(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234592
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】回転アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20171113BHJP
H02K 11/21 20160101ALI20171113BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K11/21
F16H1/32 B
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-542472(P2016-542472)
(86)(22)【出願日】2014年8月12日
(86)【国際出願番号】JP2014071337
(87)【国際公開番号】WO2016024340
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 修平
【審査官】
三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−166259(JP,U)
【文献】
特開平10−164797(JP,A)
【文献】
実開平3−54352(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 1/32
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターローター型のモーターと、
前記モーターから入力される入力回転を減速して出力する波動歯車装置と、
前記波動歯車装置の波動発生器および出力軸を、それらの中心軸線の方向に、貫通して延びる装置中空部と、
前記出力軸に一体回転するように固定され、前記装置中空部における前記出力軸の端面に開口している出力側開口を封鎖しているエンドカバーと、
前記出力軸の回転を検出する検出部と、
を有しており、
前記モーターは、前記装置中空部における前記波動発生器を貫通して延びる波動発生器側中空部に組み込まれたステーターおよびローターを備え、
前記検出部は、前記装置中空部内における前記エンドカバーと前記モーターの間に配置されている回転アクチュエータ。
【請求項2】
前記エンドカバーは、前記検出部によって回転位置が検出される回転検出板を備えている請求項1に記載の回転アクチュエータ。
【請求項3】
前記ステーターは、前記中心軸線の方向に貫通して延びるモーター中空部を備えたステーターコアを有し、
前記モーター中空部の一端は、前記装置中空部における前記波動発生器の端面に開口している反出力側開口端から外部に露出しており、
前記検出部の配線は、前記モーター中空部を通して外部に引き出されている請求項1に記載の回転アクチュエータ。
【請求項4】
前記モーター中空部は、前記配線と共に、封止部材によって封止されている請求項3に記載の回転アクチュエータ。
【請求項5】
前記波動発生器は、磁性体からなる筒状の剛性プラグ、および、前記剛性プラグに形成した非円形外周面に嵌めた波動発生器軸受けを備え、
前記モーターの前記ローターは、前記剛性プラグ、および、当該剛性プラグの内周面に固定したローターマグネットを備え、
前記剛性プラグは、前記波動発生器軸受けを挟み、前記中心軸線の方向の両側の部位において、外周側から第1軸受けおよび第2軸受けによって支持されている請求項1に記載の回転アクチュエータ。
【請求項6】
前記波動発生器軸受けに対して、前記中心軸線の方向における前記第1軸受けの側には、前記出力軸が配置され、前記第2軸受けの側には前記ローターにブレーキ力を付与可能なブレーキ機構が配置されている請求項5に記載の回転アクチュエータ。
【請求項7】
前記ステーターは、ステーターコアおよびステーターマグネットを備え、
前記ステーターコアはコア円筒部およびコア端板部を備え、
前記コア円筒部は前記装置中空部内に同軸に配置され、前記コア円筒部の一方の端部が前記装置中空部における前記波動発生器の端面に開口している反出力側開口から突出しており、
前記コア端板部は、前記コア円筒部の前記端部から半径方向の外方に広がって、前記反出力側開口を封鎖している請求項1に記載の回転アクチュエータ。
【請求項8】
