(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.概要
本発明は、量子ドットに結合させるためのアルキル−カルボキシポリマーを提供する。このリガンドは合成が容易であり、複数個のカルボキシ結合用基のせいで量子ドットにより大きい安定性を提供する。
【0011】
II.定義
「カルボキシ結合用基」とは、カルボン酸基C(O)OHを指す。
【0012】
「アルキル」とは、示した炭素原子数を有する直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族基を指す。アルキルは、C
1-2、C
1-3、C
1-4、C
1-5、C
1-6、C
1-7、C
1-8、C
1-9、C
1-10、C
1-12、C
1-14、C
1-16、C
1-18、C
1-20、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20及びC
18-20等の、任意の炭素数のものを包含することができる。例えば、C
1-6アルキルには、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等が包含されるが、これらに限定されるわけではない。その他のアルキル基には、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン及びイコサンが包含される。アルキル基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0013】
「長鎖アルキル基」とは、上で定義したようなアルキル基であって、少なくとも8個の炭素鎖原子を有するものである。長鎖アルキル基は、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20又はC
18-20等の、任意の炭素数のものを包含することができる。代表的な基には、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン及びイコサンが包含されるが、これらに限定されるわけではない。長鎖アルキル基は、シラン基で置換されていることもできる。
【0014】
「アルキレン」とは、示した炭素原子数を有する直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族基であって少なくとも2個の別の基に結合した基を指す。アルキレンは、2、3、4又はそれ以上の基に結合することができ、二価、三価、四価又は多価であることができる。アルキレンに結合する基は、アルキレンの同一の原子又は異なる原子に結合することができる。例えば、直鎖アルキレンは、−(CH
2)
n−(ここで、nは1、2、3、4、5又は6である)の二価基であることができる。代表的なアルキレン基には、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが包含されるが、これらに限定されるわけではない。アルキレン基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0015】
「ヘテロアルキル」とは、任意の好適な長さのアルキル基であって、N、O及びS等のヘテロ原子を1〜5個有するものを指す。追加のヘテロ原子も有用であり得、B、Al、Si及びPが包含されるが、これらに限定されるわけではない。ヘテロ原子はまた、酸化されたものであることもでき、−S(O)及び−S(O)
2−等があるが、これらに限定されるわけではない。例えば、ヘテロアルキルには、エーテル(エチレンオキシ及びポリ(エチレンオキシ))、チオエーテル及びアルキルアミンが包含され得る。ヘテロアルキルのヘテロ原子部分がアルキル基の水素を置換して、ヒドロキシ、チオ又はアミノ基を形成することができる。また、ヘテロ原子は連結用原子であることもでき、また、2個の炭素原子の間に挿入されることもできる。
【0016】
「長鎖ヘテロアルキル基」とは、上で定義したしたようなヘテロアルキル基であって、少なくとも8個の鎖原子を有するものである。長鎖ヘテロアルキル基は、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20又はC
18-20等の、任意の数の鎖原子を含むことができる。
【0017】
「ヘテロアルキレン」とは、上で定義したようなヘテロアルキル基であって少なくとも2個の別の基に結合した基を指す。ヘテロアルキレンに結合する2つの部分は、ヘテロアルキレンの同一の原子又は異なる原子に結合することができる。
【0018】
「アルケニル」とは、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の二重結合を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素を指す。アルケニルは、C
2、C
2-3、C
2-4、C
2-5、C
2-6、C
2-7、C
2-8、C
2-9、C
2-10、C
2-12、C
2-14、C
2-16、C
2-18、C
2-20、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20及びC
18-20等の、任意の炭素数のものを包含することができる。アルケニル基は、任意の適当な数の二重結合を有することができ、その数は1個、2個、3個、4個、5個又はそれ以上を包含するが、これらに限定されるわけではない。アルケニル基の例には、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、イソペンテニル、1,3−ペンタジエニル、1,4−ペンタジエニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,5−ヘキサジエニル、2,4−ヘキサジエニル又は1,3,5−ヘキサトリエニルが包含されるが、これらに限定されるわけではない。アルケニル基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0019】
