特許第6234617号(P6234617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234617可撓性ペルチェデバイス及び温度調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234617
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】可撓性ペルチェデバイス及び温度調整装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20171113BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20171113BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 25/04 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H01L35/32 A
   F25B21/02 Z
   F25B21/02 A
   !B32B25/04
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-568759(P2016-568759)
(86)(22)【出願日】2016年1月8日
(86)【国際出願番号】JP2016050530
(87)【国際公開番号】WO2016111359
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-3292(P2015-3292)
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595015890
【氏名又は名称】株式会社朝日FR研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 和久
(72)【発明者】
【氏名】安部 浩一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 延由
(72)【発明者】
【氏名】豊島 周平
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−302168(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/032728(WO,A1)
【文献】 特開2014−062224(JP,A)
【文献】 特開2007−153026(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00−34
H02N 11/00
F25B 21/02
B60H 1/32
B32B 25/04
B32B 25/20
B32B 27/18
C08J 5/12
C08J 5/18
C09J 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性フィラーが配合されており、架橋シリコーンゴム及び/又はこれと非シリコーンゴムとの共ブレンド物で形成した熱伝導性ゴムからなる可撓性を有する放熱シートの一面側に、1個又は複数個のペルチェ素子が配設されており、
前記ペルチェ素子を構成する各半導体素子の冷却側と加熱側との少なくとも一方側と、架橋している前記放熱シートとの接合面が乾式処理面であり、互いの表面の活性基を、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、及びイソブチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種である分子接着剤の単分子を介した間接的な共有結合により接合されて一体化されていることを特徴とする可撓性ペルチェデバイス。
【請求項2】
曲面を有する温度調整対象の温度調整装置として、前記曲面に沿って装着できる請求項1に記載の可撓性ペルチェデバイスが用いられることを特徴とする温度調整装置。
【請求項3】
前記放熱シートの一面側に配設された複数個の前記ペルチェ素子が所定の間隔で配設されていることを特徴とする請求項2に記載の温度調整装置。
【請求項4】
前記ペルチェ素子の間隔がペルチェ素子の1辺の長さの1から10倍の長さであることを特徴とする請求項3に記載の温度調整装置。
【請求項5】
前記熱伝導性ゴム、前記熱伝導性フィラーとしての金属酸化物、及び/又は金属窒化物が配合されており、前記放熱シートの熱伝導率が1W/m・K以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の温度調整装置。
【請求項6】
前記放熱シートの厚さが0.01〜10mmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の温度調整装置。
【請求項7】
前記ペルチェ素子を構成する各半導体素子の冷却側と加熱側との両側に、前記放熱シートが分子接着剤処理で接合されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の温度調整装置。
【請求項8】
前記ペルチェ素子と前記放熱シートとが、コロナ処理、プラズマ処理及び紫外線照射処理から選ばれる乾式処理と分子接着剤処理とによって前記共有結合により、接合して一体化していることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性の放熱シートに複数のペルチェ素子が配設された可撓性ペルチェデバイス及び電圧の印加によるペルチェ素子の発熱現象又は冷却現象を利用した温度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱・冷却装置には、加熱源又は冷却源として、セラミック板の一面側にP型半導体素子とN型半導体素子とを直列に接続したペルチェ素子が用いられているものがある。このような従来のペルチェ素子は柔軟性に欠けることから、下記特許文献1には、真空蒸着法やスッパタ法等により形成した薄膜状のP型半導体素子とN型半導体素子とを直列に接続した複数のペルチェ素子を所定の間隔を介して一面側に配設したポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート等の絶縁樹脂からなる柔軟性を有する電気絶縁シートを、各ペルチェ素子が傾斜面に位置するように折り曲げた波型を熱交換シートに貼り付けて形成した三角形の空間内に、熱交換を行うチューブを挿入した熱電変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−146640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された熱電変換装置によれば、薄膜状のペルチェ素子が柔軟性を有するポリイミド樹脂等の絶縁樹脂からなる絶縁シートを波型に降り曲げることができるが、ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂は伝熱特性が劣り、ペルチェ素子と熱交換を行うチューブとの熱交換特性が低下するおそれがある。また、電気絶縁シートとペルチェ素子との接合力が不十分であることから、電気絶縁シートを波型に折り曲げる際に、ペルチェ素子も折り曲げられると、ペルチェ素子に加えられた応力により両者が剥離するおそれがある。このため、特許文献1の熱電変換装置では、電気絶縁シートを波型に折り曲げる際に、ペルチェ素子が折り曲げられるおそれを回避すべく、ペルチェ素子は波型に折り曲げられた電気絶縁シートの傾斜面に位置している。