前記波動歯車装置は、前記中心軸線の方向に並べて同軸に配置した第1の剛性内歯歯車および第2の剛性内歯歯車、前記第1、第2の剛性内歯歯車を相対回転自在の状態で支持している主軸受け、および、前記第1、第2の剛性内歯歯車の内側に配置された円筒状の可撓性外歯歯車を備え、
前記波動発生器は、磁性材からなる剛性プラグ、および、この剛性プラグに形成した非円形輪郭の外周面部分と前記可撓性外歯歯車の間に装着されている波動発生器軸受けを備え、
前記第1の剛性内歯歯車における前記第2の剛性内歯歯車とは反対側の部位には、前記出力軸が一体形成あるいは固定されており、
前記第2の剛性内歯歯車における前記第1の剛性内歯歯車とは反対側の部位には、筒状ケースが一体形成あるいは固定されており、
前記波動発生器軸受けを挟み、前記中心軸線の方向の一方の側に位置する前記出力軸の内周面に取り付けた第1軸受け、および、前記中心軸線の方向の他方側に位置する前記筒状ケースの内周面に取り付けた第2軸受けによって、前記剛性プラグが回転自在の状態で支持されており、
前記波動発生器側中空部は、前記剛性プラグを前記中心軸線の方向に貫通して延びており、
前記モーターのステーターは、前記波動発生器側中空部内に同軸に配置したステーターコア、および、前記ステーターコアの外周面に配置したステーターコイルを備え、
前記モーターのローターは、前記剛性プラグ、および、前記剛性プラグの内周面に固定したローターマグネットを備え、
前記ステーターコアはコア円筒部およびコア端板部を備え、
前記コア円筒部は前記装置中空部内に同軸に配置され、前記コア円筒部の一方の端部が前記装置中空部における前記波動発生器の端面に開口している反出力側開口から突出しており、
前記コア端板部は、前記コア円筒部の前記端部から半径方向の外方に広がって、前記反出力側開口を封鎖しており、
前記コア端板部の外周端部は前記筒状ケースに固定されている請求項1に記載の回転アクチュエータ。
【請求項9】
前記エンドカバーは、前記検出部によって回転位置が検出される回転検出板を備えている請求項8に記載の回転アクチュエータ。
【請求項10】
前記検出部の配線は、前記ステーターコアの前記コア円筒部内を通して外部に引き出されている請求項8に記載の回転アクチュエータ。
【請求項11】
前記コア円筒部の内部、前記配線と共に、封止部材によって封止されている請求項10に記載の回転アクチュエータ。
【請求項12】
前記ステーターコアの前記コア端板部と前記第2の剛性内歯歯車の間には、前記ローターにブレーキ力を付与可能なブレーキ機構が配置されている請求項8に記載の回転アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターローター型のモーターが中空型の波動歯車装置の中空部に組み込まれている構成の回転アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
モーターからの入力回転を波動歯車装置によって減速して出力する回転アクチュエータが知られている。この構成の回転アクチュエータは、特許文献1に記載されているように、軸線方向に波動歯車装置、モーターおよびエンコーダー(ブレーキ機構)が配列されるので、その軸線方向の寸法が大きくなる。
【0003】
特許文献2には、波動歯車装置の中空部内にモーターが組み込まれた回転アクチュエータが記載されている。この回転アクチュエータでは、アウターローター型のモーターのローターが、波動歯車装置の波動発生器の剛性プラグと、この剛性プラグの内周面に貼り付けたローターマグネットから構成されている。これにより、軸線方向の寸法が小さい偏平な回転アクチュエータが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5197174号公報
【特許文献2】特許第5327312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、波動歯車装置の中空部内にアウターローター型のモーターが組み込まれた回転アクチュエータの更なる小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の回転アクチュエータは、
アウターローター型のモーターと、
前記モーターから入力される入力回転を減速して出力する波動歯車装置と、
前記波動歯車装置の波動発生器および出力軸を、それらの中心軸線の方向に、貫通して延びる装置中空部と、
前記出力軸に一体回転するように固定され、前記装置中空部における前記出力軸の端面に開口している出力側開口を封鎖しているエンドカバーと、
