【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、特許請求の範囲に記載の請求項1〜13に記載の発明である。
本発明は、まず流体圧力の
算出の例に関して説明する。ただし、本発明は、流体圧力の
算出に限定されることはない。その他の例は、後で説明する。
【0021】
ディスプレーサ要素の位置は、例えば、非接触状態で測定でき、いずれの場合においても、一般的に上記の流量調節ポンプで実施され、ディスプレーサ要素の現状の位置情報が得られる。ディスプレーサ要素の運動方程式は、これに作用する全ての力を考慮するものである。駆動装置によりディスプレーサ要素にかけられる力とは別に、計量室の流体圧力により付加される、上記力を相殺する力が、ダイアフラム、そしてディスプレーサ要素にかけられる。
【0022】
従って、駆動装置によりディスプレーサ要素にかけられた力が既知であるなら、計量ヘッド内の流体圧力についての結論は、ディスプレーサ要素の位置又はその位置から推測される速度、又は加速度から引き出される。
【0023】
好ましい実施形態において、容積型ポンプは、電磁駆動の流量調節ポンプであり、好適には、電磁駆動のダイアフラムポンプである。
【0024】
この場合、ディスプレーサ要素の位置とは別に、電磁駆動装置を流れる電流も計測され、微分方程式が、測定変数としてのディスプレーサ要素の位置と、電磁駆動装置を流れる電流との両方に対して使用される。一般に、さらに測定変数が検出される必要はない。駆動装置によりディスプレーサ要素にかかる力は、ディスプレーサ要素の位置の測定と、電磁駆動装置に流れる電流の測定とにより決まり、計量ヘッドの圧力は、ディスプレーサ要素の移動から決定可能である。
【0025】
例えば、実際の流体圧力が所定最大値に達するか、これを上回る場合、警告信号が自動停止機構へと出力され、警告信号の受信に応じて、流量調節ポンプを停止させる。従って、何らかの理由で弁が開かないか、圧力ラインの圧力が大きく上昇した場合、圧力センサを使用することなく本発明に係る方法により確認することができ、安全のため、ポンプを停止することができる。基本的に、連繋された駆動装置を備えたディスプレーサ要素は、更に圧力センサの機能を果たす。
【0026】
ディスプレーサ要素の移動サイクルに関する方法の別の好ましい実施形態において、目標流体圧力曲線、ディスプレーサ要素の目標位置曲線及び/又は電磁駆動装置を流れる目標電流パターンが得られる。この場合、実際の流体圧力は目標流体圧力と比較され、ディスプレーサ要素の実際の位置はディスプレーサ要素の目標位置と比較され、及び/又は電磁駆動装置を流れる実際の電流は電磁駆動装置を流れる目標電流と比較されて、実際の値と目標値との差が所定基準を満たす場合、警告信号が出力される。
【0027】
上記方法の工程は、例えば、油圧系統内の気泡やポンプヘッドの空洞化などの現象により流体圧力が顕著に変化するという概念に基づき、このような現象についての結論は、流体圧力の決定工程から導出される。
【0028】
警告信号により、例えば、光学ディスプレーや音響ディスプレーが起動する。しかしながら、上記のどちらか一方または組み合わせにおいて、警告信号の受信に応じて適切に対応する制御ユニットが、この信号を直接処理できるような構成としてよい。
【0029】
最も簡単な事例では、実際の値と目標値との差は、一つ以上の計測変数又は所定変数に対して求められ、上記差のうちの一つが所定値を超えると、警告信号が出力される。
【0030】
しかしながら、例えば、計量室の気泡や空洞化の発生などの発生しうる不具合の検出のみならず、これらを互いに区別するため、各不具合に固有の基準を定義することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、目標値からの相対偏差の加重和を決めることができ、この加重和が所定値を超える場合、警告信号が出力されるような基準が選択される。
【0032】
異なる加重係数が、異なる不具合に関連付けられる。不具合の発生時、確実に一つの基準が適合し、不具合が診断されることが望ましい。
【0033】
従って、計量ヘッドの圧力を決める工程は、圧力センサを必要とすることなく、上記方法により実施可能であり、計量ヘッドの所定状態についての結論は、上記で決定された圧力から導出され、所定の測定を開始させることができる。
【0034】
本発明に係る方法により、圧力変数を正確に決めることができる。
【0035】
更に別の実施形態において、計測変数又は所定変数の時間の勾配が確認され、これが所定制限値を超える場合、弁の開閉について診断される。
【0036】
別の実施形態において、ディスプレーサ要素の質量m、ディスプレーサ要素に予応力を付加するばねのばね定数k、
前記ディスプレーサ要素の減衰d、又は電磁駆動装置の電気抵抗R
Cuが、物理変数として決められる。
【0037】
特に好ましい実施形態では、上記変数全てが、例えば、最小化計算によって決定可能である。計量室の圧力以外の全ての規定変数は、実験で決定可能であり、ポンプが作動しても通常変化しない定数を示す。しかし、異なる要素についての疲労現象の発生する可能性があり、それによって定数の値は変わる。例えば、測定された圧力と移動の関係は、想定された圧力と移動の関係と比較される。両者の関係からのサイクルに取り込まれた上記の差は、一定のパラメータを変化させることで最小化することができる。上記の場合、例えば、ばね定数が変わる場合、ばねの不具合と診断することができる。
