾患の予防又は改善用、または免疫性疾患の予防又は改善用組成物は、薬学組成物であってよい。
【0076】
前記薬学組成物は、解毒効果を示すことができ、具体的に、喫煙による体内毒性を解毒することができる。
【0077】
前記薬学組成物は、代謝異常症を予防又は改善することができ、具体的に、肥満、2型
糖尿病、高脂血症、または脂肪肝を予防又は改善することができる。
【0078】
前記薬学組成物は、眼疾患を予防又は治療することができ、具体的に、黄斑変性、ブドウ膜炎、緑内障、糖尿網膜病症、または白内障を予防又は治療することができる。
【0079】
前記薬学組成物は、免疫力を増進させ且つ免疫性疾患を予防又は治療することができ、具体的に、アレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、またはリウマチ関節炎を予防又は治療することができる。
【0080】
本発明の一側面に係る薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などに投与されていてよい。
【0081】
経口投与のための剤形としては、錠剤、丸剤、軟質及び硬質カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤、乳濁剤またはペレット剤であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらの剤形は、有効成分の他に希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースまたはグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸、またはポリエチレングリコール)、または結合剤(例:マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリジン)を含有してよい。場合に応じて、崩解剤、吸収剤、着色剤、香味剤、または甘味剤などの薬剤学的添加剤を含有してよい。前記錠剤は、通常的な混合、顆粒化、またはコーティング方法により製造されてよい。
【0082】
非経口投与のための剤形としては、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチまたは噴霧剤であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0083】
本発明の一側面に係る薬学組成物の有効成分は、投与を受ける対象の年齢、性別、体重、病理状態およびその深刻度、投与経路または処方者の判断によって変わり得る。こうした因子に基づいた適用量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与量は、例えば、0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日、より具体的には5mg/kg/日〜50mg/kg/日であってよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0084】
本発明の一側面である前記解毒用、代謝異常症の予防又は改善用、眼疾患の予防又は改善用、または免疫性疾患の予防又は改善用組成物は、化粧料組成物であってよい。
【0085】
前記化粧料組成物は、解毒効果を示すことができ、具体的に、喫煙による毒性を解毒することができる。
【0086】
前記化粧料組成物は、代謝異常症を予防又は改善することができ、具体的に、肥満、2型糖尿病、高脂血症、または脂肪肝を予防又は改善することができる。
【0087】
前記化粧料組成物は、免疫力を増進させ且つ免疫性疾患を予防または治療することができ、具体的に、アレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、またはリウマチ関節炎を予防又は治療することができる。
【0088】
本発明に係る化粧料組成物は、局所適用に適したあらゆる剤形で提供されてよい。例えば、溶液、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、固体、ゲル、粉末、ペースト、泡沫(foam)又はエアロゾル組成物の剤形で提供されてよい。こうした剤形の組成物は、当該分野における通常的な方法に
従って製造されてよい。
【0089】
本発明に係る化粧料組成物は、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機及び無機顔料、香料、冷感剤又は制汗剤をさらに含んでいてよい。前記成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内で当業者が容易に選定可能であり、その配合量は、組成物の全重量に対して0.01〜5重量%、具体的に0.01〜3重量%であってよい。
【0090】
