(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御器(12)は、少なくとも1つの第1の制御信号(22)を、少なくとも1つの前記ブレンド弁(24)としての、前記第1のブレーキ回路(26)の少なくとも1つのホイール吐出弁(24)へ出力するために設計されている、請求項1に記載の制御装置(10)。
前記制御器(12)は、少なくとも1つの第1の制御信号(22)および/または少なくとも1つの第2の制御信号(34)を、少なくとも1つの電動モータによって現在最大限に実行可能な可能・発電機ブレーキトルク(Mgen0)に関して提供される少なくとも1つの情報(46)を追加的に考慮したうえで出力するために追加的に設計されている、請求項1または2に記載の制御装置(10)。
前記第1のブレーキ回路(26)の少なくとも1つのホイール吐出弁(24)は少なくとも1つの前記ブレンド弁(24)として前記ブレーキ操作部材(18)の操作中に少なくとも一時的に少なくとも部分開放の状態へと制御される、請求項7に記載の方法。
少なくとも1つの前記ブレンド弁(24)および/または前記圧力放出弁(36)は、少なくとも1つの電動モータによって現在最大限に実行可能な可能・発電機ブレーキトルク(Mgen0)に関して提供される少なくとも1つの情報(46)を追加的に考慮したうえで制御される、請求項7または8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、制御装置およびこれを装備したブレーキシステムの第1の実施形態の模式図を示している。
【0017】
図1に模式的に示す制御装置10は、少なくとも第1の動作モードのときに少なくとも1つのブレーキ操作部材センサ14から提供される少なくとも1つのセンサ信号16を考慮するために設計された制御器12を含んでいる。少なくとも1つのブレーキ操作部材センサ14は、たとえばペダルストロークセンサ、距離差センサ、および/またはロッドストロークセンサのようなブレーキ操作ストロークセンサ、運転者ブレーキ力センサ、および/または運転者ブレーキ圧センサであってよい。しかしながらブレーキ操作部材センサ14の構成可能性は、ここに挙げた型式のセンサだけに限定されるものではない。このように、提供される少なくとも1つのセンサ信号16は、運転者ブレーキ力、運転者ブレーキ圧、および/またはブレーキ操作部材18の少なくとも1つのコンポーネントの調節距離など、制御装置10を備えるブレーキシステムのブレーキ操作部材18の運転者による操作の操作強度に関わる情報を含んでいる。ブレーキ操作部材18は、たとえばブレーキペダル18であってよい。
【0018】
制御器12は、(少なくとも第1の動作モードのときに)少なくとも1つのセンサ信号16を考慮したうえで、液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ20に接続されたブレーキ操作部材18の操作中に少なくとも一時的に、少なくとも1つの第1の制御信号22を出力するために設計されている。少なくとも1つの第1の制御信号22は、第1のブレーキ回路26の第1の切換弁28を介してマスタブレーキシリンダ20に接続された、液圧ブレーキシステムの第1のブレーキ回路26の少なくとも1つのブレンド弁24に出力可能である。少なくとも1つの第1の制御信号22により、少なくとも1つのブレンド弁24を少なくとも部分開放の状態へと制御可能であり、それにより、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの備蓄室30へとブレーキ液を移送可能である。
【0019】
特にこのようにして、ブレーキ操作部材18の操作に基づいてマスタブレーキシリンダ20から第1のブレーキ回路26へ押し出されるブレーキ液の容積に(ほぼ)相当するブレーキ液容積を、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの備蓄室30へ移送可能であってよい。このように、少なくとも1つの第1の制御信号22が少なくとも1つのブレンド弁24へ出力されることで、ブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32で生じている少なくとも1つの第1のブレーキ圧を(所定の比較的低い圧力に合わせて)制限可能/限定可能であることを保証することができる。このようなケースでは通常、少なくとも、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32における第1のブレーキ圧を、少なくとも1つの備蓄室30の反応圧に合わせて制限可能である。
【0020】
少なくとも1つの備蓄室30は、たとえば第1のブレーキ回路26の低圧備蓄室であってよい。このように、少なくとも1つの第1の制御信号22の出力によって、運転者によるブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず、少なくとも、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32で生じている第1のブレーキ圧が、低圧備蓄室の反応圧に合わせて制限されたまま保たれることを保証することができる。
【0021】
このように、制御装置10/液圧ブレーキシステムを装備した車両の運転者は、マスタブレーキシリンダ20に接続されたブレーキ操作部材18の操作によって、少なくとも第1のブレーキ回路26へいつでも直接的にブレーキ介入するという選択肢を有している。それと同時に、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32での望ましくない圧力生成に対処するために、ブレーキ液/容積を第1のブレーキ回路26から少なくとも1つの備蓄室30へ放出することができる。このように制御装置10/液圧ブレーキシステムは、バイワイヤブレーキ回路として第1のブレーキ回路26を設計することなく、少なくとも、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32で生じている第1のブレーキ圧の選択的な低減可能性という利点を提供する。したがって、少なくとも第1のブレーキ回路の選択的な低減可能性という利点を、そのために第1のブレーキ回路26についてのバイワイヤブレーキ回路の欠点/問題を甘受することなく、活用することができる。