「長鎖アルケニル基」とは、上で定義したようなアルケニル基であって、少なくとも8個の炭素鎖原子を有するものである。長鎖アルケニル基は、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20又はC
18-20等の、任意の炭素数のものを包含することができる。代表的な基には、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン及びイコセンが包含されるが、これらに限定されるわけではない。長鎖アルケニル基は、1個以上のアルケン基を有することができる。
【0020】
「アルキニル」とは、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1個の三重結合を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素を指す。アルキニルは、C
2、C
2-3、C
2-4、C
2-5、C
2-6、C
2-7、C
2-8、C
2-9、C
2-10、C
2-12、C
2-14、C
2-16、C
2-18、C
2-20、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20及びC
18-20等の、任意の炭素数のものを包含することができる。アルキニル基の例には、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、イソブチニル、sec−ブチニル、ブタジイニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、イソペンチニル、1,3−ペンタジイニル、1,4−ペンタジイニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1,3−ヘキサジイニル、1,4−ヘキサジイニル、1,5−ヘキサジイニル、2,4−ヘキサジイニル又は1,3,5−ヘキサトリイニルが包含されるが、これらに限定されるわけではない。アルキニル基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0021】
「長鎖アルキニル基」とは、上で定義したようなアルキニル基であって、少なくとも8個の炭素鎖原子を有するものである。長鎖アルキニル基は、C
8-20、C
12-20、C
14-20、C
16-20又はC
18-20等の、任意の炭素数のものを包含することができる。代表的な基には、オクチン、ノニン、デシン、ウンデシン、ドデシン、トリデシン、テトラデシン、ペンタデシン、ヘキサデシン、ヘプタデシン、オクタデシン、ノナデシン及びイコシンが包含されるが、これらに限定されるわけではない。長鎖アルキニル基は、1個以上のアルキン基を有することができる。
【0022】
「シクロアルキル」とは、飽和の又は一部不飽和の単環式、縮合二環式若しくは架橋多環状物であって、3〜12個の環原子又は示した原子数を有するものを指す。シクロアルキルは、C
3-6、C
4-6、C
5-6、C
3-8、C
4-8、C
5-8、C
6-8、C
3-9、C
3-10、C
3-11、C
3-12、C
6-10又はC
6-12等の、任意の炭素数のものを包含することができる。飽和単環式シクロアルキル環には、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチルが包含される。飽和二環式及び多環式シクロアルキル環には、例えばノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが包含される。シクロアルキル基はまた、部分的に不飽和で、環中に二重結合又は三重結合を1個以上有するものであることもできる。代表的な部分的不飽和シクロアルキル基には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3−及び1,4−異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3−、1,4−及び1,5−異性体)、ノルボルネン及びノルボルナジエンが包含されるが、これらに限定されるわけではない。シクロアルキルが飽和単環式C
3-8シクロアルキルである場合、例示的な基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが包含されるが、これらに限定されるわけではない。シクロアルキルが飽和単環式C
3-6シクロアルキルである場合、例示的な基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが包含されるが、これらに限定されるわけではない。シクロアルキル基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0023】
「アルキル−シクロアルキル」とは、アルキル成分及びシクロアルキル成分を有する基であって、アルキル成分がシクロアルキル成分を結合箇所に結び付けるものを指す。アルキル成分は、少なくとも二価のアルキレンであってシクロアルキル成分と結合箇所とを結び付けるということを除いて、上で定義した通りである。ある場合には、アルキル部分は存在しないこともできる。アルキル成分は、C
1-6、C
1-2、C
1-3、C
1-4、C
1-5、C
2-3、C
2-4、C
2-5、C
2-6、C
3-4、C
3-5、C
3-6、C
4-5、C
4-6及びC