以下、実施例及び実験例を挙げて、本発明の構成及び効果についてより具体的に説明する。なお、これらの実施例及び実験例は、本発明に対する理解を助けるために例示の目的でのみ提供されたものであるに過ぎず、本発明の範疇及び範囲がこれらによって制限されるものではない。
【実施例】
【0091】
シリンガレシノールの分離及び分析
1.高麗人参の実の前処理
生高麗人参の実を収穫し、種を分離して除去した後、高麗人参の実の果皮を除去し果肉のみを日光乾燥または熱風乾燥して、高麗人参の実の果肉乾燥物を製造した。
【0092】
2.高麗人参の実の果肉抽出物からシリンガレシノールの分離及び分析
先に製造した高麗人参の実の果肉乾燥物1kgに水または酒精3Lを加えて常温または還流抽出しろ過した後、40〜45℃で減圧濃縮して、高麗人参の実の果肉抽出物300gを得た。抽出物にエーテル処理を施して脂溶性成分を除去した後、ブタノール粗サポニンを抽出及び濃縮した。これを分離、精製してシリンガレシノールを得、具体的な方法は次のとおりである。先ず、試料194gを逆相コラムクロマトグラフィー(reversed−phase(ODS)column-chromatography)にて精製し
、このとき、溶出溶媒として、最初は100%水を用い、メタノールを10%ずつ徐々に増加させて、最終的には100%メタノール溶媒を用いた。その結果、GB−1〜GB−10分画物を得、これらの分画物のうち、ヒトの長寿遺伝子と呼ばれているSIRT-1
発現活性を示した分画GB−3を選別し濃縮した後、50%水溶性メタノール(aqueous-methanol)を用いてセファデックスLH−20コラムクロマトグラフィ
ー(Sephadex-LH−20-column-chromatography)を行
った。得た分画物のうち、SIRT-1発現活性を示したGB−3−6を選別し濃縮した
後、クロロホルム:メタノール(10:1)を展開溶媒として予備シリカゲル(preparative-silica-gel)TLCを行い、その結果、Rf値0.67の活性分画を精製した。前記分離及び精製方法を図式化して図1に示した。
【0093】
NMR分光分析とデータベース検索を行って、分離及び精製した活性化合物をシリンガレシノール(syringaresinol)と同定することができた。これを再確認するために質量(mass)分析を行い、ESI−massをpositive-mode
で測定した結果、[M+Na]+がm/z-440.9、[2M+Na]+がm/z-858.9で観察され、分子量が418であることが分かった。また、NMR分光分析を行った結果、一般式3で示すような結果が得られた。これによって、前記分離・精製した活性化合物は、シリンガレシノールであることが確認された。
【0094】
【化4】
【0095】
このように高麗人参の実の果肉からシリンガレシノールを分離した。
【0096】
[実験例1]
歯肉線維芽細胞におけるSIRT-1発現回復効果の評価
シリンガレシノールが喫煙による歯肉線維芽細胞のSIRT-1発現低減を回復できる
か否かの評価のために、以下のような実験を行なった。
【0097】
1.歯肉線維芽細胞の培養
歯肉線維芽細胞は健康な歯肉を有する患者から生検して得た。得た生検組織をダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s-Modified-Eagle’s-Med
ium、DMEM、Gibco-Co.,-USA)が入っている15mlの試験管に入れ、3回洗浄して血液と異物を除去した後、10%ウシ胎児血清(fetal-bovine-serum、Gibco-Co.,-USA)と1%抗生剤(ペニシリンG-10,000u
nits/ml、アンホテリシンB-25μg/ml、Gibco-Co.,USA)が添
加されたDMEMが入っている100mm組織培養皿に移し、No.15ブレードを用いて1mmに細切し、60mm培養皿に5〜6個の切片を均一に分布させた。約30分間、37℃、湿度100%、5%のCO培養器で培養して培養皿の底に組織が均一に付着されるように培養した後、各培養皿当たり10%ウシ胎児血清と1%抗生剤を含むDMEM-3mlを添加した。単一細胞層が形成されるまで2〜3日おきに培養液を交換した。
単層密生が形成されてから培養液を除去し、2回洗浄した後、0.25%トリプシン/E
DTA(1×、Gibco-Co.,-USA)を用いて細胞培養皿に付着された細胞をも
ぎ取った後、100mm組織培養用皿に分注した。培養液は細胞の十分な増殖が示されるまで2〜3日おきに交換し、継代培養を1:3〜4の割合で5〜6回実施した。
【0098】
2.タバコ煙凝縮物(CSC)の用意
自動喫煙装置(Heinr-Borgwaldt-RM-20、Germany)を利用