【0022】
第2のブレーキ回路40と、両方のブレーキ回路26および38の両方の圧力室の間の(図示しない)フロートピストンを備えるマスタブレーキシリンダ20とをブレーキシステムが装備している場合、このようにして、第2のブレーキ回路38の少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ42で生じている第2のブレーキ圧を、ブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず、少なくとも1つの備蓄室30の反応圧に合わせて追加的に制限可能である。第1のブレーキ圧と第2のブレーキ圧の共通の制限可能性/低減可能性は、フロートピストンを備えるマスタブレーキシリンダ20、開いた第1の切換弁28、およびマスタブレーキシリンダ20への第2のブレーキ回路38の「開いた」液圧接続のときに自動的に保証される。
【0023】
さらに(少なくとも第1の動作モードへと制御された)制御器12により、少なくとも、少なくとも1つの制御信号16を考慮したうえで、第2のブレーキ回路38の第2の切換弁40を介してマスタブレーキシリンダ20に接続されていて少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ42を有する、液圧ブレーキシステムの第2のブレーキ回路38の圧力放出弁36へ、少なくとも1つの第2の制御信号34を出力可能である。少なくとも1つの第2の制御信号34によって、圧力放出弁36を少なくとも部分開放の状態へと制御可能であり、それにより、圧力放出弁36に出力側で接続されているブレーキ液リザーバ44の中へブレーキ液を移送可能である。このようにして、少なくとも、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32で生じている第1のブレーキ圧を追加的に低減可能である。特に、圧力放出弁が少なくとも部分的に開くことで、少なくとも、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32で生じている第1のブレーキ圧を、少なくとも1つの備蓄室30の反応圧を下回るように低減することができる。このようにして、少なくとも、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32における(ほぼ)大気圧の第1のブレーキ圧を、ブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず実現可能であるのが好ましい。
【0024】
さらに、圧力放出弁36が少なくとも部分的に開くことで、第2のブレーキ回路38の少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ42で生じている第2のブレーキ圧を、少なくとも1つの備蓄室30の反応圧を下回るように低減可能である。このように、圧力放出弁36が少なくとも部分的に開くことで(切換弁28および40が開いているとき)、両方のブレーキ回路26および38で同時にブレーキ液リザーバ44の圧力/大気圧のブレーキ圧が(ほぼ)生じることを保証可能である。このことは、切換弁28および40が開いているときのマスタブレーキシリンダレベルでの圧力制御と言い換えることもできる。このように、両方のブレーキ回路26および38のホイールブレーキシリンダ32および42によって付属のホイールに対して及ぼすことが可能な全体・摩擦ブレーキトルクを、制御装置10による圧力放出弁36の制御によって、ブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず(ほぼ)ゼロまで低減可能である。
【0025】
ブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず、制御信号22および34によって防止可能な少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32および少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ42のブレーキ作用は、少なくとも1つの(図示しない)電動モータを発電機として利用するために活用することができる。このとき、しばしば車両の電気駆動モータとしても利用可能である少なくとも1つの電動モータは、車両を(追加的に)減速させるための発電機ブレーキトルクが惹起されるように作動する。このようにして得られる電気エネルギーを、車両バッテリへと送り返すことができる。少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32および少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ42のブレーキ作用が阻止されていることに基づき、少なくとも1つの電動モータの発電機としての利用によって車両バッテリを充電することができ、充電プロセス中に、運転者によるブレーキ操作部材18の操作によって設定可能な目標車両減速を下回ってしまうことがない。むしろ、少なくとも1つの電動モータは、運転者により設定される目標車両減速が厳密に守られるように制御することができる。このように本発明は、運転者により設定される目標車両減速を確実に遵守しながら、車両バッテリの比較的迅速な充電を可能にする。それにより制御装置10は、これを装備した車両の低減された燃料消費量と、少ない有害物質エミッションとを確実なブレーキ快適性で実現する。
【0026】
圧力放出弁36は、連続的に調節可能/連続的に制御可能な弁であるのが好ましい。このようなケースでは、圧力放出弁36を連続的にコントロール可能な弁とも呼ぶこともできる。ただし付言しておくと、圧力放出弁20の構成可能性は特定の弁型式だけに限定されるものではない。