5-6等の、任意の炭素数のものを包含することができる。シクロアルキル成分は、この中で定義した通りである。例示的なアルキル−シクロアルキル基には、メチル−シクロプロピル、メチル−シクロブチル、メチル−シクロペンチル及びメチル−シクロヘキシルが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
「アリール」とは、任意の好適な数の環原子及び任意の好適な数の環を有する芳香族環系を指す。アリール基は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の環原子のような任意の好適な数の環原子のもの及び6〜10、6〜12又は6〜14環員のものを包含することができる。アリール基は、単環式であることもでき、縮合して二環若しくは三環基を形成することもでき、又は結合によって結合してビアリール基を形成することもできる。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル及びビフェニルが包含される。その他のアリール基としては、メチレン結合基を有するベンジルがある。ある種のアリール基は、フェニル、ナフチル又はビフェニルのように、6〜12個の環員を有する。別のアリール基は、フェニル又はナフチルのように、6〜10個の環員を有する。ある種の別のアリール基は、フェニルのように、6個の環員を有する。アリール基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0025】
「アルキル−アリール」とは、アルキル成分及びアリール成分を有する基であって、アルキル成分がアリール成分を結合箇所に結び付けるものを指す。アルキル成分は、少なくとも二価のアルキレンであってアリール成分と結合箇所とを結び付けるということを除いて、上で定義した通りである。アルキル成分は、C
0-6、C
1-2、C
1-3、C
1-4、C
1-5、C
1-6、C
2-3、C
2-4、C
2-5、C
2-6、C
3-4、C
3-5、C
3-6、C
4-5、C
4-6及びC
5-6等の、任意の炭素数のものを包含することができる。ある場合には、アルキル部分は存在しないこともできる。アリール成分は、上で定義した通りである。アルキル−アリール基の例には、ベンジル及びエチルベンゼンが包含されるが、これらに限定されるわけではない。アルキル−アリール基は、置換されたもの又は非置換のものであることができる。
【0026】
「シラン」又は「シリル」とは、いくつかの置換基を持つケイ素原子を指し、一般的には式−SiR
3を有する。ケイ素原子に結合したR基は、任意の基であることができ、水素、ハロゲン及びアルキルを包含するが、これらに限定されるわけではない。さらに、R基は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
「反応混合物を形成」とは少なくとも2種の成分を、それらが互いに反応して第3の成分を生成するのに適した条件下で容器中で一緒にすることを指す。
【0028】
「量子ドット」又は「ナノ結晶」とは、実質的に単結晶のナノ構造体を指す。ナノ結晶は、約500nm未満であって約1nm未満程度にまで至る寸法の少なくとも1つの領域又は特徴的寸法を有する。ここで用いた場合、任意の数値に言及した時に、「約」とは、示した値の±10%の値を意味する(例えば、約100nmとは、90nm〜110nmの寸法範囲(境界を含む)を包含する)。用語「ナノ結晶」、「量子ドット」、「ナノドット」及び「ドット」が同様の構造を表すことは、当業者であれば容易にわかることであり、本明細書においては区別なく用いられる。本発明はまた、多結晶質又は非晶質のナノ結晶を用いることも包含する。
【0029】
III.量子ドット結合用リガンド
本発明は、量子ドットに結合させるためのアルキル−カルボキシポリマーを提供する。このリガンドは合成が容易であり、複数個のカルボキシ結合用基のせいで量子ドットにより大きい安定性を提供する。
【0030】
ある実施形態において、本発明は、次式を有する量子ドット結合用リガンドを提供する。
【化2】
ここで、式Iの各R
1a、R
1b、R
2及びR
4は独立してH、C
1-20アルキル、C
1-20ヘテロアルキル、C
2-20アルケニル、C
2-20アルキニル、シクロアルキル又はアリールであることができる。式Iの各R
3a及びR
3bは独立してH又はC
1-6アルキルであることができる。式Iの下付文字m及びnはm+nが1であるように独立して0又は1であることができる。式Iの下付文字pは5〜約500の整数であることができる。式Iの量子ドット結合用リガンドは、下付文字mが0である場合にはR
1a及びR
1bの少なくとも一方がHであり且つR
2がC
8-20アルキル、C
8-20ヘテロアルキル、C
8-20アルケニル、C
8-20アルキニル、シクロアルキル又はアリールであることができ、下付文字mが1である場合にはR
1a及びR
2が共にHであり且つR
1bがC
8-20アルキル、C
8-20ヘテロアルキル、C
8-20アルケニル、C
8-20アルキニル、シクロアルキル又はアリールであることができるものである。
【0031】
ある実施形態において、R
3a、R
3b及びR
4基はすべてHである。別の実施形態において、式Iの量子ドット結合用リガンドは、次の構造を有する。
【化3】
【0032】
R
1a、R
1b及びR
2基は、任意の好適な基であることができ、例えば少なくとも1つが水素であり且つ少なくとも1つが水素以外、例えば可溶化用基であることができる。ある実施形態においては、R
1a、R
1b及びR
2の内の少なくとも1つがHであることができ、R
1a、R
1b及びR
2の内の少なくとも1つが独立してC
8-20アルキル、C
8-20ヘテロアルキル、C