し、ISO喫煙条件(喫煙体積:35mL、喫煙時間:2秒、喫煙周期:1分、吸穀長さ:tip-paper+3mm)下で、標準タバコ3R4F-40本を燃焼させ、ケンブリッジガラス繊維フィルターでタバコ煙凝縮物を捕捉した。ろ紙に捕捉されたタバコ煙凝縮物にジクロロメタンを加え、30分間音波処理(sonication)を施した後、抽出して濃縮した。これをジメチルスルホキシド(DMSO)にて最終抽出物の濃度が100mg/mlになるように再度溶かした後、0.22μMシリンジフィルターでろ過してタバコ煙恐縮物を得、得られた凝縮物は−70℃で保存し使用した。
【0099】
3.PCRの実施
5〜6回継代培養を行った歯肉線維芽細胞を24−ウェルプレートの各ウェル当たり1×10個の細胞が入るように分注した。1日間培養した後、100μg/mlの濃度でタバコ煙凝縮物を添加し、実施例のシリンガレシノールをDMSOに溶かしてそれぞれ50、100μg/mlの濃度で入れ、対照群には培地体積1/1000のDMSOを処理した。また、タバコ煙凝縮物及び試料を添加していない群も用意した。2日間培養してから、冷たいPBSで2回洗浄した後、トリゾール試薬(TRIzol-agent、In
vitrogen)でRNAを抽出した。前記抽出して定量した1μg/μlのRNAと逆転写システム(Promega)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNA及びSIRT-1とGAPDHの各遺伝子に対し、予めデザインされたプライマー(Prim
er)とプローブ(probe)(Applied-biosystems;SIRT-1、Hs01009006_m1;GAPDH、Hs99999905_m1)を利用して各遺伝子の発現様相を測定した。PCR反応と分析は、Rotor−Gene-3000
システム(Corbett-Research、Sydney、Australia)を
利用した。その結果を図2に示した。
【0100】
図2に示すように、シリンガレシノールは、喫煙によって低減していた歯肉線維芽細胞のSIRT-1発現量を濃度依存的に増加させた。すなわち、シリンガレシノールは、S
IRT-1の発現量を増加させることで喫煙による毒性を解毒することができる。
【0101】
[実験例2]
歯肉線維芽細胞における細胞活性促進効果の評価(MTT分析)
実験例1と実質的に等しい方法にて、5〜6回継代培養を行った歯肉線維芽細胞を24−ウェルプレートの各ウェル当たり1×10個の細胞が入るように分注した。1日間培養した後、100μg/mlの濃度で実験例1と実質的に等しい方法にて用意したタバコ煙凝縮物を添加し、実施例のシリンガレシノールをDMSOに溶かしてそれぞれ50、100μg/ml入れ、対照群には培地体積1/1000のDMSOを処理した。また、タバコ煙凝縮物及び試料を添加していない群も用意した。2日間培養してから、生理食塩水に溶解したMTT[3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyl-tetrazolium-bromide;Sigma、USA]溶液300μlずつをそれぞれのウェルに添加し、4時間培養した。培養後に培地を除去し、200μlのジメチルスルホキシド(DMSO;Junsei、Japan)を添加して形成されたホルマザン結晶を溶解させた後、96−ウェルプレート上に移して、ELISA分析機(Spectra-MAX-250、Molecular-Devices-Co.,-USA)にて540nmでの吸光度を測定した。それぞれの実験は3回繰り返し実施した。その結果を図3に示した。
【0102】
図3に示すように、シリンガレシノールは喫煙による細胞活性の低下を正常値とほぼ同じ水準まで回復させた。すなわち、シリンガレシノールは、喫煙によって活性が低下した細胞を活性化させることで喫煙による毒性を解毒することができる。
【0103】
[実験例3]
脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞におけるSIRT-1発現促進効果の評価
シリンガレシノールのヒト脂肪細胞(adipocyte)、肝細胞(hepacyte)、及び筋細胞(myocyte)におけるSIRT-1遺伝子発現促進効果を評価す
るために、以下のような実験を行なった。
【0104】
ヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞は、ZenBio社(Research-Tria
ngle-Park、NC、USA)から購入し、それぞれ脂肪細胞専用培地(OM−A
M、ZenBio)、肝細胞専用培地(HM−2、ZenBio)、及び筋細胞専用培地
(SKM−D、SKM−M、ZenBio)を利用して5%のCO培養器で培養した。各細胞に、DMSOに溶かしたシリンガレシノールを20、50、100μMの濃度で24時間処理し、陰性対照群には培地体積1/1000のDMSOを処理した。
【0105】
各試料を処理した細胞を冷たいPBSで2回洗浄した後、トリゾール試薬(TRIzol-agent、Invitrogen)を用いてそれらからRNAを抽出した。前記抽
