(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234561
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】流体式変速機の油圧を制御する方法
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20171113BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F16H61/02
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-519361(P2016-519361)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公表番号】特表2016-533559(P2016-533559A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014072249
(87)【国際公開番号】WO2015059032
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】102013221453.7
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルクス エグリンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン フュラー
(72)【発明者】
【氏名】フェイ ソン
【審査官】
加藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052793(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0137093(US,A1)
【文献】
特開2010−270798(JP,A)
【文献】
特開2007−321604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体式変速機(2)の油圧を制御する制御装置(1)を用いて流体式変速機(2)の油圧を制御する方法であって
前記制御装置(1)は、
前記油圧の圧力実際値を検出する圧力センサ(7)と、
前記圧力センサ(7)のセンサ制御と圧力信号処理のための圧力センサ(7)用電子センサ回路と、
前記圧力センサ(7)によって検出された圧力実際値と、基準圧力信号(12)とに依存して制御信号を生成する電子制御ユニット(8)であって、前記基準圧力信号(12)は前記電子制御ユニット(8)に供給される、電子制御ユニット(8)と、
前記制御信号によって制御されるパワースイッチと、
前記パワースイッチによって駆動制御され、油圧を生成するための電磁弁(9)とを含み、
前記圧力センサ(7)、前記電子センサ回路、前記電子制御ユニット(8)、前記パワースイッチ、および前記電磁弁(9)は、電気的エネルギー供給および信号通信のための電気的接続部と、流体式変速機(2)に対する油圧接続部とを備えた小型の電磁ユニットとして構成され、
前記電子制御ユニット(8)は、それぞれ1つの直接的な電気的接続部によって前記圧力センサ(7)と前記パワースイッチとに接続されている、制御装置(1)を用いて流体式変速機(2)の油圧を制御する方法であって、
−最大圧力偏差(ΔPmax)を予め定め、
−前記制御装置(1)に、基準圧力信号(12)によって圧力目標値を供給し、
−電子制御ユニット(8)によって、前記圧力目標値に依存して生成された第1の操作信号を、パワースイッチに供給し、
―前記パワースイッチによって、油圧を生成する電磁弁(9)を、第1の制御信号に依存して駆動制御し、
−下記の制御ループ(L)が実施され、すなわち、
前記圧力センサ(7)によって、前記油圧の圧力実際値が検出されて、かつ、前記電子制御ユニット(8)に供給され、
前記電子制御ユニット(8)によって圧力目標値と圧力実際値との間の制御差分(|ΔP|)が求められ、所定の最大圧力偏差(ΔPmax)と比較され、
前記制御差分(|ΔP|)が前記最大圧力偏差(ΔPmax)を上回っている場合には、前記電子制御ユニット(8)は、前記制御差分(|ΔP|)を低減する第2の制御信号を生成し、かつ、前記第2の制御信号を前記パワースイッチに供給し、さらに前記パワースイッチは、前記第2の制御信号に依存した油圧を生成するために前記電磁弁(9)を駆動制御する、前記制御ループ(L)が実施され、