【0005】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、ペルチェ素子と伝熱対象との出熱交換特性を向上でき、且つペルチェ素子が接合された可撓性の放熱シートを、両者の剥離をおそれることなく曲折できる可撓性ペルチェデバイス及び温度調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされた本発明に係る可撓性ペルチェデバイスは、熱伝導性フィラーが配合されており、架橋シリコーンゴム及び/又はこれと非シリコーンゴムとの共ブレンド物で形成した熱伝導性ゴムからなる可撓性を有する放熱シートの一面側に、1個又は複数個のペルチェ素子が配設されており、前記ペルチェ素子を構成する各半導体素子の冷却側と加熱側との少なくとも一方側と、架橋している前記放熱シートとの接合面が乾式処理面であり、互いの表面の活性基を、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、及びイソブチルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種である分子接着剤の単分子を介した間接的な共有結合により接合されて一体化されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記の目的を達成するためになされた本発明に係る温度調整装置は、曲面を有する温度調整対象の温度調整装置として、前記曲面に沿って装着できる前記可撓性ペルチェデバイスが用いられることを特徴とするものである。
【0008】
前記ペルチェ素子の間隔は、間隔があまりにも狭すぎるとペルチェデバイスとして柔軟性がなくなる傾向にあり、間隔があまりにも広すぎると温度調整が困難となる傾向にあることから、ペルチェ素子の1辺の長さの1から10倍の長さ(より好ましくはペルチェ素子の1辺の長さの2から5倍の長さ)であることが、温度調整対象に装着された可撓性ペルチェデバイスの放熱シートとの肌触りが良好となり好ましい。
【0009】
前記熱伝導性ゴム、前記熱伝導性フィラーとしての金属酸化物、及び/又は金属窒化物が配合されており、前記放熱シートの熱伝導率が1W/m・K以上であることが、ペルチェ素子と温度調整対象との熱交換特性を改善できる。
【0010】
前記放熱シートの厚さは、あまりにも薄すぎると加工が困難となる傾向にあり、あまりにも厚すぎると熱伝導性が低くなる傾向があることから、0.01mm〜10mm(より好ましくは0.05mm〜2mm)の厚さであることが、放熱シートが可撓性と強度とを併有でき好ましい。
【0011】
前記ペルチェ素子を構成する各半導体素子の冷却側と加熱側との両側に、前記放熱シートが分子接着剤処理で接合されていることが、温度調整対象の曲面に沿って可撓性ペルチェデバイスの冷却面と加熱面との任意の面側を装着でき、且つ温度調整対象の表面が凹凸面であっても、可撓性の放熱シートが凹凸面に倣って密着でき、熱交換特性を向上できる。
【0012】
温度調整装置は、前記ペルチェ素子と前記放熱シートとが、コロナ処理、プラズマ処理及び紫外線照射処理から選ばれる乾式処理と分子接着剤処理とによって前記共有結合により、接合して一体化していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る可撓性ペルチェデバイスによれば、ペルチェ素子と熱伝導対象との伝熱特性を向上でき、且つ可撓性を有する放熱シートを折り曲げる際に、各半導体素子と放熱シートとが剥離されるおそれを解消できる。このような可撓性ペルチェデバイスを用いた本発明に係る温度調整装置によれば、温度調整対象の曲面に沿って可撓性ペルチェデバイスを、ペルチェ素子を構成する各半導体素子と放熱シートとの剥離を防止しつつ折り曲げて装着でき、放熱シートの伝熱性が向上されていることから、温度調整対象の温度調整をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの一例を示す斜視図である。
図2】本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの一例の部分断面図である。
図3】本発明を適用する温度調整装置の一例を装着したハンドルの正面図である。
図4】本発明を適用する温度調整装置の一例を装着したハンドルの部分断面図である。
図5】本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの他の例の部分断面図である。
図6】本発明を適用する温度調整装置の他の例を装着したハンドルの部分断面図である。
図7】本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの他の例を凹凸面に装着した状態を示す部分断面図である。
図8】本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの他の例の部分断面図である。
図9】ペルチェ素子14の加熱側に接合した放熱シート12の経時温度変化を測定した本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの正面図及びその断面図である。
図10】ペルチェ素子14の加熱側に接合した熱伝導性フィラー非含有のシート18の経時温度変化を測定した本発明の適用外の可撓性ペルチェデバイスの断面図である。
図11】ペルチェ素子14の加熱側に接合した放熱シート12又は熱伝導性フィラー非含有のシート18の経時温度変化の測定結果を示すグラフである。
図12】ペルチェ素子14の加熱側に接合した三層構造体22の経時温度変化を測定した本発明の適用外の可撓性ペルチェデバイスの断面図である。