【0027】
ブレーキ液リザーバ44とは、大気圧が内部で生じている容積部、および/または少なくとも1つの交換穴を介して、たとえばオリフィス穴を介して、マスタブレーキシリンダ20と接続された容積部であると理解することができる。しかしながらブレーキ液リザーバ44は、センタバルブを介してマスタブレーキシリンダ20と液圧接続されていてもよい。
【0028】
第1の切換弁28とは、特に、切換弁28と並列に延びるバイパス配管28bに逆止め弁28aを有している弁であると理解される。逆止め弁28aは、マスタブレーキシリンダ20における圧力によって橋渡し可能であるようにアライメントされているのが好ましい。第2の切換弁40と並列にも、マスタブレーキシリンダ20における圧力によって橋渡し可能である逆止め弁40aを備えるバイパス配管40bが延びている。このように、制御装置10/液圧ブレーキシステムを装備している車両の運転者は、両方のブレーキ回路26および38へ直接的にブレーキ介入するという選択肢を有している。それにより、切換弁28および40が閉じているときでさえ、運転者ブレーキ力のみによって惹起されるブレーキ圧生成を、いずれのホイールブレーキシリンダ32および42でも依然として確実に実行可能である。
【0029】
制御器12は、少なくとも1つの第1の制御信号22および/または少なくとも1つの第2の制御信号34を、少なくとも1つの電動モータによって現在最大限に実行可能な可能・発電機ブレーキトルクに関して提供される少なくとも1つの情報46を追加的に考慮したうえで出力するために追加的に設計されているのが好ましい。このように制御装置10は、少なくとも1つの電動モータが、たとえば車両バッテリの完全な充電に基づいて、あるいは低すぎる車両速度に基づいて、特定の状況では利用可能でないことも考慮することができる。
【0030】
制御器12は、少なくとも1つの第1の制御信号22を、少なくとも1つのブレンド弁24としての、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つのホイール吐出弁24へ出力するために設計されているのが好ましい。このように、少なくとも1つの備蓄室30へブレーキ液を移送するために、通常はすでにブレーキ回路26に存在している弁24を利用することができる。したがって第1のブレーキ回路26に、少なくとも1つのブレンド弁24としての追加の弁を装備しなくてよい。ただし付言しておくと、少なくとも1つのブレンド弁24として、第1のブレーキ回路26の高圧切換弁48を利用することもできる。このケースでは、高圧切換弁48と少なくとも1つの備蓄室30との間への逆止め弁50の配置を省略するのが好ましい。これ以外の弁型式も、少なくとも1つのブレンド弁24として利用することができる。
【0031】
好ましい発展例では、制御器12は第2の動作モードのとき、ブレーキ操作部材18の操作にもかかわらず、少なくとも、第1のブレーキ回路26の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ32における第1のブレーキ圧の上昇を制限または防止するために、少なくとも1つのブレンド弁24を閉じた状態にするとともに、圧力放出弁36を少なくとも部分開放された状態へと制御して、圧力放出弁36に出力側で接続されたブレーキ液リザーバ44へブレーキ液を移送可能であるようにするために追加的に設計されている。
【0032】
制御装置10は、車両の数多くの異なる液圧ブレーキシステムで適用可能である。したがって、
図1のブレーキシステムに関する以下の説明は、一例としてのみ解釈されるべきものである:
【0033】
図1に示す各々のブレーキ回路26および38は、2つのホイールブレーキシリンダ32および42を有している。しかしながら付言しておくと、制御装置10の適用可能性は、ブレーキ回路26および38に存在する特定の数のホイールブレーキシリンダ32および42に限定されるものではない。ホイールブレーキシリンダ32および42の各々に、それぞれ1つのホイール取込弁52とそれぞれ1つのホイール吐出弁24および54とが付属している。ホイール取込弁52の各々が、それぞれ1つのバイパス配管56およびそこに配置された逆止め弁58を有している。ホイール取込弁52とホイール吐出弁24および54は、それぞれ二股に分かれた配管60を介して、付属のホイールブレーキシリンダ32および42と接続されている。
【0034】
各々の切換弁28および40は、それぞれ1つの供給配管62を介して、マスタブレーキシリンダ20に接続されている。第1のブレーキ回路26の高圧切換弁48も、配管64を介して、第1のブレーキ回路26の供給配管62に接続されている。各々の切換弁28および40からは、それぞれ1つの分岐する配管66が、それぞれのブレーキ回路26および38のホイール取込弁52へと通じている。二股に分かれた別の配管68を介して、第1のブレーキ回路26のホイール吐出弁24は第1のポンプ70の吸込側に接続されており、少なくとも1つの備蓄室30と逆止め弁50は、ホイール吐出弁24と第1のポンプ70との間に配置されているのが好ましい。第2のブレーキ回路38のホイール吐出弁54も、分岐する別の配管72を介して、第2のポンプ74の吸込側に接続されている。
【0035】
両方のポンプ70および74は、モータ78の共通のシャフト76に位置することができる。両方のポンプ70および74は、たとえばシングルピストンポンプとして構成されていてよい。このように、
図1の液圧ブレーキシステムは改良型の標準モジュレーションシステムと呼ぶことができ、特に、2ピストンESPシステムと呼ぶことができる。しかしながらブレーキシステムは、これ以外に施工されたモジュレーションシステムを有するように、たとえば複数のピストンを備えるポンプ、非対称のポンプ、および/または歯車ポンプを有するように構成されていてもよい。ポンプ70および74の各々はその送出側で、配管80を介して付属のブレーキ回路26および38の配管66に接続されている。
【0036】
