特許第6234590号(P6234590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234590ヒドロシリル化を阻害するための新規な光活性化系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234590
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ヒドロシリル化を阻害するための新規な光活性化系
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20171113BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08L83/08
   C08L83/07
   C08K5/54
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-540953(P2016-540953)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2016-540868(P2016-540868A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2014003352
(87)【国際公開番号】WO2015090551
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】13/63276
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】ブルースター・シリコーンズ・フランス・エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・プジェ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ピブレ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・マロ
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−215658(JP,A)
【文献】 特開2001−198910(JP,A)
【文献】 特表平06−503594(JP,A)
【文献】 特開昭64−014273(JP,A)
【文献】 特開2001−192387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/05
C08L 83/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物であって、
A.1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン;
B.1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン;
C.少なくとも1種のヒドロシリル化触媒;
D.α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレート並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の阻害剤、
E.少なくとも1種の光開始剤、
F.トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)
を含む組成物。
【請求項2】
前記阻害剤Dが次式(D1):
(R1)(R2)C(OH)−C≡CH (D1)
(式中、
・R1基は、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
・R2基は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
・又はR1及びR2は、これらのものが結合している炭素原子と共に1回以上置換されていてよい5−、6−、7−又は8−員の脂肪族環を構成する。)
の化合物から選択されるα−アセチレンアルコール型の阻害剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記阻害剤Dが次式(D2):
【化1】
(式中、基R3及びR4は、同一又は異なっていてよく、互いに独立に、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はシリル基を表す。)
の化合物から選択されるα,α’−アセチレンジエステル型の阻害剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記阻害剤Dが次式(D6)及び(D7):
【化2】
(式中、R11及びR12は、同一又は異なっていてよく、互いに独立して、アルキル基又はアルケニル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール及びアリールアルキル基は、アルコキシ基で置換されていてもよい。)
の化合物から選択されるマレエート及びフマレート型の阻害剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が少なくとも1種のI型光開始剤Eを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記阻害剤Dと前記光開始剤EとTTMSSとのモル比は、
・TTMSSと阻害剤Dとのモル比が0.0001〜20の間にある;及び/又は
・TTMSSと光開始剤Eとのモル比が0.001〜10の間にある
というものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記触媒Cが白金を含む場合には、前記阻害剤Dの量が白金の重量に対して10重量ppm〜2000重量ppmを占めることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
基材上にシリコーン被膜を製造するための方法であって、該基材に請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性シリコーン組成物を被覆し、そしてこの組成物を照射により硬化させることからなる工程を含む方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物を照射によって硬化させることからなる硬質エラストマー材料の製造方法。
【請求項10】
α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレート並びにそれらの混合物から選択される阻害剤と光開始剤とTTMSSとの混合物の、ヒドロシリル化反応によって架橋することのできる硬化性シリコーン組成物における阻害系としての使用。
【請求項11】
前記組成物が少なくとも1種のα−ヒドロキシアセトフェノン又は少なくとも1種のII型光開始剤Eを含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が少なくとも1種のベンゾフェノン又は複数のベンゾフェノンの混合物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、シリコーン組成物の製造の技術分野内にある。より具体的には、本発明は、ヒドロシリル化反応を阻害するための新規系を含む硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