図13】ペルチェ素子14の加熱側に接合した三層構造体22の経時温度変化の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0016】
図1に本発明を適用する可撓性ペルチェデバイスの一例を示す。図1に示す可撓性ペルチェデバイス10は、放熱シート12の一面側に、複数のペルチェ素子14の各々が所定の間隔を介して配設されているものである。放熱シート12は、熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性ゴムからなり、可撓性を有するものである。この熱伝導性ゴムは、ゴム成分中に熱伝導性フィラーが配合されているものである。熱伝導性フィラーとしては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化珪素(Si)、ダイヤモンド、カーボン、フラーレン、カーボングラファイト又はこれらの2種以上の組み合わせを挙げることができる。熱伝導性フィラーの配合量は50〜95重量%(より好ましくは65〜90重量%)とすることが好ましい。
【0017】
ゴム成分は、少なくともゴム材料を含むゴム組成物で形成されているものである。ゴム材料としては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。これらのゴム材料のうち、柔軟性、タック性、及び追従性を向上させる観点からはシリコーンゴムであると好ましく、気体透過性を低下させ防水性を高める観点からはEPDMであると好ましい。
【0018】
ゴム材料のシリコーンゴムは、主成分が、パーオキサイド架橋シリコーンゴム、付加架橋シリコーンゴム、縮合架橋シリコーンゴム、又はこれらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物である。シリコーンゴムで形成された放熱性ゴム絶縁体5を用いることで、−40℃〜200℃のような広い温度範囲で高い柔軟性を示し、耐屈曲疲労性や追従性を向上することができ、またヒートショックによる膨張を防ぐことができる。これらシリコーンゴムは、数平均分子量で1万〜100万のものである。
【0019】
パーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0020】
共存させるパーオキサイド系架橋剤として、例えばケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0021】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類や、そのシリコーンゴムで形成された放熱性ゴム絶縁体5の性質や、必要に応じて使用されるシランカップリング剤の性質に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜2質量部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋度が高すぎてシリコーンゴムの弾性が低減してしまう。
【0022】
また、付加架橋型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーで例示されるH基含有ポリシロキサンの組成物、
アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンで例示されるアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーで例示されるエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンで例示される酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0023】
これらの組成物から熱伝導性ゴムを作製する際には、これらの組成物と熱伝導性フィラーとを混練した後、所定温度で所定時間加熱することによって得ることができる。加熱温度及び加熱時間等の作成条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜200℃で、1分間〜24時間加熱するというものである。これにより熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性の付加架橋型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0024】
また、縮合架橋型シリコーンゴムは、スズ系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフロロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーで例示されるシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物、
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt−ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ−n−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N−メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランで例示される架橋剤との組成物、又は
これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンで例示される末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0025】
これらの組成物から熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性の縮合架橋型シリコーンゴムを作成する際には、これらの組成物と熱伝導性フィラーとを混練した後、所定温度で所定時間加熱することによって得ることができる。加熱温度及び加熱時間等の作成条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0〜100℃で、10分間〜24時間加熱するというものである。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0026】