出して定量した5mgのRNAで逆転写システム(Fermentas、Glen-Bu
rnie、MD、USA)を用いてcDNAを合成した。合成されたcDNA及びSIRT-1とGAPDHの各遺伝子に対し、予めデザインされたプライマー(primer)
を利用して各遺伝子の発現様相をqRT−PCRで測定した。PCR反応と分析は、Rotor−Gene-3000システム(Corbett-Research、Sydney、Australia)を利用した。mRNAの相対的発現結果を図4に示した。
【0106】
図4に示すように、シリンガレシノールは、濃度依存的にヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞においてSIRT-1の発現を増大させることができる。このことから、シリンガ
レシノールは、代謝異常、具体的に脂質代謝異常を改善することができることが分かる。
【0107】
[実験例4]
脂肪細胞及び肝細胞における脂肪代謝関連遺伝子発現調節能の評価
実験例3と実質的に等しい方法にてヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞に50μMのシリンガレシノールを処理した後、PBSで洗浄し、RNAを抽出してcDNAを合成した。ADD1/SREBP1c、ACC、FASなどの脂肪酸合成関連遺伝子及びACO、CPT1、mCADなどの脂肪酸酸化関連遺伝子の発現様相の変化をqRT−PCRを用いて測定した。試料としてDMSOのみを処理した対照群と比較した結果を図5図10に示した。
【0108】
図5図7に示すように、シリンガレシノールは、脂肪酸合成を誘導する遺伝子の発現を抑制した。また、図8図10に示すように、シリンガレシノールは、脂肪酸酸化を促進する遺伝子の発現を増大させた。このことから、シリンガレシノールは、脂肪合成を阻害すると共に脂肪の消費を増大させることで脂肪の蓄積を抑制することができることが分かる。
【0109】
[実験例5]
脂肪酸酸化促進能の評価
実験例3と実質的に等しい方法にて50μMのシリンガレシノールをヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋肉細胞に処理した。細胞をPBSで洗浄した後、脂肪酸の酸化測定用培地で一日間培養してから培地を集め、その中に含有されたOの量を測定した。無処理群と比較した結果を図11に示した。
【0110】
図11に示すように、シリンガレシノールは、ヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞において脂肪酸の酸化を増大させることができる。このことから、シリンガレシノールは、体内脂肪蓄積を抑制することができることが分かる。
【0111】
[実験例6]
シリンガレシノールのPGC-1発現増大効果
実験例3と実質的に等しい方法にて50μMのシリンガレシノールをヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞に処理した後、PBSで洗浄し、RNA及びcDNAを順次抽出した。エネルギー代謝に係わる遺伝子の発現を調節するPGC-1α及びPGC-1βのmRNA発現を専用プライマーを用いてqRT−PCRで分析した。試料としてDMSOのみを処理した対照群と比較したPGC-1α及びPGC-1βの発現結果をそれぞれ図12及び図
13に示した。
【0112】
図12及び図13に示すように、シリンガレシノールは、ヒト脂肪細胞、肝細胞、及び筋細胞においてPGC-1α及びPGC-1βの発現を増大させることができる。このことから、シリンガレシノールは、エネルギー代謝を促進することで体内脂肪蓄積を抑制することができることが分かる。
【0113】
[実験例7]
老化したヒト網膜上皮細胞におけるSIRT-1発現促進効果の評価
老化したヒト網膜上皮細胞におけるシリンガレシノールのSIRT-1遺伝子発現調節
効果を評価するために、以下のような実験を行なった。
【0114】
ヒト網膜上皮細胞株ARPE−19は、ATCC(Manassa、VA、USA)から購入し、ウシ血清10%、ペニシリン/ストレプトマイシン1%、アンホテリシンB、抗真菌剤を含むDMEM(Gibco-BRL、Grand-Island、NY、USA)培地を利用し、70%コンフルエント(confluent)するまで5%のCO培養器で培養した。網膜細胞の老化は、自然老化で育たないまで継代培養する方法にて誘導した。細胞株集団倍加レベル(Population-doubling-level、PDL)は、次式にて細胞成長が止まるまで各世代毎に計算した。PDL値は、老化した細胞であればあるほど高くなる。
【0115】
PDL=(Log10Y−Log10X)/Log10
Yは、各世代の最後で数えた細胞数
Xは最初に継代した細胞数
【0116】
DMSOに溶かしたシリンガレシノールは、50、100μMの濃度で5継代細胞から二日に1回ずつ処理して15継代細胞まで老化を誘導しながら処理した。陰性対照群には培地体積1/1000のDMSOを処理した。