8-20アルケニル、C
8-20アルキニル、シクロアルキル又はアリールであることができる。別の実施形態においては、R
1a、R
1b及びR
2の内の少なくとも1つがC
8-20アルキルであることができる。ある別の実施形態においては、R
1a、R
1b及びR
2の内の少なくとも1つが独立してオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン又はアイコサンであることができる。さらに別の実施形態においては、R
1a、R
1b及びR
2の内の少なくとも1つが独立してテトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン又はアイコサンであることができる。
【0033】
下付文字pは、本発明の量子ドット結合用リガンドにおいて任意の好適な数であることができる。例えば、下付文字pは約1〜約100、又は約5〜約100、又は約5〜約50、又は約10〜約50、又は約10〜約25、又は約10〜約100、又は約25〜約100であることができる。別態様として、下付文字pは、約5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90又は約100であることができる。ある実施形態において、下付文字pは、約10〜約100であることができる。
【0034】
下付文字m及びnは、下付文字m及びnの合計が1であるような0又は1の任意の好適な組合せであることができる。ある実施形態においては、下付文字mが0であり且つ下付文字nが1であることができる。下付文字mが0であり且つ下付文字nが1である場合、式Iの量子ドット結合用リガンドは、次の構造を有することができる。
【化4】
【0035】
ある実施形態において、下付文字mが0であり且つ下付文字nが1である場合、式Iの量子ドット結合用リガンドは、次の構造を有することができる。
【化5】
【0036】
R
1a、R
1b、R
2及びR
4基は任意の好適な基であることができ、例えば少なくとも1つが水素であり且つ少なくとも1つが水素以外、例えば可溶化用基であることができる。ある実施形態においては、R
1a、R
1b、R
2及びR
4の内の少なくとも1つがHであり且つR
1a、R
1b、R
2及びR
4の内の少なくとも1つが独立してC
8-20アルキル、C
8-20ヘテロアルキル、C
8-20アルケニル、C
8-20アルキニル、シクロアルキル又はアリール等の可溶化用基であることができる。別の実施形態においては、R
1a及びR
1bの両方が水素であることができ且つR
2及びR
4の1つが可溶化用基であることができる。ある別の実施形態においては、R
1a、R
1b及びR
4が水素であり且つR
2が可溶化用基であることができる。ある実施形態において、式Iの量子ドット結合用リガンドは、次の構造を有する。
【化6】
【0037】
R
2が可溶化用基である場合、R
2は任意の好適な可溶化用基であることができる。ある実施形態において、R
2はC
8-20アルキル、C
8-20ヘテロアルキル、C
8-20アルケニル、C
8-20アルキニル、シクロアルキル又はアリールであることができる。別の実施形態において、R
2はC
8-20アルキルであることができる。ある別の実施形態において、R
2はオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン又はアイコサンであることができる。さらに別の実施形態において、R
2はテトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン又はアイコサンであることができる。
【0038】
式Iaの量子ドット結合用リガンドは、当業者に周知の方法によって調製することができる。例えば、無水マレイン酸とアルケンとを既知の方法で共重合させ、次いで酸無水物を加水分解することができる。かくして、2個のカルボキシ結合用リガンド(R
1a=R
1b=H)及びアルキル可溶化用基(R
2)を有する交互コポリマーが調製される。
【0039】
ある実施形態において、下付文字mが1であり且つ下付文字nが0である場合、式Iの量子ドット結合用リガンドは、次の構造を有することができる。
【化7】
【0040】
式IbのR
1b、R
2、R
3a及びR
3b基は、任意の好適な基であることができ、少なくとも1つは水素以外、例えば可溶化用基であることができる。R
3a及びR
3b基は任意の好適な基であることができる。ある実施形態において、各R
3a及びR
3b基は独立してH又はC
1-6アルキルであることができる。別の実施形態において、各R
3a及びR
3b基は独立してH又はC
1-3アルキルであることができる。ある別の実施形態において、各R
3a及びR
3b基は独立してH、メチル、エチル又はプロピルであることができる。さらに別の実施形態において、各R
3a及びR
3b基はHであることができる。さらに別の実施形態において、各R
3a及びR
3b基はメチルであることができる。
【0041】
ある実施形態において、式Iの量子ドット結合用リガンドは、次の構造を有することができる。
【化8】
【0042】
R
1bが可溶化用基である場合、R
1bは任意の好適な可溶化用基であることができる。ある実施形態において、R
1bはC
8-20アルキル、C
8-20ヘテロアルキル、C
8-20アルケニル、C
8-20アルキニル、シクロアルキル又はアリールであることができる。別の実施形態において、R
1bはC
8-20アルキルであることができる。ある別の実施形態において、R
1bはオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン又はアイコサンであることができる。さらに別の実施形態において、R
2はテトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン又はアイコサンであることができる。
【0043】
式Ibの量子ドット結合用リガンドは、当業者に周知の方法によって調製することができる。例えば、ポリアクリル酸は、既知の方法によって調製することもでき、商業出典から得ることもでき、次いでアルコールによる部分エステル化によって式Ibのコポリマーを提供することができる。エステル化は、化学的に行うこともでき、酵素によって行うこともできる(米国特許第6924129号明細書を参照されたい。その全体をここに取り入れる)。
【0044】
IV.組成物
本発明の量子ドット結合用リガンドは、量子ドット(QD)に錯化させることができる。ある実施形態において、本発明は、本発明の量子ドット結合用リガンドと、発光量子ドット(QD)の第1の母集団との組成物を提供する。
【0045】
量子ドット
一般的に、特性寸法区域は構造の最小軸に沿う。QDは材料特性において実質的に均一か、又は、ある実施形態では、不均一であることもある。QDの光学特性は、それらの粒径、化学又は表面組成によって、及び/又は、従来技術で利用可能な適切な光学的試験によって決定される。ナノ結晶サイズを約1nmから約15nmの範囲に調整する能力によって、全光学スペクトル内の光子放出範囲は演色における大きな多用途性を提供することができる。粒子カプセル化は、化学的及び紫外線劣化剤に対する構造安定性を提供する。
【0046】
追加として例示されるナノ構造として、限定するものではないが、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ構造、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、ナノ粒子、及び、寸法が約500nm未満、例えば、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は、さらに約20nm未満又は約10nm未満の少なくとも一つの区域又は特性寸法(任意で三次元の各々)を有する類似構造がある。一般的に、区域又は特性寸法は構造の最小軸に沿うことになる。ナノ構造は、例えば、実質的に結晶質、実質的に単結晶、多結晶、非晶質又はその組み合わせである。
【0047】
本発明で使用されるQD(又は他のナノ構造)は、当業者には公知のいずれかの方法を使用して製造される。例えば、適切なQD及び適切なQDを形成する方法は、米国特許第6225198号、米国特許第6207229号、米国特許第6322901号、米国特許第6872249号、米国特許第6949206号、米国特許第7572393号、米国特許第7267865号、米国特許第7374807号、米国特許公開第2008/0118755号(2005年12月9日出願)及び米国特許第6861155号に開示されたものがあり、その各々はここでは全体として参照されて組み込まれている。
【0048】
本発明で使用されるQD(又は他のナノ構造)は、適切な材料のいずれかによって製造され、適切には無機材料、及び、さらに適切には無機導体又は半導体材料である。適切な半導体材料としては、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族半導体を含むいずれかの種類の半導体がある。適切な半導体材料は、限定するものではないが、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイアモンドを含む)、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si
3N
4、Ge
3N
4、Al
2O
3、(Al、Ga、In)
2(S、Se、Te)
3、Al
2CO
3及び二つ又はそれ以上のそのような半導体の好適な組み合わせが挙げられる。
【0049】
ある実施形態では、半導体ナノ結晶又は他のナノ構造は、また、p型ドーパント又はn型ドーパントのようなドーパントを含むことがある。本発明で有用なナノ結晶(又は他のナノ構造)には、また、II−VI又はIII−V半導体を含むことがある。II−VI又はIII−V半導体ナノ結晶及びナノ構造の例として、周期律表でZn、Cd及びHgのようなII族の元素とS、Se、Te、PoのようなVI族のいずれかの元素とのいずれかの組み合わせ、及び、周期律表でB、Al、Ga、In及びTlのようなIII族の元素とN、P、As、Sb、及びBiのようなV族のいずれかの元素とのいずれかの組み合わせがある。他の適切な無機ナノ構造に、金属ナノ構造がある。適切な金属には、限定するものではないが、Ru、Pd、Pt、Ni、W、Ta、Co、Mo、Ir、Re、Rh、Hf、Nb、Au、Ag、Ti、Sn、Zn、Fe、FePtなどがある。
【0050】
当業者には公知のいずれかの方法によってナノ結晶蛍光体を生成することができるが、適切には、無機ナノ材料蛍光体の制御された成長のための液相コロイド法が使用される。Alivisatos, A.P., “Semiconductor clusters, nanocrystals, and quantum dots”, Science 271:933 (1996);X. Peng, M. Schlamp, A. Kadavanich, A.P. Alivisatos, “Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS Core/Shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility”, J. Am. Chem. Soc. 30:7019-7029 (1997);並びにC. B. Murray, D.J. Norris, M.G. Bawendi, “Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE (E = sulfur, selenium, tellurium) semiconductor nanocrystallites”, J. Am. Chem. Soc. 115:8706 (1993)を参照されたい(それらの開示全体を参考用にここに取り入れる)。