シリコーンの分野において、重付加としても知られているヒドロシリル化が主要な反応である。
【0003】
ヒドロシリル化反応の間に、少なくとも1個の不飽和を含む化合物が、ケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子を含む化合物と反応する。この反応は、例えば、アルケン型の不飽和の場合には次の反応式(1):
【化1】
又はアルキン型の不飽和の場合には次の反応式(2):
【化2】
により説明することができる。
【0004】
このように、ヒドロシリル化は、第一に、官能化シラン又はシロキサンに近づき、第二に、Si−H単位を含むポリシロキサン及びSi−ビニル単位を含むポリシロキサンとの間の架橋によってシリコーンネットワークを形成することを可能にする。この反応の従来の用途は、紙又は重合体支持体上での非粘着性シリコーン被膜又はフィルムの形成である。
【0005】
ヒドロシリル化反応は、通常、触媒作用によって実施される。典型的には、この反応に好適な触媒は、白金触媒、例えば塩化白金酸六水和物又は配位子としてのジビニルテトラメチルジシロキサンとの白金錯体から構成されるカールシュテット触媒である(例えば米国特許第3775452号参照)。少量で、この触媒により、室温で約数分の迅速な反応速度でヒドロシリル化反応を行うことが可能になる。
【0006】
組成物をそれが硬化する前に製造、輸送及び使用するための時間を確保するために、ヒドロシリル化反応を一時的に阻害することが必要な場合が多い。例えば、紙又は重合体基材に非粘着性被膜を被覆することが望まれる場合には、シリコーン組成物を、液体を基材上に付着する前に数時間にわたって室温で保持しなければならない浴を形成するように配合する。この付着後のみに、ヒドロシリル化による硬化を行うことが望ましい。ヒドロシリル化反応阻害剤は、いくつかの種類のものとすることができる。最も普及しているのは熱阻害剤である。これらのものは、室温で維持されると、ヒドロシリル化反応を阻害する。反応媒体の温度を上昇させることにより、阻害が非活性化され、ヒドロシリル化反応が活性化される。従来、熱活性化は、硬化性シリコーン組成物が被覆された基材を、温度が100℃〜150℃の間に維持された被覆オーブンに導入することにより実施されている。熱阻害剤及びそれらの使用の例は、特許出願のWO2011/076710、WO2012/085364及びWO2012/175825に記載されている。ヒドロシリル化反応の熱活性化の大きな欠点は、耐熱性のない基材上では使用できないことである。
【0007】
この問題を解決するために、UV照射への曝露によって誘発できるヒドロシリル化反応を使用することが提案された。これを行うために、一つの解決策は、例えば国際特許出願公開WO92/10529号に記載されるように、UV照射によって活性化できる特定のヒドロシリル化触媒を与えることからなる。別の解決策は、標準的なヒドロシリル化触媒を使用し、そしてこれに光阻害剤を添加することからなる:光阻害剤の機能は、これが反応媒体中に存在するときにヒドロシリル化反応を防止することである。しかし、熱阻害剤とは異なり、光阻害剤は、熱によっては不活性化されず、むしろUV放射への曝露によって活性化される。
【0008】
光阻害剤の例が文献に記載されている。米国特許第4640939号及び米国特許第4670531号には、反応抑制剤としてアゾ化合物を使用することが記載されている。欧州特許出願のEP0238033号には、鎖末端ビニル官能基を含む実質的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンと、オルガノヒドロゲノポリシロキサンと、白金系触媒と、光増感剤と、任意に調節化合物であってその機能が硬化性組成物の早期の反応を防止することであるものとを含有する硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が記載されている。記載された調節剤は、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−1−ペンチン−3−オール及び5,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのアセチレン化合物である。また、米国特許第5082871号には、UV照射によって不活性化できる白金触媒ヒドロシリル化反応抑制剤としてアセチレンジアルキルジカルボキシレート型の化合物を使用することが記載されている。
【0009】
このように、阻害系の本質的な機能の一つは、活性化前に必要な限りヒドロシリル化反応を効率的に阻害することである。これを行うために、阻害剤を大量に使用する必要がある場合があり、これにより、ヒドロシリル化触媒の強力な阻害が引き起こされる。この結果は、組成物の硬化速度が活性化後であっても減速するというものであるが、これは、産業的な観点から大きな欠点である。というのは、これにより、特に塗布速度の低下、それにより製造速度の低下が必須になるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3775452号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/076710号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2012/085364号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2012/175825号パンフレット
【特許文献5】国際公開第92/10529号パンフレット
【特許文献6】米国特許第4640939号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0238033号明細書
【特許文献8】米国特許第5082871号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、熱又はUV照射により不活性化できる利用可能な新規ヒドロシリル化阻害系を得ることが有利であろう。次のことを同時に可能にする阻害系を含む利用可能なヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が求められている:
・活性化前に必要な限りヒドロシリル化反応を阻害し;
・活性化時に阻害の迅速な解除を確保し、及び
・好ましくは高架橋率を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の簡単な説明
本発明の主題の一つは、次のものを含む硬化性シリコーン組成物である:
A.1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン;
B.1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子、好ましくはケイ素原子に結合した少なくとも3個の水素原子を含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン;
C.少なくとも1種のヒドロシリル化触媒;
D.α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレート並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の阻害剤、
E.少なくとも1種の光開始剤、