【0117】
各試料を処理した細胞を、冷たいPBSで2回洗浄した後、RIPAバッファー(Santa-Cruz-Biotechnology、Santa-Cruz、CA、USA)
を用いてタンパク質を分離した。BCA分析キット(Pierce、Rockford、USA)で分離したタンパク質を定量し、30μgをiBlot-Dry-blottin
g-system(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)でウェス
タンブロッティングを実施した。SIRT-1タンパク質発現水準は、抗−SIRT-1抗体(Santa-Cruz-Biotechnology、Santa-Cruz、CA、
USA)を用いて測定した。その結果を図14に示した。
【0118】
図14に示すように、シリンガレシノールは、濃度依存的に老化した網膜細胞において低減していたSIRT-1の発現を増大させ、特に、100μMのシリンガレシノールを
処理した場合は、若い網膜上皮細胞のSIRT-1発現水準まで増大させた。このことか
ら、シリンガレシノールが網膜細胞のSIRT-1発現を増大させ、眼疾患、特に老化性
眼疾患を予防又は改善することができることが分かる。
【0119】
[実験例8]
老化した網膜細胞のミトコンドリア生合成増進効果の評価
実験例7と実質的に等しい方法にて、50及び100μMのシリンガレシノールの存在下、または陰性対照群に対してDMSOを処理しながら網膜細胞の老化を誘導した。各試料を処理した細胞を、冷たいPBSで2回洗浄した後、FastPure-DNAキット
(Tokyo、Japan)を用いてgenomic-DNA(gDNA)を抽出した。
ミトコンドリア生合成水準の評価に関連して、抽出したgDNAを用いてミトコンドリアDNAのマーカーであるシトクロム酸化酵素サブユニット(Cytochrome-ox
idase-subunit)IIと核DNAのマーカーであるシクロフィリン-A(Cyclophilin-A)をリアルタイムPCR反応にてその量を定量化し、核DNAに対
するミトコンドリアDNAの相対的な量を計算してミトコンドリア数を測定した。PCR反応と分析は、Rotor−Gene-3000システム(Corbett-Research、Sydney、Australia)を利用した。その結果を図15に示した。
【0120】
図15に示すように、50及び100μMのシリンガレシノールを処理した細胞は、DMSOのみを処理した細胞に比べて、それぞれ約40%及び60%ほどミトコンドリア生合成が増大した。このことから、シリンガレシノールが老化した網膜細胞のミトコンドリア生合成を濃度依存的に増大させ、眼疾患を予防又は改善することができることが分かる。
【0121】
[実験例9]
老化した網膜細胞のミトコンドリア機能正常化効果の評価
実験例7と実質的に等しい方法にて、50及び100μMのシリンガレシノールの存在下、または陰性対照群に対してDMSOを処理しながら網膜細胞の老化を誘導した。ミトコンドリア機能が正常化したか否かを確認するために網膜細胞におけるエネルギー(ATP)と活性酸素種の生成水準を確認した。ミトコンドリアのエネルギー生成量は、老化した細胞をPBSで洗浄し、お湯で細胞を回収し、ATP判定キット(Molecular-Probes、Eugene、OR、USA)を利用してテカンシステム(Infin
ite-M200、Tecan、Austria)にて発光(luminescence
)水準を測定することで行われた。活性酸素種の生成水準は、老化した細胞をPBSで洗浄し、活性酸素種探知試薬(Reactive-Oxygen-Species-Dete
ction-reagents)(HDCFDA、Invitrogen、Carls
bad、CA、USA)にて染色し、フローサイトメトリー(Flow-cytomet
er)(BD-Biosciences、San-Jose、CA、USA)で測定した。その結果を図16に示した。
【0122】
図16に示すように、50及び100μMのシリンガレシノールを処理した細胞は、DMSOのみを処理した細胞に比べて、それぞれ21%及び33%ほどエネルギー(ATP)生成が増大し、また、活性酸素種の生成水準は、それぞれ7%及び11%ほど有意的に減少した。このことから、シリンガレシノールは、濃度依存的に網膜細胞のエネルギー生成を増大させると共に活性酸素種の生成は低減させることで眼疾患を予防又は改善することができることが分かる。
【0123】
[実験例10]
ヒトPBMCにおけるSIRT-1発現促進効果の評価
シリンガレシノールのヒトPBMCにおけるSIRT-1遺伝子発現促進効果を評価す
るために、以下のような実験を行なった。
【0124】