前記出力軸の回転を検出する検出部と、
を有しており、
前記モーターは、前記装置中空部における前記波動発生器を貫通して延びる波動発生器側中空部に組み込まれたステーターおよびローターを備え、
前記検出部は、前記装置中空部内における前記エンドカバーと前記モーターの間に配置されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の回転アクチュエータでは、装置中空部の一方の開口端が、出力軸に取り付けたエンドカバーによって封鎖されている。エンドカバーによって、外部から装置内に水分、塵等の異物が侵入することが防止される。また、装置中空部内において、エンドカバーとモーターとの間の空間が検出部(センサ基板等)の設置場所とされる。勿論、モーター回路基板(モーター結線基板等)の設置場所とすることも可能である。
【0008】
装置中空部にモーターおよび検出部が組み込まれているので、偏平な回転アクチュエータを実現できる。
【0009】
ここで、エンドカバーは、検出部によって出力軸の回転位置を検出するために用いる回転検出板を備えていることが望ましい。
【0010】
水分、塵等の異物の侵入を防止するためのエンドカバーは、出力軸に取り付けられており、出力軸と一体となって回転する。エンドカバーに、ロータリーエンコーダーのスリット円盤等の回転検出板を取り付けておくことにより、あるいは、エンドカバーに回転検出板を一体形成しておくことにより、回転検出板の設置スペースを別途確保する必要がなくなる。よって、検出器の小型化、特に、軸線方向の寸法を小さくすることができる。
【0011】
ステーターが、中心軸線の方向に貫通して延びるモーター中空部を備えたステーターコアを有し、モーター中空部の一端が、装置中空部における波動発生器の端面に開口している反出力側開口端から外部に露出している場合には、検出部の配線は、モーター中空部を通して外部に引き出されていることが望ましい。
【0012】
検出部からの配線を半径方向の外側に引き出して、回転アクチュエータの外周側の部分に沿って引き出す場合には、配線が回転アクチュエータの外周面等に干渉するおそれがある。モーター中空部を配線スペースとして利用することにより、このような弊害を回避できる。
【0013】
また、この場合には、モーター中空部は、配線が引き出された状態で、当該配線と共に封止部材によって封止されていることが望ましい。
【0014】
次に、波動発生器が、磁性体からなる筒状の剛性プラグ、および、剛性プラグに形成した非円形外周面に嵌めた波動発生器軸受けを備えている場合には、モーターのローターは、剛性プラグ、および、当該剛性プラグの内周面に固定したローターマグネットを備えていることが望ましい。また、剛性プラグは、波動発生器軸受けを挟み、中心軸線の方向の両側の部位において、外周側から第1軸受けおよび第2軸受けによって支持されていることが望ましい。
【0015】
波動発生器の剛性プラグがモーターのローターヨークに兼用されるので、回転アクチュエータの径方向の寸法増加を抑制できる。また、剛性プラグが第1、第2軸受けによって両持ち状態で支持されているので、ローターの支持剛性を高めることができる。
【0016】
この場合、波動発生器軸受けに対して、中心軸線の方向における第1軸受の側には、出力軸が配置され、第2軸受けの側にはローターにブレーキ力を付与可能なブレーキ機構が配置されていることが望ましい。
【0017】
回転アクチュエータにおいて、波動発生器軸受け、可撓性外歯歯車および剛性内歯歯車が半径方向に重ねて配置されている部分の外径寸法が大きい。この部分に対して軸線方向に隣接する回転アクチュエータの外周側の部分にはデッドスペースができる。この部分を利用してブレーキ機構を配置することで、軸線方向および半径方向の寸法を大きくすることなく、回転アクチュエータにブレーキ機構を組み付けることができる。
【0018】
次に、装置中空部における出力側開口とは反対側の反出力側開口を、ステーターを用いて封鎖することができる。この場合には、例えば、次の構成を採用すればよい。すなわち、ステーターのステーターコアはコア円筒部およびコア端板部を備え、コア円筒部は装置中空部内に同軸に配置され、コア円筒部の一方の端部が装置中空部における波動発生器の端面に開口している反出力側開口から突出しており、コア端板部は、コア円筒部の端部から半径方向の外方に広がって、反出力側開口を封鎖している。