−前記制御ループ(L)は、前記制御差分(|ΔP|)が前記最大圧力偏差(ΔPmax)を上回る場合には繰り返され、それ以外の場合には中断され、
休止期間が前もって設けられ、前記制御ループ(L)の各中断毎の後で、時間測定が開始され、
前記制御ループ(L)の中断後に経過した持続時間が前記休止期間に達した場合、前記制御ループ(L)は新たに実施される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
プリント基板が設けられ、該プリント基板上に、前記電子センサ回路、前記電子制御ユニット(8)、および前記パワースイッチが配設されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電磁弁(9)は、バルブケーシングを有し、該バルブケーシング内に前記圧力センサ(7)、前記電子センサ回路、前記電子制御ユニット(8)、および前記パワースイッチが統合されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記電磁弁(9)は、急動弁または比例弁として構成されている、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
休止期間が前もって設けられ、前記制御ループ(L)の各中断毎の後で、時間測定が開始され、
前記基準圧力信号(12)によって、変更された圧力目標値が前記制御装置(1)に供給された場合は、前記制御ループ(L)は新たに実施される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
パルス幅変調された信号が、前記電子制御ユニット(8)によって、制御信号として生成され、かつ、前記電磁弁(9)は、前記生成されたパルス幅変調信号によって、前記パワースイッチを用いて制御される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項記載の方法を、車両駆動部の自動変速機として構成されている流体式変速機(2)の油圧の制御のために用いることを特徴とする使用方法。
【請求項8】
前記流体式変速機(2)は変速機制御ユニット(3)を備え、前記制御装置(1)に前記変速機制御ユニット(3)から前記基準圧力信号(12)が供給される、請求項7記載の使用方法。
【請求項9】
前記制御装置(1)に、前記変速機制御ユニット(3)からバスシステム(11)を介して前記基準圧力信号(12)が供給される、請求項8記載の使用方法。
【請求項10】
前記流体式変速機(2)は、クラッチ(5)と該クラッチ(5)を制御する調整弁(4)とを備え、電磁弁(9)によって生成された油圧が前記調整弁(4)の駆動制御のために使用される、請求項7から9いずれか1項記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体式変速機の油圧を制御する方法および制御装置並びにそれらの使用方法に関している。
【背景技術】
【0002】
油圧制御と圧力制御は、とりわけ車両のための多岐に亘って、特に自動変速機において多く用いられている。この自動変速機は、大抵は電子制御機器を有し、この電子制御機器は、電気信号を生成し、かつこの信号を用いて作動油の流量や圧力を制御する電磁弁が駆動制御されるように構成されている。
【0003】
自動車用変速機分野において、油圧電磁弁を制御する多くの方法は、いわゆる開ループアルゴリズムを使用している。この開ループアルゴリズムは、多くの利点を有しており、それらのコストは僅かである。なぜなら、例えば圧力センサを必要としないからである。また比較的少ない信号処理コストのために、それに用いられるマイクロコントローラの所要の計算容量も比較的僅かである。その上さらにソフトウェアの開発コストも安くて済む。
【0004】
しかしながら、開ループアルゴリズムにも欠点はある。変速機の運転条件は、時間の経過において変化する。なぜなら変速機部品は、経年劣化し、摩耗するからである。作動油を用いて動作するクラッチは、最も高頻度に使用されるパワートレインのアクチュエータである。クラッチスプリングとクラッチプレートの特性は、経時的に変化する。その上さらに、トランスミッションオイルの特性も汚れや劣化に起因して経時的に変化する。開ループアルゴリズムは、そのような変化、例えば時間の経過と共に現れる較正における変化に適合化されず、特に、その全寿命にわたるシステムの特性の変化を補償するのに適していない。
【0005】