熱伝導性ゴムは、シリコーンゴムと非シリコーンゴムとの共ブレンド物であってもよい。非シリコーンゴムとしては、4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、塩素化エチレン・プロピレンゴム、塩素化ブチルゴム等のオレフィン系ゴム、天然ゴム、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンオキサイド−エピクロロヒドリン共重合体ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、臭素化ブチルゴムテトラフロロエチレン、ヘキサフロロプピレン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロロエチレンなどの単独重合体ゴム及びこれらの二元及び三元共重合体ゴム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、エチレンアクリルゴム、エポキシゴム、ウレタンゴム、両末端不飽和基エラストマー等の線状重合体で例示される原料ゴム状物質の配合物を架橋させたものが挙げられる。これらは単独で用いられても複数混合して用いられてもよい。
【0027】
他のゴム材料としては、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。
【0028】
このような熱伝導性ゴムからなる放熱シート12は、可撓性を有するものであって、その厚さは、あまりにも薄すぎると加工が困難となり易く、あまりにも厚すぎると熱伝導性が低くなり易いことから、0.01〜10mmの厚さ(より好ましくは0.05mm〜2mmの厚さ)とすることが好ましい。厚さが0.01mm未満の放熱シート12は強度が不充分となり加工が困難となる傾向があり、厚さが10mmを超える放熱シート12は可撓性が不足し熱伝導性が低くなる傾向がある。また、放熱シート12の熱伝導率は、1W/(m・K)以上(より好ましくは1〜5W/(m・K))であることが好ましい。熱伝導率が1W/(m・K)未満の放熱シート12を用いた場合には、放熱シート12の伝熱性が低下して放熱性能が低下する傾向にある。
【0029】
放熱シート12は、複数のペルチェ素子14の各々との表面の活性基が共有結合し易くなるように、白金触媒、例えば1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)触媒(Pt(dvs))2.1−2.4%キシレン溶液(Gelest社製品)のような白金錯体を、白金換算で10〜1000ppmの濃度で含んでいることが好ましい。また、放熱シート12は、ビニルアルコキシシリル基を有するビニルアルコキシシランユニットが2〜6ユニットのシランカップリング剤、例えばポリビニルメトキシシロキサンを、0.5〜10重量部の濃度で含んでいることが、複数のペルチェ素子14の各々との表面の活性基が共有結合し易くなり好ましい。シランカップリング剤のビニル基と、シリコーンゴムポリマー内のビニル基やハイドロジェンシロキサン基とがパーオキサイドや白金触媒により共有結合するエーテル結合とは別な共有結合によって一層強固に接合できるようになる。このとき、白金触媒を含んでいると一層、共有結合し易くなるので好ましい。
【0030】
ペルチェ素子14は、図2に示すようにN型半導体素子14aとP型半導体素子14bとが導電性パターン14c、14cで直列に連結されているものである。このようなペルチェ素子14は、その構成するN型半導体素子14aとP型半導体素子14b(以下構成半導体素子という)の各々と放熱シート12との接合面が、互いの表面に有する活性基、例えば水酸基(−OH)やヒドロキシシリル基(−SiOH)のような反応性活性基同士で、共有結合により直接、化学結合して分子接着することにより、強固に接合している。このような化学結合は、OH基同士の脱水によるエーテル結合であることが好ましい。
【0031】
放熱シート12と構成半導体素子とは、接合面となる少なくとも何れかの表面の一部又は全部に、コロナ処理、プラズマ処理、又は紫外線照射処理のような乾式処理が施されていてもよい。紫外線照射処理とは、紫外線を照射する処理であれば限定されないが、広域波長域又は複数波長の紫外線を照射する一般的な紫外線処理(UV処理)であってもよく、単一波長と見做せるエキシマ紫外線を照射するエキシマ紫外線処理(エキシマUV処理)であってもよい。これらの乾式処理により、その表面が元来有する水酸基のような活性基の他にさらに活性基を生成することができ、元来有する活性基や活性化されて生成した活性基が、対峙し合う表面で互いに共有結合、具体的には脱水して強固な共有結合であるエーテル結合を生じることで、放熱シート12と構成半導体素子とを化学的に直接、接合することができる。
【0032】
放熱シート12と構成半導体素子とは、分子接着剤を介した共有結合により、接合して一体化していてもよい。分子接着剤処理とは、分子接着剤の分子中の官能基が被着体と共有結合による化学反応することによって、構成半導体素子の各々と放熱シート12とを、単分子乃至は多分子の分子接着剤分子による共有結合を介して直接結合するものである。分子接着剤は、二つの官能基が被着体である構成半導体素子の各々と放熱シート12とに各々化学反応して共有結合を形成するもので、このような両官能性の分子の総称であり、具体的には、シランカップリング剤をはじめとする各種カップリング剤が挙げられる。
【0033】
分子接着剤は、より具体的には、
トリエトキシシリルプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(TES)、アミノエチルアミノプロピル トリメトキシシランのようなアミノ基含有化合物;
トリエトキシシリルプロピルアミノ基のようなトリアルコキシシリルアルキルアミノ基とメルカプト基又はアジド基とを有するトリアジン化合物、下記化学式(I)
【化1】
(式(I)中、Wは、スペーサ基、例えば置換基を有していてもよいアルキレン基、アミノアルキレン基であってもよく、直接結合であってもよい。Yは、OH基又は加水分解や脱離によりOH基を生成する反応性官能基、例えばトリアルコキシアルキル基である。−Zは、−N又は−NRである。但し、R,Rは同一又は異なりH又はアルキル基、−RSi(R(OR3−m[R,Rはアルキル基、RはH又はアルキル基、mは0〜2]。なお、アルキレン基、アルコキシ、アルキル基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の炭化水素基である。)で表わされるトリアジン化合物;
トリアルコキシシリルアルキル基を有するチオール化合物;
トリアルキルオキシシリルアルキル基を有するエポキシ化合物;
CH2=CH-Si(OCH3)2-O-[Si(OCH3)2-O-]n-Si(OCH3)2-CH=CH2 (n=1.8〜5.7)で例示されるビニルアルコキシシロキサンポリマーのようなシランカップリング剤
が挙げられる。
【0034】