第2のブレーキ回路では、第2のポンプ74の送出側が圧力放出弁36と接続される別の配管79が、配管80に連通している。圧力放出弁36は、吸込配管81を介して、ブレーキ液リザーバ44と接続されている。さらに別の配管83が、圧力放出弁36および第2のポンプ74と並列に、吸込配管81から配管72まで延びている。
【0037】
両方のブレーキ回路26および38の各々は、圧力センサ84を装備していてよい。たとえば第1のブレーキ回路26は、フィード圧力センサ84を有することができる。しかしながら液圧ブレーキシステムの構成可能性は、特定の圧力センサ84の装備に限定されるものではない。
【0038】
図1のブレーキシステムは、ブレーキペダルとして構成されたブレーキ操作部材18と、マスタブレーキシリンダ20との間に配置されたブレーキ倍力装置82を有している。ブレーキ倍力装置82は、たとえば電気機械式のブレーキ倍力装置82であってよい。それにより
図1のブレーキシステムは、真空を使わないブレーキ力増幅の設計を可能にする。しかしながらブレーキ倍力装置82の構成可能性は、このような型式だけに限定されるものではない。同様に、液圧ブレーキシステムへのブレーキ倍力装置82の装備も任意選択である。
【0039】
このように
図1のブレーキシステムは、電気機械式のブレーキ倍力装置82と、改変されたESPシステムとからなる複合型である。これはX型ブレーキ回路分割を有する車両に特別に適している。このことを言い換えて、この液圧ブレーキシステムはX型ブレーキ回路分割について好ましく設計されていると言うこともできる。X型ブレーキ回路分割とは、1つのブレーキ回路26および38に付属するホイールが、車両の対角線上に位置することであると理解することができる。X型ブレーキ回路分割を有する従来の他の液圧ブレーキシステムと比べたとき、
図1のブレーキシステムは、回生式のブレーキ中に、すべてのホイールブレーキシリンダ32および42で生じるブレーキ圧を(ほぼ)ゼロに合わせて調整可能であるという利点を有している。したがって、ホイールブレーキシリンダ32および42における望ましくない残留液圧を、回生式のブレーキ中に甘受しなくてよい。
【0040】
さらに電気機械式のブレーキ倍力装置82は、ブレンドプロセスに合わせて適合化可能である、能動的に変更可能な倍力特性を具体化する。ブレーキ操作部材18の操作中に、電気機械式のブレーキ倍力装置82によって提供される補助力を、第1のブレーキ圧および/または第2のブレーキ圧に合わせて適合化できるという利点がある。たとえば少なくとも1つの備蓄室30へのブレーキ液の移送の後/途中に補助力を低減して、ブレーキ液移送の影響を運転者が力として感じないようにすることができる。それに応じて補助力の増大によって、少なくとも1つの備蓄室30からのブレーキ液の移送にもかかわらず、標準的なブレーキ操作感覚(ペダル感覚)を具体化することもできる。このように
図1のブレーキシステムは、少なくとも1つの電動モータの時間的に変化する発電機ブレーキトルクのブレンド中でさえ、好ましい(標準的な)ブレーキ操作感覚(ペダル感覚)を運転者に可能にする。
【0041】
図1のブレーキシステムは、力ブレンドと容積ブレンドを同時に保証する。具体化可能な力ブレンドに基づき、純粋に液圧式に、液圧式と回生式に、または純粋に回生式に、制動を選択的に行うことができる。このように、少なくとも1つの発電機として作動可能な電動モータの現在利用可能な発電機ブレーキトルクが、運転者ブレーキ希望を完全に実行するために十分ではない状況のときでも、運転者ブレーキ希望を高い信頼度で実行することができる。それと同時に実行可能な容積ブレンドに基づき、純粋に回生式の制動、回生式と液圧式の制動、または純粋に液圧式の制動の間での切換にもかかわらず、運転者がブレーキ操作部材18の操作中に変化する操作特性を感じないことを保証可能である。
【0042】
図2は、制御装置およびこれを装備するブレーキシステムの第2の実施形態の模式図を示している。
【0043】
図2に模式的に示すブレーキシステムは、上に説明した実施形態とは異なり、真空ブレーキ倍力装置82をブレーキ倍力装置82として有している。それ以外の点では、
図2のブレーキシステムは、すでに上で説明したすべてのブレーキシステムコンポーネントを有している。
【0044】
図2のブレーキシステムも、上に説明した好ましい容積ブレンドを保証する。それに対して、電気機械式のブレーキ倍力装置82によって実行可能な力ブレンド機能は、真空ブレーキ倍力装置82によっては果たすことができない。しかしこのことは、回生式のブレーキ作用が真空ブレーキ倍力装置82のジャンプイン領域だけに任意選択で限定されることによって補うことができる。真空ブレーキ倍力装置82においても、通常、ジャンプイン領域の範囲内ではブレーキ操作部材18とマスタブレーキシリンダ20との間の直接的な連結は成立しない。このように運転者は、ジャンプイン領域の範囲内でのブレンド中に、純粋に液圧式、液圧式と回生式、純粋に回生式のいずれで制動がなされるのかを感じることがない。したがって、このような種類のブレーキ倍力装置においても、運転者にとっての良好なブレーキ操作感覚(ペダル感覚)が保証される。
【0045】
上に説明した制御装置10/ブレーキシステムは、特に、ハイブリッド車両や電動車両で好ましく適用することができる。しかしながら制御装置10/ブレーキシステムの適用可能性は、特定の車両型式だけに限定されるものではない。
【0046】
再度断っておくと、上で説明したブレーキシステムは、X型ブレーキ回路分割にもII型ブレーキ回路分割にも好適である。このように、異なる設計のブレーキシステムについて異なる制御装置10を開発することは必要ない。したがってブレーキ回路分割に関わりなく、制御装置10を同じ生産ラインで製作することができ、このことは製品バリエーションを削減する。たとえばブレーキ回路分割に関わりなく、それぞれただ1つの液圧ユニット、ECU、およびソフトウェアバリエーションしか必要ない。このように、いっそう多い個数を制御装置10によって使用可能なので、そのコストも低下する。さらに、このようにしてX形ブレーキ回路分割を有する車両について、ブレンド中における両方のブレーキ回路での並行した圧力生成という利点も活用することができる。