開ループアルゴリズムのこれらの欠点に基づいて、代替的にいわゆる閉ループ制御アルゴリズムが、変速機制御領域において使用される。この閉ループシステムでは、圧力センサは、フィードバック信号(実際値信号)の提供のために必要とされる。
【0006】
本発明が基礎とする課題は、流体式変速機、特に車両用駆動装置の自動変速機のための油圧を制御する改善された方法並びに改善された制御装置を提供することにある。
【0007】
上記課題は、請求項1記載の特徴を有する制御装置、請求項5記載の特徴を有する方法、請求項8記載の特徴を有する車両用駆動装置の自動変速機のための使用方法によって解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載される。
【0009】
本発明による流体式変速機の油圧を制御する制御装置は、前記油圧の圧力実際値を検出する圧力センサと、前記圧力センサのセンサ制御と圧力信号処理のための圧力センサ用電子センサ回路と、前記圧力センサを用いて検出された圧力実際値と制御ユニットに供給される基準圧力信号とに依存して制御信号を生成する電子制御ユニットと、前記制御信号を用いて制御されるパワースイッチと、前記パワースイッチによって駆動制御され、かつ油圧を生成する電磁弁とを含んでいる。この場合前記圧力センサ、前記電子センサ回路、前記電子制御ユニット、前記パワースイッチ、および前記電磁弁は、電気的エネルギー供給および信号通信のための電気的接続部と、流体式変速機に対する油圧接続部とを備えた小型の電磁ユニットとして構成され、さらに前記電子制御ユニットは、それぞれ1つの直接的な電気的接続部によって前記圧力センサと前記パワースイッチとに接続されている。
【0010】
電気的接続部と油圧接続部とを備えた小型の電磁ユニットとしての制御装置の構成は、有利には、圧力制御弁と圧力センサが別個に変速機内に組み込まれる制御装置に比べて所要スペースと取り付けコストとを節約させる。
【0011】
電子制御ユニットと、圧力センサおよびパワースイッチとの直接的な電気的接続は、有利には、圧力センサによって検出された圧力実際値を制御ユニットに伝送したり、制御ユニットによって生成された制御信号をパワースイッチに伝送したりするための伝送速度を、これらの信号を例えばCANバス(CAN=コントローラエリアネットワーク)などのバスシステムを介して伝送する制御装置に比べて高める。高められた伝送速度により、電磁弁は、より高い周波数で動作させることができる。それによってより高精度な圧力制御と高速なシステム応答とを達成することができるようになる。
【0012】
高精度な圧力制御によって、制御圧のオーバーシュートが回避され、所要圧力を達成するための時間コストを低減させることが可能である。このことはまたエネルギーの節約にもなる。なぜならオーバーシュートの回避は、作動油の通流と流体式変速機の油圧ポンプのエネルギー消費を減少させ、さらに電磁弁の短縮された動作時間は、電流消費とエネルギー消費とを低減させるからである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、プリント基板が設けられ、該プリント基板上に、前記電子センサ回路、前記電子制御ユニット、および前記パワースイッチが配設されている。本発明のさらなる実施形態によれば、前記電磁弁は、バルブケーシングを有し、該バルブケーシング内に前記圧力センサ、前記電子センサ回路、前記電子制御ユニット、および前記パワースイッチが統合されている。
【0014】
本発明の前記両実施形態は、制御装置の特にコンパクトな構成を可能にしている。電子センサ回路、電子制御ユニット、およびパワースイッチが配置されたプリント基板は、さらに当該制御装置の構成要素間の直接的な電気的接続のとりわけ簡単でかつコンパクトな実現を可能にする。
【0015】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記電磁弁は、急動弁若しくは比例弁として構成されている。
【0016】
この構成は、特に高速で正確な圧力制御を可能にさせる。
【0017】