この製造方法技術は、クリーンルーム及び高価な製造装置の必要がない低コストプロセス可能性を活用する。これらの方法では、高温で熱分解を受ける金属前駆体は有機界面活性剤分子の熱溶液に急速に注入される。これらの前駆体は上昇した温度で分裂し、反応して、ナノ結晶を核にする。この初期の核生成相後、成長相は成長結晶にモノマーを添加することによって始まる。結果はそれらの表面をコーティングする有機界面活性剤分子を有する溶液内の独立した結晶ナノ粒子である。
【0051】
この方法を使用すると、合成が数秒間以上起きる初期核生成事象として生じ、上昇した温度で数分間の結晶成長が続く。温度、存在する界面活性剤の種類、前駆体材料、及びモノマーに対する界面活性剤の割合などのパラメータを変更して、反応の性質及び進行を変化させることができる。温度は核生成事象の構造相、前駆体の分解速度、成長速度を制御する。有機界面活性剤分子は溶解度及びナノ結晶の形状制御の両方に介在する。界面活性剤のモノマーに対する、界面活性剤のお互いに対する、モノマーのお互いに対する割合、及び、モノマーの個々の濃度は、成長動態に強く影響する。
【0052】
半導体ナノ結晶において、光誘起発光はナノ結晶のバンド端状態から起きる。発光ナノ結晶からのバンド端発光は、表面電子状態から発生する放射又は非放射崩壊チャネルと競争する。X. Peng, et al., J. Am. Chem. Soc. 30:7019-7029 (1997)を参照されたい。その結果、ダングリングボンドのような表面欠陥の存在は非放射再結合中心を提供し、低下した放出効果の一因となる。表面トラップ状態を不動態化し、除去する有効かつ永続的な方法は、ナノ結晶表面上で無機シェル材料をエピタキシャルに成長させることである。X. Peng, et al., J. Am. Chem. Soc. 30:7019-7029 (1997)を参照されたい。シェル材料は、電子準位がコア材料に対してI型である(例えば、より大きいバンドギャップを有し、電子を局在化させる電圧段階を提供し、コアまで穴をあける)ように選択されることができる。その結果、非放射再結合の確率は減少する。
【0053】
コア−シェル構造は、コアナノ結晶を含む反応混合物にシェル材料を含む有機金属前駆体を添加することによって得られる。この場合、核生成事象、それに続く成長よりむしろコアが核として挙動し、シェルはそれらの表面から成長する。シェル材料のナノ結晶の独立した核生成を防止しながら、コア表面に対するシェル材料モノマーの添加を助けるために、反応温度は低く保持される。反応混合物中に界面活性剤が存在して、シェル材料の制御された成長を管理し、溶解度を確実にする。二つの材料間に低い格子不整合があるとき、均一及びエピタキシャルに成長したシェルが得られる。
【0054】
コア−シェル発光ナノ結晶を調製するための例となる材料は、限定するものではないが、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイアモンドを含む)、P、Co、Au、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si
3N
4、Ge
3N
4、Al
2O
3、(Al、Ga、In)
2(S、Se、Te)
3、Al
2CO
3及び二つ又はそれ以上のそのような材料の適切な組み合わせが挙げられる。本発明の実施に使用されるコア−シェル発光ナノ結晶の例としては、限定するものではないが、(コア/シェルで表示)、CdSe/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、CdSe/CdS、CdTe/CdS、CdTe/ZnS及びその他が挙げられる。
【0055】
ある実施形態では、CdSeは、この材料の合成の相対的成熟度によってナノ結晶材料として使用される。一般的な表面化学の使用によって、ナノ結晶含有非カドミウムを置換することができる。発光ナノ結晶材料の例としてはコア/シェル発光ナノ結晶を含むCdSe又はZnSがあり、CdSe/CdS/ZnS、CdSe/ZnS、CdSeZn/CdS/ZnS、CdSeZn/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、CdSe/CdS、CdTe/CdS又はCdTe/ZnSが挙げられる。最も好ましくは、本発明の量子ドットはCdSeを含むコア及びCdSまたZnSを含む少なくとも一つのカプセル化シェル層を有するコア−シェルQDを含むことがある。別の実施形態では、InPがナノ結晶材料として使用される。ある実施形態では、量子ドットはCdSe、CdTe又はInPである。
【0056】
発光ナノ結晶は酸素不浸透性の材料から形成され、それによって、QD蛍光体材料におけるQDの酸素障壁要件及び光安定化を単純化する。ある実施形態では、発光ナノ結晶は本発明の一つ又はそれ以上の量子ドット結合リガンドによってコーティングされ、下記に詳細に記載するような一つ又はそれ以上のマトリックス材料を有する有機ポリマーマトリックス内に分散される。さらに、発光ナノ結晶は、QDを密封するために、酸化シリコン、酸化アルミニウム又は酸化チタン(例えば、SiO
2、Si
2O
3、TiO
2、又はAl
2O
3)などの一つ又はそれ以上の材料を有する一つ又はそれ以上の無機層でコーティングすることができる。
【0057】
マトリックス材料