【0047】
上に説明したブレーキシステムにおいても、能動的/自律的な圧力生成、すなわち運転者によるブレーキ操作部材18の操作なしでのブレーキ要求を、従来式のブレーキシステムのようにポンプ70および74、高圧切換弁48、閉じた圧力放出弁36、閉じた切換弁28および40、および閉じたホイール吐出弁24および54を介して惹起することができる。さらに
図1のブレーキシステムでは、電気機械式のブレーキ倍力装置82も能動的/自律的な圧力生成のために利用することができる。特に
図1のブレーキシステムでは、能動的/自律的な圧力生成のために利用されるアクチュエータを、希望される圧力生成ダイナミクス、最適化された騒音発生、および/または好ましいブレーキ操作部材特性を考慮したうえで選択することができる。
【0048】
モジュレーションシステムがダウンしたとき、上で説明したブレーキシステムは、依然として強化されたブレーキ機能をすべてのホイールブレーキシリンダ32および42で有している。したがって、こうした状況のときの機能低下の恐れがない。
図1のブレーキシステムの電気機械式のブレーキ倍力装置82がダウンしたとき、運転者は、ブレーキ操作にあたって、ポンプ70および74によって依然として補助を受けることができる。
【0049】
好ましい発展例では、上に説明した各々の制御装置10は、これを装備するブレーキシステムの他のコンポーネントを制御するために構成されていてもよい。好ましい発展例では、制御器12はたとえば少なくとも1つの電動モータによって現在最大限に実行可能な可能・発電機ブレーキトルクに関して提供される情報46を少なくとも考慮したうえで、少なくとも1つのポンプ70および74を制御して、可能・発電機ブレーキトルクが(遠くない時間内に)、少なくとも1つの電動モータによって現在実行されている発電機ブレーキトルクよりも低くなる場合に、少なくとも1つの電動モータの利用可能性の消滅を補償可能であるようにするために追加的に設計されている。このケースでは制御装置10は、ブレーキ回路26および38のうち少なくとも一方にブレーキ液の容積を注入するための送出液圧系も具体化する。
【0050】
上に説明した各実施形態に基づく制御装置10は、たとえばブレーキシステム自動制御装置または中央の車両自動制御装置に統合されていてよい。ただし、このような制御装置10の統合は任意選択である。
【0051】
制御装置10ないし制御器12は、以下に説明する各方法ステップを実行するために設計されていてもよい。
【0052】
図3aから3eは、車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法の第1の実施形態を説明するための座標系を示している。
【0053】
図3aから3eの座標系を用いて表されている方法について、一例としてX型ブレーキ回路分割を有する
図1のブレーキシステムの作動について説明する。すなわち各々のブレーキ回路は、付属のフロントアクスル・ホイール取込弁および付属のフロントアクスル・ホイール吐出弁を備えるフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダと、リヤアクスル・ホイール取込弁およびリヤアクスル・ホイール吐出弁が付属するリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダとを有している。しかしながら付言しておくと、この方法の実施可能性は、このような種類のブレーキシステムの使用に限定されるものではない。
【0054】
図3aから3dの座標系では、横軸はそれぞれ時間tである。
図3aの座標系の縦軸は、ブレーキトルクMを表している。
図3bの座標系の縦軸は、運転者によりブレーキ操作部材に対して及ぼされる運転者ブレーキ力を電気機械式のブレーキ倍力装置が増強をする倍力係数fに相当している。
図3cの座標系の縦軸により、第1のブレーキ回路の少なくとも1つの備蓄室で中間保存される容積Vが表されている。
図3dの座標系の縦軸は、ブレーキシステムのさまざまなコンポーネントが制御される電流強さIを表している。
図3eの座標系の横軸は、(フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダによって)フロントアクスルに対して及ぼされるフロントアクスル・ブレーキトルクMFAを表しており、それに対して
図3eの座標系の縦軸は、(リヤアクスル・ホイールブレーキシリンダによって)リヤアクスルに対して及ぼされるリヤアクスル・ブレーキトルクMRAに相当している。
【0055】
本方法の実施にあたっては、第1のブレーキ回路の第1の切換弁を介して液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに接続された、液圧ブレーキシステムの第1のブレーキ回路の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで生じていている少なくとも1つの第1のブレーキ圧が制限される。このことは、第1のブレーキ回路の少なくとも1つの備蓄室へブレーキ液を移送するために、マスタブレーキシリンダに接続されているブレーキ操作部材の操作中に、第1のブレーキ回路の少なくとも1つのブレンド弁が少なくとも部分開放の状態へ少なくとも一時的に制御されることによって行われる。
【0056】
前の段落で説明したプロセスは、たとえば時間t0とt1の間に実行される。時間t0の前に、液圧ブレーキシステムを装備している車両の運転者はブレーキ操作部材を操作していない。時点t0から運転者はブレーキ操作部材を操作し、そのようにして、マスタブレーキシリンダから少なくとも第1のブレーキ回路へとブレーキ液を移送する。
【0057】