本発明による制御装置を用いて流体式変速機の油圧を制御する方法のもとでは、まず制御装置が、基準圧力信号によって圧力目標値を供給し、電子制御ユニットによって第1の操作信号が、圧力目標値に依存して生成され、それがパワースイッチに供給され、さらにこのパワースイッチによって、油圧を生成する電磁弁が、第1の制御信号に依存して駆動制御される。その後で、閉制御ループが実施され、この閉制御ループのもとでは、圧力センサを用いて油圧の圧力実際値が検出されて電子制御ユニットに供給され、この電子制御ユニットによって、圧力目標値と圧力実際値との間の制御差分が求められ、所定の圧力最大偏差と比較される。前記制御差分が前記圧力最大偏差を上回っている場合には、前記制御差分を低減する第2の制御信号が前記電子制御ユニットによって生成されて前記パワースイッチに供給され、このパワースイッチによって、油圧を生成する前記電磁弁が、前記第2の制御信号に依存して駆動制御される。前記制御ループは、前記制御差分が前記圧力最大偏差を上回る場合には繰り返され、それ以外の場合には中断される。
【0018】
その際には、好ましくは前記制御ループによって、実際値と目標値の一致が、圧力最大偏差によって与えられる精度要求を満たすまで圧力が変更される。
【0019】
好ましくは、休止期間が設けられ、前記制御ループの各中断の後で、時間測定が開始され、前記制御ループの中断後に経過した持続時間が前記休止期間に達した場合若しくは変更された圧力目標値が前記基準圧力信号によって前記制御装置に供給される場合に、前記制御ループは新たに実施される。引き続き制御ループは、制御差分が圧力最大偏差を上回るまで繰り返される。
【0020】
その結果として好適には、前記休止期間によって予め定められた時間間隔において、実際の圧力がまだ所定の精度要求内で目標圧力と一致しているか否かが検査され、一致していない場合には実際の圧力が修正されるか若しくは制御装置が新たな目標圧力を供給する。
【0021】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、前記制御ユニットにより、パルス幅変調された信号が制御信号として生成され、前記電磁弁は、前記パワースイッチを用いて、前記生成されたパルス幅変調信号によって制御される。
【0022】
このことで有利には、圧力がパルス幅変調を用いて制御ができるようになり、電磁弁は、パワースイッチを介してパルス幅変調信号に応じて開閉される。
【0023】
本発明による制御装置および/または本発明による方法は、特に車両駆動部の自動変速機として構成されている流体式変速機の油圧の制御のために使用する目的のために提供される。
【0024】
この使用は、有利には、車両駆動部の自動変速機の圧力のとりわけコンパクトで正確かつ迅速な制御を可能にする。
【0025】
その際、流体式変速機は好ましくは変速機制御ユニットを有し、制御装置は、この変速機制御ユニットから基準圧力信号を供給される。
【0026】
それにより圧力は、有利には、所定の精度要求内で、変速機制御ユニットによって設定された目標圧力値に制御される。
【0027】
その際この制御装置は、変速機制御ユニットからの基準圧力信号を、バスシステムを介して、例えばCANバスを介して供給される。
【0028】
流体式変速機は、さらに好ましくは、クラッチと該クラッチを制御する調整弁を有し、電磁弁によって生成された油圧がこの調整弁の駆動制御のために使用される。
【0029】
この構成は、本発明による制御装置と本発明による方法の従来の車両駆動部の自動変速機への適用を可能にする。
【0030】
以下では本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】車両駆動の自動変速機として構成された流体式変速機の油圧を制御する制御装置のブロック回路図
【0032】
発明を実施するための形態
図1には、流体式変速機2の油圧を制御する制御装置1のブロック回路図が概略的に示されている。
【0033】
流体式変速機2は、車両駆動部の自動変速機として構成されており、とりわけ、変速機制御ユニット3、機械的調整弁4、クラッチ5、並びに流体式変速機2の油圧媒体の温度を検出するための任意の温度センサ6を有している。
【0034】
制御装置1は、電磁弁9、該電磁弁9の圧力出力側における油圧の圧力実際値を検出する圧力センサ7、電子制御ユニット8、および
図1には示されていない、前記圧力センサ7のセンサ制御と圧力信号処理のための電子センサ回路、並びに同様に
図1には示されていない、前記電磁弁9の駆動制御のためのパワースイッチとを備えている。
【0035】
この制御装置1は、圧力センサ7、電子センサ回路、電子制御ユニット8、パワースイッチおよび電磁弁9が統合されているコンパクトな電磁ユニットとして構成されている。この制御装置1は、
図1には示されていない電気的エネルギー供給部のためと、変速機制御ユニット3および温度センサ6との信号通信のための電気的接続部を有し、さらに流体式変速機2のポンプ10と制御弁4に対する油圧接続部を有している。