一般的に、高分子リガンドはナノ構造の表面に結合される。しかし、組成中のリガンド材料の全部がナノ構造に結合しなければならないわけではない。高分子リガンドが過剰に供給されることがあり、その結果、リガンドのある分子はナノ構造の表面に結合し、リガンドの他の分子はナノ構造の表面に結合しない。
【0058】
本発明の蛍光体材料は、さらにQDが埋め込まれた、又は、別の方法で配置されたマトリックス材料を備える。マトリックス材料はQDを収容することができる、適切なホストマトリックス材料のいずれでもよい。適切なマトリックス材料は、QD及びいずれかの周辺包装材料又は層を含む、バックライティングユニット(BLU)コンポーネントと化学的及び光学的に両立する。適切なマトリックス材料は、一次光及び二次光の両方に透明で、それによって一次光及び二次光の両方がマトリックス材料を通して伝播される非黄色化光学材料を含む。好ましい実施形態では、マトリックス材料はQDを完全に包囲して、酸素、湿気及び温度のような環境条件によって引き起こされるQDの劣化を防止する防護壁を提供する。マトリックス材料は、可撓性又は鋳造可能なQDフィルムが所望される用途では可撓性であることができる。あるいは、マトリックス材料は高強度、非可撓性材料を含むこともある。
【0059】
好ましいマトリックス材料は、低い酸素透過性及び透湿性を有し、高い光及び科学安定性を示し、好ましい屈折率を示し、QD蛍光体材料に近接する保護層又は他の層に接着し、したがって、QDを保護する気密シールを提供する。好ましいマトリックス材料は、紫外線又は熱硬化法によって硬化可能であり、したがって、ロール−ロール加工を容易にする。熱硬化が最も好ましい。
【0060】
本発明のQD蛍光体材料で使用される適切なマトリックス材料は、ポリマー及び有機及び無機酸化物である。本発明のマトリックスで使用される適切なポリマーは、そのような目的で使用できる当業者には公知のいずれかのポリマーである。適切な実施形態では、ポリマーは実質的に半透明又は実質的に透明である。適切なマトリックス材料としては、限定するものではないが、エポキシ樹脂、アクリレート、ノルボルネン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール:ポリ酢酸ビニル、ポリ尿素、ポリウレタン;シリコーン及びシリコーン誘導体として、限定するものではないが、アミノシリコーン(AMS)、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリフェニルアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジアルキルシロキサン、シルセスキオキサン、フッ素化シリコーン及びビニル及びヒドリド置換シリコーン;限定するものではないが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ラウリルであるモノマーから生成されるアクリルポリマー及びコポリマー;ポリスチレン、アミノポリスチレン(APS)及びポリ(アクリロニトリルエチレンスチレン)(AES)のようなスチレンベースポリマー;ジビニルベンゼンのような二官能性モノマーと架橋されるポリマー;リガンド材料を架橋するのに適した架橋剤、リガンドアミンと結合してエポキシを形成するエポキシド(例えば、APS又はPEIリガンドアミン)などである。
【0061】
本発明で使用されるQDは、いずれかの適切な方法、例えば、ナノ結晶をポリマーと混合し、フィルムを鋳造するか、ナノ結晶をモノマーと混合して、それらを一緒に重合させるか、ナノ結晶をゾルゲルに混合して、酸化物を形成するか、又は同業者に公知の他のいずれかの方法によってポリマーマトリックス(又は他のマトリックス材料)に埋め込まれる。ここで使用するように、「埋め込まれる」という語は、発光ナノ結晶がマトリックスの多数成分を形成するポリマー内に封入又はケースに入れられることを示すために使用される。発光ナノ結晶は、さらなる実施形態では、用途−特有の均一分配機能によって分配されるが、マトリックスを通して適切に均一に分配されることに注目すべきである。
【0062】
組成物は、任意で、例えば結合リガンドと共に複数又は一群のナノ構造を含む。組成物は、任意で溶剤を含み、そこにナノ構造(複数)及びリガンドが分散される。前記のように、ナノ構造及びリガンドはマトリックスに組み込まれて、ポリマー層又はナノ複合材料(例えば、リガンドから形成されるシリコーンマトリックス)を形成する。したがって、組成物はまた架橋剤及び/又は開始剤を含む。適切な架橋剤としては、アミノ基(又はリガンド上の他の基)と反応して、共有結合を形成することができる二つ又はそれ以上の官能基(例えば、二、三又は四)を有する有機又はポリマー化合物が挙げられる。そのような官能基としては、限定するものではないが、例えば、シリコーン、炭化水素又は他の分子上のイソシアネート、エポキシド(又はエポキシと呼ばれる)、無水コハク酸又は他の無水物又は酸無水物、及びメチルエステル基が挙げられる。一つの種類の実施形態では、架橋剤はエポキシ架橋剤、例えば、エポキシシクロヘキシル又はエポキシプロピル架橋剤(例えば、各々、表1の化合物A−C又はD−G)である。架橋剤上の反応基はペンダント及び/又は末端であることがある(例えば、各々、表1の化合物B及びD又は化合物A、C、及びE−G)。架橋剤は任意でエポキシシリコーン架橋剤であり、たとえば、直鎖又は分岐であることがある。ある実施形態では、架橋剤は直鎖エポキシシクロヘキシルシリコーン又は直鎖エポキシプロピル(グリシジル)シリコーンである。表1に多数の典型的な架橋剤のリストを示した。適切な架橋剤は市販されている。例えば、化合物H−KはAldrich社から市販され、化合物A−GはGelest社から、例えば、化合物Aは製品番号DMS−EC13として化学式量が約900〜1100で、化合物Bは製品番号ECMS−327として化学式量が約18000で、モルパーセントmが3〜4%で、化合物Dは製品番号EMS−622として化学式量が約8000で、m≒6及びn≒100で、化合物Eは製品番号DMS−E09として市販されている。