たとえば時間t0とt1の間にブレーキ液を移送するために、第1のブレーキ回路の少なくとも1つのホイール吐出弁が、少なくとも1つのブレンド弁として、少なくとも一時的に少なくとも部分開放の状態へと制御される。この方法ステップのためには、第1のブレーキ回路のホイール吐出弁のうちの1つを使用するだけで十分である。図示した実施形態では、無通電のときに閉じる弁として構成されているリヤアクスル・ホイール吐出弁は、リヤアクスル・ホイール吐出弁・制御信号IAvRaによって時間t0とt1の間に開放され、それに対して、同じく無通電のときに閉じる弁として構成されているフロントアクスル・ホイール吐出弁は、ゼロに等しいフロントアクスル・ホイール吐出弁・制御信号IAvFaに基づいて閉じたままに保たれる。無通電のときに開く弁として構成されているホイール取込弁(リヤアクスル・ホイール取込弁およびフロントアクスル・ホイール取込弁)は、ゼロに等しいリヤアクスル・ホイール取込弁・制御信号IEvRaおよびフロントアクスル・ホイール取込弁・制御信号IEvFaに基づき、それぞれ開いたままに保たれる。無通電のときに閉じる弁として構成されている圧力放出弁は、ゼロに等しい圧力放出弁・制御信号Idaによって、時間t0とt1の間閉じたままに保たれる。ポンプの動作は時間t0とt1の間には必要ないので、ポンプ信号Ipもゼロに等しくてよい。
【0058】
上に説明した各弁への通電は、すべてのホイールブレーキシリンダで、たとえば低圧備蓄室である少なくとも1つの備蓄室の反応圧に等しいブレーキ圧を惹起する。それにより、時間t0とt1の間に運転者が上昇していく(目標)全体ブレーキトルクMgesを要求しているにもかかわらず、各ホイールブレーキシリンダで生じているブレーキ圧は最低限にとどまる。ホイールブレーキシリンダの制限されたブレーキ作用を、少なくとも1つの電動モータを発電機として使用するために利用することができる。このように時間t0とt1の間では、最大限実行可能な可能・発電機・ブレーキトルクMgen0が、運転者によって要求される全体ブレーキトルクMgesよりも大きい限りにおいて、運転者により要求される車両減速を上回ることなしに、比較的高い発電機ブレーキトルクMgenを実行可能である。このように、運転者により要求される車両減速は、時間t0とt1の間、高いパーセンテージで回生式に実行することができる。
【0059】
時間t0とt1の間にマスタブレーキシリンダから第1のブレーキ回路へ圧送されるブレーキ液容積は少なくとも1つの備蓄室へと放出され、それにより、少なくとも1つの備蓄室で中間保存される容積Vは、時間t0とt1の間に増加していく。マスタブレーキシリンダ圧力センサによって、中間保存されている容積Vに基づいて電気機械式のブレーキ倍力装置で不足している圧力を判定することができる。時間t0とt1の間での倍力係数fの相応の低減は、中間保存される容積Vの増加にもかかわらず、ブレーキ操作部材に対してマスタブレーキシリンダによって及ぼされる復帰力と、運転者ブレーキ力と電気機械式のブレーキ倍力装置の補助力との合計との間で力平衡を生じるように作用する。
【0060】
ただし、容積Vを中間保存するための少なくとも1つの備蓄室として少なくとも1つの低圧備蓄室を利用することで、ゼロに等しくない低い残留液圧(たとえば備蓄室の反応圧に等しい)が、時間t0とt5の間ですべてのホイールブレーキシリンダに残る。残留圧力の大きさは、少なくとも1つの低圧備蓄室の復帰ばねのばね剛性によって根拠づけられる。残留圧力は、リヤアクスル・ホイールブレーキシリンダによって惹起されるリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydと、フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダによって惹起されるフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydとについて望ましくない残留ブレーキトルクを惹起し、そのために、希望される純粋に回生式の制動を妨げる。
【0061】
時間t1で、運転者により要求される(目標)全体ブレーキトルクMgesが、最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0を超える(本方法の実施にあたって、少なくとも1つのブレンド弁および/または圧力放出弁は、少なくとも1つの電動モータによって現在最大限に実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0に関して提供される少なくとも1つの情報を追加的に考慮したうえで制御されるのが好ましい)。したがって時間t1以後、少なくとも1つの電動モータに対して最大限可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0が引き続き要求されている間に、追加の液圧ブレーキ圧が、少なくとも1つのフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダで生成される。そのために、フロントアクスル・ホイール吐出弁が閉じたままに保たれる(ゼロに等しいIAvFa)。リヤアクスル・ホイール取込弁は、ゼロに等しくないリヤアクスル・ホイール取込弁制御信号IEvRaによって(デルタp制御)、少なくとも一時的に閉じられる。運転者によりブレーキ希望が高まったときに追加的に移送される容積が、それによってフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダへと移される。そして増大したフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydが生じ、これが特に発電機ブレーキトルクMgenおよびリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydとともに、運転者により要求される(目標)全体ブレーキトルクMgesをもたらす。
【0062】
中間保存された容積Vは、時間t1以後は一定に保たれる。それにより、倍力係数fのそれ以上の低減は時間t1以降には必要ない。
【0063】