【0019】
ここで、波動歯車装置としては、大きな内径の装置中空部を確保するために、フラット型と呼ばれる波動歯車装置、または、シルクハット型と呼ばれる波動歯車装置を用いることが望ましい。
【0020】
波動歯車装置としてはフラット型の波動歯車装置を用いることができる。この場合には次の構成を採用することが望ましい。まず、波動歯車装置は、中心軸線の方向に並べて同軸に配置した第1の剛性内歯歯車および第2の剛性内歯歯車、第1、第2の剛性内歯歯車を相対回転自在の状態で支持している主軸受け、および、第1、第2の剛性内歯歯車の内側に配置された円筒状の可撓性外歯歯車を備えている。波動発生器は、磁性体からなる剛性プラグ、および、この剛性プラグに形成した非円形輪郭の外周面部分と可撓性外歯歯車の間に装着されている波動発生器軸受けを備えている。
【0021】
また、第1の剛性内歯歯車における第2の剛性内歯歯車とは反対側の部位には、出力軸が一体形成あるいは固定される。第2の剛性内歯歯車における第1の剛性内歯歯車とは反対側の部位には、筒状ケースが一体形成あるいは固定される。波動発生器軸受けを挟み、中心軸線の方向の一方の側に位置する出力軸の内周面に取り付けた第1軸受け、および、中心軸線の方向の他方側に位置する筒状ケースの内周面に取り付けた第2軸受けによって、剛性プラグが回転自在の状態で支持される。
【0022】
さらに、波動発生器側中空部は、剛性プラグを中心軸線の方向に貫通して延び、モーターのステーターは、波動発生器側中空部内に同軸に配置したステーターコア、および、ステーターコアの外周面に配置したステーターコイルを備えている。モーターのローターは、剛性プラグ、および、剛性プラグの内周面に固定したローターマグネットを備えている。ステーターコアはコア円筒部およびコア端板部を備え、コア円筒部は装置中空部内に同軸に配置され、コア円筒部の一方の端部が装置中空部における波動発生器の端面に開口している反出力側開口から突出しており、コア端板部は、コア円筒部の端部から半径方向の外方に広がって、前記反出力側開口を封鎖し、コア端板部の外周端部は円筒ケースに固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を適用した回転アクチュエータの出力側の端面を示す端面図および側面図である。
【
図2】
図1のII−II線で切断した部分を示す概略横断面図である。
【
図3】
図1、
図2の回転アクチュエータの変形例を示す概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した回転アクチュエータの実施の形態を説明する。
【0025】
(全体構成)
図1および
図2を参照して説明すると、本実施の形態に係る回転アクチュエータ1は、アウターローター型の中空モーター2と、この中空モーター2から入力される入力回転を減速して出力する波動歯車装置3とを備えている。
【0026】
波動歯車装置3には、その中心部分を、中心軸線1aの方向に貫通して延びる装置中空部4が形成されている。装置中空部4は、波動歯車装置3の入力要素である波動発生器5を貫通して延びる波動発生器側中空部4aと、波動歯車装置3の出力要素である出力軸6を貫通して延びる出力軸側中空部4bとから構成されており、波動発生器側中空部4aに比べて、出力軸側中空部4bの方が大径の中空部である。なお、以下の説明において、中心軸線1aに沿った方向において、出力軸6の側を出力側、出力軸6とは反対側を反出力側と呼ぶ。
【0027】
中空モーター2は、装置中空部4における波動発生器側中空部4a内に組み込まれたステーター7およびローター8を備えている。ステーター7は、波動発生器側中空部4a内に同軸に配置された円筒状の中空のステーターコア9と、ステーターコア9の外周面に取り付けたステーターコイル10とを備えている。ローター8は、波動発生器5(正確には、後述する波動発生器5の剛性プラグ25)と、当該波動発生器5の内周面(波動発生器側中空部4aの内周面)に固定したローターマグネット11とによって構成されている。ローターマグネット11は一定のギャップでステーターコイル10に対して外周側から対峙している。
【0028】