F.トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)。
【0013】
本発明者は、全く驚くべきことに、上記のような阻害剤と光開始剤とTTMSSとの混合物が相乗的に機能し、かつ、ヒドロシリル化反応の良好な阻害を確実にすると同時に、既知の化合物に対して阻害除去速度を改善させることを見出した。
【0014】
したがって、本発明の主題は、α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレート並びにそれらの混合物から選択される阻害剤と、光開始剤と、TTMSSとの混合物の、硬化性シリコーン組成物における阻害系としての使用でもある。
【0015】
この硬化性シリコーン組成物は、シリコーン被膜、特に非粘着性シリコーン被膜を製造するのに特に好適である。また、その理由は、本発明の主題が、基材上にシリコーン被膜を製造する方法であって、硬化性シリコーン組成物を基材に塗布し、この組成物を照射により硬化させることからなる工程を含む方法でもあるからである。
【0016】
さらに、この硬化性シリコーン組成物は、硬質エラストマー材料を製造するために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例で使用した実験装置を示す。
図2図2は、実施例に記載された試験2〜6中における時間に応じた振動針の端子での電圧変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
この説明において、用語「・・・〜・・・の間」は、示される限界値を含むものと解釈すべきであると解される。
【0019】
したがって、本発明の主題の一つは、次のものを含む硬化性シリコーン組成物である:
A.1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン;
B.1分子当たり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子、好ましくはケイ素原子に結合した少なくとも3個の水素原子を含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン;
C.少なくとも1種のヒドロシリル化触媒;
D.α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレート並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の阻害剤、
E.少なくとも1種の光開始剤、
F.トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)。
【0020】
化合物DとEとFとの組合せは、ヒドロシリル化触媒Cの存在下での化合物Aと化合物Bとのヒドロシリル化反応を一時的に阻害することが可能である。
【0021】
まず、本発明の組成物は、α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレート並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の阻害剤Dを含む。ヒドロシリル化反応阻害剤として作用することのできるこれらの化合物は、当業者に周知である。これらのものは、単独で又は混合物として使用できる。
【0022】
α−アセチレンアルコール型の阻害剤Dは、以下の式(D1)から選択できる:
(R1)(R2)C(OH)−C≡CH (D1)
式中、
・R1基は、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
・R2基は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
・又はR1及びR2は、これらのものが結合している炭素原子と共に1回以上置換されていてよい5−、6−、7−又は8−員の脂肪族環を構成する。
【0023】
本発明によれば、用語「アルキル」とは、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含有する飽和炭化水素鎖を意味する。アルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、イソブチル、n−ブチル、n−ペンチル、イソアミル及び1,1−ジメチルプロピルよりなる群から選択できる。
【0024】
本発明によれば、用語「シクロアルキル」とは、3〜20個の炭素原子、好ましくは5〜8個の炭素原子を有する飽和単環式又は多環式、好ましくは単環式又は二環式炭化水素基を意味する。シクロアルキル基が多環式の場合には、複数の環核が共有結合を介して及び/又はスピラン原子を介して互いに結合していてよく及び/又は一緒に縮合していてもよい。シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンタン及びノルボルネン(norborane)よりなる群から選択できる。
【0025】
本発明によれば、用語「(シクロアルキル)アルキル」とは、上で定義したアルキル基に結合した上で定義したシクロアルキル基を意味する。
【0026】
本発明によれば、用語「アリール」とは、5〜18個の炭素原子を含む単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味する。アリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントリルよりなる群から選択できる。
【0027】
本発明によれば、用語「アラルキル」とは、上で定義されたアルキル基に結合した上で定義したアリール基を意味する。
【0028】
好ましい実施形態によれば、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と共に、非置換5−、6−、7−又は8員脂肪族環を形成する。別の好ましい実施形態によれば、R1及びR2は、同一又は異なっていてよく、独立して、一価のC1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基を表す。
【0029】
本発明に従って有用なα−アセチレンアルコールである阻害剤Dは、以下の化合物よりなる群から選択できる:1−エチニル−1−シクロペンタノール;1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ECHとしても知られている);1−エチニル−1−シクロヘプタノール;1−エチニル−1−シクロオクタノール;3−メチル−1−ブチン−3−オール(MBTとしても知られている);3−メチル−1−ペンチン−3−オール;3−メチル−1−ヘキシン−3−オール;3−メチル−1−ヘプチン−3−オール;3−メチル−1−オクチン−3−オール;3−メチル−1−ノニン−3−オール;3−メチル−1−デシン−3−オール;3−メチル−1−ドデシン−3−オール;3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール;3−エチル−1−ペンチン−3−オール;3−エチル−1−ヘキシン−3−オール;3−エチル−1−ヘプチン−3−オール;3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール;3−イソブチル−5−メチル−1−ヘキシン−3−オール;3,4,4−トリメチル−1−ペンチン−3−オール;3−エチル−5−メチル−1−ヘプチン−3−オール;3,6−ジエチル−1−ノニン−3−オール;3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール(TMDDOとしても知られている);1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;3−ブチン−2−オール;1−ペンチン−3−オール;1−ヘキシン−3−オール;1−ヘプチン−3−オール;5−メチル−1−ヘキシン−3−オール;4−エチル−1−オクチン−3−オール及び9−エチニル−9−フルオレノール。