時間t2とt3の間に運転者ブレーキ希望は一定に保たれる。時間t3以後、運転者はブレーキ操作部材を緩め、そのようにして要求される(目標)全体ブレーキトルクMgesを引き下げる。したがって時間t3以降、フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダから容積が再び取り出され、それは、フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydを低減した(目標)全体ブレーキトルクMgesに合わせて適合化するためであり、それに対して発電機ブレーキトルクMgenは依然として一定のままに保たれる。リヤアクスル・ホイール取込弁は、ゼロに等しいリヤアクスル・ホイール取込弁制御信号IEvRaによって、再び開くことができる。
【0064】
時点t4で運転者ブレーキ希望が最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0よりも再び低下する。したがって時間t4以降、再び高いパーセンテージで回生式に制動をすることができる。ただし、引き続きホイールブレーキシリンダの残留圧力が、フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydおよびリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydにとって望ましくない残留値(ゼロに等しくない)を惹起し、そのために、希望される純粋に回生式の制動を妨げる。
【0065】
したがって、少なくとも、第1のブレーキ回路の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで生じている第1のブレーキ圧を(少なくとも1つの備蓄室の反応圧を下回るように)追加的に低減するために、時間t5以後、液圧ブレーキシステムの第2のブレーキ回路の圧力放出弁が、少なくとも部分開放の状態へと制御される(ゼロに等しくないIda)。このようにして、圧力放出弁に出力側で接続されているブレーキ液リザーバへブレーキ液を移送することができる。したがって時間t5以降、ブレーキ圧はすべてのホイールブレーキシリンダで、少なくとも1つの備蓄室の反応圧を下回るように低下する。特に、通常はこのようにして時間t5以後にすべてのホイールブレーキシリンダで(ほぼ)大気圧の圧力を実現可能である。
【0066】
すべてのホイールブレーキシリンダにおけるブレーキ圧が少なくとも1つの備蓄室の反応圧を下回るように低下することで、時間t5以降、(ほぼ)ゼロに等しいフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydおよびリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydを保証することができる。このように時間t5以後、純粋に回生式に制動を行うことができる。このことは高い回生効率を保証し、それに伴って、比較的迅速な車両バッテリの充電を保証するという利点がある。
【0067】
ここで説明している方法は、向上する回生効率に追加して、時間t5以後に(一時的に)開く圧力放出弁を介してブレーキ液リザーバへ移送される容積が比較的少ないという利点も提供する。したがって、第2のブレーキ回路の1つのポンプのみによって、後の時点で容易に吸込配管を介してこの容積を送り返すことができる。実行されるべき少ないポンプ回転数に基づいて騒音がほとんど/まったく発生せず、十分なポンプに関する低い要求事項は耐用寿命の延長をもたらす。
【0068】
時点t5は、時間t5とt6の間に一定の運転者ブレーキ希望が存在するように選択することができる。しかしながら付言しておくと、好ましい方法ステップの実施可能性は、このような種類のブレーキ操作状況だけに限定されるものではない。任意選択として、時間t5以降、リヤアクスル・ホイール吐出弁も、ゼロに等しいリヤアクスル・ホイール吐出弁・制御信号IAvRaによって閉じることができる。
【0069】
時間t6以後、運転者は要求される(目標)全体ブレーキトルクMgesを引き上げる。時間t7のとき、最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0を(目標)全体ブレーキトルクMgesが上回る。時間t8とt9の間には、一定の高い運転者ブレーキ希望が存在する。それにより時間t6とt9の間で、すでに上で説明した方法ステップをあらためて実行することができる。
【0070】
好ましい方法は、
図3aから3eの例では、少なくとも1つの電動モータがフロントアクスルに対してのみ作用するブレーキシステムを用いて実施される。このように発電機ブレーキトルクMgenは、フロントアクスル・ブレーキトルクMFAにのみ寄与する。さらに、ここで説明している方法では、(フロントアクスル・ブレーキトルクMFAに取り入れられる)フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydは、(リヤアクスル・ブレーキトルクを形成する)リヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydよりも、明らかに高い値をとる。したがって、
図3eの座標系を参照すると明らかなように、時間t1からt9の間のブレーキ力配分は著しくフロントアクスル負荷的である。
【0071】
図4aから4eは、車両の液圧ブレーキシステムを作動させる方法の第2の実施形態を説明するための座標系を示している。
【0072】
ここで説明する方法も、X型ブレーキ回路分割を有する
図1のブレーキシステムで実施することができる。
図4a,4b,4cおよび4eの座標系の横軸と縦軸に関しては、
図3a,3b,3cおよび3eを援用する。
図4cの座標系は横軸として時間tを有しており、それに対して縦軸は、ブレーキ液リザーバで中間保管される容積Vrを表している。
【0073】
図4aから4eによって模式的に図示している方法は、上に説明した実施形態の発展例である。時間t10からt19で行われる各方法ステップは、たとえば上に説明した実施形態の各方法ステップの前または後に実行することができる。時間t10からt19の間に実行される方法ステップのより良い理解のために、運転者により要求される(目標)全体ブレーキトルクMgesは、時間t0からt9で実行される方法ステップに対応している。