【0036】
電子センサ回路、電子制御ユニット8およびパワースイッチは、
図1には示されていない共通の回路基板上に配置されている。電子制御ユニット8は、それぞれ1つの直接的な電気的接続部によって、圧力センサ7と、パワースイッチに接続されている。
【0037】
制御装置1には、システムバス11を介して、変速機制御ユニット3の基準圧力信号12が供給され、さらに、温度センサ6によって測定された測定信号が必要に応じて供給される。
【0038】
電子制御ユニット8は、以下で
図2に基づいてより詳細に説明するように、流体式変速機2の油圧を制御するための制御信号を、圧力センサ7を用いて検出された圧力実際値と、変速機制御ユニット3から出力された基準圧力信号とに依存して生成し、また必要に応じて温度センサの測定信号にも依存して生成する。
【0039】
電子制御ユニット8によって生成された制御信号は、パワースイッチに供給され、このパワースイッチは当該制御信号に応じて電磁弁9を制御する。好ましくは、この制御信号は、パワースイッチを用いて電磁弁9を開閉するためのパルス幅変調された信号である。
【0040】
電磁弁9によって生成された油圧は、調整弁4の駆動制御のために用いられ、この調整弁4を用いてクラッチ5も制御される。
【0041】
図2は、
図1に示した制御装置1を用いて油圧を制御する方法のフローチャートを示す。
【0042】
この方法は、流体式変速機2の油圧を、圧力最大偏差ΔPmaxの形態で設定される精度要求を備えた圧力設定値に制御するために用いられている。圧力目標値は、基準圧力信号12を介して当該制御装置1に供給される。
【0043】
第1の方法ステップのS1では、基準圧力信号12が、制御装置1に供給された最初の基準圧力信号12であるのか否かが検査される。該当する場合(イエスの場合)には、第2の方法ステップS2において、電子制御ユニット8によって、調整信号(オープンループ信号)が、第1の制御信号として、前記基準圧力信号12に含まれる圧力目標値に依存して生成される。
【0044】
前記方法ステップS1において検査された基準圧力信号12が制御装置1に最初に供給された基準圧力信号12でない場合には、第3の方法ステップS3において、目下の圧力目標値が読み取られる。引き続き電子制御ユニット8によって制御ループLが実施される。この制御ループLは、方法ステップS4乃至S8を含み、それらは以下で説明する。
【0045】
第4の方法ステップS4では、圧力センサ7を用いて検出された油圧の圧力実際値が読み出される。その後、第5の方法ステップS5において、圧力目標値と圧力実際値との間の圧力差分ΔΡが求められる。第6の方法ステップS6では、制御差分|ΔΡ|が圧力差分ΔΡの絶対値として形成され、所定の圧力最大偏差ΔPmaxと比較される。制御差分|ΔΡ|が、圧力最大偏差ΔPmaxを上回った場合には、第7の方法ステップS7において、第2の制御信号が制御偏差|ΔΡ|の低減のために生成される。第8のステップS8(これは第2の方法ステップS2の後にも実施される)では、電磁弁9がパワースイッチに供給されるそれぞれの現下の制御信号によって駆動制御され、その際にはこのパワースイッチが、当該制御信号に依存した油圧の生成のために電磁弁9を駆動制御する。
【0046】
制御ループLは、制御差分|ΔΡ|が、圧力最大偏差ΔPmaxを上回った場合には、繰り返され、そうでない場合には第6のステップS6の後に中断される。
【0047】
第6の方法ステップS6における制御ループLの中断後、第9の方法ステップS9では、時間測定が開始される。その後、所定の休止期間の経過後若しくは変更された圧力目標値が基準圧力信号12によって制御装置1に供給される場合には、再び第3の方法ステップS3が実施される。
【0048】
上述した制御アルゴリズムは、例えば、比例積分微分(PID)制御、自由度二制御、またはファジー制御で実施されてもよい。さらに前記制御信号は、付加的に温度センサ6によって検出された流体式変速機2の作動油温度に依存して更新されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 制御装置
2 流体式変速機
3 変速機制御ユニット
4 操作バルブ
5 クラッチ
6 温度センサ
7 圧力センサ
8 電子制御ユニット
9 電磁弁
10 ポンプ
11 バスシステム
12 基準圧力信号
L 制御ループ
ΔP 圧力差分
|ΔP| 制御差分
ΔPmax 最大圧力偏差
S1乃至S9 方法ステップ