装置中空部4における出力軸6に形成した出力軸側中空部4bの側の開口である出力側開口端は、出力軸6に対して一体回転するように固定した円盤状のエンドカバー12によって封鎖されている。ステーターコア9は、波動発生器側中空部4a内に同軸に配置されているコア円筒部9dとコア端板部9aを備えている。コア円筒部9dの一方の端部は、波動発生器側中空部4aの側の開口である反出力側開口から突出している。コア端板部9aは、この端部から半径方向の外方に直角に折れ曲がって延びる円形輪郭の板部である。装置中空部4の反出力側開口は、コア端板部9aによって封鎖されている。
【0029】
(検出部)
装置中空部4内において、エンドカバー12と中空モーター2との間には、中心軸線1aの方向に所定の幅の偏平な円形断面の隙間が形成されている。この隙間には、中空モーター2の側に、モーター回路基板14が中心軸線1aに直交する状態に配置され、ステーターコア9の円環状端面9bに固定されている。モーター回路基板14におけるエンドカバー12の側には、ローター8(入力軸)の回転を検出する入力軸センサー部および出力軸6の回転を検出する出力軸センサー部を備えた検出部15が搭載されている。
【0030】
本例では、検出部15における不図示の出力軸センサー部に対して、中心軸線1aに沿った方向から対峙しているエンドカバー12の内側端面12aに、出力軸センサー部によって回転位置が検出される回転検出板15aが取り付けられている。例えば、光学式のロータリーエンコーダーの場合には、回転検出板15aは円周方向に一定の間隔で反射帯が形成された円盤であり、出力軸センサー部は反射型のフォトセンサーである。磁気式のセンサー機構を配置することも可能である。
【0031】
ここで、ステーターコア9の中空部16(モーター中空部)の中心軸線1aの方向の一方の端は、モーター回路基板14によって封鎖され、他方の端は開口端16aとなっている。この中空部16には、モーター回路基板14および検出部15から延びる複数本の配線17が通されて、開口端16aから外部に引き出されている。また、この中空部16は、配線17が引き出された状態で充填された封止部材18によって封止されている。
【0032】
(波動歯車装置)
本例の波動歯車装置3はフラット型波動歯車装置であり、中心軸線1aの方向に並べて同軸に配置した第1の剛性内歯歯車21および第2の剛性内歯歯車22を備えている。これら第1、第2の剛性内歯歯車21、22は、主軸受けであるクロスローラー軸受け23によって相対回転自在の状態で支持されている。クロスローラー軸受け23の外輪23aは第2の剛性内歯歯車22に固定され、その内輪23bは、第1の剛性内歯歯車21の外周部分に一体形成されている。これら第1、第2の剛性内歯歯車21、22の内側には、円筒状の可撓性外歯歯車24が配置されている。可撓性外歯歯車24の内側には波動発生器5が配置されている。
【0033】
波動発生器5は、磁性体からなる円筒状の剛性プラグ25と、この剛性プラグ25の外周面に形成した非円形輪郭の外周面部分25aおよび可撓性外歯歯車24の間に装着されている波動発生器軸受け26とを備えている。波動発生器軸受け26はボール軸受けであるが、コロ軸受けを用いて半径方向の寸法を小さくすることも可能である。剛性プラグ25の内周面に、ローターマグネット11が固定されており、剛性プラグ25とローターマグネット11によってローター8が構成されている。したがって、モーター2によって、波動歯車装置3の波動発生器5が直接、回転駆動される。
【0034】
ローター8として機能する剛性プラグ25は、中心軸線1aの方向において、波動発生器軸受け26の両側の部位で、第1軸受け27aおよび第2軸受け27bによって支持されている。これら第1、第2軸受け27a、27bの取付け部分の構造を以下に説明する。
【0035】
本例では、第1の剛性内歯歯車21の出力側(第2の剛性内歯歯車22とは反対側)の部位に、円筒状の出力軸6が一体形成されている。出力軸6を別部品として製造して、第1の剛性内歯歯車21に同軸に締結固定してもよい。また、第2の剛性内歯歯車22における第1の剛性内歯歯車21とは反対側の部位には、円筒ケース28(筒状ケース)が一体形成されている。円筒ケース28を別部品として製造して、第2の剛性内歯歯車22に同軸に締結固定してもよい。この円筒ケース28にはモーター2のステーターコア9が同軸に締結固定されている。すなわち、円筒ケース28の円環状端面に、ステーターコア9のコア端板部9aの円環状の外周側端部9cが同軸に締結固定されている。
【0036】