ヒトPBMCは、ZenBio社(Research-Triangle-Park、NC、USA)から購入し、PBMC専用培地(ZenBio)で80%コンフルエント(confluent)するまで5%のCO培養器で培養した。DMSOに溶かしたシリンガレシノールを、20、50、及び100μMの濃度で24時間処理した。陰性対照群には培地体積1/1000のDMSOを処理した。各試料を処理した細胞をPBSで洗浄した後、トリゾール試薬(TRIzol-agent、Invitrogen)でRNA
を抽出した。前記抽出した5μgのRNAで逆転写システム(Fermentas、Glen-Burnie、MD、USA)を利用してcDNAを合成した。合成したcDNA
に対し、SIRT-1とGAPDHのプライマー(primer)を用いて各遺伝子の発
現様相を測定した。qRT−PCR反応と分析は、Rotor−Gene-3000シス
テム(Corbett-Research、Sydney、Australia)を利用
した。その結果を図17に示した。
【0125】
図17に示すように、シリンガレシノールは、濃度依存的にヒトPBMCにおいてSIRT-1の発現を増大させることができる。このことから、シリンガレシノールは、末梢
血単核細胞においてSIRT-1の発現を促進して免疫力を増進させ、且つ免疫性疾患を
予防及び改善することができることが分かる。
【0126】
[実験例11]
ヒトPBMCにおける活性酸素種の発生抑制効果の評価
実験例10と実質的に等しい方法にて、ヒトPBMCに20、50、及び100μMのシリンガレシノールを前処理した後、PBSで洗浄し、LPS(lipopolysaccharide)10ng/mlを処理して炎症反応を誘導した。活性酸素種を感知する蛍光物質であるH−DCFDA(Invitrogen)を処理した後、マルチプレートリーダー(multiplate-reader)(Infinite-M200;TECAN、Mannedorf、Switzerland)で蛍光物質の量を測定した。その結果を図18に示した。
【0127】
図18に示すように、シリンガレシノールを処理した細胞は、LPSのみを処理した細胞に比べて、活性酸素量が最大約60%程度低減した。このことから、シリンガレシノールは、活性酸素量を低減させて炎症反応を抑制することで免疫力を増進させ、且つ免疫性疾患を予防及び改善することができることが分かる。
【0128】
[実験例12]
ヒトPBMCにおける炎症関連遺伝子発現抑制効果の評価
実験例11と実質的に等しい方法にて、ヒトPBMCに50μMのシリンガレシノールを前処理した後、LPS-10ng/mlを処理して炎症反応を誘導した。各試料を処理
した細胞をPBSで洗浄した後、順次RNAとcDNAを抽出及び合成した。合成したcDNAに対し、IL−1b、IL−6、iNOS、COX2、MMP9、CCR2の炎症反応関連遺伝子プライマー(primer)を用いて各遺伝子の発現様相を測定した。その結果を図19に示した。
【0129】
図19に示すように、シリンガレシノールを処理した細胞は、LPSのみを処理した細胞に比べて、前記炎症反応関連遺伝子の発現が最大約90%程度低減した。このことから、シリンガレシノールは、炎症反応を低減させて免疫力を増進させ、且つ免疫性疾患を予防又は改善することができることが分かる。
【0130】
[実験例13]
ヒトPBMCの移動及び沈着抑制効果の評価
実験例11と実質的に等しい方法にて、ヒトPBMCに20、50、及び100μMのシリンガレシノールを処理した後、またはDMSOを処理した後、TNF-10ng/m
lを処理して炎症反応を誘導した。分化した3T3−L1脂肪細胞(ZenBio)上にPBMCを処理し、脂肪細胞炎症シグナルによってPBMCが脂肪細胞上に移動して沈着するか否かを調べた。48時間後に移動せずに残っているPBMCを除去した後、トリプシン/EDTA溶液を用いて培養皿から細胞をもぎ取った。細胞計数器(cell-co
unter)を利用して、もぎ取った細胞の総数を測定して図20に示した。
【0131】
図20に示すように、シリンガレシノールは、PBMCに対して脂肪細胞への移動及び
沈着を最大約50%抑制した。これは、シリンガレシノールが末梢血単核細胞の炎症シグナルによる移動及び沈着を抑制することができることを意味し、このことから、シリンガレシノールが炎症反応を抑制して免疫力を増進させ、且つ免疫性疾患を予防又は改善することができることが分かる。
【0132】
[実験例14]
ヒトPBMCのタイプ変化誘導効果の評価
実験例11と実質的に等しい方法にて、ヒトPBMCに20、50、及び100μMのシリンガレシノールを処理した後、またはDMSOを処理した後に2型免疫細胞に関連した遺伝子の発現を測定するために、PBMCからRNAを抽出し、cDNAを合成した。合成したcDNAに対し、PGC-1α、PGC-1βのように2型免疫細胞への分化を誘導するのに必要な転写調節因子及びIL−10、アルギナーゼIのように2型免疫細胞に
おいて主に発現する遺伝子の発現様相を測定した。その結果を図21に示した。
【0133】