【0038】
このような最小化動作は、計量室の流体が存在しない場合の無圧状態でも実施可能である。
【0039】
本発明に係る方法は、上記好ましい実施形態において、より詳細には、従来必要とされた制御パラメータを用意することなしに圧力部の移動に対する閉ループ制御を向上させるためにさらに展開可能である。これにより、容積型ポンプで達成される計量プロファイルが向上する。
【0040】
上記目的のため、モデルベースの閉ループ制御、特に非線形モデルベースの制御は、ディスプレーサ要素の駆動に使用される。
【0041】
モデルベース制御の場合、できる限り完全な工程動力学としてのモデルが展開される。このモデルにより、システム変数の次の瞬間の動きを簡易に予測することができる。
【0042】
上記モデルにより、適正な調整パラメータを算出することもできる。そのようなモデルベース制御の特徴は、モデルから得られるシステムパラメータを使用し、測定変数に基づく必要な調整パラメータの算出が同時進行で実行されていることにある。
【0043】
基本的に、本来の物理システムは、モデル化によりほぼ数学的に記述される。上記数学的な記述は、取得した測定変数に基づく調整パラメータの計算に使用される。周知の計量プロファイル最適化方法とは異なり、駆動装置はもはや「ブラックボックス」として認識されない。それどころか周知の物理的関係は、調整パラメータの決定に使用される。本発明に係るディスプレーサ要素の微分方程式は、これを目的として使用可能である。
【0044】
上記において好ましい実施形態では、容積型ポンプに特有であり、かつ圧力部に作用する力が、微分方程式においてモデル化される。例えば、ばねによって圧力部にかかる力又はそのばね定数k、及び/又は磁気駆動装置により圧力部にかかる磁力をモデル化することができる。供給流体によって圧力部にかかる力は、干渉変数として扱われる。
【0045】
測定変数が検出された場合、そのような状態空間モデルにより、直後に行われるシステム動作が予測可能となる。
【0046】
上記のように予見された後続の動作が、所望の所定動作から逸脱している場合、システム補正が適用される。
【0047】
適切な作用を把握するため、閉ループ制御変数に対する使用可能な調整パラメータの作用が同じモデルでシミュレートされる。ある瞬間において最良の制御戦略が、周知の最適化方法により、適切に選択される。上記の代わりに、このモデルに基づき、一度限りの制御戦略を決定し、検出された測定変数に応じてそれを適用することもできる。
【0048】
好ましい実施形態において、非線形状態空間モデルが選択され、制御−リアプノフ関数、フラットベースのプリ制御されたフラットベース閉ループ制御方法、インテグレータバックステップ方法、スライドモード方法、又は予測閉ループ制御などにより、非線形閉ループ制御が実行される。この場合、制御−リアプノフ関数による非線形閉ループ制御が好適である。
【0049】
上記五つの方法はすべて数学的に周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
制御−リアプノフ関数は、例えば、リアプノフ関数の一般化された記述である。適切に選択された制御−リアプノフ関数により、モデルに即した安定な動作をもたらす。
【0051】
言い換えれば、補正関数が計算され、基礎となるモデルにおいてその安定解をもたらす。
【0052】
一般に、基本モデルにおいては実際のプロファイルと目標プロファイルとの差が小さくなるような複数の制御オプションがある。
【0053】
好ましい実施形態において、モデルベース閉ループ制御の基礎を形成するモデルは、最適化の課題を定式化するために使用される。この最適化の第二条件として、電動機の電圧、即ち、流量調節ポンプへの供給エネルギーを可能な限り小さくして、同時に実際のプロファイルから目標プロファイルへの近似をできる限り早めることで、オーバーシュートを減少することがあげられる。更にノイズの影響を抑えるため、基本モデルでの処理の前に、測定信号を低域フィルタにかけることが有利となる。
【0054】
更に特に好ましい実施形態において、吸引圧力サイクル中、ディスプレーサ要素の検出された実際の位置プロファイルと、ディスプレーサ要素の所望の目標位置プロファイルとの差が検出され、この差分が低減された、所望の目標位置プロファイルに対応する目標位置プロファイルが、次の吸引圧力サイクルで使用される。
【0055】
基本的に、ここでは自己学習システムが実施されている。本発明に係るモデルベース閉ループ制御により、制御特性は大きく向上したが、目標プロファイルと実際のプロファイルとの間には依然として偏差がある。特に制御調整時のエネルギー最小化の選択では、これは避けられない。少なくとも後のサイクルでの偏差を低減するため、サイクル中の偏差が検出され、検出された偏差は、次のサイクルの所望の目標位置プロファイルから、少なくとも部分的に減じられる。
【0056】