第1軸受け27aは、出力軸6の内周面と、剛性プラグ25における出力側の軸端部に同軸に固定した円筒体29の外周面との間に装着されている。すなわち、剛性プラグ25における楕円状の外周面部分25aの隣には円形の外周面部分25bが形成され、ここに、円筒体29が同軸に固定されている。この円筒体29を介して、剛性プラグ25の一方の軸端部が第1軸受け27aによって支持されている。
【0037】
第2の剛性内歯歯車22の側の円筒ケース28の内周面は、剛性プラグ25における楕円状の外周面部分25aの隣の円形の外周面部分25cに対峙している。これらの間に、第2軸受け27bが装着されている。すなわち、剛性プラグ25の反出力側の軸端部は、第2軸受け27bによって支持されている。
【0038】
このように、モーター2のローター8として機能する剛性プラグ25は軸線方向に長い円筒であり、その両側の軸端部が第1、第2軸受け27a、27bによって支持されている。よって、剛性プラグ25の支持剛性を高めることができる。
【0039】
ここで、本例では、第1軸受け27aの出力側には第1オイルシール31が配置され、波動歯車装置3の側から中空モーター2の内部に潤滑剤が混入することを防止している。第1オイルシール31は、円筒体29の外周面と出力軸6の内周面との間に装着されている。また、第2軸受け27bの反出力側にも、同様に、第2オイルシール32が配置されている。第2オイルシール32は、剛性プラグ25の軸端部の外周面部分と、第2の剛性内歯歯車22に一体形成した円筒ケース28の内周面との間に装着されている。
【0040】
図2において一点鎖線で示すように、回転アクチュエータ1にはブレーキ機構40を組み付けることも可能である。回転アクチュエータ1において、波動発生器軸受け26が配置されている部分は、その外周側に、波動歯車装置3の可撓性外歯歯車24および第1、第2の剛性内歯歯車21、22が配置されるので、外径寸法が大きい。この部分に対して反出力側の外周側の部分にはデッドスペースができる。この部分を利用してブレーキ機構40を配置することで、中心軸線1aの方向および半径方向の寸法を大きくすることなく、回転アクチュエータ1にブレーキ機構40を組み付けることができる。
【0041】
この構成の回転アクチュエータ1では、モーター2の回転が波動歯車装置3によって減速され、減速回転が第1の剛性内歯歯車21および出力軸6を介して取り出される。出力軸6の回転は検出部15によって検出される。すなわち、検出部15は、出力軸6と一体回転するエンドカバー12に取り付けた回転検出板15aの回転位置を検出する。
【0042】
(回転アクチュエータの変形例)
図3は、上記の回転アクチュエータ1の変形例を示す概略横断面図である。本例の回転アクチュエータ1Aは、回転アクチュエータ1と基本構成が同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0043】
回転アクチュエータ1Aでは、第1、第2オイルシール31、32を省略してある点が相違している。回転アクチュエータ1Aにおける出力側の端はエンドカバー12で封鎖され、反出力側の端はステーターコア9のコア端板部9aによって封鎖されている。したがって、第1、第2オイルシール31、32を省略しても、潤滑剤が外部に漏れ出ることはない。また、第1、第2オイルシール31、32を省略することで、ローター8に作用する摩擦が低減し、無負荷ランニングトルクの低減に役立ち、回転アクチュエータ1Aの偏平化にも有利である。
【0044】
ここで、中空モーター2の側に潤滑剤が侵入してもモーター機能には問題がない。本例では、出力側に配置されている検出部15として、潤滑剤が侵入してもセンシング機能に影響のないものを使用している。よって、検出部15に潤滑剤が侵入しても問題がない。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記の回転アクチュエータ1、1Aは、フラット型波動歯車装置3を使用している。フラット型波動歯車装置3の代わりに、シルクハット型波動歯車装置を用いることができる。
【0046】
この場合には、上記の回転アクチュエータ1、1Aにおいて、円筒状の可撓性外歯歯車および第2の剛性内歯歯車の代わりに、シルクハット形状をした可撓性外歯歯車を配置する。そして、可撓性外歯歯車の円環状のボスを、主軸受けの外輪23aと円筒ケース28の間に挟み、これら三部材を締結固定すればよい。
【0047】
モーター2の回転が、可撓性外歯歯車と剛性内歯歯車の間の歯数差に応じて減速され、減速回転が剛性内歯歯車21および出力軸6を介して取り出される。