【0030】
α,α’−アセチレンジエステル型の阻害剤Dは、以下の式(D2)の化合物から選択できる:
【化3】
式中、基R3及びR4は、同一又は異なっていてよく、互いに独立に、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はシリル基を表す。
【0031】
本発明によれば、用語「シリル」とは、式−SiR3の基を意味し、ここで、各Rは、独立して1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基とすることができる。
【0032】
特定の実施形態によれば、R3及びR4は、同一又は異なっていてよく、互いに独立してC1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基又はトリメチルシリル基を表す。本発明に従って有用なα,α’−アセチレンジエステルである阻害剤Dは、次の化合物よりなる群から選択できる:ジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMAD)、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、t−ブチルアセチレンジカルボキシレート及びビス(トリメチルシリル)アセチレンジカルボキシレート。
【0033】
共役エン−イン化合物型の阻害剤Dは、以下の式(D3)の化合物から選択できる:
【化4】
式中、
・基R5、R6及びR7は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
・又はR5、R6及びR7基のうち少なくとも2個の基は、それらが結合している炭素原子と共に1回以上置換されていてよい5−、6−、7−又は8−員脂肪族環を形成する。
【0034】
特定の実施形態によれば、基R5、R6及びR7は、互いに独立して、水素原子、C1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基又はアリール基を表す。本発明に有用な共役エン−イン化合物である阻害剤Dは、以下の化合物よりなる群から選択できる:3−メチル−3−ペンテン−1−イン;3−メチル−3−ヘキセン−1−イン;2,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン;3−エチル−3−ブテン−1−イン;及び3−フェニル−3−ブテン−1−イン。別の特定の実施形態によれば、R5、R6及びR7よりなる群から選択される2個の基は、それらが結合している炭素原子と共に、非置換5−、6−、7−又は8−員脂肪族環を形成し、残りの第3基は、水素原子又はC1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基を表す。本発明に従って有用な共役エン−イン化合物である阻害剤Dは、1−エチニル−1−シクロヘキセンとすることができる。
【0035】
α−アセチレンケトン型の阻害剤Dは、以下の式(D4)の化合物から選択できる:
【化5】
式中、R8は、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、該アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール又はアリールアルキル基は塩素、臭素又はヨウ素原子で1回以上置換されていてよい。
【0036】
好ましい実施形態によれば、R8は、塩素又は臭素原子で1回以上置換されていてよい一価のC1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基、又はシクロアルキル基、又はアリール基を表す。本発明に従って有用なα−アセチレンケトンである阻害剤Dは、以下の化合物よりなる群から選択できる:1−オクチン−3−オン;8−クロロ−1−オクチン−3−オン;8−ブロモ−1−オクチン−3−オン;4,4−ジメチル−1−オクチン−3−オン;7−クロロ−1−ヘプチン−3−オン;1−ヘキシン−3−オン;1−ペンチン−3−オン;4−メチル−1−ペンチン−3−オン;4,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オン;1−シクロヘキシル−1−プロピン−3−オン;ベンゾアセチレン及びo−クロロベンゾイルアセチレン。
【0037】
アクリロニトリル型の阻害剤Dは、以下の式(D5)の化合物から選択できる:
【化6】
式中、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子、塩素、臭素又はヨウ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、該アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール又はアリールアルキル基は、塩素、臭素又はヨウ素原子で1回以上置換されていてよい。本発明に従って有用なアクリロニトリルである阻害剤Dは、以下の化合物よりなる群から選択できる:アクリロニトリル;メタクリロニトリル;2−クロロアクリロニトリル;クロトンニトリル及びシンナモニトリル。
【0038】
マレエート及びフマレート型の阻害剤Dは、以下の式(D6)及び(D7)の化合物から選択できる:
【化7】
式中、R11及びR12は、同一又は異なっていてよく、互いに独立して、アルキル基又はアルケニル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール及びアリールアルキル基は、アルコキシ基で置換されていてもよい。
【0039】
本発明によれば、用語「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重不飽和を含む、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含有する飽和炭化水素鎖を意味する。アルケニル基は、ビニル又はアリルよりなる群から選択できる。
【0040】
本発明によれば、用語「アルコキシ」とは、酸素原子に結合した上で定義したアルキル基を意味する。アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシよりなる群から選択できる。
【0041】
特定の実施形態によれば、R11及びR12は、同一又は異なっていてよく、互いに独立して、C1〜C6アルコキシ基で置換されていてよいC112、好ましくはC1〜C6アルキル又はアルケニル基を表す。
【0042】
本発明に有用なマレエート又はフマレートである阻害剤Dは、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル及びマレイン酸ビス(メトキシイソプロピル)よりなる群から選択することができる。
【0043】