また分子接着剤は、アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、市販のシランカップリング剤、具体的にはビニルトリメトキシシラン(KBM-1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE-1003)で例示されるビニル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-402)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-402)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-403)で例示されるエポキシ基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン(KBM-1403)で例示されるスチリル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-502)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-503)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103)で例示される(メタ)アクリル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(KBE-585)で例示されるウレイド基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)で例示されるメルカプト基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE-846)で例示されるスルフィド基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE-9007)で例示されるイソシアネート基及びアルコキシ含有シランカップリング剤(以上、何れも信越シリコーン株式会社製;商品名)が挙げられ、またビニルトリアセトキシシラン(Z-6075)で例示されるビニル基及びアセトキシ含有シランカップリング剤;アリルトリメトキシシラン(Z-6825)で例示されるアリル基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン(Z-6366)、ジメチルジメトキシシラン(Z-6329)、トリメチルメトキシシラン(Z-6013)、メチルトリエトキシシラン(Z-6383)、メチルトリフェノキシシラン(Z-6721)、エチルトリメトキシシラン(Z-6321)、n-プロピルトリメトキシシラン(Z-6265)、ジイソプロピルジメトキシシラン(Z-6258)、イソブチルトリメトキシシラン(Z-2306)、ジイソブチルジメトキシシラン(Z-6275)、イソブチルトリエトキシシラン(Z-6403)、n-ヘキシトリメトキシシラン(Z-6583)、n-ヘキシトリエトキシシラン(Z-6586)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(Z-6187)、n-オクチルトリエトキシシラン(Z-6341)、n-デシルトリメトキシシラン(Z-6210)で例示されるアルキル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン(Z-6124)で例示されるアリール基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;n-オクチルジメチルクロロシラン(ACS-8)で例示されるアルキル基及びクロロシラン基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン(Z-6697)で例示されるアルコキシシランであるシランカップリング剤(以上、何れも東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0035】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤は、ヒドロシリル基(SiH基)含有アルコキシシリル化合物、例えば、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(n-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
(n-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C3H7)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C4H9)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p1Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p2Si(C2H5)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiOSiH(CH3)O[SiH(CH3)O]p4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSiOCH3CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p8Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p10[Si(CH3)2O]q2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p11[Si(CH3)2O]q3Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p13Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p14Si(CH3)3
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p15Si(CH3)2H、
Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p16Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p17Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p18Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(CH3O)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p36[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q4Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p37[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q5Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p38[SiCH3(C6H5)O]q6Si(CH3)2H、
Si(OC2H5)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p39[SiCH3(C6H5)O]q7Si(CH3)2H、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p40[SiCH3(C6H5)O]q8Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(C2H5O)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]p41[SiCH3(C6H5)O]q9Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OC2H5)3CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]p42[SiCH3(C6H5)O]q10Si(CH3)2H
であってもよい。これらの基中、p1〜p42及びq1〜q10は1〜100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1〜99個有していることが好ましい。
【0036】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤は、ヒドロシリル基を含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2(CH2)7CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)OSi(OC2H5)CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH=CH2
(CH3O)2Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]t1Si(OCH3)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t3CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t4CH=CH2
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t5CH=CH2
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t6CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t7CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u1Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u2[Si(CH3)2O]t8Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiCH3(OC2H5)O]u3Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
が挙げられる。これらの基中、t1〜t8及びu1〜u5は1〜30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1〜30個有していることが好ましい。
【0037】
これらのビニル基とSiH基とを金属触媒、例えば白金含有化合物で反応促進し、基材シートとゴムシートとを接合してもよい。
【0038】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、アルコキシシリル基を両末端に含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH=CHSi(OC2H5)3
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
(CH3O)3Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3
(C2H5O)2Si(OC2H5)2
(CH3O)2CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
(C2H5O)2CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
(CH3O)3SiO[Si(OCH3)2O]v1Si(OCH3)3
(C2H5O)3SiO[Si(OC2H5)2O]v2Si(OC2H5)3
(C3H7O)3SiO[Si(OC3H7)2O]v3Si(OC3H7)3
であってもよい。これらの基中、v1〜v3は0〜30までの数である。
【0039】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、加水分解性基含有シリル基を含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