即ち、後続の圧力−吸引サイクルのため「誤った」目標値プロファイルが意図的に事前に設定され、「誤った」目標値プロファイルは、前のサイクルでの経験から算出される。詳細には、後続の吸引−圧力サイクルが、前のサイクルと同様に実際のプロファイルと目標プロファイルの全く同じ偏差を伴う場合、その「誤った」目標値プロファイルの使用により、実際の所望の目標値プロファイルが達成される結果となる。
【0057】
上記が基本的に可能であることは確かであり、システムの定期的な動作により、ある適用で一度だけ実行される自己学習工程、即ち、第一サイクルでの差の測定と、第二サイクル以降での目標値プロファイルの適切な補正で十分である。ただし、実際のプロファイルと目標プロファイルの差が定期的(サイクル毎が最も良い)に判定され、後続サイクルが考慮されるならば、特に好ましい。
【0058】
後続サイクルに、検出された差のわずかな部分だけをプロファイル補正として使用することも可能である。これは、目標値の突然の変化により、システムが不安定にならないよう、検出された差が大きすぎるような状況には特に有効である。
【0059】
更に、目標プロファイルと実際のプロファイルとの現状の差に基づき、プロファイル補正として使用される検出された差の一部の大きさを決めることができる。
【0060】
複数サイクル、例えば、2サイクルにわたって測定される実際のプロファイルと目標プロファイルとの差を測定可能であり、また、差の平均はここから算出可能であり、後続サイクルの目標プロファイルから、少なくとも一部が低減される。
【0061】
更に別の実施形態において、検出された差に依存する任意の関数を、次の目標位置プロファイルの補正に使用することができる。
【0062】
更に別の実施形態において、油圧パラメータを有する物理モデルが油圧系統用にも設定され、少なくとも一つの油圧パラメータが、最適化計算で算出される。
【0063】
油圧パラメータとは、ディスプレーサ要素の位置から離間し、計量室の供給流体の流れに影響を及ぼす油圧系統の任意のパラメータを意味する。
【0064】
油圧パラメータは、例えば、計量室内の供給流体の密度や粘度などである。他の油圧パラメータとしては、例えば、ホース長又はパイプ長、計量室に少なくとも一時的に接続されるホースやパイプの径があげられる。
【0065】
上記測定により、センサの追加を必要とすることなく、油圧パラメータを決めることができる。
【0066】
容積型ポンプの固有プロパティは、計量室を吸引ライン及び圧力ラインに接続させる弁の一つが開閉されるたびに油圧系統が大きく変化することである。
【0067】
この系統は、吸引ラインの弁が開き、圧力ラインの弁が閉じている状態を表すモデル化には最も簡易なものである。詳細には、撓みホースが吸引ラインの弁に頻繁に嵌めこまれ、その両端が大気圧下の供給コンテナ内に位置している。
【0068】
上記の状況は、いわゆる吸引工程動作中、即ち、ディスプレーサ要素が第二位置から第一位置への移動時に発生する。上記油圧系統は、例えば、層流や乱流において、非線形ナビエ−ストーク方程式で記述される。供給流体の密度や粘度の他に、吸引弁を供給コンテナにつなぐホースの径、ホース長及びホース内の流体が対処すべき高さの差は、油圧パラメータとして考慮される。
【0069】
使用される各系統により、有意義な前提を更にたてることができる。例えば、周知の傾斜法やレーベンバーグ−マルカートアルゴリズムでなされる最適化計算により、物理モデルに含まれ、計量ヘッドの圧力変化や、圧力部から得られる移動又は速度、加速度を最も良く表す油圧パラメータを決めることができる。
【0070】
原則として、吸引工程実行に関する分析の繰り返しのみで、本発明に係る決定方法は実施される。
【0071】
しかしながら、上記とは別に、吸引ラインへの弁が閉じ、圧力ラインへの弁が開いている状態について、油圧系統の物理モデルを検討することもできる。ただし、ポンプ製造業者は初期の段階において、流量調節ポンプの使用環境や、圧力ラインと計量室とをつなぐ圧力弁に接続される配管系などについての情報を得てないため、一般的な前提のみを用いるものとする。圧力弁に接続された配管系の知識がないと、吸引工程中、油圧系統では一般に可能な物理モデルの正確な設定はできない。
【0072】
特に好ましい実施形態において、上記両者の油圧系統の物理モデルが使用され、開弁時間が測定されるか決定され、開弁時間の決定結果により、それぞれ正しい物理モデルが選択される。基本的に本発明に係る方法は、吸引工程と圧力工程で個別に実施される。いずれの場合の値も実際は全く同じではなく、例えば、供給流体の密度や粘度などの油圧パラメータ用として取得される。原則として、異なる値を平均化することは可能であるものの、その場合、吸引工程中に物理モデルにおいて実際の状態がより良好に表されることにより、平均化する際に圧力工程で確認された値よりも吸引工程で得られた値が重み付けされるという事実を考慮しなければならない。
【0073】
本発明に係る要領で油圧パラメータを決定後、この油圧パラメータにより、計量室の圧力を決定するため、設定された物理モデルを使用することができる。上記の知識は、流体により圧力部にかかる力を、上記のように決定された油圧パラメータでモデル化すれば、圧力部の移動調整を向上させるために使用可能である。