α−アセチレンアルコール、α,α’−アセチレンジエステル、共役エン−イン化合物、α−アセチレンケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレートから選択される阻害剤Dは、市販されている。特に、BASFから市販されているECH、DMSから市販されているマレイン酸ジメチル及びシティ・ケミカルLLCから市販されているジメチルアセチレンジカルボキシレートが挙げられる。
【0044】
阻害剤化合物Dの他に、本発明の組成物は、少なくとも1種の光開始剤Eを含む。光開始剤は、200nm〜800nmの間の波長を有する放射線を吸収してフリーラジカルを生成することのできる化合物又は複数の化合物の組み合わせ(この場合には、光開始剤系ということがある)である。光開始剤と共に光増感化合物を使用することが可能である。光増感化合物は当業者に周知である。これらのものは、放射線を吸収し、かつ、そのエネルギーを別の分子(本願の場合には光開始剤)に伝達することができる分子である。
【0045】
光開始剤化合物は、当業者に周知である。これらは単独又は混合物として使用できる。
【0046】
従来、光開始剤は、それらの開始メカニズムに応じて、2つの主要なカテゴリーに分類されている:I型光開始剤及びII型光開始剤。
【0047】
I型光開始剤化合物は、光重合反応を開始することのできるラジカルを生成する結合の均一開裂を受けることを特徴とする。I型光開始剤は、例えば、次よりなる群から選択できる:
・ベンゾイン及びベンゾインエーテル:ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル;
・アセトフェノン:例えば置換アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン;
・α−ヒドロキシケトン、特にα−ヒドロキシアセトフェノン:例えばビス[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェニル]メタン、2−ヒドロキシ−1−[4−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ)フェニル]−2−メチル−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−t−ブチル)フェニルプロパン−1−オン;
・アシルホスフィンオキシド。
【0048】
II型光開始剤は、照射後に励起状態に変化(「トリプレット」状態として知られている)するときに断片化反応を受けないことを特徴とする。したがって、照射は、水素移動反応又は電子移動を引き起こし、その後光開始剤と共開始剤との間でプロトン移動が生じる。II型光開始剤は、次よりなる群から選択できる:
・ベンゾフェノン:例えば置換ベンゾフェノン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン;
・チオキサントン:例えばイソプロピルチオキサントン;
・カンファーキノン。
【0049】
共開始剤は、エーテル、アミド、アミン、チオール、チオエーテル、スルフェート、カルボキシレート及び脂肪族アルコールよりなる群から選択でき、好ましくは以下の化合物から選択できる:N−フェニルグリシン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、フェニルテトラゾールチオール、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそれらの混合物。
【0050】
光開始剤の多くは市販されている。特に次のものを挙げることができる:
・I型光開始剤として:例えば、IGMレジンズ社、Lambson社、BASF社、ランベルティ社及びChivacure社が販売するもの、例えばIGMレジンズ社製の光開始剤Omnirad102、BASF社製の光開始剤Irgacure(登録商標)184、1173、2959、MBF、754、651、369、907、1300、TPO、819、2100及び784、並びにランベルティ社製の光開始剤Esacure(登録商標)KIP100F及びKIP150;
・II型光開始剤として:ランベルティ社製の光開始剤Esacure(登録商標)TZT、BASF社製の光開始剤Irgacure(登録商標)BP、IGMレジンズ社製の光開始剤Omnirad CTX、DETX及びITX、並びにランベルティ社製の共開始Esacure(登録商標)EDB。
【0051】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る組成物は、少なくとも1種のI型光開始剤、より好ましくは少なくとも1種のα−ヒドロキシアセトフェノンを含む。
【0052】
別の好ましい実施形態によれば、本発明に係る組成物は、少なくとも1種のII型光開始剤、より好ましくは少なくとも1種のベンゾフェノン又は複数のベンゾフェノンの混合物を含む。
【0053】
最後に、本発明に係る組成物は、トリス(トリメチルシリル)シランFを含む。式(CH3Si)3SiHのこの化学化合物は、一般に「TTMSS」として知られている。これは、例えばAldrich社から市販されている。
【0054】
阻害剤Dと光開始剤EとTTMSSとのモル比は、好ましくは次のようなものである:
・TTMSSと阻害剤Dとのモル比が0.0001〜20の間、より好ましくは0.001〜5の間、さらに好ましくは0.001〜3の間にある;及び/又は
・TTMSSと光開始剤Eとのモル比が0.001〜10の間、より好ましくは0.005〜5の間、さらに好ましくは0.01〜2の間にある。
【0055】
本発明者は、上記阻害剤D、光開始剤E及びTTMSS Fが重付加硬化型シリコーン組成物において阻害系として有利に使用できることを見出した。全く驚くべきことに、これら3種の化合物の存在が相乗効果を発揮することが分かった:有利には、得られた阻害系は、ヒドロシリル化反応の良好な阻害を確保することを可能にすると同時に、既知の組成物と比較して改善された阻害解除速度を有することを可能にする。
【0056】
本発明のシリコーン組成物は硬化性である。このものは、照射源又は熱源にさらされたときにヒドロシリル化によって架橋することが可能である。これは、重付加反応により硬化できるシリコーン組成物である。
【0057】
好ましくは、本発明のポリオルガノシロキサンAは、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有する。好ましい実施形態によれば、このポリオルガノシロキサンAは、次のものを含む:
(i)式(A1)の少なくとも2個の単位:
abSiO(4-(a+b)/2 (A1)
(式中、
・Yは、少なくとも1個のアルケン官能基及び任意に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、2〜12個の炭素原子を含む一価基を表し、
・Zは、1〜20個の炭素原子を含み、かつ、アルケン又はアルキン官能基を含まない一価基を表し;
・a及びbは、整数を表し、aは1、2又は3であり、bは0、1又は2であり、(a+b)は1、2又は3である。)及び
(ii)任意に式(A2)の他の単位:
cSiO(4-c)/2 (A2)
(式中、
Zは上記と同一の意味を有し、
cは0〜3の間の整数を表す。)。
【0058】
式(A1)及び式(A2)において、いくつかの基Y及びZが存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよいと解される。
【0059】
式(A1)において、記号aは好ましくは1又は2、より好ましくは1とすることができる。
【0060】