CH3Si(OCOCH3)3、(CH3)2Si(OCOCH3)2、n-C3H7Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、C6H5Si(OCOCH3)3、CF3CF2CH2CH2Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、CH3OSi(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si(OCOC3H7)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、(CH3)2Si[OC(CH3)=CH2]3、n-C3H7Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、C6H5Si[OC(CH3)=CH2]3、CF3CF2CH2CH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3OSi[OC(CH3)=CH2]3、C2H5OSi[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、(CH32Si[ON=C(CH3)C2H5]2、n-C3H7Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、C6H5Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CF3CF2CH2CH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]3、C2H5OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3Si[N(CH3)]3、(CH3)2Si[N(CH3)]2、n-C3H7Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、C6H5Si[N(CH3)]3、CF3CF2CH2CH2Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、CH3OSi[N(CH3)]3、C2H5OSi[N(CH3)]3、CH3Si[N(CH3)]3などの昜加水分解性オルガノシランであってもよい。
【0040】
このアルコキシ基を有するアミノ基含有のシランカップリング剤として、市販のシランカップリング剤、具体的にはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM-575)で例示されるアミノ基含有アルコキシシリル化合物(以上、信越シリコーン株式会社製;商品名)が挙げられ、また3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6610)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6611)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6094)、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6883)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-[(エテニルフェニル)メチル-1,2-エタンジアミン・塩酸塩(Z-6032)で例示されるアミノ基含有アルコキシシリル化合物(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0041】
乾式処理と分子接着剤処理とは、それぞれ何れか一方のみ施してもよく、それらを連続的に交互に施してもよい。例えば、乾式処理のみで接合していてもよく、乾式処理に引き続く分子接着剤処理で接合していてもよく、乾式処理に引き続く分子接着処理とさらに乾式処理とで接合していてもよい。また、分子接着剤処理のみで接合していてもよく、分子接着剤処理に引き続く乾式処理で接合していてもよく、分子接着処理引き続く乾式処理とさらに分子接着処理とで接合していてもよい。
【0042】
このように図1に示す可撓性ペルチェデバイス10は、ペルチェ素子14の構成半導体素子と可撓性を有する熱伝導性ゴムからなる放熱シート12とが、直接的な及び/又は分子接着剤を介した間接的な共有結合により接合されて一体化されていることから、両者を十分に接合でき、放熱シート12を折り曲げる際に、ペルチェ素子14の各構成半導体素子と放熱シート12とが剥離されるおそれを解消できる。更に、放熱シート12は、伝熱特性が向上されて熱拡散性が良好であることから、ペルチェ素子14の各々と伝熱対象との伝熱特性を向上できる。
【0043】
図1に示す可撓性ペルチェデバイス10を用いた温度調整装置の例を図3に示す。図3に示す温度調節装置は、可撓性ペルチェデバイス10,10を車のハンドル16に装着し、温度調整対象としてハンドル16の手で持つ部分を温度調整しようとするものである。ハンドル16に装着した可撓性ペルチェデバイス10の全体は、その放熱シート12が可撓性を有することから、図4に示すようにハンドル16の曲面に沿って折り曲げられて装着されている。可撓性ペルチェデバイス10を折り曲げる際に、構成半導体素子の各々は放熱シート12に、直接的な及び/又は分子接着剤を介した間接的な共有結合により十分に接合されており、放熱シート12から剥離することはない。更に、放熱シート12は熱伝導性ゴムからなることから、ペルチェ素子14の熱は放熱シート12全面に亘って伝熱されて放熱される。このような放熱シート12がペルチェ素子14の冷却側に接合されている夏用の可撓性ペルチェデバイス10を、その放熱シート12が手に接触するようにハンドル16に装着することにより、夏の日差しで加熱されて熱くなったハンドル16でも、手で持つ部分を冷却状態にしておくことができる。また、放熱シート12がペルチェ素子14の加熱側に接合されている冬用の可撓性ペルチェデバイス10を、その放熱シート12が手に接触するようにハンドル16に装着することにより、冬の寒い朝等に冷却されて冷たいハンドル16でも、手で持つ部分を温め状態にしておくことができる。このようにハンドル16に装着した可撓性ペルチェデバイス10では、放熱シート12に配設した複数個のペルチェ素子14の間隔は、あまりにも狭い間隔ではペルチェデバイスとして柔軟性がなくなる傾向にあり、あまりにも広い間隔では温度調整が困難となる傾向があることから、ペルチェ素子の1辺の長さの1から10倍の長さ(より好ましくはペルチェ素子の1辺の長さの2から5倍の長さ)とすることが好ましい。ハンドル16を人手で握ったとき、可撓性ペルチェデバイス10の放熱シート12の肌触りを良好にできる。
【0044】
図1図4に示す可撓性ペルチェデバイス10は、ペルチェ素子14の加熱側と冷却側との一方側に放熱シート12が接合されていたが、図5に示すようにペルチェ素子14の加熱側と冷却側との両側に、熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性ゴムからなる可撓性を有する放熱シート12を分子接着剤処理で接合してもよい。図5に示す可撓性ペルチェデバイス10の全体は、その放熱シート12,12が可撓性を有することから、図6に示すようにハンドル16の曲面に沿って折り曲げられて装着されている。このような図5に示す可撓性ペルチェデバイス10は、ペルチェ素子14の加熱側及び冷却側に放熱シート12,12が接合されていることから、夏には、ペルチェ素子14の冷却側の放熱シート12が手に触れるようにハンドル16に装着することにより、ハンドル16の所定の箇所を冷却できる。一方、冬には、ペルチェ素子14の加熱側の放熱シート12が手に触れるようにハンドル16に装着することにより、ハンドル16の所定箇所を温めることができる。