図21に示すように、シリンガレシノールを処理した細胞では、2型免疫細胞特異的マーカー遺伝子の発現が大きく増大していた。このことから、シリンガレシノールは、末梢血単核細胞に対して2型免疫細胞への分化を促進することで免疫力を増進させ、且つ免疫性疾患を予防又は改善することができることが分かる。
【0134】
本発明の一側面に係る組成物の剤形例を以下で説明するが、他の種々の剤形としても応用可能であり、これらは、本発明を限定するためのものではなく、単に本発明を具体的に説明するためのものに過ぎない。
【0135】
[剤形例1]健康食品
シリンガレシノール...................-1000mg
ビタミン混合物
ビタミンAアセテート.................-70μg
ビタミンE...........................-1.0mg
ビタミンB1.........................-0.13mg
ビタミンB2.........................-0.15mg
ビタミンB6.........................-0.5mg
ビタミンB12.......................-0.2μg
ビタミンC...........................-10mg
ビオチン.............................-10μg
ニコチン酸アミド.....................-1.7mg
葉酸.................................-50μg
パントテン酸カルシウム...............-0.5mg
無機質混合物
硫酸第一鉄...........................-1.75mg
酸化亜鉛.............................-0.82mg
炭酸マグネシウム.....................-25.3mg
第一リン酸カリウム...................-15mg
第二リン酸カルシウム.................-55mg
クエン酸カリウム.....................-90mg
炭酸カルシウム.......................-100mg
塩化マグネシウム.....................-24.8mg
前記ビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的健康食品に適合した成分を好適な実施例に従い混合組成したが、その配合比を任意に変形実施してもよい。
【0136】
[剤形例2]健康飲料
シリンガレシノール....................-1000mg
クエン酸..............................-1000mg
オリゴ糖..............................-100g
タウリン..............................-1g
精製水................................-残量
通常の健康飲料の製造方法にて前記成分を混合した後、約1時間にわたって約85℃で撹拌加熱して得た溶液をろ過し、滅菌して得る。
【0137】
[剤形例3]錠剤
シリンガレシノール100mg、大豆抽出物50mg、葡萄糖100mg、紅参抽出物50mg、澱粉96mg、及びマグネシウムステアレート4mgを混合し、30%エタノールを40mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥し、打錠機を利用して打錠して得る。
【0138】
[剤形例4]顆粒剤
シリンガレシノール100mg、大豆抽出物50mg、葡萄糖100mg、及び澱粉600mgを混合し、30%エタノールを100mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥して顆粒を形成し、それを包みに充填して得る。
【0139】
[剤形例5]軟膏
下記の表1に表した組成で通常の方法にて軟膏を製造した。
【0140】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明に係る組成物は、SIRT活性化剤を含むことで、優れた解毒効果、特に喫煙による毒性を解毒するという優れた効果を有する。
【0142】
本発明に係る組成物は、SIRT活性化剤を含むことで、代謝異常症、具体的に肥満、2型糖尿病、高脂血症、または脂肪肝を予防及び改善する効果に優れている。
【0143】
本発明に係る組成物は、SIRT活性化剤を含むことで、眼疾患、特に老化性眼疾患を予防又は改善する効果に優れている。
【0144】
本発明に係る組成物は、SIRT活性化剤を含むことで、アレルギー、アトピー皮膚炎、乾草熱、またはリウマチ関節炎のような免疫性疾患を予防又は改善する効果に優れている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21