さらに、式(A1)及び式(A2)において、Zは、少なくとも1個のハロゲン原子で置換されていてよい1〜8個の炭素原子を含むアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される一価基を表すことができる。Zは、有利には、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルよりなる群から選択される一価基を表すことができる。
【0061】
さらに、式(A1)において、Yは、有利には、ビニル、プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、9−デセニル、10−ウンデセニル、5,9−デカジエニル及び6,11−ドデカジエニルよりなる群から選択される基を表すことができる。
【0062】
ポリオルガノシロキサンAは、直鎖、分岐、環状又はネットワーク構造を表すことができる。
【0063】
このものが直鎖ポリオルガノシロキサンに関する場合には、これらのものは、次のものから本質的になる:
・式Y2SiO2/2、YZSiO2/2及びZ2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」並びに
・式Y3SiO1/2、Y2ZSiO1/2、YZ2SiO1/2及びZ3SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「M」。
【0064】
単位「D」の例としては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ及びメチルデカジエニルシロキシ基が挙げられる。
【0065】
単位「M」の例としては、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ、ジメチルヘキセニルシロキシ基が挙げられる。
【0066】
これらの直鎖ポリオルガノシロキサンは、25℃で1mPa.s〜100000mPa.sの間、好ましくは10mPa.s〜5000mPa.sの間の動粘度を有するオイル、又は25℃で100000mPa.sを超える動粘度を有するガムとすることができる。
【0067】
このものが環状ポリオルガノシロキサンに関するときに、これらのものは、式Y2SiO2/2、YZSiO2/2及びZ2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」から構成できる。このような単位「D」の例は上に記載されている。これらの環状ポリオルガノシロキサンは、25℃で1mPa.s〜5000mPa.sの間の動粘度を有することができる。
【0068】
本願で記載された全ての重合体の25℃での動粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用して測定できる。
【0069】
ポリオルガノシロキサンAの例は次のとおりである:
・ジメチルビニルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン;
・ジメチルビニルシリル末端基を有するポリ(メチルフェニルシロキサン−コ−ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端基を有するポリ(ビニルメチルシロキサン−コ−ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端基を有するポリ(ジメチルシロキサン−コ−ビニルメチルシロキサン);
・環状ポリメチルビニルシロキサン。
【0070】
本発明に係るオルガノヒドロゲノポリシロキサンBは、ケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子、好ましくは、ケイ素原子に結合した少なくとも3個の水素原子を有する。好ましい実施形態によれば、このポリオルガノシロキサンBは、次のものを含む:
(i)式(B1)の少なくとも2個の単位、好ましくは式(B1)の少なくとも3個の単位:
deSiO(4-(d+e))/2 (B1)
(式中、
・Lは水素原子以外の一価基を表し、
・Hは水素原子を表し、
・d及びeは整数を表し、dは1又は2であり、eは0、1又は2であり、(d+e)は1、2又は3である。)及び
任意に式(B2)の他の単位:
fSiO(4-f)/2 (B2)
(式中、
・Lは上記と同一の意味を有し、
・fは0〜3の間の整数を表す。)。
【0071】
上記式(B1)及び式(B2)において、いくつかの基Lが存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよいと解される。
【0072】
式(B1)において、記号dは、好ましくは1とすることができる。
【0073】
さらに、式(B1)及び式(B2)において、Lは、少なくとも1個のハロゲン原子で置換されていてよい1〜8個の炭素原子を含むアルキル基及びアリール基よりなる群から選択される一価基を表すことができる。Lは、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルよりなる群から選択される一価基を表すことができる。式(B1)の単位の例は、次のとおりである:H(CH32SiO1/2、HCH3SiO2/2及びH(C65)SiO2/2
【0074】
ポリオルガノシロキサンBは、直鎖、分岐、環状又はネットワーク構造を表すことができる。
【0075】
このものが直鎖ポリオルガノシロキサンに関する場合には、これらのものは、次のものから本質的になる:
・式HLSiO2/2及びL2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」並びに
・式HL2SiO1/2及びL3SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「M」。
【0076】
これらの直鎖ポリオルガノシロキサンは、25℃で1mPa.s〜100000mPa.sの間、好ましくは10mPa.s〜5000mPa.sの間の動粘度を有するオイル、又は25℃で100000mPa.sを超える動粘度を有するガムとすることができる。
【0077】
このものが環状ポリオルガノシロキサンに関するときに、これらのものは、式HLSiO2/2及びL2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」又は式HLSiO2/2のみのシロキシル単位から構成できる。式L2SiO2/2の単位は、本質的にジアルキルシロキシ又はアルキルアリールシロキシであることができる。これらの環状ポリオルガノシロキサンは、25℃で1mPa.s〜5000mPa.sの間の動粘度を有することができる。
【0078】
ポリオルガノシロキサンBの例は次のとおりである:
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端基を有するポリ(ジメチルシロキサン−コ−ヒドロゲノメチルシロキサン);
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するポリ(ジメチルシロキサン−コ−ヒドロゲノメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端基を有するポリヒドロゲノメチルシロキサン;
・環状ヒドロゲノメチルポリシロキサン。
【0079】
分岐又はネットワークのポリオルガノシロキサンに関する場合には、それらのものは次のものを含むこともできる:
・式HSiO3/2及びLSiO3/2の単位から選択されるシロキシル単位「T」;
・式SiO4/2のシロキシル単位「Q」。
【0080】
有利には、本発明のシリコーン組成物は、ポリオルガノシロキサン化合物A及びオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bを、ポリオルガノシロキサン化合物A中におけるケイ素原子に結合したアルケニル基に対するヒドロゲノポリシロキサン化合物B中におけるケイ素原子に結合した水素原子のモル比が好ましくは0.1〜10の間、より好ましくは0.5〜5の間であるような割合で含む。
【0081】
また、本発明のシリコーン組成物は、ヒドロシリル化触媒Cも含む。好ましくは、このものは、白金化合物、例えば、塩化白金酸六水和物、配位子としてジビニルテトラメチルジシロキサンとの白金錯体から構成されるカールシュテット触媒(例えば米国特許3775452号参照)又はカルベン配位子を含む白金触媒である。
【0082】
好ましくは、触媒Cが白金を含む場合には、阻害剤Dの量は、好ましくは、白金の重量に対して10重量ppm〜2000重量ppm、より好ましくは20重量ppm〜1000重量ppmである。
【0083】
他の補助剤及び一般的な添加剤を本発明の組成物に配合することができる。これらのものは、該組成物が使用される用途に応じて選択される。
【0084】
一般的な機能性添加剤の部類としては、次のものを挙げることができる:
・付着促進剤、例えば、ケイ素原子に結合した1個以上の加水分解性基と、(メタ)アクリレート、エポキシ及びアルケニル基よりなる群から選択される1個以上の有機基との両方を有する有機ケイ素化合物、さらに好ましくは次の化合物よりなる群から単独で又は混合物として選択されるもの:ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、メタクリロキシプロピルトリメトキシ(MEMO);
・シリカ粒子又は分岐ポリオルガノシロキサンなどの抗ミスト添加剤;
・付着調節剤;
・稠度増加添加剤;
・凍結防止剤;
・湿潤剤;
・消泡剤;
・充填剤;
・顔料;
・殺菌剤;
・耐熱性、耐油性又は耐火性添加剤、例えば金属酸化物。
【0085】
定量的な観点から、本発明による組成物は、当該技術分野において標準的な比率を有することができるが、ただし、目的用途も考慮しなければならない。
【0086】
本発明のシリコーン組成物は、当業者に知られている方法に従って様々な化合物を混合させることによって製造できる。好ましくは、ヒドロシリル化触媒は、この混合物に添加させる最後の化合物である。本発明において、阻害混合物(阻害剤、光開始剤及びTTMSS)の成分を別々に混合し、その後すぐに使用できる添加剤の形態の組成物の他の成分に添加することは排除されない。
【0087】
本発明のシリコーン組成物は、シリコーン被膜を製造するのに、特に非粘着性シリコーン被膜を製造するのに特に好適である。この被膜は、支持体を、通常は付着するであろう表面に対して非付着性にすることが可能である。また、本発明の主題は、基材上に非粘着性シリコーン被膜を製造するための方法であって、該基材の少なくともと一部に、本発明のシリコーン組成物を被覆し、その後この組成物を照射により硬化させる工程を含む方法でもある。
【0088】
支持体は、好ましくは可撓性材料から作られる。このものは、有利には、柔軟紙、ボール紙又は同様の支持体、可撓性織布又は不織布支持体、及び可撓性重合体支持体から選択できる。支持体の例としては、様々な種類の紙(スーパー仕上げ、被覆、グラシン)、厚紙、セルロースシート、プラスチック材料、特にポリエステル(例えばPET)、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルのフィルムが挙げられる。
【0089】
組成物は、当業者に知られている塗布装置、特に産業用高速被覆機を用いて、例えば100m/分以上、好ましくは300m/分、より好ましくは500〜1000m/分の速度で塗布できる。これらの装置は、支持体上に液体組成物を付着させるために、5個のローラー被覆ヘッド及びエアブレード又はイクオライザーを有するシステムを備える。組成物の付着量は、処理を受ける表面1m2当たり約0.1〜5gであり、これは約0.1〜5μm厚の層の付着に相当する。
【0090】
組成物で被覆された支持体は、波長が好ましくは200nm〜800nmの間にある放射線、好ましくは波長が好ましくは200nm〜400nmの間にあるUV照射に曝露される。一般的に使用されるUVランプは、水銀蒸気UVランプ(高圧、低圧、特に中圧)である。これらのランプに、ガリウム、インジウム、鉄又は鉛をドープして発光波長を変更することができる。これらのランプに含まれる金属は、電気アーク及びマイクロ波放電によって励起できる。現在産業上利用可能な他の放射線源は、365nm、375nm、385nm、395nm、400nm及び405nmを焦点とする発光スペクトルを有するLED又はハロゲンランプである。被覆された支持体を、任意に少なくとも40℃、好ましくは40℃〜190℃の間の温度に加熱して、本発明の組成物の硬化を促進させることができる。
【0091】
さらに、この硬化性シリコーン組成物を使用して硬質エラストマー材料を製造することもできる。硬質エラストマー材料を製造するための方法は、該組成物を照射によって、そして任意に硬化性シリコーン組成物を加熱することによって硬化させることからなる。
【0092】
これらの硬質エラストマー材料は、UVチャンバー内での成形又は押出といった当業者に知られている技術によって製造及び形成できる。エラストマー材料は、様々な厚さを有することができる。好ましくは、本発明では、エラストマー材料は、一般に、0.15mm〜1cmの間、好ましくは1mm〜1cmの間の薄い厚さを有する。エラストマー材料がそれよりも厚い厚さ、例えば1cm〜10cmの間を有している場合には、照射の波長を適合させて、それによってそれを材料に深く浸透させることが可能である。さらに、当業者に知られている感光性化合物をシリコーン組成物に添加することができる。この実施形態は、エラストマーチューブ、ケーブル又はロッドを製造し、電子部品を封入(ポッティング)するために特に好適である。
【0093】
本発明者は、本発明のシリコーン組成物が照射を受けたときに、反応を阻害するための系が不活性化され、該組成物がヒドロシリル化反応の影響によって硬化できることを示した。本発明のシリコーン組成物は、次の有利な特性を有する。
【0094】
・このシリコーン組成物は、良好な貯蔵安定性を有する:照射を受けることのないそのポットライフは、室温で12時間を超え、好ましくは15時間を超え、かつ、40℃では1時間を超える。これは、阻害系が効率的であることを示す。ヒドロシリル化反応は、有利には、シリコーン組成物の産業的な操作を可能にするのに十分な時間にわたって阻害される。
【0095】
・非常に有利なことに、本発明者は、阻害の解除が非常に迅速であることを見出した。シリコーン組成物の照射によってもたらされる阻害の解除の速度は、該組成物の架橋の開始を観察するのに必要な時間を測定することによって推定できる。
【0096】
・さらに、阻害の迅速な解除は、有利には、良好な架橋反応速度を伴う。阻害の迅速な解除と高い架橋速度との組み合わせにより、該組成物に対して短いゲル化時間を達成することが可能になる。本発明の阻害系を使用すると、該組成物のゲル化時間を有意に短縮することが可能になるが、ただし、該組成物の保存安定性を低下させない。
【0097】