【0045】
図6に示すようにハンドル16に放熱シート12が接触するように可撓性ペルチェデバイス10を装着すると、図7に示すようにハンドル16の装着面が凹凸面であっても、熱伝導性ゴムからなる可撓性を有する放熱シート12は装着面の凹凸面に倣って変形して密着し、可撓性ペルチェデバイス10を凹凸面に確実に装着できる。また、放熱シート12の一方又は両方を、図8に示すように複数枚のフィン部12aを設けて表面積を拡大し、熱交換率の向上を図ってもよい。
【0046】
図2図5又は図8に示す可撓性ペルチェデバイス10をヘルメットや防護服の内側に、冷却面が人体側に向くように装着することにより、夏場や熱所でのヘルメットや防護服内の温度上昇を防止し、夏場や熱所での作業効率の向上を図ることができる。また、防寒服の内側に、加熱面を人体側に向くように装着することにより、防寒服内を急速に温めることができ、冷凍庫内等の寒所内での作業効率を向上できる。
【0047】
これまで説明した可撓性ペルチェデバイス10は、温度調整対象の温度調整手段として用いられてきたが、ペルチェ素子14の加熱側と冷却側との温度差が所定温度以上あれば、ゼーベック効果によりペルチェ素子14に電圧を発生させることもできる。このことから可撓性ペルチェデバイス10の加熱側の放熱シート12を高温部材に装着し、冷却側の放熱シート12を低温部材に装着することにより、両部材の温度差による発電を行うことができる。尚、これまで説明した可撓性ペルチェデバイス10には、複数個のペルチェ素子14が配設されていたが、装着する温度調整対象のサイズにより、1個のペルチェ素子14が配設されているものであってもよい。
【実施例1】
【0048】
(実施例1)
ジメチルシリコーンゴムに、熱伝導性フィラーとしての酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)を配合し、熱伝導率が4.1W/(m・K)の熱伝導性ゴムからなる可撓性を呈する厚さ0.5mmのシートを形成した。このシートを20mm×20mmの正方形状に切り取って放熱シート12とした。この放熱シート12の一面側に、図9(b)に示すようにペルチェ素子14を構成する各半導体素子の加熱側を接合して可撓性ペルチェデバイス10を作製した。この接合は分子接着剤としてのビニルトリエトキシシラン(KBE-1003)エタノール溶液にペルチェ素子14を浸漬し、加熱処理、エタノール洗浄後、コロナ放電処理を施した放熱シート12の乾式処理面とペルチェ素子14の加熱側を接触させ、熱圧着することで得られる。更に、可撓性ペルチェデバイス10のペルチェ素子14の冷却側に、ジメチルシリコーンゴム(熱伝導率0.2W/(m・K))からなる熱伝導性フィラー非含有のシート18を接合し、冷却板20に載置した。
【0049】
可撓性ペルチェデバイス10の放熱シート12の他面側には、図9(a)に示すように、ペルチェ素子14の中央に相当する個所をTとし、放熱シート12の角部に位置する個所をTとし、T1,の各々に熱電対を設置してデーターロガーを用いて温度を測定した。TとTとの直線距離は14.14mmであった。
【0050】
(比較例1)
図9に示すペルチェ素子14の加熱側に接合した放熱シート12に代えて、図10に示すように電子線架橋を施したジメチルシリコーンゴムからなる熱伝導性フィラー非含有のシート18を接合して可撓性ペルチェデバイス100とし、ペルチェ素子14の加熱側に接合したシート18の他面側に、実施例1と同様にT1,の各々に熱電対を設置してデーターロガーを用いて温度を測定した。
【0051】
(実施例2、比較例2)
図9に示す可撓性ペルチェデバイス10のペルチェ素子14に通電し放熱シート12のTとTとの温度の経時変化を測定した。その結果を図11に示す。また、図10に示す可撓性ペルチェデバイス100のペルチェ素子14に通電しシート18のTとTとの温度の経時変化を測定した。その結果を図11に併せて示す。尚、参考までに、ペルチェ素子14の加熱側が露出していた場合の加熱面の温度の経時変化を図11に点線で示した。
【0052】
11から明らかなように、ペルチェ素子14の加熱面が露出している場合は、加熱面の温度は約50℃にも達しているが、加熱面に放熱シート12又はシート18を接合することにより、T温度が40℃以下に低下していることから、放熱シート12又はシート18により熱拡散されている。また、両者ともに、通電開始から約60分でTとTとの温度が平衡状態となった。しかし、図9のT温度が図10のT温度よりも低温であり、図9のT温度が図10のT温度も高温であることから、通電開始から60〜300分間のT温度とT温度との平均温度T1ave,T2aveを求めて温度差ΔT(T1ave―T2ave)を計算すると、図9に示す可撓性ペルチェデバイス10の温度差ΔTは8℃であるのに対し、図10に示す可撓性ペルチェデバイス100の温度差ΔTは12℃であった。このように図9に示す可撓性ペルチェデバイス10は、図10に示す可撓性ペルチェデバイス100よりも熱分散性が良好である。
【0053】
(比較例3)
図10に示すペルチェ素子14の加熱側に、図12に示すように熱伝導性フィラー非含有のシート18,18間に放熱シート12を挟み込んだ三層構造体22を接合して可撓性ペルチェデバイス10とし、比較例1と同様に最上層のシート18のT1,の各々に熱電対を設置してデーターロガーを用いて温度を測定した。その結果を図13に示す。図13から明らかなように、TとTとの温度の経時変化は滑らかであるものの、通電開始からTとTとの温度が平衡状態となるまでの時間は約200分と長くなる。尚、TとTとの温度が平衡状態となったときの温度差ΔTは8℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の可撓性ペルチェデバイス及び温度調整装置は、ハンドル、ヘルメット、防護服等の温度調整対象の曲面に装着でき、温度調整対象の温度調整を迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
10,100:可撓性ペルチェデバイス、12:放熱シート、12a:フィン部、14:ペルチェ素子、14a:N型半導体素子、14b:P型半導体素子、14c:導電性パターン、16:ハンドル、18:シート、20:冷却板、22:三層構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13