【0074】
図4aから4eの方法の実施にあたっては、第1のブレーキ回路の第1のホイールブレーキシリンダにおける少なくとも第1のブレーキ圧の上昇が、時間t10とt11の間でのブレーキ操作部材の操作にもかかわらず阻止または制限され、それは、少なくとも1つのブレンド弁が閉じた位置で保たれている間に、圧力放出弁が少なくとも部分開放の状態へと制御されて、圧力放出弁に出力側で接続されているブレーキ液リザーバへブレーキ液を移送可能となることによる。そのために時間t10とt11の間に、圧力放出弁がゼロに等しくない圧力放出弁・制御信号Idaによって少なくとも部分開放の状態へと制御される。それに対してホイール取込弁とホイール吐出弁は、時間t10とt11の間に無通電のままに保たれる。
【0075】
図4aから4eの方法では、時間t10とt11の間に純粋に回生式に制動を行うことができる。運転者により移送される容積は、中間保存された容積Vrとして、吸込配管を介してブレーキ液リザーバへとそっくり放出することができる。このようにして、時間t10とt11の間でホイールブレーキシリンダに残留ブレーキ圧がほとんど存在しないこと/存在しないことを具体化可能である。それと同時に、マスタブレーキシリンダ・圧力センサによって、中間保存されている容積Vrに基づいて電気機械式のブレーキ倍力装置で不足する圧力の大きさを判定することができる。それにもかかわらず、電気機械式のブレーキ倍力装置の倍力係数fの相応の低下が、ブレーキ操作部材での力平衡をもたらすように作用する。このように運転者は、ブレーキ液リザーバへのブレーキ液の移送に気づくことがない。
【0076】
時間t11からt14の間に、運転者により要求される(目標)全体ブレーキトルクMgesが、最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0を上回る。したがって時間t11からt14の間は、(目標)全体ブレーキトルクMgesと最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0との差異に相当する追加の液圧ブレーキ作用が望まれる。そのために圧力放出弁が、ゼロに等しい圧力放出弁・制御信号Idaによって閉じられる。ホイール取込弁とホイール吐出弁は無通電のままに保たれる。
【0077】
運転者により時間t11とt12の間で追加的に移送される容積は、すべてのホイールブレーキシリンダに移される。ただし、フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダとリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダは係数が異なっているので、すべてのホイールブレーキシリンダにおける等しいブレーキ圧にもかかわらず、リヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydよりも大きいフロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydを惹起することができる。フロントアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMFAhydは、たとえばリヤアクスル・ホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydよりも係数2だけ大きくなっていてよい。このように時間t11とt14の間では、ブレーキ力配分が著しくフロントアクスル負荷的である。それにより、時間t11よりも前の純粋に回生式の制動から、時間t11とt14の間の回生式および液圧式の制動への切換時に、ブレーキ力配分の変化が小さくなる。このことは、特に
図4eの座標系を用いて図示されている。時間t11からt14の間、倍力係数fのそれ以上の低減は必要ない。
【0078】
時間t13以後、運転者はブレーキペダルを少し緩め、(目標)全体ブレーキトルクMgesを引き下げる。時間t13とt14の間、液圧ブレーキ作用を低下した運転者ブレーキ希望に合わせて適合化することができ、それは、ホイールブレーキシリンダから容積が単に取り出されることによる。時間t14以後に運転者ブレーキ希望が最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクMgen0を下回ると、ゼロに等しくない圧力放出弁・制御信号Idaによって圧力放出弁を再び開くことができる。ブレーキ液リザーバからのブレーキ液容積の取出によって、ブレーキ回路に存在する容積を運転者ブレーキ希望に合わせて適合化することができ、それと同時に、引き続き純粋に回生式に制動が行われ、すべてのホイールブレーキシリンダで残留圧力の発生が防止される。さらに、時間t14とt15の間に倍力係数fを、低下する(目標)全体ブレーキトルクMges/中間保存されている容積Vrに応じて引き上げることができる。
【0079】
時間t16とt19の間には、上の各段落で説明した方法ステップをあらためて実行することができる。
【0080】
時間t10からt19の間に最大限実行可能な可能・発電機ブレーキトルクが減少した場合、第2のブレーキ回路の少なくとも1つのポンプによって、追加の容積を吸込配管を介して、ブレーキ液リザーバから各ブレーキ回路へ送り返すことができる。このことは、希望されるホイールブレーキシリンダ・ブレーキトルクMRAhydおよびMFAhydに応じて調整可能である液圧ブレーキ圧を各ホイールブレーキシリンダで惹起する。
【0081】
ここで説明している発展例でも、関連するすべての動作状況で、残留液圧が回避される。ホイール吐出弁の開放は比較的稀にしか行われないので、ここで説明している方式は騒音発生とほとんど結びついていない。
【0082】
付言しておくと、上に説明したすべての方法において、連続的に制御可能な圧力放出弁が使用されれば圧力生成は完全に可逆的になる。このことは機能面の可変性を高めるとともに、本方法を実施するときの可能な回生効率を高める。