・反応を阻害するための系は、既知の阻害剤よりも速い阻害解除を可能にする。その結果、同じ照射時間では、本発明のシリコーン組成物は、より少ない触媒で既知の組成物と同等に硬化することができる。したがって、本発明に係る組成物は、有利には、硬化速度を変更することなく、シリコーン組成物中におけるヒドロシリル化触媒の量を低減させることができる。
【0098】
・シリコーン組成物の硬化は照射によって活性化される。この方法は、実行が容易であり、かつ、硬化域を選択することができるため、熱的方法を介してより少ないエネルギーしか消費しないことが可能になるという利点を有する。有利には、照射は、組成物及びそれが付着する支持体の過度の加熱を引き起こすことはない。好ましくは、組成物及びその支持体は、50℃以下、より好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下の温度にさらされる。これらの温度は、一般に70℃〜200℃の間の温度に加熱されたオーブンの通過を必要とするシリコーン組成物を熱硬化させるに必要な温度よりも著しく短い。したがって、本発明の組成物は、感熱性支持体を被覆するために特に有用である。
【0099】
・本発明に係るシリコーン組成物は、大気中で使用できるところ、これは、他の光架橋性シリコーン組成物と比較して大きな産業上の利点を表す。具体的には、照射架橋性シリコーン組成物は、従来、酸素のない不活性雰囲気を必要とする場合が多いラジカル化学反応を使用する。本発明では、シリコーン組成物を硬化させるための反応はラジカル反応ではなく、本質的には重付加反応である。したがって、製造手段の不活性化は有利に不要である。
【0100】
本発明の他の目的、特徴及び利点は純粋に例示の目的で与えられ、決して限定的なものではない次の実施例から明らかになる。
【実施例】
【0101】

使用した試薬
・POSViA:ビニル鎖末端を有し、平均式Mvi75viであり、25℃での動的粘度=100mPa.sのポリジメチルシロキサンオイル(ここで、MVi=(CH32(ビニル)SiO1/2及びD=(CH32SiO2/2である)。
・POSHB:トリメチルシリル末端基を有し、平均式M2D’45であり、25℃での動的粘度が20mPa.sのポリメチルヒドロシロキサンオイル(ここで、M=(CH33SiO1/2及びD’=H(CH31SiO2/2である)。
・触媒C:2800質量ppmの元素Pt含有量を有する、シリコーンオイルで希釈したジビニルテトラメチルジシロキサン配位子との白金0の溶液。
・阻害剤D:真α−アセチレンアルコールである1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ECH)。
・光開始剤E:
−IGMレジンズ社が販売するOmnirad102:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−t−ブチル)フェニルプロパノン(I型光開始剤);
−ランベルティ社が販売するEsacure(登録商標)TZT:4−メチルベンゾフェノンと2,4,6−トリメチルベンゾフェノンとの混合物(II型光開始剤)。
【化8】
TTMSS:Aldrich社が販売するトリス(トリメチルシリル)シラン。
【0102】
シリコーン組成物の製造:
各処方物を以下の表に示す割合で次の方法で製造した:阻害剤Dを溶解が完了するまではPOSVI Aと混合した。POSH Bを、阻害剤D+POSVI Aの混合物に導入した。TTMSS F及び光開始剤Eを任意にこの3成分混合物に添加した(表に示された量で)。最後に、処方物を、触媒Cを添加することによって完成させた。
【0103】
実験プロトコール:
この系の阻害の持続時間を、処方物の流動学的挙動を監視することによって測定する。これを行うために、図1に示すような装置を使用した。この装置は、試験を受ける処方物2に浸漬する振動針1を備える。針の振動周波数を設定する。照射前に、処方物2は液体であり、針1は自由に振動する。このときに、信号処理装置3によって監視される出力電圧は高い。初期時間t0において、UV光4の光源をオンにし、そしてこの光はミラー5を介して処方物2を照射する。処方物2が架橋反応の影響下で硬化し始めると、針1の振動振幅が減少し、出力電圧が低下する。
【0104】
架橋の開始は、出力電圧がもはや一定ではない時間である。
【0105】
架橋速度を、時間に応じた出力電圧の曲線の傾きによって明らかにする。
【0106】
ここで、処方物のゲル化時間とは、時間に応じた出力電圧のドリフトの最小点であるとここで定義される。
【0107】
本発明に係るシリコーン処方物で試験を行う前に、装置内の温度を制御した。処方物2をシリコーンオイルで置換した。温度測定プローブをシリコーンオイル中に浸漬した。このサンプルに45分間照射した。最大到達温度は35℃である。
【0108】
試験及び結果:
全ての試験を同じ条件下で実施した(白金系触媒の導入時、混合物の均質化の時間及び態様、混合物の容量、様々な添加と照射期間と間の時間)。
【0109】
処方物を表1に示す割合で上記のとおり製造した:
【0110】
【表1】
【0111】
水銀ランプの電力は5.6W/cm2であった。
【0112】
試験1〜5中における時間に応じた振動針端子での出力電圧変化を示す曲線を図2に報告する。
【0113】
与えられた阻害剤D/触媒C比について、光開始剤なしでかつ阻害剤に対して大過剰のモル(2〜5のTTMSS/阻害剤Dモル比)で添加されたTTMSSは、架橋開始時及びゲル化時間にプラスの影響を及ぼすが、ただしその影響は限定されている(比較試験1、2及び3参照)。
【0114】
同じ条件下で、光開始剤Eを、TTMSSなし(比較試験4)で、3.7の光開始剤E/阻害剤Dのモル比で添加すると、架橋の開始時間及びゲル化時間により効率的な効果が得られる。
【0115】
最後に、光開始剤E及びTTMSSを一緒に添加したときに(本発明に係る試験5)、相乗効果が観察される:架橋開始が9分後に観察され、ゲル化時間は20.4分から11.7分に変化する(比較試験1及び本発明に係る試験5参照)。
【0116】
他の処方物を表2に示す割合で製造した。
【0117】
【表2】
【0118】
表2に記載された試験から得られた結果は、光開始剤なしのTTMSSの存在(比較試験9及び10)が、約0.2〜0.5のTTMSS/阻害剤Dのモル比について、架橋の開始及びゲル化時間に大きな影響を及ぼさないことを確認するものである。これらの場合には、ゲル化時間は、22〜24分の間である。
【0119】
光開始剤Eを添加すると(TTMSSを添加することなく)、より大きな効果が奏される。0.5の光開始剤E/阻害剤Dのモル比(比較試験7)について、ゲル化時間は、基準処方物(比較試験6)についての24分とは対照的に、16分である。
【0120】
試験11(本発明に係る)は、TTMSS及び光開始剤Eの存在の有益な影響を示す。基準処方物(比較試験6)に対するゲル化時間の45%の減少及び光開始剤Eのみを含む処方物(比較試験8)に対する23%の減少が観察される。
【0121】
他の処方物を以下の表3に示す割合で製造し、本発明の効果が確認された。
【0122】
【表3】
【0123】
II型光開始剤Eによる実現可能性試験:
いくつかの処方物を以下の表4に示す割合で製造した。
【0124】
【表4】
【0125】
II型光開始剤の添加は、I型光開始剤の添加と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0126】
1 振動針
2 処方物
3 信号処理装置
4 UV光
5 ミラー
図1
図2