【0064】
本発明の量子ドット結合リガンドを使用して調製した量子ドット組成物及びフィルムは、様々な発光素子、量子ドット発光素子及び量子ドットをベースとするバックライト装置に有用である。代表的なデバイスは当業者には周知であり、例えば、米国特許公開第2010/0167011号、米国特許公開第2012/0113672号、米国特許第7750235号及び米国特許第8053972号に見られる。
【0065】
本発明の量子ドット組成物は、バックライトユニット(BLU)のような発光素子を形成するために使用される。典型的なBLUは二つの障壁層の間に挟まれたQDフィルムを備えることがある。本発明のQDフィルムは、単一の量子ドット及び単一の量子ドット結合リガンド、又は複数の量子ドット及び複数の量子ドット結合リガンドを含むことがある。例えば、本発明のQDフィルムは、CdS、CdTe、CdSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、CdTe/ZnS、CdSe/CdS/ZnS、CdSe/ZnS、CdSeZn/CdS/ZnS又はCdSeZn/ZnSのようなカドミウム量子ドット、及びアミン結合基を有する量子ドット結合リガンドを含むことがある。本発明のQDフィルムは、InP又はInP/ZnSのようなInP量子ドット及びカルボキシ結合基を有する量子ドット結合リガンドを含むことがある。
【0066】
ある実施形態では、本発明のQDフィルムは量子ドットを含むカドミウム及びインジウムを両方含む。量子ドットを含むカドミウム及びインジウムの両方が存在するとき、QDフィルムはカドミウム量子ドットを含む第一のフィルム及びインジウム量子ドットを含む第二のフィルムを備えることができる。これらのフィルムは一つの上にもう一つを重ねて、層状フィルムが形成される。ある実施形態では、バリアフィルム又は他の型のフィルムが各カドミウム及びインジウムフィルムの間に重ねられる。別の実施形態では、カドミウム及びインジウム量子ドットを、それらの各々の量子ドット結合リガンドと共に、単一のQDフィルムへと一緒に混合する。
【0067】
単一層又は多層フィルムのどちらかと一緒に混合されたQDフィルムは、システムにおけるカドミウム量を減少させるという利点がある。例えば、カドミウムは、300ppm以下、200、100、75、50又は25ppmに減少させることができる。ある実施形態では、QDフィルムは約100ppm未満のカドミウムを含む。別の実施形態では、QDフィルムは約50ppm未満のカドミウムを含む。
【実施例】
【0068】
V.実施例
例1:ポリ(マレイン酸−alt−1−オクタデセン)の調製
【化9】
【0069】
一般的方法。2,5−フランジオンと1−オクタデセンとのポリマー(PN: PA-18 LV Low Color)は、Chevron Phillips社から得た。FTIR分析は、減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリーを備えたNicolet 7200FTIRを用いて得た。
【0070】
ポリ(マレイン酸−alt−1−オクタデセン)の合成。250mLの三つ口RBFに還流冷却管及び熱電対(反応溶液温度を直接測定するために位置決めしたもの)を具備させて、コポリマー1(25g、fwt350.5の繰返し単位71.3ミリモル)及び水(64.2g、64.2mL、3.56モル)を加えた。熱電対を加熱マントル及び温度調節器に連結して、反応溶液内を所望の温度に保つために用いた。出発酸無水物コポリマーのFTIR分析から、すでに大部分カルボン酸であることがわかった。反応フラスコを素早く真空下に置いて約10トルにしながら撹拌し、次いで窒素でバックフラッシュした。次いで反応溶液を70℃に終夜加熱した。70℃に達してから約30分後にフラスコ中の物質は白色のボールを形成したが、約16時間加熱した後にボールは消失し、溶液は不透明になって、乳液の外観になった。
【0071】
揮発性物質を除去することによって分析用のサンプルを調製し、FTIRによって分析して反応が完了したことが測定された。還流冷却管を止め具に置き換え、揮発性物質をドライアイス/エタノールで冷却した補助用トラップを用いた真空移動によって終夜除去した。乾燥を容易にするために固体を砕き、得られた粉体を20ミリトル未満の減圧下に一晩置いた。
【0072】
alt−無水マレイン酸オクタデセンコポリマー(1)の分析。IR(cm
-1,ダイアモンド):3600〜2300ブロード(カルボン酸のOH), 2921 s, 2851 s (sp3 C-H), 1859 w, 1778 m(対称及び非対称、酸無水物のC=O), 1705 s(カルボン酸のC=O)。
【0073】
alt−マレイン酸オクタデセンコポリマー(2)の分析。IR (cm
-1,ダイアモンド):3600〜2300ブロード(カルボン酸のOH), 2921 s, 2851 s (sp3 C-H), 1705 s(カルボン酸のC=O)。
【0074】
以上、本発明を明確に理解することを目的として例示及び実施例によって多少詳しく説明したが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲の範囲内で一定の変化及び変更を加えることができることは、わかるだろう。さらに、本明細書において提供した各種参考文献は、参考用に個別に取り入れた場合と同程度に、参考用に取り入れられるものとする。本出願と参考文献との間に矛盾存在する場合、本出願が優先されるものとする。